穴に飛び込んで数秒、私はまぶしい光に包まれて目をつぶっていた。
数秒の浮遊感を味わいながらも、足に感触が戻ってきて目を開ける。
先生ははぐれることもなく、私の傍にいて、手をつないでいた。
恥ずかしくなってお互い顔を赤らめながら無言で手を放す。
少し落ち着いてから辺りを見渡す。
"ここは...アビドス?"
ホシノ「...そうだね...アビドスだ」
私たちがいた場所はアビドスだった。
"けど...なんか変だ...私たちが知ってるアビドスとは少し違うというか..."
だけど私には心当たりがあった。
ホシノ「...少し違うって言うのはちょっと語弊があるね
私は知ってるよ...」
"えっ...そうなの?"
ホシノ「ここは確かにアビドスだよ
けど、ここは多分...2年前のアビドスだね
先生、私たちは多分...過去に来たんだよ」
少し懐かしさを覚える風景と共に一枚の張り紙を見つける。
そこに書かれている日付を先生に見せて私の予想は確信にと変わった。
"まさかあれが過去に繋がってるとはね...驚いたよ...
とりあえずほかに誰かが誤って来ないように封鎖しようか..."
ホシノ「それもそうだけど...ちょっと困ったことになったよ
あの穴がここら辺にないんだ...
どうやって帰ればいいかわからないよ...」
"えっ..."
先生と共に辺りを見渡すがそこはただの何の変哲もない町中で、時間を超える穴なんてものは存在しない。
ホシノ「ごめん先生...私のせいでこんな...」
"いいんだよ...1人でこんな場所にホシノが行ってしまうよりよかった
それに、まだ帰れないと決まったわけじゃない
ここって、私たちがいた場所と座標で言えばずれた場所っぽいし...とりあえずそこに行ってみようか?"
申し訳なさで目を伏せるが、先生が励ますと同時に頭を撫でてくれる。
そのおかげで少しだけ元気を取り戻す。
"よし、まずは状況とやることの整理だ
まず、私達は過去に来た...いいね?"
ホシノ「うん、そうだね
幸い2年前のアビドスで、私が色々知ってるからそんなに危険なことはないよ」
"よし...次は持ち物の確認をしようか
私は大人のカードと...この.......あれ?"
先生がいつも使っているタブレットを取り出して操作しているが険しい表情をしている。
ホシノ「先生、どうかした?」
タブレットを覗き込むと画面は真っ暗だった。
"困ったな...シッテムの箱が使えないなんて..."
よくわからないけど、なんだか困った様子だった。
"ごめん、ホシノ...仮に戦闘になったら指示は出せるけどいつもより足引っ張るかも..."
ホシノ「大丈夫だよ、先生
元々私が巻き込んだんだし、どんな状況でも私が先生を守り抜くよ」
胸を張りながらそんなこと言う。
先生の持ち物はめぼしいものは大体そんなものだった
対して私はいつもの盾にショットガン、2人分の野宿のための道具に1回分の2人分の食事、決して多いとは言えない現金だけだった。
"こんな所か...あまり長居できる状況じゃないね..."
ホシノ「最悪賞金稼ぎとかすればいいけど...みんな心配するだろうし早く帰ろうか」
"そうだね
じゃあ次はやるべきことの確認だ
まず初めに、私たちが見つけた穴の場所に行こう"
先生とやることの確認をする。
穴の確認、今後に関わってくるので最重要だ。
"次にあの声の確認
ホシノ...あれ、ユメの声だよね?"
ホシノ「うん...そうだね...」
穴の中から聞こえてきた声。
ここが2年前のアビドスなら十中八九ユメ先輩の声で間違いはない。
だけどそれでどうする?
シェマタの時にユメ先輩のことは区切りをつけた。
けれど、会いたくないわけがない。
だとしても会ってどうする?
未来から来たと言っても困らせるだけだ。
かと言って未来を変えるために助言をする?
いや、そんなことをしていいのか...そもそもできるのだろうか?
頭の中で色々な考えが止まらない。
"ホシノ、とりあえず移動しよう
考えてばかりだとわからないかもしれない
動きながら情報を得て、それからまた考えよう"
ホシノ「そう...だね...とりあえず移動しようか」
私は装備を確認して出発の準備をする。
結局、どうすればいいかわからないが...まずは先生の言う通り、行動してみよう
今回は分からなくても先生がいるからきっと何とかなるはずだ。