怪物は、真面目な君に恋をした。   作:カブトムシの相棒

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■城ヶ崎レンノスケのプロフィール。



☆:武器


・ベレッタM92
・バレットM82
・ゲマトリア製コンバットナイフ


・武器説明


:レンノスケの新スタイル。いつまでも使い続けているベレッタM92は錆を落とし、ガタが来ていたパーツは全て替えて生まれ変わらせた。
元々、レンノスケが得意としていた狙撃を取り入れ、シャーレからの支給品として新たに手に入れたバレットM92と、”黒服”が制作した『レンノスケ専用武器』であるコンバットナイフを装備した。

腐った環境で生き残る為に日々ベレッタM92を酷使し続け、錆びたポケットナイフで戦闘や生活を取っていた一人ぼっちなあの頃とは違う。孤高であり孤独であったあの頃とは、違う。
素敵な環境に入って、傍には誰かが居て、誰かが自分に期待してくれて何かを差し出してくれる。
そして、最愛の人を、キヴォトスの未来を────守るべき者が出来た彼にとっては、最高峰の武器達だ。

最早彼を止める者は先生とキリノ、そしてカンナの愛ある拳骨のみと成ったのだ。






クラス:アタッカー

ポジション:FRONT

攻撃タイプ:Normal

防御タイプ:Normal




HP:5,5890      攻撃力:2,0346     


防御力:2,206      治癒力:100


回避値:1,148     命中値:1.303


会心ダメージ値:200%    安定値:2,307


射程距離:1800(場合によって何処へでも届く)


CC強化力:100      CC強化力:134





・EXスキル:十二の苦行の末に得た御業

▽敵単体に対して攻撃力3000%分のダメージ

ステージ全範囲の敵(複数)に対して即死のダメージ
(敵単体に攻撃を発動した後、ステージ全体の複数の敵に対して即死の斬撃を執行)




・ノーマルスキル:大英雄による災禍

▽25秒毎に、敵全体に対して390%分のダメージ
 さらに気絶状態を付与(6秒)




・パッシブスキル:心技体を極めし者

▽攻撃力16.2%を、防御力16.2%を、会心値16.2%を増加




・サブスキル:最愛の人との約束

▽全ての攻撃を確定会心に変更
自身か仲間のHPが半分以下に成った場合、自身に対し(30秒間)挑発を付与
(その瞬間に自身に対する攻撃をダメージの半減に減少)




▲市街地:S  屋外:A  屋内:B




こんな感じです。もう何でもありにしました。

マジでこんな性能の生徒来ねぇかな……。


いつかレンノスケのメモロビとかやってみたいですねぇ。

後は掲示板的なヤツも……。



次回から本編に突入します。


では、本編です。


外伝:アイラ、初めての職場見学!そして、新たな問題への道。

 

 

 

 

 

■トリニティ総合学園:正門

 

 

 

 

 

「────アイラ!」

「はい!」

「ハンカチとティッシュ持ったか!」

「もった!」

「水筒と筆箱、”たのしいイチゴうさぎ手帳”は持ったか!」

「もった!」

「よぉし!じゃあ最後にッ………志は、持ったかァァァァァッッ!!!」

「もったーーーーっ!!」

「っしゃぁ!!最高だアイラーッ!」

 

 

 

”ガシッ!ブオンッッ!!”

 

 

 

 

「きゃーっ!あはははー!」

「っとぉ!もっかいやるかぁ?」

「うん!もう一回!」

「よぉし!んじゃ行くぜッッ!」

「きゃぁーーーっ!あははは!」

「わわっ!?ちょっ、えぇ!?こ、こらレンノスケっ!そんな高い高いしちゃったらアイラちゃんが危ないですよぉ!」

「はははっ……微笑ましい所申し訳ないっすけど、そろそろ行かなきゃ時間に間に合わないっすよー?」

 

 

 

時刻は8時20分。

 

トリニティの正門にて、レンノスケとキリノにアイラ、そしてイチカが居た。

 

正門前には一際大きな車があり、運転手は公安局の生徒。

その大型車自動車はレンノスケが乗っても問題ない程に大きい。銃弾すら弾く、ヴァルキューレ製のものだ。

 

レンノスケがアイラに忘れ物が無いか確認して、アイラが応える。背中に背負うかばんは少しだけ膨れ上がっている。その中には、レンノスケが確認した物以外の物も入っているだとか。

 

レンノスケは忘れ物がないかの確認を終え、元気が良いアイラに何故か高い高いを施す。

それが余りにも高く上げるもんだから、流石に大声でストップをかけるキリノ。

 

朝から元気いっぱいな三人に少し苦笑いを浮かべるイチカだが、それも中々に微笑ましく、何時の間にか己すらも笑ってしまう。

 

しかし、此処からヴァルキューレは少しばかり遠い。もう出なければいけない故、イチカは声を掛ける。

 

 

 

「む?確かにそうだな。んじゃあ、そろそろ行くか!アイラ」

「うん!わかった!えへへ!きょう、すごくたのしみ!」

「ふふっ、それは何よりです!……それでは早速お乗りましょうか。お二人共、そこの段差、お気を付け下さい」

「あ、どうもありがとう御座います。では……失礼します」

「しつれいします!」

 

 

 

キリノとアイラとイチカが後部座席に、アイラは身長が111㎝である為、チャイルドシートを着用。

 

それが中々様に成っており、キリノを始めとしたイチカと運転手の公安局員がアイラをスマホで写真撮影。アイラはよく分かって居なかったが、レンノスケの指示により、とりあえず満面の笑みでピースサイン。それがキリノ達を更に興奮させた。

 

 

 

「わぁ!クルマ、のるのはじめて!」

「そうなのか?どうだ、面白いだろ車。偶に酔うけど」

「うん!これで帰りものれるの、たのしみ!」

「はは、そうだな。帰りは俺も一緒に居てやるから、職場見学の話とか色々しよーぜ」

「ほんと!?やったー!いっぱいお話、しよ!」

「おう、楽しみだな」

 

 

 

デカい奴と小さい子供の微笑ましい会話は、イチカとキリノ、そして運転手の公安局員を和ませる。

 

レンノスケ自身、車を乗るのは未だ数少ないが、こうして己よりも年が離れた子供には楽しんでほしい気持ちがあった。故に、こうして車の魅力を外を見せながら伝えている。

 

アイラもレンノスケと乗れる車は心の底から楽しいらしく、眼をキラキラさせてレンノスケの膝に手を置きながら外を眺めている。

 

 

 

そんな幸先の良いスタートを切った一行は、時間通りにヴァルキューレ警察学校へと到着した。

 

 

 

 

 

▼ヴァルキューレ警察学校:校門前。

 

 

 

 

 

「────あっ!カンナさんだ!」

「おや、来たようだね。久しぶりだな、アイラちゃん」

 

 

 

無事、ヴァルキューレ本部に到着後、アイラはレンノスケと”手を繋ぎながら”車を降りてヴァルキューレの門の前へと進む。

 

中々、身長差がある二人。レンノスケは腰を曲げ、アイラの負担にならないよう努め、歩幅も何とかアイラに合わせて歩く。

 

イチカやキリノもその姿に少し心配する。なんだか、腰を悪くしてしまいそうだからだ。だが、レンノスケは問題ないと告げ、アイラにペースを合わせて門の前へと進む。

 

すると、其処にはカンナが佇んでおり、アイラの登場をソワソワとしながら待っていた。

 

アイラが喜色の好い声でカンナの姿を視認し、レンノスケの手を握りしめて進む。

カンナも久しぶりのアイラの姿を見て、自分の精一杯の笑みを作る。(狂犬顔)

 

傍から見たら脅しだが、アイラは”ニパァっ!”と幼い子供らしい純粋で愛らしく、可愛い笑顔を浮かべてカンナに言する。

 

 

 

「おはようございます!カンナさん!その、えっと…今日は、おせわに、なります!」

 

 

 

”びしっ!”

