怪物は、真面目な君に恋をした。   作:カブトムシの相棒

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▽特別番組

・ぶっちゃけろ☆クロノス!(続き)



〈さぁさぁ!羽沼マコトさんの世にも珍しい素面が知れた事で現在のモモッターのトレンドは《羽沼マコト》や《意外とかわいい》がトップになっております!先程マコトさんが「コラァァァァ城ヶ崎ィィィィィィッッ!!!!!」と強烈な咆哮を上げながら戦車を引き連れこの場に向かおうとした所、風紀委員長の空崎ヒナさんによって阻止されたと報告が上がりました!どうやらヒナさんは非常に御機嫌なご様子だったようですが……何はともあれ、流石は城ヶ崎レンノスケさん!影響力が凄まじい!LIVE視聴率も100万を突破!凄すぎます!〉

「お、おう。なんか知らんがセンキュウ」

〈では次にいきましょう!〉



Q:城ヶ崎レンノスケが尊敬する人は誰?


「あー……アレだな、先生とカンナ局長、そして『俺を救ってくれた人(愛しのプリティー中務キリノ)』は除外するか。ちょっと天井過ぎるしな。その人達以外だと……3人居るな。一人は……ちょっと言えないんだが……トリニティの『下江コハル教授』、それとゲヘナの『丹花イブキさん』だな。理由?色々あるが、イブキさんとコハル教授には【勉強】を教えて頂いているんだ。いや、俺ってばマジで勉強が出来なくってよ、教えて貰わなきゃ全然出来ん。スゲェ有難い事に色んな方々から教えて貰ってるんだが、特に教えて頂いているのはこの二人なんだ。シャーレの当番の日にイブキさんとコハル教授が同時に来た時が初対面で、俺は最初こそ避けてたんだが、イブキさんがこんな俺にも普通に接してくれて、そんでコハル教授も少し怖がっていたがイブキさん同様に話しかけてくれたんだ。そっから、あの二人には勉強を偶に教えて頂いている。特に俺から彼女たちの学園に出向く事が多いな。イブキさんは天才で、コハル教授は努力家って感じだ。コハル教授は自分で言ってたが、コハル教授自身どうやら勉強は苦手らしい。なのに、俺と一緒に勉強して出来る部分を俺に教えてくれたりもするんだ。マジで良い子。俺もう心がポッカポカなんよ。俺よりも年下なのに、この子達は本当に凄いと思う。本当に尊敬するよ」

〈おぉ……凄い熱量で話して下さいましたね~……それほど、そのお二人には尊敬の念が強いという事でしょう!ささっ!此処でCMに入ります!〉



言えない一人は『陸八魔アル』です。



では、本編です。


陸八魔アルと云う最高の女。

 

 

 

 

「アリウス・スクワッドに、便利屋ですか……それはそれは、今や貴方とは真反対に生きる者達を選びますか」

 

 

 

黒服がレンノスケの案を興味深そうに発語する。

それもそうだろう、今挙げた連中はどちらも裏に生きる者達、レンノスケとは既に敵とも等しい者達だ。

 

 

 

「因みにどうして彼女達を?実力は申し分ないと思っていますが、人選の理由が分かり兼ねます」

「アリスクは暗躍に向いているし、全員がトップクラスの技術を秘めている。秘密裏に動くのならあいつ等の力は絶対に必要になるんだよ。そして便利屋68……アリスクと同じたった4人の組織、だが、破壊規模で言えば温泉開発部に匹敵する【超武闘派】だ。正面で戦えばアリスクにも勝てるポテンシャルはある」

「成程、非常に面白いですね……貴方がそれ程まで評価致しますか。しかし……アリウス・スクワッドは分かりますが、どうして便利屋68にもそこまでの評価を?一度会っているとはいえ、それは若かりし頃の『陸八魔アル』だけだ……何か理由が?」

「……便利屋は、陸八魔アルは俺の『憧れ』だからだ」

「何ですって…?彼女が、ですか?」

 

 

 

レンノスケが発した発言は、黒服には理解出来兼ねるものだった。

 

一体どうしてアルがレンノスケに於ける憧れにあたる?黒服は問うと、レンノスケが一度呼吸を置いて応える。

 

 

 

「陸八魔アル……あいつは、俺が持っていない才能を持っている。戦闘は勿論、必然と人から好かれる才能をアルは持っている。それは彼女の類稀ない才能という他ない。このキヴォトスの裏社会で生きるには余りにも向かない、純粋で心優しい子が、今や裏社会のトップ層に君臨している。手は汚さず、人道に反さず、強く、今も生きている……俺には、為し得なかった事だ」

「……そうですね、それが彼女の魅力の一つでもあります」

「あぁ……一度、見かけた事があった。驚いたさ……あんなに弱く脆弱だった少女が、あんなにも逞しく美しい女になっていやがったんだから」

 

 

 

レンノスケが話す内容は、どれも誉め言葉で、どこか感情が重たかった。

陸八魔アルと城ヶ崎レンノスケ……一度きりの立ち合い。

 

たった一度でも、それは余りにも深い。

 

 

 

「ククッ、では丁度いいではありませんか。久しぶりの、実に3年ぶりの再会です。余り時間はありませんが、積もる話もあるでしょう」

「いや……黒服、お前からアル達に頼み事を言ってくれないか?」

「はい?一体どうして」

「……どの面下げて、アルに会いに行けばいいんだよ」

 

