怪物は、真面目な君に恋をした。   作:カブトムシの相棒

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城ヶ崎レンノスケ〈新〉プロフィール。


身長:201㎝

体重:103㎏



・とある日のレンノスケ



「……あぁ、分かった。現場に座標を送ってくれ、直ぐに発つ」
「レンノスケ、こんな時間にお仕事ですか?」
「あぁ、どうやら美食研究会がまた悪さしたらしいから応援で、な。ちょっとゲヘナまでひとっ走りしてくる。すまないキリノ、最速で終わらせて来るから待っていてくれ」
「はい、分かりました!どうかお気を付けて下さいね?お怪我はダメですからね!」
「ふふ、あぁ勿論だ。帰ったら……あぁ、そうだキリノ。俺キリノの裸エプロンが見たいな~」
「んぐっ!……お、おばかな事を言っていないで、早く行ってください!」
「はーいよ。じゃあ、ちょっくら殲滅しに行ってくるわー」
「もう………裸エプロン、ですか……」




これ、使えるな……(名案)



では、本編です。


数年越しの再開。貴方は、私を覚えていますか?

 

 

 

 

 

 

 

────私には、ずっと追いかけている人が居た。

 

私がミレニアムに入学、1年生に成って少し経った時……彼は頭角を現した。

 

 

【ブラックマーケット】……チンピラや悪徳企業が屯する、連邦生徒会の手が届けない悪の巣窟。

 

 

彼は、其処で頭角を現したのだ。

 

 

最初こそ一時的な名上がりだと思っていた。私のみならず、ヴァルキューレや各自治区の治安維持組織もそうだと思っていた。

ブラックマーケットはそういう者が多い。しかしいずれ捕まる。

大きな事件を起こせば、ヴァルキューレのみならず悪徳企業の目にも付く。それは、狙われる組織が多いという事。

 

 

────だが、彼は一向に捕まる気配が無かった。

 

 

彼の起こす事件は段々とエスカレートしていった。

 

裏社会で名を馳せる巨大組織の壊滅、麻薬密売の阻止かつ殲滅。

幼子を誘拐し売買する組織の壊滅。仁義外れのマフィアや極道との大喧嘩の末の壊滅。

 

これだけ言ったら、悪を滅する存在だと認識されるだろう。それだけなら、全く問題なかった。

……そういう訳には、いかない理由があったのだ。

 

 

────……殺しているのだ、その組織の人間、全てを。

 

 

現場に残される組織の人間の首、胴体、四肢、臓器……無惨かつ残酷。

 

凡そ、同じ人間が犯した事とは思えぬ惨状。

 

斬撃、拳、銃弾……死体には痕が残る程の傷があったらしい。

まるで、その場の感情に身を任せたかのような、荒々しい攻撃だったと予測された。

 

 

終いにはカイザーとの抗争も取る命知らず。

その全てに生還している。

 

此処からだろうか、彼がキヴォトス全土で【恐怖の象徴】として語られたのは。

 

あの”連邦生徒会長”が『全治安維持組織に捜索兼捕縛命令』を出した……異端の存在。

 

彼はモノの数ヶ月で、あのブラックマーケットの頂点に君臨したのだ。

 

 

最早、ヴァルキューレだけでは無理難題な話だった、だから、ゲヘナとトリニティ、そしてミレニアムが各学園の諜報部や情報部、私たちで言えばヴェリタスを総動員して捜索にあたった。

 

 

結論から言えば、見つかりはした。あんな大胆に街堂や戦闘を行っているのだ、存在を確認する事は容易だった。

 

問題なのはその後だ。見つけた途端、いつの間にか破壊されるドローン。

 

街道のカメラにもハックして、尚、原理は分からないが何故か見られていると発覚され破壊される。

 

 

そして、彼はまた事件を起こす。悪を征す悪、しかしどれもやり過ぎな場面が大きい。

 

当時のリオやコタマ、ウタハも、半分諦めモードに入っていた。彼に関わるべきではないと、そんな事を言っていた気がする。

 

でも、私とヒマリ、そしてネルは諦めていなかった。必ず見つける、当時の先輩方に止められても、諦める事は出来なかった。

 

……きっと、悔しかったんだと思う。私にもハッカーとしてそれなりのプライドはある。

私はいつの間にか自分の足でブラックマーケットに足を運んでいた。

勿論、護衛としてネルが、バックサポートとしてヒマリが手を貸してくれた。

 

私が現場に赴く事は余りなかった。それ故、ネルからは若干不思議がられていた気がする。

でも、幾ら電子機器で捜索しても破壊される始末なのだ、最早己の足で確認に行くまで。

 

 

 

……しかし、当時の私はまだ分かっていなかった。

 

 

ブラックマーケット、その恐ろしさを。

 

 

あそこは、数年前と比べたら圧倒的に治安が悪化していた。

城ヶ崎レンノスケ、当時彼には〈4億8000万〉の懸賞金が懸けられてい居た。

 

それのせいか、ブラックマーケットの街道を通り過ぎる度、周囲から溢れ出る殺意が気になって仕方が無かった。

 

既に彼はその域にまでいっていた。彼を捕らえるだけで約5億のお金が渡される何て聞いた事が無い。

 

