【急募】このガンプラチームのまとめ方   作:猫好きの餅

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完成、専用機!【挿絵あり】

 

 

 

「アマツカさん?」

「き、奇遇だね委員長」

 

 まさかここで会うとは夢にも思ってなかったミツキが声を上げるなか、ユウトとコウスケも目を瞬かせた。

 

「アマツカさんがどうしてガンプラ店に?……もしかしてガンプラ買うのっ?」

「えっ、あ…いや…買うのはわたしじゃなくて…」

「…ん、あの子の方か?」

 

 ユウトが指を指した方向を見ると、組み立て済みのガンプラが置いてあるケースに顔を張り付かせている少女がいた。さっきまでノゾミの背中に隠れていたはずだったのだが、今はキラキラとした目でガンプラ達を眺めている。

 

「う、うん。ガンプラを見たいらしくて…。委員長達は?なにか作業をしてたみたいだけど」

「俺は自分の専用ガンプラを作ってたところだよ」

「専用ガンプラ?」

 

 ミツキはノゾミにこうなった流れを掻い摘んで説明する。

 

「……って、意外と驚かないね?」

 

 GNドライヴだのコンデンサだのと、用語を避けて話したミツキはノゾミのリアクションが薄いことに首を傾げる。それに苦笑いを返すノゾミは自分の幼なじみが結構コアなビルダーなんだと初めてここで知った。やっぱり爪とぎでプラスチックの板を研ぐ女子高生は異常らしい。

 

「……えっと、そちらは?」

 

 それまで黙って見ていたユウトがノゾミの後ろに立つリンへと目線を向けた。その視線に反応したリンは小さく会釈を返す。

 

「こっちは私の幼なじみなんだ。学校は違うけど家が隣なの」

「か、カシワギ・リンです…。ここに来たのはパパのお使いで…」

「おや、そうだったのかい。ゆっくりしていってね」

 

 モリタさんの言葉に頷いた2人はそれぞれ品物を見始めた。と言ってもノゾミにはさっぱりで、どの機体も同じに見える。ちょろっとミツキの方を見ると、真剣な顔をして何やら棒状のものをパーツにねじ込んでいた。

 

 学校では見ることの出来ない彼の表情に思わず目を奪われる。

 

「……えっと、アマツカさんだっけ?ガンプラに興味があるの?」

 

 横から話しかけられてびっくりしながらその方を向くと、黒髪の男の子が立っていた。彼もミツキと同じチームなのだろうか。

 

「……ちょっとだけね。でもガンダムはあんまり見てないから機体とかは全然わからないけど」

「あはは、僕もそうだよ。でも自分が作ったプラモデルが自由に動くのは凄く楽しかったな。……って、男の子的な感覚かもだけど」

 

 アイノという名前の少年と少し話してみて、男子が苦手なノゾミにしては抵抗なく会話出来たことに少し驚いた。チラリとリンの方を見ると、ショーケース内のガンプラを食い入るように見つめている。隠す気あんの?と突っ込みたくなるが、それよりもノゾミはミツキの作業を眺めることを優先した。

 

 

 

 

 いつもは父親に頼むパーツやツール補充。それを自分で行ってみたら先客に男子の集団がいた。強ばる身体とは裏腹に暖かく迎えられて思わずリンは呆気にとられた。てっきり迷惑に思われるかと思った…と瞬きをしていると彼らはノゾミと同じ学校の生徒らしい。初めて改造機を作るようで、茶髪の少年が必死な顔でピンパイスでパーツに穴を開けている様を見て初々しいしいなと笑みが零れた。

 

 それでも自分がビルダーなのは隠さないととパパのお使いと嘘を付き、いつも買っているものをカゴに入れていく。その最中、ショーケースに入ったジム・クゥエルに目が止まった。ミツキがAGEを組む際に参考にした、ミキシングなどの改造はされてないものの、機体そのままの完成度の高い物だ。

 

 リンはジオニストの父親とは反対に連邦、バイザー派閥だ。なのでザク系よりもジム系に目が止まりやすい。

 

「良…」

 

 なんならポロッと言葉まで零れてしまった。同じビルダーとしてこのジムの完成度はとてつもなく高い。我を忘れて見つめてしまってからハッとなって買い物を継続しようとしたその矢先。

 

「……お、君もバイザーが好きなの?」

「っ!?」

 

 後ろから聞こえた男子の声。びくーんと跳ね上がって暴れ出す心臓抑えながら後ろを向くと、さっきの男子の集まりにいた1人が目を瞬かせていた。

 