 

 

レンノスケの脳内に浮かぶ、先生との会話。

 

 

『アルね、君に会いたがっていたよ。でも同時にどうやって会いに行けばいいかわからないとも言っていた』

『アル……アルか。あいつは良い、俺だって会いたいさ……だが、どうして?』

『レンノスケ、確かに君は裏社会でも恐れられていた子。裏で生きる人達からすれば怖い存在だった。でもね、同時に君を【憧れの対象】として見る子もいたんだよ』

『……は?』

『それが、陸八魔アル……彼女なの』

 

 

 

そう、アルも同時にレンノスケに憧れていた。

孤高で冷酷、圧倒的な強さ。

 

彼女が掲げる【孤高のアウトロー】そのものだから。

 

だが、それは……。

 

 

 

「アルからすれば、俺は偽りのアウトローだ。彼女が憧れていた俺は、ただの大噓つき野郎なんだよ」

「い、いえ、それは違うのでは~……」

「そんな俺が、どの面下げてあの子に会うんだよって話だろ……門限払いをされんのがオチd」

「レンノスケさん」

「ん?」

 

 

 

黒服がレンノスケの話を遮るように話しかける。

 

 

 

「急ですが、以前貴方には『賞金首』が懸けられていると聞きましたね?」

「本当に急だな……まぁ、そんな話はあったな。だがそれが何だ?」

「実はアレ、私が懸けた金額なんですよ」

「……む?」

 

 

 

レンノスケの思考が停止。

それ即ち……。

 

 

 

「……じゃあ、俺は今までお前の所為で命狙われてたべ?」

「はい。証拠にコレ、私の通帳です」

 

 

 

黒服が懐に手を伸ばし、己の通帳を見せる。

 

其処には、果てしない金額の額がビッッッッシリと載せられていた。

 

レンノスケの首に【7億】も金を掛けていたのは、まさかまさかの黒服であったのだ。

 

 

 

「スゥ……おまナ~ニしてんの?いや、お前、は?なぁぁにしてんの??いやマジ、殺すよ?お?」

「ククッ……レンノスケさん、どうか落ち着いて。頬に銃をグリグリするのはお止めください」

「落ち着けるかァこんなもん!!テッメェ、なんちゅうモン今になって言いやがるッ!衝撃の事実過ぎるだろ!!」

 

 

 

レンノスケが流石に怒る。

今まで己の命が脅かされていた理由が目の前に居る。しかもヘラヘラして。

 

 

 

「ククッ、話は此処からですよレンノスケさん」

「なァに!?今更んな事言って何が此処からじゃボケぇ!お前、今から、ころs」

「その7億を契約には関係なく貴方に手渡すと言っても?」

「何でも言ってくれ黒服。やはり持つべき者は素敵な友だな」

「清々しい程の掌返し、これもまた神秘ですね」

 

 

 

手首が切れん程の掌返し、黒服は薄ら笑みを浮かべる。

 

 

 

「貴方を今まで危険な目に合わせたツケは無論、払わせて頂きます。あぁ、それプラス慰謝料を加算して【12億】を支払いましょう」

「怖え、怖すぎる……さらっと言う金額じゃネぇよ……」

「私からすれば端金ですが、そんな反応を頂けると面白いですね」

「なんかスゲェ煽られたのに、全然イライラしねぇ……」

 

 

 

黒服に煽られるも、全く憤りを見せないレンノスケ。

それこそ今まで端金(100~5000円)で依頼を受けてきた超を極める貧乏人だったのだ。そんな大金を口にすればするほど、恐ろしくなる。

 

レンノスケがビビっていると、黒服が告げる。

 

 

 

「ですが、条件があります」

「…条件?」

「────そのお金で、便利屋68に交渉して来て下さい」

「へ?」

「貴方が、直接です」

「い、いやd」

「でなければ払いません」

「ぅ……」

 

 

 

黒服、鬼になる。

 

いつまでウジウジしているのだと、流石にみかねた黒服が何時しか払おうとしていた金を此処で使ったのだ。

 

レンノスケからすれば、いや、一般的にも黒服が提示する金額は異常だ。

 

そして、レンノスケの脳内に浮かぶ顔……キリノにも関わる程の大金。

 

 

 

「(気まずさを選ぶか、キリノの幸せを選ぶか、か……)」

 

 

 

選んだ選択は。

 

 

 

「分かった……明日の朝、便利屋68の事務所へ行く。俺単体でな」

「宜しい」

 

 

 

レンノスケ、恥を捨て便利屋68に出向を決める。

 

 

 

「では先に振り込ませて頂きます。言質は取ったので逃げないで下さいね?」

「黙れ…ッ」

「ククッ…────はい、どうぞご確認下さい。丁度12億支払いました」

「え?え……う、うわぁ、マジだァ…………ん?ちょ待て、なんで俺の振込先を知ってr」

「私は貴方の事をずっと見ているので、ね」

「そういえば言ってたなそんな事……なんか、怖いな」

 

 

 

スマホで淡々と己の振込先に12億を振り込むその姿にドン引きを隠せない。

 

キリノが見たら死ぬほど吃驚するだろうな……と、少し先の未来を思い起こすレンノスケ。

まるで宝くじの様な金額だ。

 

 

 

