主人公ではないけれど   作:空澄みの鵯

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朗報:タッグフォース新作決定

歓喜しました。喜んで、喜んで、友達とカラオケいって、遊んで喉が枯れて


熱が出ました。


私の場合風邪って基本的に喉から来るのですが、喉が荒れたのがいけなかったのかのど飴程度で済ませていたら何時の間にか風邪を引いておりました。なんてことだ。

ちなみに、お医者さんに聞いて始めて知ったのですが。
鼻水やたんが緑色だと細菌を殺していて、白だと追い出しているのだそうな。

ですので、自身のたんを見てからそれが緑なら喉の細菌を殺すタイプを。そうでないのなら普通に喉に優しいのを買うべきなんだそうです。知らんかった……


第3話

女性と二人で喫茶店。字面だけ見ればデートか何かなのだが、実際に目で見れもらえればわかるがそんな雰囲気は皆無だ。何しろ頼んだコーヒーとケーキを食べながらお互いに質問をぶつけ合っているだけなのだから。

 

この喫茶店は決闘しても良い決闘喫茶(デュエルきっさ)という種類の喫茶店だ。決闘する為にテーブルも二人席にしては広く取られているのだが、長く居ることを前提にしているため非常に回転率は悪い。そのためケーキであれコーヒーであれ割と高価ではあるが需要が途絶えないため、昨今では当然のように存在している。

 

ちなみに喫茶でありながら、同時にカードも販売しているため決闘者にとっては天国のような安息の地と化している。まぁ、費用としてかかる金銭は別としてだが。

 

遊戯王の世界では基本的に一つの種類(カテゴリー)を極める場合が多い。遊戯王の主人公である武藤遊戯は多くの種類を使いこなす決闘王(キング・オブ・デュエリスト)である。あのデッキは可能性の塊ではあるが、担い手を選ぶ王のデッキという種類に分類してもいいだろう。

 

その武藤遊戯のライバルである海馬瀬人のデッキは青眼の白龍という種類になる。エースカードをどこまで上手く扱うか、エースカードをどこまで魅せつけるかに重点を置いている。武藤遊戯もブラック・マジシャンというエースはいるが、海馬瀬人ほどエースを使うイメージはないだろう。

 

まぁ、何が言いたいのかといえばだ。

 

「俺の使ったBK(バーニングナックラー)は【BK】という種類になってるわけだ。確かに全モンスターが戦士族であり、炎族という共通点もあるから派生を作るのも問題ないだろうさ。だけど、最後のカウンター罠のジョルト・カウンターはBKでしか扱えない。お前の使った次元幽閉みたいに汎用性のあるカードではないけど、専用ってだけあって強かったろ?」

 

「同意。あれは次元幽閉だけでなくミラーフォースも砕く。驚異」

 

試合中(バトルフェイズ)に負けるわけには行かないからな。というかミラーフォースも入ってるのか?」

 

こくりと頷いたのを見て思わず苦笑いと疑問が浮かぶ。

 

「激流葬の方が良くないか?バトルフェイズまで持っていくよりも都合がいい場合のが多い気がするが」

 

「激流葬も便利。でも召喚なら奈落で良い。ミラーフォースは相手だけなのが便利」

 

「確かにな。普段刺さらない癖に、あればあるで恐ろしいからなミラーフォース」

 

アンデット族というのは不死性こそ驚異ではあるが、高打点とは言い難いモンスター郡が多い。それでも充分に戦えるし、シンクロではレインが使った様に獣神ヴァルカンなど汎用性もあり対応する手段もある。だが、相手を制限する方法があるのならそのほうが良いだろう。

 

「まぁ、続けるけどさ。BKは戦ってみて分かったろうけど、典型的なビートダウンデッキだ。シンプルに殴って倒す、それだけのデッキ。それこそ相手の妨害を止める為に幾つかの防衛手段はあるけどな。例えばセットしてあったカウンター罠のジョルト・カウンター。最後に手札に来た速攻魔法の禁じられた聖槍。あのタイミングでのヴァルカンは痛かった。それこそ火の粉で死ぬレベルだったぞ」

 

「ヴァルカンは優秀。モンスター効果にはどうやって対応する?」

 

「デッキに入っているのは禁じられた聖杯。相手の打点を上げることになるが効果は無効にできる」

 

「リードブローなら戦闘破壊の心配は少ない。なるほど」

 

