あの騒動が終わって約1ヶ月が経った。
大きく変わったことは特にない。
ユメ先輩の火傷についても後遺症はなく、痕もすっかり奇麗になくなった。
その代わりにユメ先輩の不注意による怪我は増えたり消えたりしていた。
昔の私も大きな変化はない。
多少丸くなった気はするがそれでもまだ生意気な気がする。
シロコちゃん達はもう1人のシロコちゃんが言ったように廃屋で日々過ごしているらしい。
結構快適だとか。
私の不調もあの日以来特に来ることはなかった。
やはり歴史が変わって昔の私が死にかけ、その影響で未来の私が消えかけてたとかいう...創作によくあるものだろう。
騒動後は遊び惚けてたわけではない。
いつも通り...いや、後輩達の手を借りながらも細かな歴史改編を試みた。
結果はどれも惨敗だった。
あの日、確かに歴史の修正力を超えたが...だからと言ってそれがなくなるわけでもなかった。
もう、この頃になると私はどこか諦めていた。
このやり方ではきっとダメなんだろうと。
本当に歴史を変えたいなら残るしかないのだろう。
元の世界に戻る術を捨てて...この世界に。
正直、私はどうするか悩んでいた。
元の世界に戻るか...この世界に留まるか。
確実にユメ先輩を救うにはこの世界に留まるのが確実だ。
だが、そうすると色々な問題が出てきてしまう。
シロコちゃん達の情報からここで長い期間が過ぎても、元の世界はそんなに時間が進まないらしい。
なので行方不明とかの問題は起きないが...それでもここで1年を過ごして向こうに戻るのは肉体的にきっとよくない。
かと言って今帰るのも不安である。
確かに私達は歴史の修正力を超えたが...それはユメ先輩の生死に直結するものではない。
そのため、今の私達の行動でユメ先輩の歴史がどう変わったのかはわからない
確実性を持たせるには残るのが最善なのだが...
本当にいいのだろうか?
私は悩み続けて答えが出ない。
ホシノ「まあでも...難しい話だよね...」
仮に残ったとして、先ほど言った問題が出てくる。
私はともかく...後輩や先生たちを巻き込むのはどうかと思う。
だから...残るとしても私1人にしないといけないかもしれない。
...こういう考え方をするからアヤネちゃんに成長していないと私は怒られるんだろうなと思う。
それでも...大切になればなるほど危険から遠ざけたくなるものだ。
私の強さは関係ない。
仮に、私がみんなより弱くても同じ考えをするだろう。
...それに、まだ歴史が変えられてないかもわからない。
もしかしたらもう、変わっているのかもしれない。
私はカレンダーを見る。
ここに来て数か月が経った。
後輩達も昔の私とユメ先輩と打ち解けていた。
昔の私は一応は先輩に当たるシロコちゃん達にも生意気なところはあるものの、よく笑って楽しそうにしていた。
ユメ先輩はそんな昔の私を嬉しそうに見ていた。
少し形は違うが...私にもこんな世界があったのかもしれない。
昔の私に嫉妬しそうになるほど...羨ましかった。
大好きな先輩がいて、立派な後輩にも恵まれる未来。
私のせいじゃなかったとみんな言ってくれたけど...やはり辛いものはある
だから私はせめて...この世界だけでも守りたい。
だけれども...まだ決断には早い。
もう少しだけ時間がある。
再度カレンダーを見て1週間先の日付を見る。
1週間後、それが未来に帰る道が開く日であり、ユメ先輩と私が喧嘩をした日の前日だ。
そこがすべてのタイムリミットだ。
"ホシノ、そろそろ学校に行くよ"
ホシノ「うん、今行くよ!」
先生と並んでい学校に向かって歩いている。
しばらくはあの騒動の夜のせいでまともに会話も出来なかった。
最初は先生もあの行動の意味を聞いてきたのだが、私が露骨に避けたので先生も触れないようにしてくれた。
"ホシノ...もうあと、1週間だね"
ホシノ「...そうだね」
目に見える成果がないので言葉は重かった。
"とりあえず過去のホシノとユメには去ること伝えないと"
