【急募】このガンプラチームのまとめ方   作:猫好きの餅

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ビルダーは日々、工具の代用品を探してんのよっ!

 

 

 

 

「こんにちはー」

 

 友人からのからかいを躱しながら帰宅したノゾミは、カバンを自分の部屋に置くと自宅を出て隣の家のインターホンを押す。少し待つと返事が返ってきて玄関が空いた。

 

「あら、ノゾミちゃんいらっしゃい」

「こんにちはっ。リン居ますか?」

「ええ。今部屋にいるわよ」

 

 ノゾミがお邪魔したのは彼女の幼なじみの家だ。高校は別になってしまったが、小学校でずっと同じクラスだったのと家が隣なのもあってずっと仲がいい。

 

 ノゾミが家の階段を上がり、彼女の部屋の前まで行くと部屋の中から何やら音が聞こえた。

 

「…なんの音?」

 

 部屋の中からしゃーこーしゃーこーと、まるで何かを研いでいるような音だ。それを理解した瞬間、ノゾミは勢い良くドアを開けた。

 

「リンっ!何してるのっ!」

「…ん?なになにどうかしたの?」

 

 ドアを開けた部屋の中で背中まで伸ばした黒髪をポニーテールにした少女が、綺麗な水色の瞳を見開いている。水色と白を基調とした整った部屋の四角いテーブルの上で彼女が握っていたものを見たノゾミは力の抜けた声を出した。

 

「………なにしてんの?」

「…え?…………ガンプラのブレード研いでるんだけど…?」

 

 しゃーこーしゃーこー音を立てていたものは、ノゾミの幼なじみーーカシワギ・リンがプラ板を重ねていたブレードを研いでいた音だった。目をぱちぱちさせながら言うリンの声が耳に届くがそれでも頭から「?」は無くならなかった。

 

「……えっと、なんで研ぐ必要があるの?」

「やっぱ刀作るならホンモノみたいにやらないとって思ったのよ。100均で買える爪研ぎでやれるし」

「うわ、ほんとうだ」

「パパから教えて貰ったの。最初パパが女子用爪研ぎ持ってるの見たときはびっくりしたけど」

 

 よく見るとブレードを擦っていたのは砥石などではなく女子なら誰もが使ったことがあるネイル用の爪研ぎだった。それをテーブルに固定してプラスチックを擦っていたこの幼なじみにノゾミはため息が出る。

 

 「よし、いい感じね」と綺麗に刃が着いた青色のブレードを見て頷いたリンは柄のパーツに差し込んで満足そうな顔をした。

 

「いやー、この反りを出すのに苦労するのよねぇ……で、どうかしたの?ノゾミがこんな時間に家に来るなんて珍しいわね」

「うん、ちょっと聞きたいことがあってね」 

 

 今の流れを見た通り、ノゾミの幼なじみのリンはガンプラ好きである。父親の影響で幼い頃から英才教育を施された彼女は趣味の1つにガンプラの改造を持つほどになった。父親共々作ったガンプラの置き場に部屋を丸々1つ持っていかれているのは母親の悩みの種ではあるが、今しがた研いで整形したGN系の近接武装をうっとりと見る目はノゾミの中の彼と一致するところがある。

 

 リンはノゾミの言葉にぱちくりと瞬きを返すと頷いて工具を片付け始めた。

 

 

 

 

 

「それで、聞きたいことって何?」

「…あ、えっとね…ガンプラ…ガンダムのことなんだけど…」

「え、えぇ!?の、ノゾミがガンダムのことを!?」

「そ、そんなに驚くこと?」

 

 リンは知り合ってこの方興味のひとつも示さなかったガンダムのことを聞かれ、声を張上げた。照れたように頬をかく彼女を見たリン

佇まいを直す。

 

「……えっと、ノゾミがガンダムのことを聞くなんでびっくりしちゃった。…で、何が聞きたい訳?なんでも話しちゃうけど」

「…ぅ」

 

 ドンと来い!とノゾミの返答を待つが、何やら彼女の目線があちこちに散っている。数秒の間おろおろとテーブルの上に置かれた紅茶のカップと自分の膝を行き来させたノゾミは頬をかきながら。

 

「……な、なんか、オススメのガンダムってあるかなぁ……?」

「パパーっ!ノゾミがガンダム見るって!」

「なんだってぇ!?」

 

 ポツリと小さく響いたノゾミの声に被さるようにニッコニコのリンが階段の下に向かって声を張り上げた。すぐさま彼女の父親、つまり英才教育の第一人者が今年1番の驚きの声を上げる。

 

「ええっ!?そ、そんなに驚くことなの?」

「…ノゾミっ!……ようこそ!」

「なんか怖いよぉ!?」

 

 ついにあのノゾミがガンダムの世界に!と親友のノゾミですら滅多に見ないニコニコ笑顔になったリンは顎に手を当ててブツブツと悩み始める。

 

「……確か昔AGEはすこし見たことあるって言ってたよね……だとすると宇宙世紀はハードル高いし…、アナザーだと00かseed、鉄血もわかりやすいかな…?嫌でも水星も女の子主人公だから取っ付きやすいし…」

「り、リン?」

「…あのねノゾミ、ガンダムを見るにあたって、最初に見た作品ってすっっっごい重要なの!そこから好みが形成されて、どっちの派閥に入るか(バイザーかモノアイ)が決まるんだから!…って、パパっ!ジオニストの仲間増やしたいからってThe ORIGIN持ってこないっ!フルCGで動くシャアザク見たら誰だって好きになっちゃうでしょ!」

「ちぃ!感づかれたか…!」

 

 一気に騒がしくなるカシワギ家。

 

 「っていうかそれまだガンダム出てこないじゃん!」と父親を追い返し、散々悩んだ末にリンは00ガンダムを挙げた。

 