因みにその懸賞金はヴァルキューレの提示した懸賞金は含まれていない、完全な裏社会の何処かの組織による不確かな話。だが、信憑性はあった。裏にカイザーが動いていたからだ。

 

 

全員、彼を捕まえるのに必死なのだ。だがそれでも、他の抗争が絶えないという訳ではなかった。

 

 

私はヘルメット団と悪徳組織の抗争に巻き込まれてしまった。

 

私を護衛していたネルでさえ、あの勢いには手を焼いていた。倒せば倒す程湧いてくる敵、ネルは私を避難させた後、悪徳組織の殲滅に単独で向かった。

 

隠れ、身を潜めた。認識が甘かった……こんなにも危険な場所であの城ヶ崎レンノスケと云う人間は頂点に君臨しているのかと、想像できなかった。

 

 

ヒマリなどに連絡し、人員を寄越そうとした。だがそれは……ヘルメット団の一人に見つかってしまったから阻止されてしまった。

 

 

団員は私を恐喝し、暴れまくっているネルに対する人質にしようとしてきた。無論私もただでやられる訳にはいかない、多少なりの抵抗は見せた。

 

だが、場数が違った。私は呆気なく制圧されてしまった。

 

あの時の私には後悔しかなかった。ネル、ヒマリに対する申し訳ない気持ち、先輩の忠告を無視した後悔、そんな想いがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい』

 

 

 

 

 

”バキィッッ!!!”

 

 

 

 

────閃光の様な蹴りが、私を襲う団員のヘルメットに向かって突き刺さった。

 

 

一瞬、頭が真っ白に成って、理解が追い付かなかった。一体何が起きたのか、分からなかった。

 

周りからどよめきの声、怯える声が聞こえる。

 

真昼間の街道、私に差し掛かる太陽の光が影に覆われる。

何かが、私の目の前に居る。顔を上げた。

 

 

其処には……探していた渦中の人物、城ヶ崎レンノスケが居た。

 

 

 

『お前等、パサパサヘルメット団、だな?』

『ひ、ひ、ぇ……な、なんでっ!?!!!』

『クライアントの依頼により、タヌキ建築工業の、護衛依頼を受けているお前等には、此処で力尽きて貰う………殺しはしない、少し、死んでもらうだけだ』

『言ってる事の意味が分からな………ぎゃぁぁぁぁっっ!!!』

 

 

 

瞬間、彼による蹂躙劇が始まった。

 

右手にハンドガン、左手に逆刃にしたポケットナイフを軸に戦闘を行う彼は、正に圧倒的で。

数百人居たヘルメット団は、モノの数分で倒されていった。

 

私は呆然として、腰を抜かしてしまった。動けなかったのだ。

 

そんな私に、戦闘を終えた彼が近づいてきた。あぁ、此処で殺されるのか……そう、思った。

 

 

 

『お前達が、俺を探している事は、知っている』

『へ……え?』

『実際見て、分かった。お前達は、良い奴だ』

 

 

 

情報に聞いていた通りの人物では、なかった。

 

ぺたんと腰を抜かし、戦意が無い私を彼はただジッと見つめ、低く、威圧的な声質で話しかける。

 

 

 

『別に、助けた訳じゃない。勘違い、するなよ』

『あ、いや、でも……』

『喋るな、殺すぞ』

『っ……』

 

 

 

今思えば、本当に怖かったなと思う。

 

初めて見る男の人、頬には痛々しい傷跡、ボサボサの髪、少し痩せているけど野性的でパワフルな戦い方、中々大きい身長……まぁ、怖くない筈がない。

 

でも、私は理解した。彼は私を助けてくれたのだ。

それが、決して気まぐれであっても、私は何故か、その時……嬉しいと思えた。

 

 

 

『────此処は危険だぞ、だから、もう消えろ………チッ、追手が、面倒くさい、皆殺しにするか………おい、俺が、あいつ等をぶち殺している間に、お前は逃げろ。あの、それと、二度と俺を見つけようなんて、思うなよ────………』

『っ!ま、待ってッ……きゃっ!』

 

 

 

”ドヒュンッッ!!!”

 

 

 

それだけ言い残し、彼は走り去って行った。

 

目にも止まらぬ速さ、其処には倒れ伏すヘルメット団と私しか残らなかった。

 

向こうでは悪徳組織を引きつけ殲滅に当たったネルが、戦いを終え此方に向かってくるのが見えた。

 

 

 

『────チヒロッ!!』

 

 

 

焦燥の滲ませる表情で、私の名を呼ぶネル。

 

見れば、少しの傷が有った。

 

 

 

『ッ!おいおいおい、んだよ、コレッ!お前、何処も怪我はねぇよな!?』

『うん、大丈夫……ネルは?』

『あ!?あたしは見ての通りピンピンだよ!全員シメてやったッ!……いや、そんな事より、これ、この惨状はまさか……ッ!』

『そう、ネルの予想通り、見つけたよ────城ヶ崎レンノスケ』

 

 

 

私がそう言うと、ネルの顔が段々と曇り始める。

 

それも、そうだろう。今私達の目の前に広がる惨状は、正に血の海と化しているのだから。

 

ネルが数秒考えこみ、そして、一言。

 

 

 

『────どうだった?奴は』

 

 

 

その問いに、私は。

 

 

 

 

 

 

『────カッコ、よかった……かも』

『……はぁ?』

 

