えぇ、もうね。最近忙しすぎて休みもなく、いろいろやってたら、諦めそうになってました。でも、決闘は好き。もうすぐ新作でる。なら書かなきゃ、と使命感で書いた。
ふふ、次はいつになるかなぁ……楽しんでくれれば幸い!
勝つべきか、勝たないべきか。それが決闘だ。
そんなフレーズを思いつくも、直ぐにそれがかの有名なハムレットの一文だと気づいた。生きるべきか、死ぬべきか。それが問題だ。……決闘脳の前では悲劇ですら喜劇とかし、生死の意味を問いかける哲学でさえも決闘と化す。いや、生きるか死ぬかを、平然と体現する決闘者にとってみたら当然のことなのかもしれない。
とか、なんとか。適当な言葉が脳内で浮かんでは消えてを繰り返す。それくらいにゴチャゴチャとした、それでいて良い感じの回転速度を持つ脳内が心地いい。自分のフィールドに立つタキオンの力強さを感じながら、脳内麻薬の分泌に溺れながら、ついでと言わんばかりに目の前の男を睨みつけるように観察する。
イリアステル絶望の三皇帝の一人プラシド。詳細こそ覚えてないが、彼が機皇帝ワイゼル∞を召喚するときの口上からして『愛すべき者を失った絶望』を元に作られた機械人間だったはず。エクシーズという相手からすれば意味不明な召喚方法に怯む事なく勝負を挑み、尚且つエースカードが破壊されたターンの内に復活させるという腕には驚かされる。
罠カードのカードパワーが強く、引きも上々であったレインは最高に楽しい決闘ができた。
だが、プラシドの扱うカードは先ほどのハイレート・ドローはともかくとして、サンダー・クラッシュは非常に扱いにくいカードだし、機皇帝とて手札で腐る可能性も低くはない。それを動かすだけの、決闘者としての実力があるのは間違いない。
打点こそタキオンよりも低いが、恐らくはドローしたカードによって打開する手段は既に整っているだろう。
「だからこそ、タキオンが強く輝く」
ニヤリ、と笑みを浮かべながらそう呟くと同時にプラシドのドロー宣言が成された。これで手札が六枚、モンスターは機皇帝ワイゼル∞のみ、セットされた魔法罠は無し。まぁ、決闘者なら手札六枚あれば、基本的になんでもできるだろう。特に起死回生の場面では、馬鹿みたいに良いカードが来たりするもんだし。
「絶望を教えてやる。永続魔法発動!一族の結束!墓地のモンスターの種族が統一されている場合、フィールドの同種族のモンスターの攻撃力は800ポイントアップする」
ATK2500→3300
やはり、あっさりと
「そのドラゴンは驚異に値する。それでも勝つのは俺だ!魔法カード、アイアンコールを発動!自分フィールド上に機械族モンスターが存在する場合に発動でき、墓地のレベル4以下の機械族モンスター1体を選択して特殊召喚する。俺はワイゼルTを特殊召喚。本来ならばワイゼルを構成するパーツは本体たる機皇帝ワイゼル∞が存在しない場合、自壊するのが道理となっている。しかし、一枚のカードによる完成体である機皇帝ワイゼル∞が存在し、尚且つアイアンコールで特殊召喚されたモンスターの効果は無効になっているため、何の問題もない」
「デメリットが無いみたいに言ってるとこ悪いが、アイアンコールで特殊召喚されたモンスターはターンエンド時に破壊される。長々と説明してくれて悪いが、それくらいは知っている」
「フン、やはり知っていたか。……貴様は可笑しく、違和感の塊だと言っていいだろう。アイアンコールは最新の技術によって作成された、機械族専用の魔法カード。その効果を知るだけではなく、未知のエクシーズを使いこなす技量。常識的なのは外見だけの、中身はびっくり箱のような男だ」
ひどい言い草である。
言いたいことが分からない訳でもないが、此方からしてみればハイレート・ドローも大概なカードだと思うし、アイアンコールを最新の技術とやらで作成する辺りはどうなっているんだと言いたい。とはいえ、自力でカードを創造できる俺が言えた義理ではない。
「だからこそ、その深淵を見せてもらうぞ。俺はフィールドのワイゼルTをリリースし、手札よりワイゼルT3を特殊召喚!このカードは他のパーツ同様、ワイゼル∞が存在しない場合は自壊する。そして更に魔法カード、団結の力を発動!機皇帝ワイゼル∞に装備する。団結の力は自分フィールドのモンスターの数×800ポイント、攻撃力・守備力が上昇する。今俺のフィールドには機皇帝ワイゼル∞とワイゼルT3が存在するため、1600ポイント上昇する!その力、機皇帝に収束せよ!コンバージェンス・フォース!」