 

 

 

「────はうっ…♡」

 

 

 

アイラがした事は、カンナには余りにも劇的過ぎた。

 

それは……強烈過ぎる、カンナ特攻とも云っていい程に、可愛らしい”敬礼”だ。

 

アイラはとびっきりの笑顔でカンナに敬礼をし、今日はお世話になると告げた。それが、カンナの『アイラを撫で回して極限まで甘やかしたい欲』を引き立てる。

 

 

 

「ッ!!はッ……んッンゥ!あぁ、此方こそ今日は宜しく頼む、アイラちゃん」

「っっ!うん!」

 

 

 

何とか踏ん張ったカンナは同じくアイラに敬礼を行う。

 

それに感動したか、アイラは口を開け、ニコッと笑う。

 

敬礼をしたアイラに少し驚いたレンノスケはアイラに問う。

 

 

 

「アイラ、お前いつのまに敬礼なんて覚えたんだ?」

「えへへっ!わたしが初めてここに来たときに、ヴァルキューレのひとたちが、カンナさんやレンにぃにいっぱい、けーれーしてたの見てたから!イチカさんに聞いたりして、おぼえたの!」

「ぬ、そうなのか?イチカ」

「あはは、まぁ、はい。この間あたしにそう聞いてきたので普通に教えたまでっすよ」

「へぇ!そうだったのですか!アイラちゃんに御教授して頂きありがとう御座います、イチカさん!敬礼も確り右手なのも良いですね。ふふっ、流石はアイラちゃん!」

「わぷっ…にひひ!」

「だな……そういえば俺、敬礼なんかした事ねぇなー。アイラは偉いなぁ」

「上司に当たる人には普通はするもんっすよレンノスケさん……」

「そうなのか?じゃあ────カンナ局長、うぃーw(舐め腐った敬礼)」

「あぁ?クソガキが………今日の職場見学が終えたら、貴様には立場と云うモノが何なのか一から教育指導してやる」

「あぁヤバい……(遅すぎる後悔)」

 

 

 

見学後に地獄が決定したレンノスケだった。

 

 

 

「……っと!これは失礼しました。無礼な姿をお見せしてしまった事、そして御挨拶が遅れてしまった事、深くお詫びします。大変申し訳御座いません……仲正イチカさんですね、私はヴァルキューレ警察学校公安局、局長を務めております”尾刃カンナ”です。今回はどうか宜しくお願い致します」

「あ、あぁ!これは御丁寧にどうも……先ほど仰ってて下さいましたが、あたしからも。トリニティ正義実現委員会所属の仲正イチカです。此方こそ今回は突然の職場見学を引き受けて下さってありがとう御座います。今更なのですが、御迷惑ではありませんか……?」

「いいえ、御迷惑だなんてとんでもない。此方としても、この現場を見て、どんな学校なのかを学んで頂けるのは有難い事です。最近は、まぁ……このバカのお陰もあり【キヴォトス全体の治安が安定】しているのもあって、急ぎの用件がないのも理由です」

 

 

 

カンナがイチカと挨拶を交わし、少し経つ……そして、一通り言い終えると同時、カンナがクイッと指をイチカの後ろに向け、呆れた様子でそう答える。

 

イチカが後ろに目を向ける。其処には……。

 

 

 

「「────あっぷっぷ!」」

「うびぃぃぃ……(エグイ変顔のレンノスケ)」

「お……ぶふっ!(噴き出すキリノ)」

「ふ、ふふふっ……ひひっ!あはははっ!(決壊アイラ)」

「笑っちゃいましたねー!で、でも、ちょっ……ふふ、ふふふ!れ、レンノスケ、それ、すごっ…あはは!」

「ふんっ、負ける筈がないのだ、俺の変顔は最強」

 

 

 

其処には、変顔をしてアイラとキリノを笑かしてるレンノスケが居た。

 

白目を剥いて、顎をしゃくらせながら鼻を広がせて奇声を発するその変顔は中々に強烈だった。

 

アイラの頬を膨らませ鼻を広げるだけでは敵う筈のない変顔。アイラと傍観していたキリノは決壊。

 

そんなレンノスケの姿は、嘗て裏社会を恐怖で陥れ、キヴォトス全土を震撼させ続けた【怪物】の姿ではなかった。

 

 

 

「あ……あはは、あー…何だか、良いっすね!雰囲気!」

「……えぇ、そうですね」

「ははは……こうして見ると、本当にあの城ヶ崎レンノスケなのか分かんなくなりそうですね~」

「ご尤もです。初めて奴と対面した時が、今では何だか懐かしい……あの時のレンノスケの雰囲気は正につ発動するか分からぬ時限爆弾でしたね。それが今では……何とも、牙が抜けた狗のようだ」

 

 

 

二人は当時のレンノスケを思い出す。

 

黒曜石の様な鋭利な目付きに、赤く濁った瞳に強い警戒心を持って……歩くだけで周囲に殺意と重圧を振りまく”怪物”の姿を。

 

それが今では……鋭利な瞳は健在だが濁っていた瞳は少し輝きを取り戻している。

その身から溢れていた重圧と殺意のオーラは鳴りを潜め、子供相手に優しく振舞う男子の姿が二人の目には映っていた。

 

何とも、今キヴォトスの治安を平穏にしている男の姿には見えない。

 

そう思ったのはイチカだ。だが、それを直ぐに悟ったカンナはイチカに衝撃な事を告げる。

 

 

 

「まぁ……どうやら()()()()()()()()()()()()()()()らしいですがね」

「……え?そ、それは一体、そういう────」

 

 

 

背筋が凍った瞬間だった。

 

カンナの言葉は、中々どうして理解が追い付かぬ言葉か、イチカは間髪入れずにカンナに問いかける……が。

 

 

 

「さて、そろそろ業務を執行しなければいけません。一度お伝えしましたが、イチカさん、今日はどうか宜しくお願いしますね」

「え?あ。え……は、はい!」

 

 

 

そうして、イチカとカンナの対談は終わり、面々はヴァルキューレ内部に入っていく。

 

 

イチカはカンナの言った言葉の意味を、忘れる事は出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────此処が生活安全局の部署。アイラちゃん、此処の組織はキヴォトスではどういう役割を持って活動しているか分かるかい?」

「うーん……パトトール?」

「正解だ。それと交通の整理や軽犯罪の取り締まりを主な活動として取り組んでいるんだ。その他には民間企業の支援要請に応えるのもお仕事としてあるね」

「おぉー、なるほど……」

 

 

 

場所は【生活安全局:署内】

カンナが先導して向かった先は”キリノ”や”フブキ”の所属先である組織だ。

 

そこで一通りカンナが具体的に仕事内容や風景を説明し、アイラは真剣に聞いて手帳に記していく。

 

レンノスケもその仕事内容を聞いて「へぇー…」と、キリノのしている仕事の内容を改めて聞いて感心した声を漏らす。

 

 

 

「ここまでで、何か質問はあるかな?」

「うぅん!だいじょうぶ!です!」

「そうか、分かった。じゃあ次は【警備局】の部署に向かおうか」

 

 

 

そうして、テンポよく見学は進んで行った。

 

 

【生活安全局】、【警備局】、【交通局】と……カンナが説明係としてアイラに教えていき、アイラは質問や発見をしながら手帳に書き記していき、理解を深める。

 

 

 

 

 

そして……気付けば12時を迎えそうになっていた。

 

それに気付いたキリノがカンナに言する。

 

 

 

「カンナ局長、そろそろお昼のお時間です」

「む、もうか……じゃあアイラちゃん。これからお昼ご飯の時間だから、食堂へ向かおうか」

「っ!わかった!お昼ごはん、たのしみ!……あ、あの、カンナさん」

 

 

 

アイラが何やらモジモジしながらカンナを見上げる。

 

それにカンナは即意図に気付いて、微笑みながらしゃがみ、告げる。

 

 

 

「ふふっ、あぁ、勿論だ。”一緒にカツ丼”を食べる”と云う約束、だね?」

「っ!おぼえてて、くれたの!?」

「当たり前じゃないか。私自身、凄く楽しみだったんだ。それじゃあ早速、一緒に向かおうか」

「うん!」

 

 

 

カンナはアイラと手を繋ぎ、心底楽しそうに食堂へと向かう。

 

カンナはアイラと歩幅を合わせて進む。

アイラとの身長差はカンナでも中々にあり、その差は何と『55㎝』もある。

 

レンノスケほどではないが、かなり大きな差だろう。だが、カンナ自身アイラと手を繋いで歩く事に大きな喜びを感じていた。

 

あの全体的にボロボロで、腹を空かせ幸が薄かった子供が………死んだ目で、暗かった哀れだった子供が────こんなにも明るく、朗らかで、輝かしい瞳で楽しそうにしている。

 

それが、カンナは……心の底から嬉しかった。

 

そういった意味でも、カンナはレンノスケに感謝している。彼が居なかったらアイラはずっと闇を抱えたまま生きていたと思う。想像するだけで吐きそうだ。

 

 

 

そんな、珍しく自分がレンノスケに思いを馳せていると……後ろから何か話し声が聞こえてくる。

 

耳を澄ます。その内容とは……。

 

 

 

「────ぷっw……アレだな、娘と親だな、ありゃ」

「れ、レンノスケ!しーっ…!」

「思っても滅多な事言うもんじゃねぇっすよレンノスケさん!」

「いやだって、アレ、どっからどう見ても親子じゃねぇか?カンナ局長の2()0()()()()O()L()感も相まってそうにしか見えん。ぎゃはははww!!」

「あーダメダメ!!ホントに駄目ッ!!マジで殺されるっすよレンノスケさん!?」

「命が惜しければこれ以上の爆弾発言は避けて下さいッ!」

「む……そうだな。俺まだ死にたかねーし」

 

 

 

”ピキィッッッ!!!”

