ユメ先輩の準備も終え、私達はユメ先輩の家を後にした。
"そういえばソラノ...意気揚々と向かってるのはいいんだけど...襲撃してきた相手ってわかってるの?"
ホシノ「大丈夫、さっきの襲撃部隊の荷物から確認したから
装備も破壊したし、しばらくは追って来れないかな」
"ちゃっかりしてる..."
ホシノ「これくらいやっといた方が身のためだからね」
"...あんまソラノには逆らわないでおこ"
ホシノ「なんでそうなるの!?」
私と先生のくだらない会話をユメ先輩は眺めていた。
ホシノ「...どうかしましたか、ユメさん?」
ユメ「ううん、なんでもない...
けど2人ともこれから戦いにいくのに余裕だなーって...ソラノちゃんだって調子悪いのに」
言われてみれば確かに談笑できる余裕はある。
大変な状況ではあるが...それでもどこか何とかなると思い、談笑している。
ホシノ「確かにそうですね
...元々1人戦うことが私も多かったんです
それで、もし一人で同じ状況ならもっと焦ってたかもですが、今回はユメさんも...先生もいるんです
大変なのはそうですがそれでも私はなんとかなると信じてます」
私の言葉にユメ先輩は嬉しそうにしていた。
ユメ「そうだね...きっとなんとかなって、また4人で学校生活送れるよね!」
そう言ってユメ先輩は張り切って前を歩き出す。
しばらく歩いて行くとビルが見えた。
今回の敵の拠点だ。
敵は因縁深き相手、カイザーPMCだった。
ホシノ「さて、今日こそ潰しちゃおうかな」
"だめだよ...カイザーPMCは表の顔もあるわけだし...
ホシノは救えました、けどキヴォトスは大量の職を失った人で溢れました...なんてなったら大変だ"
ホシノ「わかってるよ
今回はもう悪事に手を染められなくなるくらいまでやろうかなってことだよ
まあ、出来るかはわからないけどね」
私の発言にユメ先輩が苦笑していた。
ホシノ「2人とも、隠れて」
視界の端にカイザーPMCのビルを守る監視の姿が目に入った。
数人がばらけて辺りを見張り、私たちの襲撃に備えているのだろう。
ホシノ「ユメさん、さっそく働いてもらいますよ
まず、あの2人...見えますね?」
ユメ「う、うん...」
ホシノ「この2人は比較的陣形から浮いています
攻めるならこの2人です
なので、バレないように私とユメさんが同時に背後から近づき、締め落とします
時間をかけてもいいので、音をたてないように気を付けてくださいね」
ユメ「わ、わかった...頑張る!」
ホシノ「とりあえず私は1人で、ユメさんは先生、サポートを」
"わかった"
ホシノ「先ほども言いましたが時間は掛けてもいいので相手の声や武器による音の発生を気を付けてください
ですが、ユメさんもわかってますが先生はひ弱です...無理して先生に攻撃が行かないようにしてください
無理だと思ったら諦めて私と合流してください」
ユメ「わかった...!
大丈夫、先生は死んでも私が守るから!」
ホシノ「それも絶対やめてください...
...では、安全第一に行動しましょうか」
作戦を伝えて二手に分かれる。
私は背後から見張りの1人に近づき、素早く動きを封じる。
相手は驚いていたがすでに遅く、発声も許さない。
しばらく締めていると力が抜けるのを感じた。
意識が落ちたのを確認し、他の見張りにバレないように隠しながら武装を奪う。
こちらの作業を確認し、ユメ先輩と先生の方を見る。
どうやら上手くバレないで接近はできたがやはり締め落とすのはしたこともないユメ先輩は苦戦していた。
しかもまずい、あれではじきに口の拘束が緩んで助けを呼ばれてしまう。
私は音を立てずに接近し、相手の腹に銃を使って重い一撃を撃ち込む。
軽く呻き声を挙げて、沈んでいった。
ユメ「ソラノちゃんごめん、助かったよ...」
ホシノ「いえ、ああやって気を引いてくれるだけでこちらもやりやすかったです
次、行きましょう
正面ではなく、どこからバレないように侵入できる個所を探しましょう」
そう、声を掛けて移動を再開する。
しばらく歩いていると見張りの死角に鍵の掛かってない窓を見つけた。
ホシノ「ここから入りましょう」
ユメ「えっ...」
なんかユメ先輩が変な声を挙げた気がしたが無視して私は先に中に侵入した。
それに続いて先生、ユメ先輩が侵入...
