☆短編
【アイラ、彼氏できたってよ:1話】
▽レンノスケとアイラによる、子ウサギ公園にて訓練後の帰り道……。
「ふんふふ~ん♪」
「お!なんだアイラ、今日は何時もよりやけに気分良さそうだな。訓練でも中々調子が良さそうだったし、なんだ?なんか良い事でもあったのか?教えてくれよー」
「えへへ~!わかる~?えへへっ!うーん…レンにぃならいっか言っても!教えてあげるー!」
「本当か?嬉しいな…んで、どんな良い事があったんだ?」
「えへへ、実はねー!私ね────トリニティと百鬼夜行との初等部学園交流会で、話した時に仲良くなった狼獣人で同い年の”ロウガくん”から『告白』されて、恋人になったのー!」
「アイラ、そいつの所に俺を連れて行きなさい」
次回
【アイラ、彼氏できたってよ:2話】
※この話は本編にも関わる話です。
では、本編です。
■
▽とある場所。
「────レンノスケさん」
「あぁ、分かっている……アリス、やっちまったか」
「状況を整理致しました。どうかお聞きください────先ず天童アリスが暴走しました。理由は複雑故、理解に難しいかもしれませんので、後程ご説明致します。彼女は多数の負傷者を出し、その中に友である才羽モモイが含まれていた。その件で心に深い傷を負い、塞ぎ込み、部屋に閉じこもっていた所……先生やゲーム開発部の皆さんに鼓舞されるも……『調月リオ』、現ミレニアムサイエンススクールの生徒会長である彼女に阻まれます」
「……調月リオ、知らん名前だが、ミレニアムの生徒会長か」
「えぇ。彼女は唯一アリスの危険性に気付き、そして……貴方の大切な存在である『キリノ嬢』と『アイラ嬢』を調月リオ直属の懐刀である者に攫わせた女性でもあります」
”ビキィィッッッ!!!!”
「ッッ!!!そいつがッ…!!」
「レンノスケさん、心中お察し致しますが、此処はどうか抑えて下さい」
「……ふぅ、あぁ、分かった。教えてくれて感謝する、ありがとう」
「いいえ……ククッ。では続きを、彼女はアリスに彼女の存在を明かしました。天童アリス……彼女は【名もなき神々の王女】と謳われ、キヴォトスを【終焉】に導く兵器なのです。これは、間違いありません。私が保証します」
「名も無き……キヴォトスを終焉か……スケールが半端ないな」
「おや?これは驚きだ。貴女の事ですから、そんな事を言うなと怒られそうでしたが」
「薄々感じていたからな。ハッキリ言って、アリスは普通じゃねェ。他の奴等とは何処か一線を画していた節があった。俺らの様に人間じゃなく、身体が機械で出来ている点も妙だったしな」
「意外と現実的なのですね」
「まぁそうじゃなきゃ生きられなかったし」
「おっと、これは失礼」
「……問題は【意思】だ。あいつは……アリスはその意思があって暴走したのか?」
レンノスケが問いを掛ける。
黒服は間を開けずに答える。
「いいえ、アレは共鳴に近い暴走でした。恐らく、天童アリスのもう一人の人格が彼女の心を一時的に支配し、あのような凶行をしたと踏んで良いでしょう」
「二重人格的な?」
「そう捉えても構いません。。情報を採集し得た話では、その人格は『Key』と呼ばれるモノらしいです。分かり易く言えば『Kye』は目的に忠実なアリスの従僕と思えば良いかもしれませんね」
