「金が欲しい……!」
「んだよ急に」
「だってガンプラ代めっちゃかかんだもん……」
カトー先生に笑顔(凶器)を向けられながらも申請書を書き終えて、ユウトと合流したミツキは予定通り練習場に向かって歩いていた。
「金はまぁ、上手くなれば消費を抑えられるだろ」
「もっともっと練習しなきゃなぁ〜」
「まぁ、練習も良いけどチーメンも集めないとな。確か大会は5人チームだっけか……多いな」
「毎年そうだからね。あんまり人数が少ないと、勝ち上がる機体がほぼ決まっちゃうんだって」
「まぁ、勝ちだけこだわるなら万能機だけ使っときゃ良いもんな」
そこまで話したところでユウトは隣からの視線に気が付く。
「…なんだよ」
「……やっぱりユウトは俺のチーム入ってくれないの?」
ユウトはその問いに言いにくそうに後頭部をかく。
「…悪ぃ。ちょっと俺チームというか、複数人でやるのが苦手なんだよ」
「理由は話せないの?」
「ああ。…ちょっと情けない話だしな。こんな俺がお前のチームに入ったとしても多分上手くやれる気がしない」
「そっか……」
事実このユウトは強い。ミツキでさえはバトルじゃ歯が立たないし、個人の非公式の大会なら何度か優勝だってしている。部活にも入ってないしメンバーとして迎えるならこれ以上ないくらい有力なのだが。
「まぁ、こういう特訓にならいくらでも付き合うからさ。メンバーはお前が見極めて集めてみろよ。……おら着いたぞ」
2人が訪れたのは街中にある模型店だ。民家と一体化したような造りで二階建ての家の1階部分が店舗になっている。看板には大きく「モリタ模型店」と書いてあった。
「ちわーす」
「こんにちはー」
「おお、学校帰りかい?お疲れ様」
店内に入って挨拶をすると、奥から店主のモリタが顔を出す。ここが良く2人が利用する練習場でGPDの筐体を利用出来るし、すぐそこでパーツを買って補習もできる。
「今日も練習かい?精が出るね」
「はい!…でもその前にAGE-1の補習がしたくて…シールドありますか?」
「ああ、在庫であるよ。300円ね」
「こうして見るとシールド買うか、パテやプラ板で直すかであんまり値段買わらないのな」
「ほんとは自分で直したほうがいいんだけどね。今回はだいぶ使い込んでたから」
話しながら待っているとモリタがランナーが入った袋を持ってきた。お金を渡して受け取り、袋を開ける。
ニッパーでパーツを切り落としてヤスリでゲート後処理、軽くスミ入れもして説明書も見ずに組み上げるとAGE-1に装備させた。
「これで元通りだね。……じゃユウト、やろ?」
「おういいぞ」
今日の練習はユウトとの模擬戦だ。CPU戦とは比較にならない緊張感にミツキの鼓動が早まる。筐体を挟んで向かいに立つユウトを見ると、いつも通り飄々としている。
(いつも思うけど、ユウトってこういう場にすごい慣れてない?全然緊張してないし、なんなら楽しそう)
《Battlestart》
2人は同時ににガンプラの情報が入った端末を筐体にセットする。
ロードが終わると同時にそれぞれのガンプラを台に置いた。ミツキはいつも通りガンダムAGE-ノーマル。対してユウトはウィンダムジェットストライカー。
ウィンダムという機体は機動戦士ガンダムSeedDestinyに登場する量産機。背中のバックパック「ストライカー」を換装することで様々な戦場で戦うことが出来る。今回ユウトが装備しているのは空戦特化のジェットストライカー。主翼の下にミサイルを装備している。
そうこうしているうちに2人の体をモニター包み込んだ。操縦桿が現れたのでしっかりと握りしめる。
ガンプラが動き出し、カタパルトデッキに入った。発信のカウントダウンが「0」になったのを見て、セリフを吐きながら操縦桿を前に倒す。
「ソラザキ・ミツキ!ガンダムAGE-1…行きますッ!」
「カミヤ・ユウト。ウィンダム出る」
お互いのガンプラが一気に加速して空に打ち出される。
