大監獄から変化していく世界   作:ヘビとマングース

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9:武術廻戦

 インペルダウン、レベル6“無限地獄”。

 他のフロアと違って直接的な拷問を行わず、入れば二度と出られない、ただ永遠に続く退屈を味わわさせるための空間。

 そこに到達するとレベル5とは異なり、一気に過ごしやすい気温に変わった。

 

「着いたァ! レベル6!」

「入口に鉄格子あるよ」

「ぶっ飛ばす!」

 

 侵入と脱獄を防ぐための装置が起動していたものの、ルフィが強引にぶち壊して、あっさりと道が開かれる。

 囚人たちは雪崩れ込み、ルフィも勢いよく飛び込んでいった。

 

「エースゥ~! 助けに来たぞォ~!」

 

 フロアに辿り着いてすぐ、響き渡るように大声で叫んだ。

 彼は入口からは少し離れた位置に居たとはいえ、その呟きを不思議と鮮明に聞き取る。

 

「ルフィ……! この、大バカ野郎……!」

「いたァ~! エース~!」

 

 高く跳び上がったルフィは囚人たちの頭上を越え、まっすぐにその位置を目指す。

 エースの目の前に着地して、顔を上げると同時に彼はにかっと笑った。

 直後にエースが思わず動き出し、ルフィの頭をガツンと殴る。

 

「バカ野郎ッ! お前、無茶とかいう話じゃねぇだろうが! わざわざ自分からインペルダウンに侵入してくるやつがあるかっ!」

「あっひゃっひゃっひゃっ! よかった! ほんとによかったエース! お前が処刑されるって聞いたもんだからよォ!」

「バカ言え! おれが死ぬとでも思ってんのか!」

「実際危なかったじゃねぇかよ⁉ 海楼石の錠もつけられてるし!」

「うるせぇ! だからってお前に助けられる覚えはねぇぞ!」

「何言ってんだ! おれは弟だぞ! どんだけ心配したと思って――!」

 

 ルフィに最後まで言わせず、エースが彼の頭を麦わら帽子ごと強く掴んだ。

 そして自らの方へ抱き寄せてぎゅっと目をつぶる。

 

「おれがお前を、心配してねぇとでも思ってんのか……! 無事でよかった……!」

「しっしっしっし。お互いにな」

 

 涙を滲ませるエースに対して、ルフィは嬉しそうに笑っていた。

 話には聞いていたとはいえ会うのは初めて。兄弟の強い絆を見せられた気がする。

 初対面のルフィと、これまで見たことのないエースの表情を目の当たりにして、ジンベエは何も言わず静かに見守っていた。

 

 少し待って、一緒に来ていたキリが彼らの沈黙を破る。

 別の人間がすでに動いていて、レベル6がまるで祭りのように賑わい出していた。

 

「さあ、みんなの手錠を外そう。力を封じられてた能力者が解放されると、脱獄する確率はぐっと高くなるはずだ」

「私の能力で鍵を作るガネ!」

「こうなりゃヤケだ! 伝説の凶悪犯罪者どもが味方になるってんなら何も怖くねぇ! みんなでシャバに出るぞ野郎どもォ!」

 

 Mr.3が手錠の鍵を作ってばら撒く間、調子に乗ったバギーが大声で騒ぐ。

 レベル6の囚人を見た当初は怯えていたというのに、開き直った後はもう悩んでいない。しかも不思議と囚人たちはバギーの言葉で奮起していて、すっかり味方という雰囲気だった。妙な求心力があるなと感心する者は少なくない。

 

 エースの手錠も外され、地面へ落とされる。

 ようやく本来の力を発揮できる状態になって本人もルフィも、ジンベエまでもがほっとする。

 

 Mr.3が作った蝋の鍵を受け取ったキリはルフィたちの傍を離れて、とある男の前に立った。

 顔に一本線の傷跡があり、囚人だというのに金のフックを左腕に装着したオールバックの男だ。

 彼に鍵を見せてキリは笑顔で呟く。

 