ホシノ「どうやって伝える?」
"流石に正直に伝えるのは控えよう
信じてくれるとは思うけど...そこからどんな風に歴史が変わるか想像が出来ないからね"
ホシノ「それもそっか」
"それともホシノ...ここに"
ホシノ(過去)「先生、ソラノ先輩」
先生が何か言いかけてたが昔の私とユメ先輩が合流した、話は一度中断になった。
ユメ「おはようございます、先生...ソラノちゃん」
ホシノ「はい、おはようございます」
返事を返したが何か察したかのようにユメ先輩は不思議そうな顔をしていた。
シロコ「ん...みんなもう集まってる」
ユメ先輩たちと合流してから少し遅れてシロコちゃん達も合流した。
そのまま雑談しながら私達は学校に着き、ひと段落してから先生は教壇に立って口を開く。
"えーっと...今日は初めにホシノとユメに伝えないといけないことがある
私達はあと1週間でアビドスを去らないといけないんだ"
先生の言葉に全員が固まった。
後輩達も事前に説明してなかったので少し驚いていたがすぐに平静になった。
ホシノ(過去)「な、なんで...そんな急に」
"ごめん、連邦生徒会の子からさっさと戻って来いと言われてしまってね"
ホシノ(過去)「だからって...こんな...私達を...アビドスを見捨てるんですか!?」
ユメ「それは違うよ、ホシノちゃん」
昔の私は叫ぶが、ユメ先輩に窘められる。
ユメ「元々、先生たちはアビドスの調査をしに来てたんだよ
それも、シャーレが発足する前に事前に...
それだけならもうとっくに帰ってもおかしくないんだよ
なのにここまでいてくれるのに...帰るからって見捨てるって言うのは違うよ」
ホシノ(過去)「......すみません」
ユメ先輩の声で昔の私は落ち着く。
ユメ先輩に言われる前からそれは分かっているはずだ...だが、それでも言ってしまったのは相当先生を信頼していたからだろう。
ホシノ(過去)「......次はいつ来れますか」
"わからない...しばらくは忙しいから来れないかもしれない"
ホシノ(過去)「会いに行ってもいいですか」
"...それは無理だ...シャーレの存在はまだ秘密なんだ
いくらアビドスのホシノとユメが来たとしてもシャーレなんて知らないって言われるだけだ"
ホシノ(過去)「...そう...ですか」
いくつかの質問をして暗い顔をしながら昔の私は席に座った。
"それで、残り1週間は私達の戻るための準備と思い出作りに費やそうかなって思う
みんな...いいかな?"
ユメ「いいですね、送別会とか開きましょう!」
手を叩きながらユメ先輩はそう提案する。
後輩達もそれに続いて色々意見を言いながら何をしたいかを話し合っていた。
だが昔の私はやはり暗い顔で話し合いには参加しなかった。
そのまま私と昔の私はあまり話し合いには参加できず、帰宅の時間になった。
ユメ「それじゃ先生、みんな...さよなら!
ほら、ホシノちゃん行こ?」
ホシノ(過去)「はい...失礼します...」
昔の私は落ち込んだままユメ先輩に連れられて帰宅していった。
私達は後輩達と話し合うためにお店に入った。
セリカ「ちょっと先生、今日のあれなんなの!?
私達聞いてないわよ!
ホシノ先輩は知ってたの!?」
お店に入って注文を終えた直後、セリカちゃんが爆発した。
ノノミ「まあまあ...元々帰らなきゃいけない日は分かってましたのでセリカちゃんも落ち着いてください」
セリカ「だとしても事前に言ってほしいわよ!
話合わせるのだって大変なんだから」
"ごめん...実は言ってなかったのには理由があってね
実は...まだ本当に帰るか決めかねてるんだ"
セリカ「えっ...?」
私の口から後輩達に考えていることを伝える。
まだ歴史を変えられてはいないんじゃないかということを。
セリカ「だったら残ればいいじゃない」
セリカちゃんは呆気なくそう言い、みんなそれに賛同している様子だった。
ホシノ「そう簡単な問題じゃないよ?
