怪物は、真面目な君に恋をした。   作:カブトムシの相棒

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アンケートの件、誠にありがとう御座います。

レンノスケの過去編が今のところ人気ですね。その次にショタ化と掲示板、良いですね。


レンノスケの13年間の御話は今考えているプロットを更に地獄化させる手筈なので!本当にギャグや甘々もないので!

皆さん、やっぱ曇らせ系が好きなんすかね?すうすー!





では、本編です。


怪物とゲーム開発部。

 

 

■ブラックマーケット、繁華区域……。

 

 

 

 

 

”ドゴォォンンッ!ドオンッッ!!!”

 

 

 

 

「うぎゃぁぁぁぁぁぁあっっ!!!」

「や、やめっ!ぎゃあああっ!!!」

「なんでっ!?お前がまた此処にっっ、うあぁぁぁ!!!」

 

 

 

絶叫が、朝方に木霊する。

拳が弾き、ベレッタM92が爆音を奏で、次々と人が地面へと倒される。

 

 

 

「ふぅ、これで全員か……朝から少し疲れたな」

 

 

 

ブラックマーケット、そのとある繁華区域にて、一人の男が犯罪組織を壊滅させていた。

 

その名も城ヶ崎レンノスケ。ヴァルキューレの服装を身に包み、無情にも数百人のオートマタや女生徒を愛銃や拳、蹴りで制圧し殲滅。

 

時刻は5時、まだ夜の面影を残す天気の内に起こした制圧だった。

 

レンノスケは全員を一箇所に集め、睨みつけながら通信機器を持ち告げる。

 

 

 

「此方レンノスケ、密売組織の殲滅に成功。数は139名、恐らく全員。急ぎ車の用意を頼む」

『ご苦労。現在5台の護送車を向かわせている。早くて10分で到着予定。レンノスケは其処で監視を命じる』

「了解」

『朝からすまないな、まさか密売の集会が今日の朝に行うとは想定外だった。だがお陰で助かった。感謝する』

「構わん。だが、少しだけ頼みたい事がある」

『なんだ?』

 

 

 

通話の相手は公安局の局長であるカンナ。

 

危険な任務の為、今回は【特殊捜査局】であるレンノスケのみ事件の解決に向かわせたカンナだったが、先ず失敗する事は無いだろうとカンナはレンノスケが戦闘を開始し始めたと同時、既に護送車を向かわせていた。

 

朝の事もあり、カンナは少々負い目を感じレンノスケに謝罪するも、レンノスケは文句を言う事も無く淡々と承諾し現場に直行、モノの数分で組織を壊滅。

その事で、カンナは感謝の念を伝える。今回の違法密売の組織は裏社会でも名の知れた悪だった事もあり、こうして集会のタイミングで全員を逮捕できたことに、カンナはレンノスケに礼を伝えたのだ。

 

そんな中、レンノスケは少し言いたげな声質でカンナに問う。

 

 

 

「今回の件の様に、緊急事態だったら俺を呼んで対応に当たらせて全然構わないんだが、今日は少し、用事があるんだ。元々、今日は非番だからな……出来る限り仕事は振らないで貰えると助かる」

『無論だ。非番の者に働けと云う程、私は鬼畜ではない。今回は事件の危険度も有ってお前に託すしかなかったんだ。それに……情報では違法弾薬や銃を使用しているとも云う』

「確かにこいつ等無駄に良い銃を使ていやがったな。終いにはRPGなんかぶっ放してきたぞ。俺がブラックマーケットを出てから、羽振りが良くなったらしい……カンナ局長、どうやら、少しブラックマーケットを巡回する必要があるみたいだ」

『ふむ……その事何だが……いや、仕事の話はまた明日話すとしよう。そろそろ護送車が来る頃合いだろう?』

 

 

 

カンナがそう告げた瞬間、遠くからヴァルキューレの護送車が一列になって向かってくるのが見える。

 

 

 

「……そうだな。その事は、また明日頼むよ」

『あぁ……なぁ、レンノスケ』

「ん?なんだ?」

『────苦しくは……辛くはないか?』

「………」

 

 

 

それは、心の底からの心配だった。

 

”ブラックマーケット”

 

幼き頃の城ヶ崎レンノスケが目覚め、育ち、死ぬよりも苦痛な経験を積んだ場所。

 

人によってはトラウマな場所である此処……レンノスケにこの事件の解決に向かわせようと思うと同時、限りなく気掛かりであったのも事実。

 

カンナは伺う様に、問題はなかったかと問う。答えは……。

 

 

 

「心配は要らない。俺は、もうソレを克服している」

『っ……そうか』

「それに、この場所は腐っても俺が育った場所だ。こう言っては何だが、少しの物懐かしさを感じる……あぁ、だから気にするな」

『そうか……じゃあ、今日は身体を休めてくれ』

 

 

 

本音を応え、レンノスケは微笑む。

 

此処は地獄だ。密売は勿論、暴力に窃盗、詐欺に強盗は日常……そして、殺しも。

 

今こうしている間にも誰かが犯罪に遭っている。

誰かが不幸になり、誰かが暴行を受け、誰かが死んでいる。

 

どうしようもない場所。レンノスケが常に恐怖を与えても、変わる事のない無法地帯。

 

それは、レンノスケがヴァルキューレに成った今でも……変わらない。

 

 

 

「おはよう御座います、レンノスケさん!」

「今回も犯罪者の制圧、大変お疲れ様でした!」

「後は我々にお任せください!」

「む?あぁ、おはよう。こいつ等の捕縛と送走は任せるよ、ありがとう」

”「はっ!」”

 

 

 

複数のヴァルキューレ生はレンノスケの伝達に元気よく言を返す。

朝から良い返事だな……と、レンノスケは感心するが、それはレンノスケだから声をハキハキさせて居るに過ぎない。

 

単独でブラックマーケットに乗り込み、数分で100を超える犯罪者を制圧する異常な強さや、決して感情を見せる事のない無表情な顔、そして、自分達にも確りと礼をし、任せてくれるレンノスケの情の熱さは、この数週間で確かにヴァルキューレ生の心や脳を焼き、憧れを抱かせている。

