怪物は、真面目な君に恋をした。   作:カブトムシの相棒

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先ずは謝罪を、戦闘シーンは次回になります。今回はその描写が強めです。




【アイラ、彼氏できたってよ:2話】


────トリニティ、とある公園にて……。


「ここで待ってたら、直ぐに来るってー!」
「そうか……ふぅ………」


レンノスケは究極の思案を繰り広げていた。
それは勿論、アイラの彼氏こと『ロウガ』と云う名の存在である。


「(いや、いやいや…ちょ待てよ。彼氏?アイラに??狼獣人の???いや別に狼獣人なのは良い、キヴォトスじゃ生徒と獣人が付き合うのは珍しくも何ともねぇ……けど彼氏?え、余りにも衝撃的過ぎて詳しく聞けなかったけど何?イチカやシキから初等部の子達が百鬼夜行へ交流会するって連絡は来てたし何ならアイラから〈百鬼やこう楽しいー!〉ってモモトーク来たから事情は知ってるが……お、俺の知らぬ間にアイラが他の幼子と、え??こ、恋人の関係に?いや否定はしないし、普通に良い関係で落ち着いてほしい気持ちではあるが………早過ぎんか?展開が……あれ?俺だけか思ってるの。アイラって8才だよな……あぁ駄目だ、俺がそう思っても説得力の欠片もねェ……コレ、キリノに言ったら喜びそうだが、カンナ局長に言ったら発狂しそうだなァ………俺ですらそいつに会わせろって言っちまったし。まぁ兎に角、問題はそのロウガって子が良い子か悪い子かだな…俺はブラックマーケットで得た経験で人の眼を見ればそいつが《善》か《悪》かが分かる。8才の子供であるロウガって子には申し訳ないが………アイラの兄貴分である俺が、お前を品定めしてやr)」

「あ!来た!おーいロウガくーん!」
「むぅ!(来たか!さぁ、どんなヤツなんだ────)」


其処に現れたのは……白い毛皮を靡かせ、大きなふさふさの尻尾を振るう、8才にしては体躯が良い狼獣人の幼子だった。


「ひ、久しぶり、アイラちゃん。それと……はっ、初めまして!城ヶ崎、レンノスケさん!僕『犬飼ロウガ』っていいます…!」
「!?……あ、あぁ、初めまして。俺は…御存じの通り城ヶ崎レンノスケだ。今日はアイラが君に会わせてくれるって言って少しだけお邪魔する。少しの間だけ居ても大丈夫か?」
「だっ!だだ、大丈夫です!」
「ひさしぶりー!でも3日前だから、そんなじゃない?」
「そう、かな?でも…会えて、嬉しい」
「!……にへへ!なんか、照れるね…!」
「(ふむ………キリノ、いや、カンナに近い正義感を秘めた瞳に、何処か甘さが残る様な、しかし強い者が持つ戦闘的才能を秘めているな。見た感じ身体の作りも悪くねぇ……良い子、だな)」


レンノスケは悟った。そして理解した。
アイラは、良い子と付き合っているのだと。
早いかどうかは、本人たち次第で外野が口を開くモノじゃない。その本質をレンノスケは理解しつつも、やはり心配が勝り瞳を覗いてしまった。だが、確信した。ロウガと云う名のこの子は、根っからの善人であると。

疑いの余地が無い。このまま何の不変も無く立派に育ってほしいものだと思う。


「あ…あのっ!レンノスケさん!」
「ん?どうした?」
「え、えっと……僕!僕…えっと……っ」


もにょもにょと、気恥ずかしそうに何かを伝えようとするが、何も言えない。
理由は知らぬが、己に何かを伝えたい気があるのは分かる。レンノスケはアイラとロウガの視線に合わせる為、しゃがみ込む。


「ゆっくりで良い、俺に何か聞きたい事があるんなら、落ち着いて話してみろ」
「わっ、あう……」
「ロウガくん!大丈夫だよ!レンにぃ、すっごく優しいから!」
「アイラちゃん……う、うんっ!あ、あの!レンノスケさん!ぼ、ぼくをっ!」
「あぁ、なんだ?」


ロウガが言う。


「僕を────弟子にして下さい!」

「……うぇ??」



次回

【アイラ、彼氏できるってよ:3話】




☆犬飼ロウガプロフィール


名前:犬飼ロウガ

性別:男

年齢:8才(アイラと同い年)

身長:142㎝

武器:ウィンチェスターM1887

学園:百鬼夜行のとある小学校(初等部)

特徴:百鬼夜行にて生活する白い狼の獣人。百鬼夜行連合学院とはまた別の学校に通っており、其処には人型の生徒ではなく獣人が行く場所となっている。(区別している設定にします)
トリニティの初等部と交流会との事で選ばれたのがその学園で、アイラとロウガは其処で出会った。最初から何かしら波長が合い、仲良く話せて友達へと昇華。着々と親睦を深め早い段階でロウガから告白、アイラは隙を与えぬ速度で了承、二人は齢8で恋人に。そして……ある日、ロウガが百鬼夜行を歩いていると『城ヶ崎レンノスケ』が魑魅一座を派手に破壊してのを目撃。そこで彼に戦闘者として一目惚れをし、アイラにレンノスケの事を伝えればあら不思議、レンノスケはアイラの恩人で且つ、兄貴分であると判明。そこで、丁度良かったのでアイラはレンノスケとロウガを会わせ、今に至る。身長は8歳ながら大きい。

分かり易く容姿の特徴を云えば、ゼンゼロの『ライカン』風の容姿で、それを幼くさせた感じだと思えば大丈夫です。この子は後々出さなきゃここ詰むな―って思ってたので、もう短編として出しました。いずれ本編にも出します。



少し長くなってしまいました、申し訳御座いません。



では、本編です。



覚醒せし神秘に、共鳴せし最強。

「────予想はしていたけれど……本当に此処まで来たのね、先生」

「リオ、貴女を止めに来たわよ」

 

 

 

エリドゥの戦地にて、ミレニアムの生徒を率いる先生と、相対するリオによる会合が行われていた。

リオは電子機器を用い、プログラムで姿を見せ対話に受け織っている。

 

 

 

「そう……やはりあの時の私の言動だけでは貴女を……そして、その子達を説得できなかったのね…………ねぇ、先生」

 

 

 

その子達とは【ゲーム開発部】と【エンジニア部】、そして【ヴェリタス】に【C&C】を率いている。【トレーニング部】も協力に一つ噛んでいる。錚々たる面々だ。

 

そして、ふと、リオが先生に向けこう問う。

 

 

 

 

「────()()()()()()を御存じかしら?」

「トロッコ……」

「……問題?」

 

 

 

リオの問いに反応したのはミドリとユズだ。

この様子、理解をしていない様だとみるや否や、リオは淡々と意味を教授していく。

 

 

 

「簡単な話よ。故障し、止まる事が出来なくなってしまった列車がレールの上を走っている時、大多数を生かす為に一人を犠牲にするか、それとも一人を生かす為に大多数を犠牲にするか────そういう選択を迫る問題」

「………」

「そう、誰かがレバーを引く役割を担わなければならない。私は、それを喜んでその役を引き受けようとしているだけ」

 

 

 

それは余りにも、あんまりな話だ。

 

だがしかし……残酷な事に、理は適っている。

どうしようもない時、そんな状況が舞い込んで来てしまった時、誰かが手を汚さなければならない。

 

そういう事は、この世で幾らでも存在する。

 

リオは只、その役目をミレニアムの長として全うしようとしているだけ。彼女は自分を信じ、疑わない。真っ直ぐ進む事しか出来ない。だからこの様な残酷な選択肢が出て来てしまったのだ。

 

 

 

「悪意も敵意も、端から持ち合わせてはいないわ。だってそうでしょう?それが無かったらアレを殺す同義何て無いもの。私は…私はただ────」

 

────もう!分かんないよ何言ってるか!!難しい話は好いから、アリスを返して!

