シロコ「ホシノ先輩、前方に敵が固まってる」
ホシノ「わかってるよ、クロコちゃん...行くよ!」
シロコ*テラー「ん、了解」
銃を放ち、無理矢理道を作って私達3人はひたすら前に進み続ける。
ただ前方だけを見て、進んでいる。
1人で戦っているなら絶対にやらないことだ。
だが今回は1人じゃない...みんながいる。
そのため、ただ前だけを見て進み、露払いは頼れる後輩に任せられる。
ホシノ「前方の敵は無理矢理退かしたよ!
後はノノミちゃんたちに任せて私達はビナーを叩くよ!」
シロコ「了解」
シロコ*テラー「了解」
包囲網を抜け、ビナーと相対する。
ホシノ「やあ、さっきぶりだね...今度こそお前を...」
私の発言の途中でやけに気合いの入った発砲音が2発聞こえた。
ホシノ「...2人とも?」
シロコ「ん...相手はホシノ先輩を痛めつけてくれたビナー...」
シロコ*テラー「絶対に許さない」
ノノミ「ホシノ先輩、そちらはどうですか?」
シロコちゃん達の戦いぶりに呆然としているとノノミちゃんからインカム越しに連絡が来た。
ホシノ「あーうん...一応順調...シロコちゃんたちがやけに張り切ってるけど」
ノノミ「そのくらい怒ってるんですよ...シロコちゃん達は...私達は普段言わないだけでホシノ先輩の事が大好きなんですよ
それを傷つけられたので全員怒ってますよ」
ホシノ「ノノミちゃんも?」
ノノミ「はい」
つくづく実感させられる...自分はなんて愛されているのだろうか...なんて恵まれているのだろうか...
ノノミ「これくらいは受け入れてくださいね?」
ホシノ「もったいないくらいだよ
ところでそっちはどう?」
ノノミ「問題ありませんよー
こちらは先生がいますので余裕です
ホシノ先輩こそ先生と離れてよかったんですか?」
ホシノ「なにかあれば指示は来るはずだし、細かいところを任されてるのは信頼されてる証だからね」
ノノミ「あら、妬けちゃいますね」
ノノミちゃんのインカムからセリカちゃんの怒鳴り声が聞こえてきた。
お互い順調に進んでいるらしい...このままいけばきっと...
ホシノ「うわっ!?」
なんて楽観的なことを考えているとそれを打ち消すかのようにビナーが大きく動き、その巨体で辺りを薙ぎ払う。
私は辛うじてそれを躱して物陰に身を隠す。
ホシノ「そうだ、シロコちゃん!」
先行して突撃していた2人を思い出し、辺りを見渡す。
シロコ「くっ...」
シロコ*テラー「ん...」
2人とも私の傍まで後退してきた。
やや負傷した様子も見えるが軽傷だった。
ホシノ「2人とも、どう?」
シロコ「やっぱりあの巨体がやっかい...まともに近づくのも難しいし装甲が硬い...それに...」
シロコ*テラー「行動パターンが微妙に違う...いつも以上に激しくて殺意を感じる...