 

その事にレンノスケ本人は気付いてはいないのが救いか……。

 

 

 

「あ、でも、そうだな……やっぱり何か、手伝う事はあるか?車の運転は出来ないけど、手錠で捕縛なら俺でも出来るが」

「いえ!大丈夫です!」

「もうほぼ全員乗せる事が出来ていますので!」

「おら!早く乗れっ!……この通り、レンノスケさんのお手を煩わせる事はないので、安心して下さい!」

「ですが、そのお気遣いには大変嬉しく思います!ありがとう御座います、城ヶ崎さん!」

「そ、そうか……流石、先輩達だ。手際が良くって、凄いな。俺も見習わなければいけないな」

「いえいえ!そんな!レンノスケさんの方が数十倍は凄いですよ!こんな大規模な悪徳組織を意図も簡単に殲滅してしまうんですから!」

「逆に俺はそれ位しか出来んからな。それ以外の事は、貴女達の方が手際も何もかもが良い。俺は貴女達を尊敬している……本当に感謝するよ」

 

 

 

そう告げれば、他のヴァルキューレ生は十人十色、様々な甘い声を上げる。

 

男として、レンノスケはほぼ全ての属性を持ち合わせている。身長は勿論、戦闘面や強靭な肉体に低い声質、そして性格も良い。

 

キリノとの関係性は一部の人間、キリノの友人やカンナ、コノカに各自治区の上層部でしか知らぬ極秘情報なのだ。無論、レンノスケの全貌が明らかになれば、彼を(恋的な意味で)狙う生徒は出て来る。それはヴァルキューレのみならず、ミレニアムやトリニティにゲヘナにも居るとか。

 

唯一の男子生徒と云うアイデンティティも強い要因だろう。

 

 

 

「じゃあ、俺はもう行く。朝から大変だが、この後の業務も頑張ってくれ。それと何かあったら直ぐに連絡してくれ、飛んで来るからな」

”「はいっっ!!」”

 

 

 

それだけ告げ、レンノスケは颯爽とその場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………カッコいいなぁ」

「マジでそれな……あの筋肉とかエロ過ぎでしょ」

「私、声が一番好きかも……あの低音ボイスで囁かれたら濡れる自信ある」

「分かる……あたし、今度ご飯に誘ってみよっかな~」

「来てくれないんじゃね?」

「分んないよ?レンノスケ先輩、意外とノリ良いし」

「あー確かに」

「前のお昼休みの時、カンナ局長にサングラス付けてラップ勝負仕掛けてたのクッソ面白かったしね」

「結局ゲンコツ喰らって一分位悶えてたのもウケるw」

「にしても……まさか、あの城ヶ崎レンノスケがヴァルキューレ生に成るなんて誰が予想したかね」

「本当に不思議だよねー、聞くにヴァルキューレの人間が空腹のレンノスケ先輩に食事を提供して、それが切っ掛けでレンノスケ先輩は警察に成ったとか……」

「誰なんだろーね?噂では生活安全局の子って聞いたけど」

「マジ?あの生活安全局?」

「うん」

「どうなんだか……ま、今はそれよりもこの犯罪者共を矯正局まで運ぶとするかー」

「そうーだねー」

「はぁ、引き止めて助手席に乗せてお話すれば良かったぁ」

 

 

 

そんな、他愛ない話をするヴァルキューレの生徒達であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ミレニアム校門前、8時50分……。

 

 

 

 

 

 

「────あ!おーい!こっちだよー!」

「む……もう待っていたのか、モモイ」

 

 

 

残り10分で朝の9時を回る頃、ミレニアムの校門前にて一人の少女が意気揚々と一人の人物を待っていた。

 

そして、一際大きな体躯で歩き、真っすぐに此方へと向かってくる人影をモモイが見て確認すると、其の人こそ今日の予定の人物だった。

 

正体は城ヶ崎レンノスケ。昨日、D.U.近郊にて営業しているゲームショップで不良に絡まれたモモイをレンノスケは救い、そのまま流れでゲームを遊ぶ約束を取ったのだ。

 

モモイの呼び声に、レンノスケは直ぐに反応。足早でモモイへと近づく。

 

 

 

「おはようレンノスケ先輩!」

「おはようモモイ。昨日ぶりだな……コレ、差し入れの菓子とジュースだ」

「わっ!いいの!?やったー!気が利くじゃーん!」

「喜んで貰えて良かった。あ、コレは俺が目的地まで持ってくから大丈夫だぞ。それで……確か、ミレニアムの校内に入る話だったよな?」

「うん!私達の部室、【ゲーム開発部】で今日は遊ぶからね!助けて7くれた御礼も兼ねて今日は私達が沢山ゲームの魅力を伝えるよ!」

「そうか、それは楽しみだ。俺もゲームに興味はあったから嬉しいよ────……ん」

 

 

 

二人はモモトークで粗方の予定の話はしていた。

 

9時にミレニアムの校門前に集合、そのままモモイの案内の元、ゲーム開発部の部室に向かう。

そして、そのままレンノスケにテレビゲームをさせる感じだ。

 

しかし、レンノスケは目立つ。既に校門前ではレンノスケが周囲の視線を一斉に受けている。

 

筋骨隆々、身長が2m近いのもあり、その存在感は圧巻。

 

 

……しかし、また感じる。

 

他のミレニアム製とは違う、嫌な視線。まるで監視をする様な、舐め回す様に己を見つめる存在が居る。

近くはない。それなりの距離で見ている。

 

 

 

「ん?どうかしたの?レンノスケ先輩」

「……いいや、何でもねぇ」

「そう?じゃあ早速案内するね!着いてきて!」

 

 

 

辺りを見渡すレンノスケに、モモイがどうしたのか問う。

 

これから遊ぶと云うのに、モモイに心配を掛けてしまうのは良くない。レンノスケは自然と誤魔化し、ふっと微笑む。

 

 

 

ミレニアム校内に入る事、数分。モモイが先頭に立って進み、その後ろをレンノスケが着いていく。歩く速度を合わせるのはキリノやアイラで鍛えられているレンノスケはモモイのペースに合わせその小柄な背中を見ながら進む。