 

 

 

後ろは後ろで盛り上がっていた。

 

レンノスケの爆弾発言に、キリノとイチカが咄嗟に止めるが時遅し。

 

確りカンナに聞かれていたその言葉は、カンナの堪忍袋をこれでもかと刺激。

 

何とかアイラには悟られぬよう努める。幸い、アイラはカンナと共に昼ご飯を食すことが楽しみで気づいてはいない様だった。

 

 

カンナは誓った。

 

 

見学の時間が終わったら必ず、後ろで己を侮辱する愚か者を、アイラを握る反対の掌(握力500)で粉砕すると。

 

 

 

 

────その後、カンナはアイラと隣でカツ丼を食した。

 

初めて食べるカツ丼に、アイラは喜色の表情を浮かべ美味しそうに笑みを作って食べる。

 

その様子に、キリノやイチカも微笑ましいと思い、自然と笑みが零れた。

 

因みにレンノスケはまたこのカツ丼が食えるのかと感慨深そうにしていた。

アイラには気取られぬようにしていたが、カンナとキリノにはバレバレだったとか。

 

 

 

 

 

 

▼そして、公安局署内へ……。

 

 

 

 

「────こ、ここが……カンナさんの、おしごとするばしょ…っ!」

「あぁ、そうだよ。私が言うのも何だが、此処はヴァルキューレが誇る【対テロ業務特化組織】で、凶悪な犯罪者を力で取り締まる事が主なお仕事なんだ」

 

 

 

お昼休憩を終え、面々はヴァルキューレの花形部署とも呼べる局……公安局内へと赴いていた。

 

中に入れば、各々がそれぞれの仕事に取り組んでいる。不良の鎮圧の応援要請や問題処理の書類制作など、テンポよく動き回っている。

 

 

 

「へぇ、俺も初めて来たな」

「え?そうなの?」

「あぁ、ぶっちゃけ俺ってヴァルキューレでは一番下っ端だしな」

「れ、レンにぃが、したっぱ…!?」

「そういえばそうでしたね。ふふっ、何だかレンノスケさんが私と同じ立ち位置に成るって言うと、凄く変ですけどね」

「いや、俺はキリノよりも立場は下だぞ?」

「ヴァ……ヴァルキューレって、まきょうなんだ……」

「おい、お前達ッ!アイラちゃんに変な勘違いをさせるなッ!」

 

 

 

話しが脱線したが、カンナが軌道修正をして話題を公安局の仕事内容を伝える。

 

アイラは手帳に忙しなく書いていき、レンノスケも興味深そうに聞いていく。

 

 

……時間は、あっという間に過ぎていく。

 

 

 

「────とまぁ、所謂ヴァルキューレ公安局が務める仕事内容や背景はこんな所かな。アイラちゃん、何か質問とか聞きたい事はあるかな?」

「うーん……あ!はい!」

「おっと、じゃあアイラちゃん。どうぞ」

 

 

 

アイラが手を上げ、質問する姿勢に成る。

 

カンナは何だろうと少し身構え、100点満点の解答をしようと意気込む……が、アイラが問うた事は斜め上の問いだった。

 

 

 

「えっと、あの────レンにぃって、公安局の警察、なんですか?」

「む?俺が?」

「あ……あーー………いや、レンノスケは公安局ではないんだ」

「え!?ちがうの?」

「あぁ、そうなんだ。俺は【”超”特殊事件捜査局】と云う別の組織が作られて、そこに入る予定なんだ」

「そうなの?」

「おう」

「(”超”特殊捜査局……やはり公安局ではなく、別の組織を建てる算段っすか。成程、確かに公安局がレンノスケさんを管理できるか否かで云えば難しいでしょうが………ふむ、そう来るっすか)」

 

 

 

サラッとレンノスケがアイラに教えた内容は、レンノスケとキリノに先生、コノカとそしてカンナしか知らぬ情報。

 

カンナは「お前……いや、既に建てられてるし、伝わるのは早いか遅いかの違いだから、別にもう構わんが……」と、少し複雑そうな顔を作る。

 

イチカもそこで初めて知った情報。これはツルギに即伝達するべき情報だと考える。

 

 

そしてふと、レンノスケはアイラに問う。

 

 

 

「しかしアイラ、どうして俺の所属局が気になったんだ?」

「ん?にひっ!それはねー……」

 

 

 

アイラが質問した事はレンノスケに関する事だった。

 

どうしてそんな質問をしたのか、その場に居る全員が疑問に思い、レンノスケがどうしてなのか問うと、アイラが直ぐに答えた。

 

 

 

「えっとね!わたしね!将来おっきくなって、高校生に成るってなったら!()()()()()()()()()()()()の!」

「ッ!」

「アイラ、お前……」

「アイラちゃん…ッ!」

「それとね?そ、その……レンにぃの事、わたし、すっごく尊敬してて……レンにぃと同じ所属のところで、レンにぃみたいにカッコよく、強く、こまってる人を助けたいの!わたしも、カンナさんやキリねぇ……レンにぃみたいな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 

アイラが口にする言葉の数々は────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、えへへ………だめ、かな?」

「……アイラ」

「あ、レンにぃ……わぷっ!」

 

 

 

”なでなで……”

 

 

 

「あぅ……レン、にぃ?」

「……お前の口から、そんな言葉を聞けるとは思わなかったな」

 

 

 

レンノスケがしゃがみ、アイラの頭を撫でる。

 

嬉しくって……アイラが声高々と『警察に成りたい』と望むことが、本当に嬉しくって……レンノスケは衝動的にアイラの頭を撫で回す。

 

 

 

「成れるさ、お前なら」

「え……え!?ほんとー!?……ぁ、でも、私すごく弱いから、むずかしいかも……」

「あぁ、確かにそうだな。警察はそれなりに強くてはイケない。暴漢や不良集団を取り押さえるには、やはり強く成らなきゃ難しい。さっきカンナ局長から色々と学んだもんな………だがアイラ、お前には俺が居る」

「ん?レンにぃが……居る?」

「あぁ……俺が、お前を強くしてやれる」

 

 

 

そう告げた瞬間……アイラの表情が輝かしい笑みになる。

 

 

 

「レンにぃが、わたしを強く、してくれるのっ!?」

「あぁ!アイラを最強へとさせる為の英才教育を、お前にしてやるぜ」

「ほんとに!?やったぁ!!」

()()()()()()()()()()()、成りたい自分が見つかるまで、俺がずっと鍛えてやる。これは約束だ」

「うん!えへへへ、レンにぃとの、約束!」

「おう、指切りげんまんだな」

 

 

 

レンノスケとアイラはサラッととんでもない事を約束した。

 

仲睦まじく見える光景だが、裏を返せばその内容は『最強の怪物が一人の少女の為に7年はキヴォトスに住んで鍛え上げる』と云う事。

 

 

 

「レ、レンノスケ、お前……」

「レンノスケ……」

「アイラが決意を固めて、俺と”同じ局内”に入りたいと言ってくれたんだ。これに応えなきゃ俺はアイラの”師匠”じゃない、だろ?」

「もう師匠気取ってるんすけど……」

「ふん……まぁ、その事は追々、だな」

「ふふっ……えぇ、そうですね」

 

 

 

全員がその様子に思う所はあるが、今はアイラが警察に成りたいと望んでくれた事が何よりも嬉しかった。

 

これからの学園生活で進路は変わってしまうかもしれない。でも、それでも、少しでも自分達の所属する学校に気を向いてくれただけでもカンナやキリノは嬉しかった。

 

 

 

「レンにぃ……いや、レン師匠!」

「……いや、普段はレンにぃで良いぞ。トレーニングをするって成ったらレン師匠、これでいこう」

「ん?よくわかんないけど、分かった!」

「貴様……レンにぃって言われたいだけだろ」

「お黙り万年”カンナさん”呼ばわりの女は」

 

 

 

”ピキッ!!”

 

 

 

「……良い度胸だ。頭の先から足の先まで埋めて欲しいのならハッキリ言え」

「む、マズいな。おいアイラ!」

「はい!────わわっ!」

「なっ、おいッ!」

 

 

 

レンノスケは命の危機を感じたか、アイラを己の胸元へ抱き、そのまま抱えて立ち上がる。

 

 

 

「くははははははッ!どうだボス犬!アイラが居る以上、お前は俺に対して何も出来んぞ!」

「卑劣なッ……貴様それでも警察かッ!(正論)」

「おー!レンにぃのキンニク、やっぱカチカチだねぇー!(無垢)」

「いや何してんすか……」

「あ、あはは……」

 

 

 

その後、キリノがレンノスケを宥めアイラを解放。カンナの拳骨炸裂、レンノスケは無事に死亡した(!?)

