主人公ではないけれど   作:空澄みの鵯

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更新した覚えがないのに更新していた。
うん、自分でも何が起きたのか全くわからなかったけど、たぶん書きながら寝ぼけてやった模様。そしてそのミスをご指摘頂いたので色々と修正してみました。

主に修正点はタキオンの効果についてでしたが、それと一緒に別の修正も入れてみました。具体的に上げますと

・銀河眼の時空竜の効果無効化がバトルフェイズ中のみとなっていた
→修正しました。修正にタッグフォースのカードを利用しましたが、主人公は使いませんがプラシド達には使わせてもらいます。機皇帝とか使わないと書けません。

・モンスターの詳細データについて
→これは自分のだけ書いてました。そもそも、相手の効果が基本的にわからないって設定もあったので、良いかなと思ったんですけど逆に考えると効果を書かないで攻撃力だけでも書いたほうがわかりやすいんですよね。効果の説明はキャラクターにやってもらいます。

その他修正したほうがいい、こうした方がいい。
ご意見ありましたらどうぞメッセージなり、感想なりでコメントください。
遊戯王は書くの大変でどうしたらいいのか分かりづらいんですよ。カードの効果を全く書かない人もいれば、全員分書いてモンスターを二体召喚する頃には一話終える人もいましたし……難しいですねぇ、こういうのって。


第4話

「「決闘!」」

 

お互いに宣誓すると同時にデュエルディスクにLP4000が表示され、その後に『先攻』と表示される。今回も先行ときたか。動き方がBKと比べても軽快とは言えないこのデッキでは非常にありがたい。

 

それでもカードを引くまでは油断ならないため、デッキトップからスライドし引きやすくなった五枚を手札として確保する。その手札を軽く眺めてからデッキトップへと指を乗せて気合一閃。

 

「俺の先行だ。ドロー!」

 

デュエルディスクからカードを引き抜き、6枚となった手札を確認する。最高最良、なんて言葉を並べることができる手札ではない。まぁ、この辺は最強決闘者の証(ディスティニー・ドロー)を使ってないのだから、自分のデッキ構築力と運命力に頼るしかない。

 

「だからといって最低最悪というわけでもないのが俺らしい」

 

思わず笑みが浮かぶのは許して欲しい。自身のカードから想像できる限りの手段を脳内で展開しながら、相手の動き方を想定していく。そうして考えていく内にとんでもないことに気づいてしまった。

 

プラシドの扱う機皇帝というカテゴリーは一応OCGに存在している。その中でプラシドがエースとして扱うのは人型の機皇帝である『機皇帝ワイゼル(インフィニティ)』というカードだ。プラシドがシンクロキラーと称する通り、シンクロ召喚したモンスターを装備カードとするほか一ターンに一度魔法カードの発動を無効化することができるという効果を持つ非常に優秀なカードだ。

 

だが、このカードはあくまでOCGなのだ。

 

アニメにおける機皇帝というのは五枚一組みで構成される合体モンスターとでも言うべき存在であり、一枚で構成されるOCG版とは大きく異なっているのだ。本体たる『機皇帝ワイゼル∞』。頭部である『ワイゼルT(トップ)』。光子剣を作り出す腕『ワイゼルA(アタック)』。攻撃を防ぐ盾『ワイゼルG(ガード)』。そして脚部『ワイゼルC(キャリア)』。この五枚によって構成されている。

 

個々のステータスはあまり高くはないが、部位ごとに固有の能力や上位互換を持っており状況に応じた進化を遂げていくという驚異のモンスター。それがアニメ版の機皇帝の真価であり、驚異でもあったはずだ。

 

それに対して一枚で構成されたOCG版。一枚で済むという都合上、非常に扱いやすく手札を圧迫することはない。召喚条件もアニメ版とは異なっており、専用デッキでなくとも活躍できるという汎用性を手に入れたと言っていいだろう。

 

戦略を組む上でその違いがわからないとなると、どこかで大きなミスを仕出かしそうで非常に困るのだ。

 

「どうした?貴様のターンだぞ。それとも何か、何もしないままターンエンドでもするつもりか?」

 

