【急募】このガンプラチームのまとめ方   作:猫好きの餅

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お人好しのクラスメート

 

 

 

 

 

 

 ーーー私立或美(あるび)学園。ここはミツキとユウトが通う学校で、県内でも少ないGPDが盛んな学校である。

 

 その中のひとつの教室で、尋問が行われていた。

 

「………それが遅刻の理由かソラザキ」

「い、いやぁ本当なんですよ?…だからその肩をトントンしてる出席簿を降ろして欲しいなーなんて。アナベ…間違えた。カトー先生っ」

「ほう?この状況で人の名前を間違えるとは、なかなか見上げた根性だな?」

いやそれは似すぎてるアンタが悪い「んん?」いえっなんでもないです!」

 

 登校時間から20分遅れで学校に到着したミツキは、気をつけの姿勢のまま冷や汗をダラダラ流す。

 

 せめて後10分遅れてホームルームが終わった頃に行けば会うこともなかっただろう。

 

 だがしかし、ちょうど教室から出てくるオールバックの白髪を一つにまとめたガタイのいい担任教室、カトー先生に捕まり教室に強制的に入室となった。どこかの軍の士官でもやってそうな風貌の教師はその怖い顔をニッコリと歪める。

 

 ミツキには彼の携える硬そうな出席簿が大出力ビームサーベルにしか見えない。

 

「さてソラザキ。もういちど遅刻の理由を言ってみろ。安心しろ、怒りはしない」

「そう言って怒らない人は存在しないんですよ!……え、えっと、シンプルに寝坊しましあだァ!?」

「シンプルに寝坊するな馬鹿者」

「…やっ、やっぱ怒ったじゃないですかァ…!」

「怒りはしていない。肩に置いていた出席簿を降ろしただけだ」

 

 そんな2人のやり取りにクラスメイト達が笑う。恨めしそうに後ろを見るミツキの視界にニヤニヤ笑いながら席に着いている裏切り者(ユウト)が入り、口元をヒクつかせた。

 

「まぁいい。もうすぐ授業が始まる、準備しておけよ」

「は、はぃ……すみません…」

 

 解放されて机に突っ伏しながら席に着くミツキに、近づく人物がひとりいた。

 

「もう、委員長大丈夫?……またガンプラやってたの?」

「…ん?…ああ、アマツカさんおはよ。ごめんね俺の代わりに出席簿持ってきて貰っちゃって。えへへ、ちょっと朝練が長引いちゃってさ…」

 

 ミツキにアマツカさんと呼ばれた茶髪ロングヘアの女子生徒は大出力ビームサーベル(出席簿)が落ちたミツキの頭を心配そうに見る。そんな彼女に大丈夫と返したミツキは斜め後ろのユウトをひと睨みして授業の準備を始めた。

 

「おはよっ。……出席簿のことはいいけど…クラス委員長なんだから、遅刻には気をつけてね?それに、学校にガンプラを持ってくるのはガンプラ部以外禁止じゃないの?」

「まぁそうだけど、結構みんな持ってきちゃってるし、先生達にもバレてるよ。授業中に出したりとかさえしなければ没収されないと思う」

「ふーん。……ほんとに気を付けてね?」

「うん、ありがと」

 

 そう言い自分の席に戻っていくアマツカをなんとなしに見ていると、隣の席の女子生徒につんつん肩をつつかれた。彼女はアマツカと良く絡んである友達だ。

 

「まーたノゾミに心配されてるの?お熱いねぇ」

「そんなんじゃないって。アマツカさん凄い優しくてお人好しだからクラスメートとして心配してるだけだと思うけど…」

「へぇ〜、ガンプラを堂々と持って来たいならガンプラ部入ればいいのに。ソラザキくん部活入ってなかったでしょ?」

「ガンプラ部はいいんだよ。ちょっと考えてることがあるからさ」

「なんだよ〜、教えてくれてもいいじゃん」

「嫌だって。ほらアマツカさんがめっちゃこっち見てるから。そろそろ先生も来るしっ」

 

 ミツキはユウトとは反対の斜め後ろからじとーっとした視線を感じて背筋が伸びる。

 

 フルネームをアマツカ・ノゾミという少女はクラスの副委員長で、先程もミツキが評した通り「お人好し」を体現した少女である。困った人がいたら見逃せず、手を差し伸べてくれる。サラサラの茶髪のロングヘアと着用した赤いカチューシャがトレードマークで、男子人気が高い女の子だ。そのせいもあってノゾミの周りを基本女子が守っているので人気に反して男子との絡みは多くない。

 

 ミツキは人生を電動ヤスリで削るようなガンプラ塗れの生活を送っていた時に目をつけられた。だから隣の女子生徒が期待するような事はなんにもないのだ。

 

(っていうか君アマツカさんのボディガードじゃなかったっけ?いいのそんな感じで!?)