「それ以外にはエクシーズ・ブロック。自分フィールドのモンスターが持つエクシーズユニットを取り除くことでモンスターの効果を無効にして破壊できる。まぁ、これもリードブローには非常に都合の良いカードだ」

 

「打点も上がる。すごい」

 

打てば響く、と言えばいいのか。カードの効果は一応説明してはいるが、理解の速度からして殆どのカードの効果は熟知しているようである。知らなかったのはやはりと言うべきか、BKというカテゴリーとエクシーズに関係するカードだ。本当にあまりエクシーズは有名ではないらしい。

 

「夕人」

 

「なんだ?」

 

「どうしてエクシーズにそんなに詳しい?」

 

どうして、ときたか。どう答えればいいのやら。

 

知っているから、としか答えようがない。そもそもZEXALにハマったからこそ前の場所のカードプールには詳しいのであって、その説明をするとなるとどうやって言葉にすればいいのやら。さらに言えばBK自体言葉通りの意味で創造したのであって……説明どうすんだこれ。

 

俺はファンデッキを好んで扱う人種だ。そう自覚しているし、自負しているし、自称している。誰にも負けないガチデッキよりも、輝かしい原作再現を常とするような、そんな戦法を好んで使う。青眼の白龍を使うなら滅びの爆裂疾風弾が、希望皇ホープならダブルアップ・チャンスは必須だと思っている。そういう人間なのだ。

 

だからこそ、今回デュエルアカデミアという場所に行くにあたって自重するのを止めた。今までは勝つことに意義のある場合が基本だったからこそ、中途半端にガチ指向なカエル帝を使っていた。だが、学生生活の殆どを決闘して過ごすのにファンデッキが使えないのは、それこそ俺の命を卸金でガリガリと削るような所業である。

 

「秘密ってことじゃダメか?」

 

「駄目。私、とても困る」

 

そうですか。そう切り捨てられれば良いのだが、自分で言うのも何だがレインとの決闘は楽しかった。今後も是非楽しく決闘したいレベルで。ファンデッキが輝くのは調子が良い時もだが、本当にギリギリのときに信じられないほどに戦略がハマった瞬間だ。それこそ原作再現と言われるようなソレこそが理想。

 

レインは、レイン恵は強い。デッキの構成はガチ寄りであるのと同時に神がかった引きを持っている。初手に神の宣告に奈落の落とし穴。次のセットカードには次元幽閉。強力なカードをしっかりと引けるというのは、それこそデッキ構成だけではなく本人の実力だ。

 

これを幸運と呼ばなくなったのは決闘者の思考回路と言えるだろう。

 

「困るって言ったってなぁ……俺も困るんだが」

 

「困る、とても」

 

「あー、面倒だな。エクシーズに詳しい理由は教えない代わりに俺のデッキ見せてやるよ。それじゃダメか?」

 

「…………妥協する」

 

「随分悩んだな。人によってはキレる反応だぞソレ」

 

苦笑しつつベルトに取り付けられている複数のデッキケースの中からBKデッキを取り出す。デッキというのは決闘者の自身の分身だ。エースカードが魂。その魂を輝かすのがモンスターであり、魔法罠でもあると考えている。そのデッキを見せると言って妥協では、本当に人によっては気分を害するというレベルではなくなる。

 

「ほら」

 

「ありがとう……お礼に私のも」

 

「良いのか?」

 

「夕人なら良い」

 

美少女にそう言われるのは悪い気分ではないがどうもむず痒い。自分でも言ったがデッキというのは自分の分身だ。それを簡単に渡されるというのは、どうしても自分の中の理性や理屈が違和感を訴えるのである。デッキというのはそう簡単に見せるものではないと考えているからなのだが……いや、俺が見せたのは自慢したいからだ。BKの勇姿を見せたい。それだけ。

 

どこかの誰かは言った。『キングのデュエルはエンターテインメントでなければならない』と。ファンデッカーの基本思想はソレに尽きる。キングではないにせよ、エンターテインメント性を重視して動かすのが基本だ。アド損、定石、そんなものを蹴り飛ばし満足するためにカードを引く。故にデッキは秘匿するものであるという意思を持ちながら、対策取られるとかそういった理屈を吹っ飛ばして魅せたくなるのだ。

 

そもそも俺はデッキを複数個持っている。全種類に対して対策など取れるはずもなく、見せるだけなら痛手とは言い難いからこそだ見せられる。そのことを懇切丁寧に説明してやるも。