フィールドの種類は地上。岩が転々とある荒野で遮蔽物になりそうな場所も無い。自力が試されるマップだ。
ミツキはとりあえずレーダーを見てユウトのウィンダムを補足しようとするが、いつになっても見つからない。その時、訝しげに思ったミツキの思考を攻撃アラートがかき消した。
「ッ!?」
咄嗟にスラスターを全開にして飛び上がる。その直後、一瞬前までAGEがいたところを緑色のビームが通り過ぎた。冷や汗を垂らしながらミツキはレーダーをちらりと見るが補足なし。
「なんであの距離をマニュアルで狙って、しかも当ててくるんだよ…!」
悪態を着きながらも、盾を前に構えながら後方にスラスターを吹かした。
GPDのガンプラが行う射撃として大きくふたつの照準方法がある。
1つ目はオート照準。システムが機体のレーダー範囲に補足した機体に向かって自動で狙うというもの。偏差射撃もある程度は自動で行ってくれる為、こちらを使うのが主流だ。スナイパー系の機体ですらレーダー範囲を強化してこちらで撃つ。
そして2つ目、全てを自操作で行うマニュアル照準。狙うこと自体は機体が静止していればそれほど難しくないが、動きながらとなるとかなり難しい。今の狙撃は射線から考えて空から撃たれたもの。しかもレーダー範囲外なので向こうから見たAGEは米粒ほどの大きさだろう。それをミツキが避けなければ直撃コースだったのだ。
少し前身するとようやくレーダーにウィンダムを補足、画面にロックオンの表示が出現する。
ウィンダムはジェットストライカーの主翼を広げて滑空しながらAGEに向かってビームライフルを撃ってきた。それをミツキはAGEの盾で防ぎつつドッズライフルを撃ち返す。このAGEが装備しているビームライフルは他の機体とは違いドリル上のビームを撃ち出すというものでただのビームライフルよりも貫通力が高い。
それをわかっているのかウィンダムはドッズライフルのビームを機体を捻って回転することで速度を落とさずに躱す。彼が得意とするバレルロールだ。しかもその回転中にこちらに正確に射撃を返してくる。ミツキはビームを引き続き盾で受け止めながら、ウィンダムが近づいて来るのを待った。
「そこっ!」
ミツキは肉薄してきたウィンダムに、こっそり抜いていたビームサーベル振りかぶった。ライフルをマウントするモーションも盾で隠していたのでユウトは見えてないはず。ミツキはAGEの体を入れ替えビームサーベルを横凪に振るった。……が。
「なぁっ!?」
低空飛行していたウィンダムが突如脚とストライカーの羽を折り曲げて着地しつつ、スラスターは斜め下にフルスロットル。体勢を低くしながらAGEの剣閃を潜るようにスライディングをする。
当然ビームサーベルは空振り隙を見せたAGEに、スライディングで背中側に抜けたウィンダムは左腕を後ろに向けてシールド裏に内蔵された2発のミサイルを叩き込んだ。
衝撃。
「くっ!」
ビームサーベルを大振りしたことによって背部に盾が向いていたことが幸いして直撃を免れたが見事に出鼻をくじかれた。
後ろにいるウィンダムに射撃をしたいところだが今右手にはビームサーベルを持っている。撹乱目的でウィンダムにビームサーベルを投げつけリアスカートからドッズライフルを引き抜いたAGEは、振り返りながらビームサーベルを難なく避けてこちらにビームライフルを向けるウィンダムに狙いを付ける。
「いけッ!」
ミツキが操縦桿の横を操作するとドッズライフルのバレルが90°回転した。そこからグリップがとび出てくるのをしっかりと握りしめ、精密射撃モードとなったドッズライフルをマニュアル照準する。
飛んでくるビームライフルはスラスター移動とシールドで捌き、ウィンダムの飛行速度に合わせて、着地際に放とうとする。…が。
「っはぁ!?」
ウィンダムはミツキがビームを撃つ一瞬前に機体のスラスターを左に吹かし方向転換。発射されたビームを避けながらAGE視点で左腕のシールド側に回り込む。モニターに映るシールドが邪魔でウィンダムが見えなくなった。