 

 そんなことを考えながら女子生徒をあしらっていると1時限目の教師が入ってきたのでミツキは意識を授業に切り替えた。

 

 

 

 

 

 

「1192年、源の頼朝が鎌倉に幕府をーー」

 

 日本史の授業中、ミツキは教室の言葉を聞き流しながら今朝のことを考える。

 

(うーん、やっぱりあのバズーカは受けずにステップで避けるべきだったかな。そしたらミサイルも余裕を持って対処出来たと思うし、そのままザクをドッズライフルで撃ち抜けた)

 

「ここで問題だ。1203年に設置された、将軍の補佐をする役職をーーー」

 

(やっぱりひとつひとつの動きがまだ甘いかなぁ。ユウトにも言われるけど動きの無駄を無くせって、常に状況が変わる戦場で無駄じゃない事なんてあるのかな?)

 

「ソラザキ、答えてみろ」

 

(もしかして、今日のバズーカを盾受けしたことってその無駄な動きってやつなのかな。なるほどっ!ああいうのを無くせば立ち回りに余裕が出ーー「ソラザキィ!」っへっ、はいっ!!」

 

 名前を呼ばれて顔を上げると青筋を立てた日本史教師の姿が。

 

「話聞いてんのか?問題に答えて見ろ」

「あ、ハイ。執権です」

「……よろしい」

 

 ミツキはクラス委員長なだけあって勉強はそこそこできる。四六時中ガンプラのことを考えてはいるが、遅かにすると斜め後ろのお人好しな女子生徒がうるさいのだ。

 

 さすがに2回も指されるとまずいのでミツキは真面目に授業を聞き始めた。

 

 

 

 

 

 

「よう」

「出たな裏切り者め」

 

 なんだかんだで放課後。ポケ〜っとしすぎてピンバイスで弁当を食べそうになった事以外は平穏に学校生活を終えたミツキは近付いてきたユウトにジト目を送る。

 

「なんだよ酷い言い草だな。俺は自分の通学方法を使っただけなのに」

「くっそ、だからあの時慌ててなかったのか……!」

「その通りだとも。だから俺内心コイツ何時までやってんだ?まぁ、俺は間に合うけどって考えてた。あと、お前最後のミッションモードの時既に時間やばかったからな?

「いや言ってよ!そろそろ切り上げないと遅刻するぞとかあるだろ!?」

「いや別に俺は遅刻しなかったし」

「クソがァ…!」

「まぁまぁ落ち着けって。……で、この後はどうする?練習すんのか?」

 

 ユウトにそう聞かれてミツキは頷く。そんな彼にユウトは微笑を浮かべると、いつも利用してる練習場に向かうために歩き始めようとしたところで。

 

「委員長〜、いる〜?」

 

 廊下から目付きを呼ぶ声が聞こえた。振り向くと教室のドアから赤カチューシャが顔を出している。こうして2人が会話しているうちにクラスの皆は部活や下校をするために教室を出て行っているので残っているのは2人だけだ。その例に漏れず先に出たと思っていたノゾミが戻ってきて2人は顔を見合わせた。

 

「あれ、アマツカさんどうしたの?」

「どうしたのじゃないよっ!カトー先生呼んでたよ?遅刻の申請書出してないって」

「…あっ、そうだった!」

 

 朝カトー先生に言う言い訳の事ばかり考えていたミツキの顔色が一気に悪くなる。

 

「ごめんユウトっ。行っててくれる?」

「おう。先出てるぞー」

 

 ミツキはユウトに言って荷物を掴んで教室を出る。その隣にノゾミが並んだので驚いた。

 

「え、アマツカさんは着いてこなくても」

「いいのっ、カトー先生が逃げないように見張っててくれって言ってたし。わたしも着いていくよ」

「あの人は俺をなんだと思ってるんだ……」

 

 げんなりしながらもミツキは歩きながら隣のノゾミをチラリと見た。

 

 容姿は間違いなく美少女に入るだろう。歩く度に揺れる背中まである栗色の髪。優しげな同色の垂れ目。困った人を見過ごせない優しさも相まって、男子人気がすごいとは先程言ったが本当に凄いのだ。ノゾミと仲良く話す男子などが現れた日には異端審問会が始まることだろう。

 

「あ、アマツカさんってコトネさんと仲良いんだよね?」

 

 ミツキは周りの視線を気にしながら言う。今まさに審問会に掛けられそうな事をしているのだ、安心できる訳が無い。ちなみにコトネと言うのは今朝話しかけて来た隣の席のノゾミの友人の名前だ。

