ホシノが先生と過去のアビドスに行く話   作:ツキ0912

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第23話 ユメ先輩

ホシノ「......えっ?」

 

私は声を上げて固まった。

この人は今なんて言った?

私の事をホシノと呼んだのか?

でも何故...?

 

ホシノ「い、嫌ですね...ユメさん...

私はソラノですよ?

いくら似ているからって名前を読み間違えてたらホシノちゃんにも怒られますよ?」

 

誤魔化すように私は言うがユメ先輩は何も言わない。

ただ泣きたくなるほど酷く優しい微笑みを向けてるだけだった。

 

ホシノ「...な、なんですか...?」

 

ユメ「ホシノちゃん...だよね

貴方の本当の名前は」

 

ホシノ「ち、違います...!」

 

そう、違うのだ

違わなければいけない...

同じ世界に小鳥遊ホシノは2人いてはいけない。

私はユメ先輩の前ではソラノを演じなければならない。

それなのに...

 

ユメ「......ホシノちゃん」

 

頑なに私がホシノだと...言っていた。

 

ホシノ「私は...」

 

だめだ。

認めるな。

情に惑わされるな。

相手がユメ先輩だからだとはいえ...いや、ユメ先輩だからこそだ。

ユメ先輩を思うなら正体を隠せ。

守りたいなら...最後まで嘘を貫き通せ。

 

ユメ「...ホシノちゃん」

 

いつの間にかユメ先輩は私の前に来ていた。

思わず後ずさりする。

 

ホシノ「...わた...し...は」

 

だが、私の手をユメ先輩は掴んで逃がさなかった。

優しいその手は...確実に私の心を暖かく包んでいた。

 

ホシノ「私の...名前は...」

 

何度も理性が訴えてくる。

否定しろ、否定しなければならない。

 

ユメ「ホシノちゃん」

 

再度呼ばれて前を見る。

優しく微笑むユメ先輩の顔があった。

 

ホシノ「......私は...小鳥遊ホシノ...です」

 

私は遂に...我慢できずに正体を打ち明けて...泣き始めた。

ユメ先輩はそんな私を優しく抱きしめてくれた。

 

ユメ「やっぱり...ホシノちゃんなんだね」

 

ホシノ「はい...はい...私はホシノです...小鳥遊ホシノです...ユメ先輩」

 

私はユメ先輩の中でひたすら泣いていた。

この世界に来て、ユメ先輩に会えて様々な日々を過ごした。

それでも私はホシノではなく、ソラノとして過ごしてきた。

ホシノとして言いたかったこと...胸に秘めていたものが一気に溢れ出した。

そう...心の中で私はずっと言いたかったのだ...私は小鳥遊ホシノであると。

 

ホシノ「酷いです...ユメ先輩...

せっかく私は耐えて秘密にしてたのに」

 

ユメ「うん...ごめんね...

でももう帰るって言うから...どうしてもお話したくて」

 

私は落ち着きを取り戻して椅子に座った。

 

ホシノ「さて...なにから話しましょうか」

 

ユメ「そうだね...まず確認だけど

未来のホシノちゃん...だよね?」

 

ホシノ「はい...私は今から2年後の小鳥遊ホシノです

...いつから私が小鳥遊ホシノだって気づいてたんですか?」

 

ユメ「えっ...そんなの最初からだよ...?」

 

ホシノ「さ、最初...!?

な、なんでわかったですか!?」

 

ユメ「なんでって...証拠とか...そういうのはなかったけど...それでもわかったんだよね

ホシノちゃんだって」

 

ホシノ「曖昧過ぎませんか...?」

 

ユメ「...そうかもね

でも、私はホシノちゃんの先輩だから...それで確信するのには十分だったよ」

 

ホシノ「...ほんと...酷いですね

普段は察し悪い癖にこういう大事なことだけは気づくなんて」

 

ユメ先輩らしい感覚に呆れつつも嬉しさで再度泣きそうになったが堪える。

 

ユメ「...でもソラノって名前......」

 

ホシノ「あれはあの時即興で決めたんです!