 

 

時刻は既に3時30分を過ぎ……そして。

 

 

 

「ふぅ………あぁ、もうこんな時間か」

「ヴァルキューレで教えるべき事項はもう無いですかね」

「そうだな……お疲れ様、アイラちゃん。これで職場見学の時間は終わりだよ」

「はい!見て!いっぱい書いた!」

 

 

 

アイラがカンナに手帳の内容を見せる。

 

其処には今日カンナが各局の内容を教えた事が書いてあり、アイラが確りと話を聞いて書いていたのを知れた。

 

カンナはその手帳に書き記されている内容を一つ一つ丁寧に読んでいく。

 

 

 

「うん、うん……良く書いて理解出来ている、流石だアイラちゃん」

「えへへ!カンナさんの、教えてくれたことが、分かりやすかったから!」

 

 

 

カンナがアイラに手帳を返した瞬間、拳骨を喰らって気絶していたレンノスケが起き上がり、アイラの手帳の中身を見る。

 

 

 

「いってぇ……んぁ?おぉ!随分と多く書いてんじゃんアイラ、凄いな」

「うん!がんばった!」

「そうかそうか────……どうだったアイラ、今回の職場見学は楽しかったか?」

 

 

 

ふと、レンノスケが今回の核心に迫る事を聞く。

 

カンナが、キリノが、イチカが……公安局内に居る全員が、アイラの言葉に集中する。

 

 

 

「────うんっ!すごく楽しかったよ!いろんな事を学べたし、カンナさんとキリねぇ達と一緒にすごく美味しいお昼ごはんも食べられて、本当に楽しかった!」

「ッ!はは、そうか!」

「アイラちゃんッ……!何て良い子!」

「ふふっ……そう言って頂けて、私達も嬉しいよ。ありがとうねアイラちゃん」

「えへへっ~……あ!カンナさん!皆、さん!」

「ん?」

 

 

 

アイラが何かを思い出したかのように、カンナ達の名を呼ぶ。

 

カンナはアイラの視線に合わせる為しゃがみ込み、アイラと目線を合わせる。

その瞬間……アイラが、ビシッと敬礼を取る。

 

 

 

「えっと、カンナさん!それと皆さん!今日は、お世話になりました!あっ!えっと、ありがとうございました!」

 

 

 

敬礼。

 

小さく、しかし力強く……アイラは敬礼をとった。

 

 

 

「ほぉ……最初よりも様に成ってるなアイラ」

「ヤバ、めっちゃ可愛い……」

「────」

「あ……はわっ」

 

 

 

アイラが綺麗に、そして満面の笑みで可愛い敬礼をし、カンナ達にお礼を伝える。

 

レンノスケ、イチカ、カンナ、キリノの順で反応を取る。

 

 

 

「にひ、えへへ!どう?レンにぃ。うまく出来てる?」

「おう!朝よりも更に上達したなアイラ。流石だ」

「!!にひひーっ!」

「……ッ」

「カンナ局長……?」

「……いや、何でもない」

 

 

 

レンノスケがアイラの頭を撫で、アイラは嬉しく笑う。

 

傍から見たら微笑ましい光景だ。正に仲の良い兄妹、自然と笑みが零れると云うモノ。

 

カンナはそんな光景に、アイラの想いに、強く在る形に……胸を打たれ涙が出そうになる。

 

 

 

”パシャッ、パシャ!”

 

 

 

「と、撮った!?」

「当たり前だろ」

「凸凹コンビ……エグイって、尊いって」

「ヤバい、今のあたし、絶対キモイ顔してる」

「元々だから大丈夫だぞ」

「は?」

「あの子が将来ヴァルキューレにかぁー……未来は明るいわね!」

 

 

 

その他の公安局員も、アイラの愛らしい仕草に心を打たれる。

 

純粋無垢で青い子供、しかし一般人以上の地獄を経験している強い子でもあるアイラは、怪物と謳われた青年に救われ同じ学校に入りたいと望んだ。

 

その青年もまた、一人の少女に救われ同じ学校に入校。

まるでドラマだ。新しい正義を生む好循環が出来上がっている。

 

 

嗚呼、何て美しい物語だろう。あの弱り切り、悲哀を詰めた存在だった少女が……強く成ろうと望み、正義を取り締まる人間に成りたいと夢見ている。

 

あの時のアイラを知る者からすれば、嬉しい事この上ないのだ。

 

 

 

「……さて、アイラちゃん、そろそろ」

「あっ……うん!」

「む?あぁ、そうだな」

 

 

 

イチカが間を読み、タイミング良くアイラに話しかける。

 

もう帰宅の時間だ。送迎の9時から始まり、4時に差し掛かる頃合い。

職場見学として丁度いい時間をヴァルキューレで過ごした。アイラ自身、学びたい事を多く学べたからか、すっきりした顔付きに成っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”ピクッ……”

 

 

 

 

 

 

「────あ?」

 

 

 

 

ふと……レンノスケは視線を感じた。

 

建物の中で、しかし遠くの方で確かに己達を見つめる者が居る。それは確定だ、イヤらしくジッと見ている。

 

 

 

「ん?レンノスケ?」

「……どうした、レンノスケ」

「レンにぃ…?」

「はい?なんかあったんすか?」

「………これは」

 

 

 

レンノスケが数秒虚空を見つめ……カンナに近付き、耳元で呟く。

 

 

 

────……カンナ局長。どうやら………

なんだ…………ッ、なに?それは本当か?

あぁ、間違いない………どうする。恐らくだが、お前クラスの実力者だぞ

…………先ずは職場見学を終わらせよう。アイラちゃん達を送らせた後で、詳しく話を聞かせろ

あぁ

「ん???」

「え、えっとぉ……?」

「どうかしたんすか?お二人共」

「あぁいや、何でもない。カンナ局長のケツがデカいって話だ」

「ふんッッ!!!!」

 

 

 

”ゴンッ!!!”

 

 

 

「ほげーっ!」

「お、おぉ!ゲンコツだぁ!」

「いってぇ!!テメェ何しやがるッッ!」

「こっちのセリフだ貴様ァッ!何だ今の発言は!子供の前でぬけぬけと………嘘を付くならもっとマシな嘘を付け!このたわけが!」

「あ!?嘘じゃねぇだろ!自覚ねぇのかお前コラぁボス犬ッ!」

「ほう……???」

「あ、や、ヤバァイ!!まて、その拳はしmッ!おわぁぁ!」

「あ、あはは……何ともないみたいっすね……キリノさn、ひっ!」

「………………………」(真顔キリノ)

「あ、(あーあ……レンノスケさん、知らないっすよ)」

 

 

 

最悪な嘘を付いて敵を増やしたレンノスケであった。

 

 

────そうして、面々はヴァルキューレ警察学校の玄関へ。

 

 

 

 

 

 

 

護送車の前に今回の面々が佇む。

 

 

これで円満にお別れ………になる筈だったのだが……。

 

 

 

「────なんでっ!!レンにぃぃ!!来てくれないの!」

「すまん、俺はやる事があってな?分かってくれアイラ……」

「トリニティまで送るって言った!レンにぃ言ったもん!」

「そっ、そうだな、言ったのにな?あー言ってたなぁ(後悔)……だが、その……これから俺は個人的な仕事があってだな……帰りは難しいんだよ」

「むーーーっっ!!やだやだ!さいごまでいっしょなのぉ!」

「あらあら……これはかなり長くなるっすよーっ!」

「言っている場合ですかイチカさん……」

 

 

 

ヴァルキューレ校門、トリニティへの護送車の前にて行われる小競り合い。

 

内容は『アイラの駄々っ子』によるものだ。

 

アイラはヴァルキューレに来る時の車で、レンノスケが帰りも同行すると告げた事を確り覚えていたのだ。

 

レンノスケも勿論覚えてはいた。だが突如として()()()()()()()()が出来てしまい、レンノスケはこうしてアイラのお迎えが出来なくなり謝っている最中なのだが……意外にもアイラがレンノスケとの帰りのお迎えを楽しみにしていたらしく、こうしてレンノスケのお腹に抱き着いては駄々をこねているのだ。

 

 

 

「アイラ、お前の気持ちは嬉しいよ。俺と一緒に今日の事、語り合いたかったんだよな?」

「っ………ふんッ!」

「いや悪かったって……あー、どうしようか……この仕事は俺しか出来ない内容だから、他の人には譲渡出来んからなぁ……」

「ずっと気になってたんすけど、その仕事っ何なんすか?」

 