 

「問題ない」

 

の一点張りである。なんというか、外見は高校生らしいというのに、内面がその年齢に追いついていない印象を受けるのは気のせいだろうか。彼女のデッキを確認していると、ふと気づいたことがある。エクストラデッキ15枚はあるのだが、エクシーズモンスターが一枚もいないのだ。珍しいというよりも、おかしいとすら思える。

 

「あれ、エクシーズモンスターはいないのか?」

 

「いない。持っていないから」

 

「持ってない?」

 

「そう。エクシーズは珍しい。というよりも異常」

 

「というと?」

 

「そもそもエクシーズというものは、つい最近まで存在すら確認されてなかった。しかし、今は確かに存在し利用されていることの違和感に誰も気づいていないことが第一の疑問点。そもそもこの時間軸はシンクロの発展期であり、それ以外の召喚法はアドバンスの他に融合と少数の儀式だけだったはず。時間軸の変更を試みるも失敗。再計算再検索再検討再確認の末、この時間軸においてエクシーズという概念が正しいものとして構築されていることが判明する。これは明らかな異常である。そこで私達はエクシーズモンスターの情報を世界中から集めることとする。その中で観測されるエクシーズモンスターは主にNo.(ナンバーズ)と呼ばれる黒い枠組みに流星らしきものが描かれ、No.幾つという形で数字の描かれているものとなっている。召喚法はこれまでのどの召喚法とも違い、同じレベルのモンスターを揃えエクストラデッキより召喚するというもの。これをエクシーズ召喚といい、またエクシーズ召喚されたモンスターはエクシーズ召喚に使用されたレベルの数値を参考にランクという別の概念となる。そのことからレベルによって効果を変動させる強者の苦痛やレベル制限区域B地区などの魔法カードの効果を無視することができる模様。驚異的であると同時に、ランクという概念はシンクロによる遊星粒子の加速を――――」

 

「待ってくれ。説明を求めたのは俺だがそれはどこまで続くんだ」

 

饒舌に語っていたレインは静止する言葉にピタリと止まる。そして何かを考え込むように虚空を見つめてから、首をかしげるながら一言。

 

「……もう少し?」

 

「……絶対もう少しじゃないだろソレ」

 

噛まずによく言えたな、とでも言えばいいのか。レインの説明は言葉というよりも文章の羅列をそのまま耳朶にぶつけられたようなもので、理解するしないよりも先に脳内でコレは処理しなくてもいいものとして分類されて右から左へと受け流していた。それでも所々の触りだけは拾ったらしく、その単語だけで文章を理解していく。

 

「つまりは、だ。この時間軸ってのが何かは知らないけど、エクシーズってのは本来なら存在しない。にも関わらずNo.というエクシーズモンスターが存在し、流通しているってのは可笑しいってことで良いのか」

 

「少し違う。流通はしていない。あくまでも存在が確認されているというだけ。端的に言えば、カードは拾った、という状態であり売買行為によっては確認されていない」

 

カードは拾った、ねぇ。

 

「ちなみにそのエクシーズカードの落ちている場所には類似性とかないのか?」

 

「今のところは判明していない。家の前に落ちていた場合もあれば、海に漂っていたという場合もある」

 

なるほど。こういう言い方も何ではあるが、やはり俺の創ったカードではなさそうだ。誰かに盗まれたということも今迄無かったし、可能性的にも皆無ではあったが一応聞いておいて良かった。海なんて今生では一度も行ったことないので確信できた。

 

「あれ、そういえば。お前は俺と会ったとき確か俺の個人情報を聞いてきて、それの理由を聞いたときに『禁則事項』みたいなこと言ってなかったか?今のは俺に言っても良い情報だったのかよ」

 

「問題ない。既に報告し許可は取った」

 

一緒に行動している間、デュエルディスクも何も操作した風はなかったんだが。

 

疑問は浮かぶも、気付けなかったというだけかもしれない。そう自分を納得させ、皿の上に残っているケーキのひと切れを口の中へと放り込む。食べていたのはチョコレートケーキなのだが、甘すぎず苦すぎず非常に美味しい。ただ少し重い。チョコレートをしっかりと生地に練りこんであるのだろう。スポンジがふんわりとはせず、ずっしりとした重みを感じる。

 

