ホシノが先生と過去のアビドスに行く話   作:ツキ0912

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第21話 最終決戦

ビナー戦を終え、一時休息をとることになった。

個人差はあるがみんな疲労し、ダメージを負っている。

そのため、次の戦闘に備えるためである。

もう1人のシロコちゃんのダメージはかなり深刻だったが、休息をいれて後衛でサポートでなら戦闘も可能という判断になった。

先生たちが眷属を全滅させてから追加もされることなく、街は一時的に静かになっていた。

その間、昔の私はシロコちゃんのドローンが観察していた。

人は誰も近寄らず、昔の私は依然町中を彷徨うだけで特に暴れることはなかった。

その姿は何かを探すようで...自身のせいで殺したと思っているユメ先輩か...それとも後悔からの死に場所か...

 

ホシノ「落ち着きませんか、ユメさん」

 

私はずっとそわそわして今にも昔の私に向かいたそうなユメ先輩に声を掛ける。

 

ユメ「...うん」

 

ホシノ「ですがもう少し休憩してください

あの時は考えるよりも体が動いてたようですが...無茶しすぎです

普段そんなに動かないのにあんなに激しく動き回ったら体が先にダウンしますよ」

 

ユメ「はい...」

 

ホシノ「...ですが...助かりました

あの時、誰かの動きがと違えばきっとビナーの撤退は不可能だったと思います

ありがとうございました

この先もホシノちゃんを救うためにはユメさんの存在は必要不可欠です...ですから、今は休んでください」

 

ユメ「...ごめんね...ちゃんとそうするよ

だからソラノちゃん...ホシノちゃんを助けるために最後まで手を貸してね」

 

ホシノ「はい、もちろんです」

 

"それじゃ、作戦会議と行こうかな"

 

休息も終え、先生の声がかったので作戦会議を始める。

 

"まず、今回の作戦は難易度が桁違いだ

最終目標はホシノを倒すじゃなくて正気に戻すこと

これについては理解してるね?

だけど、その手段がわからない

以前は裏技が使えたけど...今回は使えない"

 

私は当事者だったため、あまり知らないが...どうやらあの時は奇跡のようなものだったらしい。

今回はその再現とはいけない。

 

"ただ、私の仮説だけど...そこまでやる必要はないと思うんだ

ほら、ホシノの様子を見てごらん?"

 

先生に促されてドローンの映像から昔の私を見る。

私には違いがよく分からなかった。

 

ノノミ「...あの時程は変異してませんね」

 

"そう、ノノミの言う通り目に見えての変化がかなり少ない

あの時もそうだったけど...今回はより一層不安定、または小規模なんだと思う

だから...あの裏技がなくても行けるはずだ"

 

セリカ「具体的にはどうするのよ」

 

"近づいてひたすら呼びかける!"

 

あまりの力技に私達は固まった。

 

ホシノ「先生...流石に無茶な気が...」

 

私は苦笑しながら先生に反論する。

 

"無茶かもしれないけど...やってることの本質はあの時とはそこまで違いはないんだよ"

 

ホシノ「でも簡単すぎない?

そんなことで戻せるなら苦労は...」

 

"いいんだよ、簡単で

何事にも...とりわけ生徒たちに解決策が異様に苦労するようなものは要らないんだ"

 

先生の言葉に再度固まった。

 

"それに...今回はユメがいる"

 

ユメ「わ、私...ですか?」

 

"以前似たケースの事件が起きたとき...残念なことに暴走した時の要因になった当事者はいなかったんだ...そのため、裏技が必要になったんだ

けど、今回はユメがいるからなんとかなるよ"

 

ユメ「責任重大...ですね」

 

シロコ「頑張ってね、ユメ」

 

ユメ「.......う、うん」

 

シロコちゃんの発言と同時に場が一瞬固まった。

 

セリカ「ひっ!?」

 

セリカちゃんが私の顔を見て怯えていた。

おかしい、そんな怖い顔をしてるわけはないのに。

ああでも...1個注意しないと。

 

ホシノ「シロコちゃん...ビナーとの戦闘中も思ったけど、ユメ「先輩」...ね?

