とある孤独の魔神転生   作:変態魔術師

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とある孤独の魔神転生

 

 果ての無い黒が広がっている。

 限りなく滑らかで、起伏のない黒。それを地面と呼ぶには、あまりにも不自然に平坦な黒。

 

「……………………あ?」

 

 起きた時、俺は自分が目が覚めたことに気付かなかった。眠くてまだ目を瞑っているのだと思っていた。

 そうでないことに気付いたのは数秒後だった。

 目を開けているのに光がない。否、光だけでなく、何もかもがない。

 地面も重力もなく、生物も無生物もなく、時間も空間もなく、星も宇宙もない。

 世界の一切が、存在しない。

 

 そして自分の身体が別人のものに変わっていることに気付く。

 

「か……鏡……」

 

 そう呟くと鏡が出てきた。ピカピカの、曇り一つない鏡だ。この黒の世界にポツンと一つ、不自然な程輝く鏡が、俺の身体を映し出す。

 

「……嘘、だろ……」

 

 なんとなく嫌な予感はしていた。

 なんせ、この状況は先程まで自分が読んでいたライトノベルのそれに酷似しているのだから。

 

 『隻眼の魔神』オティヌス。俺の身体は、孤独な少女の肉体に入れ替わっていた。

 

 

 

 ──────────

 

 

 

「俺……オティヌス、なのか」

 

 目の前の鏡に映る『俺』の顔をペタペタと触る。

 柔らかで、ハリがある。白人の少女らしい、真っ白な光沢を放つ魅惑の肢体が、露出の多い服装により嫌でも目に入る。

 

「ということは、この世界は」

 

 『とある魔術の禁書目録』の世界、ということなのだろうか。

 それを証明するものはない。何故なら、ここには人の痕跡も何もないのだから。

 この黒の世界については、その正体をなんとなく察していた。

 『新約 とある魔術の禁書目録』にてオティヌスが世界の全てを破壊した時に残ったもの。

 

 実際には薄皮一枚隔てた先の『隠世』という位相などオティヌスの力では干渉できなかったものもいくつかあるので、本当に全てを破壊し尽くしたかというとまた微妙だが。

 しかし、とにかく主人公・上条当麻の暮らす世界やそこに重なる宗教・神話というフィルターはとことん破壊された。

 それで残ったのがこの黒だ。

 

「つったって、俺はどうすれば良いんだよ……」

 

 この手のやつ──別人の肉体に憑依する展開──でありがちな肉体の記憶を読めるとか、力の使い方が感覚で分かるといったものは無い。

 かといって下手に力を試すと、本当に取り返しの付かない事態になった時にヤバい。

 八方塞がり────詰み、である。

 

「でも……でも俺は、こんなことで何もかも諦めたくない」

 

 そうして俺は、自らの肉体の持つ力について学び始めた。

 

 

 

 ──────────

 

 

 

 時間の概念も無いので、どれくらいの時間が経過したかというのもよく分からないまま、しばらくこの世界を歩き回る。

 一人ぼっちだった頃のオティヌスや、彼女に世界を壊された上条当麻は『これ』を何千何万、何百億年と……否、それこそ無限に体感してきたはずだ。

 終わりのない彷徨。無限地獄。

 どうして俺がこんなことになっているのか。ここは地獄であり、俺の知識に基づいたシチュエーションで最悪な状況を体験させているのか。

 そんな『他者の悪意』を疑いすらしたが、改めて思うのはそんな『悪意』すら存在しない無の静寂。

 

「うう……うううううう……ひっく……ひっく……」

 

 あまりの絶望にとうとう俺は泣き出す。

 恥も外聞も無かった。

 ガワはともかく中身はいい年した男だ。それがこんなみっともない泣き顔を見せているのだ。

 そんな思いすら意味を成さない。むしろ恥ずかしいと感じられるくらい今は人が周りにいて欲しかった。

 孤独、恐怖が精神をとことん蝕んでいた。

 それでも今の俺の喉から漏れ出る声はオティヌスの声である。男の汚い泣き声ではなく、聞き心地の良い透き通った声である。

 

「うあ、うわああ、ああああああ」

 

 しかしそれが逆に俺を追い詰めもする。聞き慣れない他人の声と認識しているがゆえ、自分(オティヌス)の泣き声を意識してしまい、より強い絶望の中にいることを強く自覚させる。

 

 ────そんな時だった。

 

「んくっ……ん、え、あれ……?」

 

 すう、と冴えるような感覚が一瞬脳内を駆け抜け、次の瞬間、知らない記憶がブワッと頭の中に溢れ出す。

 これは。

 

「オティヌスの……記憶だ……」

 

 何故このタイミングで、と思ったが、とにもかくにも絶望から抜け出すチャンスが来た。

 上条当麻すらいない原作よりさらにハードモードなこの『黒』を打破する可能性が湧いて出てきた。

 

「うわ、すごい……弩……骨船……死者の軍勢……なんでも分かる」

 

 オティヌスの体験した全て、オティヌスの持つ魔術の知識、それが順々に脳内に実装されていく感覚が俺の頭を満たしていた。

 そして。

 

「……新天地送り……だと……」

 

 どうやらオティヌスが世界をぶっ壊した衝撃が凄すぎて新天地の座標が部分的に現世に露出し、上条当麻がそれに吸い込まれて消えてしまったらしい。

 

 そんなのアリか? と思ったが、そもそも原作でもあの『新天地』は、理想送り(ワールドリジェクター)で飛ばされる以外にも、『窓のないビル』が宇宙飛行した時にウラシマ効果がどうやらでコロンゾンが飛ばされたように、条件が揃えば行けてしまう場所だった。

 

「とはいえ、今回は本当に偶然だったみたいだけど」

 

 とにかく、オティヌスの記憶からこの情報が掘り出せただけでも大収穫だ。

 

 ならばやることは決まっている。

 

「行くか……新天地……!」

 

 絶望から脱出する可能性を見つけ、魔神の力で以てしても難しい問題に挑む。

 これが今の俺のモチベーションやメンタルを保つことになった。

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