打ち合わせなしで合わせたのをむしろ褒めてください!」

 

私は何度この名前でいじられるのだろうか。

 

ユメ「ところでホシノちゃん...どうして過去に来たの?」

 

ユメ先輩からそんな質問が来る。

当然、理由は気になるだろう...

まあ...バレてるのであれば言ってもいいだろう

 

ホシノ「最初は...偶然でした...あのアビドス七不思議の1つに飛び込んでここに来ました」

 

ユメ「私の声...?」

 

ホシノ「はい...それで先生と一緒に穴に飛び込んだんです」

 

ユメ「そうだ、先生!」

 

なにか思い出したかのようにユメ先輩は声を上げた。

 

ホシノ「せ、先生がなんですか?」

 

ユメ「びっくりしたよ...だってあんなに大人の人を嫌ってたホシノちゃんが大人の人とすっごく仲良くしてるんだもん」

 

ホシノ「...い、色々ありましたからね」

 

ユメ「...色々...ねえ?」

 

ユメ先輩が変にニコニコしながら私を見ている。

これはきっと...私の気持ちを見透かされてるかもしれない...

 

ホシノ「せ、先生との関係は今は関係ありません!

話の続きをしますよ!」

 

ユメ「はーい」

 

まだ変にニコニコしているが無視して話を続ける。

 

ホシノ「それで...ユメ先輩と昔の私に会って気づきました

ここは過去の世界なのだと

それと...帰るには明日開く時間を超える穴に飛び込まないといけないことに

それまでどうしようかと思いましたが...私は未来を変えようとしました」

 

ユメ「み、未来を...?」

 

当然のことだが、流石に未来を変えようとしていると言えばユメ先輩でも驚いた。

 

ホシノ「はい...どうやれば未来を変えられるかは分からなかったですが...正史とは違う選択をしてみようとしました

私達が出会ってすぐの日の事、覚えてますか...?」

 

ユメ「...えっと」

 

どうやら思い出せないようだった...

 

ホシノ「...はあ...じゃあ説明しますね

私達は未来を知っているんです...私の世界の歴史ではユメ先輩はあの悪徳業者に騙されて無償で働き、そのあとも危なかったのですが...私が助けたんです」

 

ユメ「あー思い出した!

...あれ、でもあの時って」

 

ホシノ「そうです...事前にユメ先輩に伝えたのでユメ先輩はバイトには行かなかった...

けれど、ユメ先輩はあの悪徳業者に拉致されましたよね?」

 

ユメ「うん...そうだね...それでホシノちゃん達に助けられた...」

 

ホシノ「そうです...私達はそうやって過去を変えて最終的に歴史を変えようとしてきました

それでも...世界はそれを許してくれませんでした

『ユメ先輩が騙されて私がそれを救う』といった大筋の歴史を変えることは困難...と言いますかできませんでした」

 

そう...結局私は満足できる結果は今日に至るまで残せなかったのだ。

ユメ先輩にもその悔しさは伝わったようで、私の顔を心配そうに覗き込んでいる。

 

ユメ「そっか...それでホシノちゃんはそんな苦労してまでどうして歴史を変えたいの?」

 

当然の疑問を投げかけられた。

歴史を変えたいと言った大きな事を成そうとするその理由を。

だが、それを伝えてもいいのだろうか...

鼓動が速まり、胸が張り裂けそうになる。

私は...決意を固めて震える声で伝える。

 

ホシノ「......明日...ユメ先輩は私と喧嘩をします

その後、別件で出かけて砂漠に行き...コンパスを忘れたユメ先輩は遭難し...その後衰弱死します

私は...そんな歴史を変えたくてここに来ました」

 

ユメ「私が...死ぬ...?」

 

ユメ先輩は驚いたような声を上げ、私は自分のやらかしに気づく。

誰であっても明日死ぬと言われたら取り乱してもおかしくない。

だけどもユメ先輩は驚きはしてもどこか悟ったような顔をしていた。

 

ホシノ「ず、ずいぶん落ち着いてますね...もしかして信じてませんか?」

 

ユメ「ううん、ホシノちゃんがそう言うならそうなんだと思うけど...