「そ、それならって、うわっ!」
マニュアル照準にしたのでウィンダムを画面外に逃してしまった。オート照準に切り替えたミツキはスラスターでその場を脱しようとしたが、その前にシールドに衝撃が走って爆煙が当たりを包む。ウィンダムのストライカーに着いたミサイルだ。それにたたらを踏みながらもスラスターでジャンプをする。
体勢を崩しながらもなんとか爆煙の中を抜けたAGEの前に、なんとウィンダムが現れた。
お前はフリーダムかとツッコミたくなるような速度で飛びながらビームサーベルを抜いたウィンダムは通り抜けながらバレルロールした回転の勢いで斬り付けてきた。ドッズライフルが破壊されてしまう。
「ちぃっ、でも、後ろががら空きだよっ!」
ミツキはようやくできたウィンダムの隙にニヤリと笑い、ビームサーベルを引き抜く。そしてスラスターをフルスロットル、サーベルを振り切った余韻のままのウィンダムに迫る。
ーーそれが誘われていたということも知らずに。
ウィンダムは突如体を捻って上にスラスターを向け、急降下をした。
あまりに突然のことだったのでミツキの画面からはウィンダムが消えたように見えただろう。
「え?」
直後、ビームサーベルを空振りした間抜けな姿のAGEの両肩を下から正確にビームライフルが貫くのだった。
「くっそぉ!!負けたぁ!」
「はい残念。こっちの誘いに全部引っかかってくれて楽しかったわ」
結果、ミツキの惨敗だ。膝から崩れ落ちて悔しがる彼にユウトが無傷のウィンダムを回収してスカした顔で言ってくる。
実際何も言い返せ無いので自分もAGEを回収した。損傷状況を見ると両腕が綺麗に肩から撃ち抜かれていて補習も楽そうだ。
「っていうかなんだよ最後の動き。途中もフリーダムみたいな動きするし、キラと戦ってるのかと思った」
「そりゃリスペクトしてるからな。最後のなんかネオ機落とすところ真似てみたんだけど」
「そっくりだったよ、この変態機動め……」
恨めしそうにミツキに言われてカラカラとユウトは笑う。そこに横でバトルを見ていたモリタさんがやってくる。
「いいバトルだったよふたりとも。それに、相変わらずユウト君の機体操作には脱帽だね。ガンプラでスライディングなんてする人初めて見たよ」
「まぁ普通はスラスターでステップした方がいいですもんね。やる人がいないからこそ、いきなりやると刺さるものなんですよ」
ミツキは唇をとんがらせながらも新たにAGE-1の両腕セットとドッズライフルを購入。補修をしながらさっきのバトルの反省会をする。
「とりあえず、さっきなんで負けたかわかるか?」
「……ユウトが俺の格闘を誘ったから?」
「まあ、そうだとも言えるけど、正確に言えば俺の最初の射撃をシールドで受けたからだな」
「え?そんな最初で決まるものなの?」
ミツキがウィンダムのビームライフルを盾で受けた理由は単純。相手に機動力で負けていたからだ。だから盾でどっしり構え、近づいて来たところを迎え撃つ算段だった。
首を傾げるミツキにユウトは続ける。
「俺はただ、自分の機体の有利な展開に持ってくようにしただけさ。ちなみに、結構俺の射撃をシールドで防いでただろ?アレ俺がワザと盾に撃ってたんだよね」
「そ、そうなの?」
「おう。攻撃を防がせることで『よし、防げてるからこのまま盾を構え続けよう』って心理にさせる為にな」
ミツキはその時の自分の心の中を言い当てられビクッとなった。確かにウィンダムが放つ全ての射撃を防げていたのでそのまま引きつけることにしたのだ。まさかそれが仕組まれたものだったとは。
「で、その時点で俺はお前の攻撃を透かす準備をしていた。スライディングならお前が射撃か格闘どちらを選んでも避けられるからな」
そして斬撃を避けられてミサイルを打ち込まれ防戦一方になった。
「じゃあ、どうしてドッズライフルを躱せたの?タイミングも完璧だったのに」
「そりゃ、俺がそのタイミングを自分で作ってお前に撃たせたからな」