 

ミレニアムの生徒と通り過ぎる度に目で追われ、不思議、と云う様な視線を頂く。正直この視線にも慣れたもんだが、未だに少しムズムズしてしまう。

 

そうして、歩く事数分………レンノスケがハッと思い出し、モモイにある事を問う。

 

 

 

「モモイ、一応聞くが俺が此処に来ることは誰かに言ったりしてるか?」

「え?ううん、してないよ?」

「む??」

「へ?」

「だ……誰にも、言っていないのか?」

「え、うん」

「すぅ(深呼吸)………あー……俺が言うのも何だが、俺はこれでもまぁまぁな立ち位置の人間なんだが、それは知っているよな?」

「そりゃあね!城ヶ崎レンノスケと云えば【裏社会”最強”の怪物】って中二病心全開の異名を持っている人だもん!それに、凄く強い人なんでしょ?」

「あ、あぁ、まぁ……モモイが知っている情報は、それだけなのか?」

「え?うん!」

「……そうか」

 

 

 

レンノスケはこの後の展開が少し読めてしまった。

 

まさか、モモイが己を確りと認知していないとは……全く自慢ではないが、これでも己は名の知れた人間なんだと嫌になる程教えられたから、少し驚きだった。新鮮な気持ちにはなれたが。

 

しかし、そうなると己の来訪はユウカや”ノア”、ネルに”ヒマリ”や”リオ”と云ったミレニアムの上層部には知られていないと云う事。

レンノスケでも分かる、流石に良いのだろうかと……しかし。

 

 

 

「まぁ考えるだけ無駄か。そん時はそん時の俺に任せよう……すまない、大丈夫だ。案内頼む」

「よく分かんないけど、分かった!もう直ぐ其処だから着いて来て!」

 

 

 

モモイとレンノスケ、互いにバカである。

 

後の事は深く考えず、己達が今している事の重大さを確り理解していない。

 

これが、後々……大騒ぎを起こす事に為るとも知らないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

▲ゲーム開発部、部室。

 

 

 

 

 

「────お姉ちゃん、誰を連れて来るんだろう」

 

 

 

カチカチ……と、プレステのコントローラーを握り指を動かす音の空間の中に、そんな呟きが漏れる。

 

その正体は、モモイの双子の姉である『才羽ミドリ』だ。姉であるモモイとは対照的に落ち着ている雰囲気を醸し出し、桃色が目立つのがモモイで、ミドリは名の通り緑色が目立つ子だ。

 

ミドリは昨日から何やら様子が妙なモモイを気にしていたが、また変な事を企んでいるのだろう、そう思い特に聞く事もしないで居たのだが、今日学校に着くなりモモイは『私は少し用事があるから先に行ってて!お客さんが来るから、部屋も少しだけ綺麗にお願いねー!』と、そう告げたまま校門に残ったのだ。

 

昨日様子が可笑しかったのはそう云う事かと、納得はしたは良いが、肝心の人物が分からない。

 

 

 

「ん?ミドリ、今日は誰かが来るのですか?」

「そうみたいだよ。お姉ちゃんはいつも突然だから、もう……まぁ部屋はこれ位綺麗にすれば大丈夫でしょ」

「成程!どうりで今日は部屋が少し綺麗に見えたのですね!」

「そう言う事。あっ、”アリス”ちゃん、ごめん何だけどこのカセットあそこの棚に置いて置いてくれない?今ちょっと、手が離せなくって……」

「連勝中ですか?分かりました!アリスにお任せください!」

「ごめんね、ありがとう」

 

 

 

元気に承諾し、床に置きっぱだったゲームのカセットを拾って棚に向かって歩く少女、その名も『天童アリス』。

 

この子は少し特殊な子で、先ず、その肉体は機械で出来ている。

ミレニアムの廃墟にて発見された少女……謎が多いが、モモイ達ゲーム開発部とシャーレの先生がアリスを連れて、今ではミレニアムの生徒の一員として、ゲーム開発部の部員として活動している。

 

 

 

「え、ミドリ、今日誰か来るの……?」

「そうみたい。知ったのついさっきだから、あ……そっか、”ユズ”ちゃんはどうしよっか」

「わ、わたし、ロッカーの中で待機してる、から……み、ミドリ達は、その誰かさんと遊んで、ほしい……」

「分かった。余り無理はしないでね、”ユズ”ちゃん」

「う、うん……」

 

 

 

それだけ告げ、部室内のロッカーへと入る小柄な少女。

 

その子の名は『花岡ユズ』。ゲーム開発部の部長である。

 

人と話す事が非常に苦手な生徒で、外出する事も滅多に無い。ゲーム開発部の部内、主にロッカーの中で一日を過ごす事が多い。

しかし、ゲームに対する情熱は並大抵のモノではない。プレイや制作に掛ける想いは人一倍強い。

 

 

 

”ガチャッ”

 

 

 

そうこうしてる間に、部室のドアが開かれる。

 

ミドリが流し目で、アリスが棚付近から確認する。

 

そこには、モモイが居た。

 

 

 

「ただいまー!ごめんちょっと遅れちゃった」

「おかえりお姉ちゃん。全然時間は大丈夫だけど、一体誰を連れて………えッ」

「おかえりです!モモイ!……ん?」

 

 

 

ミドリとアリスの視線の先、モモイの後ろ側、其処には……誰もが見た事がある顔が在った。

 

左側の顔に大きく残る裂傷の傷跡、背が非常に高く筋肉が凄まじい肉体、その場に佇むだけで足が竦んでしまいそうな程の圧力……そう、其処には、モモイの後ろには。

 

 

 

「む、モモイ、此処がお前の部室か?」

「そうだよ!ささっ!入って入ってー!」

「む……じゃあ、失礼する」

 

 

 

彼の怪物────徐が先レンノスケが居るのだから。

 

 

 

「え……えぇぇぇぇぇっっ!!??」

「わぁ!?び、吃驚した!急にどうしたのミドリ!?」

 

 

 

