すべてを喰らう、その日まで   作:アズライト

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この辺の時系列はいまいちわからんので、もし矛盾しててもあんまり気にしないで欲しいですわ。




俺はデートして来るから、がんばれよ猛者

 

人間、意味不明な状況を見ると思考が一瞬だが止まる。

 

命がけでダンジョンに潜る冒険者にとって想定外の事態でも思考を止めないことは大変重要なんだが……それでも限度という物がある。

 

「何してんだ、オッタル?」

 

「む、ソラか」

 

ソラか、じゃないんだわ。

 

何で俺と同じ都市最強の片割れがダンジョンで一人寂しくミノタウロス鍛えてんだよ。

 

「あー、あれか。またフレイヤの我が儘で、相手はベルくんか?」

 

「…………………いや」

 

口下手なくせに無理に否定すんな、ネタは上がってんだよ。

 

怪物祭の時にフレイヤが魅了でモンスター脱走させてベルくんにシルバーバックを嗾けただろ。

 

ベルくんから何故かヘスティアばかり狙って来たシルバーバックを撃破したって話と、ガネーシャ・ファミリアの団員が怪物祭で使うモンスターの檻の周りで倒れてて、団員に魅了を使われた形跡があったって聞いてんだよこっちは。

 

そんな訳のわからんことをやるのはお前の所の主神ぐらいだし、いまのお前の行動見てたら何となくでも察するわ。

 

「ミノタウロスに殺されかけた未熟な少年が再起する話か……フレイヤが好きそうな演目だ」

 

本当にさぁ、ベルくんは何でそんなに女神特効持ちなの?惚れっぽいフレイヤはともかく、ヘスティアも恋愛アンチではないにしても三大処女神のうちの一柱なはずなのにベルくんにぞっこんだし。

 

アテナは会った事ないからわからんけど、アルテミスは恋愛アンチの割に純情ボーイとかにチョロそうだからベルくんに会わせたら簡単に惚れそうだな。

 

というか、フレイヤはいいのか?気付いてないのかも知れないけど、ベルくんってお前にトラウマ植え付けまくったヘラの系譜の子なんだけど。

 

「フレイヤに伝えておけ。俺がLv.7の間はお前の気まぐれも見逃すが、お前らが遊んでる間に俺が先にLv.8に上がったら、眷属全員叩き潰して天界に送還させるってな」

 

睨むな、殺気を出すな、せっかく鍛えてるミノタウロスが怯えてんぞ。

 

「オッタル。お前の事は嫌いじゃない、アレンと比べたら話がまだ通じるからな」

 

あのちび猫は口を開けば「死ね」とか罵倒しかしてこないからな、アーニャと俺が話したりしてると殺気が飛んで来たりするし。

 

あいつの妹に対する感情は本当にわからん。

 

「が、一体いつまでLv.7(ソコ)に留まっているつもりだ?」

 

まぁ、ちび猫のことはどうでもいいわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろうし。

 

「俺もお前も、止まることは許されていないんだ。ザルドから託されたお前と、アルフィアを殺した俺だけは」

 

正直に言えば、ザルドとアルフィアの2人は残りの命が少ないなりにもっと良いやり方があったとは思う。

 

それでも、ゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアが消えただけで訪れてしまった暗黒期を終わらせる為に、かつての栄光に泥を塗らせ悪に堕ちることを選ばせたオラリオと、二人を超えるべき壁として殺す事しか出来なかった俺とオッタルは、止まる事を許されない。

 

現状、オラリオで本当の意味でそれを理解してる奴が少ないのは嫌になるが。

 

「俺とて疲れたら休みたいときはある、女を抱いて癒されたいときもな」

 

俺だって出来れば適当に稼いだ金でスローライフしたい、異世界スローライフは元日本人の憧れなんだ。

 

平和な場所で、嫁とモフモフした生き物がいればなおよし。

 

ただし、仕事はしたくないから知識チートで領主生活を始めるのは勘弁な。

 

この世界には黒竜とダンジョンがあるから、最低でも黒竜を倒すまでスローライフを始めるのが不可能な所が辛いけど。

 

「だけど、止まる事だけは出来ないんだ」

 

「………………わかっている」

 

そうか。なら、今はそれでいい。

 

「じゃあな、オッタル。精々難易度設定をミスるなよ」

 

「我が女神はベル・クラネルの魂が輝く事を期待している。なら、それを叶える為に尽くすだけだ」

 

さっきまで否定してたのに、結局隠したいのか隠す必要がないのかどっちだよ。

 

