怪物は、真面目な君に恋をした。   作:カブトムシの相棒

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【アイラ、彼氏できたってよ:3話】


────数日後。


「やぁぁぁ!!」
「ふむ、良い踏み込みだ。パンチ力もある……だが」
「ッ!あでっ!」
「まだ浅い。隙も大きい」


子うさぎ公園……そこに行われるはレンノスケによる修行。

普段はレンノスケとアイラのみ、だが、新たに加入した『犬飼ロウガ』と共に3人は励んでいる。


「よし、今日は此処までだ」
「はーい!ロウガくん、大丈夫?」
「いたた……うん、ありがとうアイラちゃん。助かるよ」
「アイラ、それ絆創膏か?やけに準備が良いな」
「へっへーん!もちろん!だってロウガくんが怪我した時、私が治すんだー!」
「アイラちゃん……ありがとう!」


何かイチャイチャしだした。レンノスケは渋い顔をするが、己も恐らくこんな感じだったのだろうと思いグッと抑える。


「(弟子にしてくれって願いを”了承”して早1週間……いま思えば、正解だったな。最初こそアイラの彼氏で驚きが勝ったが、こうしてアイラと共に修業させてみれば互いに良い反応を受けている様だ。弟子にするのは正解だったようだな)」


そう、レンノスケはロウガの弟子にしてくれという願いを受け入れたのだ。最初こそ勢いに負けた故に了承した感じは否めないが、それでも正解を引いた。
真面目で、吸収も早い。アイラとの違いは頑丈な所か。


「うし!もう昼頃だし、これからラーメンでも食いに行くか?俺奢るぜ」
「え!?いいの!?」
「そ、そんな、悪いですよ」
「気にすんな、お前達みたいな子供には奢りたくなるんだよ。ほれ、行くぞ」
「はーい!ありがとうレンにぃ!」
「あ……ありがとう御座います!」


2人が俺に笑顔で御礼を言う。

可愛い……この日々、実に良い……俺って子供好きなのか?


「さて、ロウガ。ちょっと止まれ」
「え?はい、なんですk……わぁ!?」
「あーー!!」
「そいっとー!どうだ?良い眺めだろ俺の肩車は」
「わわ、れ、れれ、レンノスケさんっ!?こ、これ、恥ずかしいですよ…!」
「ん?やめてほしーのか?」
「あ、アイラちゃんの前では、その……」


む、コミュニケーションをミスった。
子供の相手は慣れたもんだと思っていたが、まぁそうか。恋人には肩車されている姿は恥ずいか。

俺がロウガを降ろそうとした時、アイラが叫んだ。


「いいなーロウガくん!ねぇねぇ!私も肩車してレンにぃ!」
「む?あぁ、良いぞ」
「あ、アイラちゃん…(よかった、これで変われば良いんだ…)」
「あ、でもそれだとロウガくんが可哀想……そうだ!」







D.U.街道、ラーメンへの道……。 



”ひそひそ、ひそひそ……”


「……なぁアイラ、本当にこれで良いのか?」
「うん!これで私もロウガくんも幸せだから!」
「うぅ……肩車よりも恥ずかしい…っ!」


今の俺を説明しよう。

アイラを肩車に乗せて、ロウガを抱っこしている。

うーむ、アイラの提案受け入れてみたは良いが……何か視線を感じる。まぁいいか。


「……おい、そこの大男」
「ん?って……マジ?」


声を掛けられ、振り返れば……知っている顔が一つ。


「こんな道のド真ん中で、何をしているんだ」


そう、ヴァルキューレの顔……尾刃カンナだ。




次回

【アイラ、彼氏できるってよ:4話】



カンナはロウガとアイラの関係をどう判断するのでしょう?



では、本編です。



最恐の二人。そして、守護者としての在り方。

 

 

☆美甘ネルの心情……。

 

 

 

 

 

 

 

────昔から、あたしは周りとは違った。

 

 

 

何が違うか……まぁ分かり易い話、身体の作りが他の奴等とは違った。

 

ガキの時は良く喧嘩して、多々一でボロボロに成る時もあった。それでも負けなかった。

小学校高学年の時はこの眼付きで高校生とやり合った事もある。あたしからすれば、そんな話ザラにある。

それでも負けなかった。どんだけボロボロに成ろうが噛み付いてでも負けなかった。

 

負けは死ぬも同義。勝つ事こそあたしだ。

 

負けの二文字はあたしのプライドが許さない。死ななけりゃ負けじゃねェ。リベンジでもして勝てばそれは勝ちだ。負けの二文字は消えんだよ!んだよ!文句あっか!!

