寝る姫はよく育つ   作:麟佳さん

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第1話

その日はなんてことの無い、いつもの日常を過ごしていた。気持ちよく寝て、気が向いたらご飯を食べたり誰かと話して、またお昼寝。違うところと言えば何となく気が向いて町の広場にある樹の上で涼んでいたくらい。町の中心部にある草木の生い茂る公園で、伝承ではこの豊かな土地が人々を守り、この町に発展したとか。散歩する人、昼寝する人、運動したり絵を描いたり趣味を楽しむ人があちこちにいる。当然、町の郊外より雑音は多いが今日はここで昼寝をする気分だった。なんとなくの直感は的中したのか、あっさりと眠りに落ち、寝心地も随分と良かった。

 

(レーヴァテイン!起きて!レーヴァー!!)

体感でそこそこ時間が経った頃。遠くから名前を呼ばれている。耳に蓋をされているように聞こえにくいが、コレは仲間達の声だ。もっと気持ちよく寝ていたいが仕方ない。取り敢えず丸くなった体を伸ばして───。

「あ、待って!駄目!ストーーップ!」

声が急に慌てだしたが、そんなの知ったことでは無い。気持ちよく寝たあとは、身体を思いっきり伸ばすのが一番。ただでさえ眠りを妨げたのだから、それは譲れない。

 

バァン!!

 

「───は?」

思わず声が出た。体を伸ばし始めた途中で足先に何かが当たったのだ。問題は何かに触った音ではなく、衝突に近い大きな音。しかも驚いて動きを止めるまで、足はそれを通り抜けようとした。何かがおかしい。周りをなにかに囲まれているのか?取り敢えず状況を確認しなければならないが、瞼はまだ動いてくれない。最小限の動きで体を起こして上半身をぐーーっと伸ばす。上方向は大丈夫。ようやく目を開けてボヤけた視界で見上げた空は太陽が傾いてきているがまだまだ青い。そのまま立ち上がって全身を伸ばして解しつつ、大きな欠伸を1つ。目覚めのルーティンを終えて前を見るが、誰もいないし建物も見えない。

「下!下見てーー!」

促されるままに俯くと公園と町がある。しかしなんと言うことか。どれもレーヴァテインより遥かに小さく、腰にも届かない。教会や庁舎の様な大きめの建物でようやく胸下あたりに届くかどうか。眠っていたはずの木も足元の直ぐ側にある。もしやと思って先程脚を伸ばそうとした方向を見ると、公園の側にあった建物に大穴が空いている。幸い、中には誰もいないようで人的被害は出なかった。近くに駆けつけていた仲間もやはり小さく、指より小さい。いやもう、ここまでくれば説明されずとも理解する。レーヴァテインそのものの身体が巨大化したのだと。しかし困ったことにこうなる理由がわからない。変なものを食べたり、触ったりもしていないし、魔法をかけられたような感覚もない。

「目測は〜、なんと50m!まさに大怪獣だね〜おっきい!」

「お前伝承みたいに食われるぞw」

「そんなヴァドじゃあるまいし、ナイナイw」

「「あっはっはっ!」」

 

ベシン!

 

空から降ってきた右手に押しつぶされる方天画戟とオティヌス。この大質量を受け止められる筈もなく、大の字で地面にめり込んでいる。取り敢えずバカ二人は黙らせて建設的な会話をしたいところ。屈んでミストルティンに顔を近づけるとまさに小人。お伽噺の妖精のように小さくて可愛い姿についつい撫で回したくなるが、ぐっと堪える。

「というわけで、変にボケたら叩くから。というか頭良い奴は何処行ったの?」

「図書館等で資料探しや魔力探知などをしています。私達はレーヴァさんの様子を見守りつつ避難を…。」

「そう。ミストルは偉いね。」

指先で小さな友人を撫でる。加減が出来ていないので、頭を大きく揺さぶられているが、嬉しそうに微笑む様子は小動物を愛でている様だ。

「あ!狡い!」

「俺達だって働いたんだぞ!」

「ふーん。じゃあご褒美に足踏みマッサージしてあげる。」

「ヱ゛!?」

今度は巨大な足に踏み潰された二人。石畳にできた大きな足跡の中央で横になることとなった。

「レーヴァさん。実は機嫌がその…悪いのでは…。」

「別に?普段ウザ絡みして来る奴をちょっとお仕置きしてるだけだし。あーでも、私の脚が柔らかそうとか言ってたしご褒美なんじゃない?それで、これからどうするの?」

「取り敢えずは此処から動かずに様子を見るとのことです。住民の皆様にも既に連絡は済ませています。」

確かにここの広場であれば先程のように不注意な動きをしなければ人的被害は出ないし、更に巨大化したとしても膝を抱えて丸くなればある程度は問題無い。元々サボってゴロゴロするのは好きだから好都合だ。