実際の肉体年齢と日付でズレが生じるのってあんまよくないことだし...」
シロコ「ん...それくらいは別に」
ホシノ「別にじゃない
これは...先輩として、後輩を守るためにも私がちゃんと考えないといけないことなんだよ」
シロコちゃんは口を噤んだ。
ホシノ「だから...ごめん、まだ決めきれてないんだ
結局私は先輩に未練があるからこうやって悩み続けてるわけだし...」
アヤネ「そんなに悪く言う必要はないと思います、ホシノ先輩」
シロコ*テラー「ん...ユメ先輩のことと同列に私達のことを考えてくれてるってことだからね
大事なもの...どっちか1つしか選べないなら仕方ない...もう少しだけ時間あるんだからまだ考えてていいよ」
ホシノ「...ありがとう、みんな」
後輩達の計らいで私はもう少しだけ悩むことにした。
そのタイミングで注文の品が運ばれて来た。
そこから軽く雑談をしながら注文の品を平らげて店を後にする。
いつもの道で後輩達と別れ、先生と隠れ家に戻る。
そしていつものようになんでもない時間を過ごして寝る準備をして2人で布団に入る。
会話に関しては本当に他愛もなく、むしろ距離を感じるものだった
ホシノ「先生、寝る前に少しお話いいかな?」
それでも、少しでもそれを終わらせるための準備をする。
"なにかな、ホシノ"
ホシノ「昔の私が暴走した日の最後...覚えてる?」
"もちろん"
ホシノ「...今度、改めて伝えるから...先生も返事ができるようにしといて」
次の日私達は送別会の準備を始めることにした。
まずは後者の清掃と送別会に向けた買い出しを行う。
買い出し組は昔の私、シロコちゃん、ノノミちゃん、アヤネちゃん
清掃組は私、ユメ先輩、もう1人のシロコちゃん、セリカちゃん、先生と割り振られた。
買い出しはとりあえず食べ物と飲み物...あとは送別会で使いそうなものを先生がお金を渡して好きに買ってきていいと言っていた。
大丈夫かと心配にはなったが...アヤネちゃんもいるし最悪の事態にはならないだろう。
清掃組は以前清掃をした際には授業で使う教室だけだったが今回は校舎全体をきれいにしようと言うことになったので今回は重労働だ。
大変ではあるが、みんなで協力しながら順調に学校が奇麗になっていった。
その時、一本の電話が鳴った。
アヤネ『ソラノ先輩大変です』
アヤネちゃんが大慌てで連絡してきた。
ホシノ「アヤネちゃんどうしたのー?」
アヤネ「実はさっき、ヘルメット団に襲われて...」
ホシノ「ヘルメット団...?
シロコちゃんにノノミちゃん...ダメ押しにホシノちゃんもいるんだし大丈夫でしょ?」
アヤネ「はい、ヘルメット団自体は問題なく制圧出来ました...けれど...」
ホシノ「けれど?」
アヤネ「ホシノさんとシロコ先輩が勝負することになってしまいました!」
ホシノ「......なんで?」
危うく電話を落としそうになりながらも震えた声で答えた。
ホシノ「と、とりあえずおじさんたちも向かうから待ってて」
電話を切って慌てて先生たちに事情を説明して現場に向かう。
既に戦いは激化している様子だった。
ホシノ「お待たせアヤネちゃん、ノノミちゃん
現状どう?」
アヤネ「すみません、私達では止めらず...かなり激しい戦いになってます」
ノノミ「でもそろそろ決着が付きそうですよー」
ノノミちゃんが発言した途端、一際大きな爆発が起きた。
それと同時に1人の人影が飛び込んできた。
それはボロボロになったシロコちゃんだった。
ホシノ(過去)「私の勝ちです、シロコ先輩」
シロコ「ん...悔しいけど、私の負け...」
どうやら私達の到着と同時に決着が着いた様子だった。
ホシノ「まったく2人とも何してんの...
ほら、シロコちゃん立てる?」
シロコ「ん...ちょっと言い争いしちゃった
どっちが多くの多くのヘルメット団を倒したのかって」
ため息が出た。
昔の私にも注意しようとしたが不思議と真剣な顔でその場で立っていた。
ホシノ「ホシノちゃん、どうしたの?」
昔の私に声を掛けると真剣な顔のまま、こちらを見る。
ホシノ(過去)「ソラノ先輩、お願いがあります...
