ホシノが先生と過去のアビドスに行く話   作:ツキ0912

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第12話 作戦失敗

一通り慰めてもらった後、私は軽く夕食を済ます。

乾パンとレーションという味気のないものだったが、先生と一緒に食べたのでまあいいとしよう

そこから約一時間ほど仮眠をとる。

先生は絶えず私の傍にいてくれて、一緒に寝てくれた。

過保護だなとも思いつつも、それが嬉しくて...一時間とは思えない睡眠の質だった。

交代の時間より少し早めに起きた私は軽く準備を済ませてから見張りの場所に向かう。

...お腹周りに違和感を感じたがきっと気のせいだろう。

 

ホシノ「ホシノちゃんお疲れ様ー、交代だよー」

 

ホシノ(過去)「...お疲れ様です...少しは休め...いえ、気が晴れましたか?」

 

なんとなく含みのある返事に私はたじろぐ。

 

ホシノ「ま、まあよく寝れたしね?

ほら、ホシノちゃんも早く休んできな?」

 

ホシノ(過去)「...そうさせていただきます」

 

私の言葉に素直に昔の私は従う。

でもなんだかその視線は冷たい気がした。

夜の砂漠は静かでとても冷たかった。

幸いなことに怪しいものは見えず、ビナーも来ている気配がない。

 

ユメ「ソラノちゃん、見張りお疲れ様」

 

ユメ先輩が私の隣に座った。

 

ホシノ「...ユメさん、なにやってるんですか?

見張りは私とホシノちゃんでやるので寝ててください

明日が辛いですよ?」

 

ユメ「一回目覚めて寝つきが悪いからちょっとお話に付き合ってよ」

 

優しく微笑みながらそう言ってくる。

私は断り切れなかった。

 

ユメ「ソラノちゃん...ビナー...だっけ?

ありがとうね、おかげで助かったよ」

 

ホシノ「いえ、気にしないでください...

私のためでもあるので...」

 

ユメ「でもすごいよね...あんな大きな化け物に立ち向かえるなんて...しかも前に迎撃したこともあるんでしょ?」

 

ホシノ「はい、あの時は...後輩もいたので...あとは今回みたいに急に戦闘になったわけじゃないので対策もできたので」

 

ユメ「ソラノちゃんの後輩かー...どんな子?」

 

対策委員会の後輩を思い出す。

そういえば今は未来はどうなってるのだろうか。

時間は進んでいるのだろうか...?

そうしたらみんな心配しているのだろう...

...考えないようにしていたが...寂しさが溢れてくる

みんなに会いたくなってきた...

 

ホシノ「みんないい子ですよ...1人は強い子で...私自身も強い自覚はありますがそろそろ抜かれそうです

1人はとても優しくて、私も諸事情で辛い時があったんですが支えてくれました

1人はとても真面目で、みんなをまとめてくれます...将来リーダーは多分この子になると思います

もう1人は...可愛いですね...色んな事に一生懸命だけどちょっと騙されやすいですが...それでも、誰よりもみんなを想ってると思います。

みんな、私には過ぎたいい子たちです」

 

懐かしむように私はユメ先輩に説明する。

もっと自慢したい...あなたの守ってきたアビドスはこの子たちのおかげでいい方向にいけていると。

だが、そうもいかない...

 

ユメ「そっか...ソラノちゃんもみんなこと大切なんだね」

 

ホシノ「...はい、とても」

 

ユメ「......そっか...そうなんだ」

 

ユメ先輩が私を見て微笑む。

なんだろうか、この見透かされている感じがするのは。

 

ユメ「そういえばさっき、自分にはすぎたって言うけど...そんなことないと思うよ?」

 

ホシノ「えっ?」

 

ユメ「だって、そんなに後輩のことを思えるならソラノちゃんも立派な先輩だよ」

 

ホシノ「......そうですか」

 

だけど私はまだ...

それは言えずに私は口を閉ざした。

 

ユメ「さて...そろそろ私も戻るね

見張り、辛いだろうけど頑張ってね」

 

ホシノ「わ、わかりました...」

 

そう言うとユメ先輩は戻っていった。

ユメ先輩と2人で話すとなんだか不思議な気持ちになる...