「三回まわってワンと鳴きなさい」

「殺されてぇのか?」

「だってせっかく優位に立ったし、もったいないなと思って」

「あっ! お前、クロコダイル! こんなとこにいやがったのか!」

 

 キリの行動に気付いたであろうルフィがいつの間にかキリの背後に立っていた。

 彼が見ていたのは金色のフックの人物、サー・クロコダイル。

 元ではあるが政府公認の海賊“王下七武海”の一人で、かつてとある王国の乗っ取り計画を企てた際にルフィと戦い、海軍に逮捕された人物である。

 同時にキリにとっては浅からぬ関係の相手でもあった。

 

「おいキリ! こいつ外に出していいのかよ! こいつはビビの国を襲った奴だぞ!」

「そうだけど、あの件はルフィに負けたんだから、もう同じ作戦は取らないよ。負けたんだから」

「おい……お前おれを舐め腐ってやがるな」

「そんなことないよ? ルフィに比べれば僕はボスに好感持ってるよ。まあ負けたんだけど」

 

 クロコダイルが何も言わずに左腕を振り下ろし、キリの頭にフックがガンッと落とされた。

 すかさずキリはルフィに泣きつき、大したダメージでないことは理解していたはずだが、相手がかつて敵対した人物だ。ルフィは反射的に怒りを露わにする。

 

「ぐへぇ、やられた~」

「なにすんだお前っ! キリはもうおれの仲間だぞ! 手ェ出すな!」

「つくづく腹の立つ連中だ。またお前らと顔を合わせちまうとは」

「嬉しいくせに」

「なんかやったらぶっ飛ばすぞ! 水が弱点だ! キリとお前は!」

「僕のは言わなくていいよ」

 

 クロコダイルは悪びれる様子もなく鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

 ルフィは彼に対しての怒りが収まらない様子であるものの、隣に居るキリが「どうどう」と落ち着かせようとしている。

 

 一時、気が抜けていたのは間違いない。

 彼らが落ち着いている間、自ら戦うのを避けたがるバギーはレベルを問わず囚人たちに叫ぶ。

 

「薄暗い牢屋の中に押し込められてたしみったれた野郎ども! 腹は減ってねぇか! おれ様がレベル4“焦熱地獄”から食い物をぶんどってきてやったぞ! 有難くちょうだいしやがれェ!」

「うおおおぉ~っ! そりゃ助かるぜ!」

「腹ァ減って仕方なかったんだ!」

「酒はあるのんか~?」

「メシも酒もあるだけ取ってきてやった! おれ様の名前を言ってみろ!」

 

 囚人たちによる「キャプテン・バギー‼」という大合唱が始まる。

 レベル6は俄然騒がしくなり、同時に囚人たちの意思は一つとなって強固に統一されていった。

 バギー自身はただ自分が戦いたくない、無事に監獄の外へ出たいという想いで、他人を利用するためにやっていたというのに、その態度と行動が良い方向に誤解を生んでいたようだ。

 

 死なない程度の空腹と退屈に責められていた囚人たちはすぐに食料に飛びつき、喜色満面で食事を始める。マナーや作法もないひどい光景だった。

 その一方でバギーは確実に株を上げており、囚人たちが集団としてまとまりつつある。

 

 囚人を解放したという、それ自体にとてつもない危険性があるが、状況は決して悪くない。

 辺りを見回したジンベエは周囲への警戒を解かぬままエースに言った。

 

「さて、次はどうする。キリ君が言うには追手はまだ来ていない。おそらくマゼランは上層でわしらを待ち構えておるはずじゃ」

「マゼランはドクドクの実の能力者だったよな? 能力の相性を考えりゃ、おれやお前なら対抗できるだろ」

 

 エースは牢屋に居る時とは違い、余裕のある笑みを浮かべていた。

 やはり弟であるルフィが無事だったと知って安心したのか、いつも通り頼りになる、しかし普段に比べていくらか大人っぽく感じて、穏やかな安心感を覚える。

 