ミドリがレンノスケの登場に絶叫し、指を差して驚きを隠せ無い。

 

それもそうだろう、有名人も有名人。裏社会で名を馳せ、そしてキヴォトス全土でその恐ろしさ、その異常さ、その狂った戦闘力で震撼させ続けた男が、今、目の前に居るのだから。

 

驚き、それと同時に、恐怖がミドリを襲う。

 

何故こんな場所に?どうして姉であるモモイが先導して連れて来ている?色々と聞きたい事で一杯だが、先ずは……事実の確認が大事だった。

 

 

「ちょっ!ちょ、え、えぇぇ!?うっそ!も、もしかしなくても、あ、貴方ってまさか!あの城ヶ崎レンノスケ!?で、ですか!?」

「む?あぁ、如何にも、俺は城ヶ崎レンノスケだ。そうか、お前は知っていたか……本当に似てるな」

「え……えぇぇぇ!!?どどd、どうして!?どうして此処に!?お姉ちゃん!?」

「あれ?言ってなかったっけ?昨日私ゲームショップで不良の人達に絡まれちゃってさ~、そんな時にレン先輩に助けて貰ってさ。色々と話したら、レン先輩ゲーム好きなのにゲームをした事が無い異端だったんだよ!だから御礼も兼ねて、レン先輩にはゲームをして貰ってハマってほしくって連れて来たんだー!」

「ぁ、ぁ、あ…………」

 

 

 

ミドリは頭を抱えた、モモイの馬鹿さ加減に、警戒心の無さに……。

 

幾ら警察に成ったとしても、相手はあの城ヶ崎レンノスケだ。以前までは【裏社会最悪の怪物】と謳われ、世を震えさせ続けた恐ろしい人物だ。

よくない噂は聞く。何なら、それしか出て来ないだろう……そんな人物を、モモイは何の連絡も無しで、なんか共通の友達を連れて来た様な感じで紹介してきたのだ。

 

 

 

「………」

「ぬ……お前は」

「……貴方、は?」

 

 

 

ふと、レンノスケはアリスの視線が目に入る。

 

見れば、眼を見開いて己を見ている。其処には、恐怖……ではなく、何処か『共通の者』をみるような雰囲気だった。

 

レンノスケが呟くと、アリスが問うてくる。

 

 

 

「俺?さっきも言ったが、俺は────」

「────()()、ですか?」

「え?」

 

 

 

自己紹介の事か、そう思ったレンノスケはもう一度名前を言おうとした瞬間……アリスの言葉によってそれは遮れられる。

 

”英雄ですか?”

 

言うに、レンノスケとアリスはこれが初対面だ。面識なんてない赤の他人。しかし二人の間には、例え様の無い何かかが有った。

 

 

 

「英雄?いや、俺は英雄なんて柄じゃないが……警察ではある」

「警察……英雄では、ないんですか?」

「あ、あぁ。その、なんだ?英雄ってのは……よく言われんのは怪物だが」

「怪物?いえ、アリス、貴方は怪物ではなく英雄だと思います。何故でしょう、アリスと同じ勇者に近い何かを、貴方からは凄く感じます」

「そうか?まぁ何でもいいが……んで、お前はアリスで良いのか?名前」

「名前ですか?はい!アリスは天童アリスって言います!宜しくお願いします!『英雄レンノスケ』さん!」

「だから俺は英雄じゃないんだが、まぁいい。宜しくな、あー……『勇者アリス』…でいいか?」

「ッッ!!!はいっ!」

 

 

 

レンノスケがそう告げた瞬間、アリスが目をキラキラと輝かせ、とびっきりの笑顔で頷く。

 

 

 

「あはは!何だかアリスちゃんと馬が合いそうで良かった!ほら、此処で話すのも何だし、其処のソファーに座りなよ!」

「む、あぁ。悪いな……じゃあ、お言葉に甘えさせて貰う。いいか?あーっと……才羽、ミドリ?」

「あ、ミドリで大丈夫です。えっと……はい、その事でしたら、どうぞ中に入って下さい」

 

 

 

モモイやアリスが既に懐きつつある現状に、ミドリは少し気を落ち着かせる。

 

大物、それも超が付く程の男が突如として部室に来た時は肝が冷えッ冷えになったが、ニュースで見たようにレンノスケはもうヴァルキューレ、つまり正義側に立って居る。

見た目は怖いが、自分達を見つめる瞳には確かな温かさと優しさがあるとミドリは気付いた。警戒はしなくても、良いのかもしれない。そう思う程、レンノスケからは何の邪も感じなかった。

 

ミドリはレンノスケをソファーの上に座らせ、モモイはレンノスケからお菓子とジュースが入った袋を手渡しされそのままテーブルの上に乗せる。アリスは足早に棚の中に在る紙コップを持ってくる。

 

 

 

「えっと、先程お姉ちゃんから聞いた事で、お聞きしたい事があるのですが……不良に絡まれたところを助けたと云うのは、本当ですか?」

「あぁ、本当だ。ゲームショップの中でモモイと不良共がぶつかって、多々一を良い事に不良共はモモイに無理難題を要求してきてな……まぁ、何とかなったって感じだ」

「本当に助かったんだよ!ありがとうね!レン先輩!」

「私からも、本当にありがとうございますレンノスケさん。お姉ちゃんを助けて頂いて」

「いいさ、警察として当然だしな。それに、今日こうしてゲームをさせて頂けるんだ、俺の方がありがとうだ」

 

 

 

そう言うレンノスケの瞳は、表情は……何処かワクワクした様子で、青年と云うよりも少年の顔に成っていた。

 

レンノスケはゲームが好きだが、げーうをした事が無い人間だ。

男の子として、ゲームは履修しておきたい事だが、環境の事もあって中々手が付けられなかったのが事実。キリノも自らする子ではないし、先生はやっている所は見ていたが、最近はフィギュアやプラモデルに熱を入れているので、ゲームと云うモノをする機会が無かったのだ。

 

 

 

「とは言っても、うーん……初心者におすすめのゲームって何が良いかな?」

「王道だったらマルオやキャービィ、格ゲーだったら大乱暴もいいけど」

「アリスはウッキーコングもアリだと思います!それかRPGとか!」

「へぇ、色々あるんだなー……あ、なぁ。そこのロッカーに隠れている奴はどれがいいと思う?」

 

 

 

”ガタンッ!”