 

とまァ、こんな人生、負けず嫌いなあたしも……もう高校生。それも3年だ。

 

あと1年経ちゃあ卒業……これでも刺激ある17年は送ってきた。後輩も育ってる。

悔いはそんなになかった。C&Cのリーダーとして、ミレニアム最強として、恥じない背中を見せて来れたと思ってはいる。

 

……だが、今、あたしの目の前で繰り出されている事を目にした時……あたしの価値観は大きく崩される事になった。

 

 

 

”────ドゴォォォンッッ!!!”

 

 

 

「あぐっ!!く、こっっの!!」

「所詮!予知は予知ッ!!どれだけお前の演算能力とあらゆる事象も対応する機動力があろうがッ!災害の前じゃ全てが無意味なんだよ!それになァ……ッ」

「ッッ!!かはっ!?」

「────俺に喧嘩を売った時点でどうしようもねェだろうがッッ!!!」

 

 

 

その光景は……凄まじいの一言だ。トキが吹き飛ばされたんだ。

 

アビ・エシェフを装備するアイツは、飛鳥馬トキ。一応、C&C所属の新入りだ。

素の身体能力は申し分ない。中々動ける奴で、強いってのはあたしも認めてやる。加えて、アイツはこの都市全域の電力を全てあの機体に集中させ、とんでもない演算能力で未来予知をも可能にしている。

 

しかも回避能力が異常だ。速度、攻撃力も流石としか言いようがねぇ。

 

……悔しい事この上ないが、あたしは負けた。アイツに、2度も。

 

 

────だけど、あの野郎は……レンノスケは違う。

 

 

 

『トキッ!主砲を許可するわ!早く使いなさい!』

「ッ!(そんな隙、何処にも…っ!)」

「この俺を前に随分と余裕だな」

「ッ!!クッ!」

 

 

 

レンノスケは思案する隙すら与えない。

 

一瞬で間合いを詰められたトキがレンノスケの膝蹴りの動作に気付き、腹部をガードする……だが。

 

 

 

「ッ!!?なっ……うぐッ!?」

「フェイントだ。これくらい読んどけ」

 

 

 

膝蹴りはフェイク。狙いはあの野郎が持つハンドガンでの射撃だ。

 

腹部を両腕でガードしたトキは足元がノーマークに成る。レンノスケは其処を突き、襲撃をトキの右太腿に全弾当てやがった。難しい筈だ、トキはアビ・エシェフを装備している。だが、それでも当てて見せやがったんだ、あの野郎はッ。

 

 

 

「こうなった場合お前はどうすんだよ」

「クッ……はァァッ!!」

 

 

 

トキは態勢が悪い、しかも間合いはレンノスケが優位。

故に、左足でバックステップしかない。

 

 

 

「そうだ、それしか出来ねェ」

 

 

 

だが相手はレンノスケ、全てを読んでいやがる。

 

 

 

「お前の持つ対応力…その上に俺は居るんだよ」

「なっ!!ガっ、ハッ……うぎぃ…!」

 

 

 

エグイ。レンノスケはトキを逃がさない。

そのまま瞬時に詰めてトキのマシンガンを掴み、強引にビルの壁にブン投げて衝突させる。

 

 

 

「クッ!がはっ……ふぅ、ふぅ……流石、ですね…ッ……ですが、勝つのは私です」

「一撃でも俺に当ててからモノを言うんだな」

 

 

 

トキは対応が間に合った。だからまだ立てる。

 

頂点同士の戦闘、だが────差はある。

 

トキは既に全力でレンノスケに挑んでいる。それこそ、命を懸けて。

さっき、あたしは現状のトキのスペックを整理した。どれもこれも凄まじいの一言、「相手にするには最悪過ぎるチート野郎だ。

 

だが……レンノスケは、その全てを読み、対応しやがる。

 

 

 

「ま、まだ、まだです!」

 

 

 

トキは即座に態勢を整え、独特なステップでレンノスケから距離を置く。

 

離れて尚、あの野郎には隙が無い。それに……主砲とやらを使う仕草を見せない。なんだ?その手法とやらは……。

 

あたしが思案に暮れていると、トキが抱える二丁のマシンガンを構え、レンノスケに向け一斉射撃。

 

威力、弾圧、その全てが重厚。恐らく強力な電力も兼ね備えて撃ち込んでいる。

 

 

 

「……上等だッ」

 

 

 

瞬間、レンノスケが鞘に納めたナイフを抜き手に持つ。

 

鞘をそのまま右手に持ち、妙だが、今のレンノスケはニ刀流の姿だ。

 

そして……そのナイフを、華麗に振りまくった。

 

 

 

”ギャキキキキンッッ!!!キキキイィィン!!”