「成程、つまりアリスは元々【世界を破壊する存在】として作られた兵器だが、ゲーム開発部と交流する事でソレを放棄。それを許さなかった……ケイ?が何かしらのトリガーを引いてアリスの身体を乗っ取って暴走、か……何とも胸糞が悪いな」
「そう思って頂ければと。因みに発音は『ケイ』ではなく『
レンノスケは大体の状況は分かった。
だがまだ聞きたい事がある。
「黒服、ミレニアムの奴等は今なにしてる?」
「作戦会議を行っていますね。一度は全員が放心に陥っていましたが……才羽モモイの復活により、士気が上がってアリスの救出に向かう準備を進めています」
「モモイあいつ、主人公過ぎだろ……だが、そういう事なら良い」
「それに加え────【便利屋68】含め、【アリウス・スクワッド】をエリドゥ外郭区域に配置致しました。私が干渉できるギリギリの場所です……作戦は『先生一行が調月リオと戦闘を開始した瞬間』を目安に、エリドゥ内部に侵入、其処で囚われのキリノ嬢、アイラ嬢を救出する……流れはこういった感じですね」
「分かり易い。だが俺は待機、救出されたと同時に出撃だな」
「はい……貴方の生命エネルギーは私でも誤魔化しが利かない『存在感』を出してしまうので、致し方ありませんね……これは飽く迄も救出作戦、貴方の存在が調月リオにバレてしまえば彼女は何をしでかすか分かりません故」
「クソが……トコトン腹が立つ野郎だな、調月ってボケは」
だがこれで、やる事はハッキリした。
作戦は至ってシンプル。しかし、難易度は高い。
救出作戦は此方側は万全で迎えるが、その後が問題だ。キリノとアイラの身柄がどんな状態かが退散のカギになる。
「(クソ野郎が言うに、下手な事はしないと言っていた……声質の抑揚から察するに、それは嘘じゃねェ……だが、相手はマジでやると云う情報がある。油断は出来んな……これに関しては
「────ククッ……レンノスケさん」
レンノスケが思案に浸っていると、黒服から声がかかる。
ハッと意識を取り戻し、黒服の方に目を向ける。
そして、気付く。彼の手には何かが……あった。
「ん?────……あ、まさか、それ」
「えぇお察しの通り……貴方の
それは、ナイフと云うには長く、刀剣と云うには短くて。
刀身は60㎝程か、幅も中々に広い。見るからに重く硬さも誇れるモノが有った。
デザインは全身が黒く、納める鞘は縦に一閃の赫と蒼が走っている。
惹き込まれる。その代物に目が離せない。
「ほぅ……珍しいな、ロングナイフか」
「絶妙にナイフと云える刀身に収める事が出来ました。ククッ……少し説明しますと、このナイフには特別な鉱石と黒曜石を用い製作致しました。何度も叩き、幾多の改良を重ねた私の最高傑作です……この世界で唯一無二の代物────貴方に相応しいかと」
「……触っても良いか?」
「えぇ、もう貴方の物ですから、お気に為さらず」
レンノスケはそのロングナイフの柄を握る。
実に馴染む。重さも申し分ない。
握力を最大限まで握るが、壊れない……クリア。
鞘を抜き刀身を見て確認、デザインに硬さが好み……クリア。
そして────絶対的条件……【膨大な神秘の負荷】だ。
「────シィィィィィィ…………ッッッ」
「────ッッ!!!」
”ゾゾゾゾゾゾゾゾッッッ!!!!”