 

 

 

ロッカーが揺れる。

 

カセットを広げ、何をしようか悩んでいる3名を前にレンノスケは呼びかける。

その事にモモイとミドリは驚愕の表情を作る。が、レンノスケは聞こえてなかったのかと勘違いをし、もう一度呼びかける。

 

 

 

「む?あれ、聞こえなかったか?」

「あ、あーちょっと待ってレン先輩!」

「す、すみません。あそこのロッカーに居る子は、その……人見知りで、レンノスケさんの様な初対面の人と話すのが苦手でして」

「む、そうだったか。それはすまない事をしたな……すまん、えっと……」

「ユズです!UZQeenです!とっても強いんですよ!ユズは!」

「ユズか。まぁ、人と話すのって結構ムズイもんな……いつか、話せることを願っている」

「…………」

「ねぇミドリ。なんでレン先輩ユズがあそこに居るって分かったのかな?」

「さ、さぁ……気配的な?」

「まっさかー!」

「英雄レンノスケ!最初はこれとかどうですか?」

「マルオか、俺でも知ってる名作だな。じゃあ、それをしよう、勇者アリス」

「はい!」

 

 

 

そんなこんなで、ゲーム開発部と怪物によるゲーム時間(タイム)が開催された。

 

その時点で、ミレニアムでは……レンノスケがミレニアム校内に入っていると云う緊急事態も、知らされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”「────城ヶ崎レンノスケがミレニアムの校内に進入したぁ!?」”

「はい、間違いないみたいですよ」

 

 

 

ミレニアム、セミナー室。

 

其処で一際大きな絶叫が響く渡る。叫んだのはセミナーの会計を担当している『早瀬ユウカ』と呼び出されたネルを始めとした【C&C】の面々である『角楯カリン』、『室笠アカネ』、『一ノ瀬アスナ』だ。

 

 

ネルの調査もあり、レンノスケが己達に牙を向く様な人物ではないと分かっても、今迄の大事件や必死の捜索や情報網にも引っ掛からなかった存在が、今こうしてミレニアムの中に居ると云う事実は中々落ち着かない。

 

ネルは既に何回かあっているからか、驚きはすたものの、特段なにもしないだろうという信頼はあった。だが、他のメンバーは冷や汗を流し戦慄する。過去の記憶がまだ新しいからだ。

 

アスナはその情報を教えた『生塩ノア』の前に出て、心の底から本当かどうかの問いを投げる。

 

 

 

「えー!?あのおっきな男の子が来てるのー!?」

「はい、本当です。【ヴェリタス】によりますと、これが校門前で突如現れた城ヶ崎レンノスケさんの動画です」

「どれどれ……わ!本当に来てるじゃない!?」

「あの野郎、来る時は連絡しろって言ったのによォ!」

「これが、あの怪物……」

「動画越しでも覇気が伝わるな……」

「おー!結構かわいい顔してるんだねー!」

「あ、アスナ先輩?」

 

 

 

ノアはタブレットを操作し、ユウカとC&Cのメンバーに証拠を見せる。

 

疑っていた訳ではないが、その動画を見て確信した。レンノスケは確かにこのミレニアムに居ると云う事を。

 

レンノスケの来訪に、面々は渋い顔を作る。

 

だが問題はその事ではなく、レンノスケと仲良さそうに話す人物だ。

 

 

 

「ん?………はぁぁ!?も、モモイ!?」

「おいおい、んであのチビとアイツが?面識なんてあったかァ?」

「そこは現在ヴェリタスが調査中ですが、モモイちゃんはどうやら城ヶ崎レンノスケさんを連れ、今はゲーム開発部の部室に居るみたいですね」

「ッ!」

「あ、おい!」

「ユウカ!待ちなさい!」

 

 

 

薄々、レンノスケが部室に居る事に気づいてはいた。だが、それが確信すれば身体が勝手に動いていた。

 

分かっている。ネルの調査、カンナとの連絡でレンノスケの危険性は無いと云う事を。

 

だが、それでも怖い物は怖いのだ。

それに、レンノスケの影響力を考えれば、この事は他校から見ればミレニアムと怪物が何か企んでいる、そう捉えられる可能性も無くはない。政治的な問題に発展すれば、正直面倒だ。

 

 

ユウカが部室へと走って向かう。その後ろ姿をC&Cが追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……んっ」

「ふぅ、ったく。急に走り出すなよ」

「ユウカ、心配なのは分かりますが、城ヶ崎レンノスケがモモイちゃん達をどうこうするのは考えられない話です。それは貴女も分かっているでしょう?」

「分かってるわよ、それ、位っ……コッチはコッチで、色々と心配なのよ」

 

 

 

ネルとアカネの言葉を受け取るも、その中身は変わらない。

 

ユウカはゲーム開発部の子達を妹の様に接してきた。厳しくも優しく、成長を見守って来た。

 

故に、心配なのだ。これは、どうしようもない気持ち。

 

そうして、走る事数分。ユウカ達はゲーム開発部の部室のドア前まで来た。

 

 

 

「……失礼するわよ、貴女達!」

 

 

 

ユウカはノックをせず、そのままダイレクトに部室内へと入る。

 

そして……その中で行われていた光景に、ユウカは言葉を失った。

 

 

 

 

 

 

 