ホシノ「......早くしてください、なにやってるんですか?」
ユメ「胸がつっかえちゃった...」
ユメ先輩は窓枠を超えられずに窓にハマっていた。
ホシノ「なにやってるんですか!?
ほら、引っ張りますよ!」
私と先生は大慌てでユメ先輩を引っ張る。
ユメ「痛い痛い、もっと優しく!」
ホシノ「もたもたしてたら見つかりますよ!
これくらい我慢してください!」
命の危機で、敵地なのにコントなやり取りをし始めてしまった私達。
なんとかユメ先輩を引っ張り出すことはできたのだが...
ユメ「ふぎゃ!?」
ユメ先輩は顔から落ちて情けない悲鳴と共に音を立ててしまった。
「誰だ!?」
運悪く、敵にその騒動が聞かれてしまい...私達は物陰に身を隠す。
ホシノ「...厳戒態勢になりましたね
ここからは隠れて行動は厳しいですね」
ユメ「ご、ごめんねソラノちゃん...私がドジしちゃって」
ホシノ「いえ、ユメさんの体格をあまり考えてなかった私のミスです
後悔しても状況は変わりません...臨機応変にいきましょう」
"けどソラノ、この状況...やれることは限られてるよね"
ホシノ「......正面突破、もうそれしかないね」
未だ苦しさはあり、力も入らない。
そんな中で正面突破...先生もいるとはいえ圧倒的に数は不利。
それでも...やるしかない。
覚悟を決めて向き合う。
"とりあえず方針を決めよう
隠密行動じゃないなら私が指示を出すね
まずソラノは...好きに動いていい、ひたすら前に進むんだ"
ホシノ「わかった」
"次にユメは...私とあまり離れないで一緒に行動しよう
それで、ソラノが撃ち漏らした敵をユメが倒すんだ
それと、基本私も物陰に隠れて指示をするけど、危ない時は守ってほしいんだ"
ユメ「わ、わかりました」
"ソラノは不調なのに前線を1人で任せちゃうし、ユメにもやらせたくないことをさせちゃうけど...2人とも、いいね?"
ホシノ「これしかないからね...わかってるよ、大丈夫」
ユメ「既に覚悟は決めました...確かに暴力はダメだけど...ホシノちゃんを救いたいですから!」
"...よし、行こう"
先生から基本方針を伝えられて私達は立ち上がる。
物陰から出て、敵の正面に身を晒す。
「いたぞ、アビドスだ!」
「観念したのか正面から来やがったぞ!?」
「油断するな、1人はあの小鳥遊ホシノと同等の実力を持つぞ!」
敵に見つかり、騒然となっているビルを私は走り出す。
いつもよりもスピードは出ない。
だが、有象無象が相手ならこれくらいのハンデで丁度いい。
「来たぞ、ここで止め...うわっ!?」
「くそっ...やはり早,,,ぎゃっ!?」
「この...ちょこまかと...ぐあ!?」
敵の銃弾を見切り躱し、接近し、近距離で銃弾を放つ。
力が入らないのでいつも以上に正確に急所を狙う。
ユメ「ソラノちゃん...すごい
本調子じゃないのに敵をすごいスピードで倒してく...」
"私が知る限りでソラノと戦えるのは数えられるくらいしかいないからね
不調なのは事実だけど...精度は悪くない...
...色んな思いが不調をある程度跳ねのけてるのかな"
先生の言う通り、私は思った以上に動けている。
昔の私を助けたい、ユメ先輩がいる、先生がいる...そんな現状が私の力になっているのだろうか
だが、やはり万全に程遠いので被弾はいつもより多い。
細かだが確かな出血が増えていく。
「くらいやがれー!」
そして撃ち漏らした敵も増えていき、私に発砲を...
ユメ「やああああ!」
「ぎゃああああ!?」
ホシノ「...助かりました、ユメさん」
ユメ「ううん、ソラノちゃんが撃ち漏らしたを倒すのが私の役割だもん!」
「あああああ!?
あああああああああ!!?」
ユメ先輩が撃った敵が異様に悶絶していた。
下半身を抑えて。
ホシノ「...ユメさん、狙いました?」
ユメ「た、たまたま...たまたまだから!」
"玉だけに?"