 

「あら、貴女は……」

 

 

 

それでも、理解がイマイチ出来なくとも、叫ぶものは居る。御託は良いと絶叫する者は居る。モモイは只、自分達の親友を返して欲しいだけ。難しい話を並べて親友を殺そうとする目の前の存在を真っ向から否定する。

モモイの純粋で善様な精神は、幾ら複雑に折られようが絶対に死にはしないのだ。

 

 

 

「話は聞いたんだからね!会長が意味不明な事を言ってアリスを連れ去ったって!」

「……意味不明な話ではないわ。他の誰でもない『名もなき神々の王女』に攻撃された貴女なら分かるのではなくて?」

「だから分かんないって!」

「ッ!」

「私はただ、会長の元からアリスを連れ出したいだけ!」

「お姉ちゃん……」

「モモイ……」

 

 

 

その純粋性、その善性……余りにも真っすぐで優しい。

ミドリもユズも、聞いてしまう。その主人公力は、正にモモイと云う在り方だ。

 

 

 

「そもそも!キヴォトスの脅威だとか何とか理由を付けてアリスを誘拐するなんて、スケールが小さすぎるよ!普段私が書いているシナリオの方がず~~~っと大きい!私達にそんな話が通じる訳ないじゃん!」

「……そうね、今すぐ貴女達に納得して貰うのは難しいのでしょうね……私自身、直ぐに納得して貰えない事は、十分に理解しているもの」

「じゃあ────」

 

 

 

しかし────モモイの声も虚しく……。

 

 

 

「────アバンギャルド君、発進」

 

 

 

”ガラガラガラガラ……”

 

 

 

突如、先生一行の目の前に現れる奇抜なロボット。

非情に大きく、何処か不可思議な覇気を感じさせる……だが。

 

 

 

「うわぁ!?ダサ……」

「確かに、あんまり可愛いデザインじゃないけど……」

「……見た目は関係ないわ」

「本音がちょっと見えてるわよ、リオ」

「理解されないのなら、もういいわ……そのままで構わない」

 

 

 

瞬間────アバンギャルド君が戦闘モードに突入する。

 

 

 

「う、うわぁぁぁ!?」

「気を付けて!来るわよ!!」

 

 

 

エリドゥにて……遂に、開戦。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────こっちだよ、ヒマリ部長」

「ふふ、まさか『エイミ』……貴女が私を助けに来て下さるとは……」

 

 

 

エリドゥにある、とある独房にて……リオに囚われていたヒマリが救出された。

救出者は『和泉元エイミ』……【特異現象捜査部】の部員にて、リオの側近の一人であった者。

 

実力は1年生ながらトップクラスに君臨する程の戦闘者で、電子機器の扱いにも長けている万能型。服装以外は欠点の無い実力者である。

 

 

 

「しかし、これはリオへの裏切りになると思いますが……大丈夫なのですか?」

「うーん…さぁ?『私がリオに会いに行った後、24時間経っても戻って来なかったら、冷蔵庫にあるプリンを食べていい』……って部長が言ったでしょ?」

「えぇ、確かに」

「でも、どうせなら一緒に食べたいなって思っただけ」

「そうなのですね……ふふっ、後輩がどうやって来てくれるのか、想像しながら待つと云うのは思いの外楽しいモノですね。お陰様でリオの面白い顔が見れました」

「……一体、どっちが悪趣味なんだか」

「あら、悪趣味何て失礼な。超天才病弱美少女系ハッカーの高尚な趣味と訂正して頂けませんか?」

「はいはい、と云うか部長……状況が悪いのは変わらなくない?このままじゃ負け戦だよ?私達が加勢しても互角になるかどうか……」

 

 

 

再会後の話を区切り、現状を分析する。

事態は良くはない。アバンギャルド君も居て、トキも居る。複数の攻撃型ドローンも搭載しているとなれば戦力はリオに傾いているだろう。

 

 

 

「えぇ、勿論です。エイミがこうやって私を助けてくれたように、私には頼れる後輩が、たーくさん居るのですよ?」

「?…………あ」

 

 

 

場所は変わり、アバンギャルド君との戦地にて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

”ガラガラ……ピー、ガラガラ……”

 

 

 

 

「あれ?」

「アバンギャルド君の動きが、急に鈍く……?」

 

「────ふぅ……何とか間に合ったかな。皆、大丈夫?」

 

「……チヒロ!!」

「チヒロ先輩!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……成程、《鏡》ね」

「ご名答。こんな時の為にチーちゃんに任せて良かったです。あの子ならやってくれると信じていました」

 

 

 

ヒマリは予めチヒロに鏡を渡したのだ。

そしてチヒロは難なくエリドゥのネットワークを鏡でハッキング、見事にアバンギャルド君の動きを鈍くさせると云う御業を披露したのだ。

 

しかし、これも時間制。チヒロ側も『早乙女スミレ』とタッグを組んで交戦に当たっている。

 

 

 

「確かにこれなら大きく戦局は変わるね」

「えぇ、間違いなく………ですが、それだけではありません」

「ん?まだ何かあるの?」

「えぇ、ありますね。それも大きく、いえ……この戦局を引っ繰り返す程の秘密兵器が」

 

 

 

ヒマリがイヤらしく笑うも、それは少しだけ。

 

その表情には、少しの不安があった。

 

 

 

「なに?その戦局を引っ繰り返す秘密兵器って」

「……正直、この様な惨事に巻き込んでしまった事が申し訳が立たない。そんな人が居ます────”城ヶ崎レンノスケ”さん……彼、恐らくブチギレているでしょう」

「え…城ヶ崎レンノスケ?なんで急にそんなビックネームが?今は関係なくない?」

「いいえ、関係はあります。それも超が付く程の……先程も言いましたが、彼は巻き込まれた被害者側です。先日、彼の想い人が拉致されたのですよ」

「想い人?」

「えぇ、全く………随分と命知らずな真似をしてくれましたね。彼がどう動くかは分かりませんが、恐らく何かしらの別動隊が既にエリドゥに侵入を果たしているのは間違いないでしょう……さて、どうなりますかね」

「……兎に角、城ヶ崎レンノスケが動く案件になっちゃったって事?」

 

 

 

ヒマリが頷く。

 

 

 

「そう……大分マズいね、それ」

「あら、信じて下さるのですか?」

「まぁね、正直城ヶ崎レンノスケが居るかもとは思ってたし。ヒマリ部長まだ空見てないでしょ?此処はまだだけど、私が来る時のミレニアム学園の空、異様に()()だったし」

「……彼こそ特異現象ですね、もう」

 

 

 

レンノスケが起こす事を、二人は知っている。

 

その存在が為す事情を、二人は知っている。

 

故に、もう知らんぷりだ。彼に対する対策など、ないのだから。

デカグラマトンよりも恐ろしい概念と云える。そんな生命体が怒っている。正直、アリスの件よりも非常事態だろう。

 

後は別動隊に任せ、ヒマリたちは自分達が為すべき最善をする為、其処を後にし。。

 

 

 

 

 

 

 

 

エリドゥ、内部……。

 

 

 

 

「────コッチだ。後6分で着く算段だが、油断するな」

「了解。そのまま先導して」

「……首尾はどうなってる?」

「も、問題ないです。残りの弾倉も多くあります……」

「くふふ♪あの黒い人、敵が少ないルートを選んでくれるから楽でいいね」

「それにしても此処、凄く広いね……独房を探すだけでも苦労しそう」

「まぁこれだけの戦力、最悪が無い限り問題は無いと思うけど……油断は禁物だね」

 