しかしそれが決して悪いわけではないのだ。チョコレートケーキの生地は確かに重い。ずっしりとしたチョコレートの味が濃く残り、苦手な人なら延髄のあたりにダメージを受けるようなレベルかもしれない。だが、しかしだ。生地の中には細かく砕いたチョコレートチップが存在し、食感にアクセントを作っているのだ。

 

苦手な人には更なる追撃。しかし、俺にとってはご褒美以外の何者でもない。フォークに刺して感じるスポンジの重み、口に含み上部に乗っているチョコレートホイップが自然と溶け出し、噛めばチョコレートチップによる歯ごたえと練りこまれたチョコレートの種類が違うことによる味わい深さ。それを味わい、コーヒーを飲む。

 

うん、落ち着く。

 

「大丈夫?」

 

「んあ、何がさ」

 

ケーキを食べながら幸せに浸っているとレインから声が掛けられ閉じていた目を開く。

 

「表情が……解けていた?蕩けていた?こういう時どういう表現をすればいいのかわからない」

 

「あぁ、そういうことか。別になんてことない。ただ俺が甘いもの、というかチョコレートが好きなだけ。基本、板チョコ齧ってれば幸せだしな。幸せに浸っていると大体心配されるんだが……どういう表情をしているのか気になるような怖いよな」

 

自嘲気味に語りつつ、コーヒーを再び口に含みチョコレートの甘みを苦味で上書きする。濃いチョコレートケーキを食べた後になると、上書きというよりも甘みと苦味が溶けあい風味が非常に豊かになる。それも良いところである。

 

「そんなに美味しい?」

 

「食べるか?」

 

そう言いながらつい、とフォークでケーキをひと切れ刺して相手に向ける。

 

「いいの?」

 

「どうぞ。美味いものは共有してこそだ。楽しいことも美味いものも嬉しいことも共有出来れば最高だろう?不幸だけは分け合いたいわけだが」

 

うっすらとしか覚えていない過去の記憶。しかし、楽しかった出来事や悲しかった出来事は色濃く残っている。常識が決闘に犯されている世界で過ごしていると、過去の世界の記憶は逆に非常識ばかりで違和感しか覚えないようになる。それでも美味しいものというのは、世界を超えても美味しいのだ。だからこそ、幸せな記憶として残る甘いモンは誰とでも共有したくなる。

 

「あーん」

 

素直に口を開ける雛鳥のようなレインの口の中にチョコレートケーキを入れてやる。というか、口小さいなお前。自分が普段口に放り込む分と同じ大きさをとったのだが、どうも大きすぎたらしく口の端にチョコレートの跡。そして膨らんだ頬袋。雛鳥がリスと化した。

 

「もぐ……もぐ?」

 

「あー、食い終わってから話せ」

 

「……」

 

素直に頷くレインは静かに咀嚼をし始めた。その表情が時間が経つにつれて無表情ではあるが、何処となく満足げに見えてきたので俺としても嬉しい限りだ。再びケーキを口に含み味わう。

 

「……あのカップル死ねばいいのに」

 

「ふ、真の決闘者は孤独って奴よ。誰にも理解されず、誰にも共感されず、誰一人として俺のスピードには付いてこれないのさ」

 

「おい、厨二臭いセリフは良いけどよ、まずは涙拭けよ」

 

「信じらんねぇ……同じケーキ食ってるのに、なんでもこんなにしょっぱく感じるんだろう」

 

「おめぇも涙拭けよ……あれ、雨かな。屋外でもねぇってのに」

 

「悔しくねぇ、悔しくねぇぞ!俺は新しいカードパック買ったんだ!だから嬉しいは、ず……」

 

「ど、どうした。固まっちまって……こ、コレは!」

 

「何があったんだ。もう涙で前が見えねぇんだ、教えてくれ」

 

「罠カード無力の証明、だと……この流れでこのカードは酷い、酷すぎる」

 

「あんまりだ……あんまりだよ……」

 

何か聞こえる気がするが無視だ。この店に通うのは皆が皆当然のように決闘者。多少テンションが上がって騒ぎ過ぎてしまうなんてことはザラだし、叫ぶ内容なんて一々気にしていては食事なんてできるわけもない。ましてや決闘中は基本的に効果は自分で説明しながらやるのだ。周囲の声は雑音として聞き流す。決闘者の流儀というものだ。

 

これを突き詰めると『俺ルール』と化すので注意する必要があるのだと昨今の教科書には乗っているのだが、正直暴徒ですら決闘で止めることができる世界で何を今更と思ってしまうのは仕方がないことだろう。というよりも、決闘で拘束できる辺り魂の奥底にまで決闘に逆らえないんだよなぁ、俺たちって。