...でもそっか...そうなんだって納得しちゃったんだ」

 

ホシノ「怖くないんですか...?」

 

ユメ「もちろん怖いよ?

けどなんか...うん...今のホシノちゃん見てたら大丈夫かなって思って...

...ごめんね...私にもわからないや...もしかしたら感情が追いついてないだけかも」

 

ホシノ「そ、そうですか...」

 

ユメ先輩は少し困ったように笑っていた。

 

ユメ「ねえ、ホシノちゃん...」

 

そんななか、再度ユメ先輩に声を掛けられる。

 

ユメ「私がいなくなった後のアビドスってどう?」

 

ホシノ「...未だ大変ですよ

砂漠化は止まらないですし...生徒だって少ないです

それにユメ先輩とハイランダー...あとはネフティス関連の事で大変だったんですよ?」

 

ユメ「そ、そうなの...!?

ごめんね...ホシノちゃん...」

 

ホシノ「それに手帳どこにやったんですか...

亡くなった先輩はもってないですし...どこ探しても見つからないですし...

私...3年近く探したりそれを見つけられないことで悩んでたんですよ」

 

ユメ「うぅ...ごめんね...?」

 

ホシノ「...でも今は...後輩が入ってきました

ユメ先輩もあった子たちです...クロコちゃんは...ちょっと説明がめんどくさいですけどね

みんな私にはもったいないくらいいい子ですよ」

 

ユメ「もったいないって...ホシノちゃんも立派に成長したじゃん...」

 

ホシノ「立派じゃないですよ...なんどもみんなに迷惑かけて...ようやっと...ちゃんと先輩らしく進み始めたかどうかなんです」

 

ユメ「そんなことないのに...」

 

ホシノ「......いい先輩って...なんなんですかね」

 

ユメ「...それは...なんだろうね...私もダメな先輩だったし」

 

ホシノ「そんなことはありませんよ

少なくとも私にはいい先輩でした」

 

ユメ「ホシノちゃん...それは...」

 

ホシノ「......もっと...教えてもらいたかったです」

 

何かユメ先輩は言いかけてた気がするが私はそれを遮って言葉を続ける。

 

ホシノ「亡くなって...後輩が出来てようやく馬鹿な私は気づくんです...

確かにユメ先輩もダメなところはありましたがそれでも...いい先輩でしたよ

だからもっと教えてもらいたかったです...私はもっともっとユメ先輩から学ぶべきことが...学びたいことがあったんです!

私がもっと...もっと.......なにかが違えばこうはならなかったのに!」

 

ユメ「......そういえば喧嘩したって言うけど...どうして喧嘩なんかしたの?」

 

ホシノ「...喧嘩と言いましたが実際は私の八つ当たりみたいなものです

明日、先輩は砂祭りのポスターを見つけていつか開催したいと私に語ってくれるのですが...丁度イライラしていた私は現実を見ろと行って部屋を出ました」

 

ユメ「それは...ホシノちゃんは私の死とは無関係じゃない?

コンパス忘れたのはただの私のうっかりなんだし」

 

ホシノ「はい...理屈ではわかってます

後輩達や先生もそう言ってくれてますし納得もしてます

それとこれとは無関係なんだって...

それでも...考えてしまうんです...

喧嘩さえしなければこうはならなかったと

そして...先輩にはちゃんと卒業してもらいたかった!」

 

気付けば涙がボロボロとまた溢れてきた。

前に進むことは決めても後悔は未だ抱えている。

だから私は未来を変えようとした。

 

ホシノ「...でも...結局はダメなんでしょうね

なにも私は変えられなかった...

私は...なにがしたかったんでしょうか...

