TSサイボーグ戦士になって人類の敵と戦うことになった   作:タメガイ連盟員

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今年最後の投稿になります。来年もよろしくお願いします。


第十二話

「あ。愛奈先輩」

 

 兎歌の声で室内の全員が愛奈達が戻ってきたことに気づく。流石に真嘉に泣きながら説教をしていた咲也も中断せざるを得ない。愛奈達も全員が室内に入ったところで扉を閉める。

 

 高等部三年、喜渡愛奈、久佐薙月世

 

 高等部二年、土峰真嘉、篠木咲也、穂群香火、白銀響生、雁水レミ

 

 高等部一年、蝶番野花、硯夜稀、山里夕紀

 

 中等部一年、上代兎歌

 

 高等部一年の野々川茉日瑠を除く高等部のペガサスが一堂に集まったことになる。こういった状況は大規模侵攻直前ぐらいにしかない。

 

「どういう状況なの?」

 

「あの! 先輩、これは……!」

 

 咲也が焦ったような声を上げる。

 

「大丈夫、落ち着いて」

 

「はい……」

 

 それから咲也は愛奈がいない間に起きた出来事を話す。もっとも、咲也の話は真嘉からの伝聞であるため抜けている部分が少なくない。それから愛奈がその内容を真嘉に確認すると、今日何度目かわからない困惑に思わず表情が歪む。

 

「一部始終見てたんで、俺からもいいっすか?」

 

 そこに夕紀が挙手する。病室に夕紀と兎歌を残して行ったんだから、その場にいたのは当然だ。

 

「止めなかったの?」

 

「入ってきていきなり最高速で突っ込む人を止めるのは無理っす」

 

 加えて、夕紀と兎歌、どちらもリラックスした姿勢でいたから真嘉の突飛な行動に対処できなかったのも無理はない。

 

「まあ、だいたいは先輩が話した通りなんですけど、土峰先輩が黙ってる部分があるんで」

 

「え?」

 

「……! おまっ!」

 

 真嘉が顔を紅潮させるが夕紀は無視して、真嘉が鎧もどきを殴ったことを謝りそれを鎧もどきも受け入れたこと、それから間違いなく素手で殴ったことを話す。

 

「大事なところなんで、隠し事は無しにして欲しいっすね、先輩」

 

「……」

 

 無言で顔を逸らす真嘉。

 

「ていうかなんでお前まで一緒になって正座してんだ。やらかしたのは土峰先輩だけなんだから。ややこしい。おーい、兎ちゃん、椅子持ってきて椅子」

 

 言いながら夕紀は鎧もどきの両脇に手を入れて強引立ち上がらせ、兎歌が持ってきた椅子に座らせる。

 

「じゃ、俺からは以上っす」

 

 なにか満足げな様子で夕紀は後ろに下がる。

 

 さて困ったのは愛奈だ。既に鎧もどきが許している、と言うなら愛奈も当然、真嘉を許すのが自然。しかしただ許しておしまい、と言うわけにはいかない。

 

 愛奈には、真嘉にあのような行動をさせてしまったのは自分が追い込んでしまったからだ、と言う思いがある。だからこそ、自分が真嘉の行動について断を下していいのか、と悩んでしまっている。

 

 しかしこの光景、端から見ると愛奈がずっと黙ったまま真嘉を睨み付けているようにしか見えず、対する真嘉の顔色も先ほどの紅潮が裏返ったように青白くなっている。

 

 それを見かねた月世が愛奈に声をかけると、ようやく自分が思考のスパイラルに嵌まっていたことに気づいたらしい。

 

 真嘉は自分のやらかしたことのせいで他の二年生の活性化率を下げてもらえなくなるのではないか、と言うことを危惧していた。そのため、自分は罰せられたいと考えていた。愛奈は目線を真嘉に合わせ、自分はあなたを許す、そしてみんなで生きていくために力を貸して欲しいと告げる。許された真嘉は涙を流し、それを愛奈は優しく抱きしめる。

 

「で、土峰先輩はこいつの受け入れには賛成ってことでいいんすか?」

 

「お前な……」

 

 空気を読まない夕紀に呆れながらも真嘉は頷く。

 

「改めて、って言うのもおかしい感じだけど、俺達二年生はアイツを受け入れる。オレは愛奈先輩の力になる……だから、あいつらを助けてくれ」

 

「うん。ありがとう」

 