...ソラノ先輩を狙ってるからかも」
ここに来て歴史の修正力の力をひしひしと感じる。
だが、手はあるはずだ。
ホシノ「いつものパターンでもビナーが疲弊するときがあるよね
今、いつも以上に激しいならそれを誘発させやすいかも」
2人は私の意見に耳を傾ける。
シロコ*テラー「確かにそうかも...だったら」
シロコ「暴れさせつつもこちらからも攻撃を加えて疲弊させる」
ホシノ「そうだね、とりあえずそれで行こうと思う」
けど、もう1つ問題もある。
シロコ「装甲の硬さ...どうしよう」
シロコ*テラー「それは私が考えがある」
もう1人のシロコちゃんがそう言い出し、今度は私とシロコちゃんが耳を傾ける。
シロコ*テラー「まず、よわシロコがビナーに攻撃して...出来るだけ一点に集中して
そしたらそこに私も攻撃を合わせて叩き込む
流石にビナーの装甲でも私達の攻撃を一点に集中して浴びせ続ければ破れるはず
後追いの攻撃は私がやる...私の方が強いから」
もう1人のシロコちゃんがそう言うと、シロコちゃんも反発しだす。
シロコ「ん。それくらい私でも出来る...だからこっちは私が」
シロコ*テラー「できないことも出来るって見栄を張って、失敗してもしホシノ先輩が死んだらどうするの?」
冷たい発言にシロコちゃんは固まる。
シロコ「わ、私は...」
シロコ*テラー「相手はビナーで、尚且つ歴史の修正力っていう見えないのもいる...そんな状況だから失敗できない」
もう1人のシロコちゃんの言いたいことは分かった。
シロコちゃんに意地悪で冷たいことを言っているわけでもないのもわかる。
きっと怖いのだろう...私の死が。
もう1人のシロコちゃんはみんなの...私の死を見ている。
その上でさっき死にかけていた私がいて...おそらく隠していたのだろうけど、みんなよりも動揺していたんだろう。
ホシノ「シロコちゃん、落ち着いて」
そんな思いを後輩にさせたこと自分を叱りつつも、私はもう1人のシロコちゃんを抱きしめる。
シロコ*テラー「...ホシノ先輩」
ホシノ「ごめんね...私が不甲斐ないばかりに...
怖いんだよね...みんなが、私が死んじゃうことが...
だからつい強く言っちゃうだけなんだよね」
シロコ*テラー「...怖かった...またホシノ先輩を失うのかと思うとあの時、心臓が張り裂けそうだった」
ホシノ「うん...ごめんね...
でもそれは私が悪いんだからさ...それでシロコちゃんに強く当たらないで...」
シロコ*テラー「...わかった
ごめん...怖がって必要以上に強く言ってた...」
シロコ「いい...私も少し意地張ってた...
作戦はさっきの通りにそっちが後追いして」
シロコ*テラー「わかった」
2人とも落ち着いて、作戦が決まった。
ホシノ「ところでその作戦、結構大変そうだけど大丈夫?
私でも難しいんだけど...」
シロコ「ん。それなら大丈夫...ホシノ先輩にはないものがこっちにはある」
シロコ*テラー「ん。合わせる相手が私なら...問題ない...私達同じシロコなら出来る連携」
ホシノ「そっか...それなら行けそうだね...任せたよ、2人とも」
シロコ「ん」
シロコ*テラー「任せて」
作戦も決まり、先行して2人が飛び出す。
"ソラノ"
ホシノ「...先生...聞こえてた?」
"うん...そっちの状況の確認をしようとしたらね"
ホシノ「私にはもったいないいい後輩だよ」
"ソラノだから...だよ"
ホシノ「そっか...それでそっちの状況は?」
"みんな頑張ってくれてるおかげで順調だよ...でも、終わりが見えないんだ...このままだと流石にみんな疲弊して危ないかな"
ホシノ「オッケー...じゃあ優秀な後輩と一緒にさっさと済ませるね」
ホシノ「2人とも、頭上注意!
私のところに来て!」
2人に遅れて私は飛び出しながら叫ぶ。
2人は私の声に反応して攻撃を中断して私の元に来たのを確認して盾を構えた直後、ミサイルが私達を襲う。
ホシノ「2人とも、無事!?」
シロコ「ん。平気」
シロコ*テラー「ありがとう、ホシノ先輩」
ホシノ「ここからは私も前に出るからね
敵の攻撃は全て私が防ぐから2人とも、思いっきり暴れていいよ!」
現状、私とビナーでは相性が悪い。
全力なら無理矢理装甲をぶち抜こうとするが、今の状況ではそれは厳しい。
だからそれは頼れる後輩に任せて、私は後輩を守る。
たくましく成長した後輩を嬉しく思い、私の心は体の調子と怪我とは裏腹に非常に軽かった。
ホシノ「次、ビーム来るから躱して!