私と本気で戦ってください」
唐突な発言で全員が固まった。
ホシノ「た、戦うって以前おじさん負けたじゃん...」
ホシノ(過去)「はい...ですがそれは私が先生を狙うっていう卑怯な手を使ったからです
私は...本気で戦えばきっと私が負けると思います
それでも...本気のソラノ先輩に挑んでみたいんです」
若干私を買いかぶりすぎてる気がする。
戦ってもどちらが勝つかはわからない。
それは置いておくにしたって、昔の私はそのまま真剣な顔で私を見続けていた。
ホシノ「わかった...期待に応えられるかはわからないけど...戦おうか」
ホシノ(過去)「ありがとうございます」
ホシノ「ただし...お互い今日はゆっくり休んで...明日万全な状態で戦おう」
ホシノ(過去)「わかりました」
私は断れずにそれを受け入れた。
2人のシロコちゃん達は興奮してる様子で、他は心配そうにしていた。
とりあえず今日は日が暮れるまで片づけを続けて、帰宅した。
"ホシノ...本当に戦うの?"
寝る前に先生がそう聞いてきた。
ホシノ「うん...あんな顔されたらいくら自分とはいえ断れなくてさ」
"手加減するの?"
ホシノ「しないしない...したらすぐばれちゃうよ
だから一応、勝つ気でいるよ」
"勝てる...?"
ホシノ「正直どうかなー...この頃の私って結構強いし...半々じゃない?
...でも先生が見てるし...勝ちに行くよ」
"コメントしたらえこひいきみたいになりそうだな..."
ホシノ「今更じゃないかな...?」
"...ノーコメント"
ホシノ「うへへ...」
私のツッコミに先生は苦笑いしていた。
そのまま軽く雑談をしながら2人とも眠りに着いた。
次の日、いつもより早く起きて私は装備を整える。
正直、楽しみにしている自分がいた
あの時のように何かを背負って戦うのではなく、ただ単に力比べをする
...うん、とりあえず暴れるだけ暴れちゃおう。
ホシノ(過去)「ソラノ先輩、まず今日はこのお願いを聞いて貰ってありがとうございます」
ホシノ「いいよいいよ、おじさんもたまには気兼ねなく暴れてみたくなっちゃったからね
その代わり、全力で行くからね」
ホシノ(過去)「こっちだって、先輩だろうが問答無用で吹っ飛ばしますからね」
早朝のアビドス高校のグランド、私達はお互いフル装備で向き合っていた。
先生とユメ先輩、それに後輩達が見守る中、私達は合図を待つ。
"はじめ!"
先生の合図とともに私達は走り出した。
タイミングは同じ、速度はやや向こうが早い。
そのため、私は接近する前にスモークグレネードを投げる。
ホシノ(過去)「煙幕...一旦距離を取る気...?」
そう、昔の私は思うだろう。
私だってそう思う...スモークグレネードの使い方としてはそれが定石だ。
だけど、その思考は読めている。
なら、それを利用しない手はない。
やや卑怯な手な気がするが...本気であるなら取れる手段はすべて使う。
私は思考の裏をかく様にそのまま盾を構えて突撃する。
ホシノ(過去)「なっ...!?」
意表を突かれて昔の私は声を上げる。
私はそのまま突撃し、盾で押し込み、銃を放つ。
昔の私は慌てて距離を取り出した。
ホシノ(過去)「くっ...」
昔の私は私の攻撃から逃れ、まだ煙が出ているスモークグレネードを使って距離を取ろうとしていた。
だが、その行動は私も読めていた。
そのため、進行方向に先回りする。
再度昔の私は驚いた顔をしていた。
盾で昔の私を殴り、吹き飛ばす。
追撃するために銃を構えて、昔の私を見たが...ゾッとした。
冷たい視線で私を観察している。
状況を把握し、次の一手を考えているのだ。
そしておそらく...もう私が昔の私の動きをわかった上で行動しているのがバレた。
ホシノ「いやいや...対応早過ぎでしょ」
我ながら恐ろしいと感じつつも意識を切り替える。
昔の私は空中で身をよじって向きを変え、壁を蹴って逆に突撃してくる。
銃を構え、タイミングを見計らって引き金を引く。
ホシノ「うへっ...こんなに速かったっけ?」