「貴方の壊れてしまったスマホは、私の替えのスマホで代替えしましょう。では、アリウス・スクワッドには私からお伝えさせて頂きます。きっと直ぐにそのスマホへ連絡が来るでしょう……それでは私は早急に貴方の刀剣の制作にあたらなくてはいけませんので、先にお暇しますね。レンノスケさん、御武運を」

「あぁ、なんか、その……色々とありがとうな。全てが終わった暁には、先生も連れてラーメンにでも食い行こう」

「っ!!ククッ、それは良い……ありがとう御座います」

 

 

 

それだけ告げ、黒服はコツコツと靴音を奏で、夜闇に紛れ消えて行く。

 

 

 

「……さて、俺も動くとしよう」

 

 

 

そしてレンノスケも来た道を帰っていく。

怒りの思いがレンノスケに強く圧し掛かるが、怖い思いの方が今は強い。

 

レンノスケは最強だと、怪物だと謳われていた。だが最愛の人が二人も同時に攫われてしまった。

 

情けなくて、悔しい気持ちで一杯だ。

自責の念が堪える事が無かった。

 

 

 

「キリノ、アイラ……少しだけ待っていてくれ。直ぐには、っ…無理だが……必ず助けるからな」

 

 

 

だけど、今、そんな感情は不要だ。

桐野とアイラ達の方がずっとずっと怖いのだ。知らぬ間に何者かも分からん奴に攫われ、独房に詰められている。アイラなんかまだ8才だ。怖くて堪らない筈なんだ。

 

 

 

「……暫く寝れんな」

 

 

 

そうして、レンノスケは一度家に帰宅。

今日はシチューだったが、何も作れなかった。

 

喉には……カロリーメイトと水しか、入らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

▽キリノ、アイラside。

 

 

 

 

 

「────うぅ……キリねぇ」

「大丈夫、大丈夫ですよアイラちゃん……絶対に、大丈夫ですからね」

 

 

 

一方その頃、キリノとアイラは二人一緒に独房に入れられて居た。

 

キリノは夜襲、アイラはキリノの携帯で呼び出しされ、そのまま拘束された。

 

 

────特にひどいのは、アイラの方だ。

 

 

そのやり方は余りにも狡猾で非常、呼び出しの内容がこれだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

〈夜遅くにごめんね、アイラちゃん。いま大丈夫?〉

 

〈キリねぇ!うん!だいじょうぶだよ!〉

 

〈実はアイラちゃんにしか頼めない事があるのですが、どうか助けてはくれませんか?〉

〈お礼に今度パフェを一緒に食べに行きましょう!レンノスケも一緒に!〉

 

〈ほんt〉

〈ほんとに!?やた!〉

〈どこに、いけばいいの?〉

〈すぐでるね!キリねぇのやっくにたつたい!〉

 

〈ありがとう御座います!〉

〈では✕✕○○までお願いします〉

 

 

 

 

 

 

これだった。幼い子供を、大好きな人の名で騙し、この様な仕打ちを犯したのだ。

 

話を聞いたキリノは腸が煮え繰り返る思いと同時、己の不甲斐なさを呪った。

自分がもっと強ければ、こんな事にはならなかった。

レンノスケとキリノはそれぞれ違う自責の念を抱えて、今に至っている。

 

 

 

「(誰がやった事か分からないこの状況下で、アイラちゃんと一緒の牢屋は不幸中の幸いですね……)」

 

 

 

キリノはアイラを抱く力を強める。

 

何があっても、この子だけは護る。その意思がキリノを奮い立たせる。

 

 

 

「アイラちゃん、きっと、いえ、絶対にレンノスケが助けに来てくれます。だから大丈夫です!」

「キリねぇ……う、うん。うん!そうだよね!」

 

 

 

そう発語するキリノに、アイラは強く頷く。

 

だが、アイラの身は震えている。

アイラが不慣れな状況に怖がっている。

 

その理由は攫われたから、それもある。

 

大きな理由は……彼女の背景、アリウスによる経験からだ。

 

 

 

「(怖い筈です……アリウスに居た時も、きっと……ッ)」

 

 

 

天丈アイラ、8歳ながら過酷な環境で生きてきた子供だ。メンタルは人一倍はある。

だが、そんな環境だったからこそ、トラウマは残り続けるのだ。

 

キリノは、アリウスの実態はシキから全て聞いていた。胸が張り裂けそうな話だった。

 

その実態を、アイラは幼子ながら受けていた。信じたくない、認めたくない事実だ。

 

こんな幼い子供にあんな仕打ち、狂気の沙汰だ。許されない。

 

 

 

「アイラちゃん、頼りないかもですが、今は本官が居ます。決して一人ではありません……大丈夫、大丈夫」

「っ!……うん!にへへ……ありがとう、キリねぇ」

 

 

 

アイラはキリノをギュっと抱きしめ、その震えを少し穏やかなものに変える。

 

キリノの体温が温かかったのか、様々な安心感からアイラはキリノに身を預け眠る。

 

 

 

「ぅ……すぅ……すぅ………zzz…」

「ふふっ……可愛い寝顔ですね~……」

 

 

 

頬を撫で、優しく微笑む。キリノの有する母性がアイラに向かう。

絶対に護る。何があっても、この子には傷一つも付けはしない。

 

その意思が、キリノの心身に宿う。

 

 

 