しかし、相変わらずのフレイヤ至上主義だな、そんなんだからザルドに乳離れが出来ないとか言われたんやぞ。

 

しっかし、魂が輝くね。

 

「ベルくんを誰が鍛えてると思ってんだ?お前らの想定くらい超えるに決まってんだろうが」

 

オッタルに別れを告げ、下の階へ進む道に向け歩き出す。

 

正直、ベルくんに冒険者として戦う才能はないのだが…………悲しい事に『英雄』になれる才能はあるんだよな。

 

それが、良い事なのかは知らないが。

 

「英雄なんかになったなら、碌な死に方はしない……か」

 

前世で聞いてた歌の歌詞がそんな内容だったのを、ふいに思い出す。

 

現状、俺も英雄なんてくだらない存在にされかけているからな。

 

何処かの誰かに英雄を譲ることなんて出来ずに、最期まで英雄の真似事をさせられて無様に無残に朽ち果てるのだろうな。

 

 

 

⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎ ⬜︎ ⬛︎

 

 

 

ダンジョン18階層、通称『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』。

 

下の階層からモンスターが紛れ込む事はあるが、この階層自体はモンスターが産まれない安全階層《セーフティポイント》であり、冒険者たちが独自に作ったぼったくりタウンである『リヴィラの街』が存在している。

 

ダンジョンの中では珍しい昼と夜が階層内に生えた水晶の明るさで把握出来る場所であり、昼から夜へ移り変わる景色の美しさから『世界一危険な場所にある観光名所』とも言われていて、オラリオ外の富豪が何とかその景色が見たいとギルドに金を積んだが、冒険者以外をダンジョンに入れる訳にはいかないって金に汚いギルドの豚(ロイマン)が本当に悔しそうに断ったという噂があるとかないとか。

 

そんな、18階層には幾つもの武器が突き刺さった場所がある。

 

良い景色が見られる場所に突き刺さった武器たちは、5年前に壊滅したアストレア・ファミリアの公的には唯一の生き残りである『疾風』リュー・リオンが建てた、アストレア・ファミリアの眷属たちの墓だ。

 

まだアストレア・ファミリアが活動していた時に、死んだら此処に墓を建てようと冗談半分で仲間たちと話し合ったことがあったらしく、それをリュー・リオンが健気にも叶えたらしい。

 

『豊穣の女主人』に飲みに行った際に「貴方はロキ・ファミリアの団員でしたが、私たちと何度も交流がありましたし。近くに立ち寄った際には花でも添えて欲しい」と、やり切れていない悲しそうな顔で話をされた時は気まず過ぎて正直どうしたものかと思った。

 

すまん、おたくの団長(アリーゼ)副団長(輝夜)一般団員(ライラ)の3人だけは生き返ったんだとは伝えられなかったから……本当に気まずかった。

 

そんなアストレア・ファミリアにとって大事な場所(墓地)をデートの待ち合わせ場所に指定された事を、天に帰った眷属たちは怒っていいと思う。

 

まぁ、彼女たちのほとんどが恋愛に興味津々な年齢で亡くなってるから……逆に喜ぶかも知れないが。

 

「アリーゼ」

 

かつて自分が使っていた愛剣の前に佇むアリーゼに声をかけ、この階層で積んで来た花を渡す。

 

「すまない、待たせたか?」

 

「ありがとう、私もいま来たところよ。何かデートっぽくていいわね、こういうやり取り」

 

俺から花を受け取りつつ軽口を叩くが、やはり場所が場所だからか普段のような元気はない。

 

「何というか、やっぱり複雑ね。みんなのだけじゃなくて自分のお墓もあるって」

 

刺さっている剣の横に花を一つ一つ丁寧に添えながら、ふと思い出したようにアリーゼは顔を上げた。

 

「前から思っていたけど、私たちも定期的に花を添えたりしてるのにリオンは気付かないのかしら?」

 

「俺も彼女から場所を教えられているから、ダンジョンに潜る時に余裕があれば花を手向けに来ているし。それに、これだけ剣が刺さっているのを見かけたらよっぽど感性がズレていないなら墓だと気づくからな。粗暴な者が多い冒険者とはいえ、明日は我が身な訳だし、気が向けば花くらいは手向けるだろ」

 

まぁ、リューは普通にポンコツなので墓に添えられてる花が多少増えていても気付きはしなさそうではあるが。

 

「さて、じゃあみんなへの報告も終わったしデートに行きましょソラ!」

 

立ち上がり、手を指し出して来たのでアリーゼの手を握る。

 

