ブルアカに降って湧いた人型人外ちゃん   作: 奥床式住居

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スマソ!


第7話:料理をする人外ちゃん

 私の目の前の机には、卵,ライス,ケチャップ,厚切りハム,その他諸々の野菜がずらりと並べられている。

 

 これらは全て私がアルバイトで稼いだお金を使って買ってきたものであり、見ての通りオムライスの材料だ。

 

 なぜ私がオムライスを作ろうとしているのかと言うと、もちろんヤオさんへの日頃の感謝を伝える為の恩返しである。

 

「初めてなんでしょ?火傷とか、危ないよ?本当に、やるの?いや、ハルの、オムライスが、食べたくない、訳じゃ、無くてね?」

 

『そんなに心配し無くても大丈夫ですよ。確かに初めてですけど、難易度が高い料理ではないので。』

 

「大変だったら、直ぐに、声をかけてね?ワタシ、ずっとここで、見てるから。」

 

 見守ってくれるとは、本当にありがたい。

 

 でも、これは私からヤオさんへの恩返し。手伝って貰ったりなど、手を煩わせる訳にはいかない。必ず最高のオムライスを作ってやろう。

 

──────────────────────

 

 心配で心配でしょうが無い。これが親の気持ちというやつなのだろうか?

 

 ワタシ、家主ヤオは暫定的にハルの保護者というだけであって、血も繋がっていなければ年齢も近い(ハルは一応15歳と言うことになっている)。

 しかも最初は、ハルの顔が自分の好みだからという理由で助けており、過去の自分には最大の賛辞を送りたいものだが絶対にハルには言えない煩悩100%の打算だった。

 

 でも、今ではハルに母性を刺激されて実はワタシがハルの母親なんじゃないか?なんて考えてしまう程には溺愛していると思う。

 そんなワタシの密かな夢は、ハルに「お母さん」と呼んで貰う事。きっと、その声を聞いたその日にワタシは死んでも良いと思える程の甘美な響きなのだろう。

 思わず頬が緩んでしまう。

 

 っと、いけないいけない。ハルが怪我したりしないかワタシがしっかり見守ってあげなきゃ。

 

 ハルは今、ピーマンやニンジン等の野菜を切っているようで、ちゃんと野菜を持つ手を猫の様にして一生懸命切っている。

 ワタシの娘、可愛すぎる。

 

 何度か指を切りそうになってつい声をかけたが、毎回ハルに首を横に振られて手伝いを断られてしまった。

 まだ独り立ちは早いと思うので、もっとワタシに頼って欲しい。欲を言うと、あと10年くらい。

 

 ヒヤヒヤさせられながらも、チキンライスの具を切り終わったハルに安堵していると、次はチキンライスを作る様でライスと先ほど切った具材をオリーブオイルをひいたフライパンにのせて炒め始める。

 順調に、火が通っている様で少しづつみ良い焦げ目が付いてきた。

 

 えっ、ちょっと待ってなんでオリーブオイル持ってるの?これから入れる冷たいライスを温める為?えっといや、別に普通に火を通したらしく良いだけなんじゃ……

 フライパンの上に火が付いた!?火事になるって!ハル、危ないよ!!なんでしかもフライパン返しやり始めてるの?!!あ~!もう、ちょっと危ないって!

 

 

 幸い、ハルは火傷しなかったし天井がきつね色のちょうど良い焦げ目が付いた程度の被害で済んだ。

 次は、ちゃんと言って聞かせよう……

 天井は……ハルが初めて料理をした記録として残しておこうかな。

 

 なんやかんやあってチキンライスが出来たので、最後は卵だ。

 卵を割って、容器に入れて溶いて、少し焦げているフライパンへとたらす。

 

 また何か危ない事をしないか内心ハラハラしながら見守って、遂に卵が良い感じに焼き上がり盛り付けておいたチキンライスへとのっける。

 形は不格好だが、とても美味しそうな匂いが漂ってきてお腹がオムライスを求める様に「ぐ~」と鳴る。

 

『ヤオさん、ちょうど完成しました。最高のオムライスでも無いですし、形も崩れていますが、食べてくれますか?』

 

 そんなの決まってる。

 

「もちろん、すっごく、食べたい。」

 

 椅子に座って待っていると、ハルが先程と違いケチャップが上にかけられたオムライスを持って来て、ワタシの目の前に置く。

 

 オムライスの上には、ケチャップで文字を書くのが初めてのせいなのか子供の様な可愛らしい字で『ありがとう』と書いてある。

 健気さに思わず涙を流しそうになるが、寸前で堪える。まだ食べても無いのに、今泣いてしまうとハルを心配させてしまう。

 

『どうぞ、召し上がって下さい。』

 

 ハルに促されるまま、手を合わせる。

 

「いただきます。」

 

 手元のスプーンで1口すくおうとオムライスの近くまで持って行くと同時に頭に掠る「食べるのが勿体ない」という思い。

 しかし、食べなかったらハルを悲しませてしまう。意を決してオムライスを1口サイズでスプーンへとすくい、口に入れる。

 

 これは……

 

──────────────────────

 

 ヤオさんがオムライスを口に入れたと同時にカチンと固まる。

 

 やっぱり、美味しく無かったのだろうか。

 ヤオさんに「不味い」と言われてしまうと私は死んでしまう自信がある。

 頭の中にネガティブな妄想が浮かんでは消えていく中、ヤオさんが一言呟く。

 

「美味しい…………」

 

 それと同時に涙を流しはじめて、私は混乱する。

 

 どうしようどうしようどうしよう。なんで泣いてるの?分からない。誰のせいで泣いてるの?私のせい。

 

 そうして慌てふためいている私を見ながら、ヤオさんが話し始める。

 

「こんなに、美味しい、オムライスは、初めて、食べた。人生で、食べたものの内、ぶっちぎりで、1番。」

 

 その言葉を聞いて、少し落ち着く。良かった、美味しいって思って貰えた。

 

「ハルも、1口、食べてみて?」

 

 そう言ってヤオさんがスプーンにのったオムライスをこちらへ差し出す。

 

『良いんですか?』

 

「うん、本当に、美味しいから。」

 

 オムライスを口の中に入れ、ゆっくりと咀嚼するが全然美味しくない。

 チキンライスの具は火の通りがまばらだし、チキンライスは水気が多い。卵は焦げてるし、全体的に味が濃い。

 これのどこが最高に美味しいのだろう。

 

「ワタシが、今まで、食べたものの、どれよりも、気持ちが、籠もってた。それが、1番の理由。」

 

 そんな、愛は最高の隠し味とは言うが……本当に味に関係してくるのだろうか。

 

「兎に角、美味しすぎて、もう全部、食べ切っちゃった。」

 

 その言葉に驚いて、お皿を見ると本当に米粒1つも残っていない。

 

「あ、ケチャップ、付いてるよ?」

 

 唐突にヤオさんが私の口元を指で拭って、拭った指をそのままヤオさんの口の中に入れる。

 

「ぁ、ぁ……!」

 

 過去最大の驚きで、暫くでない筈の声が喉から自然と出てくる。

 

「!ハル、今、喋った!?」

 

 ヤオさんがグイッと顔をこちらに近づけて、口の中を覗いてくる。

 

 近い!近すぎる!!

 

 そう言えば、私さっきヤオさんの使ってたスプーンでオムライス食べた……

 

 間接キッッッッッ!!!

 

 

 その後、あまりの羞恥で倒れた私を見てヤオさんはまた救急車を呼んだらしい。




 ちなみに、天井の焦げに関してはヤオちゃんが全力で説得したのでハルはあんまり気にしないで済みました。
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