ATK3300→4900
……ふむ、冗談にならないなコレ。
ワイズ・コアが墓地にあることで、一族の結束の効果が発動し攻撃力が800ポイントアップ。全機の攻撃力が800上昇することによって、本体の攻撃力は全てのパーツ合計値になるのだから800×5によって4000ポイント上昇する。つまりこの時点で本体の攻撃力は2500+4000で6500。
さらに団結の力は自分フィールド上のモンスターの数×800ポイントの上昇。つまりこれも一族の結束と同様に4000ポイントの上昇になる。6500+4000によって10500となる。銀河眼の時空竜の攻撃力3000が可愛く見えるどころか、殆ど無力と言っていいレベルにまで落とされる。
これだけの超火力を見せつけられては、ジャック・アトラスですらパワー捨てていたのではないだろうか。攻撃力五桁というのはそういう次元だと思うのだが、それでも折れないからでこそ主人公チームなのだろう。
「まぁ、決闘は楽しさとロマン追求こそが華だよな。火力は一番分かりやすいロマンだ」
「ふん!決闘にロマンを追求するのか?とんだロマンチストだな。俺はそんな理論は認めん。決闘は勝利こそが全てだ」
シンクロ世界でシンクロ・キラーを使うやつが言うと、その言葉も重みが違うな。
「ハッ!勝利こそが全てとか、せめて俺に勝ってからにしろよ」
「言われるまでもない!バトルフェイズに移行するぞ!俺は機皇帝ワイゼル∞で貴様の銀河眼の時空竜に攻撃!」
「殺ったと思ったか?あめェよ!罠発動!聖なるバリア─ミラーフォース─!」
――――――――――――――――――
通常罠
(1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊する。
――――――――――――――――――
「このカードの効果により、攻撃表示のモンスターである機皇帝ワイゼル∞とワイゼルT3は破壊される!」
「洒落臭いわ!機皇帝の前では全てが無意味だ、塵と同じだ!ワイゼルT3の効果発動!魔法・罠の発動を1ターンに1度だけ無効にする!」
接近する機皇帝の行先を阻むように光り輝くバリアが展開される。それは攻撃をそのまま反射し、攻撃しようとする者全てに降りかかる裁きの力。しかし接触する瞬間、副砲のように肩に装着されていたワイゼルT3から放たれた一条の光線によってバリアは効果を成すよりも早く崩壊する。
このまま喰らえばATK4900-3000で1900ダメージ。つまりは俺のライフポイント1600を超え、敗北となるわけだが早々に負けるわけにはいかない。プラシドに負けず劣らずの凶悪な笑みを浮かべながら、セットされているカードを更に起動する。
「まさかコレで終わりだとは思ってねぇだろ!速攻魔法発動、禁じられた聖典」
――――――――――――――――――
速攻魔法
お互いのモンスターが戦闘を行うダメージ計算時に発動できる。
ダメージステップ終了時まで、このカード以外のフィールド上のカードの効果は無効化され、その戦闘のダメージ計算は元々の攻撃力・守備力で行う。
――――――――――――――――――
「このカードの効果により、機皇帝の効果及び、団結の力も一族の結束も無効となる。つまりは、攻撃力3000と2500の勝負に逆戻りってことだ!」
「洒落臭いわ!機皇帝ワイゼル∞の効果発動!1ターンに1度、魔法カードの発動を無効にする。その目障りな聖典を切り捨てろワイゼル!」
聖典の発動と同時にフィールドに現れた女性は、手に持つ聖典を開き何かを願うように目を閉じる。直後、フィールドを覆い尽くすように聖典のページが乱舞し、ただでさえ純白のみだった世界がそれこそ神話の再現のような重みある空気をまとい始める。しかし、その空間を未来の兵器は容易く切り裂き、竜をねじ伏せようと更に加速する。
「クハハ!それすらも折込積みってなぁ!手札よりカウンター罠発動!」
「ここに来て手札からのカウンター罠だと!?」
「カウンター罠、タキオン・トランスミグレイション!このカードは自分フィールド上に銀河眼の時空竜が存在する場合、手札から発動することが出来る!」
「トランスミグレイション……忌々しい、再び転生するというのか!」
プラシドの怒号に答えるように、タキオンは大きく翼を広げた後に、全身を折りたたみ再び四角錐と化す。そして輝きに包まれた後、四角錐は展開され先ほどと何ら変わりない姿の銀河眼の時空竜が現れた。
