TSサイボーグ戦士になって人類の敵と戦うことになった   作:タメガイ連盟員

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第三話

 夕紀は『街林』を一人で駆けていた。

 

 さきほど、『街林』に地形習熟のために出ていたグループが帰還したのだが、プレデターの奇襲を受け数名が重傷を負い、しかも彼女らを教導していた高等部三年生がそのプレデターに対処するため残ったのだと言う。

 

 その話を聞いてすぐに夕紀は自身の専用ALIS『アコニツム』を携え、すぐに学園外へ飛び出した。

 

 戦闘面でその三年生のことは心配していない。問題なく殲滅できるだろう。問題は上述した通り、高等部三年生となれば活性化率は『ゴルゴン』になる寸前と言って良い。厳密には95%に到達した時点で活性化率の上昇は急激なものになり、数分で100%に達してしまう。つまり、95%が限界値なのである。

 

 具体的な数値を夕紀は把握していないが、三年生の戦闘方法は活性化率が上昇しやすい魔眼の使用を前提にしている以上、95%に達している可能性が極めて高い。そのまま彼女が自害していればいいのだが、そうでない場合凶悪なゴルゴンが誕生してしまうことになる。

 

 つまり、夕紀は三年生にトドメをさそうとしているのだ。

 

 一見すれば、非情極まりないことだが、死を拒絶するペガサスを他のペガサスが殺害することは珍しくはあっても皆無ではない。まだ生きているペガサスにとって、『ゴルゴン』はそれだけ脅威なのだ。本来ならばこうした“進路相談”は生徒会長の仕事なのだが、現生徒会長は戦闘能力が劣っているため、最悪『ゴルゴン』になっている可能性がある相手を追わせるわけにはいかない。

 

 夕紀は戦闘を得意とするペガサスだが、『ゴルゴン』と1対1で戦って勝てるか、と言うとかなり厳しい。『ゴルゴン』は元になったペガサスの魔眼や戦闘スタイルを継承する。件の三年生は弓型のALISをメインに近距離から遠距離戦をこなしていたから、近距離戦を主とする夕紀では返り討ちになる可能性が高い。だから『ゴルゴン』になる前に仕留めなければならない。

 

 駆けている間に、ぽつぽつと雨が降り始めている。

 

 雨で濡れることで行動が阻害されるわけではないが、服が肌に張り付く不快感は避けようがない。雨脚が強くなっていく。

 

 そして、夕紀の視界に立ち尽くす三年生――喜渡 愛奈(きわたり えな)の後ろ姿が入った。ペガサスは五感も強化されているから、まだ距離はある。

 

 まだ毒を飲んでいないようだ。だが、間に合った。

 

 腰に下げている三本剣のうち一つを手に取る。

 

 一撃だ、それで首を切り落とせば彼女は死ぬ。

 

 プレデター細胞を持つペガサスはちょっとやそっとの負傷で死にはしないが、首だけは例外だ。これは『プレデター』も同様で、戦闘では首への攻撃が推奨されている。

 

 足に力を込め、加速する。

 

 夕紀の耳朶に、雨音以外の音が飛び込んでくる。

 

「──死にたくない!! 死にたくないよっ!!」

 

 ああ、わかっている。わかっている。でも死んでくれなければ、もっと大勢が死ぬ。彼女だってわかっている。このままでは『ゴルゴン』になって、自分の後輩を殺してしまうかもしれない。彼女だって、自分の先輩や同級生が『ゴルゴン』になるのを見ているはずだ。だからと言って、死を受け入れられるかはまた別なのだろうが。

 

 夕紀から見た愛奈は、人の機微をよく読むお人好し、と言う印象だ。ある理由から浮いた存在だった夕紀のことも気にかけてくれた。だが、そうした行動は彼女が孤独を恐れるがゆえのものだったのだろう。

 

 誰もいないこんな場所で死ぬ。それは彼女にとって耐え難いものに違いない。

 

 だが、それもあと数歩で終わる。改めて、剣を強く握りしめる。

 

 そして、それが現れた。

 

「──だれかたすけてよ!!」

 

 西洋甲冑を思わせる異形が愛奈に傘を差し出すと言う光景。

 

 まったく非現実的なそれに、夕紀は思わず足を止めて、間の抜けた声を漏らしてしまう。

 

「は、はぁ?」

 




実はこれが1話の予定だったんですけど、いろいろ足したくなって3話にスライド。短めなのも設定解説が前の話に入ったためです。
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