TSサイボーグ戦士になって人類の敵と戦うことになった   作:タメガイ連盟員

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第九話

「ところで、あなたはどう考えているのですか?」

 

 この場では愛奈と月世が自身の立場を表明している。二年生達は協議中、となると残るは一年生だ。他の三人はこの場にいないので個別に確かめることになるが、夕紀は実のところその当たりをはっきりさせていない。さっきの話はあくまで経緯を説明しただけだ。

 

 ある意味で、鎧もどきの存在を最初に受け入れたのは夕紀だ。しかし彼をどうするかの判断は愛奈に丸投げしている。そのことが夕紀の態度を不鮮明なものにしてしまっている。

 

「言わなきゃダメっすか?」

 

「ええ」

 

 夕紀は嫌そうにしているが月世は容赦がない。上級生には基本逆らわない夕紀は逃げることを諦めざるを得ない。

 

「あー、正直言うと、活性化率を下げる下げないはどうでもいいんすよ、俺。下げられるに越したことはないんすけど、別に明日死んでも構わないんで」

 

 ペガサス達の多くは死を恐れる。いや、それはペガサスに限った話ではない、人間であるなら当然の反応だ。

 

 しかし夕紀は北陸聖女学園で自分と同じ立場の少年、元少年達が無意味に死んでいく様を見てきたことで死生観がズレてしまっている。家族が死んでいることも影響しているが、帰る場所のない彼女にとって、戦って死ぬことが最上級の最期なのだった。

 

 それでも一年に満たない関係ではあるが、アルテミス女学園のペガサス達の心情は理解しているつもりだ。冬季大侵攻で同級生や下級生を危機から度々助けていたし、それは子供じみたヒーロー願望の発露であったとしても誰かが死ぬことを良しとするほど非情でもない。もっとも、秘密を守るために兎歌を口封じしようとしたあたり、時と場合によってその優先順位は変わるのだが。

 

「最初にこいつを見たとき、プレデターとは別の何かなんじゃないかって思ったんすよ。見た目がプレデターっぽいだけで、やってること全然プレデターとは違うじゃないですか」

 

 夕紀は鎧もどきに近づき、胸板か胸部装甲と呼ぶべきか定かではない場所をノックするように右手の甲でコツンと叩く。

 

「本は読むし、缶詰を俺達に食べさせようとしたし、しかも温めて。順番逆っすけど、愛奈先輩がゴルゴンになりかかってるの助けたし。中に人間が入ってるんじゃないと。でもそうじゃない。なんで、プレデターなんだけどプレデターじゃない、そういうものなんだと思います。もしかしたら、俺達ペガサスに近いのかも。ペガサスって人間だけど人間じゃないし、かと言ってプレデターでもないじゃないですか、だから親近感でもあるんじゃないかなって。ああ、ううん? いやなに言ってんだ俺。

 

 ともかく、あのときこいつの雨宿りについていったのはその場の勢いだったんすけど、今のところはまあ、人間よりは信用できるかなって感じっす。なんで学園で受け入れても良いんじゃないかと思います。あー、さっき先輩が言ったみたいに俺達に取り入るためかも知れないですけど、そのときはやっちゃえばいいわけですし」

 

 鎧もどきが顔を逸らしたように見えたが、おそらく気のせいだろう。

 

「夕紀」

 

「はい?」

 

「月世もだけど、彼がこれからも私達の元にいてくれるかまだわからないんだからそう言うこと言うの禁止」

 

「はい」

 

 大丈夫なんじゃないかなぁ、と思いながらも頷く夕紀。明らかに反省していない二人に愛奈はため息をつきつつ、今度は兎歌と向き合う。今の話を信じられるか、と問うと兎歌は元気にもちろんだと即答する。

 

「兎歌、素直すぎてちょっと不安になるよ」

 

 兎歌にしてみれば、こうしてまた愛奈と会えたのは鎧もどきのおかげだし、なにより敬愛する愛奈の言葉を疑うなどあり得ないことだ。

 

「あ、うさぎちゃんのことはどうします? このまま中等部寮に帰しちゃうわけにもいかないっしょ」

 

「うん。兎歌、彼のことと、私が帰ってきたこと、誰にも話さないで欲しいの」

 

「え、先輩のこともですか?」

 

 人型のプレデターである鎧もどきを秘密にするのはわかるが、愛奈のことは話してもいいのではないか、と返す兎歌に愛奈はその理由を話す。

 