シロコちゃん2年生で、ユメさん3年生だから」

 

シロコ「...でもユメは...私よりも弱いから」

 

ホシノ「ユメ先輩」

 

シロコ「......ユメ...」

 

ホシノ「先輩」

 

シロコ「...ユメ先輩」

 

ホシノ「よろしい」

 

気付けばみんな恐怖していた。

ユメ先輩はあたふたしてたが...先生でさえ怯えていた。

 

ユメ「ソラノちゃん...そこまで強く言わなくても」

 

ホシノ「だめです

ちゃんと上下関係をやっておかないと将来困るのはシロコちゃん自身なので」

 

"ソラノには二度と逆らわないでおこう"

 

心外である。

 

作戦会議も終わり、私達は昔の私を追う。

作戦と言ってもひたすらユメ先輩をサポートして昔の私に近づける...ただそれだけである。

とは言うが...難易度は高い。

全員揃ってるとはいえ、ビナーとの戦闘で全員がダメージを負ったなか、あれと戦うのは厳しい。

ヒナちゃんは今回はおらず...前回、私が暴走した時に活躍してくれたもう1人のシロコちゃんは負傷がかなり酷いので戦力にカウントできないし...

必然、ユメ先輩を送るのは私とシロコちゃんの役目になった。

ノノミちゃん、アヤネちゃん、セリカちゃんは後方でバックアップだ。

いやまあ...当然の人選と配置なので文句はないが...先生も人使いが荒い。

私、ダメージのことを抜きに考えても不調が残ってるんだよ?

流石にそれを先生が忘れてるなんてことはないとは思っている...無理をまたさせると謝ってきたし。

それ以外の案が浮かばないのか...私を信頼してなのか...きっとどちらもだろう。

今も体は悲鳴を上げているが...ならやるしかない。

 

ホシノ「みんな、用意はいい?」

 

私の声にみんな了解の声を上げる。

私の眼下には街を彷徨う昔の私がいる。

 

ホシノ「それじゃ始めようか、ノノミちゃん、お願いね」

 

ノノミ「はい、いきまーす!」

 

ノノミちゃんの声と同時に銃声が響き渡る。

目的は攪乱...隙をついて一気に距離を...

 

セリカ「ちょっ...いきなり...!?」

 

ノノミ「きゃあ!?」

 

インカムからノノミちゃんとセリカちゃんの悲鳴が聞こえてきた。

 

ホシノ「ノノミちゃん、セリカちゃん!?

どうしたの!?」

 

シロコ*テラー「先生、ソラノ先輩...イレギュラー...

想定以上の速度でターゲットがこっちに来た...

攪乱が無意味になってこっちが狙われてる...

今は私が抑えてるけどもう持たない、サポートを...うぐっ...!?」

 

セリカ「し...クロコ先輩!」

 

ホシノ「ユメさん!」

 

インカムから悲鳴が聞こえてくる。

逸る気持ちを抑えてユメ先輩とバックアップ組の場所に移動する。

現場に着けばセリカちゃんがノノミちゃんのサポートを受けながら戦っていた。

もう1人のシロコちゃんは少し離れた場所で気絶していた。

だが、それは戦いと呼べるものではなく、一方的にセリカちゃんが攻撃を受け続けていた。

 

セリカ「この...ちょこまかと...きゃあ!?」

 

ノノミ「セリカちゃ...しま...!?」

 

ホシノ「まずい...2人とも...!」

 

薙ぎ倒された2人に止めをさそうとするため、昔の私が動く。

 

シロコ「ん...!」

 

間一髪、シロコちゃんが間に入り攻撃を防いでた。

だが、かなりきつそうな顔だった。

 

シロコ「ソラノ先輩、作戦変更!

私がメインで相手する...ソラノ先輩は...ユメ...先輩を!」

 

シロコちゃんが声を叫びながら昔の私に食らいつく。

セリカちゃんとノノミちゃんよりは戦いになってるがそれでもやはり実力差は大きく、致命傷を避けるので精いっぱいだった。

 

アヤネ「シロコ先輩、サポートします!」

 

インカムからアヤネちゃんの声が聞こえてくるとヘリが3台、現れた。

私が強行しようとしてた時にもやった軍用ヘリ3台同時操作。

 

アヤネ「えっ...」

 

だが、昔の私が察知した瞬間、飛び掛かる。

瞬間、撃ち抜かれ、3台のヘリは瞬く間に落とされた。

 

シロコ「...強い」

 

ヘリを落とし、着地した昔の私は私達を見ている。

 

シロコ「来る...!」

 

シロコちゃんが昔の私の行動を察知するとすぐさま2人は衝突した。

シロコちゃんは完全に押されていた。

 

シロコ「くっ...なにか...隙を...あっ...!」

 

短い攻防の末、シロコちゃんは致命的な隙を晒す。

 

ホシノ「シロコちゃん!」

 

間一髪、2人の間に私は割って入り攻撃を防ぐ。

 

ホシノ「大丈夫?」

 

シロコ「ありがとう...助かった...」

 

"全員、聞こえる?"