 

 

イチカが当然の疑問を投げる。それもそうだ、突然レンノスケが護送車に乗るのを拒否し、急に曖昧な理由で一緒には乗れず迎えが出来ないと言ったのだ。

 

アイラが納得出来ないのも仕方がない。納得させるには相応の説明が必要だ、イチカはそう思いアイラの為に理由を問いかける……が。

 

 

 

「……イチカさん、申し訳御座いません。これは少しトップシークレットな内容でして、例えイチカさんやアイラちゃんでもお伝え出来ない内容でして……」

「え、えぇ……?」

「ほ、本官にもですか!?」

「お前には後で伝える。余計な詮索はしなくていい」

 

 

 

答えたのはカンナだった。

 

イチカやアイラには伝える事が出来ない内容?気になる……が、あのレンノスケも渋い顔をしている辺り、中々触れる事は難しいとイチカは数秒の間に判断。

 

そうこうしている間に、レンノスケとアイラは………。

 

 

 

「アイラ、ほら!また明後日か明日にでも向かうからさ、な?」

「………うぅぅ」

「な、泣くなよ……ほらアイラ。少しの間は俺を抱きしめて良いから」

「んっ………んぅ」

 

 

 

段々と駄々っ子が落ち着いたか、レンノスケがお腹でアイラを抱きしめて優しく背中をポンポンする。

 

しかし、依然と展開は進まなない。アイラはレンノスケにしがみついたまま、離れようとはしない。珍しい我儘、可愛いものだが、今は中々どうしてタイミングが悪すぎる。

 

 

 

「(キリノ、カンナ局長……悪いんだが、二人も何かアイラに言ってくれ)*1

「………ふぅ。仕方ない……アイラちゃん」

「………」

「コイツが約束を破った事に許せない気持ちに成っちゃったんだよね?それはそうだ、誰でも約束を破られたら許せないものだ」

「………うん。レンにぃと、一緒に帰って、お話したかった……」

「そうだよね。うん────……レンノスケ、分身しろ」

「おん出来るかぁ!!*2

「あっはははははははははwww!!!*3

「途中まで良かったのに……真顔で何を言っているのですかカンナ局長」

「すまん。今回の私は無力だ」

「使えねぇ!!クソ……(キリノ、いけるか?)」

「(えぇ……や、やってみますが、余り期待しないで下さいね……?)」

 

 

 

アイラが絡むと無能に成り下がるカンナに変わり、今度はキリノがアイラに話しかける。

 

 

 

「(んー、でも何て言って説得すれば……あ!)」

 

 

 

話しかける直前、キリノに電流走る。

 

 

 

「そうです!アイラちゃん!」

「っ……な、なに?」

「────今日、一緒にシャーレで夕飯を食べましょう!」

「え?」

「は?」

「へ?」

「む?」

 

 

 

キリノ、急で無茶過ぎる提案をする。

 

すかさずイチカが反を言する。

 

 

 

「あ、あのぉ~……流石にそれは難しいと思うのですが……」

「いっ!いいの!?」

「え???」

 

 

 

しかし、その声はキリノには届かず、アイラの喜色の声で遮られる。

 

 

 

「勿論です!何なら泊まっちゃいましょう!きっと先生も喜びますよ!」

「ほんとー!?やったー!」

「確かにその手があったか……流石キリノ!頭の回転がベイブレードだ!」

「いやぁそんな!」

「いや、ちょっ……」

「お、お前達……?」

「あ、そうだ。おいイチカ!」

「は、はい?……ちょっ!?」

 

 

 

”ガシッ!”

 

 

 

レンノスケはイチカの肩を組んで、耳元で呟く。

 

 

 

こうでもしないと、もうアイラは動かねぇ。先生には後で土下座でもして居住区を借りるさ、だから分かってくれ

えぇ……ま、まぁそう言う事なら。お泊りって事なら寮長に事情を説明すれば問題はないっすけど……でも、着替えとか色々詰めなきゃなんで、一度トリニティには戻らなきゃっすよ?

それでいい、アイラが戻る時間が必要なんだ。その間に俺がちゃちゃっと問題を終わらせりゃいい話だからな

な、なるほど?

おう……あぁそれと、アイラだけじゃなくって、他のアリウスの子供達も連れて来てやってくれ。アイラだけズルい!ってなる未来しか見えないからな

あぁ、確かに……はぁ、分かりましたよ。貸し一つっすよ?

近い内に払うさ。すまないな

 

 

 

方針は決まり、レンノスケとイチカの作戦は一先ず終わる。

 

そうして、レンノスケとイチカが振り向いた、瞬間────。

 

 

 

”ジェララァァァァァァ………”

 

 

 

「いぃ!?」

「ひぃ!?」

「────……」

 

 

 

頬を膨らませて二人をジト目する女、キリノが……佇んでいた。

 

 

 

「誤解だ、キリノ」

「……私、まだ何も言っていませんけど」

「いや、あの、その……すみませんでしたぁ!」

「キ、キリねぇ……?」

「ん?どうしましたか?アイラちゃん」

「あ……いえ、なんでもない、です」

「……子供の前でそんなオーラを放つな」

「あでっ……すみませぇん」

 

 

 

嫉妬のオーラを纏うキリノに思わず怯えるアイラを見かねたカンナが、キリノをデコピンして窘める。

 

場は一時騒然と化したが、方針は決まった。

 

 

 

「レンノスケでは今回はそういう事でいいのだな?」

「あ、あぁ。先生には後で伝えるよ。生徒が泊まりに来るのを楽しみにしていたから大丈夫な筈だ」

「了解。イチカさん、本当に申し訳ないのですが、この後もお任せして頂いても宜しいですか?」

「全然大丈夫ですよ!今日はあたし着いてきただけって言うか、何にもしてないのでお気に為さらずっす!」

「ご厚意、心より感謝します」

 

 

 

カンナがこれからの展開を固め、最後に。

 

 

 

「アイラちゃん、良かったね。まだキリノお姉ちゃんとレンノスケのばk……お兄ちゃんと居られるよ。しかもお泊りだ」

「うんっ!すっごくうれしい!いちど、おとまりかい、してみたかったの!」

「ふふっ、そうか!だけど先ずは気を付けて帰るんだよ、そして、その後に必要な物を持ってシャーレに向かうと云いからね」

「うん!忘れ物、しない!です!」

 

 

 

カンナがアイラと話し込み、そして……アイラは直ぐに車に乗り込む。

 

 

 

「イチカさん!イチカさん!はやくはやくー!」

「はいはーい!分かりましたよー!っと……あはは、急に元気に成っちゃって、幼いって良いですね~」

「同感です。本当に、子供は生きる活力になる存在だと常々思います」

「そんな深い話でしたっけ!?」

「悪いイチカ、ボス犬の奴アイラの事に為ると少しキャラが可笑しくなるんだ。気にせず乗ってくれ」

「え、えぇ………」

 

 

 

そうして、アイラ、イチカが車に乗り、エンジンがかかる。

 

 

 

「じゃあレンにぃ!キリねぇ!また後でねー!」

「おう、また後でな」

「お着替えや歯磨きセットなど忘れない様にねアイラちゃん!皆にも伝えて下さいねー!」

「はーい!あっ!カンナさん!また会おうねー!」

「っ!あぁ、また会おう!何時でも此処に来るといい!」

 

 

 

”ブロロロロロロ……”

 

 

車のエンジン音を最後に、護送車はどんどんと遠くなって……遂には見えなくなった。

 

一悶着はあったが、これでアイラの職場見学は終了だ。

 

 

 

「……アイラ、良い子だよな」

「ふふっ、えぇ、とっても!」

「あぁ……きっとあの子は、私の子なのだろうな」

「俺はお前が最近怖いよ……」

 

 

 

そんな茶番も束の間……レンノスケがビシッと切り替え、カンナに問う。

 

 

 

「ふぅ、さてと………向かうか?」

「手荒な真似はするな。どこの学園か、何故私達を見ていたかの理由だけ聞いて戻れ」

「了解。抵抗した場合は?」

「大義は此方にある。少々痛めつけるだけなら許可しよう。決してやり過ぎるな、これは絶対だ。分かったな?」

「了解……────ッ!マズイ、勘付かれた。直ぐに追いかける」

「あぁ……無理に追わなくていい、気を付けろよ」

「あぁッ」

 

 

 

”ドヒュンッッ!!!”