 

 

そんな事を、言ってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────そして、話は戻り……。

 

 

 

 

 

「────今からレンノスケさんに『色仕掛け』をして来て下さいっ♪」

「────は?」

 

 

 

ヒマリが唐突に、素っ頓狂も甚だしい事を言いだす。

 

チヒロは勿論、ヴェリタスの面々は目を点とする。当然だろう、この白いハッカーは一体何を言っているのだと、皆がそう思う。

 

 

 

「……じゃあ、帰って、どうぞ」

「ちょっ!チーちゃん!?どうして私の車椅子を出口まで押しっ……ま、待って下さい!ちょっと説明させて下さいーー!」

 

 

 

見れば額に青筋を複数立て怒りを露にするチヒロがヒマリを追い出そうとする。

 

手をブンブンと降って抵抗するヒマリ、まぁ、話は聞いてやらんでもないと思ったチヒロは、少しの葛藤の末、hマリの話を聞く姿勢に成る。

 

他のヴェリタスの面々もヒマリの発言の意図を聞きたく、ヒマリの言葉を待つ。

 

 

 

「はぁ、はぁ……危ない所でした。チーちゃん?もう少し冷静さをですね?」

「ヒマリが変な事言わなければもう少し冷静に成れたと思うんだけどね?で、さっきの発言は何の意図があっての発言な訳?」

「私も気になります」

「私も」

「あたしもー!」

「うふふ……えぇ、まぁ皆さん気にはなりますよね。では、お伝えするとしましょう」

 

 

 

ヒマリがすっと真剣な眼差しを作り、そして……発語する。

 

 

 

「先ず、チーちゃん。貴女は彼の事が好きです」

「んぐっ!?ち、違う!どうしてそんな話になる訳!?」

「いいえ、もうこの際ハッキリしましょう……チーちゃんがあの日、初めて彼と接触した時から、貴女はずっと彼を追い掛けていましたね」

「そ、それは……そうだけど」

「当時の先輩方やリオが捜索や接触を恐れ、半分諦めモードに入っていた中、チーちゃんとネルは諦めなかった。ネルは犯罪を止める為、そして戦いたかったから……まぁこれに関しては、他の自治区の治安維持組織の長たちは胸の内に秘めていた戦闘意欲なので無しとしますが、チーちゃん?貴女は違った」

「ッ……」

 

 

 

ネル、ヒナ、ツルギと云った各自治区の最強戦力はそれぞれ城ヶ崎レンノスケに対して【戦闘意欲】があった。特にネルはその思いが強かった、故に、彼女は暇があればブラックマーケットに出向いては捜索に当たっていたのだ。結局、見つける事はなかったのだが。

 

しかし、チヒロはまた別の想いがあった。それは……。

 

 

 

「後輩の前で少し恥ずかしい気持ちもあるでしょうが、皆さんとっくに気付いているので宣言いたしましょう。チーちゃん、貴女は彼に対し────”恋”をしているのです」

「っっ……~~~~~っ!!!」

 

 

 

ヒマリの宣告、それは、公開処刑に近かった。

どうして後輩の前でこんな仕打ちを受けなければいけないのだ。と、少しヒマリを睨んで恨む。

 

 

 

「うん、まぁそれは知ってるんだけどさ」

「暇さえあれば城ヶ崎レンノスケの事を追っていたしねー」

「副部長は意外と乙女ですから、分かり易いのですよね」

「あ、あんた達っ!」

 

 

 

コタマ、後輩たちの反応を聞いて怒るチヒロ。

 

これでは面子もクソもない……チヒロはもう一度ヒマリを睨む。

 

 

 

「まぁまぁ、そう睨まないで下さいな。それで本題なのですが、色仕掛けとは言いましたがそういう事をしなくって良いんです………チーちゃん、コレを見て下さい」

「もう、何なの今度はッ!……………ん?」

 

 

 

ヒマリが二つの端末を操作し、画面を見せる。

 

其処には………衝撃的な内容が有った。

 

 

 

「こ、これ……もしかして彼の?」

「えぇ、レンノスケさんの『スマホの内部内容』です」

”「ぶぅぅぅぅ!!!」”

 

 

 

そう、レンノスケのスマホの内部、つまりホーム画面だ。

 

どうして彼のスマホだと分かったのか、それはもう一つの端末に映る人。

 

 

 

『あれ?なんか画面動かなくなっちゃった……どうしよう』

 

 

 

レンノスケがミレニアムの廊下で一人、立ち尽くしてスマホと睨めっこしている様子が映し出されていたからだ。

 

全員がその姿に釘付けになる。これはもしかしなくとも、ヒマリがハッキングしたと確信したからだ。

 

 

 

「ちょっ、ヒマリあんた何やってんの!?」

「彼のスマホをハッキングしました☆」

「おばか!どうしてそんな事をしたのよ!彼困ってるじゃない!」

「落ち着いて下さいチーちゃん。良いですか?これはとんでもない事なのですよ?」

「はぁ!?ヒマリ!あんたさっきから何が言いたいの!」

「まぁまぁ副部長、少し落ち着いて下さい」

「コタマ!あんたまたシャーレに盗聴器仕掛けたでしょ!いい加減にしないと怒るよ!」

「きゅ、急に矛先がこっちに向いてしまいました……」

「ちーちゃん、実はなのですが……レンノスケさんのスマホのセキュリティ関連の件でお話したい事があるのです」

 