すこしぽわぽわとしながらも交代の時間近くになった。

背後から昔の私が歩いてくる音が聞こえた。

 

ホシノ「...ホシノちゃん、それは冗談としては面白くないよー」

 

振り向いて声を掛けようとした瞬間、私は銃を頭に突き付けられていた。

 

ホシノ「...なんでこんなことするのかな...もしかしてビナーと遭遇してきた時のこと、根に持っている?」

 

ホシノ(過去)「いえ、そういうわけではありません...

あれに関しては私のミスです...むしろ止めていただきありがとうございました」

 

ホシノ「じゃあなんで...」

 

ホシノ(過去)「小鳥遊ソラノ...あなたは一体、何者なんですか?」

 

あまり意外な質問とは思わなかった。

昔の私は確かにバカだとは思うが...勘は鋭い...

私と先生の存在にはずっと違和感を持って今日まで過ごしてきたのだろう。

今日はおそらく、ビナーの時の事でそれを我慢できなくなったのだろうか。

 

ホシノ「私は小鳥遊ソラノ、ただの先生の護衛だよ」

 

ホシノ(過去)「それじゃわからないんですよ!

まだ先生は連邦生徒会から来たってのはわかりました...だけど、お前はどうだ!?

年齢と名前はわからず、学校も不明

それにその高い戦闘力...この私に匹敵して...それなのに私が存在も知らない...

あと...これは根拠のないものだけど...お前を見ているとぞわぞわする...

短気な性格なのは自覚はあるけれど...それを差し引いてもお前の発言、行動はなんでかすべてがむかつく!

...お前は...お前はなんなんだ!?」

 

なるほど、確かに私の存在は先生比べて謎に満ちていた。

それに、同一人物ゆえに生じる違和感や自分自身から言われるから感じる苛立ちを感じていたのだろうか...それが一気に爆発したのだろう。

 

ホシノ「......悪いけど、私は小鳥遊ソラノで、先生の護衛...としか言えないね

学校も言えない...」

 

ホシノ(過去)「だったら...!」

 

ホシノ「それでも私は...アビドスが、ユメさんが大事...そこは信用してもらわなくても押し通す」

 

強い眼差しを向け、昔の私に答える。

その返答に昔の私はなにも言わずに銃を下した。

これで昔の私からの話は終わりだろう。

だが...

 

ホシノ「...だけど、私はお前(私)が嫌いだよ、小鳥遊ホシノ」

 

ホシノ(過去)「はっ...?」

 

唐突な発言に、思わず固まっていた。

昔の私が私の言動にいら立ちを覚えるように、私自身昔の私の言動に苛立ちを覚える。

例えばかたくなにユメ先輩を救うときに協力をしなかった時や目先の利益に目が眩んで無鉄砲な発言をしたりなど。

2年だけだが、成長してよくわかった。

 

ホシノ「お前は、自分だけが正しいと思ってる...

アビドスに来る大人は悪い大人ばかり、ここを出て行った生徒もダメな奴

そうやって自分を正しいと信じて何もかも下見て、大人になりきろうとしている子供だよ

...ユメさんだってそう...大切な人なのはそうだけど、どこか下に見てる」

 

ホシノ(過去)「お前...!」

 

私の言葉に激昂する昔の私を無視して続ける。

 

ホシノ「『あの人はいい人だ、だけど現実が見えてなくて...理想ばかりだから私がしっかりしないと』

そう思ったこと、ないとは言わせないよ

それは結局、心のどこかで下に見てるってことだよ」

 

ホシノ(過去)「......」

 

心を見透かされたような顔をして驚いてる。

当たり前だ、私が昔思ったことだ。

 

ホシノ「そうやって理想すらも見えない大人ぶるお前(私)が大っ嫌いだよ...

...それは直した方がいいよ...じゃないと、後悔するからさ」

 

それでも、結局は私だ。

不幸な目にあってほしいわけでも、馬鹿にしたいわけでもない。

厳しく言ってるだろうけど、これは忠告なのだ。

ユメ先輩と一緒に幸せになってほしいから私は強く言う。

例え私は経験できなかったとしても...未来を変えられたら、私が経験できなかった青春を歩んでほしいから...