ユメ「先生!?」
思わず私は先生に発砲し、私の弾丸は先生の真横の壁に突き刺さった。
ホシノ「先生、ここ敵地なんだから変なこと言わないでね...おじさんの銃弾も変なところ飛ぶかも」
"すみません..."
ホシノ「まったく...
...まずい、2人とも隠れて!」
私の声に先生はすぐに反応して身を隠した。
ユメ先輩はぽかんとし反応が遅れていたので私がやや乱暴に引っ張って物陰に隠れる。
その瞬間、銃弾の雨が私達がいた場所を襲っていた。
ホシノ「うへえ...すっごい威力...
今の状態で喰らうのは嫌だなー」
銃弾が飛んできた方向に目を移すとそこには3台の巨大なガトリング砲が置いてあった。
ユメ「...さっきみたいに銃弾の間潜り抜けとかできる?」
ホシノ「無茶言わないでください...本調子ならともかく、今の状態では無理です」
ユメ「まったく不可能なわけじゃないんだ...」
だけど現状、近づくまでに蜂の巣にされるため突破手段を見出せない。
室内なので動けるスペースも限られている。
盾を構えて突撃しようにも物量で押されて前に進めない。
小賢しいことにリロードの隙も他2台のガトリング砲で埋められる。
本調子ならいけるである状況なのだが...今の状態では無理なのは分かっているため、焦りが募る。
どうすればいいだろか...
...いや、なにも1人で考える必要はない。
ホシノ「先生、なにか手ある?」
"...上手い作戦ではないけど、一応はある...ユメ、結構大変だろうけど、頑張れる?"
ユメ「わ、私ですか!?
...なんでもやります、作戦を教えてください!」
"わかった...ソラノにも無茶言うけど、頑張って"
一通り作戦を伝えられる。
たしかにユメ先輩には結構負担が大きく、少し青ざめていた。
ホシノ「...大丈夫ですか?」
ユメ「大丈夫...ちゃんとやり切るから...」
ホシノ「じゃあ、私も頑張ります...早急にけりをつけるつもりです
では、行きましょう!」
アイコンタクトでタイミングを測り、物陰から私はユメ先輩を前に...盾にして進む。
その瞬間、凄まじい銃弾の雨が私達に襲い掛かる。
正確には、その全てをユメ先輩が盾1つで受け止めている。
ホシノ「ユメさん、大丈夫ですか!?」
ユメ「へい...き...!
ソラノちゃん、やっちゃって!」
ユメ先輩の声に反応して私はスモークグレネードを投げる。
辺りが白煙に包まれるも、絶えず銃弾はユメ先輩を襲い続ける。
私はその場を離脱し、壁に向かって走る。
そして壁を蹴り上げ、そのまま走り始める。
辺りは白煙に包まれているため、相手は接近する私に気づくのが遅れる。
「しまっ...!?」
「ひっ!?」
敵は遅れて様々な反応をするが私はそれを意に介さないで一撃で意識を奪う。
ホシノ「制圧完了...ユメさん!」
スモークも晴れて辺りが見えるようになって後ろを振り向く。
ユメ「ひぃん...きつかったよ...」
そこには先程のガトリングを防ぎきれずに被弾して所々怪我をしているユメ先輩が立っていた。
ホシノ「ユメさん怪我が...急いで治療しないと!」
ユメ「もう、ちょっと過保護すぎだよソラノちゃん
怪我の度合いで言えば私とソラノちゃん変わらないでしょ?
それならいくら弱くてもこれくらいで弱音なんか吐かないよ
ほら、先生と合流して先を急ごう!」
ユメ先輩に止められ、心配する気持ちを押しとどめて先生と合流する。
合流した先生は私と同じ反応をしてユメ先輩に窘められていた。
ユメ「私が弱いのはそうだけど...そんなに頼りないかな...」
苦笑しながらもすこしモヤっとした。
私の心配はしないのだろうか。
いや...心配はしてくれてるだろうとは思うけど...ユメ先輩みたいにもう少し態度に出してほしいというか...
私の強さを信頼されてるのはわかるけど...もう少し私の事も心配して欲しい。
いや待ってほしい...これじゃ私はユメ先輩に...