「────レン先輩!喰らえっ!」

「あ、ちょっ、待てお前っ、あぁ!テメェ!そこで赤甲羅は人道に反してるだろ!」

「英雄レンノスケ!アリスのパクパク嚙みつき攻撃を受けて下さい!」

「や、やめろぉぉ!!あー!勇者アリスゥ!お前コラぁ!あヤバい!めっちゃ抜かされてる!」

「ぷっ!ふふふ!あ、私1位だ」

「アリスは3位です!対アリです!」

「くっ!せめて”好敵手モモイ”には勝つ!喰らえ!」

「あー!ま、待って!なにそのエイム!?ピンポイントでバナナ当てられたんだけど!?」

「くはっははー!残念だったな好敵手モモイ!これで俺の勝ちd……あ!ヤバい操作ミスって崖に落ちた!」

「油断するからだよー!はい、私8位ー!」

「くそー!俺また最下位かよ!これで4回連続だ……1位だったのに最後の最後で全員に抜かされた……悔しいな結構」

「あはは、次がありますよ。それとお姉ちゃんの8位も別にドヤれる順位じゃないけどね」

「うるさい!」

「レンノスケ!次はこのコースを走ります!」

「あん?…って何だ此処、虹の上じゃねーか、スゲェな」

「此処は結構難しいコースなので、レンノスケさんはとりあえず落ちない様に頑張れば良い順位を狙えるかもです」

「成程な……おい好敵手モモイ、次こそお前を抜かすぜ」

「へへーん!やれるもんならやってみな!私も此処苦手だけどね!」

 

 

 

”ワーワー、ワイワイ……!”

 

 

 

「こ、これは……?」

 

 

 

ユウカ達が入って来た事にも気づかない様子で、ソファーや床に座ってゲームに熱中していた。

 

レンノスケはソファーの右端に座り、テレビにスイッ〇を付け見ながらゲームをし、アリスは何故かレンノスケに肩車をして貰っている形で頭の上に己のスイ〇チ本体を乗せてゲームをし、モモイはソファーに座るレンノスケの太腿を使って膝枕の状態で寝転がりながら己のス〇ッチでゲームし、そしてミドリはソファーに背もたれをした状態で床に座り己のスイッチでゲームをしている。

 

ミドリ以外が想像以上に密着している状態である。

 

 

 

「……ん?なんだ気配が……って、んだよお前等か。知らねぇ奴等もいるみたいだが」

「え?誰か居るの……って、ゆ、ユウカ!?それにネル先輩に、C&Cの皆まで!?」

「わ、凄い人が集まって来てる」

「イベント発生ですか?アリスは勇者なので対処にあたります!」

「み、皆……はぁ、そう、そうよね。レンノスケさんはそんな人じゃないのに……気を張って疑ってしまった自分が恥ずかしいわ」

「ん?ユウカ?どうしたの?」

「何だか凄く疲れてそうだけど……私達に何か用事?」

「ううん、何でもないわ。本当に……ごめん、邪魔しちゃっわね」

「いいえ!全然邪魔なんかじゃありません!ユウカ!ユウカもアリス達と一緒にゲームをしましょう!」

「え?ちょっ!?ちょっとアリスちゃん!?」

 

 

 

ユウカ達の存在に気付いたレンノスケとゲーム開発部はゲームを一時中断し、ユウカ達に近付く。

 

そして、そのままアリスはユウカの手を引っ張って部室の中へと入れる。人がたくさんいるこの空間が、アリスは何かしらのイベントだと思って非常に楽しそうだ。

 

 

レンノスケはそのまま座ったまま、顔だけ向けて面々を見渡す。警戒、警戒、興味、呆れ、怯え……それらを見出しながら見つめる。

 

睨み、とは云わずとも、レンノスケは元々鋭利な眼付きをしているから、何もしていなくともプレッシャーを放ってしまう。

ガン見されたアカネとカリンは息を呑み、冷や汗を掻く。アスナは初めて見る男の生徒に興味津々な素振りを見せる。それを言えば全員そうなのだが、アスナは隠す素振りを見せないのがアレだが。

 

そんな中、ネルがレンノスケに近付いて話しかけて来る。

 

 

 

「よう、城ヶ崎。テメェ来るんなら一言連絡寄越せって言っただろーが」

「あぁ、忘れていた。すまん美甘。流石に今回は言った方が良かったなって俺も思う」

「まぁ別に遊ぶ程度なら良いんだけどよ、オメーは影響力がイカレてっからな。他の自治区の奴等とかに知られたらダルい事に成りかねんから次からは気を付けろよ」

「おう。そうさせて貰うわ」

「……んで?テメェとチビはいつ知り合ったよ?そんな機会なんてあったかァ?」

「それはだな────」

 

 

 

レンノスケはネル、基……ユウカ達にモモイと知り合った経緯を語った。

 

 

 

「そ、そうだったの。城ヶ崎レンノスケさんが、モモイを助けて、それで仲良くなって今の形に……」

「そう言う事!いやー!昨日はヒヤヒヤしたよー!どれも私が欲しいゲームばっかで焦ったなー」

「まぁ何とかなって良かったがな」

「……あ、あの!城ヶ崎レンノスケさん!」

「ん?なん……お、おい」

「この度は、うちのモモイを助けて頂き本当にありがとう御座います!それと……貴方を疑って、誠に申し訳御座いませんでした……」

 

 

 

ユウカが頭を下げ、レンノスケに礼と謝罪を告げる。

 

その事に、モモイは勿論、ミドリやアリス、C&Cの面々や、レンノスケも驚く。

 

 

 

「……どちらも気にするな。おれは警察として責務を全うしたに過ぎん。それに、俺は俺の立場を理解しているから、お前が疑う気持ちはよく分かる。お前この学校のトップ層の人間なんだろ?」

「え?えぇ、まぁ」

「なら簡単に頭を下げない方が良い。お前は何も間違っていないんだ、ドンと胸を張れよ。太腿青髪女」

「そう、ですか。ふふっ、分かりました!ありがとう御座いm………ってちょっと待ちなさい!!今なんて言いました!?」

「ん?ドンと胸を張れ」

「その後ですッッ!!!」

「うおっ、え、えっと……青髪太腿スゴイ女?」

「さっきよりも酷くなってるじゃないですか!?モモイみたいな事を言ってっ!私の太腿は太くありません!」

「別に太いとは言っていない。だが、良い太腿だと俺は思うってだけだ」

「変態ですか貴方は!?警察なんですから少しは自分の発言に自覚をですね!?」

「むぅ……じゃあ名前を教えてくれよ。分からんから特徴で言うしかないんだ」

「特徴で呼ぶ前に普通は名前を聞くものですけどね!?もう!!私はミレニアム所属の『早瀬ユウカ』です!!決してその不愉快な蔑称では無いので!」

「わ、分かったよ早瀬……悪かった」

「分かれば良いんです!!」

 