「オーバーレイ・ユニットを使わないこの転生は、フィールド上のモンスターの効果こそ無効にし続けることはない。だが、このカードの発動時に積まれていたチェーン上の全ての効果を無効にし、無効にしたカードを全てデッキへと戻す。最初から順番に聖なるバリア―ミラーフォース―、ワイゼルT3、禁じられた聖典、機皇帝ワイゼル∞をデッキへと戻す!」
――――――――――――――――――
カウンター罠
自分フィールド上に「ギャラクシーアイズ」と名のついたモンスターが存在する場合に発動できる。
このカードの発動時に積まれていたチェーン上の全ての相手の効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし、この効果で発動を無効にしたフィールド上のカードを全て持ち主のデッキに戻す。
自分フィールド上に「ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン」と名のついたモンスターが存在する場合、このカードは手札から発動できる。
――――――――――――――――――
「お、おのれぇええええええええええ!!」
ベキベキと空間が音をたて、軋みながら時間の流れが逆転していく。
機皇帝が切り伏せた聖典が再びフィールドに展開されたと思えば、全てのページは女性の元へと収束しそのまま姿を消した。直後、閃光が機皇帝の副砲のように取り付けられているワイゼルT3へと吸い込まれ、その最中に聖なるバリアが展開されて消える。
言葉にすればそれだけ。しかし、これまであった出来事は全て逆転し、なかったことにされた。つまり有り得たかもしれない軌跡でしかない。
「デッキは未来、手札は可能性ってな。有り得たかもしれない未来は
「吼えたな?ならば知るがいい、貴様程度では知りえぬ絶望の闇を!魔法カード発動、終わりの始まり!」
困った時は壺じゃねぇのかよ!?
内心でそう叫んでしまうのは仕方のないことだと思う。遊戯王というのは昔から困ったときは壺頼み、という事が多いのである。禁止カードと化した強欲な壺然り、現在制限カードである貪欲な壺然り。強力で汎用性の高いドローソースは基本的に壺。そんなイメージが定着するほどである。
強欲な壺はカードを二枚ドローする、というシンプルな効果。とはいえ、一枚のカードを使用することで、二枚のカードを手札に加えるという事がどれだけ恐ろしいか。それを理解出来ていない決闘者はいないだろう。
貪欲な壺は墓地のモンスターカードを五枚デッキに戻すことで、カードを二枚ドローするという効果。高速化が進む現環境では序盤でも使う場面は少なくなく、墓地から戻すカードが
それに対して、終わりの始まりとは何か。
メリットだけ抜き出せば、三枚ドローできる優秀なカードだ。しかし、発動するためのコストが非常に重い。第一の条件として、自らの墓地に七体以上の闇属性モンスターが必要となる。そして、その墓地の闇属性モンスター五枚を除外することで、ようやく三枚のドローが可能となる。
確かに三枚あれば勝てる可能性があるのが決闘だ。
しかし、だとしても通常ならば墓地に闇属性モンスターを7枚も準備する時点で難しい。闇属性の優秀なリクルーターであるキラートマトが戦闘破壊されたと仮定して、三枚。最後のキラートマトの効果で終焉の騎士を特殊召喚し、効果で闇属性のモンスターを落として終焉の騎士も墓地へと行けばようやく五枚。手間暇が掛かりすぎる、というのが問題なのだ。
「しかし……確かにお前のデッキとは相性が良いかもしれないな」
「俺の墓地には機皇帝ワイゼル∞を構成する、機皇帝ワイゼル∞、ワイゼルT、ワイゼルA、ワイゼルG、ワイゼルC。拡張パーツであるワイゼルA3、絶望の核たるワイズ・コア。合計七枚の絶望が眠っている。更に、機皇帝ワイゼル∞はパーツも含め全て闇属性モンスターであるがゆえに、発動条件は全て揃っている」
プラシドのフィールドに巨大な魔法陣が出現する。大きな円とそれにかかるように小さな円が四つ。線対称のその魔法陣は、どこか底知れない雰囲気を放っている。
「俺は、俺自身の絶望を、機皇帝ワイゼル∞、ワイゼルT、ワイゼルA、ワイゼルG、ワイゼルCの五体を魔法陣へと焼べることで三枚ドローする。……俺の絶望を喰わせてやったのだ、終わりを始めるために来るがいい機皇帝よ」