 

 

怒り狂うチヒロを皆が宥め、ヒマリが告げる。

 

 

 

「────実は彼、スマホにパスワードを掛けていなかったのですよ」

 

 

 

”ピクッ”

 

 

 

「……なんですって?」

 

 

 

チヒロのホワイトハッカーとしての血、騒ぐ。

 

 

 

「チーちゃん、これマジです。ほら、彼のスマホをもう一度ハックしてみましょう」

 

 

 

そう言うと、ヒマリは己の特殊な携帯で操作する。

 

そして、映し出されるレンノスケにも動きが有った。

 

 

 

『んー……お?お!動いたz……あ、あれ?なんでだ!?また動かない……や、やばい、壊したか?コレ……』

「……え?」

「え、もうハックしたのヒマリ部長?」

「ま、まさか本当に!?」

「…………へぇ」

 

 

 

ヒマリは、数秒でレンノスケのスマホを解き、そしてもう一度ハッキングした。

 

当のレンノスケは何が何だか分かっていない様子で、焦りに焦っている。

映し出される赤い警告の文字、それを見たスマホ初心者のレンノスケはポチポチと電源や画面をタップしているが、主導権は完全にヒマリが持っているので何も出来ずにいた。

 

 

 

「この通り、彼のスマホにはウイルスバスターも無ければ、まさかの”パスワード”も掛けていないという、余りにも警戒心がない、ネットリテラシー皆無の男の子だったのですよ」

 

 

 

ヒマリの言動に、コタマ、マキ、ハレは驚愕の表情を作る。

 

ウイルスバスターは、まぁ、分からんでもない。入れない人はまだ居るから。

しかしパスワードも掛けていないのは流石に擁護のしようがない。最早、個人情報を盗んでくれと言っている様なモノだ。(この世界基準)

 

 

 

「……ちょっと、行ってくる」

 

 

 

この有様、チヒロが黙っている筈も無く。

 

彼女はズンズンと脚を出口に運び、進む。

 

 

 

「い、行くって、本当に会いに行くの部長!?」

「勿論、そのつもり」

「あの城ヶ崎レンノスケに対する気持ちを拗らせに拗らせた副部長が、自らの意思で会いに行くなんて……」

「信じられない……これ、夢?」

「うぅぅ!!彼にはもう既に恋人が居ると知って尚、彼の為に動こうとするなんて…っ!あたし、感動で涙が溢れて止まらないよぉぉ!」

「ふんっ!」

 

 

 

”ゴン!ゴン!ゴン!”

 

 

 

「あいた!」

「あう!」

「うび!」

 

 

 

舐めた口を聞く後輩達とコタマに拳骨を喰らわせるチヒロ。

 

そんな、中々やる気のあるチヒロを見たヒマリは、口角を上げて問う。

 

 

 

「ここまで焚き付けておいて言うのもアレですが、宜しいのですか?チーちゃん」

「……なにが」

「先程マキが言っていましたが、貴女も気付いている筈です。彼にはもう『心に決めた想い人』がいる事くらい」

「………」

 

 

 

ヒマリの問いに、チヒロは俯く。

 

理解している。彼には、もう愛している人が居る。

 

理解している。己が立つ土俵など、最早存在しない事くらい。

 

理解している。この想いは……報われない事くらい。

 

 

 

「分かってるよ、これは只のお節介。まさか彼が此処までだなんて思わなかったから、ちょっと手助けするだけ。今の彼、他のミレニアム生から怖がられてるから誰も助けてくれない。このままじゃ迷子……いや、もう迷子か。可哀想に、まぁこんな杜撰なセキュリティだからこうなるのは仕方がないけど」

「……そうですか、ふふっ!では向かってあげて下さいな」

「えぇ、じゃあ……少し席を外すね」

 

 

 

それだけ言い残し、チヒロはヴェリタスの部室を後にする。

 

 

 

「……なんか、甘酸っぱい恋を見てるみたいで苦しい~!」

「報われない恋、ね……チヒロ部長の気持ちを考えたら、胸が痛い話だね」

「私としては前から応援はしていた身ですので、この結末は何とも……まぁ、仕方ないのかもしれませんね」

「……ああすれば、もっとこうして、何かアクションを起こせば、結末は変わっていたかもしれない。恋愛に於いて選択肢は其の人の人生を左右するのかもしれないですね」

 

 

 

皆、チヒロが大好きなのだ。だから結ばれて欲しい、そんな気持ちはあった。

 

だが、それは叶わなかった。彼には『中務キリノ』と云う、掛け替えのない恋人が出来てしまった。

当時、その事を知ったチヒロは……一人、泣いたという。

 

誰もいない部室で一人、静かに泣いていたのだ。

 

それを、ヒマリは知っていた。丁度タイミングよくチヒロに用事があってヴェリタスの部室に身を運んで、ドアに手を掛けた瞬間、中から聴こえる啜り泣く声、独り言の内容を、今でも覚えている。

 

チヒロ、ヒマリにとって大切な友人だ。彼に非が無いとはいえ、泣かせた元凶であるのは事実。でも恨んでなどは居ない、だって……己も、彼には感謝しきれない程の恩が有るから。