「悪い、驚かせちゃったか?」

「い、いやっ、大丈夫だけど…」

 

 女子校の生徒として少し警戒しながら言葉を返すと、彼の視線はリンからジムへと移った。

 

「これ、凄いいい出来だよな」

「……そ、そうなの?私にはわからないけど…?」

「あれ、君ガンダム知ってるんじゃないのか?」

「ぱ、パパが見てたくらいで、そんなには知らないわ。……今日もおつかいで来ただけだし」

 

 本当はこのジムの関節部について小一時間語り出したいのだけど、それを我慢して放った言葉に、彼はくすりと口角を上げた。

 

「……やっぱ、嘘でしょ。ガンダム知らないの」

「は、はぁ!?な、何を根拠に」

 

 看破された。リンのトラウマスイッチが半分ほどONに入り、頭が真っ白になった。そんなリンを他所にカゴの中を指差す。

 

「いやさ、娘にどんだけ塗料頼むんだよ君の父親。それに買ってるパーツがマニアック過ぎだし、こんなのガンダム知らない女子がカゴに入れられる訳ないぞ?」

「………ぅ」

「だから、同志かなって声をかけたんだけど」

 

 リンの頭の中に昔の記憶が過ぎった。ガンダムが好きで好きで、それを広めたくて、小学校の頃に紹介し。

 

 ───認めてくれなかった事を。

 

 

 どうせ、この人も「女子がガンプラやるのは変だ」とか言うのだろう。その為にこれまで必死に隠してきた。それがこんなにことでバレた。

 

 リンはもう、彼の方を見れずに俯きながら、放たれる言葉に耐える準備をするように、唇を噛み締めることしか出来なかった。……のだが。

 

 最後に聞こえた言葉が耳に引っかかった。

 

 

「ど、……同志?」

「ああ。君もジム系派なのかなって」

「………………」

 

 

 リンは嫌悪感どころか、普通に受け入れて話を続けるこの青髪の少年を見て呆然とした。

 

 なぜ、バカにしないのだろうか?言わば、男の子が女の子が良くやる人形遊びをやっているようなものだ。変かそうではないかと問われれば、「変」一択のはず…。

 

「……えっ、変に思わないの?」

「え?」

 

 リンは思わず聞き返していた。

 

「変って?」

「いや、だって女でガンダム好きだなんて…変じゃない?」

「どこが?」

「え?」

「別に、ガンダム好きでいいじゃんって俺は思うけど…」

「……いいの?」

 

 呆然と聞き返したリンに青髪の少年は苦笑した。

 

「いいのって………好き、なんだろ?ならいいじゃん。周りがなんて言ったって、仕方ねぇよ。だって好きなんだから」

「……仕方…ない」

 

 少年が後頭部をかきながら言った言葉が、何故かストンと腑に落ちた気がした。

 

「……その様子だと、気にしてたんだろ?余計なこと言っちゃったかな」

「…っ、ううん。大丈夫。………ほんとに変じゃない?」

「ガンダム好きな女子のこと?全然変じゃないって」

「……クアンタのGNソードVをお湯で反らせてヤスリで研いでても?」

「逆にすげぇと思う」

 

 マジか!と言わんばかりの彼の表情には、驚きこそあれどバカにすると言った感情は伝わってこなかった。リンは思わず胸を抑える。

 

「まぁ、この店はそういう女の子も大歓迎だと思うし、我慢しなくていいんじゃないか?外にそういう場所がひとつあるだけでも違うと思うしさ」

「………そう、かも」

「……な?」

 

 青髪の少年は向こうで改造の面倒を見ていた店主さんを呼ぶと、ショーケースの中のジム・クゥエルを取り出してもらう。

 

「ほら、コレ可動域バケモンなんだよ」

「……うん、………えぇぇ!なにこれっ!関節ごと規格違うやつと交換してる?」

 

 渡されたジムの関節や、デティールまじまじと見ていると、少年が吹き出した。「な、なによ」と顔を向けると彼は笑顔を向けて来た。

 

「いや、着眼点がもう、ね。……君、やっぱり俺ら側だよ」

「う、うるさい」

 

 モリタという名前の店主にガンプラを返すと、残りの買い物を済ませた。買った品物の細さから店主さんにもバレてニコニコの笑顔を向けられる。

 

「リン、買い物は済んだの?」

「うん、何とかね。そっちは?……あの男子なんでしょ?」

「ふぇ!?な、なんの事?」

 