 

 

 

「んなッ!?」

「ふゥゥ……ッ」

 

 

 

絶え間なく射撃される銃弾を、レンノスケは涼しい顔で全て弾き飛ばしていく。

 

目にも止まらぬナイフ捌き。撃ち落とし、真っ二つに斬り伏せる芸当も余裕で魅せる。

 

 

 

「クッッ……(更に距離を取りますッ!)」

 

 

 

トキはマシンガンの装備からミサイルを放つ。

 

 

 

”ドゴォォンッッ!!!”

 

 

 

それはレンノスケの足元に着弾。黒煙が舞い、非常に強烈な轟音を鳴り響かせる。

 

舞い上がる黒煙……普通ならば、足元にミサイルが着弾すれば怪我は必須だろう……だが。

 

 

 

”ブオンッ……”

 

 

 

レンノスケは煙を掻き上げ、正体を現す。

 

その身一つに────1つもの傷はない。

 

 

 

「悪くない攻撃だ。意識をマシンガンに向け本命はコイツ……作戦としては実に良い」

「悪くない、ですか……ショック…ッ…ですね。まさか傷どころか、服ですら攻撃が通らないのは」

「直前に回避したからな。別に避けなくても良かったんだが、生憎とネルが居るんでね────いい刺激に成って貰いたいんだよ」

 

 

 

レンノスケの言う通りだ。

 

私は、これまでにない刺激を頂いている。

 

 

 

 

「(────スゲェ……)」

 

 

 

あたしは、見入っちまう。

 

レンノスケの仕草ソノモノ全てに、瞬きすら勿体ないと思う程、あの野郎の戦闘を注視しちまう。

 

あたしはレンノスケの事が……ハッキリ言えば、余り好きじゃねェ。何でかしらねェがあたしに対して腹が立ちまくる発言をこれでもかと云いやがる。

 

何回あの野郎と喧嘩したか覚えてねぇ。殴り合い、蹴り合いだってした。

 

 

 

「(くそ……ちくしょォ……ッ)」

 

 

 

今、あの野郎を見て理解する。

 

あいつはメチャクチャ……手加減していたんだ。

喧嘩する時、あたしに手加減していやがったんだ。

 

……いや、気付いていた。手加減している事くらい、ずっと前から。

 

別に見て見ぬふりをしていた訳じゃない。あたしだって本気では喧嘩していない、ちょっとしたじゃれ合い……だが、あの野郎はあたしに『傷を与えない』戦い方しかしなかった。

 

つまり……あたしを”弱い女扱い”、否、”弱い人間”扱いしやがったんだ。

 

 

気付いた時、あたしは怒りよりも────異常なまでの悔しさが降りかかってきた。

 

 

 

「………クソっ!くそくそッ!クソぉッ…!」

 

 

 

別に女扱いは良い、あたしだってそれなりに女としての自覚は持ち合わせている。

アスナの様なキャピってる真似は死んでもしねーが、それなりに化粧やスキンケアに力を入れてはいるつもりだ。

 

 

 

「こんなに、差があんのかよッ……クソっ、くっそ…………こんなの、こん、なの……」

 

 

 

悔しいのは、弱者扱いされた事だ。今までこんな経験はねェッ……プライドがズタズタに踏み躙られた気分だ。

 

 

 

 

 

 

────こんなの、本当に…………

 

 

 

 

 

 

 

 

「────最高じゃァ!!ねェかよッ!!!」

 

「ッッ!!!」

「ッ!くはッ……きたかッ!」

 

 

 

気付けば、あたしは立ち上がっていた。

 

差は大きい、まるで象と蟻だ。

 

あいつは強い。己の程度を確りと分かっているから、レンノスケは強い。

 

其処にはへったくれな傲りがねェ。相手を下に見る悪辣もねェ。

 