 

 

 

「さっ!辛気臭い雰囲気はこれっきりにして、今は……ふふっ、チーちゃんと怪物さんの会話でも覗き見しちゃいましょっか」

 

 

 

ヒマリがそう宣言し、皆が微笑んで画面に注視する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいヤベェよ……何だよこの赤い警告?の文字……俺、なんかしちゃったのか?」

 

 

 

ミレニアムの廊下、時刻は既に7時を回っているがまだ人が多く通るその廊下に、城ヶ崎レンノスケと云う男が焦燥の表情を浮かべていた。

 

それは、己のスマホが言う事を聞いてくれない事である。

 

 

 

「(このままじゃ校門どころかミレニアムの廊下すら出れねぇぞ……おいおい、この歳で、しかも校内で迷子はダサ過ぎるってばよ)」

 

 

 

レンノスケは焦っていた。行きはモモイの案内の元、何故か端にあるゲーム開発部の部室に赴いたが……よくよく考えれば己は来た道を全く覚えていない。

 

 

何なら此処が何処なのかも分からない。仕方ない、己を見ているミレニアム生の人に聞いてみるとしよう。

 

 

 

「おい、其処の人。すまないが俺を校門前まで連れてってはくれないk」

「あ、あ、あ、す、すみみみません!わ、私、用事があぁってぇ!」

 

 

 

”ぴゅーっ……”

 

 

 

「……ま、そうだよなー」

 

 

 

己が話しかけた途端、逃げる様にその場から消えるミレニアム生。

 

改めて、己の強面具合にうんざりする。

アイラ達アリウスの子供達は何故か俺の顔を見ても気にしないで居てくれるが、やはり、一般人は己の顔や雰囲気を確認すれば恐ろしいと感じるらしい。

 

 

 

「(慣れちゃいたが、如何せん久しぶりの反応だ。少し、心にクルな……)」

 

 

 

ここ最近、こういう扱いはされていなかったせいか少しダメージを負ってしまう。

仕方がないと自答しても、残念と思う。俺はもう怖い存在ではないんだがなと、思案してしまう。

 

 

 

「……どうしたもんか────ん?」

 

 

 

”タッタッタッ……”

 

 

 

廊下を駆ける音がレンノスケの耳に響く。

 

後ろからだ、誰かが近づいてくる。一体誰だろうか……レンノスケは後方を注視すれば、何やら胸を弾ませて息遣いが少し荒くなっているメガネ娘が、己に向かってきているのが分かった。

 

 

 

「ね、ねぇ!」

「おん?どうした?」

「はぁ、はぁ……ご、ごめん。ちょっと待って…っ」

「あぁ、大丈夫だ。お前も大丈夫、か……………ん?」

 

 

 

何やら、見覚えがある見た目だ。

 

そんな事を思っていると、その女性は息を整えた後、己に話しかけてくる。

 

……ふぅむ、やはり、そうだ。

 

 

 

「ふぅー……ごめん、ちょっと急いでて。時間取っちゃってごめん」

「構わない。それで、俺に何か用事があるのか?」

「それは私のセリフ。それ、スマホが動かなくって困ってるんでしょ?」

「っ!?何で知って……い、いや、そうなんだよ!何でか分かんないが、急に動かなくなっちまって……」

「はぁ……ちょっと貸して」

「む?あ、あぁ」

 

 

 

その女性は己から携帯を受け取り、近くの棚に持ってきていたノートパソコンを置き、ケーブルを己のスマホに接続する。

 

そして、カタカタとタイピングを素早く行う。ヴァルキューレの誰よりも早いタイピングで、己は息を呑んでその動作を見つめる。正直、格好良かった。

 

 

 

「……はい、解除。これでいつも通り正常に動くよ」

「え?……えぇ!?マジ!?ちょっ、貸してくれ!……うわっ!マジだ!すっげぇ!どんな神業だ?あんた凄いな!本当に助かったよ、ありがとうな!」

「っ……ど、どういたしまして」

 

 

 

己は驚愕した。僅か30秒で彼女は全く動かなくなったスマホを復活させたのだ。

 

凄いとしか、ありがとうとしか言えなかった。それ程の神業だったのだから。

 

 

 

「これで心置きなくスマホが使える。いやぁ、本当に助かった。流石はミレニアムの生徒さんだな」

「いや、感謝を云われる筋は私にないよ。寧ろ謝らせてほしい」

「むぅ?それは、一体なんでだ?」

「貴方のスマホが動かなくなった理由は、元々は私の知人が招いた悪戯だったからね。本当に申し訳なく思う」

「え?なんでそんな事を?」

「……きっと、丁度いいカモだったんでしょ。貴方はウイルスバスターも入れてなければパスワードも掛けていない『前代未聞のありえない人』だからね」

「へ……いぃ!?」

 

 

 

ズンッ!と、己に一歩踏み込んでくる女性に、少し、後ずさりしてしまう。

 

何と言うか、迫力があった。絶対に逃がさないという覇気が其処にはあった。

 

 

 

「此処で一つ聞きたいんだけどさ、あんた、自分の携帯にパスワードを掛けていない何てどういう了見なの?」

「ぱ、ぱすわーど?なんだ?それ」

「は??ねぇ、冗談でしょ……?」

「冗談なんかじゃないぞ?マジで分かんないんだ。その、ぱすわーど?ってのは、何なんだ?携帯には必要なのか?」

 

 

 

己が初めて聞く単語に、聞き返してしまう。

 

先ほどウイルスバスター何てモノも言っていたが、一体なんなのだろうか。

 

己が携帯に対して疑問を浮かべていると、彼女の眼鏡の先が陰で見えなくなる。

 

……あれ?なんか怒ってね?