悩みすぎたらしく苛立ち混じりの声をかけられる。反射的に謝罪するでもなくニヤリと笑ってみせてしまうのは、決闘中の俺の癖のようなものである。舐められないように、手札事故をバラさないように。そんなことを考えながらやっていたら、何時の間にか身についていた決闘中だけの癖。

 

「いや、中々いい手札でな。色々と考え込んじまっただけだ」

 

そう端的に言い返すとフンと鼻で笑い先を促され、もう一度だけ手札を眺めてからカードを掴む。

 

「俺はモンスターを裏側守備表示でセットし、更にカードを二枚セット。これでターンエンドだ」

 

「いい手札という割には消極的だな。その程度の腕前ではエクシーズとやらを拝む前にこの勝負が終わりかねないが……まぁいい。それならそれでボロ雑巾のようになった貴様からデッキを奪うまでだ。俺のターン!」

 

リアリストのような発言をしつつも、決闘はするあたりプライドの高さが伺える。アニメの通りとでも言えばいいのか、これならきっと俺の知識とも大きくはズレてないデッキだろう。安心した、というよりもアドバンテージの差を確信できた。

 

 

――――――――――――――――――

仲人夕人

手札 3

モンスター 1

魔法罠 2

――――――――――――――――――

 

 

「ふん、貴様に絶望を教えてやろう。俺はワイズ・コアを召喚!」

 

――――――――――――――――――

・ワイズ・コア

レベル1 攻撃力0

――――――――――――――――――

 

ドローしたカードを見た瞬間、まるで勝敗は決したとでも言わんばかりに獰猛に嗤い、カードをそのままデュエルディスクに叩きつける。俺の扱っているデュエルディスクと違い、プラシドのデュエルディスクは剣が半分に割れそこから緑色の光が放出されることで形成された近未来的なデュエルディスクだ。あんな雑な扱いをしてもきっと問題ないのだろう。そんなことを考えながらフィールドに現れた卵のような機械を睨みつける。

 

キュゥウイン!と音を立てながら上下に開いた中心から青い球体の光源がこちらを覗く。割ってはならぬ絶望の卵。プラシドのエースカードの心臓と言えるもの。

 

「レベル1の攻撃力0のモンスターか。嫌な雰囲気あるよなぁ」

 

「その通りだ。勘は良いらしいが既に遅い。俺は手札より魔法カードサンダー・クラッシュを発動!」

 

「そんなマイナーなカード使うか普通!?」

 

思わずプラシドの発動したカードに突っ込みを入れるが、確かに相性は決して悪くはないカードである。舌打ちするのと殆ど同時だったろう。天より落ちる雷は俺のフィールではなくプラシドのフィールドを蹂躙し、当然雷の被害にあったワイズ・コアは破壊されその破片は此方へ容赦なく襲いかかってくる。

 

「サンダー・クラッシュは自分フィールドのモンスターを全て破壊し、その破壊したモンスターの数×300ポイントのダメージを与えるカード。サンダー・クラッシュの効果を知ってるとは驚きだが、ダメージを防ぐカードはセットしてあったかな?」

 

「ねぇよ畜生!ぐぅうううう!」

 

LP4000→3700

 

300という地味すぎるダメージではあるが、LP4000の世界では存外バカにできないダメージとなる。それにまだサンダー・クラッシュによって起こされた結果が現れていないのだ。

 

「ほう?何かが起こると確信している目だ。本当に良い勘をしているが……既に貴様の運命は決まっている!俺はワイズ・コアの効果を発動!このカードがカードの効果によって破壊されたとき、自分フィールドのモンスター全てを破壊し手札・墓地・デッキから機皇帝ワイゼル∞・ワイゼルT・ワイゼルA・ワイゼルG・ワイゼルCを特殊召喚する!」

 

サンダー・クラッシュによって破壊されたワイズ・コアの中心にあった青い輝きがデッキへと集中していく。その輝きに導かれるようにデッキより五枚のカードが空中へと舞い上がる。プラシドは空中を舞う五枚のカードを切り裂くようにデュエルディスクを振り抜く。

 

「これが俺の絶望だ」

 