ミツキは空いた口が塞がらない。ミツキが狙ったのはウィンダムの着地際。スラスターを使いすぎるとオーバーヒートを起こしてしまうので適時着地してスラスターを冷やすのが鉄板だ。それをある程度無視できるGNドライヴ搭載機も例外としているにはいるがウィンダムにはそれが搭載されてない。
「だからワザと着地したってこと」
「そ。あの状況なら確実に当てたいだろ?だから着地を見せれば撃つかなって」
「み、左に避けたのは?」
「それなんだけどな。そもそも盾って自分を守る頼もしい壁、になるんだけど……、それでも壁は壁なんだよ」
「……あっ、そういうことか!」
ミツキは合点がいったようで、補修が終わったAGEに盾を構えさせて話す。
「つまり盾側に回り込めば盾が邪魔をして狙いにくくなるってことか!」
「そういう事。それにドッズライフルの精密射撃は両手持ち。俺を狙い続けるには身体を向け続けなきゃいけない。だから基本は盾側に避けるんだ。コレ、機体に手持ち以外の射撃武装が着いてる機体全般に有効だから、覚えとけよー。まぁたまにヴェスパーとか背面撃ちしてくる変態もいるけど」
ミツキはユウトの考えに頷く。そして彼との動きの根本的な違いを自覚した。
「これが、無駄を無くすってことか……」
ユウトの立ち回りには一切の無駄がなかった。全ての行動に意味と目論見があったし、それに対しての自分の行動を見て後出しで行動している。
「まぁ俺は"後の先"が得意だからな。全部真似しろとは言わないけどこういうことをしてくる敵もいるよってのを知っておけばいい」
「なるほど……」
「で、ミサイルで煙を撒いて、その上から射撃をすればそこから移動したくなるだろ?出てきた所を追い掛けて、得意の空戦で倒したってわけ」
顎に手を当ててうんうん唸っているミツキをユウトは優しげな目で見た。そしてショーケースを拭いていたモリタに話しかける。
「モリタさん。こいつ公式大会出るメンバー探してるんですけど、この店来る人でいい人居ないっスかね?ここ良くウチの高校の来ますし」
「そんな人いるかなぁ?俺も探したけどだいたいガンプラ部入っちゃってたよ?」
「お前みたいに部活が合わなくて入ってない猛者もいるかもしれないだろ?まぁ、ダメ元だけど」
ユウトの言葉にはっとなるミツキ。すっかり頭から抜け落ちていた。
「モリタさん、どうですか?」
「うーん、そうだねぇ…あ、最近始めた子で心当たりがいるよ。筋も良い。………んだけどねぇ」
「えっと、なにか問題があるんですか?」
言い淀むモリタにミツキは身構える。もしやとんでもない不良とかだったらどうしよう、いやガンダム好きなら皆友達!謎の気合いを入れる中でモリタが頬をかいた。
「問題ってほどじゃないんだけどね。ちょーっと、なんというか……『降りてる』子でねぇ」
「降りてる?」
ミツキとユウトは揃って首を傾げた。人に使う言葉で「降りてる」とは?
まぁ候補がいるだけありがたいと、ミツキは首を縦に振った。
「とりあえずわかりました。会って話してみます」
「わかったよ。彼にも日時を伝えておくから、明日またここに来てくれ。ちゃんと或美学園の生徒だよ」
うちの学校にそんな変な人いたっけなぁとますます首を傾げる2人だった。
翌日。
「おおっ!会いたかったぞっ!君もガンダム使いかっ!?ガンダムと戦えるとはっ、ここに通いつめた甲斐があったという物っ!」
「「…………」」
店内に、野生のグラハム・エーカーがいた。
どっち派?
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連邦系(バイザー系MS)
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ジオニスト(モノアイ系)
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ガンダム系が好きです