魔法陣へと飲み込まれる機皇帝の姿を眺めながら、プラシドは静かにそう宣言した。
プラシドのデッキの枚数を仮に40枚とするなら、最初に五枚の手札を用意することで残りの枚数は35枚。そしてプラシドのターンでドローの一枚に機皇帝ワイゼル∞を構成する五枚と、ハイレート・ドローによる四枚のドローによってマイナス10枚されて残りのデッキ枚数は25枚。更にこのターンのドローによって一枚マイナスだが、タキオン・トランスミグレイションによって機皇帝ワイゼル∞とワイゼルT3がデッキに戻っている。つまりは、今の奴のデッキ枚数は26枚程度か。
なるほど、と思いつつも気になったことがある。
「なぁ、お前はカードの発動のために機皇帝を除外しようとしている訳だが……いいのか?それはお前にとっても因縁がありそうなカードなわけだが」
デッキトップに手をかけようとしていたプラシドの動きが止まる。底冷えするような冷たい眼光が此方を射抜くが、気分が高揚しきっている俺にはそよ風程度のものだ。しばらくその状態が続くが、フンとプラシドが鼻で笑う。
「因縁、などという軽いものではない。機皇帝は俺が俺である以上、過去、今、そして未来までをも蝕む存在だ。デッキにある、手札にある、フィールドにある、墓地にある、除外ゾーンにある。そんなものは関係ない。時間が刻一刻と進むように、光の射す逆位置に影が出来るように、どこまで行っても離れないからこそ、俺の『絶望』なのだ」
今までの荒々しさとは逆に、静かに三枚ドローしたプラシドは再びフンと鼻で笑った。
「俺は手札より永続魔法、補給部隊を発動。更に、俺はまだこのターン召喚権を使っていないため、手札よりワイゼルG3を召喚する。無論、機皇帝ワイゼル∞が存在しない場合、このカードは破壊される」
フィールドに現れたワイゼルG3は出現と同時に、その過負荷を受け止める本体が存在しないことによって無情にも自戒してしまう。が、それと同時に永続魔法として存在している補給部隊がフィールドに立ち上がった。
「補給部隊の効果発動。一ターンに一度、自分フィールドに存在するモンスターが破壊されたとき、カードを一枚ドローすることができる。更にチェーンして自分フィールドのモンスターが効果によって破壊されたとき、手札よりこのカードを特殊召喚できる」
「おいおい、マジで引いたのかよ」
「愛すべき者を失った絶望。その失意を知らぬ愚か者どもめ!我が絶望は砕けえぬ!さぁ、終わりを始めよう!三度起動せよ、機皇帝ワイゼル∞!!」
一度目は銀河眼の時空竜の効果によって無力と化し、二度目は転生の際の時空の捻じれによってデッキに戻された。しかし、それでもこうして現れ、目の前に立ちはだかるのか。あぁ、確かにこれは因縁なんて適当な言葉で済ませるのは冗談にしても笑えない。
「俺の墓地に機械族モンスターが存在することで永続魔法、一族の結束の効果が発動し攻撃力が800ポイント上昇する。更にカードを二枚伏せてターンエンドだ。貴様のドラゴンが如何に強力であろうと、俺の機皇帝は決して負けることはない」
――――――――――――――――――
プラシド LP1000
手札0
モンスター
・機皇帝ワイゼル∞
ATK2500→3300
魔法罠
・一族の結束
・補給部隊
セット2
――――――――――――――――――
確かにプラシドの絶望の象徴である機皇帝ワイゼル∞は強力だ。ここに来て手札に加えたのにも何か運命的なものを感じずにはいられない。そしてさり気なくタキオンの攻撃力を超えてくる辺り、流石と言うべきだろう。
「貴様のドラゴンは驚異的ではあるが、それでも弱点がある。二通りのトランスミグレイションを見たが、モンスター効果のトランスミグレイションはバトルフェイズ中の時間を支配する効果。カウンター罠のトランスミグレイションはチェーン中の魔法・罠を無効にしデッキへと戻す時の流れを支配する効果。つまり、貴様のドラゴンの支配出来る『時間』とは流れ行くものでしかない。既に存在する結果を改変することは出来ない、ということだ」
銀河眼の時空竜のモンスター効果タキオン・トランスミグレイションはフィールドに存在するモンスターの効果を無効にし、元々の攻撃力と守備力へと戻すことができるが、魔法・罠に関してはバトルフェイズ中に発動したものだけが効果の対象となる。つまり、一族の結束の効果は適応されたままとなる。