馬鹿なことは否めないけれど、自分はまったくバカなわけではない...

だからこの忠告もただの嫌いな奴からの戯言とは思わないはずだ。

 

ホシノ「嫌いって言ったけど...私は直してほしいから言ったんだよ

さっき私はアビドスが大事って言ったけど、そこにはホシノちゃんも含まれてるからね」

 

ホシノ(過去)「...お前は.......あなたは本当になんなんですか...」

 

俯いて再度私に質問をする。

 

ホシノ「私は小鳥遊ソラノ、アビドスを守るために来た何でもない生徒だよ」

 

私はそうやって答えるのだった。

私は立ち上がって仮眠をとるために歩き出す。

だけど、私はそのまま地面に倒れた。

 

ホシノ(過去)「...ソラノ先輩?」

 

あれ...まずいな...下腹部がすごく痛い...

ビナーからの攻撃がよほど効いたのだろうか...けど、なんで今更...

遠くなる意識の中、昔の私の慌てる声だけが耳に残っていた。

 

覚醒し始めてる中、私が感じていたのは揺れだった。

 

ホシノ「うっ...うーん...あれ、私...」

 

"あっ...起きた?"

 

私達は砂漠を歩いていた。

街を目指して帰っている途中だった。

私だけは先生に背負われていた。

 

ホシノ「...これ、どういう状況?

先生、下ろしてほしいな...」

 

体を少し動かすが、痛みで顔をしかめた。

 

"だめだよ、絶対安静だからね

まったく...なんであんな大けが隠してたの...骨も折れてるかもだし、至る所に傷あるじゃん..."

 

ホシノ「うへへ...まあ...ビナーの巨体で薙ぎ払われたり、遮蔽物ない場所で360°集中砲火だからね...いくらおじさんでもきつかったことだね...」

 

"笑い事じゃないよ

あの時はああするしかなかったから怪我するのはしょうがないとしても...なんで言ってくれなかったの"

 

ホシノ「おじさんも確認してなくてそこまで怪我してるとは思わなかったんだ...

あと、アドレナリンとか出ててね痛みは感じなかったかも...あとは...心配させたくなくて...」

 

"悪い癖だよ...それ...なんでも一人で抱え込もうとするのは......なにその顔"

 

先生の指摘はもっともだ...それで何度か大事になってるので反省すべき点だが...

 

ホシノ「先生がそれを言う?」

 

"...とにかく、心配させたくないならちゃんと言って!"

 

ホシノ「うへっ...わかったよ...」

 

なんとも締まらないお説教をもらって私は先生の背中で揺れながら街に戻ってくる。

 

"さて...じゃあ解散しようか..."

 

ホシノ(過去)「えっ...解散ですか?

ソラノ先輩すごい怪我してますし、病院に行ったりとかなんでしたら私達がお世話したりとかも」

 

ホシノ「だ、大丈夫大丈夫!

確認したところそこまで大きい傷じゃないから先生に頼めば何とかなるからさ」

 

無論、ここで2人に頼ることもできない

この時代の人間ではないので病院には行けないし、住んでいる場所も私...昔の私も知っている廃棄した隠れ家なので正体が怪しまれる。

 

ユメ「まあまあ...私達はお邪魔かもしれないよホシノちゃん...」

 

ホシノ(過去)「えっ...お邪魔...

...えっ?」

 

ユメ先輩がとんでもないことを言い出した気がする。

昔の私はフリーズした。

私も先生もフリーズした。

 

"私たちそういう仲じゃないよ!?"

 

ユメ「はいはい、それじゃあ私達は失礼しまーす」

 

ニコニコと半ば強引に昔の私を引き連れて帰っていった。

すごく睨まれていたのは気のせいじゃないと思う。

なんとも微妙な雰囲気になったまま、私と先生は隠れ家に戻る。

 

"よし、じゃあまずは服を脱ごうか"

 

ホシノ「えっ脱ぐの!?」

 

"服が汚れてるし、怪我の様子も見たいからね

砂漠では意識なかったから私が脱がせたけど、今は自分で脱げるでしょ?"