 

インカムから先生の声が聞こえてくる。

 

"ホシノの行動が思った以上に激しい

作戦が機能しない...だからやれる限り全力でユメを送り届ける

本来、こんなことお願いするのは情けないが...ごめん、これでいこう

もちろん、細かな指揮は出すけど...みんな...いいかな"

 

全員の状態を見て、有効な作戦が浮かばなかったのだろう。

不甲斐なさを感じる声だった。

 

ホシノ「わかった、任せて!」

 

私の返事を皮切りにみんなも勢いよく返事をする。

 

シロコ*テラー「...ごめん...油断してたわけじゃないけどやられた...でももう、復帰する」

 

さらにもう1人のシロコちゃんが目を覚ます。

戦力差はかなりある。

作戦も通じず、全員満身創痍。

それでも士気は高まっている。

ビナーだって...歴史の修正力だって乗り越えたんだ。

これくらい...問題ないはずだ。

 

そう思っていたが、隣のユメ先輩の顔が暗い。

...どうしたんだろうか?

 

ユメ「...私が...なんとかしないと

私だけがホシノちゃんを戻せるんだ...だから私が...」

 

ふらふらと前に出ようとするユメ先輩を慌てて止める。

 

ホシノ「...なにをしようとしているんですか」

 

ユメ「何って...この状況をなんとかしないと」

 

ホシノ「だからって無策で前に出ないでください」

 

ユメ「でも...!」

 

ホシノ「今この状況で、ユメさんが出ても状況は好転どこか悪化するだけです!」

 

私に発言にユメ先輩はびくりと体を震わせると俯く。

 

ホシノ「今、この状況でホシノちゃんとまともに戦える人はいません

ビナーの時に活躍してくれたシロコちゃん達...それに私だって相手になりません

それなのにユメさんが出て行っても残念ながら足手まといです

それはユメさんだってわかってるはずです」

 

ユメ「...ごめんね...私焦っちゃって

私がなんとか出来るはずなのにみんな傷ついていくから...

それにホシノちゃんがああなったのだって私のせいだし」

 

そうか...確かにユメ先輩が傷ついたのを見て暴走をした...けれど...

 

ホシノ「それを自分のせいだなんて言わないでください

確かにユメさんが傷ついたのがトリガーになりましたが...誰かを思った気持ちをそうやって言わないで上げてください

そもそも、責任があるとすれば元を辿ればカイザーグループですし」

 

ユメ「うん...」

 

ホシノ「大団円を迎えるためにも今は待ってください

誰かが取り返しのつかない怪我でも負えばできなくなるので」

 

ユメ「わかった...私の行動はソラノちゃん、全部任せるね?」

 

ホシノ「いや...基本は指示しますがたまには自分でも考えてくださいね?」

 

少しだけいつものいつものユメ先輩に戻った気がした。

 

ユメ「...ありがとう...―――ちゃん」

 

ホシノ「......えっ?」

 

ユメ「なんでもなーい

早く戻ろ、ホシノちゃんを戻さなくちゃ!」

 

なにか言っていたが...上手く聞き取れなかった。

だが...もし私が聞いたのが正しかったのなら.......

いや、今はよそう...そんな場合ではない。

なにか聞くにしたってまずはすべてを終わらせてからだ。

 

セリカ「ソラノ先輩、まだ復帰できない!?」

 

セリカちゃんに催促されてしまった。

 

ホシノ「お待たせ、みんな行くよ!」

 

私は声を上げながらユメ先輩を引き連れて走り出す。

 

"牽制用の攻撃が来る!

ソラノは防御、ユメはそのまま走り続けて!"

 

先生からの指示通り、昔の私は攻撃態勢に入っていた。

 

"来るよ!

カウント、2、1...0!"

 

カウントに合わせて昔の私から攻撃が放たれる。

盾で防ぐがやけにそれは広範囲で火力もあり...どう考えても牽制には思えなかった。

一応言っておくが私にも出来ないわけではない。

 

"ノノミ、アヤネは今のうちに煙幕を!"