 

 

レンノスケ、完敗。

 

ソファーの端で怒り心頭の様子でユウカに詰められ、ついタジタジになってしまう。

どうやら己は気の強い女の子や小さく幼い子供たち相手には弱いらしい……レンノスケは心の中でそう呟いた。

 

ユウカは怒りで自分がした事の凄さをまだ自覚をしていないから良いが、他のアリスとモモイ、アスナを除いた他のメンバーはレンノスケの『押しの弱さ』に酷く驚愕してしまう。

 

 

 

「ったく、かの怪物様が随分と甘く成りやがってよォ……」

「甘く、か……そうだな。此処に来て、楽しすぎてか知らないが……俺は甘くなっちまったのかもしれねぇな。お前に注意されても、中々抜け落ちん」

「はぁぁー……最初の頃が懐かしいぜ。あん時は尖りに尖っていやがったのに、今と成っちゃ只のデカい男に成っちまったな」

「……メリハリは付けるさ。オンオフ、切り替えが大事だからな────だから、よッッ!!!」

「ッ!?」

 

 

 

”ブオンッ……ピタッ────”

 

 

 

レンノスケが見下ろしながら色々と告げて来るネルに対し、アッパー目掛けて拳を突き上げる。

無論、寸止めだが、ネルは油断していた事もあり反応が遅れる。当たろうと思えば当たる速度だった。

 

場が一気に緊張状態に陥るが……レンノスケがニヒルな笑みを浮かべて、告げる。

 

 

 

「俺が甘く成り過ぎねぇ内に、偶には俺と模擬戦でもしようぜ美甘。まぁ、お前が俺と同等に戦闘が出来るかが大きな問題だがな?」

 

 

 

”ピクッ”

 

 

 

挑発。

これを真面に受けて、黙っていられるネルではない。

 

 

 

「上等だよオイ……ハハッ!ハハハハッ!!あぁ、やっぱ最高だなテメェ!いつだ!?いつ戦るよ!!えぇ!?」

「落ち着け、そんなん後で互いの予定で合わせれば良いだろう。この戦闘狂が」

「テメェと戦える機会なんざ滅多にねェんだぞ!?モノにしてぇのは当たり前の思考だろうがッ!」

「くははッ!そいつは嬉しい賛美だな。俺としても、お前にはキッチリ勝てそうにないから丁度いい……時間がある時にでも戦ろうぜ。ぶち殺してやる」

「あぁッ!約束だぞおい!あとぶっ殺すのはあたしだ!」

 

 

 

レンノスケの肩をバシバシと叩き、心底嬉しそうにするネル。

 

互いに実力を認めている同士、惹かれ合うモノがあるのか……二人は笑いあって戦う事を楽しみにしている。

 

レンノスケ自身、ヒナやツルギよりも一際リスペクトを標しているネルとの戦闘は待ち遠しい事の様だ。

 

 

 

「な、なんか、このキヴォトスの存亡が脅かされそうな約束事が決まっちゃったんだけど!?」

「城ヶ崎レンノスケ……情報通りの男性の様ですね。部長との相性は最悪にて最高……困った御方達です」

「リーダーと正面から戦おうとしてる人初めて見た……やっぱ色々と可笑しいんだな」

「レンノスケさんって、もっと怖い人なのかと思っていましたが……意外とノリ良いし、面白い人ですね」

「アリス!レンノスケと高みを目指すと約束しました!共にレベルアップを図ります!」

 

 

 

レンノスケに対する印象を言葉にして告げる。

 

第一印象が悪いだけで、レンノスケは話せば気が良い男なのだ。

 

 

 

「えーい!」

「む?むぅぅ!?」

「は!?お、おい!」

 

 

 

そんな中、一人のメイド……アスナがレンノスケの背中にダイブして、天真爛漫な笑みでレンノスケに話しかける。

 

 

 

「ま、な、え?なに?(動揺)」

「ねーねー!レンノスケ君!私とも戦ってよ!私も戦うの大好きだからさ!」

「む?うお、すごっ……あ、あぁ。うん。良いぞ俺は」

「本当?やったー!約束だよ!あ!私”一ノ瀬アスナ”って言うの!これから友達として宜しくね?レンノスケ君!」

「あ、はい。えっと……一ノ瀬」

「一ノ瀬じゃなくってアスナでいーよ!」

「いや、だが」

「アスナって呼んでよー!友達じゃん!ほら、復唱して!」

「あ……アスナ」

「はーい!良く出来たね!じゃあ、これから宜しくねレンノスケ君!」

「は、はいっ……宜しく、頼む」

 

 

 

そして、アスナはレンノスケの背中から離れ、にひひっと笑いながらアカネ達の元へと帰っていく。

 

皆の目がアスナやレンノスケに集中する。流石に凄まじい行動だったから、レンノスケに同情する視線が集まるだけ幸いか。

 

 

 

至近距離で見ていたネルは項垂れるレンノスケを見下ろしながら告げる。

 

 

 

「なぁにデレデレしてんだよ」

「ウルセェ喋んな……仕方ねぇだろ、クソが……」

「おいおい、顔真っ赤だぜ?キリノに言いつけてやろうか?」

「ちょっ、待て。マジ洒落になんねぇって……」

「じょ、冗談だよ……なんか珍しいな?お前ってキリノ以外にもそういう反応するんだな?」

「……いや、多分あの人だけだ。キリノには死んでも言えないけど、アスナさん、俺の好みドストライクなんだよ」

「は、はぁ?……あー、なんか、分かる気がするな」

 

 

 

素の面や笑顔が可愛い、身長が高め、巨乳、ロングヘア―……そして、隠しきれない善性の塊。

色々な差異を除けば、キリノと特徴は合う。

 

これだけだったらアスナ以外にも居るだろうが、特徴的なのはキリノもアスナも犬っぽい所だろう。人懐っこい性格で、元気がいい子に対してレンノスケは特別弱い。

 