 

 

便利屋68、そしてアリウス・スクワッドが全力でエリドゥの内部を駆ける。

恐らくまだリオには気付かれていないルートを辿っているだろう。仮に敵線センサーに触れても黒服が何とかしてくれる。

今の所は問題なく目的地まで進めているが、問題は……ターゲットの安否だ。

 

 

 

「(正直怖いね……ビックシスター調月リオ。完璧な人間で隙が無い合理主義者……まさか、こんな事件を起こすような人だとは思わなかったけど、やると云ったらやる人格ではあった筈。中務キリノに天丈アイラ……可能なら無事で居て欲しいけど)」

 

 

 

そう思案するは中間を走る鬼方カヨコだ。

諜報系に関して彼女は中々優秀な部類だ。調月リオの情報もそれなりに所持している。

 

故に少し怖いと感じてしまう。2人の負傷はレンノスケの怒りを更に買う羽目になる。可能なら無事でいて欲しいが……。

 

 

 

”……ガン………ガン…………ガンッ”

 

 

 

「……ん?」

「何か、聞こえません?」

「何か叩いてる様な……?」

 

 

 

何かが聴こえる。叩く様な、そんな音が。

そう思っていると、行き止まりに着いた。

走る向こう側、到着してみれば一際目立つドアがあった。

 

サオリがドアノブを握る。無論、開かない。

 

 

 

「シュッ!!」

 

 

 

”バンッ!”

 

 

 

「わっ…(か、カッコいい!)」

「入るぞ、来い」

 

 

 

サオリがドアを蹴破る。鉄製のドアでかなり重そうだったが、サオリは難なく開放。

その仕草や様子にアウトロー味を感じたアルがキラキラとさせるが、今は仕事。集中する。

 

そして、中を見れば……其処は、独房だった。

 

 

 

「座標は此処を標している。此処の何処かに居る筈……ん?」

 

「っ!……!………!」

「~~!……!………っっ!?」

 

「……話し声?」

「言い争いにも聞こえるけど……」

「この無駄に広い独房の最奥の方だね」

「恐らく其処ね……行くわよ」

 

 

 

全員が忍び足で奥へと近づく。すれば段々と話し声が近くなる。同時に、なにかを叩く音も近付いて行った。

 

そして……遂に着いた。

 

そっと陰からその様子を確認する。其処には────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────せぇぇぇいやぁぁぁっっ!!!」

 

 

 

”ドンッ!!!”

 

 

 

「いったぁぁぁい!!」

「も、もういいよキリねぇ!絶対に壊れないよぉ、この感じぃ……」

「いいえ!諦めてはいけませんアイラちゃん!やはり待つのではなく私達が行動しなくては!絶対にこの鉄柵を破壊して見せます!レンノスケに鍛えられてるんですから!うわーんレンノスケ―!早く会いたいですよー!(情緒不安定)」

「うぅ……キリねぇがレンにぃと会えなさ過ぎて、おかしくなっちゃった……」

「って!アイラちゃんが居る前でナニを弱気になっているのですか私!よーし!行きますよー!せーーーーいっっ!!」

 

 

 

”ドンッ………グキンっ!”

 

 

 

「あいったー!か、肩が、肩が外れましたー!!」

「キリねぇー!」

 

 

 

”ギャーギャー!!ギャーギャー!!!”

 

 

 

”「えぇ………(困惑)」”

 

 

 

鉄柵に特攻をかます元気のいい女性と、涙目で必死に止めようとする少女が居た。

 

白い服装のヴァルキューレ生は保護対象である『中務キリノ』で間違いない。その後ろで涙目になっている少女も保護対象である『天丈アイラ』で問題ない。

 

聞くに、自分たちでもどうにかしようとして、あの硬い鉄柵に体当たりをしているのだろう。無謀だが。

 

だが今は非常に痛そうに肩を抱えている。恐らく脱臼だろう、バカである。

 

 

 

「……と、取り合えず、助けに行くぞ」

「そうだね……」

「な、何だか、元気そうですね~……えへへ、心配して損しました」

「良かった、アイラ元気そうで。あの子……キリノさんの影響かな?」

 

 

 

アリスクが陰から出て、二人の救助に動く。

続くように便利屋68も陰から出て、騒ぐ二人の元へ向かう。

 

 

 

「(アイラ、元気そうで何よりだ……しかし、この人があの城ヶ崎レンノスケの………)」

「(何て言うか、あの怪物の恋人にしては随分と馬鹿そうだけど……好みって言うのは、意外と分からないね)」

「(あ、アイラちゃん……ふへへ、以前よりも表情が豊かに成ってますね……それにしても、あの方が怪物さんの彼女さん……こう言ってはアレですけど、意外過ぎますね)」

「(ふーん、あの元気な子が、ね~……)」

 

 

 

上からサオリ、ミサキ、ヒヨリ、アツコの順でキリノを一瞥する。

 

 

 

「(くふふ♪何だかアルちゃん味があって可愛いね~)」

「(あう……良かったです、生きてて…)」

「(成程ね。天真爛漫、あの子が好きそうなタイプだね……ちょっと元気すぎな一面があるっぽいけど)」

「(良かったー!肩以外は怪我してないっぽいわね!)」

 

 

 

便利屋68もまた、キリノを一瞥する。

 

それぞれの組織、キリノの容姿や性格をあの一連で少し見抜く。

無鉄砲な感じで、純粋な正義感を秘めているのだと理解する。真の警察らしい子だ。

 

あの城ヶ崎レンノスケが惚れた女……肩書に恥じない、活気が良い女の子だと…そう思う。

 

 

 

「いててて……ん?わぁ!?だ、誰ですか貴女達は!?」

「へ?…………あっ」

 

 

 

陰から出て、二人が囚われている独房の目の前に立つと、漸くその存在達に気付く。

 

キリノは一瞬驚くも、直ぐに反応して肩を抑えながらアイラの目の前に立ち、己を肉壁と成るようにアイラを護る。

 

しかしアイラはキリノの背中を掻い潜り、鉄柵の前に立ってその存在を……アリウス・スクワッドの姿をジッと見つめる。

 

まるで…………別れた家族を、見つけた様に。

 

 

 

「あ、アイラちゃん!近寄っては……っ」

「……お姉、ちゃん?サオリさん……ミサキさん、ヒヨリ…さん?」

「……あぁ、そうだ」

「久しぶり、アイラ」

「お久しぶりです、アイラちゃん……壮健そう、とは…また違う状況ですけど」

「あ、あっ……みん、みんな…っ」

「ふふっ。元気にしてた?アイラ」

「おねえちゃん……おねえちゃ、アツコ、おねえちゃんだ…っ!」

 

 

 

アイラが涙目を浮かべて、鉄柵を握りながら、アリスクを見つめる。

アリスクの面々は温かい視線と言葉をアイラに送る。

 

そう、アイラは元々【アリウス】出身だ。しかも、アイラは幼いながら彼女達『アリウス・スクワッド』の訓練に参加した経緯もある。

 

アリスクはアイラにとって己を成長させてくれた存在だ。抱える想いはかなり強い。

そして、己を拾った恩人である……秤アツコ、アイラにとって本当の姉とも云える存在。

 

ずっと、会いたかった。

ずっと、会えなかった。

 

レンノスケから元気にしてると聞いても、やはり不安だった。自分だけのうのうとトリニティで生きて良いのか、夜寝る時、思った日も有った。

 

 

 

「はいはーい!ちょっと離れててね~」

 

 

 

”ボンッ!”