 

ホシノ「裸見たの!?

さすがに恥ずかしいよ!?」

 

"いくらなんでもけが人相手には興奮しないよ"

 

きっぱりと答える先生に強がってる様子は見られない。

だが、裸を見られたのにその反応は悲しい。

 

"いた...いたいよ、ホシノ...なんで叩いてくるの..."

 

ホシノ「べっつにー」

 

なんとなく軽く叩いておく。

観念して私は軽く包帯の交換などをしてもらうことにした。

 

"...背中、小さいね"

 

ホシノ「嫌味かな...これでもおじさん、気にしてるんだよー?」

 

"そうじゃないよ

こんな小さな背中に押し付けた自分の不甲斐なさがね

いや...ホシノやほかの生徒が私よりも全然強いのは当然だけどさ...それでもホシノ達は守るべき子供で、私は守らなきゃいけない大人だ

だからせめて知識や指揮でホシノ達をより安全に勝利に導くべきなんだろうけど...ごめん...それすらもできなかった

...ホシノの体にこんなに傷が"

 

ホシノ「...触ればわかると思うけど、そんなに深い傷はないよ

骨に来てるのも少しのヒビ程度だしさ...あまり気にしないでよ」

 

"......"

 

先生の強みはその指揮能力だ。

その強みをビナーの時に発揮できなくてかなり落ち込んでいるのだろう。

 

ホシノ「気にしないでいいのに...

元々はおじさんが先生を巻き込んだ結果なんだしさ?」

 

"だとしても...邪魔になってるかも

私さえいなければビナーの時ももっと楽に突破できてたかもしれない..."

 

ホシノ「...ねえ先生、私過去に来て何回泣いてると思う?」

 

唐突な質問に先生が困惑する。

 

"さ、さあ...数えてないよ"

 

ホシノ「実は私も...だけど結構泣いてると思うんだよね...

元々そんなに泣いたことないのに...先生に甘えてるからかな?」

 

"わ、私のせい...?"

 

ホシノ「ううん、先生のおかげ

嬉しくて泣いたこともあったけど、辛くて泣いたときもあった

でも1人でならきっと我慢して泣いてなくて...抱えていつか壊れてたよ

だからこうやって、何度も泣けてるのは...私がこうやっていられるのは先生のおかげだよ

だから、邪魔なんて言わないで?

弱くなってるように見えるけど...その分1人で抱えてないから負担は楽になってるんだよ?」

 

"...おかしいな...私もこんなに弱音を吐くタイプじゃなかったのに"

 

私の言葉に先生が苦笑しながら返す。

 

ホシノ「じゃあ私と同様、私に頼ってくれてるってことなのかな?」

 

"情けないことにね..."

 

ホシノ「いつも頼ってばっかだから私は嬉しいよ」

 

沈んでいた先生の顔は明るさを取り戻していた。

 

ホシノ「あっ先生...今日も一緒に寝てね?

ビナーの恐怖が残ってるからね」

 

"寝るのはいいけど、微妙に冗談かどうか判断しづらいのは止めて欲しいかな..."

 

ホシノ「どっちだと思う...?」

 

"......本当?"

 

ホシノ「ありゃ...バレたか...」

 

私は先生に抱きしめられた。

何も言わない先生の胸に抱かれて震えが来た。

砂漠で歩いてた時も怖くなかったかと言われたら嘘になる。

その恐怖が緊張の糸が途切れて...

...いや、やはり裸で寒いからということにしておこう

 

それから、先生から治療を受けて私は動き出す。

未だ傷が痛むため、満足に動けない

そのため、私は先生から手厚い看病を受けることにした。

作ってもらった食事は食べさせてもらったりした。

そのまま、あっという間に夜になる。

私は先生と共にベットに入った。

受けた傷は大きい。

今でも痛む。

未来を変えるための作戦は失敗した。

それでも、私の気持ちは驚くほど穏やかに眠りについた。

だって、先生がいるし...なによりまだまだ始めたばかりだ。

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