単に逃げたかったのでしょうか...」

 

ユメ「ホシノちゃん」

 

気付けば私は再びユメ先輩に抱きしめられていた。

 

ユメ「難しいことは私にはよくわからないけど...

まず...ホシノちゃん...よく頑張ったね」

 

ホシノ「頑張れてないです...私は結局」

 

ユメ「頑張ったよ...だって...そんなに必死になってくれたんだし...頑張ったよ

それに...まだその日は来てないでしょ?」

 

ホシノ「...えっ?」

 

ユメ「未来はまだ...決まってないよ?」

 

ホシノ「...私はなにも変えられなかったのに?」

 

ユメ「細かいところはそうかもだけど...

それでもきっと...奇跡は起こるよ

だって...こんなに頑張ったんだもん...私はそう信じてるよ」

 

ホシノ「...昔...よくなんでもことにも奇跡って言ってましたね」

 

ユメ「昔って言うけど私は最近なんだけどね...」

 

奇跡...ユメ先輩がよく口にしていた言葉。

ユメ先輩がそう言うなら...なんだか信じられる気がしてきた。

 

ホシノ「そうでしたね...

ありがとうございます...ユメ先輩...

少し自信が持てました

私...明日はちゃんと帰りますね」

 

ユメ「ちゃんと帰るって...もしかして残る気だったの!?」

 

ホシノ「あっ...」

 

しまった...気が緩んで余計なことまで言ってしまった。

 

ユメ「みんな帰るって言うのにもしかして1人で残ろうとしてたの!?」

 

ホシノ「えっと...はい...」

 

ユメ「ダメに決まってるでしょ!

あんないい子たちや先生が悲しんじゃうよ!」

 

ホシノ「す、すみません...もう帰るって決心したんで...」

 

ユメ「まったくもう!」

 

珍しくユメ先輩に怒られた気がしたが...それすらも懐かしい気がした。

 

ユメ「ホシノちゃんは...みんなの立派な先輩なんだからしっかりしてね?」

 

ホシノ「立派...ですか...」

 

ユメ「そうだよ?

みんなあんなに慕ってるんだもん...失敗したって立派な先輩に違わないよ

それにホシノちゃんだっていっぱい失敗してたのに私のこと立派な先輩って言ってくれたでしょ?」

 

ホシノ「...そうでしたね」

 

そっか...私やれてるんだ...

なら...もう少し胸を張ってみよう。

 

ホシノ「...でも...多分私はもうユメ先輩には会えないと思うんですよ

きっと...この世界でユメ先輩が生きて卒業しても私の世界とは別のパラレルワールドとして存在する...そんな気がするんです」

 

ユメ「そ、そうなの...?

難しいことはわからないけど...じゃあこのホシノちゃんとはもうお別れなんだね...」

 

ホシノ「はい...そうです

あっお見送りは結構です...きっと私...ぐだぐだなっちゃいそうなんで」

 

ユメ「ええー...」

 

ホシノ「でもその代わり...その分、今甘えさせてください」

 

ユメ先輩は優しく頷くと両腕を広げた。

私はその中に収まる

自然と涙が零れた。

口から今まで我慢していたものがあふれ出てくる。

 

ホシノ「またこうして...会えて嬉しかったです」

 

ユメ「私も...ちょっとズルみたいだけどこうやって成長したホシノちゃんに会えて嬉しいよ」

 

ホシノ「また...話せて嬉しいです」

 

ユメ「私もちょっと新鮮で楽しかったよ」

 

ホシノ「正体隠してたのに...気付いてくれて嬉しかったです」

 

ユメ「先輩だもん...ちゃんと気付くよ」

 

ホシノ「酷いこと言ってすみませんでした...私は...」

 

ユメ「大丈夫...怒ってないよ...」

 

ホシノ「...ユメ先輩」

 

ユメ「...なぁに?」

 

ホシノ「......ありがとうございました」

 

ユメ「うん」

 

言いたいことはまだあったが...きっとこれ以上は私は言葉にできないと思って留めた。

けれど...伝えたいことはちゃんと伝わったはずだ

 