 

ノノミ「了解ですー!」

 

アヤネ「わかりました!」

 

ノノミちゃんの銃が昔の足元に乱射され...煙幕として砂埃が勢いよく立ち込る

さらにダメ押しとばかりにアヤネちゃんがスモークグレネードを取り出して投げ入れ...煙で視界が塞がれていく。

 

"シロコ、クロコ、セリカはホシノを狙ってひたすら撃って!

ダメージは考えないでいい、意識を逸らすことを考えて!"

 

シロコ「ん...了解

行って、ソラノ先輩...ユメ...先輩!」

 

"ソラノ、引き続きユメを護衛しながら近づいて!"

 

ホシノ「了解!」

 

ユメ「はい!」

 

後輩達の尽力によって意識を散らさざるを得ない昔の私に一気に距離を詰める。

やや辛そうな顔をしながらもユメ先輩は私のスピードに着いてくる。

 

ホシノ「...この感覚」

 

"ソラノ、ホシノから高エネルギー反応...一度引いて!"

 

昔の私を見れば銃を上に掲げ、球体状のエネルギーを貯めていた。

初戦で私を追い詰めた技だ。

 

"ソラノ...何してるの...いったん引いて!"

 

ホシノ「ダメだよ、あれ結構連発出来そうだからあれが来るたびに引いてたら一生近づけない...だから受け止める!」

 

"無茶だ...今のソラノじゃ..."

 

ホシノ「私ひとりじゃないよ!

ユメさん、私のこと掴んで踏ん張って!」

 

ユメ「う、うん!」

 

"ソラノ!"

 

ホシノ「先生は...おじさんのこと信じて?」

 

盾を構えて準備万端になったタイミングで衝撃が走る。

轟音と共に灼熱の攻撃が私の盾にぶつかる。

今にも吹き飛ばされそうになりながらも2人で必死に耐える。

だが、それも収まる。

 

ホシノ「うへへ...受けきったよ」

 

ユメ「や...やった...!」

 

ホシノ「喜んでばかりいられません...さっきも言った通り結構連発してきますので今のうちに接近しますよ!」

 

ユメ「うん!」

 

盾を構えながらも再度走り出す。

もう少し...もう少しで...

 

ホシノ「...あつ」

 

熱を感じた。

何もしてないのにその場にいるだけで火傷しそうだった。

慌てて前を見る。

間近に昔の私がいたが...本能で危険を察知した。

踵を返してユメ先輩を守るように抱きしめる。

そしてその瞬間、世界から光に包まれ...遅れて轟音が鳴り響いた。

私はその爆発によって吹き飛ばされ...ゴロゴロと地面を転がる。

 

ホシノ「あっ...がっ...今の...爆発?

こんな隠し玉も持ってたなんて...あっみんなは!?」

 

首だけを持ち上げて辺りを見渡すが...そこには吹き飛ばされた後輩達が...先生が転がっていた。

 

ホシノ「み...みんな...先生...?」

 

"くっ...みんな大丈夫...?"

 

インカムから先生の声が聞こえてきた。

どうやら先生は軽傷のようだった。

だが、後輩達はみな呻き声を挙げるだけで戦闘は続行不可能な様子だった。

 

ホシノ「私は...大丈夫だよ先生...

もっかい...近づいてみる...

流石にあんな大技、連発出来ないだろうk...あれ...?」

 

インカムで先生に声を掛けて立ち上がろうと瞬間、私は無様にその場に倒れてしまった。

 

ホシノ「あ、あれ...なんで...

まだ動けるよ私...くそ...動いてよ...動けよ!」

 

私の叫びに...私の体は無常にも反応しない。

不調な中、幾多のダメージを受けて...何度も限界を超えてきた体だ。

むしろ褒めてやったほうが正しいのかもしれない。

だが、それでもだめだ...私は...まだ止まっちゃだめなのに...

 

ホシノ「...くそっ...くそっ...動いてよ...こんな...最後の最後で」

 

私は泣いていた。

結局、最後の私はダメだったのか...

そう思っていると...足音が聞こえてきた。

 

ユメ「...ありがとう、ソラノちゃん...もう休んでて

後は私1人で止めてみる」

 

ユメ先輩は爆発する前、私が守っていた為...ダメージは微量だった。

だから動けるのだろうが...どう考えてもそんなのは自殺行為だ。

 

ホシノ「ダメです...ユメさん...