緑色の光子に絡め取られるように展開された五枚のカードがフィールドに出現する。頭部一枚、胸部一枚、腕部二枚、脚部一枚。胸部パーツを中心として其々のパーツが合体していく。胸部パーツの内側にある青い球体の輝きにクロスする形で同色のリングが輝き、頭部パーツには幾何学模様が赤く点灯する。

 

これが機皇帝ワイゼル∞。一部の人に遊戯王5D'sをロボットアニメと言わしめた機械族モンスター。機皇帝の表す天地人の内ワイズ(Wise)である人間を示す通り、人型を模したシンクロキラー。

 

――――――――――――――――――

・機皇帝ワイゼル∞

レベル1 攻撃力0

・ワイゼルT

レベル1 攻撃力500

・ワイゼルA

レベル1 攻撃力1200

・ワイゼルG

レベル1 守備力1200

ワイゼルC

レベル1 攻撃力800

――――――――――――――――――

 

「一気に五体の特殊召喚の合体ロボ……ロマンだなぁ」

 

ファンデッカーとして思わず呟いてしまうが、ワイゼルの起動音にかき消されプラシドには届かなかったようでプラシドは瞳に爛々とした輝きを宿す。

 

「これが俺の絶望。この世界に蔓延るシンクロに反逆する最強のカードだ!機皇帝ワイゼル∞の攻撃力は0。しかし、機皇帝ワイゼル∞の攻撃力・守備力は自分フィールドに存在する『ワイゼル』『スキエル』『グランエル』と名のついたカードの攻撃力の合計となる。よってこのカードの攻撃力はワイゼルTの500・ワイゼルAの1200・ワイゼルGの0・ワイゼルCの800の合計2500となる!」

 

――――――――――――――――――

機皇帝ワイゼル∞

攻撃力0→2500

――――――――――――――――――

 

「いいねぇ、痺れるねぇ……来いよプラシド!エースカードなんだろ?実力を見せてみろよ!」

 

「まだだ。俺はさらにフィールドのワイゼルAをリリースすることでワイゼルA3を特殊召喚!」

 

ワイゼル∞の左腕部に展開された亜空間の亀裂へとワイゼルAが収納され、再びその亜空間より出現したワイゼルAはブレード部分も含め強化され緑色の燐光を纏っていた。

 

「ワイゼルA3の攻撃力は1600。よって機皇帝ワイゼル∞の攻撃力は2900となり、さらにワイゼルA3は機皇帝と名の付いたモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、貫通ダメージを与えることができる。行けワイゼル∞よ!未知なるエクシーズなどさせる間もなく蹴散らしてしまえ!ステンレス・スチール・スラッシュ!」

 

――――――――――――――――――

・ワイゼルA3

レベル3 攻撃力1600

・機皇帝ワイゼル∞

攻撃力2500→2900

――――――――――――――――――

 

グォンという音と共に頭部パーツが赤く発光し、空中を滑るように此方へと接近してくる。腕部パーツであるワイゼルAに光剣が現れ、セットされたモンスターへと勢いよく振り抜かれる。

 

「セットされたモンスターはシャインエンジェルだ」

 

現れたのはギリシャ風の衣装を身にまとった金色の髪と四枚の羽根を持った天使。非常に優秀な効果を持つリクルーターなのだが、今は相手が悪すぎる。

 

――――――――――――――――――

効果モンスター

星4/光属性/天使族/攻1400/守 800

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の光属性モンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚できる。

――――――――――――――――――

 

「貴様のモンスターの守備力は800。機皇帝ワイゼル∞の攻撃力との差の2100ダメージ受けてもらうぞ!」

 

「シャレんならね――ぐぅううぅう!?」

 

LP3700→1600

 

「機皇帝ワイゼル∞の攻撃は終了したが、まだ他のパーツの攻撃が残っている。ワイゼルA3の攻撃で終わりだ!」

 

「ハッ!確かにそれが通ればジャストキルだ。だが、甘いぜ!戦闘によって破壊されたシャインエンジェルの効果を発動!デッキから攻撃力1500以下の光属性モンスター一体を特殊召喚することができる!現れよ防覇龍ヘリオスフィア!」