黒服の背に走る、凍るような悪寒。
心臓が勝手に高鳴り、本能が逃げろと告げる。
生物としての逃走思考だ。
天候が悪くなっている。雲が渦巻き曇天へと変貌。
万力の握力で握られるロングナイフに膨大な神秘が流れる。
50…60…70…80………100。
リミッターを外した。ロングナイフは……破壊されていない。
「────完璧だ……ははッッ!」
神秘を込めるも粉々に成らない。クリア。
城ヶ崎レンノスケ、作戦決行日にて……遂に、己の武器を手に収める事に成功。
裏社会の怪物と恐れられ、表社会の英雄と謳われた男の武器が……見つかったのだ。
「────嗚呼……素晴らしい」
黒服は鳥肌が止まらなかった。
恐怖ではない。内から溢れる興奮の鳥肌だ。
彼は今、猛烈に感動している。
反転ではなく、只その神秘を最上最大限まで練り上げた者の神髄を、その眼で見て全身で浴びている。
「素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい…………………ククッ!!クックックックッ!!!嗚呼、何て────美しい事か…!」
全てが詰まっている。
神秘、恐怖、根源、概念、力、美しさ……言葉で言い表せないナニか。
そのナイフは常人では到底扱えない代物だ。重さは彼が持つバレットM2よりも遥かに重い。
両手で持っても、持つので精一杯……それを彼は片手一つで握りしめる。
そして、彼の異質で膨大な神秘を流し込まれたロングナイフは……禍々しい雰囲気を醸し出し、黒かった刀身が赤く染まる。
そのロングナイフは、レンノスケの全霊に────適応したのだ。
「馴染む、実に良いな……あぁ、最高だ…ッ」
思わず、笑みが零れてしまう。今までナイフを使っても本気で扱えば全て粉へと化してしまう。
強く握っても柄が折れて使い物に成らないガラクタへと変貌してしまう。
故に、嬉しかった……そして、楽しみだった。これで、初めて『本気でナイフを振るえるのか』……と。
「おい、黒服……黒服?」
「素晴らしい!何て……!────っと、申し訳御座いません、少々、いえ……酷く取り乱してしまいました。何ともお恥ずかしい限りです……」
「いや、いい……なぁ、コレ、マジで貰って良いのか?」
「何を仰いますか。先程もお伝えした通り、その”神器”は既に貴方の物です。いやしかし、ククッ……何ともまぁ、ククッ!貴方はどれだけ私を可笑しくさせるのです?興奮が収まりませんよ」
「誉め言葉として受け取るよ。んじゃァ────俺もそろそろ持ち場に向かうとするか」
レンノスケは一度、ロングナイフを鞘に納める。
そして黒服に向かい、こう告げる。
「黒服、お前のお陰で俺は一つ成長出来た。足りなかったピースがやっとハマった気分だ……コレで俺は、まだ強く成れる」
「クククッ!お褒めに預かり光栄です……これは、これ以上強くなって一体どうする……っと云うツッコミが必要ですかね?」
「あ?あぁ…まぁ良い。黒服、俺は持ち場に行く。合図が出たら直ぐに飛び出せるポジションに居る為にな」
「えぇ、承知しました……レンノスケさん、一応お伝えしますがそのロングナイフは貴方の『3割』を使えばどんな生徒であれ必ず斬れてしまいます。ヘイローの加護など無いが如く、貴方の力は絶大だ……くれぐれも、望まぬ未来を作らぬよう」
「当たり前だ。一人を除いてナイフを使うつもりはねぇよ」
「……不躾ながら、その『一人』をお聞きしても?」
少しに来なってしまったので、黒服はその『一人』とは誰かを聞いてしまう。
レンノスケは何の躊躇いも無く、無表情で告げる。
「あ?そんなの決まってんだろ────調月リオ以外に、一体……誰が居るッ!!」
答えは、やはり予想していた通り。この件の首謀者『調月リオ』だった。
「調月リオは俺を動かさないっていうクソみてぇな理由でキリノをッ……アイラを攫ったッ!俺がアリスの救出に手を貸す、その未来を読んでの行動でだ!ふざけるなァ!!キリノは何の関係もねぇ!ましてやアイラ何てまだ8才だぞッ!?まだ小学生の子供にこんな仕打ちッ、狂気の沙汰だ!!!許せる筈が無いッッ!!!」