ホシノちゃんは理性がないんです...殺されますよ!」

 

ユメ「...近づいてなんとなくわかったの

先生が言った通り...ホシノちゃんを戻せるのは私だけだって

多分...攻撃もしてくると思う

それでも...多分大丈夫...だから、私のことを信じて待ってて」

 

そういうとユメ先輩は歩いて行ってしまった。

銃はおろか、盾も持たずに。

 

ホシノ「ダメです、ユメさん...戻ってきてください!」

 

引き戻そうと体を動かすが全く動かない。

インカムから先生がユメ先輩を止める声が聞こえる。

それでもユメ先輩は止まらない。

近づいてくるユメ先輩に反応して銃を昔の私は向ける。

そのまま攻撃するかと思ったが...昔の私の動きが止まった。

私はユメ先輩の背中しか見えないが...昔の私は何を見たのだろうか。

だが、それでも昔の私は動き出し...先程牽制に使った攻撃をユメ先輩に向けた。

ユメ先輩は...それを防ぐことも避けることもしなかった。

 

ホシノ「ユメさん...!?」

 

攻撃が一旦とまり、ユメ先輩の姿が出てくる。

攻撃を受け、ダメージを受けても少しも怯むことはなかった。

そのまま...昔の私に向かって歩き続けて行く。

 

ホシノ「あっ...」

 

それでも気付いてしまった。

ユメ先輩の足が震えていた。

恐怖からではない...ユメ先輩の体も限界が近いのだ。

それでもまだ、歩み続け...昔の私を救おうとしてる。

 

ホシノ「ダメです...ユメさん...それじゃ先にユメさんが...!」

 

今、昔の私は何を思っているのだろうか

少し躊躇うような動きは見せるものの...攻撃を止める気配はない。

そして銃を掲げ...

 

ホシノ「ユメさん!」

 

エネルギーが昔の私の頭上に溜まっていく。

あれはダメだ。

昔の私は今度は牽制ではなく...敵意を持ってユメ先輩を狙っている。

せめて身を挺してでも守りたかったが...相変わらず体は動いてくれない。

 

ホシノ「ユメさん、せめて避けて!」

 

ユメ「...大丈夫だよ、ソラノちゃん」

 

一瞬、ユメ先輩は振り返り...そう言う。

改めて前を向いた瞬間...昔の私は腕を動かし...敵意をそのままユメ先輩にぶつけた。

 

ホシノ「ユメ先輩!」

 

やはりユメ先輩はそれを防ぐことはせず...その身で受け止めていた。

 

ホシノ「...えっ?」

 

だが、ユメ先輩は倒れなかった。

だがそれは気力がどうとか...そういうことではない。

 

ホシノ「...手加減した?」

 

昔の私は...心なしか震えているように見えた。

未だ感情は見えないが...苦しんでいるように見えた。

あの攻撃をもしまともに受けていたら私でさえただではすまない。

それでも立って進めるということはやはり...

 

ホシノ「このまま行けばもしかして...」

 

そう思うと焼けるような風が吹いてきた。

熱さに耐えながらも前を見ると昔の私の周りが蜃気楼のように歪んでいた。

すぐに分かった...これはさっきの爆発だ。

だが...これはさっきみたいに手加減できる技なのだろうか?

...いや...出来ない。

というよりしないだろう。

昔の私は不思議とすべてを拒絶しようとしているのがわかった。

だからこれは...絶対に手加減しない。

 

ホシノ「...どうすれば」

 

私は迷っていた。

本来であれば引き止めるべきだ。

だが...ここで止めてどうなる?

これ以降、昔の私を止めるチャンスはあるのだろうか。

それにもしかしたらと私は期待もしていた。

 

ユメ「...ホシノちゃん」

 

ユメ先輩はそれでも...一歩も引くこともなく歩み続け昔の私に優しく声を掛ける。

逃げ出したいくらい熱いだろう。

既に火傷も負っているはずだ。

それでも...諦めることなんて...引くことなんて考えもしてない。

そのまま歩み寄り、抱きしめた。

 

ユメ「...もう大丈夫だよ、ホシノちゃん

私はここにいるからね...