ホシノ「さようなら...ユメ先輩」

 

そして最後に別れの挨拶を告げて、涙を流しながらも笑顔で私は先にその場を後にした。

 

送別会の会場に戻ると、片づけが既に済んだ状態でガラリとしていた。

テーブルにはシロコちゃんの書置きがあり、先に帰ることと、明日は遅れないようにとの旨が書いてあった。

 

"あれ、まだ残ってたんだ...ソラノ"

 

ホシノ「うん、私もユメさんに呼ばれてね」

 

書置きを読んでいると先生が戻ってきた。

 

"そっか...それじゃあそろそろ帰ろうか"

 

ホシノ「そうだね」

 

少ない言葉を交して私達は学校を後にする。

日はすっかり落ちていて、少ない街灯と僅かな民家の明かりが街を照らしていた。

私達は一緒に歩いていたが...なんとなく口を開くを躊躇っていた。

ただ...やはり話さないといけないと...

 

"ホシノ..."

 

"先生..."

 

お互い同じ気持ちだったのか...私と先生は同時に口を開いた。

それがおかしくて...少し笑いあった。

 

ホシノ「...とりあえず、先生から話して?」

 

"そうだね...まず、ホシノに謝らないと"

 

嫌な予感がよぎった。

 

ホシノ「...あ、謝る?」

 

何をいきなり謝るのだろうか...考えて答えはすぐに出た。

先生は多分、昔の私から告白をされたはずだ。

それでこのタイミング...まさか...!?

 

ホシノ「先生...それは...」

 

"ごめん、昔のホシノに私達が未来から来たってこと喋っちゃった!"

 

ホシノ「うへっ...?」

 

少し予想外なことを言われて間の抜けた返事をしてしまった。

なんだ...私はてっきり告白を受け入れてしまったのかと思った。

だが、未来から来たことを伝えたって言うのもあまりよくない気はする。

...とりあえずよかった。

 

ホシノ「それで...昔の私はなんて?」

 

"意外とすぐに信じてくれたよ...身構えてた分拍子抜けしちゃった..."

 

それくらい信頼していたのだろう...

 

"それと告白されたけど...断ったよ..."

 

ホシノ「...そっか」

 

"......ねえ、ホシノ"

 

ホシノ「先生、今から水族館行かない?」

 

"す、水族館...!?

なんで急に...それに話が..."

 

ホシノ「いいからいいから...話もそこでちゃんとするからさ」

 

いざ大事な話をしようとしたタイミングで私は先生を引きずるようにして水族館に向かう。

 

ホシノ「...やっぱ開いてないかー

...おっ?」

 

水族館はすでに閉館していたが侵入経路を見つけてそのまま先生と共に入る。

 

ホシノ「夜の水族館って初めて来たけど...神秘的でいいねー」

 

私は初めて来た夜の水族館に感嘆の声を上げる。

先生は何も言わないで私を見ていた。

 

ホシノ「...急にごめんね、先生

ちょっと気合い入れたくてさ...」

 

"そういうことなら...はぐらかされるかと思ったよ"

 

ホシノ「流石に逃げないって

でもごめん...心の準備が終わるまでもう少し待って?」

 

"わかった"

 

先生の厚意に甘えて私は心を落ち着かせる。

目の前にある水槽を眺めて落ち着かせる。

そして...口を開いた。

 

ホシノ「一番大事な話する前に別の話をさせて?」

 

"いいけど..."

 

ホシノ「先生が昔の私に告白されてる頃...私ユメ先輩に個別で呼び出しされたんだ」

 

"...なんで?"

 

ホシノ「...最後に話したかったんだって...未来の私と」

 

一瞬、先生がフリーズした。

 

"未来の私って...それって"

 

ホシノ「うん...そう...

実はバレてたらしいんだ...最初から

私が小鳥遊ホシノだってことが

理由はなんとなくだって」

 

"なんとなくって...ユメらしいなあ..."