沸々と湧いていた、常軌を逸した果ての無い怒り。
己の最愛であるキリノ、護るべき存在のアイラ、慕ってくれた勇者に憧れる友達アリス……この3名が一度に攫われた。それも、命を握られて。
────ストレスが溜まらない筈がないのだ。
押し殺していた激情が大爆発する。
満足に眠る事が出来なかったのも相まって、その勇ましい肉体から溢れる怒気は死すら生温い恐怖を帯びていた。
「キリノが何をした!?アイラが何をしたッ!?罪も何もない、平和に暮らしていた子達を無慈悲に攫い、薄汚ぇ独房にぶち込みやがってッ!此処まで俺を舐めた奴は人生で初めてだよッ………調月リオを追い詰め、その四肢を砕き惨く殺してやるッ!……と云いたい所だが、そんな事言ったらキリノが怒るからしないぜ」
「ククッ…殺さないのですね」
「俺はキリノふぁーすとだ。キリノが決めた事を俺は一生を懸けて約束すると決めてんだよ……だから、お前みたいに半殺しにする。四肢を滅茶苦茶にした後に腹部に7割の八勁をブチかましてやるッ」
「ククッ……懐かしいですね、思い出したくもありません。彼女も気の毒だ、アレを味わうとは、ね」
ギリギリの理性……キリノと云うレンノスケにとって絶対的なブレーキが居なければ、確実にリオを殺していただろう。
本来なら直ぐにでも向かって皆殺しにすれば一件落着だが、今の殻を破ったレンノスケは力が未知数だ、リミッターを解除すればどんな天災が起こるか分かったモンではない。
故に、キリノと云う最強のストッパーが光るのだ。
「ふぅぅぅぅぅー…………あー殺す。マジぶっ殺s……いや違う、半殺す。よし、半殺す」
「新しい単語ですね」
一度ブチギレて少し治まったか、レンノスケは深く息を吸い、呼吸を整える。
その間でも、着々と事は進んでいる。
アリス救出隊である先生一行は既にエリドゥへ。
そして……便利屋68、そしてアリウス・スクワッドも、エリドゥへ侵入を果たす。
■
▽エリドゥ、外郭区域。
「────貴女達が、今回私達と行動するアリウス・スクワッドね?」
「あぁ、そうだ」
決戦日、エリドゥの監視外区域にて、二つの組織が見合っていた。
一つは【便利屋68】、そしてもも一つは【アリウス・スクワッド】だ。
便利屋68はレンノスケが交渉、そいてアリウス・スクワッドは黒服がサオリ含め、直々に交渉を取ったのだ。
アリスク組は最初こそ黒服の突然の交渉に戸惑い、最大限の警戒を見せたモノの、その内容に全員が聞き込んだ。
城ヶ崎レンノスケの護るべき存在が、命の危険に脅されている。
その子達の救出に、手を貸してほしい。
レンノスケの願いを聞いた。
断る道理など無かった。別行動しているサオリ含め、皆がその交渉に肯定を見せる。
元はと云えば、自分達は無償で救って貰った身、此処で恩を返すのが筋と云うモノだ。
しかも……彼のお想い人のみならず、自分達の妹分であるアイラをも囚われている。
そんな状況、黙って居られる筈が無い。特にアツコは憤りを露にしていた。
そういう経緯で、アリスクはサオリと合流後、エリドゥの地へと侵入したのだ。
そして、其処で便利屋68と会合を果たした。
互いに自己紹介を終え、本題に入る。
「先ずは状況を整理するわ……クライアントから貴女達と共に囚われた『中務キリノ』、『天井アイラ』の救出に当たれとの指示があったわね?」
「我々もそう聞かされている。そいつの話によると、此処エリドゥの守護強度はキヴォトスでも類を見ない程に手強いらしい。加え、中務キリノとアイラが囚われている場所はエリドゥの内部の中央、その隔離施設だと云う」
「そう、だから其処まで辿り着くのに……私達『便利屋』が広場で戦うであろう先生達の援護を取り、ありとあらゆる手で場を錯乱状態に堕とす。敵からすれば私達の存在は完全たるイレギュラーだからね」
「その隙に、私達が内部に侵入して二人を救出……って事だね」
アル、サオリが状況の整理を話し合い、カヨコとミサキがそれぞれがやる目的を伝える。
組織として圧倒的な力を見せる両方だからこそ、此処まですんなり問題の解決に動けるのだろう。