 彼の存在や活性化率が下がっている状態は常識からかけ離れた状態だ。何も決まっていない今の状態で公になるのは避けたいのだ、と。加えて、彼女が所属しているグループ『勉強会』のメンバーにも話さないように言う。秘密と言うものは知っている者が少なければ少ないほど守りやすい。逆に言えば増えればそれだけ漏洩しやすくなる。これは相手を信じる信じないと言う問題ではなく、ただそれだけで危険が増すと言うことだ。

 

 目に見えて落ち込む兎歌。『勉強会』には愛奈を慕うペガサスも多いから、彼女の無事を伝えられないのはつらいことだろう。

 

「つーわけだから今夜はこっちに泊まりだな、うさぎちゃん。先輩、せっかくですし、一緒に寝てあげたらいいんじゃないですか?」

 

 いくらか意地悪そうに笑う夕紀。その言葉にパッと表情を明るくして愛奈を見る兎歌。コロコロと表情がよく変わる子である。

 

「……考えとく」

 

 とりあえずそこは保留にして、今度は月世の方を向く。月世は以心伝心と言うべきか、愛奈の好きにするように言う。

 

 愛奈が鎧もどきに近づくと、夕紀はそこからどいて場所を空ける。

 

 鎧もどきに向き合った愛奈は、月世を助けてくれたことへの感謝、これからも自分のそばにいて欲しい、と言葉につっかえながらも伝える。

 

 それに鎧もどきはサムズアップで応え――了解と解釈していいだろう――その光景に月世はあら大胆、などと言い、夕紀と兎歌はうひょーだのきゃーだのと黄色い声を上げている。それらを愛奈は無視する。

 

「次は生徒会長ね。月世は……」

 

「わたくしも付いていきます。そのほうが話が早く済むと思いますし、病み上がりの身でも歩いて話をすることぐらいはできますので」

 

「あれ、月世先輩も体の具合悪いんすか?」

 

 首肯する月世に夕紀は民家でのことを思い出す。月世は影響がないと思っていたが、愛奈も目覚めた直後は体がうまく動かないと言っていたし、月世もそうだとすると活性化率を下げると一時的に身体能力に影響があると言うことだろうか。

 

「なら俺は留守番してますよ。土峰先輩が先に戻ってくるかもしれないですし、うさぎちゃんもこっちで待ってた方が良いっすよね?」

 

「うん。兎歌もよろしくね」

 

「はい!」

 

 三年生の二人が部屋から出て行くと、夕紀はソファの一つに身を沈めて深くため息をつく。

 

 夕紀は人前で話すことに慣れていない。平気そうに見えても、精神的には疲労が溜まっている。加えて、普段野花とする意味のない会話と違って、今日は考えて喋らなくてはならなかったし、年上の女性に免疫がないので先輩達と話すのも緊張してしまう。もう数年分も喋った気分だ。

 

「疲れたー……」

 

 いつもの部屋に帰って朝までだらけていたいところだが、ここで留守番をすると言った手前そうもいかない。なのだが、先輩達が戻ってきてもこれ以上自分が何か話すこともないし、別にもういなくてもいいんじゃないか、と思わずにはいられない。

 

 喋りすぎたせいか、喉の渇きを覚えた夕紀はのっそくりとソファから立ち上がる。

 

「飲み物買ってくるけど、うさぎちゃんもいる?」

 

 兎歌が頷くのを確認してから自販機へ向かう。一番近くにあるものは二年生がたむろしていたので別の場所で購入する。電子マネーをほとんど使わない夕紀だが、持ち歩いてはいるのだった。自分と兎歌、それから鎧もどきの分をそれぞれ。さて、あれが飲み食いできるかは定かではないが、買っていかないのも何か変だ。

 

 夕紀が病室に戻ると、兎歌はベッドの上で眠っていた。彼女もずっと緊張していて、その糸がようやく切れたと言ったところだろう。

 

 一本無駄になったかな、と思いながら、一本を鎧もどきのそばに置いてから再びソファに座り一気に飲み干す。

 

「ふぅ」

 

 気分が落ち着いてきたせいか、いらぬことを思い出してしまう。

 

「……はぁ」

 

 思わず頭を抱えてしまう。

 

 何を思いだしているかと言うと、愛奈の裸だ。

 

 夕紀にとって、あれはあまりにも刺激が強すぎた。頭の中が悶々としたものに支配されていく。

 

 男のままだったら、解消する手段があるのだが、今はもうそれが存在しない。

 

 でも、こういうところはまだ男なんだな、と言う奇妙な安心感を覚えるがこれどうしたもんかなと煩悶とする夕紀だった。

 

 

 




夕紀、情緒は小学生男子なので美少女JKの下着姿を見たらこうもなる
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