2年前の私は鋭い眼光で私を睨み、警戒している。
ホシノ(過去)「今すぐにユメ先輩から離れろ!」
ユメ「ちょっとホシノちゃん、落ち着いて...!
この人悪い人じゃないよ!」
ホシノ(過去)「昨日もそのセリフ聞きました!
危うく借金返済用のお金をそれで盗られかけたのは誰ですか!?」
ユメ「ひぃん...」
なんというか...ユメ先輩だなと思った。
ユメ「それでも、ホシノちゃん...
私、この人は不思議と信用出来ると思うんだ」
そんな言葉が私の心に暖かく染み込んだ。
ホシノ(過去)「......なぜそう言い切れるんですか?」
ユメ「......ホシノちゃんに似てるからかな?
ほら、同じピンクの髪でオッドアイだし...身長も同じだし」
ホシノ「いや、身長は違います」
ユメ「えっ...でも」
ホシノ「違います」
流石に成長......しているので最後だけ否定した。
しかし、内心焦っている。
何も考えないで出てきてしまったが大丈夫なのだろうか?
所謂タイムパラドックスとか...私の正体を知られた時の2人の反応.....何となくユメ先輩は分かりそうだが昔の私は分からない。
おそらく信じず、ユメ先輩を惑わす存在として本気で襲ってくる。
そうなれば厄介だ...昔の私を相手に戦うのは止めておきたい。
ホシノ「....とにかく、別人です」
ホシノ(過去)「そのようですね」
ユメ「えー⁉︎」
ユメ先輩は納得がいかなそうな声を上げるが過去の私が否定したため、ひとまず安心した。
ホシノ(過去)「だって私、こんなアホみたいな顔しないですし」
いらっとしたが正体がバレるよりはマシだと思い、何も言わずにただ苦笑いをして誤魔化した。
“そろそろいいかな?“
物陰から先生がゆっくりと現れる。
その瞬間、背後から並々ならぬ殺気を感じとった。
ホシノ「先生、下がって!」
”うわ⁉︎”
私は盾を取り出し、放たれた銃弾を弾いた。
今の一撃は急所は外してはいるものの、綺麗に足を狙っていた。
ユメ「ホシノちゃん!」
ホシノ(過去)「下がってください、ユメ先輩
正体不明の生徒はともかく、あっちは大人です
何度も大人に騙されてることはあなただってわかっているでしょう」
先生の姿を見て、昔の私の表情が変わった。
そうだ、あの頃の私は誰よりも大人を嫌っていた。
ホシノ(過去)「今の銃弾を防いだのならわかるでしょう
それは警告です
今すぐにアビドスから消えろ
さもなくばその大人は殺してでも追い出し、お前のヘイローの無事も保証しない」
ユメ先輩の声すらも耳に届いてない。
ホシノ「うへ...困ったな、やるしかないかな
この人を殺させる訳にもいかないし、かと言ってそのまま帰る訳にもいかないんだ
だから、まずはそっちに落ち着いてもらうよ、ホシノちゃん」
一呼吸おいて、私達は同時に地面を蹴る。
互いに有効射程距離に入り、互いに引き金を引く。
挨拶代りの銃弾を私は盾で防ぎ、対する昔の私は銃弾を回避する。
昔の私は回避動作を止めず、スピードをそのまま維持して突撃してくる。
私は咄嗟に盾を前に出し、その突撃を阻む。
過去の私はそのまま盾を蹴って、横に大きく飛び退いた。
ホシノ「何を...?」
昔の私の行動の意味がわからない。
無意味な行動だと思ったがすぐに狙いがわかった。
昔の私の狙いはその視線の先にあった。
ホシノ(過去)「お前の弱点はあの大人でしょ?」
ホシノ「くっ...させない!」
私は慌てて無理矢理体を射線上に滑り込ませ、盾で銃弾を防ぐ。
だが、無理な行動だったため、小さな隙が生まれた。
その隙は...私にとって致命的(絶好の)隙だった。
ホシノ(過去)「せやっ!」
ホシノ「おぐっ...⁉︎」
強烈な蹴りを放たれ、盾を退かされた私の腹に銃弾が浴びせられた。
私はなさけない声をあげながら先生の傍に吹き飛ばされる。
“ホシノ!“
ホシノ「平気...これくらいで根をあげる私じゃないよ」
先生が心配そうに声をかけるが私は微笑み返す。
今の攻撃でダメージを負ったのは事実だが、それで戦闘不能になるほど私は弱くない。
だが、状況はよくない。
おそらく、今の私より昔の私の方が機動力はある。
そんな中、容赦なく過去の私は先生を狙ってくる。
この時間にシャーレという組織がない以上、嫌いな大人相手である、先生に躊躇う必要がない。
先生が言っていた足を引っ張るというのはこうして守る必要があるという事だろうか。
どの道、機動力が上の相手に先生を守りながら攻めに転ずるのはほぼ不可能だ。
元々倒す気もないが、落ち着かせる方法もまだわからないのにこれではまずい...
どうすれば...
パァン!
乾いた音が鳴り響いた。
いつの間にユメ先輩は昔の私の前に来て、ビンタしていた。
昔の私は驚いた顔をしていて、ユメ先輩はちょっと痛そうにしていた。
ユメ「落ち着いて、ホシノちゃん
あの人たちは悪い人じゃないよ」
ホシノ(過去)「ユメ先輩...ですが....!」
ユメ「ホシノちゃん」
基本的に優しいけれど情けない事が多かったユメ先輩だが、時折今みたいに強い姿を見せる時があった。
その時は大抵ユメ先輩が正しく、それを私はわかっているため、黙り込んだ。
ユメ「大丈夫、私を信じて?
もし駄目だったら...その時はお願い」
ホシノ(過去)「わかりました...」
ユメ「すみません、もう大丈夫です!
そっちのこの傷見てあげてください!
お話はそれからしませんか⁉︎」
”ありがとう、ユメ!
そうさせてもらうよ!
おいで、ホシノ...念のため傷を確認しよう“
ホシノ「わかった...」
時間にしては数秒の攻防だったが、緊張の糸が解けて私はその場に座りこんだ。
とりあえずは何とかなったようだ。
ユメ「でもホシノちゃん...戦えない人を狙うなんてらしくないことしたね」
ホシノ(過去)「最初の攻防でわかったんです...あの人の強さを
まだお互い全然本気を出してないのでなんとも言えないですが...あの人、相当な強さでした
恐らく、私と同じか...それ以上です
なのでああやって主導権を握ろうと思いました」
ユメ「そ、そうなんだ...
でももうやっちゃ駄目だよ?
ああいう戦い方、ホシノちゃんだって辛いでしょう?」
ホシノ(過去)「......はい、もう2度としません」