 

 

 

ツムギが小型爆弾を用い、檻の施錠を破壊する。

 

そうした事で、自動的に独房の檻が開く。そうして……アイラは、しゃがみ込むアツコの元へ向かう。

 

 

 

”ぎゅっ……ぎゅぅぅぅ”

 

 

 

「う、うぅぅっ……お、おねえちゃっ……」

「あちゃー、泣いちゃって。ふふっ、泣き虫な所は変わっていないね」

「ふぐぅっ……会いたかった…っ」

「うん、私も会いたかった。アイラ……ごめんね、大変な思いをさせちゃったよね」

「うぅん……レンにぃが、キリねぇが…助けてくれたから……っ!」

「そっか────アイラ……アイラ、アイラっ…っ……ごめんねぇっ、ごめん……私の所為で、ごめんね……っ」

「うぅん……うぅん!謝らないで!私、アツコお姉ちゃんには、いつもみたいに、わらって…っ」

 

 

 

アツコが、少し泣く。

アイラが、ポロポロと涙を流す。

 

アツコとアイラ……歳の差は7歳ほど。血の繋がりはないが姉妹と云える二人。

 

捨て子だったアイラにとっての命の恩人であり、8年の時を生かしてくれた存在。

 

それはアツコも同様、アイラはアツコにとってアリスクとはまた別の生きる希望だった。

 

任務を忘れお互いに抱き合う。

一方はトリニティへ、一方は追われる身として。

 

その二人の命の恩人が………城ヶ崎レンノスケなのは、何処か不思議な感覚だ。

 

 

 

「……少しだけ、そっとしとこっか」

「よく分からないけど、見た感じやっとの再会って感じだからね」

「すまんな、あの二人は……本当の家族の様なものでな」

「いいえ、構わないわ。それに……目標は達成してるもの」

 

 

 

カヨコ、ムツキが空気を読んで二人の時間を与えようと提案。サオリが御礼を言い、頭を下げるが、直ぐにアルが問題ないと告げる。

 

そして、アツコとアイラ以外の全員がキリノに視線を送る。

 

 

 

「それと……こんにちわ、初めまして。貴女が『中務キリノ』で間違いないわね?」

「は、はいっ!えっと、先ずは私達を助けて頂き本当にありがとう御座います!それで、貴女達は一体……?」

「私達は【便利屋68】よ!一応貴女達(ヴァルキューレ)とは敵対組織ではあるけど、今回は目を瞑って頂戴」

「便利屋……あ、あー!便利屋68さん達でしたか!レンノスケが良く話していた方々ですね!」

「そう!レンノスケが良く話………え、ちょっ、それどういう事???あ、あの人私達の事良く話してたの?????」

「はい!レンノスケが良く『便利屋68に会いに行きたいんだが、何て言えばいいか分からん。アイツ等、今じゃお尋ね者なんだろ?警察に成った俺が行くには聊か立場が面倒だしな……アイツ等は戦闘者として優秀だし、いっそのこと俺が依頼として頼むのもアリか?俺が会いたいって依頼で』……と、本官に一杯話して下さいました」

「な、成程……それにしても、良いの?さっきも言ったけど私達は貴女の敵だよ?」

「確かに貴女方は悪党ですが、敵ではありません!レンノスケが良い悪と太鼓判を押していたので本官は貴女方を信じます!それに、こうしてアイラちゃん共々助けて頂いた身ですし!」

”「(ま、眩しい…っ!!)」”

「良い子ね~貴女ー!」

 

 

 

キリノ、一瞬で便利屋68の心を掴む。

アルに似た善性の塊、何処かポンの波動を感じさせるモノに、便利屋は依頼云々よりも固く、キリノを護ると決める。

 

そして、キリノはアリスクに目を向ける。

 

 

 

「……貴女方は、あの【アリウス・スクワッド】ですね?」

「……あぁ」

「そ、そうです……へへへ、どうも…」

「………」

「貴女方の事もレンノスケから聞いています。ヴァルキューレやトリニティから追われるテロリストであると……ですが、同時に被害者でもあると」

「ッ……」

「レンノスケが心配していました。無論、アイラちゃんも。本官は当事者でも無いので一概に言を投げる行為は出来ませんが、これだけは言わせて下さい────もう直、ヴァルキューレとトリニティは貴女達を追う事はしない事になりました」

「な、なに!?」

「どういう事…?」

「レンノスケが各上層部に殴り込m………こ、懇願しに行ったんです。もう皆さんを追う事をするなと、見守ってやれと彼は大暴れs………問題……え、えっと、そういう事になったんですよー!」

「そんな、事が……」

 

 

 

そう、城ヶ崎レンノスケ、彼はトリニティの【ティーパーティー】である『桐藤ナギサ』と『百合園セイア』に、そしてヴァルキューレの上層部である連邦生徒会【防衛室長】の『不知火カヤ』に殴り込みに言ったのだ。

 

無論、大問題に為ったのだが、彼がキヴォトスに与えた最悪だった治安の低下は想像以上に甚大故、評価せざるを得なかったのだ。それ故、全員が追う事を急遽辞めさせたのだ。

 

原因は様々だが、一番はトリニティに於ける保護されたアリウスの残党をイジメるトリニティの生徒、その現場を目撃したのが大きな要因だった。

 

こうなってはアイラ達アルスの幼子ですら危険だ、そう思ったレンノスケは逃走しているアリスクを追う事を辞めさせる。そうする事で、アリウスの残党を迫害など出来ない。レンノスケがアリウス側に付くと云う事の重要さは幾ら馬鹿でも理解できるからだ。

 

 

 

「それだけ、お伝えしますね!」

「……ありがとう、教えてくれて。もう、私達はお前達に何と御礼をすればいいか……っ」

「いえいえ!御礼を云われる事は何も!やったのはレンノスケなので、お礼は是非レンノスケに………あ!そう、そうです!その、レンノスケは!?依頼って事は、そういう事ですよね!?」

 

 

 

キリノがハッと、己の想い人であるレンノスケの名を叫ぶ。

 

心配なのだ。会っていない日がそこまで経って居なくとも、彼は寂しんぼだから、きっと心配している。彼が救いに来ないのにもきっと大きな理由がある。だから彼女達を使ったのだ。

 

キリノは直ぐにそう推理した。短い期間で修羅場を潜ったキリノは少しだけ頭が柔らかく成ったのだ。

 

 

 

「レンノスケは大丈夫だ。お前とアイラを酷く心配していた……だが、直ぐに来る」

「来る……という事は、レンノスケはもう此処に?それと此処って何処なんですか?すみません、私達、なんで拉致られたのか全く理解できなくって……」

「順を追って説明するね。此処はエリドゥ、ミレニアムに建築された巨大な要塞都市。あんたとアイラが連れ去られた理由は────」

 

 

 

ミサキがキリノに向け事の発端を全て説明する。

 

何故、連れ去られたのか。

何故、エリドゥを建設したのか。

この主犯は誰なのか。

 

その全てを……話した。

 

 

 

 

 

「────レンノスケは、そういった経緯で私達にお前を託したんだ」

「はぁ?………ゆ、許せません!なんですかソレ!?アイラちゃんまで攫う理由がそれですか!?アリスさんを殺す!?酷い……ッ」

「そうだね、本当に酷い話……アリスって子は、それを直接伝えられて尚、自分で着いて行ったらしいから、尚更ね」

「残酷ね。凡そ人間がする行為とは思えないわ」

「本当にッ……しかも最悪なのはッ……レンノスケにとって、この事がどういう意味になるかですよ!!彼は責任が人一倍強くて、何かあれば直ぐに自分を責めてしまうッ……何処までも優しい人なのに、こんな仕打ち、余りにも可哀想で……っ」