 

プラシドに倣うようにデッキから取り出しやすいように引き出されたカードを腕を振り抜くことで空中に飛ばし、そのまま宙を舞うカードをディスクへとセットする。

 

現れたのはイチョウ型の紫色の翼を持つ龍。鳴き声こそ確かに龍ではあるが、シャインエンジェルで呼び出せたことからも分かる通り攻撃力は1500以下である。というよりも、コイツの攻撃力は――――

 

「貴様ふざけているのか。攻撃力0のモンスターを攻撃表示だと?」

 

そう0なのだ。言い方は悪いがヘリオスフィアは基本的に肉壁にはならない。

 

「攻撃力0をバカにできるのかよ?お前のキーカードのワイズ・コアだって攻撃力0だっただろうが。大事なのはコイツが今このフィールドに立っているってことだ」

 

「ほざいていろ。俺はワイゼルA3で防覇龍ヘリオスフィアを攻撃!」

 

「ところが残念!防覇龍ヘリオスフィアの効果発動!」

 

「なんだと!?」

 

「お前の手札が四枚以下でこのカード以外のモンスターが自分フィールドに存在しない場合、お前は攻撃宣言をすることができない。つまり、攻撃宣言したところで無意味だ。やれヘリオスフィア」

 

ヘリオスフィアの紫色の翼から放たれた輝きが攻撃しようとしていたワイゼルに直撃する瞬間、プラシドの手札から光の奔流がワイゼルを包み込んだ。しかしジリジリとワイゼルを包み込む輝きは削られ、結局ヘリオスフィアの放つ輝きが衝突するとワイゼルはピクリとも動かなくなった。

 

――――――――――――――――――

効果モンスター

星4/光属性/ドラゴン族/攻0/守1900

相手の手札が4枚以下で自分フィールド上のモンスターがこのカードのみの場合、相手は攻撃宣言をする事ができない。

また、1ターンに1度、自分フィールド上にドラゴン族・レベル8モンスターが存在する場合に発動できる。

このカードのレベルをエンドフェイズ時まで8にする。

――――――――――――――――――

 

「お前は手札六枚からワイズ・コアでマイナス一枚。サンダー・クラッシュで二枚。さらにワイゼルA3で三枚。つまりお前の手札が三枚の今ヘリオスフィアを超えたければ、手札を補充することだな」

 

「小賢しい真似を」

 

舌打ちするプラシドだが、自分の有利を自覚しているのだろう。直ぐに冷静になり、カードを一枚伏せてからターンエンドの宣言をする。

 

――――――――――――――――――

プラシド

手札2

モンスター

・機皇帝ワイゼル∞

・ワイゼルT

・ワイゼルA3

・ワイゼルG

・ワイゼルC

魔法罠1

――――――――――――――――――

 

「カードは伏せていいのか。コイツを越えられなくなるぜ?」

 

「その手には乗らん。未知の決闘者に何の準備もしないほど、この俺は馬鹿ではない。それに貴様のそのモンスターを超える手段は何も手札を増やすだけではあるまい」

 

その通りだ。防覇龍ヘリオスフィアは攻撃宣言をさせないだけであって、『月の書』で裏側守備表示にされたり『禁じられた聖杯』で効果を無効にされてしまえば手札の枚数なんて関係ない。

 

あぁしかし、随分と上から目線で言ってくれる。まぁ確かに今現在の俺の状況は決していいものではないだろう。だが負ける気が全くしないのもまた事実。何しろ相手のカードの効果を知っていて、フィールドには防覇龍がいて、LPは削りきられていない。ならば何処に負ける状況があるというのだ。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

いいね、いいね、最高だね。

 

「プラシド」

 

「なんだ。サレンダーでもするのか」

 

「いや、ご期待に添えそうだと思ってな――相手のフィールドに攻撃力2000以上のモンスターが存在するとき特殊召喚することができる。限界龍シュヴァルツシルトを特殊召喚!」

 

現れたのは複眼を持つ錆色の龍。体を折り曲げるその姿は正面から見れば∞のように見えるだろう。

 