 

 

「ま、まぁ、人の好みはあるだろうがよ……事は起こすなよ?」

「当然だろ……だが、お前からもアスナさんには余り密着するなって言っておいてくれ。なぜかアスナさんには強く出れんから頼む」

「けッ!クソ変態が……わーったよ!あたしからも言っといてやる!」

 

 

 

キリノと云う存在が在りながら、アスナにデレデレしているレンノスケに苛立ちを隠せないネル。

 

 

 

「(……ちょっと言葉濁してキリノに伝えてやるか)」

 

 

 

しかし、その心はニヒルな笑みを浮かべていた……。

 

レンノスケ、死のカウントダウンの始まりであった。

 

 

 

「なんだ?いま、なんか俺にとって良からぬ事が起きた気が……」

「さぁな────で、この感じあたし等がお前等のゲームを邪魔しちまった様だが、どうすんだ?テメェはこの後ここに残るのか?」

「うーん、どうするか……1時間も遊ばせて頂いたし、これ以上お邪魔すんのもアレだしなー」

 

 

 

ネルの問いに、レンノスケが少し渋る。

 

疲労とかではなく、謂わば部外者である自分がこれ以上此処に滞在すれば、ゲーム開発部の皆に迷惑を掛けてしまうのではないかと気が引けてしまうのだ。

 

 

 

「……うん、帰るかなー」

「え、えー!?」

「もう帰っちゃうのですか?」

「む?まぁ、これ以上俺が此処に滞在しても迷惑が掛かるだけだろうしな。だが、お前達のお陰で凄く楽しかったのは事実。また来るk」

「あ、あの!」

 

 

 

レンノスケがモモイとミドリにまた遊ぶ約束を済ませようと言を投げていると。

 

 

 

「レンノスケ、帰ってしまうのですか……?」

「ん………」

 

 

 

レンノスケの裾を掴み、まだ遊びたいと言うような、そんな瞳をアリスは見せる。

 

アリス自身、何処か他人とは思えないレンノスケの雰囲気に、そして、レンノスケの人柄に惹かれつつあった。

加えて、まださせたい、共にやりたいゲームがあると云うのにたった1時間で終わりはあんまりだった。

 

 

 

「そうだよレン先輩!まだ一緒にゲームしよーよ!」

「全然迷惑とか感じていないですし、それこそレンノスケさんが宜しければまだ私達と遊んでほしいです。ゲームもまだ一杯ありますしね」

「お前達……いいのか?」

「勿論です!アリス、レンノスケにもっとゲームを楽しんでほしいです!」

「そうそう!ほら!ストリートファイヤーとか冒険系のRPGとか!それか────『テイルズ・サガ・クロニクル』とか!」

 

 

 

”ガタンッ!”

 

 

 

ロッカーが揺れ、少しの静寂が訪れる。

 

『テイルズ・サガ・クロニクル』……それは、色んな意味で有名なゲームである。

 

ロッカーの揺れに気付いた面々が気まずそうな雰囲気になる。続編である2はまだしも、初代の方は……中々、凄まじいモノであるからだ。

 

 

 

「ふむ、何だかよく分からんが、どれも面白そうだな。モモイ達が良いんならもう少し此処でゲームを楽しんでも良いか?」

「はい!」

「そうこなくっちゃ!」

 

 

 

モモイとアリスが朗らかな笑みを浮かべ、喜ぶ。

 

小柄で幼さが抜けない子供には、とことん弱く甘いのがレンノスケだ。段々とロリコンの域に浸かっている。

 

 

 

「美甘も残れよ、一緒にゲームしようぜ」

「あぁ?いいぜ」

「リーダー、勝手にそんな……」

「良いじゃねぇか。最近はこの野郎のお陰で犯罪や依頼の件数も減ってんだ。少し位、な?」

「……はぁ、もう。1時間だけですよ?」

「っしゃあ!」

「なんだ?このメガネのお姉さんは美甘の母ちゃんなのか?」

「はぁ!?んな訳ねぇd」

「そうですよ。私が母です」

「うおぉぉい!!」

「あ、やっぱそうでしたか(敬語)……俺は城ヶ崎レンノスケと云う。宜しく、です」

「オイなに騙されてんだ!なに普通に御挨拶してんだァ!!アカネは後輩だボケェ!テメェと同い年だよッ!」

「え、マジ?確かに母ちゃんにしては若すぎるよな~とは思ってたんだよ。うちのボス犬くらいは老けてなきゃ変だもんな」

「お前、それ間違ってでもカンナの奴に言うなよ?」

「言わねぇよ。拳骨で頭部陥没しちまうわ」

 

 

 

そして、少しの間ユウカとC&Cの面々はその場に留まりゲーム開発部とゲームを楽しんだ。

 

 

 

 

 

▲1時間後。

 

 

 

 

 

「……っしゃ!やっと勝てたな!」

「長かったー!こんなに強かったっけなこのモンスター」

「4人で狩猟してるから、その分モンスター側のHPが上がってるからね」

「レンノスケが2連続で力尽きた時は覚悟しましたね!」

 

 

 

1時間が経ち、ユウカ達が持ち場に戻ってレンノスケとゲーム開発部のみとなった部室は、様々なゲームを楽しんでいた。

 

RPG系、シューティング系、リズム系、ハンティングアクション系など……彼此、休憩は少しだけしては遊び、どんどんとゲームを楽しんでいった。

 

 

 

「次なにするー?」

「時間は……もう2時なんだ」

「早いですね!楽しい時間が過ぎるのは」

「………あ、そうだ。なぁ」

 

 

 

レンノスケが発語し、全員がレンノスケに集中する。

 

何かしたいゲームがあるのだろうか?初めてレンノスケからしたいゲームをリクエストされそうな雰囲気でゴクッと固唾を呑んでしまう。

 

そして、告げられた事は……。

 

 

 

 

 

 

「────『テイルズ・サガ・クロニクル』ってヤツ、やってみたいんだが」

 

 





次回はトップ層のミレニアム組がレンノスケと絡む感じになりそうですね。



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  • 提示版(レンノスケだけど、質問ある?)
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