窓も無く、時計も無い部屋で時は進む。

 

今が何時なのか、分からない。まだ夜なのか、はたまた朝なのかも不明だ。

 

それでも、キリノは信じていた。遅くても良い、必ず来ると。

 

 

 

────レンノスケが必ず助けに来ると。

 

 

 

 

「ごめんなさい、レンノスケ……どうか、お願いします…ッ!」

 

 

 

 

 

 

▽次の日、朝。

 

 

 

 

「────あぁ、すまんが、キリノと俺は風邪に掛かった。うぇんほ!げぇっほん!!(咳真似)…………あぁ、2、3日後には復帰する。あぁ、すまん…………」

 

 

 

レンノスケは先ず、カンナに嘘の情報を電話で言い渡す。

一か八かだったが、最近の過労働が原因って言ったら何か狼狽え、意外とあっさりといけたらしい。

 

 

 

「(……何だろう、この罪悪感。まぁ仕方ねぇ……さて、先ずはアリウス・スクワッドに連絡を取らなきゃだな……服は、これにしよう)」

 

 

 

レンノスケはいつものヴァルキューレの制服から【黒いスーツ服】に変装する。

 

この服はレンノスケがブラックマーケット時代に着ていたスーツだ。先生が見かねて、クリーニングをしてくれたのだ。サイズも丁度いい。

 

プラスαでサングラスも装着。見た目は完全に極道そのものだが、ヴァルキューレの制服を着るよりかは幾分かマシだ。

 

 

 

「ふぅ……キリノが居ないだけで、疲労度がエグイな」

 

 

 

平和ボケとは言わなくとも、キリノが居た事が当たり前になっていた。

その反動は、強くレンノスケに襲い掛かる。何日もは耐えられないだろう。

 

 

 

「うし、行くか」

 

 

 

レンノスケが出る。

 

向かう先は────便利屋68の事務所。

 

 

 

 

 

 

▽1時間後……

 

 

 

 

 

 

「……いや帰りてぇー」

 

 

 

とある自治区の少し寂れたビル、其処に点在する事務所の前にレンノスケは来ていた。

朝の10時、便利屋の開店時間に合わせ少し経ってから来訪したは良いモノの、中々踏み込めない。

 

彼此10分は事務所前でウロチョロしている。正直アルが居ない事が一番の正解ではあるのだが、それでは何か黒服に言われそうだ。それだけは避けたい。

 

 

 

「(よし、1,2,3のタイミングでピンポンしよう、よォし……1…2…3ッ!)……の前に、少し深呼吸s」

「ねぇ」

「グォォォアアアアァァッ!!?」

「うるさっ」

 

 

 

レンノスケがインターホンを押すのにチキっていると、後ろからヤケに声の良い掛け声が響く。

己が背後を取られた事やいきなり声を掛けられた事に心の底から驚いてしまう。

後ろを向く。其処には……何やら見た事のある顔が居た。

 

 

 

「おぉビビった……あ、お前は」

「さっきから此処に突っ立っているけど、便利屋に何か依頼?」

「え、あ……あぁ、えっと…んんッ!……そうだ」

「そう、アポは取ってないよね?」

「あぁ、緊急だからな……もしかして、先に電話を入れた方が良かったか?」

「まぁね。そうしてくれた方が私達も色々と準備がしやすいからね」

 

 

 

目の前の少女を見る。話を聞く限り、やはり便利屋68の人間らしい。

 

凄まじい美貌だ。身体は華奢だが、戦闘力は中々な者の雰囲気がある。

溢れる神秘を見るに中の上の実力者だろう。

 

 

 

「そうか、すまない……あー、じゃあ今日は難しいか?」

「いや、いいよ。ここ最近はコレといった依頼はないからね。それに────()()()()()()()()()()()()()()()()何て、少し気になるし」

「!?!?!?」

 

 

 

うん、バレている。

レンノスケは冷や汗が止まらない。変装はして来た、バレる筈が無いのだ。

 

目の前の女性を見る。何故だが己を見る目が温かい。何でだ、己とあんたは初対面だろう。

 

いや先ずは────誤魔化そう。

 

 

 

「な………な、ナニ言ッテル?お、オォォ俺、普通の人間ダべ?」

「ぷっ!なに?それ。そんな下手な変装でバレないって思ってたの?」

「うぐっ、ま、まぁ……ふぅー、やっぱダメか。俺は変装が苦手なんだよな……やめだ、やめ」

 

 

 

そう言ってレンノスケはサングラスを取り、髪を下ろす。

 

その姿を、その女性は見る。何故だか顔は少し緩いモノに成っているが。

 

 

 

「外で、しかも事務所前で失礼するが────俺は”城ヶ崎レンノスケ”だ」

「うん、知ってる。裏社会や表社会問わず、キヴォトスで知らない人は居ないからね」

「よく聞くよ、ソレ……先に言っておく、俺はお前等に『頼み事』をしに来たんだ。ヴァルキューレとして来ては居ない、それは知っておいてくれ」

「そうみたいだね。いつもの制服じゃないし」

 

 

 

イヤに落ち着いている目の前の女性に、何故か押される。

普通ならば焦るだろう。自慢になってしまうが、己はこれでもヴァルキューレの警察として裏世界や不良達には恐れられている。

そんな人間が、悪よりである便利屋68の事務所前に居るのだ、普通ならば焦るか、迎撃の姿勢に入る。

 