――――――――――――――――――

効果モンスター

星8/闇属性/ドラゴン族/攻2000/守0

相手フィールド上に攻撃力2000以上のモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

――――――――――――――――――

 

「攻撃力2000のモンスター程度で何ができる」

 

プラシドの言葉はもっともに思えるだろう。確かアニメで見た限りではワイゼルGには自分フィールド上のモンスターが攻撃対象となったとき、攻撃対象を自分へと変更することができたはずだ。それに限界龍シュヴァルツシルトがフィールドにいる以上、防覇龍ヘリオスフィアの効果を使うことはできない。だが、ドラゴンの結束は仲間が居てこそだ。

 

「防覇龍ヘリオスフィアにはもう一つの効果を発動!自分フィールドにドラゴン族・レベル8モンスターが存在する場合にこのカードのレベルをエンドフェイズ時まで8にすることができる。昇華せよヘリオスフィア!」

 

防覇龍が限界龍を巻き込むように周囲を旋回し、自らの格を限界龍のレベルへと近づけていく。

 

「レベル8モンスターが二体……そうか来るのか!」

 

「魅せてやろう!光速を越えたその先、相対性理論すら超越し時を遡るその力を!俺はレベル8の防覇龍ヘリオスフィアと限界龍シュヴァルツシルトをオーバーレイ!二体でオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

二体のドラゴンが咆吼し天へと交差しながら昇っていく。その先にあるブラックホールのような渦巻きへと競うように入り込み、一瞬の静寂の後に光が溢れ出す。それもBKリードブローの時とは比べ物にならないほどに、深く重く感じる輝きだ。それも一度ではなく断続的にその輝きが続き、光が吹き出すたびにデュエルディスクから黒いモヤが地を這うように広がっていく。

 

「何だ……この光と霧は」

 

「なぁ、プラシド。タキオンって知ってるか?」

 

「タキオン?」

 

「そう、タキオンだ。光速よりも速い超光速で時間を逆行するとされている仮想粒子だ。このデッキのエースはそのタキオンを冠する最強の龍と知れ」

 

地面を這うモヤが光に誘われるように天空に出現していた渦巻きへと吸収されていく。その瞬間構成されていたオーバーレイ・ネットワークが巨大化し一際大きな輝きを放つ。

 

「エクシーズ召喚!宇宙を貫く雄叫びよ、遥かなる時をさかのぼり銀河の源よりよみがえれ!顕現せよ、そして我を勝利へと導け!No.(ナンバーズ)107銀河眼(ギャラクシーアイズ)時空竜(タキオンドラゴン)!!」

 

デュエルディスクが燃えるような熱を持ち、装備している部分が炙られるような痛みを訴えるがそれ以上の興奮が痛みを完全に押さえ込む。頬の歪みが抑えられない。黒い光と共に落ちてくるその姿を目が離さない。

 

光の中から落ちてくる赤と青の宝石の埋め込まれた漆黒の四角錐が、封を解かれるように展開されていく。精巧な機械仕掛けのように展開されていく四角錐は、パーツが動き姿を変える度に以上とも言える存在感を醸し出し眼を離さない。そうして完全に開かれたとき、そこには龍がいた。

 

宇宙の闇のように底知れぬ黒を讃えるかのような漆黒の龍。混沌より生まれた枠外の力。

 

「なんだ……これは」

 

「No.107銀河眼の時空竜。通常1から100まで存在するナンバーズとは誕生の地が異なる枠外のモンスター。瞳に銀河を宿す最強の龍だ」

 

通称オーバーハンドレット・ナンバーズ。このデッキを創造した時からは所持していたものの実際に召喚するのは初となるナンバーズでもある。どうもZEXALのドン・サウザンドによって創造されたカード類は創造した時にも感じたが、デュエルディスクを粉砕するようなエネルギーを発揮するらしくデュエルディスクが尋常ではない熱を放っている。

 

だがそれだけの価値はあるし、そもそもカードを創造するときには痛みを伴う。今更な痛みとも言えるし、痛みを堪えてでも召喚する価値のあるカードだという喜びもある。あぁ、なら何の問題もない。