 

 

 

キリノが拳を強く握る。その握った掌から血がポタポタと滴る。

彼を思う気持ちはこの中で、否、キヴォトスで一番だと誇りを持って言える。

だからこそ、彼を思えば思う程、辛くなる……彼は一人ぼっちが苦手だ。様々な経験をした彼には、クライアントを除いけば……人間が助けてくれた事なんて一人もいなかった。

 

アイラも被害者だ、ただ彼を止めると云うだけの理由で連れ去られたのだから。

 

アリスなんか己の存在する意味を問われ、残酷に説明され、着いて行ってしまったのだ。

死を前にして、自ら向かうのは……恐怖そのものだ。

 

 

 

「ミレニアムの生徒会長……そんな人だった何て!酷いです!!」

「……取り合えず、貴女とあの子が無事で良かった。それだけで彼は救われるよ」

 

 

 

下唇を噛んで、必死に感情を……涙を抑える。悔しくって、彼の傍に居られない自分に腹が立って仕方ない。どうしても感情を抑えたいのに、レンノスケの事になると……どうしても感情を抑えられない。

 

それを直ぐに察したのが最年長である鬼方カヨコ。

彼女はキリノの頭を優しく撫でる。大人っぽい、艶やかな撫で付きで。

 

カヨコは決して敵対組織に対し感情が傾いた訳ではない。だが、レンノスケの……アルの恩人であり憧れの人間の恋人がこうして人情溢れる女の子だと知れば話は別だ。

カヨコから見ても、キリノはまだまだ未熟だ。

人としての甘さも有れば、経験も圧倒的に足りていない。元気で、純粋な、優しさを持つ可愛い女の子だ。

 

正直あの城ヶ崎レンノスケの恋人と云うには……圧倒的に力不足だ。しかし彼はそんなキリノだからこそベタ惚れしたのだろう。こういう女の子はイマドキ珍しい。

 

 

 

「アイラちゃんだっけ。あの子を護る為に、たった一人でよく頑張ったね。貴女は十分頑張ってる……レンノスケが言った通り、立派な警察だよ」

「ッ………私は…まだまだ、です」

「ふっ、そうかもしれない、でも誰よりも伸び代がある。何事も挑戦だよ────さっ、グズるのはこれでお終い。貴女とあの子の身柄は確保できた。これで後は此処を脱出だね……そうすれば、彼を動かせる」

「────カヨコっち、それなんだけどさー……ムツキちゃんにとびっきりの閃きが来ちゃったんだよね~♪」

 

 

 

移動の準備に当たろうとした時、ムツキがカヨコにそう告げる。

すれば、全員がムツキの方に視線を向ける。

 

ハルカが問う。

 

 

 

「ム、ムツキ室長……それは、どういう?」

「ふふ~ん、それはね────もうレンレンに救出した事を言うんだよ!」

「なに?」

「れ、レンノスケさんに?それは一体どうし………あ」

「……あぁ、確かにそうだね。それの方が混乱も招きやすいか」

「成程、まぁどうせ彼は大暴れするだろうし、良い案かも」

「でしょでしょー!」

「え、えっと……?」

「へ?え?な、なんで?」

 

 

 

キリノとアルのみ余りよく分かっていないようなので、カヨコが説明する。

 

 

 

「現在、外では大規模な戦闘が開始されている。先生含むミレニアム勢と調月リオが抱える戦力の削り合いは相当の被害を呼ぶほどの混沌(カオス)と化している筈……つまり、私達の警戒が少し薄れている状況。このまま見つかる可能性が薄い状況下で脱出するのもアリだけどやはりリスクが残る。この人数でもね……だから、此処で彼を投入する」

「ッ!なるほどね!」

「えっと、つまり……レンノスケをこのエリドゥ?と云う場所に送り、先生達に加担させると?」

「そういう事だね」

「ムツキ!貴女中々良い案を出すじゃない!流石私の親友ね!」

「いやぁ~それ程でも~♪」

「ふーむ……」

 

 

 

其処に居る全員が悪くない案だと思う中、一人、キリノは思案を取っていた。

直ぐにカヨコ、ミサキが考え込んでいる事に気付く。

 

 

 

「……何か不安要素があるの?」

「へ?あ、えっとですね……」

「結局の所、彼を一番理解出来ているのは貴女だからね。何か聞きたい事よ不安な事があれば直ぐ言ってほしい」

「そう、ですね……その、私もレンノスケに直ぐ言うのはアリではあると思うのですが……それって直接レンノスケに伝えるのですか?」

「いや、間接的にだね。実は私達の他に別のクライアントがこの件には関わっていて、私達がそう指示すればその人がレンノスケに伝えるって方式。今回相手するのは機械に長けている相手だからね、必要最小限の電子機器は持っていないの。携帯はサオリ以外持っていないしね」

「成程……じゃあ、もしそうするのであれば何ですけど、レンノスケにこう言って欲しいです」

 

 

 

キリノが告げるのは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────()()()()()()()1()0()0()()()()……と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────エリドゥ、戦地。

 

 

 

 

アバンギャルド君を撃破した、その後……

 

 

 

 

 

”ドゴオォォォォォォンッッッ!!!!!”

 

 

 

 

「────ネルッ!」

「ッ!……が、はッ………!」

 

 

 

ミレニアム最強、美甘ネルが……膝を着いた。

これが意味する事は、先生sideの最強戦力が陥落したも同然。

 

一体誰が?それは────

 

 

 

「────終わりです」

 

 

 

調月リオが災厄の為に用意した武装────【アビ・エシェフ】

 

飛鳥馬トキが過酷な訓練を用い、装備したこの武装は最強の戦力を誇る。

 

要塞都市エリドゥ全域の電力と塩酸機能が全てアビ・エシェフに集中。つまり……未来予知すら可能なのだ。

 

地上戦に於いて、アビ・エシェフを装備したトキは如何なる攻撃も回避してみせる。

 

機転を利かし、ビルの屋上からの空中戦を用いてネルが攻撃を行うも、それも少しのダメージを与えるに過ぎなかった。

 

 

 

「あ、ありえない……ビルから落ちたのに…っ」

「傷一つ、無いなんて……」

 

 

 

モモイとユズの口から、信じられないモノを見る様な、そんな発言が放たれる。

 

ビルから転落したネルの身体は既にボロボロ、対してトキは無傷。そう告げてしまうのは仕方ないと云える。

 

それに、あのネルがほぼ何も出来ずにこのザマなのだ。

 

状況は────最悪だ。

 

 

 

『そもそもこれ(武装)は此の先訪れる脅威の為にこの要塞都市エリドゥと共に作ったもの。そして要塞都市の能力を終結させている……つまり、要塞都市そのもと云っても過言ではないわ』

「ち、チート過ぎるよ……ッ!」

『そして、貴女達C&Cが裏切った時に備えて準備していた物でもあった。ネル、貴女は確かに優秀……だけど、貴女と貴女が率いるC&Cは私にとっての不安要素でもあった。私は備えていたのよ、この時が来ると仮定してね』

「こ……これが【武装】は持つ力……」

 

 

 

余りにも、余りにもチートだ。

 

攻撃、速度、硬度、全てが一級品。空中戦すら対応して見せる御業。

それに加えて未来予知すら出来ると来た……これをチートと云わず、何という。

 

 

 

『トキ、シャーレの先生を回収して』

「イエス、マム────ん?」

「っ!うん!わ、分かった!」

 

 

 

”ビリッ……”

 

 

 

「これは、機体に……ダメージが?」

『隙ありッ!モモイ!今だよっ!』

 

 

 