 

「変わらず巨大だな。体調に変化はあるだろうか?」

しばらくゴロゴロしていたところに声をかけたのはブリューナク。調査をしてくれているとの事だったが、一段落ついたのだろうか。いや、巨体の上から下までじっくりと観察するその様子を見るに経過観察に来たのかもしれない。

「別に。寧ろ気分いいから好調かも。それで、何か分かったの?変なボケしたら私のオヤツにするよ?」

「心得た。まだ断定は出来ないが、この巨大化現象はエネルギーの過剰供給と推測している。この街の伝承にもあるがこの広場はエネルギーの多い土地。地脈やパワースポットと言われる類いだな。」

「それにしたって、キル姫が巨大化するってやり過ぎじゃない?まさか大昔に巨人がここにいたとか?」

「ふむ……その可能性もあるが、レーヴァテインが巨人の剣という伝承も関係していると思われる。それであれば巨大な狼と言われるヴァナルガンドも同様に巨大化する可能性がある。確認する価値はあると、ブリューナクは判断する。」

「ヤメテ。世界中の肉が食い尽くされる。」

「それもそうか。話は変わるのだが、1つ頼みたいことがある。そこに横になってくれるか?」

「おっけ。」

寝転がったレーヴァテインは建物よりも更に大きく高いまさに壁。ブリューナクはそんな彼女の腕に近づくと、ペタペタと腕を触りながら少し息を荒くしている。

「おぉ…。大木の様な太さに、人肌の暖かさと柔らかさを兼ね備えるとは…。素晴らしい…!」

触って撫でて頬擦りしてレーヴァテインの腕を堪能している。挙げ句の果てには体を預けるように抱き着くまでに至った。クールな彼女の乱れた様子を初めは楽しんでいたが、止まる気配のないので、突風の如き吐息を吹きかけて注意する。

「す、すまない。初めての経験に我を失ってしまったこと、不徳の極みだ…。」

「いつも真面目な貴女に免じて許してあげる。で?何か分かった?」

「ふむ。先ほど伝えた過剰供給の説を後押しする物だった。この土地のマナとレーヴァテインの体内を循環するそれが近い物と感じた。エネルギーの分だけ身体が適応するために巨大化したのは間違いない。また服も同様に魔力によって巨大化したのだろう。魔力を帯びた分だけ、強度が向上したためお前がその気にならない限り、引き千切れると言うことも無いはずだ。」

「へー、てっきり遊んでただけだと思った…。じゃあそれを使い切ったら戻るってこと?」

「それは断定出来ない。過剰な水を入れるために大きくなったコップが戻るのかそのままかはその時にならなければ分からない。あるいは自分の意のままに体の大きさを調節出来る可能性もあるが…。」

「ふ~ん。なんか面白そう。うまく解決したらみんなで寝てみる?」

「恐らく同様に大きくなるのは、巨大な狼の伝承を持つヴァナルガンドくらいであると予測する。」

「だーかーらー、それは駄目。あのお節介大型犬が更にデカくなるとか…お仕置きとか言って食べられるでしょ?」

「悪さをしなければいい話だ。ではブリューナクは調査に戻る。引き続きここで大人しくしていてくれ。」

「おっけ。じゃあまた寝るから、なにかあったら起こして。」

丸くなって眠るレーヴァテイン。仲間達も念の為に見張りは続けていたが、寝返りもせずスヤスヤと眠り続ける。普段はゆっくりと見られない寝顔はとても健やかで、美しい。あまりにも動きが無さすぎて、実は彫像なのではと勘違いするほど。

また数時間ほど眠った頃、少しの騒がしさと鼻腔を通る香りに意識が引き上げられる。そこにあったのは祭りなどで大量の料理を作るための5mを超える大鍋。中には出汁の効いた汁に野菜やお肉がこれでもかと詰め込まれている。