「とりあえず一段落って感じっすかね。月世先輩が土峰先輩の首をばっさりやらないかとヒヤヒヤしてましたよ」

 

 夕紀は月世が部屋に入ったときにまず壁に立てかけていた自分のALISに視線を向け、それから室内にいる全員を確認していたことに気づいていた。

 

「でも、誰も死ななくて良かったです」

 

「そっすね、せっかく二人が死なず済んだのに死体の山を築かれちゃたまんないっすからね」

 

 物騒なことを言いながら笑い合う月世と夕紀。困ったことに、月世は真嘉達を敵と認識した場合、その場にいた愛奈以外のペガサスを殺すつもりでいた。夕紀は別に死んでも構わない、と言うスタンスなのでそれに気づいたところで何もする気はなかった。

 

 愛奈はこの物騒な親友と後輩にため息をつきながら、残る一年生に声をかける。

 

「お待たせ、二人と――」

 

 そうしようとした瞬間、夜稀が目を爛々と輝かせて鎧もどきに詰め寄った。

 

「え」

 

「あなたのことを知りたい!」

 

 と質問攻めを始めてしまった。せめてゆっくり聞こうよ、と注意するが耳に入っている様子はない。

 

「硯はああなったら人の話聞かないんで! みなさんと話をする前に三年生のお二人と話がしたいんですが、よろしいでしょうか!」

 

 愛奈は月世に向かって頷いてみせる。月世もそれに頷き返して了解を伝える。

 

「えなりん先輩! 彼に活性化率を下げてもらえるようにお願いしていーい!?」

 

 そう尋ねてきた響生に、彼がいいよって言ってくれたら、と返す。それから夕紀に夜稀が暴走しすぎないように見張るように頼む。

 

「既に暴走してません?」

 

 と言う夕紀のツッコミは聞かなかったことにして、愛奈、月世、野花が病室を出て行った。

 

 残された二年生達と夕紀、兎歌だが夜稀があの調子では活性化を下げるのはすぐにはできなさそうだ。 

 

「で、どうします、あれ」

 

「どうってなぁ……」

 

 未だ目元を赤くはらしたままの真嘉が困ったように頭を掻く。真嘉としては響生が言ったようにみんなの活性化率を下げてもらいたいところだが、夜稀の扱いにはどうしたもんかと思っている。

 

 しばらく夜稀を見つめていた夕紀が彼女に近づき手早く白衣を脱がした。

 

「なにやってんだお前」

 

「え? ああ、すいません。白衣着てる奴見てるとぶん殴りたくなっちゃうんで」

 

「……そうか」

 

 顔は笑っているが明らかに目が笑っていない夕紀を見てはそうとしか返しようがない。

 

「うわ、なんだこのねちゃねちゃしたの……こいつ普段何やってんだ」

 

 白衣を脱がされたことにも夜稀は気づいていないようだ。対する鎧もどきはひたすら困惑している様子。

 

「こいつ、はい、いいえぐらいしか意思疎通できないっぽいから質問は後回しにした方が良い気がするんすよね」

 

「そうだねー」

 

「じゃあ、実力行使、行っていいっすか!」

 

 明らかにワクワクした様子で尋ねる夕紀に響生が乗る。

 

「いいよ! やっちゃえ!」

 

「よし、じゃあ、先輩方ちょっと離れてください!」

 

 夕紀は夜稀の背後に立つと、その腰に手を回して立ち上がる。そして、そのままブリッジをする要領で後方へ夜稀の上半身を床にたたきつける。

 

「じゃ、ジャーマンスープレックス!」

 

「これ、一度やってみたかったんすよ!」

 

「盛り上がってるとこ、悪いんだけど、これ大丈夫なの?」

 

「さあ?」

 

 夜稀から手を離した夕紀がブリッジの姿勢から逆再生するように立ち上がる。

 

「さあじゃないわよ!」

 

「いやいや、ちゃんと加減はしてますから」

 

 夕紀の言う通り、夜稀が仰向けで倒れているコンクリート製の床にはヒビ一つ入っていない。ペガサスのパワーで叩きつけたら、床を抜くこともできるから嘘ではない。

 

「──ごめん。ちょっとだけ我を忘れた」

 

「そう言うわけだから、こいつへの質問は後でいいか???」

 

「うん」

 

「と言うわけで、どうぞ、シルバー先輩」




真嘉(こいつ、響生のことシルバーって呼んでたのか)
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