己を知る。そして強欲に、貪欲に強さを求める。

 

何が足りない、何が己に足りない。それを追い求め習得する。

 

────あたしは気付いた。

 

あたしは……悔しかったんじゃない。レンノスケの対応に憤りを覚えたんじゃない。

 

ただ、ただ……嬉しかったんだ。

 

あたしを、此処まで奮い立たせる存在が居た事に。

あたしを、この数ヶ月で此処まで夢中にさせる馬鹿野郎が居た事に。

 

あたしが立ち上がった。それに全員が注目する。

 

おう、レンノスケ……あたしは、テメェの言いてぇ事があんだよ。

 

よく聞きやがれ。これが────あたしの覚悟だッ!!

 

 

 

「────レンノスケッ!!テメェはあたしのモンだッ!!あたしがテメェを超えるその時まで!!あたしは負けねぇ!!」

「っ!……ほぅ」

「だから!テメェはそのままで居ろ!!最強のままこの世界の頂点に君臨し続けろッ!どんな奴が相手でも圧倒し、そのバカみてぇに強ェ姿を見せ続けろッ!!あたしがその座を蹴落とす一瞬まで、誰にも負けんじゃねぇぇーーーッ!!」

 

 

 

”ざわっっ……”

 

 

 

「分かったか!!この、ボケェ!」

「ふん……お前に言われなくとも、そうするつもりだ、チビ」

「あぁん!??誰がチビだとゴラァッ!」

「お前以外に誰が居んだよカスぅ。騒音チワワは何処までいっても騒音ポメラニアンだな」

「うるせぇ!!チワワかポメかどっちかにしろこの筋肉ダルマ!!」

「は???おいコラ、それ以上この俺に舐めた口を聞け?即座に殺しちゃうかんな???」

 

 

 

気付けば、また言い争い。

 

でも、今迄の言い争いとは、少し違う。

 

キリノ……この馬鹿はテメェに惚れてる。だから生涯を過ごす存在として、キリノ、お前が立ってやれ。

 

そしてあたしも強く成って、テメェを超すッ!そして────

 

 

 

「このチビぃ、今に見ていr……ッ!く、ははっ!そうかネル、お前そこまで────……おい、ネル」

「あぁ!?んだよ!」

 

 

 

 

────気分はどうだ?

 

 

 

 

「決まってんだろッ────最ッッッ高だァばかやろー!!!」

 

 

 

あたしも、その隣に立ってやるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────イカレてる」

「うふふ、それが彼ですから」

 

 

 

エリドゥ内部施設、窓際にて……ヒマリとエイミが外の様子を視認。

 

赤黒い雷雲、呼応する暴風、身も凍る様な重圧、そして……アビ・エシェフを装備したトキを圧倒する怪物レンノスケ。

 

そんな彼に、二人は何処か哀愁を漂わせる、そんな雰囲気を醸し出したのだ。

 

イカレてる……エイミは決して悪口でそう言った訳ではない。その言葉しか出て来なかったのだ。

 

 

 

「恐らく、アレでも大分抑えているのでしょう。私が搭載したドローンで現場に接近してみたのですが、先生含め、あの子達の被害は一切ありません」

 

 

 

ヒマリのいう事に、エイミは一瞬怯むが、映る映像を見て納得する。

 

 

 

「エグイ。皆の所にだけ温度が上昇していない……まさか、特定の範囲に天候を操れるなんてね」

「そうです。彼は不可解な力でこの赤黒い雷雲とビルすら巻き込む暴風を生み、その上、天に斬撃を与え裂傷……加え、キヴォトス全土に対し未知の体調不良を引き起こしています」

「全身が重いし、頭が痛い……多分、現場に居るモモイ達のみ気遣って力を抑えているね、あの様子だと」

「神秘の凝縮、そして分散……それによって巻き起こる天災……彼はたった一人で、この状況を作りました。正に────怪物」

 

 

 

纏める。そうすれば、彼の為した現象の異常さが際立つ。

 

 

 

「……部長、コレ」

「分かっています。えぇ……コレは、一人の人間が持ち合わせていいモノでは無い。特に天を裂いたあの斬撃、アレは────」

 

 

 

未だ底知らぬ【神】すら殺せる────

 

 

 