弾丸は昔の私を捉えることはなかった。
何発か撃つが全て躱される。
ホシノ「ダメだ、当たんないや」
私はぼやきながらも距離を取るが昔の私の方が速い。
一瞬、近づいて大量の銃弾を放たれる。
だが私はそれを大半は盾で防いで致命傷には程遠い状態だった。
ホシノ「...やるね」
ホシノ(過去)「ソラノ先輩こそ...流石です。」
最初の攻防を終え、私達は軽くお互いを称える。
だがそれもすぐに終わり、昔の私は猛スピードで突撃してくる。
私は今度はその場から動かず、盾を構えて待ち受ける。
昔の私は縦横無尽に動き回り、360°...全方位から私を攻撃してくる。
だけど、それくらいなら私も見切れないわけではない。
流石に全弾防ぐことは不可能だが、急所のものは優先して防ぎ、尚且つ余裕のあるものも防いで私のダメージは必要最低限に抑える。
ホシノ(過去)「硬った...!」
そして、昔の私は弾の消費が激しい。
想像通り、リロードの隙が生まれた。
ホシノ(過去)「ぐっ...!」
昔の私はハンドガンで牽制してくるがそれくらいは私には牽制にもならない。
ハンドガンによる牽制を無視してお返しとばかりに銃弾を浴びせる。
ホシノ「ちっ...」
だが、その隙も昔の私は長くは晒さない。
必要最低限の動きでリロードを済ませて再度猛スピードで動き回る。
今の盾持ちの私にはそれに追いつけるスピードがないため、追撃を止めて防御に徹する。
先程と同じく、銃弾の雨を防ぐが...これでは先程と同じだ。
昔の私がそんなに学習能力がないわけがない...
次はどう来るか...見逃さないようにしないと...
そう思っていると予想外の方向から突然眩しい光に襲われた。
ホシノ「しまった...スタングレネード!?」
やられた。
昔の私の動きを気にしすぎて周りの変化に気づかなかった。
昔の私は私にバレないようにスタングレネードを仕掛け、起動させていた。
おかげで私は完全に視覚を奪われた。
ホシノ「ぐあっ...!?」
昔の私はその隙を見逃さず、私の腹に大量の銃弾を浴びせ...私は耐えきれずに吹き飛ばされた。
ホシノ(過去)「わかってましたが...硬すぎですよソラノ先輩
ですがようやっとまともに入りましたね」
ホシノ「ホシノちゃんこそ...やるじゃん
でも、まだ勝負は終わってないよ!」
盾を背中にしまい、ハンドガンを取り出す。
容赦なく昔の私の目を狙って撃つ。
私の反撃に驚いて態勢を崩しつつもハンドガンの弾を防ぐ。
だが、私もお返しとばかりに態勢を崩した昔の私の腹に銃弾を浴びせて吹き飛ばす。
ホシノ(過去)「...いったぁ
...その装備、ソラノ先輩も似た戦闘スタイルなんですね」
盾をしまい、同じ装備になった私に昔の私は察してたような言い方をする。
ホシノ「まあね...どこで身に付けたかは企業秘密で」
同じ構えをしながら私達はにらみ合う。
そして同じタイミングで大地を蹴って交差する。
激しい攻防が再度始まった。
ホシノ(過去)「はぁ...はぁ...」
攻防の最中、昔の私の息が上がり始めた。
ホシノ「はぁ...はぁ...」
だが、それに関しては私も同じだ。
両者足を止めずに激しい攻防を繰り広げる。
だが、いくら盾をしまって機動力を上げたところで昔の私にはギリギリ届いていない。
同じ戦闘スタイル、されど差のある性能。
ならどうするか...最大の出力を出させなければいい。
ホシノ(過去)「うっ...!?」
昔の私が走り出す直前、私は足払いを掛ける。
それで転ぶわけではないがわずかな隙が生まれる。
そこを逃がさずにダメージを与えていく。
対する昔の私は特に変わらず縦横無尽に移動しながら私を翻弄しつつ攻撃してくる。
だが、対応力が凄まじく、一度使用した手は通じない。
お互いがお互いを確実に追い詰めている。
だが、私にはまだ狙っているものがあった。
ホシノ「そこ!」
ホシノ(過去)「その攻撃はさっき見ましたよ!」
隙をついて再度昔の私の行動を阻害するために銃を放つが防がれる。
だが...