 

 

 

「そう、まさかとは思ってたけど……そこまで酷い知識だったなんて思わなかった」

「え?なんか急にdis……」

「ねぇ、其処の椅子に座って。今からネットリテラシーの問題とセキュリティについて貴方が如何に無知で愚かで危険かをミッッッッチリ!その頭に叩き込むから!」

「うぇ!?」

 

 

 

何故か急に座学が始まる雰囲気に。彼女は何やらプンプンしている。己の携帯の使い方が、どうやら駄目だったようだ。

 

時間を見れば、既に7時30分。キリノには遅くなると告げているから問題はないっちゃないけど…………まぁ、()()()()()()()()()女の子だ。

 

にしても、そうか……以前から感じていた視線、こうして対面して分かったが、まさかこの子だったとはな。

さっき中指立てちゃったけど、まぁ、大丈夫かな。

 

 

 

この子が覚えているかは分からない、この様子だと、忘れているのだろう。

 

だが、それでいい。俺は覚えていて、この子は忘れている。その方がこの子にとっては幸せだろう。

 

俺は”怪物”だ。あの時の俺は只の人殺しのクズ、光を持つこの子が関わるべきではない人種だ。忘れているのなら、それでいい。

 

俺はふっと微笑む。元気そうじゃないか、立派に育ったんだな、この子は。

 

 

 

「っ!!な、なに、笑って……?」

「ん?あぁいや、何でもない……すまないが、俺に携帯のアレコレを教えてくれる前に、先にあんたの名前を教えてはくれないか?」

「名前?あ……そうだったね、忘れてた。えっと……私は『各務チヒロ』。そ、その……宜しくね」

「あぁ、宜しく。知っているかもだが、俺は『城ヶ崎レンノスケ』だ。宜しくな、各務」

「……うん」

 

 

 

そうか、各務、各務チヒロか……あんなに小さかった子供が、ここまで立派に大きく育ったのか。

 

……感慨深いモノがあった。当時の俺は既に身長は180はったっけな。この子は俺よりも30程小さかった気がする。何だか段々と思い出して来たな……懐かしい、華奢で、好奇心の塊みたいな眼をしていたな。

何だか、少し大人びてる気がするが……もう既に俺よりも大人に近付いているのだろう、追い付かれてしまった感覚だ。

 

 

 

「さ、さあ!早く座って!私が一から教授するからちゃんとメモとってね!私のメモ帳とペン貸したげるから」

「準備が良いな。もしかして、俺に教えてくれる為に態々用意してくれたのか?」

「~~~っ!!違う!変な事言わないでレンノスケ!ほら!話を聞く姿勢に成って!」

「あぁ、悪かったよ……じゃあ、頼む」

 

 

 

────其処からレンノスケは、チヒロの教えの基ネットの使い方や注意事項、セキュリティ関連の話を真剣に聞いた。

 

そこで初めてパスワードを掛けない事の非常識さを痛感した。アレでは初心者ハッカーでも意図も簡単に乗っ取られてしまう。

 

チヒロの厚意により、ノートパソコンを使ってウイルスバスターをスマホに入れて頂けた。

 

そしてパスワードを掛ける事に為り、レンノスケは『覚えやすいから俺の誕生日で〈1224〉で良いか?』と、チヒロの怒りを逆撫でする言動を取って正座させられる。

 

その後、叱責の後にレンノスケはチヒロの教えの基、レンノスケが覚え易い様に大文字を入れたパスワードを作成。チヒロは『まぁ、妥協点かな』と少し納得のいっていない様子だったとか。

 

 

 

 

 

 

「────……と、よし、覚えたぞ。これで俺のスマホは最強だ」

「良い?自分のパスワードは親しい人にも教えちゃ駄目だからね?それが……ッ、その、自分の好きな人でもね」

「あぁ、分かってるよ。頭がパンクしそうなくらい聞いたぜソレ」

「どうだか……」

 

 

 

まだ不安はあるが、とりあえずは大丈夫そうだとチヒロは判断。

 

窓の外を見る。もう暗くなって、時刻は8時を迎えていた。

 

 

 

「……ごめん、話しすぎたみたい。もう帰らなきゃだよね?」

「んあ?おーそうだな。流石に帰らなきゃだ……いやー濃い一日だった」

「ゲーム開発部の子達と散々遊んでたから、目も疲れてるでしょ。タクシー手配しようか?代金は勿論私が持つけど」

「いや大丈夫だ、一人で帰れるよ。気遣いは感謝するが、流石にお金を払ってもらうのは心臓苦しい」

「それを言うなら心苦しいね。まぁ、レンノスケがそれで良いのなら私は何も言わないけど……」

「……あ、すまん一つお願いがあるわ」

「ッ!なに?何でも言って?」

「俺こっから校門までの道分かんなくってよ、悪いんだが道案内してくんないか?」

「なんだ、そんな事ね。勿論大丈夫、元々そのつもりだったしね」

「マジか!すまんなチヒ……各務」

「……うん」

 

