TSサイボーグ戦士になって人類の敵と戦うことになった 作:タメガイ連盟員
三月。
年度の終わりが近づき、新しい年度への準備が慌ただしく行われていく。
アルテミス女学園生徒会長、
中等部から高等部への進級が確定した者の中等部寮から高等部寮への引っ越し、新入生の受け入れ、それに伴うオリエンテーリングの準備などなど。
もっとも、多くの作業は機械がやってくれるので作業量はたいしたことがない。
と言うわけで野花は常と同じように、通常業務を終わらせてしまえば暇を囲うことになる。
「野花は引っ越ししないのか?」
応接用ソファに寝そべっている、赤白の縞模様と言う奇抜な色の髪をベリーショートにした少女が尋ねる。髪色に関して言えば、アルテミス女学園では珍しいものではないが。
「僕はほとんどここで寝起きしてるんで」
「あー、仮眠スペースなんてあるもんな。良いのかそれで」
「良いと思います」
「ふーん」
興味なさげに応接机の上にあるスナック菓子を摘まむのは、
中等部の野花が生徒会長になっているのは奇妙に思えるが、前生徒会長が卒業した際、その後任を決めようとなったのだが、高等部の上級生たちがパスしたことで、野花の代にお鉢が回ってきたためだ。
ちなみに生徒会長はいるが生徒会はない。野花が生徒会を作らなかったためだ。業務はほぼ機械で補えるので、書記や会計といった役職は必要ないだろう。もちろん、理由はそれだけではないのだが。
「野花のこと、中等部の校舎で見たことないもんな」
実は、生徒会長と生徒たちには少なからずわだかまりがある。いや、これでもかなり控えめな表現だ。野花が中等部の校舎に行った日には石を投げつけられかねない。幸いと言うべきか、生徒会室は高等部校舎にあるため、野花はそうした目に遭わずに済んでいる。また、生徒会室で寝泊まりをしているのもこのためだ。
「夕紀は引っ越し終わったんですか?」
「俺は私物少ないからな。楽なもんだよ」
夕紀は生粋のアルテミス女学園生ではない。北陸聖女学園からの転入生だ。転入自体はたまにあるのだが、その転入元がその聖女学園と言うのが微妙だ。聖女学園は他校との交流も乏しく、宗教色が強い。しかも転入時期がアルテミス女学園にとって大きなイベントが終わった9月と言うのもまた微妙だ。野花は夕紀の転入について、その背後のある意図に野花は訝しんだものだ。
当時はわからなかったが、今なら理解できる。のだが。
「でもさー、高等部寮って一軒家じゃん? 俺、あいつらと暮らす自信ないんだけど」
「自信も何も中等部寮にすらいないじゃないですか」
本人がこうもゆるくては、どんな意図があってもあまり意味がなかったと思う。
野花は生徒会室で一人で過ごしていることが多い。下級生には忌み嫌われているし、上級生も生徒会長職を押しつけたことに負い目があるのか、一人を除いて近づくことはない。夕紀はその辺の事情を知ってか知らずか、頻繁に顔を出してくる。まあ、お菓子をたかりに来ているだけなのかもしれないが。
それでも、こうして夕紀と益体のない会話をするのは嫌いではなかった。
一人でいるとどうしても思考がネガティブに陥りがちな野花にとってはありがたかった。
「? どした」
彼女と話していると、アルテミス女学園入学前の、小学校の同級生の男の子と話しているような気分になるのはなぜだろうか。
なんとも不思議だった。
「夕紀って」
「うん」
「男の子っぽいですよね」
「ソ、ソウカナー」
「なんでカタコトなんですか」
「あー、うん。なあ、野花」
「はい」
「俺が実は男だって言ったら、信じる?」
「……その見た目で?」
野花は、寝そべっているにも関わらず形がわかる夕紀のそれに胡乱な視線を送る。
「言うなよ、結構気にしてるんだから」
「気にしてたんだ」
「案外違和感あるんだぞ、これ」
「へー」
流石に野花の声色が冷たくなってきたことに気づいた夕紀が起き上がる。
「あー、んじゃ、俺帰るわ」
「お菓子は自分で買ってくださいね」
「考えとく」
生徒会室を出た夕紀はぼそりと呟く。
「本当なんだけどなぁ」
主人公はTSペガサスちゃんです。プレデター細胞ならTSでもなんでもござれだぜ