ホシノ「...それじゃあ気を取り直して先に進もうか」
そんな状況でもないことを思い出し、私達は先を進む。
だが、少し違和感を覚えた。
ホシノ「...敵がいないね」
昔の私が囚われてるであろう最上階の一室まで残り少ない。
そのため、道中の敵が少なくなるのはそうなのだが...
それでもまだ道のりはある...それなのに敵がいないのは...
ホシノ「...待ち伏せかな...しかも結構いるかも」
ユメ「だ、大丈夫...かな...」
"けど、やるしかないね"
全員不安を感じながらも歩き続け、最後の部屋に到達する。
"さて、それじゃあ最後の作戦会議というか"
私達は先生のもとに集まり、最後の作戦を伝えられ...それが終わると全員気合いを入れなおし、扉を開いた。
理事「これはこれはお揃いでようこそ...先生に小鳥遊ホシノに似た誰かよ
念のために言っておくが武器は下げたまえ...武力行使をここで行い、後々不利になるぞ?
まずは会話から行こうではないか...それに、下手な動きをされると私も手が滑りかねん」
カイザーの理事が部屋の真ん中に立っていた。
その後ろには昔の私が拘束されて転がっていて、理事の銃口が向いていた。
私は思わず絶句した。
どれだけその身に暴力を受けたのだろうか...
体中余すところなく、暴力の痕跡がくっきりと残り、目は虚ろで意識があるかどうかも分からなかった。
元々頑丈とは思っているがそれでも無敵ではない。
抵抗も許されず無限に等しい暴力を受けて衰弱している。
それこそおそらく死にかけるほど...
理事「さて、まずは君の名前を教えてもらおうか」
ホシノ「...小鳥遊ソラノ、それが私の名前だよ」
理事「小鳥遊ソラノ、見た目と戦闘力だけではなく...名前も似ているのか
いや...それだけではない戦い方まで似ているな
ふふふ...さて、お前たちはどういう関係なのだ...?」
理事が私をじっと見ている。
嫌な視線だった。
流石に未来から来た同一人物とまではわからないがすべてを見透かされそうだった。
"そんな話をしに来たんじゃないよ
ホシノを返してもらうよ"
そんな視線を遮るように先生は理事と私の間に入る。
理事「返してもらう...?
ふふふ...何を言うのかね...彼女は自分から望んでこちら側に来たのだよ」
ホシノ「なっ...ふざけたことを言うな...!」
私が叫ぶと一枚の紙が投げられる。
それを見ると契約書のようだった。
『私、小鳥遊ホシノはアビドス高等学校を退学し...カイザーPMCに入社することを約束します』
そのような旨のことが書いてあった。
そしてそこには昔の私のサインもしっかりと載ってあった。
理事「はっはっは!
その契約書が読めたならわかっただろう...彼女は立派なうちの社員だ
それなのに返せだなんてはおかしいだろう?
むしろ私は今ヴァルキューレを呼んで貴様らを住居侵入、器物破損などで訴えてもいいのだがな?」
私は歯噛みしていた。
やはりこの悪い大人...カイザーの理事はやっかいだ...
武力での制圧は許さず...契約といった大人のやり方で私達を苦しめる。
2年前もそれはわからない...この状況...どうすれば...
"いいや、その契約はまだ効かない"
だが、先生の目はまだ諦めていない。
理事「...字が読めないのかね?
彼女はうちの社員になることが書いてあるだろう...それにサインも
これが偽造だと疑っているのか...?
なら、証拠をだしても...」
"そうじゃない
これは、確かにホシノが書いたんだろうね...けれど、問題はそこじゃない
アビドスを退学...?
一体だれがそれを許可したんだ"
理事「......そういえば先生...たしか連邦生徒会から来ていたのだったな
だが、それがどうした...貴様は部外者だ
知っているぞ、シャーレなどという組織が存在しないことも...先生を気取って入るが...貴様ただの部外者に過ぎず、生徒を守ることなどできないのだよ!」
以前先生が似たような方法で黒服の契約を無効にしたことを聞いた。
だが、それはシャーレという組織があってのことだ。
2年前の今...シャーレは存在しない。
"そうだね...公にはまだ発足前だからシャーレはまだ存在しないよ"
理事「だったらなおさら...貴様には何の力もない!