カウント...2、1、0!」
対するシロコちゃん達もいつもより動きがよく思えた。
状況がそうするのか、自分同士のコンビネーションでより洗礼されるのか...おかげでビナーの表情はどこか怒りに満ち始めていた。
シロコ「ホシノ先輩!」
シロコちゃん達の声に私は反応して前に出る。
2人でこじ開けてくれた活路へ私は銃弾を撃ち込む。
銃弾を浴びたビナーは叫び声のようなものを上げながら大きく体を動かしてもがいている。
シロコ「ん。作戦通り」
シロコ*テラー「行ける...このまま」
だが、ビナーは突如として地面に潜りだした。
シロコ*テラー「なっ...逃げた...?」
いや、これは逃げたわけではない...
"ソラノ、聞こえる!?"
少し声に緊張感のある先生がインカムで連絡してきた。
ホシノ「聞こえてるよ先生、どうしたの?」
"眷属達の動きが少し変わった...攻撃が激しくなってきたんだ...そっちの様子はどう?"
ホシノ「今ビナーに有効打与えたんだけど...ビナーが移動したんだ」
"なるほど...ビナーたちも必死になって来てるってことか...ソラノ、わかってると思うけど無理はしないでね"
ホシノ「そっちこそ、なにかあれば呼んでね!」
インカムを切って辺りを見渡す。
ビナーの場所は移動しながらでもわかりやすかった。
少し移動してビナーは再出現をする。
さて、第2ラウンドの開始だ。
移動をしても特にやることは変わらなかった。
シロコちゃん達が装甲を破るために攻撃を続ける。
その間、私がシロコちゃん達を守る。
装甲が脆くなった頃合いを見てその箇所を攻める。
私達も手馴れて来て余裕が生まれる。
多少行動パターンが変わっても相手はビナーだ。
この世界で何度も苦渋を舐めさせられたが戦闘の経験はあるうえに、後輩もいる。
これならば勝てない方がおかしい。
だが、油断はしない。
確実な勝利のためにも...最後まで気を抜かない。
ホシノ「ビーム来るよ、私の後ろに下がって!」
私の声に迅速に反応して2人とも下がる。
その直後、ビナーの口からビームが吐き出される。
ホシノ「ぬぐぐっ...なんのこれしき...!」
盾で防ぐが、その攻撃はかなり重く、押し返される。
シロコ「ホシノ先輩...!」
その姿を見て、シロコちゃんが飛び出して私を支える。
ホシノ「ありがとう、シロコちゃん...
このまま押し返すよ!」
シロコちゃんは私の声に無言で頷いてそのまま押し返す。
シロコ*テラー「...今がチャンス」
ビナーの攻撃も止まり、もう1人のシロコちゃんが動き出す。
なにか嫌な予感がした。
ビームの反動で確かにチャンスだった。
だが、もう1人のシロコちゃんをビナーを見るあの目...
あれは...私を見るのと同じ、殺意を込めた目だ!
ホシノ「だめ、シロコちゃん...戻って!」
だが、飛び出したシロコちゃんはもう止められなかった。
ビナーはその大きな体を反動を無視して無理矢理動かし、その巨大な体をもう1人のシロコちゃんを叩きつける。
シロコ「しまった...」
ホシノ「シロコちゃん...!」
飛び出したシロコちゃんは強制的に地面に叩きつけられる。
何とかガードが間に合ったようで大事には至ってない。
ホシノ「シロコちゃん、しばらくビナーを引き付けて!
私はもう1人のシロコちゃんを助ける!」
シロコ「わかった!」
私は慌ててもう1人のシロコちゃんの元に駆け寄る。
ホシノ「シロコちゃん、平気!?」
シロコ*テラー「...大丈夫...なんとか最小限のダメージに抑えた...まだ戦える」
その言葉に嘘はなく、確かに戦闘可能な状態だったので私は安堵するが...地響きが鳴り響いた。
地響きの元に目をやるとビナーがまた地面に潜っていた。
また移動するのか...いや...これは...
