すべてを喰らう、その日まで 作:アズライト
四話目です。
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筆が乗ったので投稿。
「雑魚じゃアイズ・ヴァレンシュタインとは釣り合わねぇ!!」
新人冒険者であるベル・クラネルはその言葉を聞いた瞬間に立ち上がり走り出していた。
その胸中にあったのは恥ずかしさと、それ以上の悔しさ。
背後から自分の名を叫ぶ声を振り切って、店から飛び出す。
何もせずとも、憧れたアイズ・ヴァレンシュタインに近づけると思っていた。
そんな訳ないのに。
田舎の村からオラリオに出て来ただけの自分が!何も成しえていない自分じゃダメだ!!
強くなりたいっ!もっと!!あの人に並んで!!あの人を助けられるくらい強く!!僕はなりたい!!!
「ぐぇっ!?」
衝動のままダンジョンに向かおうとしたが、突如襲ってきた衝撃に息が詰まる。
「ミアさんの店で食い逃げか?度胸があるなこの少年」
頭上より聞こえた呆れたような若い男の声がした、首や服の感触から走っていた自分の襟を掴んで止めたらしい。
突然の出来事にじたばたと抵抗をするが、そのまま襟を掴まれ体を引きずられていく。
「ベルさんっ!?」
「なんだ、お前の客だったのか……
先程衝動的に飛び出してしまった店に戻されると、心配そうな顔をしたシルさんの方に放り投げられる。
「捕まえてくれたのかいソラ?」
「捕まえたことは事実だが、この少年の表情からすると訳ありだろうと思ってな。沙汰は俺が事情を聞くまで待って欲しい」
店主と男の人が交わす言葉を聞いて血の気が引く。
そういえば、僕って勘定払わずに出て行こうとしてた!?
「なんやーソラやないかーこっち来て一緒に飲もうやー」
「やっぱりロキ・ファミリアの連中がいたか……シル、その少年を奥に座らせてくれ。事情を聞きたい」
鬱陶しそうに絡んできた糸目の神様っぽい人をあしらい、シルさんの誘導で店の奥の方にある席に座る。
周囲からジロジロと視線が向かってくるのを感じすごく居心地が悪い。
「自分はロキ・ファミリア所属のソラ・ハザマだ。突然捕まえてすまなかったな、少年……よければ名と主神を教えてもらえないだろうか」
ソラ・ハザマ!?ロキ・ファミリアのLv.7『
「あ、えっ、ヘ、ヘスティア・ファミリア所属のベべ、ベル・クラネルです!」
いきなり現れた世界最恐の冒険者の1人に動揺し、緊張のあまり噛んでしまった僕の名前とファミリアを聞いたソラさんは……。
「ふふ……くくっ……………はははっ」
大きく表情を変え、笑い出した。
声を上げ笑うソラさんの姿に酒場にいた人たちはあっけにとられているようで、彼がこのように笑う姿は余程珍しいかもしれない。
「ベル・クラネルか、確かに面影がある。しかも主神がヘスティアってことはホームはあの廃教会か。あの人の息子が廃教会に住むとか偶然通り越して運命かよ」
「いや、すまない。それで、何故あんな顔をしてそんな軽装で
僕に目線を合わせ、優しげな声で話しかけてくれるソラさんに僕はぽつぽつと話し始めた。
冒険者になり2週間程であり、ギルドのアドバイザーの助言を無視して5階層に降りたこと。
そこでミノタウロスに襲われ、間一髪でアイズ・ヴァレンシュタインに助けられたが、ミノタウロスの血を被ってしまったこと。
今日の朝、ダンジョンに行く前にシルさんと出会い食事に誘われたこと。
ロキ・ファミリアの方々が来店して宴会を始め……あの狼人に晒し者にされた事が悔しくて店から飛び出し、ダンジョンに向かおうとしていた所をソラさんに捕まりいまに至ったことを。
「…………………なるほど。すまなかった、ベル・クラネル」
僕の事情を聞いたソラさんは頭を下げ謝罪の言葉を口にした。
「い、いえ!自分が悪かった所もありますし、ヴァレンシュタインさんには命を救っていただきましたので大丈夫です!!」
Lv.7に謝罪をさせて頭を下げさせるとか怖すぎるので慌てて弁明する。
そんな僕の言葉を受けたソラさんは腕を組み、しばらく目と閉じ何かを考えていたかと思うと、おもむろに目を開き立ち上がった。
「だ、そうだが…………しかし、どういう了見だ貴様ら」
ゾワっと背筋に寒気が走る。
「
重苦しい、殺気のような空気が店全体に広がる。
僕が事情を話す度に、僕の声を聞く為か少しずつ静かになっていった店の空気が、いま完全に死んだ。
「いつから貴様らはソコまで堕ちた。答えろ、ロキ・ファミリア」
息が詰まる、これがLv.7の怒気。
怒鳴り声を上げる訳でもなく、静かに問いかけているだけなのに心臓をゆっくりと握られていくみたいに苦しくなる。
自分ではなくロキ・ファミリアの人たちに向いているというのに、迷宮でミノタウロスと遭遇したときよりも大きな恐怖が襲ってくる。
ごめんなさい神様、僕は此処から生きて帰れないかも知れないです。
ベルは此処にいない自分の主神にそっと自分の無事を願った。
君らさぁ、ダンジョンに
君ら、いったい何年冒険者やってんのさ?