「マゼランを甘く見ん方がええ。能力はもちろんじゃが奴はやはり厄介じゃ」

「だからってびびってちゃどうにもならねぇだろ。本来ならこんなとこに入れられた時点で命を落としたようなもんなんだ。相手が誰でもやらねぇと」

「そうじゃな……だがお前さんを解放できたのは大きい。ルフィ君たちに感謝じゃ」

 

 ああ、と返事をしてエースは、余裕を得てはしゃいでいる様子のルフィを見て微笑む。彼は焼いた肉を食べながら出会ったばかりの囚人と共に大笑いしている。

 まるで監獄内とは思えないほど、ほっと一息つく時間。

 その時間は唐突に壊されることとなった。

 

 

 

 

「おいお前、まだ手錠取れてねぇじゃねぇか。しょうがねぇな。外してやるよ」

 

 レベル6の奥まった場所、騒ぎから離れた一角で、ふと囚人を見つけて、こちらも囚人だが男は何気なく声をかけた。

 他の囚人たちはすっかり手錠を外して喜んでいる頃。仲間外れは良くないだろうと、深く考えもせずに手錠を外してやったのだ。

 

「へへへ、まさかこんな日が来るとはな。本当に“道化のバギー”様さまだぜ。だからお前もよォ、こんなもんさっさと外しちまって、おれたちと一緒にここから――」

 

 カシャン、と手錠が地面に落ちた直後、今の今まで手錠をかけられていた大男が即座に動いた。

 問答無用で繰り出した裏拳が男の顔面を打ち、軽々と殴り飛ばす。殴られた男はドカンと近くの壁に激突してから地面に落ちると、そのまま動かなくなった。

 

 その大男は敢えて囚人たちの輪から外れていたのだが、望んでいたわけではなかったとはいえ、手錠が外れた今、のしのしと迷わず歩き出す。

 初めから目的が決まっていたかのように前へ進んだ。

 囚人たちが集まっている出入口付近の開けた場所を見た時、彼は強く拳を握る。

 

 初めに気付いたのはジンベエだった。

 大男がぐっと膝を曲げる姿を見て、表情が一変するほどの危険を感じる。

 

「いかん!」

 

 考えるより前に体が反応していた。

 集団に突っ込もうとしていた大男の前へジンベエが割り込み、体の前で腕を交差させ、存在を認知している者にしか扱えない“武装色の覇気”を纏って自らを強化する。

 

梅花皮(かいらぎ)!」

 

 敢えて待ったのだろう。膝を曲げて一旦動きを止めた後、大男が飛び出してきた。

 握った拳を振り上げて接近し、明らかに殴り掛かろうとしたその瞬間、握った拳からバリッと黒い稲妻が生じる。

 直後、視認することすら難しい速度でパンチが繰り出された。

 

 ジンベエは受けるつもりで防御の構えを取っていたのだが、全身に衝撃を覚えた瞬間、考えるまでもなく「これはまずい」と感じ取った。

 パンチは確実に当たった。なのに拳は体に触れていない。

 少なからず混乱しながらジンベエの巨体は殴り飛ばされて、銃から撃ち出された弾丸のように、凄まじいスピードで壁に激突。石も鉄格子も破壊して遠くまで飛んでいく。

 

 あまりにも突然の攻撃。奇襲と言わざるを得ない。

 一瞬で全員に緊張が走り、同時に多くの人間が激しい動揺に襲われる。

 誰が吹き飛んだにせよ、身の危険を感じるには十分な轟音だった。

 

 辛うじて反応し、視認できていたエースは誰よりも早く行動した。

 自身の傍に居たルフィとキリを庇って背後に隠す。

 

「下がれお前ら! こいつに近付くな!」

 

 大声を発したせいか、大男がぐりんと首を回してエースを見る。

 瞬時に標的を定めて駆け出し、真正面からエースへ接近した。当然エースは反応して、攻撃される前に自ら仕留めようと拳を突き出す。

 周囲の人間が少なからず混乱していて、まるで反応できていない中、彼だけが戦闘を開始した。

 