五体合体の機皇帝なら、モンスター効果が無効になった時点で攻撃力800の塵芥と化すが、一枚で完成されたこの機皇帝が相手となると、意味があるのはモンスター効果の無効に限定される。――――なんてことを考えているんだろうなぁ。
「それは違うな。間違ってるぞ、プラシド」
「……何?貴様、更に別のトランスミグレイションでも握っているのか?」
「いや、言ってしまうのも何だが、トランスミグレイションはお前の言った二種類だけだ。だがな、結果を改変することが出来ないというのは間違っている。先にも言ったと思うが、タキオンは光速を越え時間を逆行する、正に時を越えた力だ。戦う『今』を、重なりゆく『未来』を、そして滅び行く『過去』さえも、銀河眼の時空竜は支配し尽くしているんだよ」
プラシドは俺の言葉に忌々しげに舌打ちをする。少々の原作知識というものを参考にさせてもらえば、イリアステルは滅亡の『未来』を変えるために、『今』この時間を、彼等からすれば『過去』を滅ぼすことで改変しようとしている。プラシドだけでなく、イリアステルからすれば、銀河眼の時空竜の効果は何処か癪に障るものだろう。
それを知った上で使う辺り、俺の性格は客観的に見てもあまり好ましいものではないだろうな。それはともかくとして最強の竜を名乗ったんだ、このまま攻撃力で負けているのは悔しいよなぁ?
「俺のターン、ドロー!イイね、悪くない」
手札に加わったカードを見て、思わず笑みが浮かぶ。
一手必要だな。
判断してしまえば、後は成るように成りけりだ。
「バトルフェイズに移行させてもらう!そして、この瞬間に銀河眼の時空竜の最後のオーバーレイ・ユニットを使い、効果を発動」
最後のオーバーレイ・ユニットを噛み砕き、タキオンの瞳が強く輝く。
「さぁ、三度目だ!刮目せよ、タキオン……トランスミグレイションッ!」
全身を折り畳み、側面に赤と青の宝石の輝く漆黒の四角錐へと変容していく。もうこの決闘では三度目となる姿ではあるが、その威光は未だ衰えることを知らず圧倒的な力を肌で感じずにはいられない。
「時空を遡り再び生まれ落ちた時、銀河眼の時空竜以外の全てのモンスターの効果は無効となり、その攻撃力・守備力は元々の数値へと変化する。それは永続魔法による強化であっても例外ではない。故に機皇帝ワイゼル∞の攻撃力は3300から元々の攻撃力である2500へと変動する」
機皇帝ワイゼル∞
ATK3300→2500
「永続魔法の効果すら無効にするというのか!?」
「その通りだ。行け、時空竜!殲滅のタキオン・スパイラル!」
さぁ、ここからは少々の運試しになる。こういう要素あっての決闘ってものだろう。
「更に俺は罠カード攻撃の無敵化を発動!このカードはバトルフェイズ中にのみ発動可能で、二つの効果の内の一つを選択し発動することができる。俺は銀河眼の時空竜を選択し、そのことにより銀河眼の時空竜はこのバトルフェイズ中に戦闘及びカードの効果では破壊されない!」
――――――――――――――――――
通常罠
バトルフェイズ時にのみ、以下の効果から1つを選択して発動できる。
●フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターはこのバトルフェイズ中、戦闘及びカードの効果では破壊されない。
●このバトルフェイズ中、自分への戦闘ダメージは0になる。
――――――――――――――――――
「このタイミングでだと?」
「所謂、破壊耐性の付与が目的だ。こっちが本命、速攻魔法禁じられた聖槍!レインとの決闘でも使ったカードだが、困ったときには大抵手札にある俺の切り札でな。選択するのは機皇帝ワイゼル∞!効果は知ってるか?」
――――――――――――――――――
速攻魔法
(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターはターン終了時まで、攻撃力が800ダウンし、このカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない。
――――――――――――――――――
「知っているともッ」
「なら話は早い。これによって機皇帝ワイゼル∞は攻撃力を800ダウンした上で、魔法・罠の効果を受け付けなくなる」
「それだけではあるまい。攻撃力の差を1000以上にし、更に魔法・罠の強化も補助も受けられないようにするつもりだろう」