 

 

「こういうのはアレだが……良いのか。俺は警察だぞ」

「それ以前にお客様でしょ。それにヴァルキューレの紋章を巻いていないって事は、そういった配慮でしょう?」

「(見透かされてる。風貌的にやはり歴戦だな……アルに続く№2か?コイツは)」

 

 

 

レンノスケは目の前の女性が相当の猛者だと見極める。

便利屋68のニ番手と見て良い。実力や頭のキレを考え見てもそう判断する。

 

 

 

「自己紹介が遅れた。私はこの便利屋68の課長を務めている『鬼方カヨコ』……詳しい話はこの中でしよっか」

「ぅ……あぁ、そう、だな…(この俺を前に随分と余裕だな……さっきから俺を見る目が温かいのも気掛かりだ、なんだ?)」

 

 

 

カヨコと名乗るその女性の後に続いて、レンノスケは便利屋68の事務所へと入っていく。

 

緊張する。この中に、己の憧れが居ると思うと動悸が激しくなる。

 

カヨコはゆっくり、己のペースに歩き進む。まるでレンノスケの気持ちの準備を施すような、そんな情が感じられた。

 

レンノスケは案内の元、奥へと入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”ガチャ…ッ”

 

 

 

「社長、連れて来たよ」

「────ご苦労よ課長。よく連れて来てくれたわ」

 

 

 

事務所のドアが開かれ、カヨコが入室する。

それに続くように、レンノスケも部屋へと入っていく。

 

周りを見渡せば、ソファーに『浅黄ムツキ』が楽に座っており、そして……社長机に『陸八魔アル』が威光を放ちながら、座っている。

 

 

 

「(この感じ……成程、流石にバレていたか)」

 

 

 

ヤケに客人を迎え入れる手筈が出来ている。まぁ、事務所前で数十分も無駄にデカい図体の男がウロウロしていたのだ、嫌でも目に入るだろう。

 

 

カヨコが流れる様にレンノスケを椅子に座らせ、奥から出てきた『伊草ハルカ』がレンノスケの前にあるテーブルにお茶を渡す。

 

レンノスケは「ありがとう」と伝える。それにハルカは「え、い、いぃぃ、いえ、粗茶、ですが……どうぞ」と、少々おどけてはいるが確りと対応に当たる。

 

お茶は美味かった。一気飲みした。

 

驚く事に全員が己を警戒していない。それがまた、レンノスケを不気味にさせる。

 

少しの沈黙が続くと、痺れを切らしたムツキがレンノスケの傍へと向かう。

 

 

 

「へ~……生で見るとすっごく大きいんだね~、君って」

「ん?あ、あぁ……筋肉の事か?」

「くふふ♪それプラス身長かな!ねぇねぇ、何mあるの?」

「あーっと、確か201だったか。少し伸びたんだよな最近……お前、名前は?」

「へー大きいね!そうだね自己紹介がまだだったね~!私は『浅黄ムツキ』って言うの!ムツキちゃんって呼んでいいよ?」

「分かった。宜しくなムツキちゃん」

「「「「!?!!??!?」」」」

 

 

 

便利屋に衝撃が走る。

ヤクザ顔負けの強面であり、且つ、男性でも類を見ない高身長で筋骨隆々である男が、ムツキを『ちゃん付け』で呼ぶのだ。

 

正直、面白い。

 

 

 

「ぷっ……あははは!!その顔で本当に”ちゃん”って!おもしろーい!」

「ちょっとムツキ……あんたも、別にムツキに合わせなくって良いから」

「そうか?まぁ何でもいいが……で、お前は?」

「あ、え?わ、私、ですか?あ、う、えっと……い、『伊草ハルカ』です……お、覚えて頂かなくて、大丈夫ですので……」

「何でだ?名前は聞いた方が良いだろ。伊草……いや、ハルカか。宜しくな、ハルカちゃん」

「え?あ、えっと……はい…っ」

 

 

 

ハルカが真っ青に染めた顔色で御礼を告ぐ。まさかの自分もちゃん付けだ。ちょっと怖い。

 

思ってた以上にフレンドリーなレンノスケの対応に、全員が驚愕を覚える。

 

 

 

「カヨコちゃん、ムツキちゃん、ハルカちゃん……そして、アル。自己紹介は出来た、これで、俺達には蟠りも警察と悪党としての壁も消え失せた。元より、現在の俺は警察としての証を放棄しているからどうでも好い話だがな」

「そうね、貴方を見るに私達を騙している様にも見えない。これで対等に事が運べるわね、レンノスケ」

「あぁ……じゃあ早速────取引を始めよう」

 

 

 

瞬間、全員がレンノスケに注目する。

 

彼女達にとって、超が付く程のビックネームが、今目の前に居る。

それも、自分達に取引をかけようとして。

 

【裏社会の怪物】”城ヶ崎レンノスケ”……便利屋68にとって、陸八魔アルにとって、その存在は憧れ其の者。彼が警察に成った今でも、過去の実績を込みで憧憬の眼差しで見る程に。

 