 向かってくる大男の動きに合わせて左の拳を突き出し、鋭いパンチを繰り出す。大男はにやりと笑いながら接近をやめず、全く避ける素振りを見せずに顎へ受けた。

 エースはすかさず右の拳を振り上げ、突如、その拳から強く大きな火が放たれる。

 

「おおおおっ! 火拳ッ‼」

 

 周囲の被害を考えない強力な一撃。エースの拳は強大な火に変化し、敵である大男の姿を一瞬で包み込んだ。

 エースはメラメラの実を食べた“火炎人間”。全身が火で構成されており、体から火を放って攻撃の全てに火を付与することができるという、非常に強力な能力を持っていた。

 

 普通なら一撃で終わるはず。しかしその大男は、平気な顔で巨大な火の中から現れた。

 腕を振るって火の中から無傷で顔を出すと、即座に反撃。突き出された拳はエースの体の直前で止まり、だが寸止めではなく、見えない何かが激突していた。

 

 何が起きたかわからないまま、エースは血を吐きながら吹き飛ばされる。

 衝突しただけで牢屋を丸ごと破壊して、一つや二つどころかいくつも壊して姿が見えなくなる。

 

「ぎぃやぁあああああああっ⁉ ばばばバレットォ⁉ なんでてめぇがこんなとこに!」

「なんだなんだ⁉ 何がどうなったのだガネ! 何が起きてるんだガネ!」

 

 バギーが悲鳴を発したタイミングで大男が足を止めた。そして声を発した彼を目で捉える。

 

「バギー! 奴が誰なのか知っているのカネ⁉」

「残念ながら知ってるどころじゃねぇ……! 奴の名はダグラス・バレット! 元ロジャー海賊団のクルーで、あまりの強さから“鬼の跡目”と言われた男だ!」

「ロジャー海賊団んんっ⁉ かかかっ、“海賊王”の船に乗っていた男ォ⁉ そんな奴がここに居たというのカネェ⁉」

 

 突然現れた男、ダグラス・バレットは深く息を吐き出す。

 大声を発した後、焦った顔で凝視してくるバギーを見つめ返して、興味がないとでも言いたげな無表情で呟く。

 

「バギー……力のねぇカスが、ここで何してる」

「ぐっ、まさかこいつまで居るとは……! 生きてやがったのか⁉」

「知り合いかバギー⁉ なぜお前が海賊王のクルーと⁉」

「こっちにも色々あんだよ! とにかく、こいつはやべェ……! 生まれついての戦闘狂で話なんか通じねぇんだ!」

 

 バギーが警告すると囚人たちが大声を発して驚愕する。

 “海賊王”と言えば、世界中で知らぬ者は居ない最も有名な海賊。その乗組員だったというだけで恐れたとしても何ら不思議ではない。

 ましてやバレットは今しがた自らの実力を見せたばかり。強さは疑いようがなかった。

 

 攻撃をやめたバレットは突然目を閉じ、深呼吸する。

 先程までのバカ騒ぎが嘘のように消えてなくなり、辺りは静まり返っていた。

 再び目を開いた時、バレットは凶悪な笑みを浮かべて拳を握る。

 

「準備運動だな……ここにも多少は骨のある奴が居るが、まずは、この監獄の“最強”を仕留める必要がある」

 

 拳を握り直して、にやりと笑い、バレットが身構えた。

 明らかに攻撃の姿勢。全員が嫌でも明確な敵対意思を感じている。

 再びバレットが急に首を動かして振り返った。攻撃が来る、と感じた瞬間、狙われたルフィを咄嗟に庇ってキリが前へ出る。

 

「ルフィ!」

「あっ、おい――!」

 

 バレットが豪快にパンチを繰り出す。

 キリがルフィの前へ出て庇ったものの、拳が肉体に触れる前に、衝撃だけが直撃し、二人の体はまとめて吹き飛ばされた。ジンベエやエース同様、牢屋を破壊しながら遠ざかっていく。

 

 勢いを失って体がようやく止まった後、多くの瓦礫に埋もれながら二人は生きていた。だがキリは口から決して少なくない量の血を吐いて、彼に庇われたルフィはダメージが少なかったようで、すぐに起き上がってキリの様子を確認する。