部外者は余計な口を...」
"梔子ユメ"
理事「...なに...?」
"確かに私は部外者で...ホシノを救うことはできない
けれど...梔子ユメは?
アビドスの生徒会長である梔子ユメはホシノの退学を受理したのか?"
理事「...なんだと」
"その契約はホシノの退学が前提となっている以上、ユメがまずホシノの退学を受理なければ始まらない
それが済んでいない今...まだホシノはアビドスの...私の生徒だ!
お前たちカイザーPMCの社員でない今、これは立派な拉致だ
もう1度言う...ホシノを返してもらうぞ!"
理事「あの能無し生徒会長め...ここぞとばかりに足を引っ張りおって...」
理事は悔しそうな顔で歯噛みしていた。
理事「...だが、問題は単純だ...
アビドスの生徒会長に受理させればいい...多少、強引な手を使おうがな...」
理事がリモコンを取り出すと部屋の壁が開いた。
そこから大量の兵士が現れ始めた。
"ソラノ、やれる...?"
ホシノ「当然...先生が道を開いたんだ...後は進むだけだよ」
理事「おおっと、動くな2人とも
さっきも言ったが...下手に動けば私の手が滑るかもしれんぞ?
なに...本来私達のもとにおければ上場だが...出来なければプランを変えるまで
アビドスの生徒が一人くらいいなくなろうが問題にはならん
ましてや小鳥遊ホシノだ...誰も死んだとは思わんだろう...」
理事は私達を脅すが、私達は動かずとも余裕があった。
理事は怪訝そうな顔をするが...スモークグレネードが放たれた...私からでも、先生からでもなく...
理事「くそっ...スモークグレネードだと!?
お前ら、2人を注意しろ!」
兵士「理事...2人とも動きません!」
理事「...なに...?」
次第にスモークは晴れる。
その間、私達は一歩も動かなかった。
そんな様子に理事も困惑していた。
理事「くそっ...なんだったんだ今の...
貴様ら...下手なことをすればこの小鳥遊ホシノが.......」]
理事は後ろを振り向く。
そこに昔の私はいない。
代わりに...私と先生の後ろでユメ先輩に抱かれていた。
理事「お前は...梔子ユメ!?」
"...気づかなかったかな...ユメがその場にいないことをに
ホシノを連れ戻しにきたのに私とソラノしかいないことに
それとも、眼中になかったかな...能無しの生徒会長と高を括って
だけど...さっきも言ったけどホシノを救うのは私でもソラノでもなく、ユメだよ"
そう、この場には私と先生しかおらず...ユメ先輩は身を潜めていた。
私と先生で気を引いて、隙をついてユメ先輩が昔の私を救う作戦だった。
ユメ「ホシノちゃん...ホシノちゃん!
起きて、もう大丈夫だよ!」
ホシノ(過去)「...ゆめ...せんぱい?」
ユメ「よかった...ちゃんと...取り戻せた...」
虚ろな声だったがそれでも抱いているユメ先輩のことを昔の私は呼んでいた。
ユメ先輩はそれに涙を流しながら抱きしめていた。
"さて...本当は私も怒っているところだけど...このまま手を引くこともやぶさかじゃない
こちらの目的は達成したわけだし、今ここでカイザーグループをつぶしても後々が大変なのはわかっているからね
だけど条件がある...今、証拠はないけれどアビドスの借金に不当な利子があるのは分かっている...それを消すんだ
そして2度とアビドスに手を出すな...これが条件だ"
理事「...ほざけ!
今ここでお前たちを倒せれば問題ない!
現に小鳥遊ホシノは瀕死、小鳥遊ソラノもなぜか知らんが不調なようだな?
以前のような強さは感じられん...しかも少なからず負傷している...ここまで来て見えた勝機、逃すわけにはいかん!
お前たち、さっさとこいつらを倒せ!