ホシノ(過去)「えっ...?」
私の攻撃を回避した瞬間、その場でガクッと崩れ落ちるように昔の私が膝をついた。
ホシノ(過去)「嘘...体力が...うあっ!?」
そう、体力切れである。
恐らく総合的な体力も今の私よりも多いだろう昔の私だが、それでも遂に尽きた。
今まで体力切れなんか起こしたことなどないだろうが、同格との激しい攻防の末、先に体力が尽きたのは向こうだった。
あれだけ激しく動くのだ、例え私の方が体力が劣ろうが先に尽きるのは向こうなのは当然であった。
もっとも、こちらもかなり消耗させられたが。
そんな昔の私にケリをつけるため、私は動きが止まった昔の私に銃を放って吹き飛ばす。
その衝撃で昔の私の手から銃が離れて後方に飛ばされる。。
ホシノ(過去)「うぐっ...くっそ...!」
ホシノ「うっ...!?」
だが、昔の私もしぶとかった。
吹き飛ばされてまだ空中にいる中でサブアームのハンドガンで的確に私の銃を狙い、私も銃を後方に吹き飛ばされた。
昔の私が体制を立て直した時、一瞬私達は固まった。
そして再度同時に動きだす。
お互いの銃を取りに。
飛ばされた銃までの距離は同じ、どちらかが速く取れるかが戦いの分け目になる。
だが、私は端から自分の銃を拾う気はなかった。
走り出した方向は最初から昔の私に向かってだ。
ホシノ(過去)「はっ...!?」
自身の銃を拾わず突撃してくる私に昔の私が驚いていた。
追いつく前に昔の私は自身の銃を拾う。
そしてそのまま私に突き付ける。
ホシノ(過去)「貰った!」
なぜ銃を拾わずにこちらに来たのか昔の私にはわからなかっただろう。
だがそれでも、勝ちを確信していた。
自分の銃は手元にあり、対する私にはそれがなかった...勝ちを確信するのには十分だろう。
ホシノ「甘いよ」
銃弾が放たれる前に私は背中にしまっていた盾を取り出して銃弾を寸前で防ぐ。
そしてそのままハンドガンで昔の私を撃つ。
ホシノ(過去)「うぐっ...!?」
体力がほぼない状態なため、ハンドガンでも昔の私にはダメージになっていた。
銃弾を受け、地面に倒れる。
まだ諦めまいと立ち上がろうとするが私はその額に銃を向ける。
"そこまで!"
瞬間、先生の声が響いた。
"勝者、ソラノ!"
そして私の勝ちを告げた。
見守っていた後輩達とユメ先輩が駆け寄ってくる。
その姿を見て私は脱力し、その場に倒れた。
ホシノ「いやー...きつかったけど...なんとか勝てたー...」
自分同士の戦い、私は勝てたのだった。
ホシノ(過去)「ソラノ先輩...付き合ってもらってありがとうございました」
昔の私は悔しそうな顔をしながらもそう言ってきた。
ホシノ「いいよいいよ、おじさんも楽しかったしさ」
ホシノ「...最初に負ける...とは言いましたが...負けた今でも理由はわかりません
実力的には私達は変わりありません...なのになぜ私は負けたのでしょうか...」
泣きそうになりながら、そう聞いてきた。
ホシノ「そうだね...おじさんにもよくわからないから...なんとなくになるけど許してね
そもそもさっき、実力は同じって言ってくれてたけど多分ホシノちゃんの方が強いよ」
ホシノ(過去)「だとしたら、何故!?」
ホシノ「情報だね...私はホシノちゃんの戦い方を知ってるからそれだけで有利に戦える...ホシノちゃんは結構強いからみんな研究してるんだよ?