「ご明察。これでお前のセットカードが次元幽閉だったりすれば、俺の負けだろうが……そこんとこどうなのさ?」
ニヤリと哂ってみせると、忌々しげにプラシドは睨みつけながらセットされたカードを起動する。
「永続罠カード発動、レアメタル化・魔法反射装甲!フィールド上の機械族モンスター1体を選択して発動できる。
このカードがフィールド上に存在する限り、その機械族モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、そのモンスターを対象にする魔法カードの効果を1度だけ無効にする!」
なるほど。禁じられた聖槍の後にチェーンブロックとして組まれたのでは、禁じられた聖槍は無効となり更に攻撃力が上昇する。タキオンの時空震の余波の効果はバトルフェイズ中に起動する魔法・罠には効果が無い以上、攻撃力は上昇し3000となる。
幸いなのは次元幽閉のようなカードではなかった事。更にタキオンのもう一つの効果があれば問題なく戦闘破壊することはできるということ。だが、嫌な予感がする。この世界に来てから磨かれ続けている決闘者の直感という奴が、このままではダメなのだと告げる。
ならばここが使いどころだろう。
「速攻魔法、サイクロン!言わずと知れた効果だが、一応説明しておこう。フィールドの魔法・罠カードを対象として発動し破壊する。選択するのはレアメタル化だ」
――――――――――――――――――
速攻魔法
(1):フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
――――――――――――――――――
コイツ通ればレアメタル化・魔法反射装甲が適応される前にフィールドから離れているため、禁じられた聖槍は適応され攻撃力は下がり魔法・罠の対象にすることもできなくなる。
「更にチェーンさせてもらおう!速攻魔法、リミッター解除!」
「リミッター解除だと!?」
「自分フィールドの機械族モンスターの攻撃力を二倍とするが、効果が適応されたモンスターはエンドフェイズに破壊されるが、この一撃を持って滅ぼせば問題ない!リミッター解除だ、ワイゼル!この瞬間、この一撃を持って粉砕せよ!」
その宣言を受けるがままにワイゼルは背面のブースターを全開にし、この白い世界にとって異物とも言える漆黒の竜――銀河眼の時空竜へと加速する。
「リミッター解除により2500から5000へ!」
加速するワイゼルから緑光が溢れ出し、ブレードの長さも接近する速度までも馬鹿みたいに上昇したのが目に見える。しかし、よく見れば関節部位などから火花が散っており、今この瞬間にも限界を迎えようとしているのもわかる。
「だが、サイクロンによってレアメタル化・魔法反射装甲は破壊!」
加速するワイゼルの全身を覆うとした、水銀のような流体を嵐のように吹き荒れる旋風が剥ぎ取っていく。
「更に禁じられた聖槍の一撃によって攻撃力は800ダウンだ!」
旋風を引き裂くような一撃がワイゼルへと突き刺さり、左腕をそぎ落とすも勢い死ぬことはなく此方へと接近する。
「攻撃力は4200……殺しきれぬか」
戦闘ダメージは与えられるものの、LPを削りきることが出来ず、タキオンを戦闘破壊することもできない。そして手札0の状態。機皇帝ワイゼル∞がリミッター解除の効果によって破壊された際に発動する補給部隊のドローと、次のターンのドローの二枚に賭ける。
「とか思ってんだろうが、そうはいかない」
振り下ろされる凶刃を前に、タキオンは吠えた。黒翼を重ねるようにしてその一撃を防ぎ、それどころか弾いてさえ見せた。更に驚愕は続く。互角、それどころか戦闘はタキオン有利に進んでいくのだ。弾くだけではなく、ブレードを噛み砕き、体当たりし吹き飛ばし大きく距離を取った。
「馬鹿な!?ワイゼルの攻撃力は4200だぞ!貴様は攻撃力上昇のカードは使っていないはずだ!?」
「あぁ、だが……タキオンの効果は使っただろう?」
「モンスターの効果無効、攻撃力・守備力の数値を元に戻す。それだけではなく、まだ効果を持っているというのか!?」
言葉を紡ぐ最中でさえも銀河眼の時空竜と機皇帝ワイゼル∞の戦闘は続くが、とうとう決着の時が訪れる。咆哮と共に口内に圧縮されるエネルギーの奔流が黄金に輝く。同時に大きく広げられた翼がプラシドのフィールドに漂う『何か』を吸収していた。
「まさか……」
自力で気づいたのか?