何か起きたら上役に報告すんのは当たり前だろうが、何で自分の判断で報告しないって選択肢を選んでんだよ。
特に、今回は個々人でダンジョンに潜ってる時とは違ってファミリアでの遠征中に起きたことだぞ。
遠征中に起きたことは全て個人ではなくファミリアの責任にされる可能性があるというのに…。
ポンコツの気があるアイズならともかく、ベートは他のファミリアで団長やってたことあるのにコレなの?
本当にさぁ……お前ら幹部級がその程度の認識だから下が育たんし、上にいるフィンたちが派閥運営に追われてダンジョンに潜れないんだが?
俺ですらホームから離れて好き勝手やらせて貰ってる代わりに色々と手伝っているというのに。
ついでに言うと、それを笑い話として酒の肴として話すとか頭大丈夫かこいつら。
言い方は悪いが、今回はたまたま零細ファミリアの団員だったから謝罪と補償で何とか出来るけど。
仮にガネーシャやフレイヤの所の団員だったらどうしてたんだよ?特にフレイヤの所だったら戦争にしかならんぞ。
オッタルとヘディンはともかく、アレンには俺どちゃくそ嫌われてるから正当に戦える理由が出来たなら嬉々として襲いかかってくるぞあの猫は。
昔ズタボロになってた妹を助けただけなのに未だに会う度に殺意を向けてくるとかさ、自分から見捨てたクセに執着しすぎだろ。
で、君らそこまで考えて笑ったんだよな?笑った相手が何処のファミリアで、何か起きてもフィンや俺が庇うから大丈夫とか思ってないよね??
あ?なんだよフィン……怒気を抑えろ?お前が怒らないからこうなってんだろうが!!
清廉潔白な勇者の仮面作るのが大変なのは知ってるが、お前こいつらを少し甘やかして放置しすぎだぞ。
ガレスは孫と相対する爺みたいなポジションにいたがるし、リヴェリアはハイエルフって事で団員への接し方が中途半端にしかならんし。
ロキ・ファミリアの団長はお前だろうが、俺がLv.7になってもお前の下にいる意味を忘れてんのか!?
ミアがそろそろキレる?おぅ……もうフライパン構えてんじゃん。
仕方ない、まだ言い足りないがこれ以上は仕方ないな。
それで、ベルくんへの謝罪と補償にギルドへ他に被害がないかの確認は?この後直ぐにやるならいい。
おいこらロキ、ヘスティアへの謝罪を渋るんじゃない。
大派閥の主神としての器を見せろよ、無い胸張れよ。
胸が無いからあるヘスティアには謝りたくない?炉と孤児を守護する神やぞ、家を司る女神なのだから家庭や母性を象徴する胸が無い方がおかしいだろ。
何でそんなに他の所の神に詳しいのかって?眷属は主神の血を受けてんだから、スキルや魔法に主神の属性が混じる事が多いんだよ。
うちでいうとリヴェリアの魔法がそうだろうが。
だから、うちが
はぁ……まぁ、嫌々でもちゃんと謝罪する気はあるならそれでいい。
うん、あとはついでだ。
直接的な血の繋がりはないが、ベルくんは弟みたいなもんだからな……少しだけ、面倒を見てもいいやろ。
「ところで、だ」
「ベル・クラネル。君、俺から戦い方を学ぶ気はあるか?」
「ファミリアとしての謝罪と補償はフィンとロキに任せるが」
「君を笑った連中が謝罪をするだけでは、俺の気が晴れんからな」
「さて、どうする?」
自分がやらかした事でソラが頭を下げて、自分達家族にはブチ切れたのに。
優しそうな顔と声で「お詫びに戦い方教えよっか?」と他人に話かける姿を見た剣姫ちゃんの内心は割とズタズタ。
アイズはベートを絶対に許さないと誓った。
『
某戦場の聖女さんがとある人物を襲った()後、ランクアップして生えて来たスキル。
ランクアップの理由として認められた偉業は「■■の■■■■である人間にその身を捧げた」から。
スキルの効果は、とある人物と契る(隠語)と一定期間ステイタスに成長補正が入るという無茶苦茶なレアスキル。
なお、スキルを主神から教えられた聖女は羞恥心でテンパった挙句、目の前にいた主神をぶん殴った。
主神は「このスキルの件は誰にも言わん!本当の本当に誰にも言わんから落ち着け!!」と鼻血を流しながら聖女に固く誓うことになった。