そこで、アツコが一言問いを掛ける。
「レンさんが動くタイミングは?」
「対象の二人が救出された瞬間が彼が動くタイミングになる……けど、それを伝える手は私達は聞かされていない」
「それだったら私達に依頼を申し掛けた
「そうだよね~、まぁでも何をすればいいのか分かれば私達も動き易いから、話は早いね」
「わ、私達『便利屋』が表で敵を皆殺しにして、皆さんが裏で暗躍……という事、ですか…?」
「そういう事になりますね……えへへ、先生達の戦闘が合図ですから、もう直ぐですね」
黒服によれば、先生一行も既にエリドゥへ侵入の為に動いているとの事。
アル、サオリがそれぞれ端末を手に取る。
黒服の合図が、動く瞬間。
そうして、数分が経ち…………そして。
”ブー、ブー…”
『────戦闘が始まりました。皆さん、作戦開始です』
決戦の合図が送られた。
「よし……皆、行くわよ!」
「行くぞ………お前達ッ!」
”「了解ッッ!!」”
便利屋68、アリウス・スクワッドにより共同作戦が執行。
この両組織によって、この戦線はとんでもない状況へと進む。
▽エリドゥ
「────コールサイン・ゼロフォー。『飛鳥馬トキ』、御挨拶申し上げます」
エリドゥ広場にて、アリス救出に動いた先生一行はリオのドローンと戦闘を行っていた。
そこで、二手に分かれていた【C&C】のアスナ、アカネ、カリンの元に一人の刺客が現れた。
それは調月リオの直属のエージェントである『飛鳥馬トキ』……命令の元、キリノとアイラを攫った張本人だ。
「思ったよりも早く出て来てくれましたね」
「私達が此処に来る事は最初からお見通しだった訳だ」
「はい、リオ様は全て把握されて御出です。C&C判断、その動きも……そして勿論、先生の狙いも全て」
アカネ、カリンが言を投げ、トキが丁寧に返す。
メイドの所作全てが一級品。リオが傍に置く彼女は、その身に隙を見せない。
「ですので、僭越ながら申し上げます。これ以上の抵抗は無意味です────大人しく投降をお願い致します」
「ほう……なるほど」
「う~ん、それはちょっと難しいかなぁ?」
「……そう言うと思って────ッ!?」
”ドゴォォォン!!!”
瞬間、けたたましい爆発音が鳴り響く。
トキが咄嗟に避け、事態を把握する。犯人は……アカネだ。
「室笠アカネ先輩……広範囲の爆発物を得手とする────C&Cの要注意人物」
「後輩にそう云われるのは少しお恥ずかしいですね。今のは只の御挨拶ですが……先ずは、初めまして後輩さん。確か、トキさん……でしたね?」
「………」
「先日は部長が大変お世話に成ったと伺いました。それに投降しろ何てとれも丁寧な御勧告まで頂いて……あのリオ会長の直属のボディーガードだと云う事は聞き及んでいましたが、全く────見くびられたモノですね?C&Cを」
「ッ!」
瞬間、3名の纏う雰囲気が変わる。
その目は、今、眼の前に佇む一人の少女に向けられている。
戦闘者として、プライドを持って立って居る。
「目には目を歯には歯を、本日はその為に来ております。貴女が此処で投降なさるのでしたら、水に流す事も可能ですよ?」
「……それは出来ません。私はリオ様から命令を授かっています…『指示に背いたC&Cを制圧せよ』と。それに……私は…」
────もう、光ある”其処”へは…行けませんから。
「……え?」
「今、何て?」
「……いえ、何でもありません。つまるところ、私はこの場から引く事は出来ません」
聞き逃す……ことは無かった。
いま確かに、トキは意味深な事を言った。呟き、歯を噛み締めて、無に等しいポーカーフェイスを僅かに苦くさせた。
だが、何かを思っても仕方がない。トキは既に臨戦態勢、己達も意を決して力を籠める。
「……ふーん、真面目ちゃんなんだね?トキちゃんって」
アスナも、何かを悟ったのか……先ほど見せていた笑みは消え失せている。
その表情からは、少しの切なさを感じさせた。
珍しい事だ。戦闘が好きなアスナが、あからさまに戦闘の意欲を失っている。
純粋にやる気が落ちたか、それとも……。