 

「え、そうだけど……名前呼びなんだ…?」

「う、うん。向こうがそう呼んでって言ってて」

「……ふーん」

 

 なんだかノゾミの雰囲気が重くなる気がミツキにはした。ヤバい、話題間違えたと焦るミツキにジト目を送り付けたノゾミはそっぽを向きながら口を動かす。

 

「まぁ、コトネはフレンドリーだからそういうのもわかるけど……で、わたしとコトネがどうかしたの?」

「いや、結構コトネさん達が周りにいるからアマツカさんあんまり男子と話してる感じしなくて…こういう囚人運送もしてるのかなって。2人は今部活?」

「囚人運送って……コトネとミキは部活だよ。…そんな印象持たれてたんだ。別に男子は苦手とかじゃないよ?お兄ちゃんもいるし」

「お兄さんって確か、ガンプラ部の部長の?」

「うん、ガンダムもちょっとだけなら見た事あるよ?」

 

 ノゾミのその言葉にミツキは嬉しくなる。GPDが普及した今でもガンダムのアニメを見たことがある人は、特に女子なら無い人が多いのだ。

 

「そうなのっ!?…じゃ、じゃあアマツカさんもガンプラとか…?」

「ううん、ガンプラはやった事ないよ。アニメ見たことあるって言ってもひとつだけだし…え、AE〜なんとかって」

「もしかしてAGEかな?」

「そうかも。ガンダムって物々しい印象だったけど意外と見やすかったなぁ」

「ほんとっ!そうなんだよ!!」

「わっ」

 

 うんうんとミツキは頷く。まさか女子とガンダムトーク出来るなんて!と自然と笑顔になっていく。

 そんな彼を見てノゾミもなんだか嬉しくなった。

 

「そ、そんなに喜ぶことなの?」

「そりゃそうだよ!俺も大好きなんだガンダムAGE!いやー、結構マイナー寄りの作品だからさ、嬉しくなっちゃって!」

「そうなんだ……マイナー寄りでもわたしには面白かったなぁ」

「うんうん!AGEの魅力をわかってくれる人がいるなんて!」

 

 しまいには涙まで浮かべる始末だ。だが、そんなミツキを見てノゾミは彼から見え無い位置でクスリと笑った。

 

 その後も歩きながら2人は色々と話す。

 

「委員長はガンプラ部入らないの?バトルがしたいならそっちの方が早いんじゃない?」

「……あはは、そうなんだけどね。でも、俺は自分でチーム作ってやりたいんだよ。確かに部活に入った方が早いのはわかるけど、ちょっと俺のスタンスには合わないと思ったし、個人的になこだわりもあるからね。…おかげでチームメンバー集めるの凄い大変だよ。だって強い人もうガンプラ部に入ってるんだもん」

「……なんでそこまでするの?」

「え?」

 

 その言葉に横を向くと、ノゾミはじっとミツキの目を見てくる。

 

「あ、ごめんね変な事聞いちゃって。だって、あえて大変な方を選ぶなんてどんな理由があるのかなって…」

 

 ノゾミの問は当然だろう。傍から見ればわざわざ大変な方の道を選ぶ変な奴に見えただろう。何せ今朝遅刻の原因になった朝練もガンプラ部に入れば学校で出来るのだから。

 

 ただ、ミツキとしてはこの一言に限る。

 

 

 

「だって、好きだから」

「…っ」

「好きな事なら好きな人とやりたいじゃん。そんなチームで上を目指せたらどんなに楽しいだろうって思うんだ。だからさっきアマツカさんに話す俺みたいに、好きなことを思いっきり話せるような人がいいんだ」

 

 ミツキが屈託のない笑みでそう言うと、ノゾミはしばし黙り込んだ後にこくりと頷いた。

 

「……そっか。委員長はすごいね」

「ありがと。…ってか前から気になってたんだけど、なんで俺の委員長呼びなの?」

「……ぅえ!?…そ、それは…って、委員長っ!もう職員室に着いたよっ!」

「え、あっうんそうだけど…」

「じゃわわたしはこれで!またね!」

 

 ミツキの質問に謎に狼狽したノゾミは、強引に話を切ると足早に行ってしまった。

 

「…行っちゃった……。まぁ別に委員長呼びでも良いんだけど」

 

 ノゾミの様子がちょっと気になったが、まぁいいかとミツキはユウトを待たせまいと急いで遅刻申請書を書きに職員室に入っていくのだった。

 

 

 

どっち派?

  • 連邦系(バイザー系MS)
  • ジオニスト(モノアイ系)
  • ガンダム系が好きです
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