あとは単純に経験の差かな...なんだかんだおじさんはホシノちゃん以上に場数を踏んでるんだ
あとそれと...ホシノちゃん、今まで負けたことある?」
私の質問に少しぽかんとしていた。
ホシノ(過去)「はい...ありません」
ホシノ「おじさんはあるよ...負けたこと
その差はすごく大きいよ
ホシノちゃんもいつかまた負けておきな...いつか間違いを起こしたらその子が止めてくれると思うから
まっ...これは私を負かしてくれた友達の受けおりだけどね」
私の言葉を聞いて納得したのかはわからないけど悔しそうに昔の私は泣いていた。
あの後、私達は軽く治療を受けた。
軽くと言ったのはそこまでお互い怪我をしていないからだ。
あれだけ激しい戦いだったのに対して怪我がお互い少ないのでセリカちゃんから化け物呼ばわりされた。
体力も戻ってきていたので私達も送別会の準備に参加していた。
学校の清掃も一通り終わり、かなり奇麗になった。
会場の飾りつけもよくできていて、送別会の準備も終わった。
そしてあっという間に送別会の日...つまりは帰る日の前日になった。
ユメ「えーそれでは先生、ソラノちゃん、シロコちゃん、クロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん達の送別会を始めます
.......えっと...こういう時なんて言えばいいんだろう?」
ユメ先輩が司会を務めていたが...始まりからぐだぐだだった。
ユメ「と、とりあえず乾杯!」
ユメ先輩のコールでみんながグラスに入ったジュースで乾杯をした。
送別会と言っても短い思い出話をしながら買い込んだお菓子とジュース、それに先生がとってくれた出前を飲み食いするものだった。
各々が楽しそうに喋っているのを私は眺めていた。
なんだかシロコちゃんと昔の私がユメ先輩とノノミちゃんのどっちの胸がいいか競い合ってるような声が聞こえた気がした。
うん、気がしただけだ...きっとそうだ
"...みんな楽しそうだね"
賑やかな送別会も時間が過ぎ、食べ物も少なくなってきて終わりが見えた頃、先生が隣に来て声を掛けてきた。
ホシノ「そうだね...きっといい思い出になるよ」
ホシノ(過去)「すみません、ソラノ先輩...少し先生を借りて行ってもいいですか?」
いつの間にか私達の前に昔の私が来て、そう声を掛けてきた。
ホシノ(過去)「急に連れ出してすみません、先生」
私は屋上に先生を連れてきた。
"大丈夫だよ...それで、話って何かな"
日が傾いているからか、風が吹いて少し肌寒い。
私は、先生と向き合って口を開く。
ホシノ(過去)「私は大人が嫌いです
大抵、悪いことしか考えてないか情けないかの二択だと思ってます
先生も後者だと思い、正直嫌いでした」
私の言葉に先生はただ黙って聞いていた。
ホシノ(過去)「なんだか頼りなさそうで...アビドスをなんとかしたい言ってましたが無理だと思ってました
こんな情けない人にアビドスをなんとか出来るものかって
けど...私の認識が間違っていました
先生...あなたは頼りない情けない人ではなく...私達に寄り添って未来への手助けをしてくれる優しい人だったんですね」
"買い被りだよ...そうなりたいとは思うけど、そこまでの力を私は持ってない"
ホシノ(過去)「そう思って...その上で動いてくれるだけで私はいいと思いますよ
それで...先生は私にとって初めて信頼できる大人になりました
こういう人もいるんだなと...初めて大人を信頼できました
...そうしていつしかその気持ちは...もっと別なものになりました
先生、私はまだまだ子供です
まだ、学ばなければならないことがたくさんあります
それでも私は...
私は...先生の事が好きです」
私は...先生に告白した。
先生は若干辛そうにしながらも私の目を見て向かいながら口を開いた。
"ありがとう...嬉しいよホシノ...だけど、その気持ちには答えられない"
そうして、予想していた答えと同じ結果が出た。
ホシノ(過去)「そう...ですか...
いくつか質問させてください...出来れば...嘘をつかないでください
先生が告白を断ったのは私が生徒だからですか?」
"いや...私には別に好きな人がいるからだよ"
これも予想していた答えだ。
そしてその人は聞くまでもない...