「そういえば、先生とネル先輩が居ませんね。つまりそういう作戦なのでしょう……先輩方は私の足止め要員、ですがそれは限りなく正解です。リオ様の【武装】を纏った私との正面戦闘を避ける、その間に最強戦力であるネル先輩を自由にさせる────えぇ、それであれば確かに勝算は上がる事でしょう」
「────誰に勝算があるって?」
突如、背後から怒気を含ませた声を聞く。
そして放たれるサブマシンガン弾。トキは軽やかに回避する。
地面に撃ち付けられたソレは地を抉り、確かな弾創を作る。
その声の正体、それは…ミレニアム最強『美甘ネル』であった。
このタイミングで、ネルが合流……ハッキリいって、トキからすれば最悪だ。
「あはは!遅かったじゃん部長!」
「ネル先輩が……何故、此処に……?」
「あぁ?んなの決まってんだろ────リベンジマッチだよ」
「リベンジ…?」
「あたしが別行動してたら、テメェは絶対に止めに来る。それは面倒だ、最高にな……それならチビを助けに行くのは────テメェを倒した〈後〉でも遅くねぇって事だ」
「……」
「おい後輩!この間はよくもやってくれたな?」
ネルが構える。
トキも構える。
張り詰めた緊張の糸が、今────
「先輩に楯突いたらどうなるか……じ~っくり教えてやるよッッ!!!」
「────対応、開始」
豪快に、ブチ切られた。
次回
覚醒せし神秘に、共鳴せし最強。
展開は早めです。
纏めると字うなります。
☆アリス暴走、リオに攫われる ⇒ ゲーム本編通り先生含め全員でアリスを救出する為エリドゥへ向かう ⇒ それを確認した黒服がレンノスケに伝え、便利屋68とアリスク(サオリ合流)が黒服経由でエリドゥへと侵入 ⇒ レンノスケの新武器であるロングナイフによって戦闘力が超大幅強化、そしてブチギレ ⇒ 飛鳥馬トキの葛藤と後悔、従僕としての責任と忠誠の重さ ⇒ C&Cとトキによる戦闘(今ココ!)
☆補足
:現在の飛鳥馬トキの精神状態はくしゃくしゃにした紙くらいズタボロである。
・トキはレンノスケのキリノやアイラとの交流や仲睦まじい光景を見て、幸せで微笑ましいと感じて尚、この様な行動に移った。非情だ、人としてどうなのか、最低最悪だ……そう思っても『命令は命令』……主君であるリオに対し逆らうと云う概念はトキには無いのだ。レンノスケの目も当てられない慟哭、キリノの表には出さぬ恐怖に歪んだ想い、アイラのキリノに抱きかかえられ怯える様子、これから殺す予定であるアリス……それらに関与している己に、トキは嫌気が差してしまう。
そのポーカーフェイスの裏には、酷く荒んだ顔が眠っているのだ。
因みにリオはトキの精神状態を案じてはいる。だが、キヴォトスの存亡を懸けた争い、1か100の選択肢、レンノスケを敵に回す意味……それでもリオは進むと決めたのだ。
リオはトキの強さを
次回は遂にレンノスケの〈本気〉をお出しします。エデン条約編の様な大デバフは抜きの、ガチのマジの戦闘です。
誤字報告感想ここすき評価いつも励みに成っております。ありがとう御座います。
アンケートです。どうか、御投票を宜しくお願い致します。
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レンノスケ、配信者に成る。
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16歳組によるバレーボール同盟
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キリノと二人旅
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提示版(レンノスケだけど、質問ある?)
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レンノスケの過去編
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本編:カルバノグの兎編