そんな彼が、今自分達に依頼を持ちかけようとしている。それが、何だか不思議で、可笑しく、でも嬉しかった。色んな感情が有るが、ワクワクが収まりそうにないのだ。

アルのみならず、ムツキもその一人だ。ムツキにはアルを救って貰った恩義がレンノスケにあった。アルがレンノスケに憧れている様を見るのは少し不安だったが、こうして目の前で会い、少しの交流を得て理解出来た……アルが憧れた存在は、間違っていなかったのだと。

 

そうして、レンノスケが数秒の間を開け……内容を話す。

 

 

 

「一つ先に聞きたいが、便利屋68は『金さえあれば何でも受けてくれる』んだよな?」

「えぇ、それが私達のスタンス。そう捉えて貰って構わないわ」

「了解だ………先に依頼料を提示しよう」

「えぇ、言ってちょうだい」

「1億でどうだ?」

「へぇ、良いじゃない。1億……ん?……え?」

”「は?」”

 

 

 

便利屋68に、電流走る。

 

 

 

 

「良いのか?良かった、じゃあ依頼内容だg」

「「「ちょっと待ったーーーっっ!!!」」」

「あ、あわわわわ……っっ!」

「おう、待つぞ」

「え?なに!?今なんて言ったの!?」

「い、1億って言わなかった!?言ったよねレンレン!?」

「ふぅ……一応聞くね?それ、本当?」

「本当だ。証拠に……これ、俺の口座だ。12億ある」

「「う、うわぁ、本当だぁ……」」

「まぁ、そうなるよな。俺だって未だに理解出来ん」

 

 

 

アルとムツキがその巨額な金に目を点とさせ呆気に取られる。

ハルカに至っては意味不明すぎて怖気づいてしまった。3名が言葉を失っていると、一人……年長者であるカヨコが極めて冷静にレンノスケへと言を投げる。

 

 

 

「企業クラスのお金がある事は分かった。ただ一つだけ聞きたい……私はこれでも情報収集能力は長けている方なの。それで、貴方が『極限の貧困者』であった事も知っている」

「……ほう」

「貴方が裏社会から足を洗って早くて1ヶ月は経つ。ヴァルキューレに成って数々の事件や悪徳組織を壊滅に追い込んでいるのは周知の事実────だからと云って、1ヶ月で此処までの金額を獲得できる筈がない。ねぇ、これは一体何のお金?先生はコレを知っているの?宝くじに当たったという訳でもないでしょう?」

 

 

 

カヨコは舐める様な視線でレンノスケに問いを掛ける。

端正な顔立ち故か、その問いは強烈だ。幼い子供だったら一瞬で泣き喚いているだろう。

 

カヨコの発言には誰も意を唱えなかった。あのアルでさえ、流石に疑問を感じざるを得なかった。

 

 

 

「……流石だな。俺の事をそこまで調べ上げたか」

「これは最近の情報だし、割とメジャーでしょ」

「そうだな。ヴァルキューレの方から隠しはしたが、流石に大胆に動けば漏れるのが情報だ。余り知られたくはない事だったが、致し方ない………結論から言おう」

 

 

 

レンノスケの言葉に、全員が耳を傾ける。

 

 

 

「────俺の【懸賞金額】は知っているか?」

「懸賞金額……?」

「レンレンの?破格だよねー確か」

「え、えっと、違っていたらすみません………その、7億では、なかったでしたか?」

「な、7おく!?」

「そうだ。よく知っているな、ハルカ」

「あ、はい……裏では、知らぬ方は居ないかと……」

「(え!?うそ!私知らなかったんだけど!?)」

 

 

 

アル以外は知っていたらしい。

そう、レンノスケの懸賞金は一人が抱える金額を遥かに超越した別次元の金額だ。

 

裏社会で、彼を打ち取れば一気に億万長者……ロマンにも程があるこの話、金に貪欲な裏社会の住人が知らぬ筈が無いのだ。

 

 

 

「……それが、なに?」

「俺の首に金を懸けやがったボケが、昨日判明してな。色々あって、そのゴミから慰謝料として5億プラスで金を頂いたんだ。だからこんなに金がある」

「成程ね、理は適っている。懸けていた人間が判明したならば過去の戦闘の慰謝料としてそれを支払うのは当然だしね……うん、教えてくれてありがとう」

「……感謝される筋合いはない。金のやり取りに関して、資金源の話は信用の問題に当たる。話して当然……それに、この俺を信じるってのか?俺は今じゃお前等の敵である警察で……裏では怪物と云われた人間だぞ」

 

 

 

レンノスケは少しの圧を出す。

 

裏社会に於いて、何よりも重要なのが【信用に値するか】だ。

表社会は法律が人間を護るが、裏社会はそんなもの関係ない。護るのはいつだって自分だ。加え裏切りは普通に起きる。警察の目では届かない地獄が起きるのが……裏社会だ。

 

だから金のやり取りの関係に於いて【信用】は絶対的に必要な条件なんだ。

 

 

 

「ふふ…関係ないよ。その話、私は信じる。皆は?」

「元より疑う何て考えてなかったからね!ムツキちゃんはもうレンレンの事、信用してるよん♪」

「あ、アル様の『恩人様』ですので、私も……信じます」

「………」

「……アル?」

 

 

 

カヨコ、ムツキ、ハルカがレンノスケの言動を信じる姿勢に成る。

 

だが、アルは一人……腕を組んで目を閉じてジッとする。疑問に感じたカヨコがアルに問いを掛ける。

 

 

 