通信越しから見ていたチヒロが、モモイに向け告げる。

 

ネルが稼いでくれた千載一遇のチャンス……これは、モノにしなければだめだ。

モモイが一瞬ハッと意識を覚醒させ、直ぐに手持ちの閃光弾を持つ────だが、しかし。

 

 

 

「やああああっ!!────……え?」

 

「モモイ、それは少し仕舞っておけ」

 

 

 

それを阻む者が居た。

 

閃光弾を持つモモイの手をそっと片手で優しく握り、閃光弾の投擲を阻止。

 

傷だらけで、大きな、とっても頼りになる様な手だ。モモイは、つい、そう思ってしまう。

 

 

 

「────は?」

 

 

 

そう発したのは、トキだ。まるで有り得ないモノを見て、思わずそう発してしまった言だった。

 

 

 

「え、え……?」

「ど、どう、いう……?」

「うっそぉー!?来たのー!」

「……あ゙ぁ゙ッ!?」

 

 

 

次にC&Cが反応を見せる。上からアカネ、カリン、アスナ、そして気を失いかけていたがソレの姿を目視し一気に目覚めるネル。

 

 

 

「ほう、彼があの……」

「禍々しいオーラ……何て重圧」

「わ、わぁぁ……生で見ると、何とも大きい方でしょうか…っ!」

 

 

 

エンジニア部である『ウタハ』、『ヒビキ』、『コトリ』がそれぞれ彼の事を一眼する。

 

 

 

「は、え!?ちょ、本当に!?」

「ど、どうして、此処に………!?」

「え、えええーーー!??こ、この大きくて頼もしさ半端ない手は、まさか!!」

 

 

 

ゲーム開発部が、彼を確認する。

 

その、正体は────

 

 

 

『────レン、ノスケ……?』

「あぁ、助けに来たぞ」

 

 

 

そう────怪物:城ヶ崎レンノスケだったのだ。

 

この最悪の絶望下の中、彼が現れたのだ。

チヒロが口元を抑えて、その名を云う。

 

それにより……皆の目から、光が宿る。

 

 

 

「れ、レンノスケ!?どうして此処に!?」

「おう先生、久し……その怪我、また無茶したな?」

「あ、ごめん……って、今は私よりも────」

 

 

 

先生がレンノスケに問おうとした、瞬間……ッ!

 

 

 

「────シュッ!!!」

「あっ────」

「レンせんぱ…っ」

 

 

 

トキは既に、動いていた。

 

先生とモモイの言葉が間に合わない。それ程のスピードで、レンノスケの懐に入った。

 

そして、トキはゼロ距離射撃を取ろうとレンノスケの腹筋目掛け、マシンガンを撃ち込む────が。

 

 

 

「ソレ、横っ腹がガラ空きだぞ」

「────ッ!」

 

 

 

”バキィッッ!!”

 

 

 

「ガハッ……っ!!」

 

 

 

レンノスケは、それを読んでいた。

 

トキの脇腹にレンノスケは強烈なローキックをお見舞い。攻撃の初動もあり、体軸がズレ、回避が間に合わなかった。

 

いきなり攻撃を喰らわせ、ダメージを与えた。

 

 

 

”バッ”

 

 

 

トキが一時距離を取る。

 

 

 

『トキ!』

「問題、ありません、リオ様……体を捻ったので、中心はズラしました。まだ動けます」

『そう……しかし、まさかこのタイミングで来るとはね……怪物』

 

 

 

トキは何とか身体を捻り、中心部を避ける。それでも良いダメージだ。

 

リオは一瞬頭の回転を止めるも、トキの攻撃で何とか巡らせる。いずれ来るだろうとは踏んでいたが、まさかこんなに早いタイミングで来るとは思わなかった。

 

 

 

「え、いま……」

「未来予知すら可能なアビ・エシェフの攻撃を躱して……」

「反撃、した……?」

 

 

 

モモイ、ミドリ、ユズが一連の流れを言葉通りに伝える。

 

それは全員が見て感じた思い。有り得ない事だ、あのネルを持って掠り傷一つ与える事が出来なかった存在を、いきなりローキックで攻撃を与えたのだ。

 

しかも見るからに……明らかなダメージが入っている。

 

此処で一度トキは冷静に成る。事の顛末を一から整える為に。

 

 

 

『(中務キリノと天丈アイラ、まさかもう救出を……?しかし、警報が鳴る筈……ッ!やられた!高度なハッキング!なんで今まで気が付かなかったのですか…ッ!だけど、こんな不可思議なハッキング機能、ヒマリ部長じゃない……一体誰が?)』

 

 

 

答えは、クックックッ(黒服)……である。

 

 

 

「え……今、何かすんごい事した?」

「あぁ。アイツの不意打ち、俺がバーンしたんだぜ」

「なんて?」

「まぁそういう事だ。モモイ、此処は危険だから少し下がってろ。あとソレ、ちょっと貸してくれ」

「え?あ、うん。どうぞ!」

「助かる」

 

 

 

レンノスケがモモイから閃光弾を受け取る。

 

懐に仕舞う、何かに役立てようとしているのは目を見れば分かった。

モモイはミドリに催促され、後ろに下がる。

 

 

 

「さて……ふぅ、まさか此処でお前と再会するとはな?パーフェクトメイド」

「っ……そうですね」

 

 

 

言葉は少ない。再開と云っても、感動的ではない。

今は敵として相対しているのだ、仕方ないと云える。

 

レンノスケには少し……トキに思う所があった。

 

 

 

「聞いたぜ、お前は未来が予知できるってな?だがさっき当たったがアレはなんだ?」

「えぇ、それは確かに間違いないでしょう。ですが、先ほど貴方の攻撃が当たったのは偶然、もう当たる事は無いと断言出来ます」

 

 

 

レンノスケの口角が僅かに上がる。己に此処まで言うかと、少しワクワクする。

だが、ただ暴れに来た訳ではない。

 

アリスの救出。キリノとアイラが救出された今、彼女の救出が最重要と化した。

 

 

 

「(本気でやり合いたい所だが、生憎キリノに釘を刺されたからな……それに俺の目的は────)…おい」

「?」

「なんで俺が此処に居るか、分かるか?」

「……中務キリノさん、基、天丈アイラさんを拉致したから、でしょう?」

”「────!?」”

『何ですって!?』

 

 

 

トキの発言に、先生含め、全員がとんでもない驚愕を覚える。

 

それは、斜め上からの答えだった。

どうしてこの場面でキリノやアイラの名前が挙がる?しかも拉致した何て……。

 

 

 

「先日、私が彼女達を攫いました。天童アリスのへイロー破壊に、彼の存在は貴女達とは比に成らないほど危険になる。そう判断し、わ…私が、拉致しました」

「……やっぱ、お前が実行犯だったか」

 

 

 

先生達は、もう開いた口が塞がらなかった。

 

此処まで、ここまで人は残酷な事が出来るのか。彼にとって、キリノが、アイラがどういう存在なのか理解してこんな行動が出来るのか。

 

 

 

『ッ!!ちょっと、トキ!あんた…ッ』

「待て、チヒロ」

『っ!だって…!』

「それも全て、命令なのだろう?そのリオって奴の」

「……だから、何だと云うのですか」

「単純だ、お前は司令塔の命令に従ったまで。親が白と云えば白、黒と云えば黒の様に、主従に於ける命令は絶対だ。其処に私情を挟む事など許されん、裏切りに成るからな」

「レンノスケ…?」

『レンノスケ、貴方……』

 

 

 

レンノスケは至って冷静に務める。一番、一番怒り狂いたい筈なのに、それを収めて話を纏める。

 

