ホシノが先生と過去のアビドスに行く話   作:ツキ0912

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第11話 歴史の修正力

私達は砂漠を歩いていた。

ユメ先輩が提示してきた場所は案の定なにも出ず、ただ疲労が溜まっただけだった。

まあ、楽しかったのでそれはそれでよかったが。

多少足取りは重いが、それでも私達は目を輝かせながら鉱石が埋まる場所に向かって進む。

だが、私と先生は緊張していた。

私達は今まさに歴史を変えようとしている。

それなのに緊張しないはずがない。

ましてや、歴史を変えようとするとそれを阻む歴史の修正力が働く可能性は高い。

それでも私はユメ先輩を救うために戦うことを決めたんだ。

私と先生はお互い顔を見合わせる。

力が漲って気がする。

そう思っていると前を歩いているユメ先輩が声を挙げた。

 

ユメ「ちょっと大変かも...砂嵐だ...!」

 

ユメ先輩が言う通り、顔に砂が当たる。

 

ホシノ(過去)「あそこに廃棄された建物がありますよ

とりあえずあそこで砂嵐をやり過ごしましょう!」

 

昔の私の指示に従って私達は迅速に建物に避難した。

なるほど...もう動き始めたか...

 

ホシノ「ふぅ...みんな大丈夫?」

 

声を掛けると全員多少砂が付いたくらいでそこまで問題はなさそうだった。

 

ユメ「ふぅ...すごい砂嵐だね...

...これ、素直に帰った方がいいのかな」

 

まずい...今帰ったらそれこそ歴史の修正力の思惑通りになってしまう。

 

ホシノ(過去)「何言ってるんですか、帰らないで探しに行きますよ!

そもそもこの砂嵐で動けないじゃないですか、だったら砂嵐が収まったら行きますよ!」

 

ユメ「わ、わかった...」

 

結構ノリノリな昔の私に押されて宝探しは続行になった。

 

"ホシノ、この砂嵐って..."

 

ホシノ「わかってる...多分歴史の修正力だよ

私の時はこの時間はまだ帰り道で砂漠にいたけど、こんな砂嵐なかったよ」

 

"そっか...妨害がこれだけで終わるとは思えないし、気を付けて行こうか"

 

ホシノ「そうだね...」

 

私達が隠れて喋っているとユメ先輩が口を開いた。

 

ユメ「あっ地震...」

 

ユメ先輩の言う通り、地震だった。

今度は全員が気づいた。

決して大きくはないが、どことなく不安になる揺れだった。

結局、砂嵐が収まったのは大体1時間後だった。

 

ホシノ(過去)「よし、それじゃあ行きましょう

今日中の採掘ポイントにはついておいて、最低でも明日には作業できるようにしましょうか」

 

昔の私が先頭を歩いて再度移動を始める。

ユメ先輩がそれに駆け足でついていく。

私は少し溜息をつきながらもそれに着いていくが...歩き出す直前、先生に手を握られた。

 

ホシノ「どうしたの、先生?」

 

"ホシノ、手が震えてるよ"

 

言われて確認する。

なるほど、たしかに少しだけ震えていた。

 

ホシノ「うへっ...自分でも気づかなかったよ...

これから何が起こるかわからないから流石に不安だったかも

でもありがとう、先生...手を握ってくれたおかげで収まったよ」

 

握られた手を先生に見せる。

私の言う通り、震えは止まっていた。

それに安堵したような顔を先生は浮かべて私たちもユメ先輩と昔の私に着いていく。

 

ホシノ(過去)「あともう少しですね...」

 

採掘ポイントまでもう少しのところで、昔の私がつぶやいた。

 

ユメ「や、やっとだね...宝探しから連続で体力が」

 

ホシノ(過去)「情けないですね...そんなの私だって...

...みんな、伏せて!」

 

唐突に緊迫した声を昔の私は挙げる。

それと同時に地面が揺れる。

先程とは違い、大きく...

 

ホシノ「...これは...先生!」

 

だが、これはただの地震ではない。

私と先生はこれを知っている...この揺れの正体を。

 

"これは...まさか、ビナー!?"

 

先生が声を挙げると同時に、離れた場所で巨大な体が地面から飛び出した。

アビドス砂漠に出現する巨大な蛇のようななにか。

目的も正体も何もかもが不明な存在。

ビナーが、私達の行く手を遮った。

 

ユメ「まさかこれが...アビドス七不思議の1つ?」

 

ホシノ(過去)「そんなこと言ってる場合ですか!?