 

「あぁ、最っ高に楽しくなってきたなぁオイ!」

 

――――――――――――――――――

エクシーズ・効果モンスター

ランク8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

レベル8モンスター×2

自分のバトルフェイズ開始時に1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

このカード以外のフィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターの効果は無効化され、その攻撃力・守備力は元々の数値になる。

この効果を適用したターンのバトルフェイズ中に相手のカードの効果が発動する度に、このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで1000ポイントアップし、このターン、このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

――――――――――――――――――

 

「攻撃力3000だと!?」

 

「驚いているところ悪いが、コイツの恐ろしさは打点だけではないということを教えてやる!俺はバトルフェイズへと移行すると同時に銀河眼の時空竜のオーバーレイ・ユニットを一つ使うことで効果を発動する!」

 

衛星のように巡るオーバーレイ・ユニットの輝きを牙で噛み砕くことで効果を発動する。この場に出現した時の光景をそのまま逆再生するかのように、全身を折りたたみ再び四角錐へと全身を変換する。

 

「時を遡り再びこの場に転生せよ、タキオン・トランスミグレイション!」

 

宣言と共に四角錐の封は解かれ、再びその姿をフィールドに顕現させた。

 

トランスミグレイション(転生)か。フン、ずいぶんと大仰な名前だが、見たところ攻撃力が上がったわけでもなさそうだが?」

 

「そうだな。この効果を使ったとき、たしかに攻撃力を上げる方法はあるが……それ以上に今の転生には大きな意味がある」

 

「意味だと?」

 

「銀河眼の時空竜は時空を超越するドラゴンだ。誕生するのは銀河の源であり、この場に顕現するには時を超える必要がある。オーバーレイ・ネットワークによって呼び出されるわけではなく、今この瞬間に再び生まれ落ちたタキオンドラゴンはフィールド全体に大きな影響を与える」

 

ハッとしたように周囲を見渡すプラシドだが、気づくのが遅すぎだと笑ってしまう。

 

「馬鹿な……機皇帝の合体が解けているだと!?」

 

「タキオンの転生の場に居合わせたんだ。如何なるモンスターであったとしても、このフィールドに立つモンスターは時の流れに置き去りにされ効果を発動することはできない。とはいえ、時の流れによって生まれた歪みが適応されるのはこのバトルフェイズに立っていた者達だけだろう。時間の流れは正されるもので、この時間よりも後に召喚されたモンスター達は転生の余波を受けてないのだから当然ではあるが、今はこれで充分だ」

 

そう今はそれで充分なのだ。機皇帝の効果は無効化されている限り、機皇帝とは言えど合体前ならば弱いパーツの集まりでしかないのだから。

 

「フィールドに存在するモンスターカードの効果が無効になった今!機皇帝ワイゼル∞は全てのパーツの総合攻撃力を得ることはできない。つまり今のワイゼルの攻撃力は0だ!」

 

――――――――――――――――――

機皇帝ワイゼル∞

攻撃力2900→0

――――――――――――――――――

 

「さぁ、狩らせてもらうぞ!銀河眼の時空竜で機皇帝ワイゼル∞に攻撃――――殲滅のタキオン・スパイラル!!」

 

「クソ……がぁあぁああああああああああああああああああああ?!」

 

LP4000→1000

 

良いダメージだ。これでお互いにデットラインに入ったと言っていいだろう。

 

機皇帝ワイゼル∞は五体のモンスターで構成された合体モンスター。プラシドがやったようにパーツを交換し、上位互換へと変化させることで進化していくモンスターだ。覚えている限りではワイゼルTの上位互換が魔法・罠を無効にし、ワイゼルAの上位互換が貫通効果を持ち、ワイゼルGの上位互換が攻撃対象を自らに移し更には一度の戦闘破壊耐性を持っていたはず。

 

全てのパーツが換装されたとき、魔法・罠を一度無効にし貫通効果を持ちながら戦闘破壊耐性すら持つ。驚異というよりも、既に倒すことを諦めたくなるレベルのモンスターだ。手札がよければ何とかなるかもしれないが、さらにここに伏せカードでもあれば間違いなくフィールドは完全に支配されるだろう。