「…って説明する前になんで急にガンダム見る気になったわけ?」

「え!……ちょっと学校で流行ってて…く、クラスの話題がガンダム方面になっちゃってるんだよねぇ〜。だからちょっとガンダムについて話せるようになりたいなって」

「へぇ…、やっぱ共学は違うのね」

「リンの女子高はどうなの?」

 

 流れでノゾミがそう聞くと、少し彼女の顔に影が差した。その理由を知っているノゾミはしまったと口を塞ぐ。

 

「……うちの女子高お嬢様学校だからね。ガンダム知ってる人なんていないわよ」

「…うん、変なこと聞いてごめんね」

「別に気にしないで」

 

 リンはちょっと待っててと部屋を出て、何やら5つのガンプラを持ってきた。それを並べると、ニヤリとと笑う。

 

 その、好きな物を共有できる嬉しさを表した笑顔が、この前のミツキの表情と重なった。

 

「じゃ、私のイチオシ、00の話をしましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

「…え、えっと、0を2つ繋げてダブルオーって読むの?」

「そ!ガンダムってこういう謎の読み方多いから気を付けてね」

 

 ガンダム特有の読み方に首をひねりながら、目の前に並べられた機体をノゾミはまじまじと見た。

 

「このガンプラがそのダブルオーガンダムって作品に出てくるの」

「そう。主役級の機体たちね。この青いのが主人公よ」

「へぇ〜」

 

 リンが指を差したガンダムエクシアをじっと見つめた。全体的に細身な印象を見受けられる。

 

「なんか、凄いね。あの箱の中のパーツからこれが出来るなんて」

「まぁ、それは改造してるけどね」

「え!そうなの!?」

「エクシアのキットは関節がねぇ…二の腕もポロポロするし…」

 

 何やらブツブツと言っているが、用語がよく分からなかったノゾミは他の機体もまじまじと眺めた。それぞれパーソナルカラーがあるのか色が違う。その中である共通点を見つけた。

 

「なんかみんな角が着いてるけどこれがガンダムの印ってこと?」

「その認識でいいわよ。今のところは」

「……まるで違うのもいるみたいな言い方だね?」

「その通りだけどいちいち上げてたらキリないから、今度そのクラスで詳しい人に聞いてみたら?」

「…っ!そ、そうだねっ、そうするよ!」

 

 まるで豆電球が光ったかのように顔を綻ばせるノゾミを見たリンの頭の中になにやらキュピーンと電撃が走る。

 

 このノゾミという女の子は嘘が本当にわかりやすい。さっきのクラスでガンダムが流行っている発言といい、今の謎の笑顔といい、何が隠されているような気がする。

 

「…この中でも男の子に人気なのはやっぱり青のエクシアね。折角は話題にするんだから、剣が7本の理由とかはあえて話さないで置くけど」

「お、男の子に人気……確かに色も似てるような…

 

 なるほど、男か。

 

 ノゾミのつぶやきがバッチリ聞こえてしまったリンは綺麗な笑顔を浮かべながらそう結論づける。一時期苦手だとまで言っていたあのノゾミについに春が。なるほどそうか。

 

「それなら今度、一緒に見ない?このエクシアも1話目から出てくるから」

「ほんと?…じゃあ明日は休みだし、明日見よ?」

 

 「ガンダムを見ること」を楽しみにしてくれている親友に嬉しくなっていると、リンはあることを思い出した。そういえば改造に使うプラ板が無くなりそうだ。買いに行く必要がある。

 

「…あ、それの代わりと言ってはなんだけどさ」

「……ん、なに?」

「ちょっと材料が切れそうだから、明日一緒に買いに行ってくれない…?明日パパは仕事でいないから…」

 

 先程の元気な様子はどこへやら、リンは不安そうな顔で尋ねてくる。その理由を知っているノゾミはもちろんと頷いた。

 

「まかせてっ。リンの高校から離れてるところがいいんだよね」

「うん、ありがと」

「いいのいいの」

 

 明日の約束を取り付けたノゾミは「そろそろ帰るね。またあしたっ」と部屋を出て階段を降りていった。夕食を誘ってくれたリンの両親(父親だけすごい笑顔)のご厚意を断りながら、軽やかな脚でノゾミは自宅に戻って行った。

 

 それを窓から見つめながら、1人になった部屋にリンのつぶやきが響く。

 

「……ノゾミも、バトルやるのかな?」

 

 ソレスタルビーイングのガンプラを部屋に戻しながらため息をついた。工具も部屋に置き、自室に戻るとまるでガンプラになんで縁がないような女の子の部屋。ベッドにダイブしたリンはスマホで動画を漁り始める。非公開になっている再生リストの中の1つの動画を開いてそれを見始めた。

 

 その動画は、あるゲーセンのGPDの大会の決勝戦を録画したもの。海の上を2機のガンプラが飛び回っている。その中で一際目を引くのはまるで劇中のエース機のように軽やかに空を舞う一機の量産機。

 

 飛行機のようなバックパックを着けたガンダムに近い顔をした白と青の量産機は、飛んできたビームをZ軸回転でギリギリで躱す。そして振られた格闘を左手の盾1本で捌くと、回転しながらビームライフルを接射して相手の主役級を撃ち抜いた。

 

 それを見ているリンの口元が緩んだ。

 

「……かっこいいなぁ…、このウィンダム使いの人…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





アマツカ・ノゾミ
実は身近にミツキ並のガノタが居た。幼なじみの喜びように若干引き気味。


カシワギ・リン
ノゾミの幼なじみ。父親譲りの立派なガノタだが、何やら訳ありでGPDはやっていない。しかしビルダーとしての腕はなかなかのもので、GBNの実装を楽しみにしている。
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