「それにしても、珍しいね。部長が此処まで云う何て」

「……アリスの件とは、余りにも状況が違いますから」

「まぁそうだね。それに恐ろしいのは……これが彼の本気と捉えて、まだ引き出しはあるって事」

「そうですね。ねぇエイミ?貴女が仮にアビ・エシェフを装備したトキと模擬戦を行うとして、何分持ちますか?」

「多分3分が限界じゃないかな。こっちが万全の準備と状態で挑むならそれ位がベストだと思うけど……でもどうしたの?急にそんな事言いだして」

「いえ、少し気になったのですよ。エイミ、私は貴女の戦闘力を非常に高く評価しています。ネルとトキに続く戦闘者だと思う程、貴女は強いですから」

「ふーん」

 

 

 

エイミは全然興味無さそうな顔をするが、実際エイミの強さはキヴォトス全土で見ても指折りだろう。

難しい状況下でも最善の選択肢を取り、単独で数々の任務をこなすその才能は正に屈指の実力者だ。

 

未だ1年生なのが恐ろしいが、これが和泉元エイミなのだ。素体だったらトキと同等と云っても過言では無いだろう。

 

 

 

「故に信じられませんね。そんな今のトキを、彼は何の変哲の無いベレッタで圧倒しています」

「凄いね……それに怖いのが背中に装備してある『M82』……アレはなに?正直ナイフよりも怖いんだけど」

 

 

 

そう、エイミは分かっていた。

 

レンノスケは100%の神秘を発動している()()で、戦闘スタイルは極端に手加減している。

 

ベレッタのみ……あのトキ相手にそれは本来なら無謀だ。しかし、レンノスケはソレ込みで圧倒。ナイフを使用すれば即座に戦闘を終わらせる事が出来る。

 

加えて、背中に装備するM82。漆黒に染まるその銃は、何処か……異様だ。

 

 

 

「(彼の戦闘スタイルはハンドガンとナイフのダブルプレイ、それだけでも少し異質ですが……確かに奇妙なのが彼の背にある『M82』……彼は遠距離専門では無い筈、それに情報では彼は大型の武器を使用した事は余りないと聞き及んでいますが……不気味ですね、何処か彼に踊らされている気分です)」

 

 

 

ヒマリは思案する。

この惨事を引き起こして尚、全力では無い彼の本領を想像し恐ろしくなる。

 

城ヶ崎レンノスケ。その戦闘スタイルはキヴォトスでも珍しいハンドガンとナイフの二丁使い。

これはキヴォトス全土でも特に有名な話だ。被害が出た者には銃傷に刀傷が際立っていた。

 

だが、彼がスナイパーを使用した話は一度たりとも聞いた事が無かった。

 

 

……いや、待て。何かがおかしい。

 

 

 

「(この赤黒い雷雲、そして天を裂いた斬撃。あの頃と少し状況が似ています……でも、これは一体どうやって消えました?彼に発せられる『超高濃度エネルギー』はこのキヴォトスの全生物に於ける頂点、デカグラマトンの比では無い……故にこの様な芸当が出来る。天候、そう、自然其のモノを支配できるのが彼の力。これはもう理解する他ありません────)」

 

 

 

────この惨劇は、一体どうやって無くなったのか?

 

 

 

そう、おかしい。余りにもおかしい。

 

いま起きているこの異常事態を巻き起こしている元凶は彼だ。だが、この後始末をどうやって彼は────

 

 

 

『────本気を出すなら、100%だけ……と』

 

 

 

瞬間……ヒマリの脳内に浮かぶ、盗み聞きしたキリノの発言。

 

 

 

「100%……ッ────まさか……まさかッ!!!」

「部長?どうしたの?」

「そう、そうですか!貴方は、何処まで規格外ッ……それを可能にするから、貴方は怪物、いえ……英雄と謳われるのですかッ!ふふっ、うふふふふっ!!そうですかそうですか!100%、100%は彼に於ける手加減も手加減!ふふっ!理解しましたよ貴方達お二人の発言の意味を!なるほど、そう言う意味が隠されていたのですね!!」

 

 

 

ヒマリが興奮した様子でイヤらしい笑みを浮かべる。

 

全て理解した。キリノとレンノスケ、その二人にしか伝わらなかった言葉の交わし。

 

100%。これは便利屋68やアリウス・スクワッドにもよく理解出来なかった。

 

普通、100%は全力と云える。だが、二人は違う意味で捉えていたのだ。

 

 

 

「だから……ネル、貴女が必要なのですねっ!」

「?????」

 