シロコ「2人とも逃げて!」
シロコちゃんが慌てた声が聞こえる。
その瞬間、ビナーが飛び出し、それと同時に砂の津波を巻き起こして私達に向かってくる。
シロコちゃんは回避したが...これでは私ともう1人のシロコちゃんは...
シロコ*テラー「ごめん...私が先走ったせいで...ホシノ先輩、私を置いて逃げて...」
ホシノ「...そんなこと、出来るわけないでしょ」
私はもう1人のシロコちゃんの前に立ち塞がって盾を構える。
シロコ*テラー「...だめ...いくらホシノ先輩でもあの物量は」
ホシノ「...だとしても、後輩を守るのが先輩の役目だよ」
きっとあれを喰らえば私はただでは済まない。
だとしても後輩を見捨てる選択肢などあるわけもなく、私は覚悟を決めた。
ホシノ「うへっ...?」
だが、急に私の体は持ち上げられて投げ飛ばされた。
素っ頓狂な声を出して私は後ろを向く。
シロコ*テラー「よわシロコ、ホシノ先輩の事をお願い」
悲しげに微笑んだもう1人のシロコちゃんは...1人で防御も出来ずに砂の津波に巻き込まれた。
ホシノ「シロコちゃん!」
投げ飛ばされた私はシロコちゃんに抱きとめられる。
もう1人のシロコちゃんを呼ぶ声に返事はなく、目の前の砂の津波を通り過ぎるだけだった。
しばらくして、砂の津波も収まり、砂まみれになりながら呻き声をあげているもう1人のシロコちゃんが姿を現した。
ホシノ「シロコちゃん...シロコちゃん...!」
慌てて駆け寄るとゆっくりと体を起した。
ホシノ「バカ、なんであんなことしたの!」
シロコ*テラー「あの攻撃...既にダメージ負ってるホシノ先輩が受ければ戦闘不能になる...
ビナーとの戦いにも、この後にもホシノ先輩の力は必要...
私はもう逃げれないし...ホシノ先輩は私を置いて逃げないからああするしかなかった
現に私はダメージは負ったけど、まだ戦える」
ホシノ「バカ言わないで、こんな状態で戦えるわけないでしょ!」
シロコ*テラー「でも...再会した時のホシノ先輩の方がもっと酷かった」
ホシノ「でも...こんな無茶...」
シロコ*テラー「...今出来る限り無茶しないと...全部取りこぼすよ、ホシノ先輩」
ホシノ「...それは」
シロコ*テラー「私はそれを知ってるし...ホシノ先輩は知ってほしくない...」
もう1人のシロコちゃんの言葉に私は何も言えなかった。
シロコ「確かに...ビナーを倒すにしろ撤退させるにしろ...私とホシノ先輩2人だけじゃ厳しい
だからそっちの私にもまだ戦ってもらう」
ホシノ「シロコちゃん!?