 

 

 

そして、カンナとの会話を最後にレンノスケは目にも止まらぬ速度で駆ける。

 

キリノは両名の切り替えの早さにドギマギする。先程までアイラに甘えられ、アイラに狂わされていた者達には見えなかった。

 

一体何処に行ったか、それすらも分からぬ健脚に、キリノのみならずカンナですら驚きを隠せないでいた。

 

 

 

「……どれだけ規格外だ、あいつは」

「レンノスケですもんね、あれが……あ!あの、カンナ局長」

「ん?あぁ、そうだな、お前には伝えよう…………アイラちゃんの職場見学中、どうやらレンノスケは何者かの視線を探知したらしくってな、妙な気配を纏っていたからと、敵かどうかを確かめに向かった」

「そ、そうだったのですか!?で、でもなぜ、皆さんにはお伝えしなかったので……?」

「イチカさんやアイラちゃんに言った所でどうするんだ?余計な混乱を招くだけだ。それにレンノスケ曰く、気配だけで探知した結果だから判断が難しいらしいが……どうやら我々を監視していた曲者は『(尾刃カンナ)クラスの強さ』らしい」

「え………えぇー!?」

 

 

 

此処で明らかになる恐ろしい新事実。

 

どうやら只事では無い、そう決めつけるには十分な程の情報だ。

この手に関して、レンノスケほど信頼できる人材は居ないだろう。育った環境やそれから得た経験と実力を兼ね備えたレンノスケだからこそ、相手の実力を測れる。

 

 

 

「まぁでも、レンノスケが向かえば万事解決ですね!どんな事情が有ろうと相手には大きな怪我は負わせないと約束を結びましたし!」

「……確かにアイツが居れば直ぐに片は付く筈だが……妙にキナ臭い」

「え?き、キナ臭い、ですか?」

 

 

 

しかし、当のカンナは浮かない顔を作る。

 

レンノスケが向かったのだ、直ぐに片は付くだろう問題、しかし何かが引っ掛かっている。

 

 

 

「……いや、考え過ぎだろう。気にするなキリノ」

「え?は、はぁ……分かりました」

「────ところで話は変わるがキリノ。貴様……あのバカと随分と”お熱”と先生から聞いたが?」

「あぶっふん!!!」

 

 

 

話しが急激に変わる。

 

曲者からレンノスケとのあれこれについて、キリノはカンナに問い詰められる。

 

 

 

「シャーレで先生が嘆いていてなぁ?夜な夜なキリノやレンノスケの部屋から何か”苦しそうだけど愉しそうな声”が聴こえると……あぁ、あと独特な臭いもな」

「いや、あのっ!まって、待って下さいカンナ局長!!こ、ここ、此処では、そのぉ…ッ!」

 

 

 

ヴァルキューレ校門前、キリノの公開処刑とも云える行為が行われる。

ここ最近でキリノとレンノスケの両名は、まぁ……ヤル事をヤッてる。

 

それは先生にバレ、レンノスケ経由でイチカにもバレて、そして一番バレてはいけないカンナにもバレてしまった。

 

ハッキリ言って、最悪である。ヴァルキューレの人間として堕ちるに墜ちたとも云える。

 

 

 

「あ、あぁぁ………も、もしかして、退学ですか?」

「馬鹿者、そんな訳がないだろ。別にそう言う行為は犯罪ではない………だが、その────頻度と、場所は少し考えろ。お前は()1()()()()()()()()()()()()()()()()()とはいえ、幾ら何でも先生の御贔屓で借りて頂いているシャーレ居住区の部屋でするとは如何なものかッ……と云う事だ」

「ご、ご尤もです………」

 

 

 

ぐうの音も出ないとはこの事である。

カンナは少し頬を赤らめて忠告する。流石に直絶部下にこういう話を諭すのは恥ずかしい様だ。

 

カンナ自身、男子の性欲には未だ疎いが、乙女の秘めた欲には確かな覚えがある。

 

レンノスケとキリノの両名、どうせその場の勢いで致してしまったのだろうと安易に分かった………己より下の部下に先に経験を越されたのは少し癪だなと思ってはいるが。

 

キリノが反省していると、ふとカンナの言葉を振り返り、告げる。

 

 

 

「あぁ、そういえば、私もうレンノスケの監視から離れる時期ですか」

「そうだな……後1週間。レンノスケの奴には言っているのか?」

「いえ……でも、レンノスケ自身それは知ってはいると

思います。ちょくちょくシャーレでその事を記したカレンダーを見ていたので」

「ふむ、そうか……」

「あの、カンナ局長。これって謂わば『シャーレとヴァルキューレの合同による監視』として色んな意味で適任な本官が赴いた、と云う形ですよね?」

「そういう意味で捉えても構わんが……それがどうした?」

「いえ、この仕事が終われば本官は自分の家に戻るではないですか?でも、そうなると()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……それは」

 

 

 

一つの小さい穴。思えばそうだ、この監視が終わる時、キリノは己の家に帰宅する事に為る。

 

だが、言えの無いレンノスケはどうなる?またシャーレで面倒を見るのか?だがそれは……。

 

 

 

「それは……正直私個人としてはシャーレに残ってほしい気持ちがある」

「ッ!や、やっぱりそうですよね!それの方がレンノスケも────」

「だが……各方面の目が怖いな。あいつの影響力はシャーレの先生と同等か、場合によっては洒落よりも強いだろう」

「っ……それも、そうですね。彼の為して来た数々の大事件は最早伝説の域に入っていますから……」

 

 

 

問題はある。先程カンナが言ったシャーレの居住だが、半分有り、半分無しと云った所か、極めて悩ましい問題だ。

 

あの先生なら二つ返事で「おっ、いいよ!」とか言いそうだが、これは簡単な話ではない。あの城ヶ崎レンノスケが監視期間を終えた後でもシャーレに住むとなるとそれなりの説明が必要になる。

 

影響力、戦闘力がトップの怪物があの『超法規的組織の長である先生の完全な下に就く』という事は政治的な問題に発展する可能性があるのだ。

 

 

 

「レンノスケが幾ら強く先生に対してただ単に慕っているだけであろうと、世間はそれを黙らないだろう。言ってしまえば先生とレンノスケは異性同士、レンノスケに限ってそれはn「レンノスケに限ってそんな事は絶対に有り得ません。幾らカンナ局長でもそう言う言葉はお控え願います」す、すまん……だが私は、世間はそういう事を考えてしまうって言いたかっただけだ。深い意味はないが、お前にはそれも頭の片隅には一応入れては欲しい。お前とレンノスケの関係は秘匿だからな………あー、それに、先生はキヴォトスの生徒達から圧倒的な支持を集めている。要らぬ嫉妬や暴動が起きるかもしれんしな」

「そ、そんな事……………………あり、ますねぇ」

 

 

 

キリノはシャーレの出来事を思い出す。

 

皆までは言わないが、確かに先生を過度に慕う生徒は居る。それは最早性別の壁を超越した恋愛感情を秘めていた。

 

上げればキリがないが、特にシロコやホシノ、ヒナ、ネル、ツルギ、ナギサ、ミカ、ワカモ、コタマ、セリナ、ノドカ、ミモリ、ミドリ、フウカ、サオリ、アツコ、rtc........。

 

 

多すぎる。魔性の女が過ぎる先生なのであった。

 

 

 

「思えば、シャーレに来る生徒さんは、その……中々に強烈な方々が多かったですね……」

「まぁ、そうだろうな。それ程、先生を想う生徒は多い。馬鹿みたいな話だが、無視できない話でもある。中々に厄介だな……」

 

 

 

このままでは先生を巻き込む戦争が大勃発してしまうかもしれない。

 

レンノスケがシャーレ居住区に住むという事の重大さは、話を広げれば広げるほど面倒な問題だと思ってしまう。

 

 

 

”ピキ――ン……”

 

 

 

「(………あ)」

 

 

 

しかし、此処でキリノに電流走る。

 

 

 

「……カンナ局長、少しお話が────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲レンノスケside

 

 

 

 

 

────……一方その頃、レンノスケの場面では……。

 

 

 

 

 

「────鬼ごっこは終わりか?」

「…………」

 

 

 

D.U.のある建物の裏路地まで追い詰めていた。

 

レンノスケの脅威的な速度で迫られたら、幾ら足に自身がある者でも通用しない。

ブラックマーケットで鍛え上げられた健脚は今尚成中である。

 

追い詰められた下手人をレンノスケは見つめる。

 

その姿は、まるで……。

 

 

 

「少し泳がせて見れば、中々面白そうな()()()がいたモノだな」

「まさかあの距離で私の気配を感知出来るとは、少し驚きました」

 

 

 

そう、メイド姿だったのだ。

 

 

 

「アドバイスみたいになるが、お前は少し気配遮断にムラがある。監視するのに警戒をしてしまってはバレるに決まっているだろ」

「……距離は3㎞はあった筈ですが」

「俺にとっては些細な話だ」

「成程、これが城ヶ崎レンノスケですか。確かに規格外ですね」

「ん?俺の筋肉か?」

「存在其のモノがです」

 