 その表情でバレバレだと笑ったリンは、フラッグとおもしきガンプラを触っている黒髪の男子と話していたさっきの青髪の彼の方を見た。

 

 すると、偶然顔を上げた彼と目が合う。リン的には名前を聞きたかったのだが、ここで聞いたら変な雰囲気になりそうだ。小さく会釈をするとレジ袋を持って入口に踵を返す。

 

「あ、またね。アマツカさん」

「うんっ、委員長も。また学校でね」

 

 店を出たリンの横に、挨拶を済ませたノゾミが並んだ。

 

「リン、ごめんね知り合いに鉢合わせちゃって…」

「別にいいわよ。買いたいものも買えたし」

「それでも、やっぱり男子の目は気になったでしょ?」

「それはノゾミも同じでしょ。……帰ったらあの茶髪の男子のこと色々聞かせて貰おうかな」

「ええっ!?なんで委員長の事がでてくるの!?」

 

 そんなことを話しながら帰路に着くリンの口角は少なからず上がっていた。

 

 

 

 

「……また、行こうかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 改造を初めて1週間後。

 

 

「しゃぁ!出来たァ〜!!」

 

「「おぉ〜」」

 

 達成感によって伸びをしながら椅子の上で身体を反らすミツキ。その机の上には見違えたAGEが置いてあった。

 

「見てよ、これが俺の新しいAGE-1!」

 

 ミツキは最終チェックを終えた、その機体を卓上に置いた。

 トリコロールを基調としながらも新たに二色の蒼の差し色が追加された機体がそこにはあった。

 

「関節はまるっとGNドライブ対応の関節にしたんだな」

「うん。移植もしやすいし、OO系の機体は可動域が広いから」

「このクリアパーツがコンデンサだっけ?綺麗でこれもいいアクセントになってるね!」

「そう!その作業が一番大変だったんだよ、アイノ君!」

 

 今回メインとした関節の可動域の拡張とGN粒子対応機にする、という目的はなんとか形にすることができていた。

 だがこれはホビー用ノコギリによるパーツの分割化と、リーマーを使ったコンデンサを埋め込むためのクリアランス確保といったあまりにも細かい苦行の末の結果であった。

 

「バックパック周り、新規に作ったのか。見た感じ、これがGNドライヴを兼ねてるのか?」

「正解。デュナメス系の機体のパーツを使ってみたんだ」

「背中のスポーツカーのウィングみたいなパーツはソラザキ君の元々の機体にもあったよね。これは何か意図があってのこと?」

「カッコいいから!以上!」

「潔いなオイ」

 

 作業疲れでハイテンションになっているミツキにため息をつきながらも、ユウトは更にAGE-1を凝視した。

 

「デカールまで貼ったのか…修復がより大変になるぞ、これ」

「貼る度に見所が増えていくのが楽しくなっちゃってつい…。でももちろん最初だけだよ、こんなに手をかけるのは。これを毎回やってたら俺の財布も精神も流石に死ぬよ!」

 

 改造したAGE-1の各所に貼られたデカールを指差しながら、ミツキは語る。

 現にデカールを貼り終えた直後ミツキは某団長のように人差し指を立てながら倒れ、コウスケとモリタに介抱されていた。

 

「(カンザキ君の言っていたガンプラ制作で倒れるってのはこのことだったんだね…)」

 

 とまるんじゃねぇぞ。そう告げながら作業中に倒れたミツキを思い返しながら、コウスケは結論付けた。

 

「結構細かく貼ったね、デカール。でも、オープニングモデルならこれくらいでもいいんじゃないかな」

「オープニングモデル?何ですか、それ」

「その名のとおり、その機体の完成してから初めて修復をするまでの姿のことさ。

 言わば機体の誕生日。それを記念するために、ディテールアップして機体を着飾ってやる風習がGPDプレイヤーの中にはあるんだ」

 

 GPDで戦うガンプラは傷つく度に修復が必要だ。その頻度の高さから、以前はあったディテールを見直したり、性能に変化がないパーツは簡略化して修復作業を楽にすることもある。

 そのため、最初に修復を行うまでの間だけでもデカール等を用いて機体の完成度を高めたいという気持ちがプレイヤーたちの中で共通認識となっていた。

 

「そうだ。試運転で傷つく前にこいつの写真を撮っておかないと」

 

 ミツキは鞄からやたらとデカいカメラを取りだした。

 

「お前…なんだこのドムのバズーカみたいなカメラは」

「父さんから借りてきた!新しい相棒の誕生日だからね!」

 