 

ホシノ「私もそう思うよ」

 

それから少しだけ...ユメ先輩との会話を先生に伝える。

泣いたことは言わないでおいた。

 

ホシノ「...先生は...奇跡はあると思う?」

 

一通り伝え終え、先生にそう尋ねる。

ユメ先輩の言葉を疑ってるわけではないが...先生はどう考えるか興味がわいた。

 

"難しいね...それ..."

 

真剣に悩みながらも先生は口を開く。

 

"ユメは奇跡はあるって言ったのかな?"

 

ホシノ「うん...そうだよ」

 

"私は大人だからね...正直に言うと手放しに奇跡はある...なんて言えないよ"

 

ホシノ「...そっか...そうだよね」

 

"それでも...私だって奇跡は信じたいよ

ある...とは私は言えないけど...私は奇跡があることを信じてるよ"

 

ホシノ「うへ...なにそれ」

 

なんとも言えない返事だったが...それでも希望にあふれたものを私は聞けて満足だった。

 

ホシノ「...だったら...もう大丈夫かな

きっと、歴史は変えられたよ」

 

"私も...そう信じてるよ"

 

未来は変えられた。

私達はそう考えて前を向くことにした。

そして、私は先生に向き直る。

 

ホシノ「さて...それじゃ改めて一番大事な話を...

...先生...明日私がちゃんと帰るか心配してるでしょ?」

 

"うん...ちゃんと帰るのか...残るにしても1人で残ろうとしないのか"

 

ホシノ「ありゃ...やっぱりバレてる...」

 

"そりゃね..."

 

ホシノ「...アヤネちゃんを筆頭にまた成長してないって怒られそうなんだけどさ...それでもやっぱ...考えちゃうんだよ

大事だから...皆が大好きだからこそ...危険があることには付き合わせたくない...どうしてもそう考えちゃうんだ」

 

"気持ちはわかるよ...でも"

 

ホシノ「...でも大丈夫...ちゃんと帰るから...みんなと一緒に」

 

ホシノ「私だって...みんなとは離れるのは辛いもん

でも、未来に希望を持てるなら...もう迷いなく帰れるよ」

 

"そっか...よかった"

 

ホシノ「...改めて先生...ここまでありがとう

みんなの存在もそうだけどさ...やっぱ、先生の存在はすごく大きいよ

私がここまでできたのはさ」

 

"私だって、何度ホシノに助けられたことか..."

 

ホシノ「変に謙遜しないでよ...元は私が巻き込んだことなのに

でも先生...ほんっと変わってるよ...おじさんみたいな手のかかる生徒にここまで付き合うなんてさ

まあでも...どんな生徒も見捨てないのが先生のいいところで私の好きなところの1つなんだけどね

......うん...そう...私...先生のこと好きなんだ

頼りないって思ってた先生に何度も助けられて...いつからか忘れちゃったけど...大好きになっちゃった

手のかかる生徒だけど...先生...大好きだよ」

 

上手く伝えられたかはわからない。

けれど...ありったけの想いは込めた。

これで結果はどうあろうと...私は後悔はしない。

先生は息を整えて、口を開く。

 

"ホシノ、その気持ち...すごく嬉しいよ

けれど...今は付き合えない"

 

先生の答えは酷くあっさりとしていたように感じた。

明確に否定されてしまった。

 

ホシノ「そ、そっか...理由を聞いてもいいかな?」

 

"私は...先生でホシノは生徒だから..."

 

その理由をきいて...唖然とした。

 

ホシノ「......酷いよ先生...まだほかの理由ならよかったのに...よりによってそんな逃げるみたいな理由で...」

 

"あっいや...最後まで聞いて、ホシノ"

 

ホシノ「えっ...?」

 

"ホシノ、卒業まであとどれくらい?"

 

ホシノ「...もうそんなにないけど」

 

"卒業したら...もう生徒と先生じゃないよね?"

 

ホシノ「あっ...そういうことか」

 

ようやく先生の意図がわかった。

 

ホシノ「だとしても先生酷いよ!