 

 

ヒマリはただ一人、興奮する。この意味が分かった。それだけでもう……ミレニアムにとって勝ち(価値)に繋がるからだ。

 

 

 

「エイミ、よく、よく見ているのです……彼が、一体ナニを為すかを────」

 

 

 

映し出されるモニター、其処に映るトキ。

そして相対するレンノスケ、その隣に……血塗れのネル。

 

既に戦局はレンノスケに傾いている。だが、これだけでは終わらないのだ。

 

沈黙の間。先に動いたのは────トキだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────シュッ!!」

「ふんッ」

 

 

 

ネルとの会話を終え、瞬時にトキが接近戦に持ち込む。

至近距離で乱射し、隙を与えない戦闘を臨む。

 

 

 

「そんな鉄の豆が俺に効くと思ってんのか」

「ッ!!そんな事、分かっています……よ!」

 

 

 

レンノスケは至近距離まで来たトキに向け頭突きを繰り出す。だが、皮一つでトキはバックステップで避ける。その最中でトキはもうミサイルを放つ。

 

 

 

瞬間、レンノスケに浮かぶ違和感。

 

 

 

「ほぅ…(初手に浮き出てた癖が改善されつつある。この戦闘に乗じて学んできたか……)」

 

 

 

そう、飛鳥馬トキ。彼女もまた────戦闘の天才。

 

レンノスケの戦闘スタイルは謂わばカウンター。攻撃を読み、何処に隙があるのか見抜く。

 

トキは瞬時に思考する。どの位置が彼との戦闘に支障を生まない。

 

近距離、却下。

遠距離、却下。

 

中距離……可能性、有り。

 

レンノスケ、隙は無い。

ネル、隙だらけ、故に無害。

 

 

 

「(ネル先輩は立っただけ。あの出血量は相当、恐らく肋骨は2,3本は折れている。加えて靭帯も切れている……立っただけでも凄まじいですが、脅威ではないッ!)」

 

 

 

思考を安定させる。

 

ネルは既にボロボロだ。

 

故に、逆に言えば脅威はレンノスケのみ。

 

今は圧倒されている。だが、己も急成長している。

 

────越せるッ!勝てるッ!

 

 

 

「(中距離で貴方を潰すッ!!)」

 

 

 

トキが電力を極限まで稼働させる。

 

此処に来て仕掛けてきた。トキは全存在を懸けてフルスロットルで詰めに来る。

 

 

 

「むッ!そう来るか…ッ」

 

 

 

これは予想外。レンノスケは至近距離で来るかと読んだが、トキはミサイルを放ちながらマシンガンを乱射。それも、超高速で。

 

独特なステップ。レンノスケは中距離の位置を維持され、対応が難しくなる。

 

 

 

「シイィィィ……ッッ」

 

 

 

だが、対応が難しくなっただけ。レンノスケはハンドガンでミサイルを撃ち破壊。

そして左手に持つ鞘を収めたナイフでマシンガンの射撃を弾く。

 

違和感。一瞬の隙……気付く。

 

 

 

「ッ!!(両手が塞がっているッ!)」

「はぁぁッッ!!!」

「くはッ!面白れぇ……ッ!!」

 

 

 

瞬間、トキがマッハに突入する速度で間合いを詰め、レンノスケに……まさかの頭突きを仕掛ける。

 

レンノスケも即座にソレを察知。この一瞬の間で可能な振りを行い、トキに向け強烈な頭突きを魅せる。

 

 

 

 

 

 

”────ゴチンッッ!!!”

 

 

 

 

 

「あ、ぐぅぅ……ッ!」

「此処に来て力勝負かッ!見かけに寄らず良い根性じゃねェかトキッ!」

「余りしませんがねッ…くぅッ……なんて、硬さ、ですか…ッ」

「くははははッッ!これでも石頭で通ってんだ……だが────やられたなァ」

 

 

 

”ツ────…………”

 

 

 

「えッ!?」

「う、うそ?!」

「あ、あの、レンノスケさんが……!?」

『まさか……』

 

 

 

遠くで見守っているミレニアム勢がざわつく。

 

上からモモイ、ミドリ、ユズが驚愕の表情を作りながらレンノスケを見る。

通信越しのチヒロも言葉を詰まらせる。常に冷静沈着の彼女ですら、その姿に驚きを隠せない。

 

それもそうだろう────レンノスケの額から、血が流れたのだから。

 