 やたらと長い筒状のレンズを携えたカメラを構えるミツキの姿にユウトはため息をつく。

 真剣な表情でレンズの中の被写体を見つめるその姿はさながら本物のカメラマンのようであった。

 だが──。

 

「おいミツキ、カメラの質はいいがそのままだと──」

 

 静止しようとするユウトだったが時既に遅し。ミツキのカメラから気持ちのいいシャッター音が響いた。

 

「あれ…なんか物足りない気がする」

「えぇ?実物はこんなにカッコいいのに?」

「うん、これなんだけど…」

 

 ミツキは撮影した写真をコウスケに見せる。

 被写体の改造したAGE-1は確かに素組のときとは全くの別物のはずである。だというのに、ミツキが撮った写真のAGE-1はどこか物足りなさがあった。

 

「ちょっと俺にも見せて見ろ」

 

 カメラ片手に唸るミツキとコウスケ。二人の見つめるカメラの画面をユウトも視線を送った。

 そしてすぐに彼は原因に気づいた。

 

「おいおい、正面向いてる状態で撮ったらいくらカメラがよくても意味ないだろ。今回お前が頑張って改造した部分がほとんど隠れちまってるぞ」

「あぁ、だから写真のAGE-1は物足りなく見えたのか」

「まずは改造して見せたい場所を意識してポージングしてみようぜ」

「ポージングか。冷静に考えてみれば、僕のフラッグもちゃんと撮ったことないかも…カンザキ君、コツとかある?」

「素立ちで撮る場合は、機体が静止してるからしっかりと左右対称にするんだ。フロントスカートのズレとか、腰の反り、腕の角度を完全に同じにして斜め前から撮る。

 それと、そのカメラもいいが、スマホのカメラで撮るのもいいぞ。何より障害物の除去から編集まで端末ひとつでいけるからな」

 

 ミツキはユウトの助言のとおり、慎重にAGE-1をディスプレイする。

 そして今度はカメラではなく、スマホのカメラを起動してシャッターを切った。

 

「今度こそ、できたぁぁ!これが俺の専用機だ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「うん、いい写真だね。しっかり改造した部位も伝わってくるよ」

「これなら他人に見られても恥ずかしくない!ネットにアップしてみようかな」

「そんなことしたら全国のライバル共にお前の相棒晒すことになるけど、いいのか?」

「うぅっ…そうだった…」

 

 危ない危ない、とぼやきながらミツキはネットにアップする手を止めた。

 

「撮影も終わったなら、次やることは決まってるだろ?」

 

 ユウトはそう言いながらミツキの背後にあるGPDの筐体を指差した。

 

「そういえばこのAGE-1、機体名は決まってないのか?今までどおりAGE-1のままか?」

「確かに。せっかくだからオリジナルの名前にしたいな。

 GN粒子対応のAGE-1か。AGE-1とOOを合わせてAGE-100みたいな?」

「・・・俺が悪かった。頼むからAGE-1のままでいてくれ」

「そんなに酷い!?」

 

 二人がそんなやりとりをしている中、コウスケはAGE-1の戦い方を思い出す。

 

「キラキラした粒子を纏いながら戦う…そこから取れないかな?確かAGE-1ってその後ろに色んな名前がつく形態があるんでしょ?」

 

 AGE-1にはウェアの換装によって【タイタス】や【スパロー】といった名前が着く。

 それが名付けのヒントでは、とコウスケは睨んだ。

 

「キラキラした粒子か。

 言い換えるなら輝く、か…なら、ルミナスってのはどうだ?」

「ルミナス…ルミナスか。いいね、それ!

 ならこいつは今日からAGE-1 ルミナスだ!」

 

 ミツキは新たな名を冠したその機体を天井に翳した。

 ガンダムAGE-1 ルミナス。後にGPD史に残るその名がここに誕生した。

 

 

 

 

 

 






 カシワギ・リン
幼少期に周りにガンダムを広めようとして失敗。それから周りにガンダム好きな事を隠して来た。その最中ユウトに言われた言葉が胸に引っかかり、また今度モリタ模型店に行ってみようかなと考えている。

 アマツカ・ノゾミ
ガンプラを改造するミツキの姿を初めて見て、思わず目を奪われた。コウスケとも普通に話せて、下心無し会話の心地良さに自分でも驚いている。

 

 今回のガンプラも、星震さんが制作してくださいました。

 星震さんのガンスタ
https://gumpla.jp/author/line-Ud747cf0597289ff879c93b640fad17d9
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