先生、ビナーって言いましたがなにか知ってるんですか!?

情報をください!」

 

"知ってると言っても...ビナーと言う存在がいるってことと数度の戦闘経験だけだよ!

ほぼほぼ知らないようなものだし、戦闘しても結局何度かダメージを与えると逃げるからまともに倒したことはないに等しいよ!"

 

私達は声を張り上げて状況を確認する。

どうしていきなりビナーが...

だが、考えていてもしょうがない...

 

ホシノ「先生、撤退しよう」

 

"ホシノ...いいの?

鉱石まではもう少しだけど..."

 

ホシノ「だけどこれは...きっと歴史の修正力だよ

流石にこれには...ビナーには敵わない...

先生の指揮と6人くらいの生徒がいてやっと撃退できるような相手だよ?

お世辞にも戦闘に役に立つとは言えないユメ先輩と私が2人...

足手まといがなくて私が1人で...ううん、2人で戦っても殺されるのがオチだよ」

 

"...わかった...けど、気落ちしないでね..."

 

"わかってる、歴史を変えるチャンスはまだあるしね"

 

私は覚悟を決める。

引くことにだって勇気は必要だ。

 

ホシノ「ユメさん、ホシノちゃん...撤退しよう!

流石にこの戦力でビナーには勝てない...鉱石は諦めよう!」

 

ユメ「わ、わかった...」

 

ホシノ(過去)「何を言ってるんですか、こんなところで撤退なんてできませんよ!」

 

昔の私の発言に耳を疑った。

 

ホシノ「ホシノちゃんこそ何を言ってるの?

戦闘経験がある私と先生が勝てないって判断したんだよ?

だったら素直に引く方が賢いってわかるよね?

 

ホシノ(過去)「だから、戦わないんです!

戦わないで潜り抜けて、目的のポイントに行くんです!

私とソラノ先輩、それに戦闘経験がある先生の指揮があればきっと...!」

 

その瞬間、平手打ちをしていた。

別に昔はともかく、今はキレやすい性格ではないはずだった。

けれど、過去の自分だからだろうか...その無鉄砲さに無性に腹が立って、私は自分を止められなかった。

 

ホシノ「もう1度言うけど、撤退だよ

確かに私とホシノちゃんなら突破は可能かもしれないね」

 

ホシノ(過去)「だったらなんで!」

 

ホシノ「先生とユメさんは?

ビナーを無視してポイントに行くとき、私とホシノちゃんでも多分無傷じゃすまない

それなら私達に戦闘力で劣る2人は?

......はっきり言うね、よくて重傷、最悪死ぬよ」

 

私の口からは冷たい言葉があふれ出る。

昔の私も否定しようとしたが事実なので否定できなかった。

 

ホシノ「...目先のお金に目がくらみすぎだよ

あと、自分を過大評価しすぎだよ...

......お前は強いには強いけど、誰も守れないんだから...」

 

ホシノ(過去)「...ソラノ先輩...何を?」

 

ユメ「喧嘩してる場合じゃないよ、2人とも!

ビナーもなんだか動き出しそうだし、なんかよくわかんないのがいっぱい出てきたよー!」

 

ユメ先輩の声にハッとして前を見る。

ビナーの近くからドローンやら無人兵器がわらわらと出てきていた。

 

ホシノ「先生、あれどういうことかわかる!?

ビナーは単独で動くんじゃなかったの!?」

 

"わからない、ビナーが眷属を持ってくるのは初めてだ!"

 

ホシノ「ホシノちゃん、ビナーがイレギュラーな行動をしてる...つまり私たちの戦闘経験も意味を失ってる

もう撤退するしかないのはわかってるね?」

 

ホシノ(過去)「...わかりました...すみませんでした」

 

落ち着いたのか、昔の私は少しうなだれながら小さく呟いた。

 

ホシノ「私こそ、叩いてごめんね

...先生、私が殿になって囮になるからその隙に大オアシスまで撤退して!」

 

"なっ...ソラノを1人になんかできないよ!"

 

ホシノ「先生だってこれが一番全員無事に生還できるってわかってるでしょ!

その気持ちは嬉しいけど、他に作戦考えてる余裕ないよ!」

 

"だけど、ホシノとソラノを軸にじりじりと引いていけば...!"

 

ホシノ「今仮にそれやっても眷属がすごい勢いで出て来てるから、あっという間に囲まれちゃうよ!

それだったら私が囮になって手薄なところから先生たちは離脱して!

私は乱戦が得意だから1人でも無理矢理突破できるよ!」

 

"でも...ソラノ...!"