 

 

『……トキ、貴女……』

 

 

 

リオが、呟く。

 

己の従者が、彼の怪物に頭突きで血を流させた。

感慨と驚愕、それ以上のナニかが、リオの中で生まれていた。

 

 

 

「は、はぁ、はぁっ!ッ、はぁ、はぁ……」

「……スゲェな、お前」

 

 

 

レンノスケは額から流れる血に対し、何もしない。触れる事無くただ流させる。

無論、トキも額から血を流す。それはレンノスケよりも多い、恐らく骨にヒビが入っている。

 

まだジンジンする頭痛、だが、レンノスケに出血させた。

 

 

 

「ど、どう、ですか……はぁ、ハァッ………重いでしょう?私の、頭突きっ、は…!」

「……あぁ、重い。流石に驚いたよ」

 

 

 

レンノスケはトキを見つめる。

 

その瞳には敵意が無い。寧ろ反対……敬意を表す瞳だ。

 

 

 

「この俺に血を流すか………天才め」

 

 

 

”飛鳥馬トキ”……この女は、間違いなくミレニアムに於いて最強に成る逸材。

 

アビ・エシェフを装備している?否、アビ・エシェフを最高かつ最上に扱う事が出来る。故に凄いのだ。

 

 

 

「ふぅぅぅぅぅ………身体が軽い。ふ、ふふふ……レンノスケさん、私は……私はまだ、先がある様です」

「あぁ、底が見えん。まさか此処までとは思わんかったぞ」

「ふふふ……嗚呼、楽しい。自分の成長が嬉しいです…っ」

 

 

 

戦闘狂。

 

トキは今、最高峰に気分が高揚している。

 

レンノスケがトキをもう一度注視する。

 

トキの身体はもう限界に近い。だが、その意思その瞳は未だ健在。

 

 

 

「今から────本気で貴方を打ち負かすッ!」

「……やってみろ」

 

 

 

吠える。らしくもなく、そのポーカーフェイスを崩して。

 

 

 

”ドガガガガガガッッッ!!!”

 

 

 

トキが中距離の戦闘……ではなく、遠距離の戦闘を実施。

レンノスケは少しワクワクしていた。まさか己に血を流す者が居たとは思わなかったからだ。

 

トキが魅せる戦闘、今この極限の状況下で何を発揮するか。

 

 

 

「……むッ!」

「これすら読みますか!ですが、想定内ですッ!」

 

 

 

トキは空中に飛び出し、上から射撃体勢に入る。

レンノスケはトキの行動を察知し、ベレッタを撃つ……だが、アビ・エシェフに搭載されている電磁波シールドによってベレッタの射撃を阻止。

 

 

 

「グ……くぅぅッ!」

「逃げ場なしだ、落ちろ」

 

 

 

だが、相手は城ヶ崎レンノスケ。神秘を大幅に乗せた弾丸はアビ・エシェフのシールドにヒビを入れる。たった数発、しかもかなり昔のベレッタM92、キヴォトス人からしたら正に豆鉄砲。

 

そんな武器なのに、この威力……。

 

 

 

「流石、です………ですがッ!」

「……面白い」

 

 

 

しかし、トキは先読みをしていた。

 

彼にこのシールドはほぼ無意味に等しいと理解していた。だからこそ、仕掛けた。

 

 

 

”キュイィィィ────ガチャンッ!”

 

 

 

「あ、あれはっ!!」

「アビ・エシェフが大幅に可動した……っ!」

 

 

 

”ゴォォォォォ……ッ!”

 

 

 

「何か仕掛けてくる……レンノスケ君!あれはマズイぞ!!」

 

 

 

トキが動かすアビ・エシェフが変化を起こす。

 

マシンガンを撃ちながら下降、その瞬間に……後ろに搭載されている砲射口が、レンノスケにスコープされる。何かを溜めている……恐らく、あれが『主砲』と呼ばれる代物だ。

 

エンジニア部が反応を示し、ウタハがレンノスケを呼び告げる。あれは危険だ、直ぐに避けろと。

 

 

 

「…………」

「なっ!?」

「れ、レン先輩!?」

「どうして動かないの!?ヤバいですよ!?」

「……レンノスケッ!」

 

 

 

ゲーム開発部、そして先生が叫ぶ。

 

レンノスケが動かないからだ。そして、何故か射撃を止め、静かにトキを注視する。

 