ホシノ(過去)「ありがとうございます...
......先生...別の質問なんですがどうしても会えないんですか?
例え振られて、私に可能性がないのがわかっても...せめて会いたいです」
"ごめん...会えないんだ..."
残酷にも先生は事実だけを言う。
だが、それは私を思っての事だろう。
ホシノ(過去)「...どうして、会えないんですか?」
"......そもそも、私達は生きている時間が違うからだ"
予想外の答えに私は固まった。
ホシノ(過去)「じ、時間が違う...?
どういうことですか?」
あまりにも飛躍した話で先生は私をからかっているのかと思った。
けれど、顔を見れば嘘ではないことが分かった。
"詳しくは歴史が変わるのを防ぐためにも言えないんだけど...私とソラノとその後輩達は2年後の世界から来たんだ
ほら、アビドス七不思議にそういうのがあるでしょ?"
思い返せば確かにそんなものもあった。
ああ...たしか2人ともその話題が出たときに過剰に反応したがそういうことか。
それに...たしか七不思議によればその穴が開くのはたしか...丁度明日だ。
"し、信じられないと思うけど...そういうことなんだ...えっと...証拠は..."
ホシノ(過去)「いいですよ、信じますから」
"えっ..."
ホシノ(過去)「思い返せば...2人とも行動がおかしい時ありましたが...未来から来ていたと仮定すれば全て納得が行きますから」
"そ、そっか..."
あっさり信じた私にやや複雑そうな顔をしてた。
ホシノ(過去)「先生、未来の私はどうなってますか?」
"ソラノだよ...あれが未来のホシノ"
...なんとなく予想してたが未来の私はああなるのか。
ホシノ(過去)「なんかちょっと...嫌ですね」
"あはは...ホシノはそう思うんだ...私は好きだけどね
まあでも、未来は変えられるはずだからね...ホシノの好きなように成長したらいいよ"
ホシノ(過去)「はい...わかりました」
ふと、あることが思い浮かんだ。
ホシノ(過去)「もう、今の先生には会えなくなりますが...2年後、先生には会えるんですよね」
"そうだね...2年後、新任の私がここにキヴォトスに来て...将来のホシノの後輩...アヤネからの連絡を受けて最初の仕事としてアビドスに来るよ"
ホシノ「...わかりました...じゃあ、待ってますね...そして今より成長して、いい女になって先生を待ってます」
"それは...そうだね、ちょっと見て見たかったかな..."
一度話の区切りがついて、私達の間に沈黙が流れる...そして気持ちが込み上げてきた。
ホシノ(過去)「...もう行っていいですよ...先生...しばらくしたら私も帰りますから
それで...これでもう、会うのは最後になります」
"...そっか...じゃあホシノ、最後に1つだけ
これから先、詳しくは言えないけど...きっと困難が待ち受けてるはずだ
けれど...それでも前に進むんだ...わかったね?"
ホシノ(過去)「はい、わかりました
......さよなら、先生...ありがとうございました」
屋上から去っていく先生を見送って、私はその場に泣き崩れたのだった。
昔の私が先生を連れて屋上に行った。
後輩達はなんだろうと思っていたが私を含めて一部は気づいていたようだった。
先生は...多分断るだろう。
それは分かっていたがなんとなくもやもやしていた。
ユメ「ソラノちゃん、ホシノちゃんが今いない状態で、ちょっと時間貰っていい?」
ホシノ「えっ...?」
唐突なユメ先輩から誘いで私は困惑してしまった。
ホシノ「は、はい...構いませんが...」
その様子を見てノノミちゃんともう1人のシロコちゃんが何かを察したのか片づけを促し始めた。
ユメ「ありがとう、ソラノちゃん
それじゃ、先に生徒会室で待ってて?」
ホシノ「わかりました」
ユメ先輩に言われて生徒会室に向かう。
生徒会室は夕焼けに照らされて幻想的な雰囲気だった。
懐かしくもある生徒会室を眺めているとユメ先輩が入ってきた。
ホシノ「来ましたか...ユメさん...
それで、何の用でしょうか?」
ユメ「ごめんね、急に呼び出しちゃって...
それじゃ、お話しようか...
......ホシノちゃん」