私がどんな気持ちになったと思う?」

 

"ご、ごめん...伝え方が悪かったね..."

 

ホシノ「ほんとだよ...まったく...

...それで先生...返事は?」

 

"さっき言った通り、今はノーだよ

でも、もう少しだけ待って...

それでホシノ卒業したら私から改めて言わせてほしい"

 

ホシノ「...わかった...待ってるね」

 

私は安堵した顔で先生に近づく。

 

"...ホシノさん...なんか近くないですか...?"

 

ホシノ「そうだね...

でもこれはややこしい言い方をした罰だと思って受け止めてね」

 

"悪かったけど...まだ心の準備g"

 

ごちゃごちゃまだ言ってたけど私は口づけをした。

その姿は水族館のわずかな光と窓から差し込む月明かりに照らされていた。

少し長めの口づけをし、その幸福を味わう。

口を離してお互い何とも言えない顔をしながら余韻に浸る。

こうして、私の告白はなんとも締まらなくはあったが...幸せな結果になった。

 

告白も終えて、私達はひっそりと水族館から脱出した。

余韻に浸りながらも私達は手を繋いで隠れ家に戻る。

まだ色々話したいことはあったが...明日も朝は早いの未来に戻ってからにすることにした。

ただ、寝るときはいつもより密着して眠っていた。

しばらくしてアラームの音で目を覚ます。

時刻を確認すると予定通り5時を示していた。

6時にあの穴のところに集合するという約束をしているので先生を起こしてテキパキと身支度をする。

 

ホシノ「...さて、忘れ物はない?」

 

"大丈夫だよ"

 

身支度も終えて、部屋を見渡す。

少しだけ寂しさを感じながらも私達は隠れ家を後にした。

 

"にしてもホシノ...本当にお見送りしてもらわなくてもよかったの?

せっかく未来について話せたのに"

 

ホシノ「いいっていいって...

もし見送りなんかしてたらおじさん昨日わんわん泣いたのに帰る直前にも泣く羽目になるんだよ?

...それにもう...お別れは済ませたからね」

 

そう...もう思い残すことはなにもない。

確かに寂しいと言われればそうだが...これで十分だ。

約束の時間に近づいたころ...あの穴の場所にやってきた。

穴は未来で見た状態で...使用できることがなんとなくわかった。

後輩達も間もなくして合流した。

そしていざ帰ろうとしたとき...私や先生...後輩達とは違う足音が聞こえてきた

 

ユメ「ま、まってー!」

 

ぎょっとして声のした方向を見ると昔の私とユメ先輩が走ってきていた。

 

セリカ「ほ、ホシノ先輩どういうことよ...なんであの2人がここにいるのよ!?」

 

そういえば後輩達にはまだユメ先輩たちに喋ったことを伝えていなかった。

 

ユメ「ま、間に合った...」

 

セリカ「ゆ、ユメ先輩...なんでここに...」

 

ユメ「未来に帰るっていうのに...やっぱお見送りなしは寂しいなって思って...」

 

セリカ「未来って...」

 

ユメ「うん..私もこっちのホシノちゃんも知ってるよ

昨日聞いたんだ」

 

慌てて私達は2人に喋ったことを伝えた。

若干呆れられてた気がするが...しょうがない

 

ホシノ「にしても...よくわかりましたね...ここの場所と時間...」

 

ユメ「場所は七不思議にも書いてあったからね

時間は...ホシノちゃんが考えそうなことを想像したらわかったよ」

 

ホシノ「...まったく...必要ない時には勘が鋭いんですから」

 

ユメ「ひ、酷くない...?」

 

ホシノ「酷いのはユメ先輩です...せっかく今泣かいように昨日お別れ済まそうとしたのに...」

 

気付けば前が涙でぼやけてきた。

 

ユメ「まったく...成長はしたのにすっかり泣き虫になっちゃったね...」

 

ユメ先輩は私を抱きしめた。

相変わらず...優しい温もりだった。

 

ホシノ「...色々ありましたからね」

 

ユメ「...そっか」

 

私がユメ先輩に抱きしめられてる横で、昔の私と先生が話していた。

 

ホシノ(過去)「...その...えっと」

 

"昨日ああいう形で別れたから...気まずいね..."

