すべてを喰らう、その日まで 作:アズライト
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……なかなか上手く書けず難産やった。
「みんなー!ソラが美味しいご飯とお酒を持って来てくれたわ!今日は宴会ねっ!!」
アリーゼが俺から受け取った荷物を
リザードマン、アラクネ、ハーピィ、セイレーン、ガーゴイルにその他もろもろ。
隠れ里にいる様々な
基本的にヒトに友好的な
ソラは、そんな様子を眩しい物を見るように目を細めて見守る。
アリーゼ・ローヴェル、ゴジョウノ・輝夜、ライラ。
彼女たちは3人は5年前、
より正確にいえば、先日ベルくんがベートに罵倒された『豊穣の女主人』で働いているリュー・リオンという女エルフもアストレア・ファミリアの生き残りになるのだが、彼女はアリーゼたち3人が生きていることを知らされてはいないし、ギルドの公的記録ではアストレア・ファミリアの生き残りはリューただ一人となっている。
現状、アリーゼたち3人の生存を知っているのはソラ、アミッド、フェルズ、ウラヌスに、ここにいる
本来なら、アリーゼたちの大切な仲間であるリューや主神であるアストレアに生存を知らせない理由はないのだが……割とのっぴきならない事情があったので仕方がなかった。
「お前はあそこに行かないのか?」
「もう少し経ってからだな。今行くとテンションが上がったリドにウザ絡みされそうだ」
違いない、と笑いながら
「どうかなさいましたか、ソラ」
先程までの姿とは違い、動きやすいかそうじゃないのかわからない極東の着物に似た服装になった輝夜がライラと入れ替わるようにソラは声をかけてきた。
輝夜のソラへの位置はとても近く、なんならソラの片腕を抱きしめ胸に当てている。
ソラはそんな輝夜の姿に小さく息を吐き、肘から指先まで覆うアームカバーに包まれた輝夜の左腕に視線を向けた。
そんなソラの視線に気づいたのか、輝夜は笑みを浮かべ視線をこちらに向ける。
「ソラ、貴方が気にする事ではありませんよ。アリーゼも、ライラも、もちろん私も、ソラに感謝はあれど恨みなどないのですから。それに、これは
「誰が旦那様だ、誰が。またアミッドに泣かされるぞ」
俺の言葉を拒否するように、俺の腕を抱きしめる力が増え輝夜の胸に押し付けられる。
ダンジョンでの戦闘も可能なその着物モドキだと、ある程度の防御力も必要だからって理由で生地が結構硬いから、胸に当てられても柔らかな感触はしないし、むしろ痛いと言ってやるべきだろうか。
「正妻こそアミッドに譲りましたが、妾としての立場は認めてもらっています。ですので、旦那様とお呼びしても間違いではないかと」
「まずアミッドと籍を入れた覚えすらないからな俺は。というか、いい加減に猫被りを外せ」
「あら、こういう女はお嫌いですか?」
「嫌っているなら何度も抱いてはいない。猫を被った輝夜の相手が面倒なだけだ」
その言葉の何が気に入ったのか、輝夜は俺の腕を放すとクスクスと笑いながら宴の準備をしている輪へと歩いて行った。
「……………はぁ」
小さく溜め息を吐き、改めてアリーゼ、輝夜、ライラを順に眺める。
ライラは両眼、輝夜は左腕、そして……アリーゼは心臓。
それがソラが救った3人の命の代償であり、彼女たちが
なにより、ソラが彼女たちを救いきれなかった罪の証でもある。
―――5年前。
最近、Lv.4になったソラは単身ダンジョンに潜っていた。
『死の七日間』と呼ばれるようになった大抗争から2年でランクアップを3回も行ったソラだが、その実態は酷い物であった。
保護者代わりのリヴェリアがソラのダンジョンアタックの様子を聞けば、「ロキ・ファミリアへ入団した当時のアイズの方がマシとはどういうことだ!」とブチ切れてディアンケヒト・ファミリアの治癒院に無理矢理叩き込んでいただろう。
なにせ、ダンジョンにいる時間と地上にいる時間を比べたら、ダンジョンにいる時間の方が圧倒的に長かったのだから。
武器は魔法で何とかなっていたし、スキルの関係でポーションなどの回復薬をほとんど必要としていなかったので、食料を地上で購入してはダンジョンに潜り、食料が尽きたら地上に帰るという生活を続けていた。
そして、その日もソラは単身でダンジョンに潜っていた。
深層にほど近い階層でランクアップにより急激に上がったステイタスを確かめるようにモンスターを狩り、身体の動きを調整していた。
何度目かのモンスターとの交戦後、フィンから近々
―――ダンジョンが激しく揺れ、哭いた。
自分がいる階層より上層で
そうして、辿り着いたその場所は酷い有様だった。
ダンジョンの壁や床が大きく破壊され、元の階層の面影すらなく。
焦げたような、血と肉と臓物の匂いが漂っていた。
「心装励起。喰らい尽くせ、ソウルイーター」
あまりの事態に僅かに茫然としたが、すぐさま魔法を使い漆黒の刀を呼び出し階層内を調べ始めた。
後に、アリーゼから聞いた話になるが。
しかし、そこに骨で構成された見たことも無いモンスターがダンジョンより産まれ、生き残っていた