でも、いくらなんでももう...」
シロコ「わかってる...だから、私がそっちの私の役割をこなす
そっちの私のサポートも私がする」
無茶だ...いくらなんでももう1人のシロコちゃんのサポートをこなしながらビナーの装甲を崩すなんて出来るわけがない。
シロコ*テラー「...やれるね、そっちの私」
シロコ「やれるかは...わからない...けど、やらなくても全部だめになるなら無理をしてでもやってみる
ホシノ先輩、やらせて」
やれるはずがない。
そう判断して一時撤退を指示すべきだ。
それでも私は...2人の後輩を信じたくなった。
ホシノ「わかった...やってみよう
もう無茶しないでとは言えないからね...全力でやろう」
シロコ「ん。ありがとう」
シロコ*テラー「...絶対、勝とう」
作戦も決まり、ビナーを見上げる。
表情がないはずなのにそれは私達を嘲笑っているように見えた。
だが、それもこれまでだ。
私達は再度ビナーに接近する。
先程の勢いはなくなり、慎重に距離を詰めながら攻撃していく。
シロコ「ホシノ先輩、さっきなんであっちの私が狙われたの?」
そんな質問をシロコちゃんがしてきた。
ホシノ「この戦いの要になっているのはもう1人のシロコちゃんなんだ、それはわかるね?」
シロコ「うん...」
シロコ*テラー「ビナーもばかじゃなかった...誰を潰せば戦力低下に繋がるかしっかり考えてた
私達はホシノ先輩をずっと狙うものかと思ってたけど...そこの考えの甘さを突かれた」
シロコ「そっか...」
ホシノ「ってことは次の作戦の要はシロコちゃんなんだ
今度はシロコちゃんを狙うし、もう1人のシロコちゃんをこのまま狙い続ける可能性もある
この2点注意しないとダメだよ」
シロコ「わかってる...でも、やらなきゃだね」
会話をしながらビナーに接近し、攻撃を始める。
ホシノ「作戦、始めるよ!」
シロコ「了解」
私の合図と共にもう1人のシロコちゃんが先陣を切る。
その姿に先程の精彩さはなく、私達は徐々に追い詰められてる気がしてきた。
シロコ「ホシノ先輩!」
シロコちゃんの声に合わせて私は駆け出し、ビナーに迫る。
2人のシロコちゃんが懸命に作り出した装甲の穴を攻める。
ビナーはその攻撃に呻き声のようなものを上げて苦しそうにする。
ホシノ「シロコちゃん!」
もう1人のシロコちゃんが隙を晒していた。
私は慌ててシロコちゃんに声を掛ける。
それに反応してシロコちゃんがもう1人のシロコちゃんのカバーに入る。
その隙をビナーも攻めて来る。
間一髪でその攻撃を避けるが、完全は避けきれてない。
ホシノ「シロコちゃん、大丈夫!?」
シロコ*テラー「ごめん...」
シロコ「平気...かすり傷」
ホシノ「よし、じゃあこのまま行こう!
絶対に勝てるよ」
お互いの状態を確認するとシロコちゃん達が走り出す。
絶対に勝てる...そう言ったのは本当にそう思ってるのかそれとも誤魔化してるだけか...わからなかった。
確かにビナーにダメージは与えられている。
だが、それと同時に私達にもダメージは蓄積していってる。
やはり、もう1人のシロコちゃんのダウンは痛かった。
足りない。
一手...足りない。
シロコ「ぐあ...!」
そんなことを考えているとシロコちゃんの声が聞こえてきた。
慌てて前を見ればシロコちゃんがビナーによって吹き飛ばされていた。
ホシノ「シロコちゃん!」
急いでカバーに入って、ビナーの追撃を防ぐが、防ぎきれずに諸共吹き飛ばされた。
ホシノ「ぐっ...うっ...2人とも...大丈夫...?」
返事がない。
振り返ると2人とも呻き声をあげて立ち上がれていない。
ホシノ「...2人とも」
勝てない...
脳裏にその言葉が浮かぶ。
満身創痍の私達に比べて、ビナーはまだどこか余力があるように見えた。
無機質な目は嘲笑うように私達を見ていた。
悔しかった...
ここまでやって、みんなの手を借りて、それでも私は成し遂げられず、挙句には後輩を危険な目に合わせている。
シロコ*テラー「ホシノ先輩...避けて!」
もう1人のシロコちゃんが叫ぶ。
気付けばビナーからのミサイルが私を狙っていた。
絶望からか疲労からか...私は動けなかった。
「最後まで諦めちゃダメ!」
シロコちゃん達とは違う声が聞こえ、ハッとして前を向く。
ホシノ「...ユメ...せ、さん?」
ユメ先輩は私の前に立って、盾を使ってビナーからのミサイルを防いでくれた。
ユメ「...よかった...間に合った!」
"ソラノ、シロコクロコ!"