「お金の在り方は分かったわ。私も、貴方を追い掛けていた身……少しだけど、貴方に関する情報は理解しているつもり。先生や情報屋か聞いたからね」

「……そうか」

 

 

 

アルがレンノスケの瞳を射抜く。

 

その瞳には、調べを聞く様な、圧迫さが有った。

 

 

 

「レンノスケさん。よく考えなさい……そのお金は、言ってしまえば貴方がこの苦痛で辛い3年間を経て得る事が出来た【命の結晶】なのよ。12億、そして私達に与えようとしているその1億は、大金も大金、貴方のこれまでを加味して尚、決して軽くないお金よ」

「……そうだな。お前の言う通り、なのかもしれん。俺の13、いや……3年間は────これ程の価値が有ったのかと云われてしまえば、もしかしたら、有ったのかもしれない」

「………」

「妙な話だ。この12億の大金を俺は未だに重さを計り知れていない。だがな………それでも俺は、お前達に頼みたいんだ。お前達にしか、頼めないんだ……この大金を投資してまでも、為して欲しい依頼なんだよ」

「……相当な覚悟の様ね。私じゃ手にも及ばない、力強い瞳をしている」

 

 

 

”あの頃と、全く変わっていない”

 

 

 

アルは、レンノスケの返答を聞き、笑みを作る。

 

 

 

「内容を聞かせて頂戴、レンノスケさん」

「ッ!」

「その内容がどうあれ、私達【便利屋68】は貴方に全面協力を約束するわ」

「ほ、本当か!?」

「ちょっと、社長?まだ内容を聞いていないのに……」

「彼が単独ではなく、私達を頼るのには確かな意味が有るわ。それに、私は彼に【恩】がある。借りを返さない何てアウトローじゃないもの」

「それは、そうかもしれないけど……」

「くふふ!良いじゃん良いじゃん!それでこそアルちゃん!」

「アル社長って言いなさい!ムツキ室長っ!」

「わ、私はアル様の命令に従うまでなので……」

「……感謝、するッ」

 

 

 

レンノスケは深くお辞儀をする。

 

正直、承諾されるとは思っていなかった。1億の案件、それは明確な危険を意味する。

アルの性格上、仲間の危機が約束されるのなら承諾を得る事は難しかった。心優しいから。

 

レンノスケは、全体的なサポートは必ずしようと、便利屋の子達を見てそう思った。

 

 

 

「本当に、ありがとう………内容は具体的に言わせて貰う。お前達を信じて【極秘】の情報も伝えさせて頂く」

「えぇ、お願いね」

「……昨日、ミレニアムの何者かに────俺の大切な人が攫われた」

”「ッ!!」”

「そして、妹分である幼子も、だ」

 

 

 

それは、余りにも酷く、余りにも非常な事案だった。

 

 

 

「奴等の計画はミレニアム生である『天童アリス』と云う生徒の殺害。その計画に、俺の存在が邪魔と判断し、この凶行に及んだんだ」

「待った……もう少し、詳しく話して」

「あぁ。先ずは『天童アリス』の件だが、コイツだ」

 

 

 

そう言ってレンノスケは一つの写真を取り出す。黒服が何故か持っていた、レンノスケとアリスのツーショット写真だ。

 

 

 

「この子が……」

「へー可愛いじゃん。なんでこの子が殺害なんてされる話になっちゃってるの?」

「どうやら、アリスは【世界を滅亡に導き兵器】らしい。俄かには信じ難いが、これは……正直、俺も少し思っている」

「どういう事よ?」

「アリスは正式な人間じゃないんだ。オートマタやロボ市民とは違う、不可思議な技術力で作られた人間の様なロボットなんだよ」

「う、うっそ!?」

「ロボットには全く見えないけど……」

「一見そうには見えんが、マジだ。あぁ……そうだな────この俺がアリスを【別次元の存在】と判断したと云えば、納得してくれるか?」

 

 

 

便利屋68に、驚きが舞い降りる。

だが、レンノスケが言うのだ……それを信じる他ない。

 

 

 

「つまり、その犯人が『天童アリス』って子のヘイローを破壊する手前、邪魔な存在に当たるレンノスケにとって『二人の大切な人』を攫い、無力化した……って事ね」

「レンレンは天童アリスちゃんと二人の救助に私達の手を借りたいって事ね~」

「そういう訳だ……理解して、くれたか?」

「……えぇ。嫌になる位にね。胸糞が悪い話ね、無関係なカタギを人質に取るなんて人道に反しているわ」

 

 

 

レンノスケの依頼する内容は、とても人間がする所業ではなかった。

アルは怒りを露にし、その犯人に向け明確な敵意を見せる。

 

 

 

「……あの子たちの為に、怒ってくれるんだな。やっぱ優しいな、お前は」

「っ……か、勘違いしないで頂戴!裏の住人にも秩序ってモンがあるでしょ!?無関係な人に対するその所業は私の許せないだけなのっ!」

「そうか……あぁ、それで良い」

 

 

 

そうだ、無関係だ。

キリノとアイラ……俺が巻き込んだ。こういう意味にも取れる。

 

だが……違うだろう。何をどうすれば無関係なあの二人を人質に取るなんざ出来る。

 

しかも……アリスの殺害を計画している。

余りにも馬鹿げている……狂気の沙汰だ。

 

 

 

「そうだよなァ……人間がする事じゃァねェわなぁ……ッッ」

「ッ!(雰囲気が……)」

「お前等、今の俺は……ぶっちゃけ、結構ギリギリなんだわ」

 

 

 

レンノスケの怒気が、殺意に変わる。

首に青筋が走り、全身の筋肉が隆起する。

便利屋68は、レンノスケの変貌に戸惑いを隠せない。

だが、その圧は自分達ではなく、その無法者に向けられている事は、分かった。

 

 

 

「愛しているキリノを傷付け攫い、妹分であるアイラですら攫って薄汚ねェ独房にブチ込んだッ……終いにはダチのアリスですら殺すだと?舐めやがってッッ………俺は今ッ、怒りで気が狂いそうなんだわァッッ!!!」

 

 

 

”ゾゾゾゾゾゾゾッッッ!!!!!”