 意識こそ失っていないとはいえ、凄まじいダメージで動けなくなっている。血を吐いてぐったりするキリを見て彼の顔は明らかに青ざめていた。

 

「キリッ! バカ野郎……! おれが無事でも、お前が怪我してちゃ意味ねぇだろ!」

「ぐっ、がっ……」

 

 喋ろうとしたのか、それともただ呻いただけなのか、口から出てきたのはどす黒い血だけだ。

 ルフィが動揺しているその間も、ついさっきまで立っていた場所から激しい音が聞こえてきて、同時にいくつもの悲鳴が重なって聞こえた。

 まずい状況になった。ルフィは倒れたキリを背負って思わず駆け出す。

 

「くそぉ! エース~! 大丈夫か!」

 

 エースはどうなったのか。Mr.2は、バギーたちは無事なのか。

 再び出入り口付近の開けた場所に辿り着いた時、ルフィはその光景を見る。

 まさに地獄絵図であった。

 

 言うなればバレットは、ただ直進しているだけだった。

 目についた人間に近付き、攻撃し、辺りに血が広がると、また次の人間へ向かう。ただその繰り返しで、レベル6のフロアはどんどん赤く染まっていく。

 異常な筋力で人間を叩き潰して、引きちぎり、シンプルに破壊する。

 災害が形を持って動いているかのような。圧倒的な暴力がそこに存在していた。

 

 キリを背負っていることは無関係に、ルフィは自ら手を出すことはできずにいた。

 肌がビリビリするほどの迫力。ただ見ているだけで、彼が他とは全く別物だと感じる。

 放っておくのはまずい。エースたちが無事かもわからない。何より仲間であり、自分の海賊団のクルーでもあるキリがやられた。ルフィは怒りを隠せずに決断する。

 

「キリ、お前ここで休んでろ……! あいつはおれがぶっ飛ばしてやる!」

「ゲホッ、だ……めだっ……! ルフィ……!」

 

 キリが制止しようとしても聞かずに、ルフィは駆け出した。

 囚人たちを薙ぎ払って前進するバレットの背後から凄まじい速度で接近する。

 

「おいお前ェ! おれの仲間に!」

 

 バレットは素早く振り返り、飛び掛かってくるルフィの姿を見る前にパンチを繰り出していた。

 

「何やってん――!」

 

 ルフィがパンチを繰り出す前に、バレットの攻撃が先に当たり、拳が触れることなく衝撃だけがルフィの腹を打つ。

 彼は何が起きたかもわからずに血を吐き、その体は呆気なく宙を舞った。

 軽々と吹き飛んで突き刺さるように壁へ激突し、地面に落ちたルフィは気を失っている。

 

 ほんの数分間。気付けばバレットの周囲に立っている者はほとんど居なかった。

 今も立っているのは彼の攻撃を受けて倒れなかったか、或いは完璧に見切って避けた者のみ。

 バレットはにやりと笑い、深呼吸する。

 

「ふ~っ……悪くねぇ」

 

 明らかに敵対意思を持った人間が何人も、思いのほか多く残っている。

 それらを気にせずにバレットは高い天井を眺めた。

 

「だがまずはあいつだ。“最強”が誰かを――」

「てめぇ、おれの弟だぞ……!」

 

 様子を窺っていた人間たちの中から唯一、ただ一人だけが前へ出てくる。

 ルフィが殴り飛ばされた瞬間を目撃していたエースは、もはや我慢などできないほど熱くなり、我を忘れて前進していた。

 その姿を見て咄嗟にジンベエが危機感を抱くが、声をかけただけでは彼は止まらない。

 

「いかんエースさん! 急ぐな! 覇気を乱しては勝てんぞ!」

「何してくれてんだァ!」

「弟? ただの、カスだろう」

 

 エースが炎を纏った拳を突き出して、バレットは敢えて避けずに受けた。

 図らずもその一撃をきっかけに戦闘が始まる。

 レベル6の様相が一変するほどの戦いとなって、インペルダウンに激震が走った。

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