 

「食べ終わった」

 

「おう、どうだった」

 

「美味しい。また今度機会があれば来ようと思う」

 

「そんときゃ誘え。俺も食いたい」

 

「わかった」

 

基本的に出不精なので誰かに誘ってもらうというのは理由付けとして有難いのだ。

 

「畜生……畜生!自然な流れでデートの約束を!」

 

「涙が赤くなってきた、何だろコレ」

 

「ふ、ふふ。見ろよコレ」

 

「お前のカードパック?こ、これは結束UNITY!これぞ神の宣告だろう……あの男を俺たち全員の決闘で殺せという」

 

「ふふ、やってやろうじゃないか。俺たちの力を合わせよう」

 

何やら不穏な気配が別のテーブルから漂ってきてゾッと背筋が冷える。反射的に周囲を見回すと何故か笑顔で手を組み合う男性集団がソコにいた。真っ白だったであろうショートケーキは何故か血涙によって赤く染まっている。

 

「な、何だアレ」

 

「わからない。不気味」

 

レインの言葉には激しく同意だが、どうも悪意の矛先が此方に向いているようなので何か問題があったのかもしれない。

 

「なんかアイツ等の邪魔しちゃ悪いし移動すっか」

 

「ん」

 

同意を得られたところで立ち上がり、領収書を手に取りレジへと向かう。背後から聞こえる怨嗟の響きを聞き流しながら、そのまま会計を済ませ扉を開けて外へ出る。――――と何故か地平線すら見えないほどの真っ白な空間に立っていた。

 

「……イミワカンナイ」

 

カタコトの言葉が口からこぼれ落ち反射的にレインのいる方向、つまりは背後を振り向くのだがレインが立っていること以外は全く同じ光景が広がっている。思わずゴクリと生唾を飲み込みながら、幾つかの仮設を立てるがそのどれもが馬鹿らしい結論しか生まないのでそのまま放棄。

 

「ここは私達の本拠地」

 

ポツリ、とレインが呟く。

 

白く白く――白しかない世界でレインの琥珀色の瞳がこちらを射抜く。

 

「あなたは不思議」

 

「あなたは不思議で不可思議」

 

「だから許可を取った。あなたに情報を開示する許可を」

 

ポツリ、ポツリ、と雨が地面に降り始める直前のような静かさで語るレインの言葉が何もない空間で確かに響く。

 

「代わりに一つだけ条件が出された」

 

「あなたを招待すること」

 

「ここに招待し、あなたの不思議を見せてあげて欲しい」

 

そこまで語るとピタリと固まった。何も喋らず、何処か虚空を見つめたまま動かない。まるでロボットか何かのような無機質さで人形と見紛うほどだが、僅かに胸が上下するのを見て呼吸をしているのは分かった。

 

だから問う。

 

「誰に見せればいいんだ」

 

強制的に連れてこられた驚きも何もかも飲み干して一言だけ。

 

「彼に」

 

指さされた方向へと視線を向ければ白いフードを被った青年が一人。足音は聞こえなかった。ならばきっと俺がここに来た時と同じように唐突に現れたのだろう。

 

「俺の名前は仲人夕人……お前は?」

 

「俺はプラシド」

 

フードから覗く瞳はギラギラと輝き、獣のような鋭さを孕みながらこちらを睨みつけていた。ゾクゾクと背筋が震える。あぁ、コイツなら俺でも知っている。プラシド。イリアステル三皇帝の一人。シンクロキラーの機皇帝を扱う未来からの使者。

 

納得した。どのシリーズなのかも理解したし、おおよそ相手のデッキも理解した。

 

ならば容赦なくこのデッキを使おう。

 

デュエルディスクを展開し、ベルトに取り付けてあるデッキホルダーからBKではない別のデッキを取り出す。同時にプラシドが剣を腰から抜き放ちそれが中心から半分に分かれエネルギーフィールドが展開される。

 

「見せてみろエクシーズの力とやらを。俺の機皇帝で見極めてやる」

 

「見せてやろうエクシーズの力を。光よりも速い超光速によって生み出される時を越えた力を」

 

楽しく行こう。楽しくなってきたのだから。

 

あぁ、魅せてやる。時を超えてやってきた未来人。時間を支配する最強の竜の力を。

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