いつのまにか童話をモチーフにした死にゲーの主人公になってた   作:通りすがりの馬鹿

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4話

 

醜く、敵に背を向け土下座をし涙を流して助けを求める姿に一瞬軽蔑した様な顔をされたが俺は気にしない。プライドが何だ、そんな物は社会の荒波にこそぎ落とされた。低姿勢が一番楽だと社会に学ばされたのだ。

 

『何故、武器があるのに戦わないんですか?』

 

「武器なんて無いですよ」

 

無いよね?拳が武器だと言うのなら、それはそうだろうけど。

 

『お前も"栞"を使って仲間を呼んで戦えば良いじゃんって言ってるんですよ。まさか栞持ってないんですか?』

 

栞?

 

「栞持ってないです」

 

オウム返しの如く返すと、また軽蔑した顔を見せられた。そんなに俺は変な事を言ってるのか?そんな事は無いと思うけど。と言うか栞ってなんだ?

 

『……もしかして最初の村長からのお願い聞いてないんですか?それを聞くと栞が貰える筈ですけど』

 

「まず村長と話して無いです」

 

『はぁ……。あーめんどくせー何なのマジで

 

何度目かの軽蔑顔の後、少女は何かを出し宙へと放り投げた。

 

って、多分流れ的に栞で間違い無いとは思う。でも何故投げた?しかも力弱過ぎて、ほぼ足元に落ちてるし。投げたって言うより落としたの方が合ってるな。さて、どうするか。普通に取りに行くとしても、狼をスルーしたらそのまま殺される。かと言って拾わなかったら、何で拾わないんだって言われて殺されるかもだし。

 

待って、状況が変わって無くね?道が増えただけで結局バッドエンドだ。……死にたくねえな。あの感覚は多分慣れないし、慣れたく無い。そしてもう二度と体験したく無い。何か、何か無いか。狼の目を逸らせる何か。脳をフル回転させ、記憶の中で何が使えるものが無いか探していく。

 

"何故、武器があるのに戦わないんですか?"

 

さっき言われた言葉を何故か思い出した。武器、ゲームの世界では仲間を呼び出す栞は登場しなかった。仮説として、掲示板のネタの一つとして囁かれる事もあったがあくまでネタの一つだった。

 

このゲームの主人公の武器と言われると本だ。つまり光の冊子(ライトノベル)。そうか、そう言う事か!

 

理解したと同時に俺は即動く事にした。まだ痛む傷口に片手でそっと触れると血が手にまとわり付いた。そのままゆっくり起き上がる。狼は先程とは違って喉を潤し、冷静になっている。一番の狙いは無防備な背後を狙うだろう。背後から襲えば安全だ。

 

その予想通り、奴は俺が歩くのを見守っている。そして栞を拾おうとしゃがんだ時が狙われるだろう。そう思った俺はしゃがんだふりをして振り向くと傷口から手を離しベチャッと音を立てて狼の視界を塞いだ。

 

《グァァァァ!クソッ、俺の目がぁ!?》

 

そう叫びながら、そこにいる筈の俺を攻撃しようと腕を振り回している。それを横目に見ながら走って、栞を全部拾い集め戻って来ると。

 

《何処だ、血の匂いがするぞォ。何処にいる?出て来い子ヤギちゃ〜ん》

 

フラフラとしながらそう呟いていた狼の背後へとそっと周りこみ、本を掴むと奴の脳天目掛けて振り下ろした。

 

《ア?》

 

さっき、本の角で殴られたのが結構痛かったのを思い出した。それで奴が痛がってる間に仲間を召喚しよう。……姑息な手過ぎて主人公サイドのやる事じゃない様な気がするが、気にするのは辞めだ。

 

これ、何処のページでも良いのかな。適当に開いたページに、栞を挟んでみる。すると、どうやらそれは正しかった様で本は自動的に閉まり光り始めた。

 

「おぉ……」

 

そして俺の手から離れそのまま宙に浮いた。そして、逆さまの状態で開き、光が道となって下へと出来た。それが二回行われた後、そこには赤ずきんと狩人が立っていた。

 

本は勝手にホルダーへと戻って行った。もしかして本に意思でもあるのか?まぁ、そんな事は置いておこう。

 

「まず、一つ。貴方は誰ですか?」

 

『……貴方の予想通りですよ。貴方達流に言えば、神様って奴です。それから、えーっと此処は箱庭ですね』

 

「箱庭?」

 

『ええ。そうです、暇だったんで新たな世界(ゲーム)を作って遊んでいて主人公をどうしようか思っていたら丁度死んでた貴方の魂があったからあの世界に突っ込んだんですよ』

 

そんな都合良く死ぬなよ俺。最悪な神様に目付けられたな、

 

『まあまあ、良いじゃないですかー。貴方はラノベよろしくのご都合主義展開のゲームの世界で無双出来て、私は暇が潰せる。俗に言うWIN-WINって奴でしょー?』

 

うわ、コイツ性格悪っ勝手に魂誘拐して、全部自分の都合なのにまるで俺が望んでいたかの様に……。罪悪感も特に無く、開き直った感じの彼女に少し引いた。まぁ、間違ってはないけどさぁ。

 

確かに男の子だから、異世界で世界最強目指して努力したり、神様から貰ったチート相手に格上と互角以上の戦いをしたり、スローライフを過ごすのもベタだけど良いなとは思う。けどだからって死にゲーの世界は無いって前も言ったじゃん。出会う前に死んだら元も子も無いんだから。

 

「無双も何も死んでるんだけど?そこん所どうなんですかね」

 

『過去は振り返らない方が英雄譚にされやすいですよ〜』

 

「死を振り返るなって言う方がおかしいだろ」

 

何なんだ、この神様。ムカつくわ全体的にふざけてる様にしか見えない。一回殴っても良いよね?

 

『文句あるならワタシと戦いましょう。勝てたら何でもしますよ』

 

「じゃあ、俺が勝ったら腹ペコの狼に四方八方囲まれながら焼き土下座ヨロシク」

 

『ワァタシ〜火強いんですよね〜神様だからっ★』

 

うぜえ、何かキャラも変わってるし。勝った時の事は勝った時に考えよう。

 

「取り敢えず戦うか」

 

『ええ〜やりましょう。せいぜい、ワタシの暇を潰して下さいね〜』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《he》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから先の記憶は無い。思い出そうと断面的な記憶ばかりが蘇ってくる。その大多数が自分の死に姿だった。十を超えたぐらいからは考えるのを辞めたな。結局何回死んだんだろう。

 

『ま、こんなもんかなぁ目も覚めたみたいだしダメならどうせ戻ってくるし良いよね。お待ちかねの復活タイムと行きましょ〜』

 

「え、ちょっと待て。準備も何も……」

 

『逝ってらっしゃ〜い!』

 

最後に映ったのは笑顔で手を振る少女の姿だった。憎たらしいなと思いながら、俺はどうする事も出来ずそのまま意識を手放した。

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