TSサイボーグ戦士になって人類の敵と戦うことになった   作:タメガイ連盟員

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第十一話

 顔面を殴られた鎧もどきが直しかけの壁やその瓦礫を崩壊させて屋外に飛んでいく。

 

 ペガサスの身体能力は常人の比ではない。あのプレデターに対抗できるのだから当然だが、鎧もどきを殴った張本人である真嘉は、その中でも特にパワーに秀でている。それに僅かな距離ではあるが助走が加わった殴打をまともに受ければ吹き飛ばされるのは道理であろう。

 

 それを目撃していた夕紀は背景に銀河を描いた猫のような顔をしていた。

 

「なにやってんだ……?」

 

 最初に鎧もどきを見たとき以上にわけがわからなかった。

 

 確かにペガサスのパワーなら素手での殴打でも相手を飛ばすことはできる。が、それが有効打になるかと言えばそうではない。いくら身体能力が向上しようとペガサスの皮膚がプレデターに装甲に比べて柔らかいことに変わりはない。そんなものをぶつけてもプレデターの装甲を破ることはできない。それどころか、殴った方が負傷してしまうだろう。

 

 つまり、真嘉の行動は攻撃としてはまったく意味がない。しかし、殴打は攻撃に他ならない。

 

 なにやってんだ、としか言い様がない。

 

 真嘉は夕紀や兎歌には見向きもせずに穴から屋外へ出て行く。

 

 二人の存在に気づいていない、と言うわけでもないのだろうが、彼女の意識の殆どは鎧もどきに向けられているようだ。

 

 夕紀は外壁の穴から顔だけを出して、様子を窺おうとすると、後ろから視線を感じた。さっきの音で目を覚ましてしまった兎歌が困ったような顔をして夕紀と穴の向こうを交互に見ていた。夕紀はおいでおいでと手招きする。兎歌はこくこくと頷くと夕紀の下から同じように顔を出す。

 

「だ、大丈夫なんでしょうか……? あのプレデターさん、怒ったりしませんよね?」

 

「んー、まー、大丈夫なんじゃないかね」

 

 確信があるわけではないが、さきほど月世と夕紀が敵なら倒す、と名言されたあとだと言うのにアルテミスに残ることを了承したのだ。殴られた程度でそれを反故にはしないだろう。それを真嘉がどう考えるかは別の問題だが。

 

 鎧もどきが体を起こして頭を振っている。どこまで人間臭い動作だ。

 

「やっぱり中に人間が入ってるようにしか見えねえなぁ……」

 

 しかし内部に人が入る余地がないのは確認しているからそれは違う。そういえば、と思い出す。昔読んだ漫画に外見は人間の敵だが精神は人間のまま、と言う主人公がいた。鎧もどきもその主人公と同じようなものなら、こちらの言葉を理解できたりしていることも筋が通る。実際のところはどうなのかはわからないが。

 

 鎧もどきを真嘉が押し倒して上に乗る。

 

「おっ、マウント取ったぞ」

 

「なんで楽しそうなんですか……」

 

 真嘉は堰を切ったように感情の赴くままに叫ぶ。

 

 お前はプレデターなのか、プレデターならなぜ自分達を攻撃しない、なぜ愛奈達を助けた、なぜもっと早く来てくれなかった。どうしたらいいかわからない。わからない。なにか、なにか言ってくれ、と。

 

 ゴルゴンになる直前に救われたと愛奈や月世、切り替えの早い夕紀は既に受け入れているが、真嘉を始め二年生達はそうではない。しかし、彼女達の活性化率に余裕は少ない。同級生らを救いたければ鎧もどきを受け入れるほかない。それでもずっと敵だったプレデターを受け入れる、と言うのは心情的に難しいのは確かだ。だからこそ真嘉は苦悩しているのだ。

 

 そんな真嘉に応えるように鎧もどきが彼女の頭に手をのせる。慰めるために撫でようとしているのだろうか?

 

 その意図を察した真嘉が鎧もどきに謝罪する。鎧もどきもサムズアップで応える。あいつ、あれしかできないのか。

 

 そして真嘉はみんなを助けてくれと涙ながらに頼む。鎧もどきのサムズアップは継続している。

 

「……本当に大丈夫みたいですね」

 

「まー、殴ったのを三年の先輩がどう思うかって問題はあるけどなー」

 

「えっ……」

 

 これ以上は真嘉が落ち着くまでそのままがいいだろう、と夕紀と兎歌は穴から顔を引っ込める。

 

「ああ、愛奈先輩は許してくれると思うぜ」

 

 その言葉に兎歌が安堵したような

 

 だが月世がどうするか。真嘉の行動を敵対行為と判断したなら、ずいぶんと果断な行動をしそうではある。困ったことに、この病室にはそれが可能な武器が二つも置いてある。夕紀は月世がそうした場合止めるつもりはない。と言うか止められない。素手ならともかく、ALISを持った彼女に勝てる気がしない。一応夕紀は狙われないかもしれないが、まあ、そのときはそのときだ。月世に殺されるならそう悪くもないし。

 

 しばらくして真嘉と鎧もどきが病室に戻ってくる。

 

「……見てたか?」

 

「ばっちり。あ、先輩には秘密にしときますか?」

 

「いや、ちゃんと話す」

 

「そうっすか」

 

 真嘉がそう考えているなら夕紀に特に言うことはない。

 

 鎧もどきを受け入れたのに、真嘉は未だに思い詰めた様子だ。まだ何か気になることでもあるんだろうか。

 

 夕紀がそんな風に考えていると、真嘉がその場に正座をし出す。そしてなぜか鎧もどきもその隣に並んで正座する。

 

「何やってんっすか……?」

 

「その、なんだ。こうした方が良いと思って」

 

 やっぱり面倒くさい人だなー、と思うが、夕紀は放っておくことにしようと思った。

 

 そのとき、病室の扉が開かれた。愛奈達が戻ってきたのかと思ったが、そこにいたのは二年生達だ。真嘉が戻ってこないから様子を見に来たのだろう。

 

「なに、この状況……?」

 

「ああ、それはですね」

 

「待て、山里。オレから話す」

 

 二年生達が真嘉の前に集まると、彼女がここで何をしでかしたかを話す。それを聞いた咲也の表情がぐるりぐるりと変わり、そして。

 

「なにやってのよ馬鹿ー!」

 

 爆発した。

 

 そこからは咲也による説教が怒濤の如く真嘉に降り注ぐ。

 

「あれ、止めないんでいいんすか?」

 

「さやさやがああなったらねー、止められないんだ!」

 

「気が済むまでああするしかない」

 

 他の二年生は傍観モードである。彼女らがそう言うなら夕紀も放置を継続する。

 

「でも、なんで人型プレデターまで正座してるんでしょうか」

 

「さあ?」

 

 謎である。案外その場のノリなのかもしれない。

 

 説教をする咲也とごめんなさいを繰り返している装置と化した真嘉。そしてそれを傍観するペガサス達。混沌であった。

 

「……なにごと?」

 

 そこに野花と硯夜稀を連れた愛奈と月世が戻ってきた。その顔には今日何度目かわからない困惑が浮かんでいた。

 

 ともかく、これで一年生の一人を除いた高等部全員が集合した。この混沌とした状況も収束するのだろうか?




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