 

 

二人は空き教室の席から立ち上がり、教室を後にする。

 

そしてチヒロの案内のもと、レンノスケはスムーズに廊下を進み、エレベーター等を使って校門まで向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処まで送って貰っちまって悪かったな、各務」

「良いって、お客さんをお迎えするのは当然だからね」

 

 

 

数分後、レンノスケとチヒロは校門に到着。

 

其の場には二人以外の誰も居ない。レンノスケとチヒロのみの空間が出来上がっていた。

 

 

 

「……ねぇ、レンノスケ」

「ん?なんだ?」

 

 

 

数秒の沈黙の後、チヒロは……切り出す。

 

己が今、聞きたかった事を問う。

 

 

 

「────私の事、覚えてる?」

「ッ!……」

 

 

 

チヒロの顔が、不安そうな表情になる。

 

常に冷静で問題児な後輩を引っ張り、依頼での仕事では決して見せる事のない、彼のみ見せる怯えた表情。

 

チヒロの問いに、レンノスケは……。

 

 

 

「────驚いた、なんだ、そっちこそ覚えていたのか」

「へ………う、うそっ」

「無論、覚えている。何とかヘルメット団の殲滅の時の子だろ?チヒロって」

「お……覚えてて、くれてたんだ……っ」

 

 

 

彼は、覚えていた。

 

忘れてなんか、居なかった。

 

 

 

「寧ろ俺の方が忘れられてるんじゃねって思ってたところだz」

「忘れる筈がないっ!」

「ッ!?」

 

 

 

レンノスケのお茶らけた発言を遮る。チヒロは、レンノスケの胸倉を掴む。

 

叫ぶ。忘れる筈が無いだろう……ッ。

己を助けてくれた人を、お礼も満足に言えなかった人の事を、忘れる訳がないんだッ。

 

らしくない一面だ。想いが溢れる、最早、止める事は不可能だ。

 

 

 

「ずっと、言いたかったっ!あの時の私、わたしっ!貴方にお礼も言えぬままで……っ」

「……各務、お前」

「気付いてたんでしょ?私が、ドローンや街道カメラを使って貴方を追っていた事……」

「あぁ……確信は持てなかったけどな、だが今、確信した」

 

 

 

────お前だったんだな、ずっと、追いかけて来た追跡者の正体は。

 

 

 

レンノスケは己の胸倉を掴み、震えるチヒロにそう告げる。

 

ずっと、凄い時は一日中見つけて来るドローンがいた。

その全てを破壊し、影を残さず隠れてもほぼ必ず見つけて来るドローン。

 

 

 

「全く、お前の所為で俺は満足に過ごせなかったんだぞ?いや、あの環境に身を置いて満足に過ごせた日なんか無かったが……だがまぁ、俺の13年間で一番苦しめられた相手だったのは間違いないな」

「……それは、名誉と取っていいの?」

「この俺を苦しめたんだぞ?誇ってもいいんじゃね?俺が言うのも変な話だが」

「ぷ、くふっ……なにそれ」

 

 

 

胸の裾を掴む手が、少し緩む。

 

しかし、離さない。まだ言いたい事があるからだ。

 

 

 

「ありがとうっ……あの時、私を助けてくれて…」

「……礼を言われる筋合いはない。お前は、俺が居たからあんな場所に行っちまった。俺のせいで危険な目に遭ったんだ、お前は」

「は!?何言って……それは違うっ!どうしてそんな考えになるの!?」

「事実だ。お前は俺の調査の為にあんな場所に赴いたのだろう?正直、ずっと謝りたかったんだ。俺のせいで各務は怖い想いをしちまったから、気掛かりでな……悪かった」

「…ッ!いい加減にしてッ!!!」

 

 

 

チヒロの裾を掴む力が増す。

 

レンノスケは黙って、彼女の思うがままに従う。

 

 

 

「さっきから俺のせい、俺のせいって!貴方は1mmも悪くないのに、どうして貴方はいつも自分を卑下するの!?」

「各務、俺は……」

「黙って!!今は、私が喋ってる!黙って聞いてれば舐めた口聞いて…ッ!」

 

 

 

違う、こんな事を言いたかった訳じゃない。

 

ただ、感謝を、お礼を伝えたかっただけなんだ。なのにどうして、こんな事になってしまった?

 

 

 

「いい!?私がブラックマーケットに行ったのは確かに貴女が理由だけど、それに関しては私が弱かった事が問題なの!全て私の意思!貴方が悪い理由なんか何処にもない!!」

「お、おう……だけど、俺h」

「お・だ・ま・りッ!!」

「はい」

「そうやって、あんたはいつも自分を下げてッ!………っ、どうして、あんたは……っ」

「……各務」

 

 

 

チヒロの裾を掴む力が、弱くなる。

 

顔を下に向け、身を震えさせる。感情を殺しているのだ。

 

我慢している。決して弱さを見せぬために。

 

 

 