 

ホシノ「大丈夫、先生!

おじさんのこと...信じて?」

 

私の指示に先生は悔しそうに歯噛みしていた。

先生は私を1人にしたくないだろうけど...ほかに手も、他の手を考える時間もない。

 

"ごめん、ソラノ...あとで落ち合おう...!"

 

ホシノ「ホシノちゃんは先導して先生とユメ先輩を連れて大オアシスまで撤退して

いくらかは私の方で引き受けるけど、眷属がきっと私から漏れてそっちに向かうはず...注意して!」

 

ホシノ(過去)「わかりました、任せてください」

 

昔の私は先ほどと違って素直に引き受けてくれた。

 

ユメ「ソラノちゃん!」

 

ユメ先輩が悲痛そうな声で私の事を呼ぶ。

 

ホシノ「......ユメさん、2人をお願いします」

 

ユメ「ちゃんと帰ってこないと許さないからね!」

 

昔の私が2人を引き連れて撤退を始めた。

それと同時に、ビナーの眷属たちも動き始めた。

 

ホシノ「おっと、お相手はこのおじさんだよー」

 

私は間に割って入るような立ち位置で立ち塞がる。

眷属たちも知恵があるのか、逃げた先生たちを追うには私の撃退が必要と考えて、敵意を私に向けてきた。

合図もなにもなく、眷属たちと私は走り出す。

銃弾が飛び交う中、私は砂漠を走り、時間を掛けながらも1体ずつ倒していく。

だが正直、ゾッとしていた。

1体1体はそこまで強くはないが、数は膨大だ。

敵への殺意以外は感情もない、ただの操り人形。

だが、その無機質な殺意は私の恐怖を煽る。

 

ホシノ「...正直残って一緒に撤退した方がよかったかも」

 

そんな本音が漏れるくらいには怖かった。

 

ホシノ「いった...やばい...結構被弾も増えてきたかな...」

 

元々1対多の乱戦は私は得意だった。

そんな戦いばかりをしてきていた。

眷属達は次第に数を減らし、動かなくなった眷属が私の足元に転がる

それと同時に私もダメージを負っていく。

いくら乱戦が得意でも砂漠で遮蔽物もなく、足場も悪いこの環境では動きも鈍り、次第に被弾も増えていった。

 

ホシノ「...いや、これ減ってるかな?」

 

しばらく戦っているとそんな言葉が口から漏れる。

視線を遠くに移すとまだまだ眷属が向かってくるのが見えてきた。

これだけ戦っているのに終わりが見えてこないのは正直堪える。

しかもまだ眷属の相手だけでこれだ...ビナーとは戦ってすらいない...

その事実だけで折れそうになる。

だが、そろそろ先生たちも撤退し終えただろうか...そろそろ私も本格的に撤退を視野に入れよう。

 

ホシノ「...あれ、ビナーは?」

 

ビナーの姿が見えない。

あの巨体だ、すぐにどこかに行けるはずが

 

ホシノ「ごあ...!?」

 

ビナーを探していた私に凄まじい衝撃が襲い、吹き飛ばされた。

 

ホシノ「今のは...首を使っての薙ぎ払いかな...

流石にあの質量を不意打ちは堪えるなー...」

 

よろよろと立ち上がり、前を見る。

今の衝撃で視界がぼやけている。

足がふらついている。

ビナーは健在、眷属は増えて続けている。

 

ホシノ「...どうしようかな...流石にまずいねこれ」

 

別に油断はしていなかったはずだが...見通しが甘かった。

先生に信じてなんて言ったが...この様だ...

 

ホシノ「...ごめんね、先生...私帰れないや」

 

後悔は残りつつも先生を守れて少しだけ満たされた気がして死を待つ。

 

ホシノ「...あれ?」

 

敵の動きが止まった。

ビナーも、眷属達も動きを止めてただこちらを見ている。

しばらくするとビナーが大きな揺れを起こしながら地面に潜り、眷属達も引き返し始めた。

 

ホシノ「助かった...のかな...

ある一定範囲内に入ってきたのを迎撃する...タイプ?

でも今までのビナーってそんなんだっけ...」

 

疲れた頭では考えてでも出てこないので考えるのは止めた。

なにはともあれ、そのイレギュラーさに私は救われた。

 

ホシノ「...戻ろう...先生達が待ってる」

 

ダメージで足取りが重いが...私は大オアシスまで戻った。

大オアシスに着くころには既に日は傾いており、寒くなっていた。

大オアシスでは火が起こされていて、先生達が戻ってきたのがわかりやすかった。

 

ホシノ(過去)「...あれは...先生、ユメ先輩!