 

「ぐぁ……畜生め、今のは効いたぞエクシーズ使い」

 

大ダメージによってふらつくプラシドは俯いており表情は伺えない。だが消して愉快な表情ではないことは想像に難くない。

 

「ご期待に答えられたようで何よりだ。俺はバトルフェイズを終了し、この瞬間時空の歪みは正される」

 

知らず知らずの内に肌で感じていた違和感が引いていくのを感じる。タキオンドラゴンの出現に眼を奪われていたせいで気が付いていなかったが、どうやら空間全体に歪みが浸透してたらしい。その違和感が引いていくと同時にプラシドは呻くように言う。

 

「……通常ならば機皇帝ワイゼル∞が存在しないため、全身を構成するパーツは合体することは出来ずそのまま自壊する。だが、貴様のタキオンの歪みの所為だろう。こいつらは自壊するどころか、まるで動かないというザマだ。ならばこの俺が引導を与えてやろうじゃないか。罠カード発動、ハイレート・ドロー!このカードは自分フィールドのモンスターを全て破壊し、その後墓地に送られた機械族モンスターカード一体につき一枚ドローする!」

 

「ふざけんな!なんだそのぶっ壊れ!?」

 

胴体を失ったまま地に落ちていた手足は、まるで壊れたことを今思い出したかのように爆発し壊れていく。そうして壊れたパーツ達から青い光球が浮かび上がり、プラシドのデッキへと集う。破壊されたパーツと同数、つまりその総数から四枚のドローとなる。

 

少なくともOCG環境にはなかったカードのはずだ。ボヤけた記憶の中でアポリア辺りが使っていた気がしないでもないが、機皇帝と相性が良すぎるカードに思わず舌打ちしたくなる。だが、幸いにもフィールドにはワイズ・コアはないので復活はしない。そんな風に考えながら爆発するその姿を眺めているとき違和感に気づく。破壊されたはずのワイゼルのパーツ達が墓地に送られず、そのまま浮遊しているではないか。

 

「どういう……ことだ」

 

思わず呟いた一言に反応するように俯いていたプラシドは顔を上げる。

 

「俺をここまで追い詰めたことは褒めてやろう。だがな、この時間軸においてエクシーズという未観測の力が確認された時から、俺たちイリアステルはその先に行くために行動してきたのだ。例えばこんな風にな!」

 

プラシドが手札を一枚引き抜き、それをデュエルディスクにセットすると浮遊していたパーツが輝きだし姿を変える。

 

「愛すべき者を失った絶望。その失意を知らぬ愚か者どもめ!見るがいい我が絶望は砕けえぬ!再起動せよ、機皇帝ワイゼル∞!!」

 

現れたのは機皇帝ワイゼル∞。

 

合体するのではなく、たった一機。既に完成された状態で現れたその姿は合体する以前よりも拡張性こそ削られたものの、完成度では比べ物にならないほどに高められている。一枚で成り立つ機皇帝ワイゼル∞がそこに立っていた。

 

――――――――――――――――――

機皇帝ワイゼル∞

レベル1 攻撃力2500

――――――――――――――――――

 

「複数枚の機皇帝だけでなく、俺達は研究の末にたった一枚で完成体とほぼ同等の能力を持った機皇帝の製作に成功している。ここからが本当の勝負だエクシーズ使い……いや、仲人夕人!」

 

「は、はは……いいね、いいね、良いぞ!楽しくなってきたとこなんだ!こうでなくっちゃな決闘ってのはさぁ!」

 

興奮し叫びながらグルグルと回転する頭の中で次の手を考え続ける。まだ、まだ、まだ、足りない。きっと足りない。勝つための流れを考えなくてはいけない。脅迫されるように必死に考えながら、口元が歪むのが抑えられない。

 

「俺はカードを一枚セットしてターンエンドだ。来いよプラシド、超えられるなら超えてみろ!時空を制するこのドラゴンを!」

 

――――――――――――――――――

仲人夕人

手札 2

モンスター

・銀河眼の時空竜

魔法罠 3

――――――――――――――――――

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