背後から先生の声が聞こえて振り返る。
先生と一緒に後輩達もみんな走ってきていた。
ホシノ「みんなどうしたの...ビナーの眷属は...?」
アヤネ「少々手間取りましたが...全部倒しました」
セリカ「流石に連戦できつそうだけど...私達もやるわよ!」
ノノミ「今回はシロコちゃん達もいましたが...1人にしないって言いましたよね?」
ユメ「...ソラノちゃん、やろう!」
みんな、ダメージは負っていて、無傷なものはいない...それでも、私のために力を貸そうとしてくれた。
"ソラノ...まだ戦えるね?"
ホシノ「...おかげで弱気な心が吹っ飛んだよ」
私は涙を軽く拭き、ビナーと向き直る。
"始めよう、みんな
とりあえずビナーの装甲を崩すことを考えるんだ...全員、後の事はほっといて攻撃だ!"
先生の号令に全員がビナーに向かっていく。
ホシノ「...助かったよ先生...みんなに手を借りてるってのに危うく諦めちゃうところだったよ」
"どういたしまして"
ホシノ「今まで1人で何とかしてたのに...いつの間にかみんなに支えられないと生きていけなくなっちゃったなー...」
"人ってそういうもんだよ...1人では生きていけない...これが正しい生き方だよ"
ホシノ「...本当にありがとう、先生....私を導いてくれて
それじゃ、私も行ってくるね!
先生、これからも私を導いてね!」
軽く先生と言葉を重ねて私も後輩たちの後を追う。
やはり皆優秀でビナーを翻弄しながら装甲を崩しかかっている。
その過程でダメージも与えている。
ビナーから焦りが見え始めた。
ノノミ「ソラノ先輩、そろそろ大きな隙が生まれますよ!」
セリカ「そ、ソラノ先輩...まだやることあるんだからビナーなんかさっさと倒しちゃいましょう!」
ホシノ「ありがとう、2人とも
ちゃちゃっと終わらせちゃうね」
セリカちゃんとノノミちゃんの声を受け止め、走り続ける。
セリカちゃんやノノミちゃん達のサポートを受けながらもビナーと最前線で戦っているシロコちゃん達に合流する。
意外なことにユメ先輩もそこにいて、盾を使ってシロコちゃん達を守るために最前線にいた。
ユメ先輩ってこんなに強かったっけ...
ホシノ「ユメさん、そんなに戦えたんですか!?」
ユメ「ごめん、何言ってるかわかんない!」
...そういうわけではないようだ。
アドレナリンとその場の状況でいつも以上の動きをしているだけだ。
現にシロコちゃん達よりも動きに粗が目立ち、必死で喰らいついてるのがわかった。
ホシノ「そろそろビナーも追い込んできてるよ!
ここが勝負所だよ!」
活気付けるために私が声を上げると、ビナーが叫びだした。
ビナーの方を見るとシロコちゃん達の攻撃が遂にビナーの許容範囲を超えて大きなダメージとなっていたのだろう。
その場で大きくバランスを崩し、隙を晒している。
アヤネ「聞こえますか、ソラノ先輩!?
ビナーの想定される体力ももう少し...あと少しで倒せます!」
アヤネちゃんから通信が入り、希望が見えた。
ホシノ「行ける...行けるよ!
ここで追い込むよ!」
声を上げて私達は走りだす。
ビナーは殺意を込めた目で私達を見下ろしながら近づけまいと攻撃をしてくる。
私は防御を考えずにただひたすら走り続ける。
シロコ*テラー「ソラノ先輩、前!」
もう1人のシロコちゃんが声を上げる。
眼前にはビナーのミサイルが迫っていた。
私は防ぐのではなく、間をすり抜ける。
ただひたすら、ビナーだけを見て。
だが、背後でもう1人のシロコちゃんの苦しそうな声が聞こえる。
ソラノ「...クロコちゃん?」
背後を振り返ればもう1人のシロコちゃんはその場で止まってしまっていた。
シロコ*テラー「行って、ソラノ先輩
ちょっともう...ダメージのせいで追いつけない
大丈夫...後ろの方でサポートはするから」
ホシノ「...わかった、任せて」
シロコ*テラー「よわシロコも...ソラノ先輩のこと頼んだ...