ソラノ先輩が帰ってきました!」

 

見張りをしていた昔の私に見つかり、今日の寝床にするであろう廃棄された建物から先生とユメ先輩が出てきた。

 

"ソラノ...!

怪我は...結構負ってるね...でも無事で帰ってきてくれてよかったよ"

 

ホシノ「なんとかね...それこそユメさんや先生は無事...?」

 

ユメ「私達は無事だよ、ホシノちゃんが頑張ってくれたからね...

って、私たちの心配よりソラノちゃんの方が!」

 

ホシノ「見た目ほど酷い傷はないですから大丈夫ですよ...」

 

ホシノ(過去)「ソラノ先輩、お疲れ様です

ところで私の心配はないんですね」

 

ホシノ「うへっ...まあね...

だってホシノちゃんは強いからね...だから安心して先生とユメさんを任せられたんだよ」

 

みんな、私に労いと治療を受けるようにと口々に言う。

みんなの体をよくよく見れば私ほどではなかったが怪我や汚れがあり、こっちも大変だったのがわかった。

 

ホシノ「とりあえず、この後の話をしようか

日が昇り始めたら出発するけど、それまではおじさんとホシノちゃんで交代で見張りをしよっか」

 

ホシノ(過去)「見張りって...私は構いませんけど...」

 

ユメ「ソラノちゃんその体でやるの!?

無茶だよ...私と先生だっているんだし...!」

 

ホシノ「見張りだってコツがいるんですよ、ユメさん

それを教えてる時間もないですし、悠長に教えてる余裕もないです

ビナーからは逃れましたがいつ襲ってくるかわからないですから...慣れてる私達が交替で見張りをして、先生とユメさんは有事の際にすぐに動けるように体力を養ってください

 

ユメ「うぅ...そうだけど」

 

"...わかった...ただし、無茶はしないでくれ

ホシノ、悪いけどソラノ様子を見て適宜サポートをお願いできるかな...ホシノに負担は増えるけど"

 

ホシノ(過去)「わかりました

ソラノ先輩も絶対に無茶はしないでくださいね」

 

私の方針に、先生とユメ先輩は渋々従うことになった。

 

ホシノ「わかってるよ

あっ見張り先に任せていい?

治療と食事、体力回復してきちゃうからさ」

 

ホシノ(過去)「わかりました

ってことユメ先輩、行ってきます」

 

ユメ「うん、気を付けてね?」

 

ホシノ「...あっ先生はちょっとこっち来て?

悪いけど...ユメさんとホシノちゃんはちょっと見ないでね?」

 

昔の私はきょとんとしながら、ユメ先輩は何かに気づいた様子でその場を離れてくれた。

私と先生も少し移動する。

 

"ホシノ...どうしt...うわっ...!"

 

移動し終えた瞬間、私は先生に抱き着いた。

 

ホシノ「......怖かった...」

 

"......"

 

ホシノ「さっきまでは何ともない風に話してたけど...帰ってこれてすごく安心した

さっきの戦い...私眷属としかほぼ戦ってないんだ...

それなのに、結構追い詰められてさ...不利な足場とか、遮蔽物がほぼないとか言い訳はできるけど...得意なはずの乱戦で結構ピンチだったんだ」

 

"そっか..."

 

ホシノ「それで...ビナーから強烈な一撃貰っちゃってさ...眷属はいっぱい出てくるのに足も震えて視界もぼやけてきちゃて...死んじゃうかと思ったよ...」

 

"ごめん...もっとましな指示を早く考えてれば"

 

先生も私を置いていくのが辛かったのだろうか...そんな風に感じさせるほど先生の声は悲痛だった。

 

ホシノ「いいんだよ、先生...これは私が言い出したことなんだしさ...

もうダメかなって思ったときはそうでもなかったけど...みんな無事で戻ってこれたのがわかってちょっと緊張の糸が途切れたかも」

 

"...そっか...ありがとう、ホシノ...私達を守ってくれて"

 

ホシノ「うん...みんな守れてよかった...死なないでよかった...」

 

"ホシノ..."

 

ホシノ「...怖かったよ...先生」

 

静かに泣きじゃくる私を先生は私が落ち着くまで抱きしめてくれた。

泣きながらも不思議に思う...今まで一人で色々乗り越えてきたのにどうして先生が相手だとこうも私は弱くなるのだろうか...

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