 

 

妙に話し合う両名、だがこの空気をメイドが断ち切る。

 

 

 

「話が脱線しましたね、先ずは自己紹介を。私は……今は”パーフェクトメイド”とお呼び頂けたらと」

「分かった。知ってると思うが、俺は城ヶ崎レンノスケだ。で、パーフェクトメイドはなんで()()()()()()()

 

 

 

ツッコミ不在の恐ろしさを再確認すると同時、レンノスケがいきなり切り込む。

 

内容は至ってシンプル、己を見ていた理由だ。

 

 

 

「お前、俺が昨日ミレニアムに来た時も見てただろ」

「ッ!まさか、それすらも気付いていましたか」

「寧ろ、昨日の方が距離が近い分、中々の警戒心を感じたがな。それで?俺を見ていた理由を言え、それと出身校もな」

「……申し訳御座いませんが、出身校はお教え出来かねます。ですが貴方を見ていた理由でしたらお答え出来ます」

 

 

 

そのメイドは一切表情を崩さず淡々と言を紡いでいく。

 

あの怪物、レンノスケを前にしてこれ程ポーカーフェイスを保てる事が出来るのは非常に限られる。この時点で、レンノスケはトキをカンナ(クラス)の実力者であるのは確定だと思っていた。

 

 

 

「……具体的でいい、俺にも分かり易く説明してくれ」

「はい。つまり、私はある昨日クライアントから貴方を監視しなさいと伝えられ、こうして今も見ている訳です」

「なるほど、凄く分かり易いな」

「いえいえ、どうもです」

「因みに言うが、それだけか?」

「私はクライアントから監視するよにとしかお伝えされていませんので、目的は分かりかねます。申し訳御座いません」

 

 

 

レンノスケがメイドの眼を見つめる。

 

 

 

「……少し隠し事はあるが、まぁいい。今回は何もしなかったから不問としよう」

「おや、お許しを頂いても宜しいので?」

「お前が、あの幼い子供や俺の仲間に手ェ出すっつぅ話なら別だが、今回の件は俺個人の監視なのだろう?なら別にいい。誰かに見られるってのは慣れたくは無かったが、もう慣れた」

「……不快な思いにさせてしまった事、深くお詫び致します。申し訳御座いませんでした」

「気にしないでいい、お前もクライアントからの依頼なら不可抗力だ。だが、俺を監視すんのはコレっきりで頼みたい。出来るか?」

「……私個人の判断で決めるのは難しいですが、一度クライアントに申しかけてみます」

「あぁ、助かるよ。そうしてくれ」

 

 

 

それだけ聞いて、レンノスケも気を緩める。

 

警戒はしていたが、このメイドから確かな敵意は感じられなかった。だからこの対応なのだ。

メイドはレンノスケの己に対する対応を見て、少し不思議に思う。

 

 

 

「………」

「ん?なんだ、ジッと見て」

「いえ、貴方と私は初対面です。それに私は貴方を二日も見張っておりました……普通はもっと警戒するのではと思いまして。特に貴方の様な者なら特に、と」

「お前からは醜い敵意が一切感じられなかった。それにパーフェクトメイド、お前にはお前の事情があるんだろ?」

「えぇ、はい」

「なら俺がとやかく言う事じゃない。俺は俺の立場を(やっと)理解しているからな、これでもまだヴァルキューレとシャーレからは監視されている立場だし」

「それにしては非常に自由に見えますが」

「あと1週間でその監視も終わらるからじゃね?」

「成程、そう言う事ですか」

 

 

 

会話のキャッチボールが淡々と進み、早数分が経過。

 

 

 

「……っと、すまん。俺はもう行かなきゃならねぇ」

「おっと、これは失礼しました。確かシャーレでトリニティの子供達とお泊り会をするのですよね?」

「あぁ、そうだ。なんだ会話まで聞かれていたのか、まさかあのドローンか?」

「……もしかして、あの超小型偵察ドローンの事を指してますか?」

「あ?あぁ、俺の真上……少し距離があるが、あの浮いてるドローンだろ?あれお前の物だよな?」

「はい、そうですが……成程、こうして対面してみれば色々と分かるものもありますね」

 

 

 

メイドは恐ろしくなった。

 

レンノスケの真上遥か先、そこには3㎝も満たない超小型の偵察ドローンが確かに飛行していた。

 

肉眼ではまず分からないであろうそのドローンを、レンノスケは特別なにも思わないで気付いて見せた。

有り得ない事を平然とするのは、一種の恐怖なのだ。

 

【裏社会最悪の怪物】……その異名はキヴォトス全土に発信され、このメイドにも無論行き渡っている。

 

数々の大事件を引き起こし、伝説染みた偉業も、レンノスケがシャーレsideと判断された今ではニュースに取り上げられる程に常識と化している。前代未聞だ、こんな事。

 

 

 

「ん?まぁ何でもいいが、取り合えずそう言う事で頼む」

「えぇ、今回はお騒がせしてしまい、そして大変なご迷惑をお掛けしてしまい申し訳御座いませんでした、レンノスケさん」

 

 

 

綺麗に、メイドが如く美しいフォームを取って謝罪をするメイド。

 

その様子に押されそうになるが、レンノスケはメイドに言いたかった事を告げる。

 

 

 

「いいよ、別に。お前も……まぁ、その顔と雰囲気でモロ分かりだが、()()()()()()()()()()()()()()()

「………え?」

「じゃあな」

「あ、あの────ッ!?」

 

 

 

”ドヒュンッッ!!!”

 

 

 

そして、レンノスケはこの場から去って行った。

 

目にも止まらぬ速さ、辺りを見渡しても何処にも居ない。偵察ドローンですら反応が出来ないスピードで彼は走り去っていったのだ。

 

 

 

「……アレが、城ヶ崎レンノスケ、ですか」

 

 

 

一人呟くメイド。

 

彼女は懐から通信機器を取り出し、掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────此方ゼロフォー。()()様、先程城ケ崎レンノスケと接触、そして幾分かの間会話を設けました。今直ぐ帰投します」

『────ご苦労だわ、()()。速やかに拠点まで戻りなさい』

『御意』

 

 

 

不穏な雰囲気を残したまま、そのメイド────”飛鳥馬トキ”は姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────その後、キリノは先生に今回の件の合意を受け取り、アリウスの子供たちを連れてシャーレへと向かい無事に到着。

 

レンノスケはカンナに事の本末を伝え、少し遅れてシャーレへと帰還。

キリノには具体的に話した後、直ぐにレンノスケは子供達にもみくちゃにされた。

 

先生も癒しを求めて子供達と遊んだ。

 

レンノスケとキリノが夕御飯を作っている間、先生とアリウスの子供たちはお絵描きやおままごと等、時間がある間に沢山遊んだ。

 

大人と云う事もあって最初は少し警戒されてはいた先生だが、その美貌から溢れ出る愛やレンノスケやキリノの事前説明が相まって、打ち解けるには時間は全く掛からなかった。

 

だがしかし、子供達の無限とも受け取れる体力を前に、先生は中々疲労を露にしていた。これは絶対に歳のs────

 

 

……そしてレンノスケとキリノが夕飯を作り終え、全員でカフェへと向かった。

 

 

何と今回の夕御飯は豪勢にハンバーグだった。

 

アリウスの子供たちは目をキラキラさせてハンバーグを見つめる。初めて見る食事に興味津々の様子で早く食べたいと訴えかける。

 

だが、レンノスケが席に座ると、レンノスケの隣を巡って喧嘩が勃発。13人の子供達全員から好かれているレンノスケは、それはもう嬉しい気持ちになった……が、喧嘩はダメだとビシッと言いしめた。

 

結局、レンノスケの計らいでじゃんけんで決めると云う事に為った。公平で、恨みっこ無し。因みにアイラは今日の職場見学で除外されてしまった。我慢していた姿は中々可哀想だったが、これも経験だ、アイラ。

 

そして隣同士は決まって、やっと食事にあり付いたアリウスの子供達。

 

反応は、形容し難いが、一言で表すのなら『心の底から良かったね』の一言だった。

 

パクパクと忙しなく食べていくその様は、本当に愛らしくって、キリノと先生は目頭が熱くなった。レンノスケはハンバーグの美味さに便乗していた。

 

この子供達には一般の子供達よりも暗すぎる背景があった。

それを知っている先生とキリノ、そしてレンノスケだからこそ、この瞬間は本当に嬉しかった。

 

 

そして食べ終え、片付けが終わった後にすることはお風呂に入る事だろう。

 

 