「支配した時間の中で発生した時間の流れを力に変換しているのか!?」
「その通り!銀河眼の時空竜は効果によって、このカード以外のモンスターの効果を無効にし、攻撃力・守備力を元々の数値に変化させることができる。そしてその支配した時の中、相手のカード効果が発動する度に、攻撃力は1000ポイント上昇する!お前が発動したカードは二枚、よって攻撃力は2000アップ。支配した時の中で行動しようとしたツケだ、受け取るがいい――――殲滅のタキオン・スパイラル!」
銀河眼の時空竜
ATK3000→5000
放たれた光線に飲み込まれる直前に、機皇帝ワイゼルは反射的に右腕を動かしていた。そこは盾のあった右腕だが、禁じられた聖槍によって落とされてしまっている。いや、それ以前にこの出力に耐え切れるわけもない。
「ワイゼルッ!?ぐぁあああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
LP1000→200
「ぐぅう……だが、まだだ。俺のライフは残っている!」
「この状況で尚、戦う意思を持っているのは流石としか言い様がない。鋼の意思も鋼の強さも持ってるんだろうな……だが、この決闘は俺の勝ちだ。効果が発動したバトルフェイズ、相手のカードが発動し攻撃力が上昇したターン限定だが、銀河眼の時空竜は二回攻撃することができる」
「なん……だと!?馬鹿な、この俺が!?」
破壊された機皇帝ワイゼル∞の残骸が落下する中、プラシドが呆然と呟く。そんな中で、プラシドのフィールドのカードが一枚効果を発動しようと光を放つ。
補給部隊。自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合に発動する永続魔法。デッキからドローすることができる効果は非常に優秀で、尚且つ強制効果なのでタイミングを逃す心配はない。
「ほ、補給部隊……まさか」
「カードの効果が発動したことによって、攻撃力の上昇が発生する」
銀河眼の時空竜
ATK5000→6000
「それがお前の最後のドローだ。バトルフェイズに使えるカードは入ってるのなら祈り、無いのなら甘んじて受け入れろ」
「……ドロー」
引いたカードを見たプラシドは目を大きく見開き、思わずと言った風にカード名を口に出す。
「やはり、俺の絶望は貴様か。ワイゼル」
五体合体の本体の保険だろうか。どうやら三枚ある機皇帝ワイゼル∞の最後の一枚をひいたらしい。あぁ、少し前にも言ったかもしれないが、確かにこれは運命だろう。ある意味、このオーバー・ハンドレットナンバーズも暗い運命によって作り出されたカードではあるが、俺の創ったコイツ等の場合はどうなんだろうな。
「どうやら打つ手はないようだな。銀河眼の時空竜!俺に勝利を導け!殲滅のタキオン・スパイラル!!」
先程よりも眩い光線がプラシドを飲み込み、LPを根こそぎ奪っていく。5800のオーバーキルの前にプラシドは何かを叫んでいたようだが、轟音にかき消され理解するよりも先に吹き飛ばされていった。
吹き飛ばされたプラシドは、ゴムボールのように数度地面に叩きつけられる度に跳ねて落ちてを繰り返す。そしてLPが0になったことで決闘終了を知らせるブザーが鳴り響く。かなり遠くまで吹き飛ばされたプラシドだが、どうやら動けない訳ではないらしく、壊れかけの人形のようなガクガクとした動きで立ち上がろうと試みているようだった。
当の俺はというと、決闘終了と同時にアドレナリンが引いていったのか、すっかり忘れていたデュエルディスクの高熱によって腕の焼かれる痛みがぶり返してくる。神経の管に針をそのまま差し込んでいくような痛みに脂汗を浮かべながら、デッキをケースへと収納しその場にへたり込む。
一応の勝利。楽しい決闘だった。
思わず浮かんだ笑みの先、無表情ながらどこか唖然としたようなレインの姿を捉えた。
へらり、と笑ったまま軽く手を振って見せると、呆れたように彼女は右手を額に当てて首を横に振るのだった。