「そんなに大きな身体じゃ、街の食堂から一つ一つ料理出しても足しにならないからね。皆で材料出し合って作ったんだ。」

「だからって、これ大変なんじゃ…。」

「レーヴァテインさんにはいつも世話になってるからな!このくらい任せてくれ!」

「はぁ……。みんな馬鹿ばっかり。」

レーヴァテインの悪態に歓声が上がる中、鍋を持ち上げる。何千、何万人分も入る大鍋も巨人にとっては丼程度。巨人サイズの食器は無いので、鍋ごと持ち上げてまず一口。具材は大きく切られているが、しっかり火が通っており、汁にも食材の味がでており、食欲を刺激する。ゆっくり味わって飲むつもりだったが、気を張って疲れた心は次を寄越せとせがんでいる。ゴクンッ、ゴクンッと大きく喉を鳴らすレーヴァテイン。呑み込まれた食材は滝のように喉を落下して、胃袋に流れ込む。数時間掛けた料理はものの数分で巨人の胃袋に収まった。大鍋を飲み干したレーヴァテインは深く息を吐くのと同時に、観衆から拍手や歓声が響く。いつの間にやらお祭りと変わらぬ熱気だ。

「ごちそうさま。美味しくて、一気に飲んじゃった。ほらほら、私また寝るから帰りな。見せ物じゃないんだからさ。」

巨人の合図で祭りは終わりを告げて、住人達も帰っていく。しかし興味津々な子ども達はレーヴァテインの足元をわらわらと走り回っている。騒がしいのは勿論、うっかり押し潰す可能性もある。

「早く帰って。じゃないと……そうだ。」

レーヴァテインが掴んだのはちょうど近くにいたミストルティン。そのまま上体を起こして吊り下げた小人を値踏みするかの様に眺める。地上の子ども達が何が起こるのかと見守る中、ミストルティンを掴んだ手は巨人の口に運ばれた。

「ん~、柔らかくて美味しい♪」

レーヴァテインの笑みとは対照的に子ども達は青ざめていく。これは良しと追撃するように、子ども達に顔を近づけてから喉をゴクリと鳴らす。開かれた口にも掌にもミストルティンの姿は無い。

「悪い子はこんなふうにお仕置きするから。大丈夫、覚えてたら朝には吐き出すから。」

「あ、あの…ミストルティンさんは……。」

「お腹の中よ?でも、みんな本当は良い子だから、家に帰る。よね?」

『はいぃっ!!』

元気よく返事をして蜘蛛の子を散らすように駆け出していく。

「こんな手品に引っかかるなんてね。」

クスクスと笑うレーヴァテインは視線を落として服の中を見る。そこには大きな胸の谷間に挟まるミストルティンの姿があった。程よい弾力に包まれた彼女は、大きな胸をペタペタと触っている。暖かな体温と柔らかな弾力、体を包む鼓動はとても落ち着く環境だった。

「私の胸がそんなに気に入ったの?このヘンタイめ。」

「ええ!?いやその…そうではなくて!思ったよりも柔らかくて、暖かくて…。それより、あんなに脅さなくても…。」

「だって邪魔だし。ワルガキはあの位やったほうがいいのよ。さてと…悪いヘンタイさんは一晩そのままね。」

「えぇ!?でも、お片付けや明日の朝食が…。」

「だーめ。わがまま言ったら本当に食べるよ?」

「はい、わかりました…。」

胸元に入ったミストルティンはあっという間に眠ってしまった。一方のレーヴァテインも小さな温もりと僅かに香る華の匂いで心地良く眠りにつく。すっかり熟睡したころ、ぼんやりとした頭は夢を描き始める。周りは色を失って真っ白になった街。レーヴァテインのサイズは夢の中でも相変わらず巨大。起き上がってみると、カシウスがこちらに向かって歩いている。街との縮尺を見るに、夢のカシウスも大きいらしい。しかしよく見ると、思った以上に距離が離れている。にも関わらず自分と同じサイズだと判断してしまった。と言うことは、こちらに迫る彼女は自分よりも数段巨大なはず…。そう考えついた直後、既にカシウスは街を踏み潰して目の前に立っており、。真の巨人を前にして、小人の目線をようやく体感すると共に、圧倒的な差に息が詰まる。