最悪足止めして時間を稼げ!」
理事はそういうとどこかへ去っていった。
昔の私は戦闘は厳しそうだった。
対する兵士は未だ増え続け、さっきまで戦っていた兵士の数を合わせても足りなく...私達は囲まれた。
ホシノ「相当警戒されてたみたいだね...すっごい数」
"けれど後は脱出するだけ、気合い入れていこう
ソラノは防御の薄いところを探して、そこから突破しよう
ユメ、ホシノは私が運ぶから追ってくる敵から攻撃を防いで"
ユメ「わかりました、ホシノちゃんをお願いします」
ユメ先輩から先生に昔の私が渡されたのを見て私は走り出す。
人が少ない個所を進んでいく。
最後の戦闘と思い、被弾を今までよりも受け入れてやや無理矢理だ。
兵士1人1人は弱いので薙ぎ払って迅速に脱出を目指すがだんだん体力の低下と物量に押されて厳しくなっていく。
ホシノ「飛ばし過ぎたかな...まだ半分くらいはあるかも...」
"ソラノ、一旦止まろう"
ホシノ「止まってどうするの...そんな余裕ないよ」
"いや、この道の狭さなら敵側も動きが制限されるはずだ
ソラノ、ここである程度迎え撃とう"
ホシノ「そういうことね...了解」
ユメ「私も手伝うよ!」
ホシノ(過去)「私も...やります...」
か細い声が先生の腕の中からきこえた。
ホシノ「けどホシノちゃん...そんな怪我じゃ無理だよ」
ホシノ(過去)「自分の怪我は分かってます...なので後方から支援します...それくらいはできます
お願いです...やらせてください...迷惑かけた分...少しでも...」
ホシノ「先生...どうする?」
正直、人手は欲しい。
怪我をしているので後方支援とはいえ、昔の私だ。
その存在1つでかなり戦局は変わる。
"...今戦力が欲しいのは事実だ
だからホシノ...きついだろうけど頑張ってもらうよ
ただし、少しでも異変を感じたら私は止めるから"
ホシノ(過去)「ありがとうございます...」
作戦も決まったので細い通路で私は踵を返す。
大量の兵士が襲ってくるが先生の目論見どおり、一度に相手するのは少なかった。
私は確実に相手の戦力を削いでいき、ユメ先輩と昔の私は後方から敵を攻撃していく。
そしてしばらく戦い続けて私の息も上がり始めた頃、敵もだいぶ減ってきた。
"ソラノ、もう敵もだいぶ減ってきた!
後は一気に脱出しよう!"
先生からの撤退指示が出た。
ホシノ「オッケー、ゆっくり下がってそこから一気に駆け抜け......全員伏せて!」
異変を感じて私は声を上げる。
全員咄嗟ながらもそれに反応し、伏せると頭上をビームが通り過ぎ...
ホシノ「ごふっ...!?」
急な下からの衝撃に私は上空に吹き飛ばされて地面に叩きつけれられる。
"ソラノ!"
理事「がははは!
全員、生きて帰れると思うなよ...この試作機型だが...ゴリアテで全員吹き飛ばしてくれるわ!」
巨大なロボ、ゴリアテに乗った理事がビルをはかしながら私達に追いついた。
"ソラノ...大丈夫!?"
ホシノ「へいき...ちょっと脳が揺れたけどまだまだ戦えるよ!」
理事「全員今更後悔してももう許さんぞ!
そのまま吹き飛べ!」
ゴリアテから様々な銃弾が発射される。
ユメ「きゃああああ!?」
ホシノ(過去)「ぐぅ...!」
それは遮蔽物も意味をなさない威力で建物を破壊しつくし、私を狙っていた。
私はひたすら防御に徹しつつも近づく。
ホシノ「そこお!」
攻撃を搔い潜り、近づいてゴリアテめがけて銃を放つ。
だが、なぜか装甲が未来のよりも硬く...効果は薄かった。
試作機だから通常よりも安全面を意識しているのだろうか?
理事「甘いわあ!」
ゴリアテは腕を振りぬき、私の胴を捕らえてそのまま先生たちの後ろの壁に叩きつけるように吹き飛ばす。
私は声も上げられず、呻き声と血を吐くだけだった。
"ソラノ!"
ホシノ「まいったなあ...色々要因はあるとはいえ、ゴリアテなんかに苦戦するなんて...」
"けどまだ負けたわけじゃ...戦えるね?"