そのモンスターはLv.4であったアリーゼや輝夜でも捉えきれない速度で動き、鎧ごとLv.3のアストレア・ファミリアの団員を切り裂ける鋭利な爪を持ち、体表は魔法を跳ね返した。
アリーゼは
そんな、悲劇が起きていた場所を探索していたソラは。
―――亡骸となった、彼女たちを見つけた。
そこから必死に生き残りを探したが、生き残りなどいなかった。
モンスターすらいない崩壊した階層で、ヒトとしての原型をかろうじて留めていたのはアリーゼ、輝夜、ライラの3名だけで、既に息は無かった。
―――ソラは、禁忌を犯した。
ソラがLv.4に上がった時に発現した【
まだ彼女たちの魂が天に昇っていない可能性に掛け、ソラはソウルイーターで腕を斬り裂いた。
前世とは違い異世界ならば、蘇生も可能かも知れないとソラは懸命に3人に血を与えた。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎から未来を託された彼女たちが、こんな場所で死ぬなど認められる訳がなかったから。
ソラは3人に血を与え続け、やがて3人に
―――ヒトに⬛︎の血を大量に与えて、無事で済むはずもなく。
「Gaaaaaaaaaaa!!!!」
ソレは、異形の産声だった。
アリーゼが、輝夜が、ライラが咆哮を上げ、地に横たわっていた身体が何度も跳ねる。
ソラの血を流し込まれ、血を浴びた身体が
アリーゼは胸に空いた穴が埋まり、貫かれた心臓が再生し脈動を始めた。
輝夜は肘より断たれた左腕から漆黒の鱗と鋭い爪を持つ腕が生えた。
ライラは顔の傷が消え、開かれた眼には爬虫類を連想させる縦に裂けた金色の瞳孔が現れた。
「Guaaaaaaa!!!」
―――再誕した彼女たちは、ヒトではなかった。
「ぐっ!?」
変貌する3人の様子に呆然としていた隙を突かれ、飛びかかって来た輝夜の左腕に身体を切り裂かれる。
「………なんだ、これは」
すぐさま距離を取り、取り出したポーションを振りかけ傷を治す。
左腕に付いたソラの血を舐める輝夜に、その後には獣のような唸り声をあげながら起き上がるアリーゼとライラの姿が見える。
「俺は、何をした」
3人に血を大量に与えたせいでふらつこうとする身体を無理矢理ねじ伏せ、ソウルイーターを構える。
「俺の血は、スキルは………一体、あいつらに何をしたんだ!?」
理性など一才ない様子でソラに襲いかかってくる3人の攻撃を捌きながらソラはどうするべきかを考える。
が、理性などないはずの3人は巧みに連携をしながらソラを攻めてくるせいで考えがまとまらない。
武器を使われていないだけマシではあるのだが……それだけであり、人数差もありソラが圧倒的に不利だった。
変貌した彼女たちにステイタスが適応されているのかは不明だが、Lv.4が2人にLv.3を1人の相手は非常に厳しかった。
ソラは血の足りない身体を必死に動かし、攻撃を捌き重傷だけは負わないようにしていく。
「…………どれだけ持つかだな、これは」
結局、その戦いは全員がぶっ倒れて意識を失うまで続けられた。
ソラが次に意識を取り戻した時には、既に戦いから10日程経った後であり。
意識を取り戻した場所は
ソラくんのランクアップの軌跡
Lv.1→Lv.2 偉業:『■■』の殺害 期間:約5年
Lv.2→Lv.3 偉業:ゴライアスの単独討伐 期間:約8ヶ月
Lv.3→Lv.4 偉業:アンフィス・バエナの単独討伐 期間:約1年4ヶ月
Lv.4→Lv.5 偉業:ヒトの蘇生 期間:約1年6ヶ月(2週間)
Lv.5→Lv.6 偉業:単独での深層50階層への到達 期間:約1年10ヶ月
Lv.6→Lv.7 偉業:漆黒の蠍の討伐 期間:約1年8ヶ月
※ Lv.4→Lv.5は偉業が2週間で溜まって、1年半かけてステイタスを伸ばし切ってからランクアップした。ロキに偉業の理由を聞かれたら際には適当に誤魔化した。
―――いずれ辿り着くかも知れない未来の話
「次ハ貴様ダ、『剣姫』」
「―――いいえ、違います」
ソラを抱きかかえ、必死の形相でエリクサーをソラへ使うアイズを庇うように前へと進むアミッド。
「この私がいる場所で、誰一人として死なせはしません」
正直に言えば、
Lv.4ではあるが、後方支援の治癒師であるアミッドでは自分とまともに戦うことなど出来はしない。
わざわざ魔法を使う必要すらない。
腕の一振り、ただそれだけで殺せる相手であると見下していた。
そして、都市最高の治癒師であろうと、もはやソラの死は覆せない。
アミッドの魔法で治療が出来たロキ・ファミリアの有象無象に使った劣化した呪剣とは何もかもが違う。
隻眼の黒竜の呪詛と、陸の王者の劇毒をその身に受けたのだ。
如何にソラが不死身に近くとも、生き残れるはずなどない。
「それに……この私が、
故に、
「覚えておきなさい、怪人」
『
「
「――――心装励起」
「殺し、癒せ、サリエル」
漆黒と白銀の二対四枚の翼を広げ、聖女は眼前の怪人に凍えるような冷たい笑みを浮かべた。