「大きな小人のレーヴァテイン…。こういうこともあるのね。」

「いやいやいや、そっちがデカすぎる…。ていうか、街の建物踏み潰してる…。」

「ここはあなたの夢の中、潰れても意味はない。」

カシウスが脚を上げると、先程、瓦礫となった建物が何事もなかったかのように元に戻っていく。住民もいないようなので、犠牲者が出るなんてことは無さそうだ。足裏の感覚が心地よいのか、カシウスは猫のようにその場で足踏みを続けている。

「それ、そんなに楽しい?」

「踏み潰したものが戻るのは経験が無いことだから。あなたもやってみれば分かるかもしれないわ。」

「いや…流石にそんなにデッカくないし。」

「あなたが思う身体を念じて。大きく、高く、太く。強大で巨大な巨人になったあなた自身を。」

言われるがままイメージしてみると、じわじわと体が巨大化を始めた。建物を押し退け、大地を踏みしめ、存在を大きくしていく。夢の中の出来事にしては、体の力の入り具合に確かな実感があるが今は気にしない。その成長はカシウスの半分ほどまでは続いたが、そこで変化が落ち着く。どうやらここが限界らしい。とはいえ、おおよそ10倍は大きくなった。それでも届かないカシウスのほうが可怪しい。

「子どもみたいで可愛いわ。」

「はいはい。巨大化したのは良いけど、これどうやって戻るの?まさか現実でも巨大化してるとかないでしょうね?」

「力を抜けば戻っていく。空気を入れた風船の口を緩めるように。」

「ふーん。ずいぶん詳しいじゃん?実は今も巨大化して夢に出てきたの?」

「いいえ、これは自然のまま。貴方の所に来たのも不思議な縁の始まりを感じたから。」

「ふーん?」

いまいち理解はできないが適当に流しておく。程々に流しておかないとカシウスとの会話は疲れが溜まってしまう。取り敢えず試しに心呼吸しながらリラックスする。昂ぶる気持ちを抑えるようにすると、視線が落ちていく。見下ろしていた建物の屋上は見えなくなり、足先にあった入り口が目の前にやってくる。

「まるで小人のよう。飴玉のように呑み込めてしまう。きっとあなたなら美味しいわ。」

「絶対やめて。これが現実でも出来れば…。」

「大丈夫、出来る。」

「あなたに言われるとなんかその気になるわね。」

「それじゃあ私は行くわ。巨人が増えていたら驚くでしょう?」

「え?ちょっと待っ。」

疑問を問うより早く、巨大なカシウスは煙となって消え、夢の街全体を霧の様に飲み込んだ。暫くして霧が晴れると、瞳が映した空は暁時の群青の空。隣にはミストルティンの寝顔が広がる。もしやと体を見ると元のサイズに戻っている。一先ず喜ぶが試すなら、人気のない今がその時だ。夢と同じようにイメージと身体の中のエネルギーを膨らませていく。夢の中であった実感は今も手応えとして感じられる。あっという間に身体は倍の大きさになり、更に巨大化を続ける。うっかり踏み潰さない様にミストルティンを掌に収めて、昨日と同じサイズに到達する。その気になればまだまだ大きくなれそうだ。身体の変化に集中していると掌がもぞもぞと動いているのに気づく。極力配慮はしていたが振動で起こしてしまったらしい。

「あれ…もう朝ですか…?」

「まぁ一応は?起こしてごめん、変な時間に目覚めちゃってさ。お詫びにいい景色見せてあげる。」

立ち上がった巨大なレーヴァテインの眼下には点々と僅かな明かりが見える街並み。空を仰げば夜の黒から夜明けを待ちわびる淡い赤のグラデーションが広がる。照らされた巨人の瞳は数多の光を取り込んで星空が写されている。

「たまには早起きも悪くないね。この体のおかげで珍しい景色が見えるし。」

「はい。それにレーヴァも綺麗に見えます。」

「へぇ…。ミストルってそんなプロポーズするんだぁ?」

「え!はわ!?そ、そんなつもりじゃ…!?」

「ふふーん、なんだか朝から良いことばかり……。」

朗らかだったレーヴァテインから一転して、刃の様に鋭い視線を見せる。何か気に障ることをしてしまったのかと不安になるが、巨大な瞳はその動きを観察しやすい。街の監視塔よりも高い高度から見た草原には10体程度の異族。人の気配を感じてこちらに向かっているようだ。