「リヴィラに行くならフード被るんだぞ」

 

「わかってるわ!でも、先に18階層をうろうろして雲菓子(ハニークラウド)水晶飴(クリスタルドロップ)でも探しましょう!!」

 

簡単な物だけどお弁当も用意したのよ!と得意気な顔で俺の手を引いて歩き出すアリーゼの姿に思わず笑ってしまう。

 

仲間たちにどんな報告をしたのかは知らないが、多分良い内容を報告出来たんだろうな。

 

色々と我慢をさせているアリーゼがそういう報告を仲間たちに出来るのならよかった。

 

楽し気な雰囲気を隠すことなく上機嫌で歩くアリーゼと何気ない話をしながら墓を後にする。

 

同じように色々と我慢をさせている輝夜やライラには申し訳ないが、今日はアリーゼに楽しい時間を過ごして行こう。

 

「ん?」

 

「あら?」

 

だが、そんな空気を吹き飛ばすかのように、突然の轟音がリヴィラの町の方から響き渡った。

 

すぐに確認すると、緑色の触手のような物が見えるが……怪物祭の時に出て来たっていう新種のモンスターかあれ?

 

何であんなのが此処に出て来たんだと首を傾げていると、隣から低い笑い声が聞こえた。

 

「あー、アリーゼ?」

 

「ふふ………ふふふふ。久しぶりの、本当に久しぶりのソラと二人っきりのデートだったのに!!」

 

顔を俯かせ肩を震わせるアリーゼの姿に、俺が原因ではないのに申し訳なさが出て来る。

 

「俺だけで行こうか?どう見ても異常事態だし、アリーゼの姿を冒険者に晒すのは良くないし」

 

「行くわ!!私の正義がデートの邪魔をした存在を許すなと叫んでいるもの!!」

 

かなり私怨の入った正義だな、アストレアが知ったら泣くぞ?

 

いや、アストレアはあれで妙に寛容な所もあるから「アリーゼも恋を知るようになったのね」とか言い出しそうではあるが。

 

「全部まとめてぶっ飛ばしてあげるんだからっ!!!!」

 

いや、リヴィラの町はぶっとばすなよ?また看板に書かれてる数字が増えてボールズが泣くから。

 

俺は威嚇するアリクイのように両手を上げ吠えるアリーゼにフェルズ特製のボイスチェンジャー機能のついたマスクを着けさせ、フードを被せてからリヴェラの町の方へ走り出した。

 

 

 

 





ソラくんと男性たちとの関係

フレイヤ・ファミリア↓

オッタル→強くならなきゃいけないという意識を共有してる人。意外だけど、ソラとは割と仲良し。2人とも有名人なのでゆっくり酒とか飲みたいのに周囲が騒ぐから飲めないのを残念に思ってる。もうちょっとフレイヤの護衛減らしてダンジョンに行けと言いたいけど、フレイヤの為に強くなったんだから仕方ないかと思ってる。

アレン→ソラが大嫌いで何もかもが気に入らない。妹をどうでもいいと捨てたのに、ソラと結構仲が良い姿を見ていつかソラは必ず殺そうと決意している。そんな態度だから歳下なのに優しいお兄ちゃんムーブが出来るソラに妹が懐くんやぞ。

ヘディン→意外や意外、ソラに悪感情はほとんどない。普段はほとんど関わることがないが、主神や団員が都市内でやらかしたときにひっそり助けてくれたりするソラに内心感謝してる。正直、クソ猫をどうにかするからロキ・ファミリアから移籍して書類仕事とかを助けて欲しいとすら思っている。

ヘグニ→ソラは前世で熊本弁の有識者だったのでヘグニの独特な言い回し(精一杯のオブラート)にも理解があり、ヘグニは自分と普通に会話をしてくれるソラと友達になりたいと思っている。クソ猫はどうにかするし主神も説得するからフレイヤ・ファミリアに来てくれないかなと思っている。

ガリバー兄弟→ソラはいまいち4人の見分けがついてない。語尾でキャラ差を出そうとした時は、終わクロの四竜兄弟みたいな連中だなとか思っていた。兄弟側は、フレイヤを敬わないソラが好きではない。ソラは兄弟のフレイヤに対する悔恨とか聞いたら「性的に緩すぎる美の女神にそんな感情抱く必要あるのか?」とか「穢れの無い美しさと穢れがあるからこその美しさも知らん職人か」とか割とボロクソに言う。



ロキ・ファミリアの面々とかはまたいずれ。


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