私みたいにならないように...
もう、死なせちゃダメ」
シロコ「...わかった」
ユメ「大丈夫、ソラノちゃんのことは私も守るから!」
もう1人のシロコちゃんの言葉にシロコちゃんとユメ先輩も答えてくれた。
再度もう1人のシロコちゃんの想いを受け取って、走り、ビルなどを伝って飛び上がる。
ビナーの顔面にありったけの想いを乗せた攻撃を叩きこむために。
ホシノ「...ずいぶんと余裕がなさそうだね
さっきとは大違いだ」
飛び上がり、降下しながらビナーに攻撃を加えていく。
ビナーは私達に向かって攻撃をし続けるが、どこか焦っているようにも見えた。
だが、その攻撃も雑になり、躱すのは容易だった。
ホシノ「今度こそ、終わりだよ!」
銃を構え、ビナーを狙う。
だが、ビナーの目は笑っていたように見えた。
その瞬間、ビナーは口を開け、エネルギーを集める。
いや、もうほぼ集めきっていた。
ホシノ「ビーム!?
そういえばさっきから撃ってないと思ってたけど...このために...!?」
一か八か...相打ち覚悟でいくか?
シロコ「ソラノ先輩!」
シロコちゃんが私を呼ぶ。
その声は何を求めているのか...言葉にせずともわかった。
私は後輩を信じて、盾を投げ渡す。
シロコ「...ユメ、手を貸して!」
ユメ「わ、わかった!」
シロコちゃんの声に反応して私の目の前に出てきた。
シロコ「はああああ!」
ユメ「やあああああ!」
2人は私の前で盾を使い、ビームを受け止める。
声をあげ、必死に負けじと耐え続けている。
その成果あって、遂にはビームを全て受けきった。
ホシノ「捉えた!
いっけええええ!」
ビームから発生した煙から私は飛び出し、すべての銃弾を隙だらけになったビナーに叩き込む。
ビナーは苦悶の声を上げながら大きく後ろにのけぞり、そのままその巨体を倒した。
私はそのまま落下し、受け身も取れずに無様に転がった。
痛む体に鞭を打って起き上がり、ビナーの様子を観察する。
シロコ「...やった?」
ホシノ「...それフラグにならない?」
いつの間にか傍に来ていたシロコちゃんがそんなことを言った。
次の瞬間、ビナーは本当に起き上がった。
シロコ「...あっ」
ホシノ「本当にフラグなっちゃったんじゃん!
一度撤退しよう...弾切れだよ!」
大慌てでシロコちゃんに声をかけたがなんだか様子がおかしかった。
ビナーは私達に向かってくるのではなく、アビドス砂漠の方に向かっていった。
ホシノ「あれ...」
シロコ「逃げていく...?」
実感がわかないがビナーは私達から撤退し始めたようだった。
元の世界でも倒すことはできなった。
今の倒すことはできなかった。
それでも...ビナーは撤退に追い込んだ。
"みんな、大丈夫!?"
背後から先生がみんなを引き連れてやってきた。
もう1人のシロコちゃんも一緒に来ていた。
ホシノ「うん...大丈夫...」
"ビナー...逃げて言ったね"
セリカ「ってことは...私達の勝ち?」
ノノミ「大勝利ですー」
ノノミちゃんの言葉を皮切りに、全員が声を上げて勝利を喜びだす。
ビナーは倒したではなく撤退。
やることとしてはまだ本命が残っている。
それなのに私達は満身創痍に近い。
それでも...
それでも私達は勝ったのだ。
歴史の修正力に初めて勝ったのだ。
私達は...大きな一歩を踏み出したのだ。