「ほんっとサイアク。でもあのくらいなら一人で大丈夫ね。今はデカいし。」

「で、でも。この巨体じゃ移動が……。」

「大丈夫、もう解決してるから。」

確かにこのまま走り出せば桁違いの脚力で道路は吹き飛ばされ、振動で街は大混乱に陥る。しかしそれは今のサイズならばというだけ。それなら影響が出ない程度まで抑えればいい。しゅるしゅると縮んで5m程になってから郊外に向けて駆け出す。

「レーヴァさん、身体が!?」

「後で説明するから掴まってて。」

かなり小柄になったとはいえ普段の何倍もある体躯に動きは鈍るかと思いきや身軽さは据え置きで、抱えているミストルティンもそれほど揺らさずに疾走する。街の中央から一分程度で街の外壁が見えてくる。夜通し起きていた警備員も迫ってくるレーヴァテインを見て何事かと緊張感が走る。

「ミストル、説明任せた。」

「ふぇ……ええええ!?」

再び50m程に巨大化したレーヴァテインは外壁をハードルの様に飛び越すと同時にミストルティンを監視塔に優しく放り投げた。上手く着地してからレーヴァテインを見るが既に数100mも先にいる。異族襲撃の予兆を素早く伝え、備え付けの望遠鏡で巨人の様子を見ると映った景色は蹂躙ともいえる一方的な戦況。単純計算しても【kg】ではなく【t】で表記出来る程の大質量で踏み潰すだけで事が済み、脚を振り抜けば地平線まで吹き飛ぶ勢い。残った飛行部隊には更に巨大化して100mの威圧感から大剣を切り上げる。あまりの威力に敵は跡形も無く砕け散り、空に浮かぶ雲まで真っ二つになった。驚嘆のあまり呼吸を忘れる程に圧倒的な戦果を見せたレーヴァテインは夜明けの太陽を背負い、神々しく見えた。文字通り朝飯前の運動をこなして街に戻ったレーヴァテインをミストルティンや衛兵達が迎え入れる。凛とした視線は変わらないが口元は緩んでおり機嫌が良さそうだ。なにせ昨日まであった不安は無くなり、その全てを自分の力にする事が出来たのだから。

「レーヴァさん、とても凄かったです…!」

「別に、体の大きさで圧倒しただけだし。私恐くなかった?」

「へ?恐いと言う感じはありませんでしたが…?寧ろ皆を護ってくれる優しい巨人さんだと思います!」

「レーヴァテインさんがいれば何も怖くないぜ!」

「強さも身体も百人力だぁ!」

「はいはい、まだ日の出だから静かに。でもそんなに私頼りにするんだったら、次はサボっちゃおかな?」

「すんませんした…。」

「俺等も頑張るんで、どうしてもの時は頼らせて下さい…。」

「気が向いたらねー。っと、もう一人お客さんかな?」

見上げた空を流れ星のように降って来たカシウス。きっと綺麗な夜空を漂いながら過ごしていたに違いない。

「もう終わったのね。それにあなたの円環も新たな形となり定着している。」

「まぁおかげさまでね。昨日の晩はありがと、カシウス。」

「?、私は何もしていないわ。」

「へ?てっきり何かの魔法で夢に出てきたんじゃ…。じゃああれはただの夢の中のカシウスか。」

「私ではないけれど、それはカシウスかもしれないわ。」

「はい?」

「私ではない私。どこかの世界の私が貴女を助けたのかもしれない。」

「じゃあ……あの馬鹿デカいカシウスがいる世界があるってこと…?」

「もしも巨大な私が侵略してきたら、あなたに任せるわ。」

「えぇ……。」

 

「おはよう、バハムート。」

「おっと、珍しい呼び方。夢か異界で違う私に会ったの?」

「えぇ。小人の巨人を見たの。」

「めっちゃ矛盾してるんだけど…。しかも私なのよね?」

「二人の巡り合いがとても楽しみね。ふふ♪」

 

後日…

『わぁおーーーん!!』

「マジか……ほんとにでっかくなっちゃった…。」

 

 

 

 

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