もう...そんなになってまですることはないよ

...大丈夫...大丈夫だからね」

 

肉の焼ける音が聞こえる。

今もその熱により肌が焼けているのも感じないような雰囲気で昔の私を抱きしめて優しくなでている。

 

ホシノ(過去)「ゆめ...せんぱい...わたし...」

 

ユメ「大丈夫...もう、休んでいいよ...

頑張ったね...ホシノちゃん...」

 

ユメ先輩の言葉を聞いて昔の私は抱きしめられたまま意識を失った。

雰囲気も落ち着いて、暴走も収まっているようだった。

 

ユメ「ソラノちゃん、先生...私やれたよ!

ホシノちゃん、元に戻せたよ!」

 

そう言うユメ先輩は酷い姿だった。

火傷や焦げが体の至る所にあり、人によっては見れたものではないと言われてしまいそうなほど酷い。

それでも...それが気にならないくらい愛おしそうに昔の私を抱きしめて眩しいと感じるほどの笑顔を向けていた。

 

騒動も無事収まり、みんな晴れやかな気持ちで集まる。

全員ダメージも大きく、先生以外はまともに動ける人はいなかった。

気絶した昔の私はずっとユメ先輩に抱きしめられていて嫉妬を覚えなくもなかった。

そこそこ強く抱いているので時折苦しそうな顔をするが...そんな顔するくらいなら私に変わってほしい。

 

"みんなお疲れ様...ビナーに続いてホシノの正気を取り戻す戦い...どっちも辛かったけどよく戦い抜いてくれた

特にユメ...最後は無茶しすぎだと思ったけど...それでもよくやった..."

 

ユメ「えへへ...あの時は無我夢中で...」

 

ホシノ「でもその火傷とかどうするんですか...女の子なのに顔に火傷なんて...」

 

"これくらいならしばらくすれば跡も残らないで奇麗に治るよ"

 

ユメ「だって...心配してくれてありがとう、ソラノちゃん」

 

ホシノ「まったく...」

 

私としてはもう少し無茶なことは控えて欲しいがあれはきっと反省なんかしてないと思う。

 

ホシノ「でも...結構あっさり戻せたね...ホシノちゃんのこと

しかもアニメとかみたいな展開で...」

 

"戦いの前にも言ったけど...いいんだよ、それで

本来、青春を送る上でこんなことは要らないんだ

それでも起きちゃったんなら...それこそアニメみたいな結末で大団円に終わるのが丁度いいんだよ"

 

少し言いたいこともない気はしないでもないが...一理あるので何も言わないでおく。

それに、今は実際その通りになったわけだ。

そう思っていると昔の私が呻き声を挙げた。

 

ホシノ(過去)「.......ここは」

 

ユメ「ホシノちゃん、起きた!?」

 

ユメ先輩の腕の中で昔の私は目を覚ました。

 

ホシノ(過去)「はい...あと先輩...苦しいので離してください」

 

やはり代われと思ってしまった。

 

"ホシノ...記憶はどこまである?"

 

ホシノ(過去)「...うっすらとですが全部覚えてます

ユメ先輩が私を庇って...私が暴走して...ビナーも出て来て...先生たちが暴走をしてた私を止めてくれたことも...」

 

辛そうな顔をしながらそう言っていた。

今、昔の私は罪悪感に襲われているのだろう...全員無事だったとはいえ...少し間違えれば全員死んでもおかしくなかったのだ。

それに、ユメ先輩のことだって...

 

ユメ「今、すごく罪悪感に襲われてるでしょ...ホシノちゃん」

 

ホシノ(過去)「...はい...私は」

 

ユメ「でも、私あれホシノちゃんのせいじゃないと思ってるから

私が弱いからああなったわけだし...元を辿ればカイザーが襲ってきたのが悪いんだからね!」

 

ホシノ(過去)「でも...!」

 

ユメ「...それに...ホシノちゃんがああなったのって私を思ってでしょ?

...ありがとう、ホシノちゃん...私の事をあんなに想ってくれて」

 

有無を言わせないユメ先輩の優しさに昔の私は口を噤んだ。

そのままユメ先輩の胸のなかで声を押し殺しながらしばらく泣いていた。

 

ホシノ(過去)「...ところで、なんかいっぱいいますけど誰ですか」

 

しばらく経って落ち着いたころ、昔の私が再度口を開いた。

そうだ...この説明があった。

当然ながら未来の後輩なんて知らない昔の私は不信感を持って見ている。

 

シロコ*テラー「ん...私達はソラノ先輩の後輩

ソラノ先輩が苦戦してたから私達が来た」

 

シロコ「そう、特にここを乗っ取る気とかはないから心配しないで」

 

シロコちゃんが察して安心させようとするがそれでは真逆だ。

ぎょっとしながら昔の私を見るが意外にも穏やかだった。

 

ホシノ(過去)「わかってます...