ホシノ「もちろん...今度はどうやって攻めよう...」
ユメ「2人とも、避けて!」
私と先生が話しているとユメ先輩が悲鳴のような声を上げる。
その声に反応して先生が私を抱えて横に飛ぶ。
その瞬間、さっきまでいた場所にゴリアテの上部の砲台から出てきたビームが撃ち抜いた。
ホシノ「ごめん...助かったよ先生...先生...?」
私は先生にお礼を言うが先生はなにも言わないでゴリアテを見ている。
"試作機というだけであって弱点がわかりやすいね
ソラノ見てみ、あのビーム撃った後だと隙だらけだ"
先生の言う通り、ゴリアテの隙は大きかった。
煙もすさまじく出ていた。
ホシノ「でもどうしようか...バレバレなことすると警戒されるだろうし...かと言って撃たせてその隙に攻撃って流石にこの状態だと厳しいよ」
ユメ「さっきみたいに私が受け止めるよ...ソラノちゃん」
そんな提案をしながらユメ先輩が合流した。
ホシノ「なっ...流石に無茶です!
さっきのガトリング砲とは違うんですよ!?」
ユメ「でも...みんな消耗してる中、これしか作戦ないんじゃない?」
ホシノ「だけど...いくらなんでもそれは...」
ホシノ(過去)「そうですよ...いくらなんでも無理です...」
昔の私も合流し、弱々しくもユメ先輩の考えを否定...
ホシノ(過去)「なので、私も一緒に防ぎます」
ユメ先輩共々ものすごい提案をしてきた。
ホシノ「いやいやいや...ホシノちゃんの怪我凄いんだよ!?
ユメ先輩以上に無茶だよ!」
ホシノ(過去)「じゃあ、他にどうするって言うんですか」
痛いところを突かれ、私は口を閉ざす。
"不甲斐ないが私もこれ以外浮かばない..."
ホシノ「先生まで...」
みんながやる気に満ち溢れた目をしてみている。
一番危険な役目2人がやる気なのだ...ほかに手がない以上、私も臆していられない。
ホシノ「...わかった...この作戦、絶対に成功させよう」
決意も固まり、私達は全員で頷いた。
ホシノ「いくよ...!」
2人に声を掛け、私はゴリアテの前に飛び出す。
理事「正面突破でもする気か?
いいだろう、今度こそ消し飛ばしてやろう!」
巨大な砲台にエネルギーが溜まるのが見えた。
ホシノ「2人とも、頼んだよ!」
その瞬間、飛び出してきた2人と位置を入れ替える。
ビームはそのままユメ先輩の盾と、私が昔の私に渡した盾で受け止める。
理事「何!?」
流石にこのビームを受け止めるとは予想外だったのか、驚いた顔を理事はしていた。
ユメ「ソラノちゃん!」
ホシノ(過去)「ソラノ先輩!」
完全にビームを受けきってボロボロの2人が私を呼ぶ。
ゴリアテは大きな隙を作り、動けない状態で接近していた私に対応できない。
理事「しまっ...」
ホシノ「...私達の青春には...邪魔」
手榴弾を数個、砲台に投げ入れ、ダメ押しとばかりに銃を放つ。
その瞬間、ゴリアテは爆発した。
理事は何か言っていた気がするが爆発にかき消された。
激しい爆風で近くにいたユメ先輩と昔の私は支えあう様にして耐え、私は吹き飛ばされた。
"危ない!"
だが、吹き飛ばされた形で先生に受け止められた。
ホシノ「...作戦、終了だね」
"自分が提案したとはいえ...無茶させ過ぎた..."
爆発の衝撃も収まり、辺りを見渡すと壊れたゴリアテの中でぐったりしている理事と少し離れた場所で何とか無事だったユメ先輩と昔の私がいた。
ホシノ「2人ともお疲れ様...なんとかなってよかったね」
ユメ「も、もう疲れた...一歩も歩けない...」
ユメ先輩が弱音を吐く中、昔の私がもじもじしていた。
ホシノ(過去)「その...2人とも今回はえっと...」
ユメ「......おかえり、ホシノちゃん」
だがユメ先輩がそれを遮る。
昔の私はユメ先輩の優しい笑顔に涙を浮かべていた。
瞬間、世界がスローモーションになった気がした。
理事の方で物音がした瞬間、何かが飛んでくる。
私はそれに反応できず、その場に突っ立ったままだったがユメ先輩だけが動いていた。
昔の私を突き飛ばし、ゴリアテの最後の悪あがきのような砲弾を額に受け、大きく吹き飛ばされる。
ホシノ(過去)「...えっ...?」
ホシノ「......ユメ先輩!」