 

 

 

全員の背筋が凍る。

全身の穴と云う穴から汗が出た感覚に襲われる……規格外な殺意に、身が竦んでしまう。

 

 

 

 

「……だが、俺一人じゃ駄目だ。あの子達を救うのには、俺だけじゃ叶わないんだ」

 

 

 

レンノスケが椅子から立ち上がり、そして……。

 

 

 

「────頼む。俺に力を貸してくれ」

 

 

 

土下座を取ったのだ。

 

 

 

「ちょ、ちょっとっ!?」

「いや、レンレン!?なにしてんのさ!」

「あ、あう……っ」

「………」

「相手は面倒だ。この俺に喧嘩を売る根性を持っている……正直、色々と未知数だ。無事に帰れるなんか俺ですら不明だ。だけど……俺には、お前達しか頼れる組織が居ねェ」

「れ、レンレン……」

「頼む……っ」

「……顔を上げて、レンノスケさん」

 

 

 

レンノスケの土下座、懇願の意を制止させる者が居た。

 

その声は、アルだ。

 

 

 

「先程言ったでしょう、私達は貴方に全面的に協力するって」

「……あぁ」

「その依頼、私達【便利屋68】も参戦させて頂くわ!依頼金は後払いでお願い。私達の働き次第で変動しても構わないわ」

「そうか……分かった。その……」

「……~~っ!もう!ほら、早く立ちあがって!男の子ならシャキっとしなさい!」

「あ、あぁ……すまん」

「謝るの禁止!さっきから”すまんすまん”って、謝る暇が有ったら準備に取り掛かりなさい!」

「す、すま……じゃない。えっと、分かった。俺は俺なりに準備しなきゃだよな」

「そうよ!」

 

 

 

アルがビシッと、まだ気持ちが落ち着いていないレンノスケに喝を入れる。

 

腕を組み、レンノスケを奮い立たせるアル。そんなアル相手に背筋を伸ばし、喝を聞き入れるレンノスケ。

 

二人の間に、もう蟠りはない。

 

互いに互いを尊重している。同年代と云う事もあり、自然と二人は距離を縮める事が出来た。

緊張していたのが、嘘みたいだ。

 

 

 

「……アル」

「ん?なにかしら?」

「その……ありがとう」

「ん……いいえ、それ程でも」

「……良い女だよな、お前って」

「へ!?」

「あ、すまん。口が滑った」

「く、口が滑ったで済まないんだけど!?も、もう……キリノさんって恋人が居るのでしょう?そういう発言は気を付けなさいよ?」

「あぁ……キリノには余り叱られたくないからな。だが……本当に逞しく、綺麗に成ったと思うよ。アル、お前はあの日から────とてつもない努力を重ねたんだな」

「ッ……ふふっ!それは勿論!だって────貴方に追い付きたい一心で頑張っていたんだもの!」

「ッ!く、ははッ……そうか」

 

 

 

笑い、話に花を咲かせる。

 

この空間には、あの日会った二人にしか出せない雰囲気があった。

だから誰も近付き、場を壊そうとは思わない。レンノスケの心の休憩にもなるからだ。

 

 

 

 

 

そしてレンノスケは便利屋68の事務所を後にし、家へと帰った。

 

 

 

 

便利屋68の会合は非常に良かった。何より、レンノスケの精神を安定させるには十分な程の人物達だったのだ。

 

 

これで、準備は整った。

 

 

────反撃の時間だ。

 

 

 

 

 

 

次回

 

怪物(英雄)の証明。





☆アルとレンノスケの関係性。


・互いが互いに向ける矢印が大きい二人です。互いを良い奴だと思い、互いを戦闘者として認め、互いの性格や人情を尊重し合い、互いにスケベな身体だなぁと思っている。

キリノを除いて、レンノスケはアルの事を『性的に見ている』唯一の存在でもある。
そしてアルも、レンノスケの事を『性的に見ている節』があるのだ。

言ってしまえば、レンノスケはキリノとアル以外では性的に見れないという事。
これはブラックマーケットで経験した、女の怖さが原因だ。


※仮に【R18版:怪物は、真面目な君に恋をした。】でアルとレンノスケのチョメチョメを執筆する事になりましたら、キリノとアル、レンノスケの3Pにしようと思っています。まぁ多分、ってかしない予定ではありますけど。

明日には何とか頑張ってR18版を出しますね!!!!!!!!くぅん


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  • レンノスケ、配信者に成る。
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  • 提示版(レンノスケだけど、質問ある?)
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  • 本編:カルバノグの兎編
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