 

ホシノ(過去)「そ、そうですね...

......とりあえず...元気でいて...私を待っていてください」

 

"わかった"

 

私が落ちついた頃、昔の私が私のところに来た。

 

ホシノ(過去)「...これが未来の私」

 

ホシノ「信じられない?」

 

ホシノ(過去)「...いや...今考えれば不思議なことはいくつかあったし

...それを未来の私だったって考えれば...非現実的だけど納得はいく」

 

ホシノ「そ、そっか...」

 

自分同士というのはなんとも不思議な感じである。

会話が続かない。

 

ホシノ(過去)「...未来のアビドスはどうなってるの?」

 

ホシノ「言えないかな...そっちの為にも」

 

ぎこちない会話を続けていて、周りもはらはらとこちらを見ている。

 

ホシノ(過去)「...言われたこと...忘れないようにする

昨日までは異様に無視できない理由もわかった気がするし

ありがと...」

 

ホシノ「...そっか...頑張って私よりいい未来を掴んでね」

 

ホシノ(過去)「うん、わかった」

 

それでも...伝えたいことはきっと伝わったはずだ。

 

"それじゃ...そろそろ行こうか"

 

先生の声に従って全員が穴の傍に近寄り、1人1人が穴の中に消えていく。

 

ホシノ「ユメ先輩、お世話になりました...どうかお元気で」

 

ユメ「ホシノちゃんこそ...頑張ってね」

 

最後はお互い、涙を流しながら笑顔で見送られ...私は先生と共に穴に入った。

 

目を覚ませば夜のアビドスに着いた。

周りには先に戻ってきていた後輩達がいた。

 

"帰ってこれた...かな...?"

 

辺りを見渡して時刻を確認する。

大体...1時間経ったぐらいだろうか。

過去にいた時間が長すぎて未来での時間を忘れていた。

 

"ちょっと電話してくる"

 

そういうと先生は少し離れて電話を始めた。

相手はすぐに出たのか、会話を始めて...短い会話で終わった。

 

"ヒナにユメのことを聞いてきたよ"

 

ホシノ「...ヒナちゃん...なんだって?」

 

"やっぱり...特に変わったことはないよ..."

 

ホシノ「そっか...」

 

先生は心配そうな顔をして私を見ている。

対して私は...とくに落ち込むこともなくいつも通りだった。

 

"...あれ...平気なの...?"

 

ホシノ「...本音を言うならこの世界でも生きてて欲しいなーとは思ったよ」

 

だが、それは贅沢だろう。

 

ホシノ「...でも...きっと大丈夫

あの世界のユメ先輩は...無事に卒業できたよ」

 

それはきっと奇跡のようなお話だろう。

だが、私はそれを信じることにした。

確かめる手段はなにもない...

だが、あの2人ならきっと...乗り越えられる。

そう、今は信じられる。

そんな未来がどこかにあるだけで私は嬉しかった。

 

ホシノ「...それに、もう一度ユメ先輩と話せただけで私は満足だよ」

 

思い残すことはない。

あとはもう...アビドスの復興に...

後輩達のことに...

そしてなにより、私自身の幸せのために生きて行こう。

 

ホシノ「帰ろう、先生...あの2人にも胸を張って幸せだって言えるようにさ」

 

"そうだね

 

私の言葉に先生も明るい表情で同意する。

私と先生は手を繋いで帰路につく。

 

ホシノ「ほら、みんなも帰ろうか」

 

シロコ「ん...それはいいけどそれ、ちゃんと説明して...ホシノ先輩!」

 

シロコちゃんに先生との関係を詰められながら私達は歩き出す。

奇跡がある、未来に向かって。

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