「なぁ……各務、お前は俺の……俺の”全て”を、知っているのか?」

「……細部までは分からない。でも……でも、でもっ……あんたが!心も体もッ、引き裂かれるような苦痛を、地獄を経たのは、誰よりも知っているつもり……っ」

「……そうか」

「何年、あんたを追っていると思ってるの……私は!私は……貴方を助けたくて、救い出したくてっ……血眼になって探して、それでも見つかる事は無くって……もう、どうしようもなくって…っ」

 

 

 

チヒロには後悔しかなかった。

 

見つけても、壊される。

救い出したくても、救えない。

誰もが彼を恐れ、忌み嫌う。

 

ただ自分は、そんな状況に……打ちのめされるだけだった。

 

本当に情けない。無力な自分に、腹が立って仕方がない

 

 

レンノスケが、口を開く。

 

 

 

「……優しいな、チヒロは」

「やめて!言わないで、そんな事っ!私は……」

「チヒロ、聞いてくれ。俺はさ……今のお前の話を聞いて、凄く嬉しかった」

「ッ!」

「俺の事を理解してくれる人は少ない。特に、深部まで知ってる人は尚更な……それでも、そんなクズな俺をチヒロは助けようとしてくれた。その事だけで、俺は心の底から嬉しいって思えた。生きてて良かったって思えた。お前に……会えて良かったって、思えた」

「っ………ッ!」

 

 

 

そんなこと、馬鹿真面目に言わないで欲しい。

 

彼の過去を、今まで受けて来た惨状を調べて、気が狂いそうになって、ずっと助けたい思いで彼を探して、見つけては見逃してしまって、何も出来なかった私なんかに、そんなこと、言わないでほしかった。

 

でも、これが……私が惚れてしまった彼なんだ。

 

 

 

「……立派になったなぁ、チヒロ」

「ッ!!?」

 

 

 

”なで、なで……”

 

 

 

レンノスケが突如チヒロの頭を撫でる。

 

優しい微笑みで、懐かしむ様に、撫でる。

 

間違いない、彼は己が年下だと勘違いしている。

 

 

 

「ちょっ!な、なに、わ、私はっ!」

「ん?少し強かったか?それとも……撫でられるのは嫌、だったか?」

 

 

 

でも、断る理由はない。

 

 

 

「……もう少し、優しく撫でて」

「っ!あぁ、分かった」

「(ちがう、違うーー……こんな筈では!)」

「辛気臭いのは、少し苦手でな……お前が俺を想っててくれていたのは分かった。本当に優しい子に育ったんだな……しかもミレニアムか、本当に凄いな、チヒロは」

「べ……別に、普通」

「いいや、普通なんかじゃないぞ?チヒロは凄い子だ。スマホのセキュリティ?は勿論、機械の使い方や人を想う優しさを兼ね備えるのは本当に良い子じゃなきゃ出来ない。チヒロはきっと努力家なのだろうな……俺、お前と友達になれて良かった」

「~~~~~~~っっっ!!!!」

「しかも、綺麗だ……別嬪さんだから、引く手数多なんじゃないか?」

「……ふんっ」

 

 

 

”ゲシッ!”

 

 

 

「おう!?な、なぜ膝を蹴る!?」

「クソボケ、鈍感、女たらし……女の敵ッ、彼女持ちの癖に」

「な、何の話だ……?」

「何でもない……はぁ、ダメな人を好きに成っちゃったんだな、私って」

 

 

 

何て言うか、心がスッキリした気がする。

 

彼の事は、まだ好き。でも、もう大丈夫。

私はもう前に進める。何時までも囚われてしまえば、何も出来ない。

 

言いたい事も、言えた。全部言えた。

 

だから、まぁ、後は……。

 

 

 

「ん?そうなのか?恋愛系の話なら俺に相談しても良いぞ!」

「……うん、じゃあ1発、いや100発くらい殴らせてほしいな」

「な、何故だ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────好きだったよ、怪物さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この鈍ちん野郎に、今迄の想いをぶつけてやろう。

 

 

 

「ん?今なんか言ったか?隙を突いたぞって言ったか?」

「何でもないよ、コレでも喰らいなさい」

「ん?ぐおっ!ちょ、なにすん……や、やめてー!」

 

 

その後、チヒロはレンノスケに200発ほど体を殴って蹴った。

 

スマホを直してくれて、校門まで送ってくれたチヒロ相手にレンノスケが強く出れる筈も無く、彼はただ、されるがままだった。

成長したなーと思っていた少女が、少し狂暴になっていて少しだけショックだった、とか……?

 

 

そして、レンノスケとチヒロはモモトークを交換した後、またねと別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本当に、変わってないんだから」

 

 

 

 

 

 

次回

 

 

キリノだって嫉妬する!

 






すんごい書きたかった話。



悩む。チヒロ√を書くかどうかを!


IFストーリーとして『チヒロ√』を執筆するか、それとも新しいブルアカ二次創作として『チヒロをメインヒロインとした作品』を作るかどうか、未だに悩んでいます。

後者の方が今でも執筆すれば良いですよね。IFストーリーは何か、ムズそう(小並感)


チーちゃん大好きなんだよなー!
よし、別の作品としてチヒロがヒロインのヤツを書こう(急展開)






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  • レンノスケ、配信者に成る。
  • 16歳組によるバレーボール同盟
  • キリノと二人旅
  • 提示版(レンノスケだけど、質問ある?)
  • レンノスケの過去編
  • 本編:カルバノグの兎編
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