全員が必死に私を止めようとしてくれてたのもわかってるのでそんなこと疑ってません

...ありがとうございました」

 

素直にお礼を言った。

 

ノノミ「いえいえ、困ったらお互い様ですよー」

 

セリカ「そ、そうよ...いつか逆にホシノ......さんにお世話になる日も来るかもしれないですし!」

 

アヤネ「だ、だからあまり気にしないでください!」

 

シロコ「でも、その感謝は受け入れる」

 

シロコちゃんがなんだか調子に乗っている。

もう1人のシロコちゃんが冷たい視線を向けていた。

確かに大活躍してくれたのは事実だが...

 

"さて、こんなところでずっと座ってるのもあれだし...今日はもう帰ろう

それで、明日は休んで...明後日また学校に集まろうか"

 

先生の発言で私達はそれぞれ家に帰ることになった。

昔の私はユメ先輩を連れて最後までお礼を言いながら帰っていった。

 

ホシノ「ところでみんなはこれからどうするの?」

 

シロコ「ん、もちろんホシノ先輩とおな...」

 

シロコ*テラー「私達はまだ電気と水道が通ってる空き家を元の世界と同じように探して住んでみる

元の世界に戻るまではみんなの事は私が面倒見るからホシノ先輩と先生は心配しないでいいよ

それに...積もる話もあるだろうし」

 

もう1人のシロコちゃんがシロコちゃんの口を塞いで気を使ってくれた。

ノノミちゃん達も了承してくれて、シロコちゃんもしぶしぶながらも了承してくれた。

 

シロコ*テラー「それじゃ、元の世界で使ってた家がこっちだから...私達はここで」

 

ホシノ「わかった...

みんな、今日はありがとうね...なんてお礼すればいいか...」

 

シロコ*テラー「ん...大丈夫

私達はもっとたくさんのことをホシノ先輩にしてもらってるから気にしないでいい」

 

微笑みながら、拗ねてるシロコちゃんを抱えてもう1人のシロコちゃんと後輩達とは分れて行った。

 

ホシノ「私達も帰ろか」

 

先生は頷いてそのまま一緒に隠れ家に帰る。

本当に私はいい後輩に恵まれたなと再度実感する。

 

ホシノ「...あっ」

 

隠れ家に着くと...部屋が散乱していた。

 

"そういえば襲撃で部屋を荒らされてたね"

 

ホシノ「忘れてた...」

 

少し憂鬱な気持ちでとりあえずベッドだけを整える。

 

ホシノ「これでよし...うわっ!?」

 

ベッドを整えると先生に抱えられてベッドに入れられた。

 

ホシノ「ちょっと先生...おじさん汚れてるからせめてお風呂...」

 

"明日にしよう...今日はもう、疲れた..."

 

ホシノ「でも匂いとか...」

 

"ホシノはいい匂いだよ...今も...だから私は気にしないよ"

 

ホシノ「うへっ...なにそれ...」

 

教師としてこの発言はいいのだろうか。

 

"...ホシノ、体は大丈夫?"

 

後ろから私の事を心配する先生の声が聞こえてくる。

 

ホシノ「うん、大丈夫

昔の私を止めたときくらいから調子は戻ったよ

けど、ダメージ負ってるから戦闘するならあと1、2回だね」

 

"そこはもう戦えないじゃないんだね..."

 

若干引かれたような気がする。

しばらくベッドの中で無言でいたが、私は口を開いた。

 

ホシノ「勝ったんだね...私達...歴史の修正力に」

 

"うん...何度か挫けそうになったけど...

ホシノがいたから...勝てたんだよ"

 

それは私もだ。

先生がいなけれな諦めていたし...何だったら死んでいたかもしれない。

 

ホシノ「......私もだよ、先生」

 

ベッドの中で体を動かし、先生と向き合って見つめあう。

 

ホシノ「まだ全部終わってないけど...ここまでこれたのは先生のおかげだよ

本当に...ありがとう、先生

.......大好きだよ」

 

私の告白に先生は驚いた顔をしていたがその間に私は先生の唇を奪った。

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