ここで、トキに苦悶の表情が浮き出る。ポーカーフェイスが崩れ始めてきたのだ。

 

 

 

「人には必ず背景がある。何を経験し、何を得て、どんな人生を送ったか。そんな歴史とも云える背景がな……────パーフェクトメイド、お前、いま凄く辛いだろ」

「ッ……黙って下さい」

「黙らん。お前の心を折るまで言い続けてやるよ……やりたくもねェ仕事をこなし、何の罪もない女の子を、まだ幼い子どもを己の手で攫う。手を汚す……身に耐えられない苦痛だ、死にたくなるだろう?」

「黙ってと、言って…ッ!」

「……大した忠誠心だな。なぁ、お前、マジで調月リオの言っている事が全て正しいと思ってんのか?」

「あ、当たり前の事を!私の身、心この全てはリオ様のもの。彼女が云う事は全て私の動く原理ですっ」

「………馬鹿野郎がッ」

 

 

 

レンノスケはトキの痛々しいボロボロの姿を、見てられないと思ってしまう。

 

だが、レンノスケは深く息をつき……告げる。

 

 

 

「パーフェクトメイド、いや、トキと云ったな?其処をどけ、俺はお前とは戦いたくない」

「無駄です。此の先には死んでも行かせませんッ……来るのなら、何処からでもどうぞ…ッ!」

「ふん……自分(テメェ)の従者がこんな覚悟だとはな?なぁ、調月リオ……一つ聞くが、お前は人殺しの意味を確りと理解しての行動で良いんだな?」

『えぇ……無論、理解しているわ。私にはソレをしなければならない責務があるもの』

「……はぁ、もういい、分かった」

 

 

 

レンノスケは仕方ないと云わんばかりに、戦闘態勢に入る。

もう、言葉での説得は不可能だ。

 

 

 

「────ネル」

「あ?くっ……んだ、よ」

「身体、動けるな?」

「あぁ?テメェ、誰にモノ言ってんだ……逆立ちで此処一周出来る位には余裕だ、バカヤロー」

「軽口叩ける元気があるんなら良い。ネル、今からお前を強く()()()()

「あぁ!?何が、してやるだボケッ、ッ!ゴフッ……年下が、生意気言いやがって…ッ!」

「……おい」

 

 

 

レンノスケが後ろに振り向かず、正確にネルにとある袋の支給品を投げる。

 

ネルが楽々と袋をキャッチする。その中には……医療品が入っていた。

 

 

 

「止血剤と包帯だ、存分に使え。俺がコイツの遊び相手になっている間は絶対に気を失うな。ゆっくりで良い、贅沢に時間を使え。そして────俺の動き、体軸、剣速、射撃、圧、視線、読み、緩急、視野、間合い……戦闘に於ける技術を全て見て吸収しろ」

「……レンノスケ、てめぇ」

「俺とお前は似ている。そしてネル、お前は強い。間違いなくキヴォトス最強に君臨する器だ。言っちまえば『ヒナ』や『ツルギ』、あと『小鳥遊ホシノ』と並べても比に成らん程の才能を秘めている。だが其処まで到達するには大事な何かが足りない。そこを自分で見つけろ……これは誇張じゃねェぞ、ネル」

「んなっ……はッ!随分と、調子狂う事を言いやがる…っ」

 

 

 

照れ隠し。レンノスケとネル、性格的に仲は悪い両名だが、互いに実力は認め合っている。

 

其処にはかなりの実力差が離れていた。だが、レンノスケはネルの可能性を見極めていた。分かるのだ、ネルはまだ才能が開花していないと。未成熟の神秘であると。

 

ネルが止血剤を飲み、包帯を傷が付いている箇所に巻いていく。

 

それを見たレンノスケは────構えた。

 

 

 

「────シィィィィィィィ……ッッ」

 

 

 

”ゾクッ────!!!!”

 

 

 

瞬間────世界が震撼する。

 

 

 

「わわっ…!」

「な、なんだこれ、揺れて!?」

「まさか、また都市が動いて……?」

「いや………違うッ」

 

 

 

C&Cがそれぞれ反応する。

 

まるで大きな地震。そして身体全身に降り掛かる重厚な圧。

 

先ほど、トキとC&Cを隔離する為に起こした都市移動ではないか、先生含め、全員がそう思った。

 

だが、ネルのみ先に異変に反応する。これは、エリドゥの仕組みでは断じてない。

 

 

 

”ゴゴゴゴゴゴゴゴ………………”

 

 

 

現在は夜。雲一つない、天上にはキヴォトスを囲う巨大なヘイローが光っている。

 

だが……エリドゥの天界、その頭上、其処に突如として────()()が出現。

 

 

 

「────空が……渦、巻いて…?」

「なに……アレ…?」

 

 

 

ウタハとヒビキが天を見上げたまま、まるで理解の出来ないナニかを見る、そんな目を天に向ける。

それは全員がそうだ。先生、ゲーム開発部、C&C、エンジニア部、モニター越しから見るヴェリタス、そして………敵である飛鳥馬トキと調月リオ。

 

全員が、彼の為す現象を刮目する。

 

 

 

「シイィィィィィィィィッッッッ……!!」

 

 

 

”バリンッ!バリンッッ!ゴゴゴゴゴ……”

 

 

 

レンノスケが鞘に納めるロングナイフを、緩やかに抜刀。

 

その動作を行う度、曇天が異様に渦巻いていく。

 

 

 

────雷霆が、彼に収束し始めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”ゴゴゴゴゴゴゴ……ッッ”

 

 

 

 

 

「─────フゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!」

 

 

 

”キンッ────”

 

 

 

一気に抜刀。ロングナイフに刀身が露に成る。

 

ミシミシと、ナイフを握る柄から万力の音が鳴る。

 

筋肉が隆起し、髪が逆立つ。

 

 

 

「それは、一体……!?」

 

 

 

トキがレンノスケのナイフを直視。異様、余りにも異様。

 

 

 

「良いだろう?俺専用とも云えるロングナイフだ。俺の能力に唯一着いて来れる相棒だよ」

「す、すっごい……レン先輩、カッコイィィーっ!」

「ふっ……驚くのはまだ早いぞ、モモイ」

「えっ?」

 

 

 

レンノスケが鞘を放り投げ、ロングナイフを片手で持ち姿勢を低くし、踏み込み姿勢に成る。

 

万力の握力。隙の無い姿勢。濃密な神秘。完璧な体軸。

 

全てが最高峰の完成品。静止している筈なのに、絶対に攻撃が当たらない、そんな根拠もない自信が全員にはあった。尤も、攻撃が当たってもダメージは残らない硬い身体の持ち主でもあるから意味は無いのだが。

 

モモイがレンノスケの発言に、疑問符を浮かべる。

 

それは、全員がそうだ。これ以上なにをするのか……そのナイフをどうするのか、疑問は残る。

 

それに応える様に、レンノスケが────発揮する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────神秘・収束・解放」

 

 

 

 

瞬間……ロングナイフに、赤黒い霧が纏う。

 

先生は目を見開き、そのナイフの現象を思い出す。アレは【ユスティナ生徒会】を一撃で壊滅させた時に魅せた、殺刃の一刀。

 

 

 

「トキ、動かない方が良い……調月、良く見ておけ」

 

 

 

そして、レンノスケが────ナイフを真上に振るう。

 

 

 

 

 

 

「────フゥゥッ!!!」

 

 

 

 

 

 

”キイィィィィィンッ────────…………”

 

 

 

 

 

 

金属の金切り音。高音が鳴り響く。

 

そして、全員が真上を見る。天へと昇る赫蒼の斬撃は、混ざる事無く、その色を保ったまま天へと向かう。

 

 

そして、遂に曇天へと斬りかかる。

 

 

 

 

”ドゴオォォォンッッッ!!!!”