先生は折角だからと、シャーレの直ぐ近くに在るスーパー銭湯に行こうと提案。

 

全員賛成し、直ぐに支度の用意を取る。

 

シャーレを出て10分歩いたか、一行はスーパー銭湯へと入る。

 

レンノスケ自身、銭湯は初めてで少し緊張していたが、普通にお風呂に入るだけだからとキリノに伝えられ緊張を和らげる。

 

少し大変なのはキリノや先生達だろう、何と言っても子供が13人も居るのだ、全員良い子だから問題は無かったが、銭湯内での見張りは中々骨が折れた。

 

女子風呂は生徒の子がほとんどで、先生の交流の場も少し合って中々楽しめたらしい。

 

男子湯に入ったレンノスケは、そのぶら下げる”デカぶつ”を目の当たりにした他の獣人やロボ市民が驚愕していたとか何とか。

 

 

まぁそんなこんなで銭湯を抜けてシャーレに戻った。

 

居住区の大部屋を借りて、レンノスケとキリノはアリウスの子供達全員分の布団を敷いた、全員歯も磨いた。後は寝るだけだ。

 

 

全員が布団に入り、眼をギンギンにして話に興じようとした時────アイラが違和感に気付いた。

 

 

「まって……レンにぃとキリノねぇは?」

「え?」

「ん?」

「あれ?おふとんは?」

「レンノスケとキリノのふとんがないね?」

「なんでー?」

「え、えっとぉ……」

「あん?なんでって、俺とキリノはお前等とは寝ないからだぞ?」

 

 

 

理由は簡単、この後お二人で……言える訳が無かった。

 

そう告げた瞬間だった。

 

 

 

”「────いやだぁぁぁぁっっ!!!」”

「はへぇ!?」

「うおぁ!?」

 

 

 

”””ぎゅぅぅぅぅぅぅ!!!!”””

 

 

まるでミツバチがスズメバチを殺す『熱殺蜂球』が如く様で、アリウスの子供たちはレンノスケとキリノの上に乗っかって別々で眠る事を拒否。

 

 

 

「一緒に、寝るの!」

「きょう、泊ったいみがないじゃん!」

「いっしょにねるっていうまで、上にのっかっちゃうもんね!」

「レンにぃ!キリねぇ!私たちと、いっしょにねて!」

 

 

 

子供達の猛烈なアプローチに、二人は……。

 

 

 

「……キリノ」

「ふふっ、そうですね。ごめんなさい皆さん、直ぐに私達の分のお布団も持って来ますね!」

「ほ、ほんと!?」

「やった-!」

「あたし、キリノさんと寝る!」

「わたしもー!」

「私はレンにぃと!」

「あ!私も私も!」

「これは……俺達が真ん中に行った方が良いな」

「そうですね……ふふっ!今日は一段と温かい夜になりそうですね」

「こいつ等は温かいからな~、なぁアイラ。うりうり」

「うびびびび~!にひぃぃー!レンにぃ、ほっぺた緩くなっちゃうよ~」

「あ!ずるい!あたしにやってー!」

「私にもー!」

 

 

 

そうして、レンノスケとキリノは布団を持ってきて敷く。

 

構図としてはレンノスケとキリノが真ん中に、囲む様に子供達が外へと成った。

本来は二人が外へと布団を敷いてと云う形の方がいいのだが……理由は直ぐに分かる。

 

そして、全員が寝る姿勢に成る。

 

時刻は10時、子供は寝る時間だ、全員布団に入って直ぐに瞼が降り始める……………そして。

 

 

 

 

「……知ってた」

「あ……あはは」

””「しゅぴーー……すぴーーー……」””

 

 

 

30分後、レンノスケとキリノの元に集まる子供達。

 

レンノスケのお腹の上や太腿、脇の下や股の下などに9名が集まり、キリノの布団や脇の下、股の下などに4名が集まって眠る。

 

そう、レンノスケとキリノが真ん中に移動した理由が、子供達が自分達に密集しても布団の上から落ちない様にする為だったのだ。

 

 

 

「此処まで来るとちょっと熱いな……まぁ、心地は良いんだが」

「ふふっ……苦しくないですか?レンノスケ。アイラちゃんなんかお腹の上で寝ちゃって」

「ありがとう、でも軽いから大丈夫だ。片腕で支えてるし落ちる問題はない」

「そうですか……ふふっ、見て下さいレンノスケ、この子のお顔……とても幸せそうに寝ちゃって」

「本当だ、可愛いな…………なぁ、キリノ」

「っ……はい」

 

 

 

アイラを支えている手とは別のレンノスケの手が、キリノの手を掴む。

 

優しく、どこか問いかける様な手付きでキリノの手を握る。その動作に、雰囲気に何かを察したキリノが言葉を待つ。

 

 

 

「俺さ、昔は自分の事ばっかで、生きるのに必死で、一般常識やそういう知識とかには疎かった」

「……はい」

「俺とキリノが初めて会ったあの時、俺は自分の今迄を戸惑いも無く話したけど……何て言うのかな、きっと俺は────……毎日が辛かったんだと、思う」

「……レンノスケ」

 

 

 

キリノの掴む力が増す。

それは、自分が居ると云う表れだった。

 

レンノスケはそれを理解し、頬が少し緩むと、言を投げる。

 

 

 

「でも今は違う。今の俺は……あぁ、本当に幸せだ」

「っ……」

「貴女と会えた。貴女と会話が出来た。貴女と友達に成れた。貴女と刺激的で素敵な体験をした。貴女と……恋人に成れた」

 

 

 

思い返す。この2週間と少し、本当に濃い時間だった。

 

 

 

「キリノ、聞いても良いか?」

「はい……」

 

 

 

レンノスケは横を向く。

キリノも横を向く。

 

目と目が合う。お互いに少し頬が赤くなっている。

 

意を決したレンノスケが、子供達を起こさない様に、穏やかな声質で問う。

 

 

 

「────キリノは今……幸せか?」

 

 

 

答えは。

 

 

 

「────はい。幸せです」

 

 

 

素直に、純粋な意味で、そう答えた。

 

 

 

「そうか」

「そうですよ」

 

 

 

それ以上は要らない。

これ以上は求めない。

 

だから、このまま……このままずっと幸せが続いてほしい。

 

この空間が、続いてほしい。

 

 

 

「大好きだ、キリノ」

「私も、大好きです。レンノスケ」

「愛してる」

「愛しています」

「……おやすみ、キリノ」

「えぇ、おやすみなさい。レンノスケ」

 

 

 

互いに愛を囁き、おやすみと告げる。

 

子供達の温かい体温が、二人の身体に伝達するように届く。

 

温かい……芯から温まりそうな温かさだ。

 

レンノスケが死に物狂いで守った未来、狂った環境で育ち、暗い表情だった子供達も、今では……こんなにも可愛らしく寝ている。

 

あぁ、頑張った甲斐があった。心の底から子供達の変化が嬉しい。

 

レンノスケはそう思い、瞳を閉じる。キリノも同様、合わせる様に瞳を閉じる。

 

 

 

・・・・・・数十分後。

 

 

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「「寝れない……」」

 

 

 

子供達が居る事、そして……互いの手が少し汗ばんできてヌメッとして来て気になって仕方がなくレンノスケとキリノは眠れなくなっている。

 

 

 

「……キリノ、濡れすぎだろ」

「わ、私だけではないですよ……っ」

「ぅん、ん~……」

「ッ!!!?」

「ッ!!!!!?」

「ん………すぴー……すぴー…」

「……あっぶねぇ」

「も、もう少し、喋る音量を下げましょうか」

「そうだな……一応聞くが、眠くはないのか?」

「は、はい……こういう状況だからか、何だか眠くなくって」

「お互い様だな……どうだ?小声だが、少し昔話に興じてみないか?」

「っ!いいですね」

 

 

 

そうして、レンノスケとキリノは昔話に興じた。

 

 

……結局、話が思いのほか盛り上がって眠ったのは3時。朝食が8時だから余り眠れなかったキリノは非常に気怠そうだったが、レンノスケはブラックマーケットの経験で徹夜は慣れていた故、全く平気だった。レンノスケの体力(意味深)の理由が少し分かった気がしたキリノだった。

 

 

 

 

こうして、急遽始まったシャーレお泊り会は幕を閉じた。

 

 

 

 

*1
アイコンタクト

*2
某”不動産鑑定士”風

*3
爆笑イチカ







次回から本編に入ります。

少し悩んだのですが、やはりパヴァーヌ2章はレンノスケを絡ませます。

大きな理由としてレンノスケとネルの関係性を少し深めます。一応言いますけど深い意味はないです。ネタバレになるのでこれ以上は伝えきれませんが、ネルが大活躍する事だけ言いますね。




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