 

 

 

「きゃぁ!」

「ッ!」

「何て轟音…ッ!!………え…うそ、でしょ」

 

 

 

思わず、全員が耳を抑える。それ程の轟音が鳴り響く。

先生が耳を抑えるも、その事象から眼を離さなかった。

 

 

そして────信じられないモノを視認。

 

 

 

”ゴロゴロゴロッ……ドンッ!ドゴォォオンッ!”

 

 

 

「────天が……裂け、た…?」

 

 

 

先生の開いた口から、意味の分からない言葉が出る。

だが、それを否定する者は誰も居なかった。

何故か?それは……そのままの意味だからだ。

 

曇天、それだけじゃない……キヴォトスの、天空ソノモノが斬り裂かれたのだ。

 

理解不能。先生含め、其処に居る全員が……その異常現象に、理解が追い付かないでいた。

 

 

 

『────冗談、でしょ……』

 

 

 

ヴェリタスの面々の開いた口が塞がらない。

チヒロから、そんな言葉が漏れ出る。

 

己が密かに想いを寄せていた(現在進行形)の新たなヤバすぎる一面を見た。

 

異常だ。何だこれは。一人の人間が、コレを起こしたのか?

 

 

 

「……まだ慣れんな」

”「……はぁ??」”

「悪いが天候を変えて貰った。こんな暗い夜よりもコレ方が、ぶっちゃけテンション上がるだろ?なぁ、ネル」

「はんッ……メチャクチャな、奴だな、テメェはッ!ってか、こんな事して大丈夫なのかよ?雷当たっちまうぞ?」

「大丈夫だ、想定している。此処だけに集中したらお前等に雷が当たっちまう。ワンチャン死ぬから、直撃を避ける為には────()()()()()()()()()()()()()()()()()()からな」

”「────ん?」”

 

 

 

 

 

 

▽同時刻

 

 

 

 

 

 

☆ゲヘナ

 

 

 

 

「────空が……また濃くなった」

「ヒ、ヒナ委員長!突然の赤黒い雷雲に伴い、ゲヘナ各地から複数の体調不良者が続出!学園中の生徒達も大半が具合が悪いと嘆いています!ヒナ委員長は大丈夫ですか!?」

「そう、私は平気よ。少し肩が重いけど……アコ、貴女は?」

「わ、私も、結構……イオリやチナツ含め、風紀委員会は殆どダメなようです…っ」

「分かった。万魔殿も?」

「はい、同様に……」

 

 

 

ゲヘナ学園、風紀委員長室。

そこで、アコがヒナに異常事態を報告していた。

 

 

 

「(突然の現象。恐らくナニかが起こした事……あの紅い雷雲はミレニアム方面から来ていた。もしかしたら……)アコ、辛いだろうけどもう少しだけ頑張れる?」

「は、はいっ!」

「ごめんね。アコ、貴女は各自治区にこの現象の有事について何かしらの情報を集めて。私は────ミレニアムに向かうわ」

「はい!分かり……え?み、ミレニアムに!?」

 

 

 

 

 

 

☆トリニティ

 

 

 

 

「ツルギ、これは……」

「……不可思議な現象、だな」

「ツルギ先輩!ハスミ先輩!報告っす!トリニティ各地で原因不明の体調不良者が続出っす!学園内でも殆どがダウン!ティーパーティーのナギサ様とセイア様も体調不良により機能が不安定!加えてトリニティ全域でもそれはあ同様との事!」

「ッ!この轟く雷雲然り、一体キヴォトスで何が…ッ!」

「……イチカ、この赤黒い雷雲の出生は?」

「え?えっと、確か……ミレニアム方面からと情報部から報告があったっす」

「……分かった。スマンが緊急事態だ、私は独断でミレニアムへ向かう」

「え?えぇ!?ちょっ、ツルギ先輩!?」

「ツルギ、まっ……ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よもや、これまでの者とは……ククッ、純粋且つ濃密な神秘が繰り出す覚醒した神秘は、此処までの力を魅せるのですか。いや、違う……彼だけの御業か?クックックッ、何はともあれ、私の傑作が要因で彼のポテンシャルを引き出せたのは、何とも嬉しいですね。ククッ……おや?ゲヘナにトリニティの最強戦力がミレニアムに………これは、また面白くなりそうですね」

 

 

 

 

黒服もまた、動く準備を進めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……テメェ、マジかよ…ッ」

「規格外すぎるって……」

『……理解、出来ないわ』

 

 

 

生還していたリオですら、もう、考え理解する事すら無駄だと思う程、彼は無茶苦茶だ。

 

ネルに、先生ですらも、流石にツッコミが止まらない。

 

 

 

「っと……まぁ、やっぱナイフは止めとくか、お前を殺しかねんしな。トキ、お前にはこの豆鉄砲(ベレッタM92)で十分だぜ雑魚ブロー」

「……私は女なので、せめてsisとお呼び下さい」

「え?(やっべどういう意味だ……ブローも知らねーし…)分かった、じゃあ行くぜ雑魚しすー」

「……えぇ、どうか、お手合わせ願います」

「テメェsisの意味も分かってねーのかよ」

 

 

 

レンノスケの天然ボケも健在。つまり……万全だ。

 

 

 

「トキ、可愛そうな奴め……俺がお前を丸裸にしてやるよ」

「意味が分かりませんが────負けません…レンノスケさんっ」

 

 

 

城ヶ崎レンノスケ……その嘗ての異名は────ブラックマーケットを喰らう【裏社会の怪物】

 

天が悪戯に作ったこの男は、常人の100倍とも云える苦行を受けてきた。それも死ぬか生きるかの、だ。

 

齢3才、彼がブラックマーケットで生活した年齢だ。

余りにも幼く、余りにも残酷で、余りにも苦しかった。

 

それでも尚、生きるために足搔いた。何度も、何度も、何度も……文字通り血反吐を吐き散らしながら足搔いて、泥臭くも生きてきた。

 

殺しもした。その身に浴びた返り血は計り知れない。何人殺したか覚えていない。

 

それ故に得た経験。それ故に得た別の倫理観。

 

城ヶ崎レンノスケ……彼は、たった一人で強く成った怪物だ。

 

 

 

「────俺の全てを、トキ、お前にぶち掛ける。ムチムチのトロトロにしてやるよッ!」

「いやさっきから発言が最悪だテメェ!なんでソイツだけ変態だ!!?」

「……私は一向に構いませんよ」

「構うなァ!」

 

 

 

トキは、リオは、思い知る事になる。

 

その……恐ろしさを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────そして、美甘ネル……彼女の本領も、此処からだった。

 

 

 

 

 

 

 

次回

 

最恐コンビ。

 





遂にレンノスケがエリドゥに降り立ちましたね。キリノとはまだ会えないですが。


それとレンノスケの【過去編】のプロットが完成しました。流石に少しお笑い入れるか~………やっぱ滅茶苦茶にして曇らせよー!おっきゃっきゃ!って感じで最悪にしました。

プラス、レンノスケの【ショタ化】もほぼ完成しました。色んな人が(良い意味で)狂う展開を作りチュウです。此処で普段絡まない生徒とも絡ませたいなーって思っています。おねショタは逆転しないのが至高ってそれ一番言われてっから。

……ってか凄くこの2つが拮抗してるんですよね。どうしよー…。




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  • レンノスケ、配信者に成る。
  • 16歳組によるバレーボール同盟
  • キリノと二人旅
  • 提示版(レンノスケだけど、質問ある?)
  • レンノスケの過去編
  • 本編:カルバノグの兎編
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