それは、トキですら異様だと感じた。故に────感情を表に出す。

 

 

 

「何をしているのですか!!!まさか正面からこの攻撃を受けようと!?あまり……余りッ!私を舐めないで頂きたいッ!」

「………何してる、さっさと撃てよ」

 

 

 

トキの激情に、レンノスケは何ともない様に言い返す。

 

 

 

「ッ!……そう、ですかッ……なら────どうなっても知りませんッ!!」

 

 

 

トキは吠える。らしくはない、だが……それ以上に悔しかった。

 

己の全力を前に、彼は平然としている。

眉を一切歪めず、空中に居る己をただ何もせず見ている。

 

言ってしまえば隙は大いにあった。彼なら既に撃ち落としているか、この攻撃を前に何かしらのアクションを起こして己を打ち負けしている筈だ。

 

あぁ………分かっている……彼が本気ではない事など。

 

彼はただ、彼に宿る神秘を全力で露出しているに過ぎない。恐らく実力の半分も出していないだろう。

 

分かっている、分かっているんだ……でも。

 

 

 

「(────……一度くらい、本気で向かってきて欲しかった…っ)」

 

 

 

これは我儘だ。叶う事の無い、幼稚な我儘。

 

だがトキは理解している。彼の意図、その全てを。

 

彼の本気を望んだ?馬鹿馬鹿しい、己はソレに値する人間なのか?

 

否、そんな筈が無い。彼はナイフを使用していない、背にあるバレットM82を使っていない。

 

ただのハンドガン。使い尽くされたベレッタM92だけだ。

 

分かっていたんだ。レンノスケが本気を出せば己は終わる。このエリドゥなど存在ソノモノが吹き飛ぶだろう。

 

理解している。故に────トキは照準をレンノスケに合わせる。

 

 

 

「これが私の全力ですッ!」

「うぁ、ま、マズいよ絶対!!」

「レン先輩っ!!」

「ッ!レンノスケ…!」

 

 

 

叫び呼ぶ声も、この戦地には響かない。

 

青い光、重厚な圧。それは調月リオが手掛けた最高傑作品。

 

下降を始める。そして、地に佇む怪物を狙う天光。

 

飛鳥馬トキが扱いしアビ・エシェフの……本領である。

 

 

 

「────ロック・オン」

 

 

 

”────ドウゥゥゥゥンッッッ!!!!!!”

 

 

 

トキがレンノスケに向け、極太のレーザービームを放つ。

 

それは……科学の御業。人類が生んだ叡智。

 

飛鳥馬トキの────全てだ。

 

 

 

「………」

 

 

 

放たれて尚、レンノスケは微動だにしない。

 

時が遅く感じる。まるでスローモーションの様に、全員の視認がレンノスケに注目する。

 

もう、目前まで迫っている。あの主砲を真正面から喰らえば、幾らレンノスケでもタダでは済まない。それは全員が直感で理解した。

 

眼前に向かう主砲……あぁ、もう、だめだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブチかませ────()()

 

 

 

 

 

ッッッパァァァァァァァンンンッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

瞬間、トキから放たれた主砲が……遥か上空へと返された。

 

 

 

 

「………は?」

 

 

 

トキの思考が停止する。一体なにが起きた……理解が追い付かない。

 

レンノスケが何かした?否、彼は今も平然と立ち尽くしているだけ。

 

つまり何もしていない。では一体、何が………?

 

 

 

「っ……ま、まさ……か」

「────真打、登場だ」

 

 

 

トキは見る。

レンノスケ、その目の前に居る……一人の影を見る。

 

あぁ、そうか……見くびっていた。

 

彼女の存在を────恐れられる意味を。

 

 

 

 

 

 

「よォ……よく聞け新入り」

 

 

 

そう、彼女の異名は……

 

 

 

「────コールサイン・ダブルオー!美甘ネルッ!!あたしに逆らう奴はァ!どんな奴でも殺される運命なんだよォッッ!!!」

 

 

 

”約束された勝利の象徴”

 

 

 

ネルの右手には愛銃の鎖が巻かれている。つまり、彼女はその右手の一撃でトキの主砲を打ち返したのだ。

 

 

 

美甘ネル、彼女もまた────()()だ。

 

 

 

 

「選手交代だ、テメェはすっこんでな!」

「勝手にしろ」

 

 

 

”ドンッ!!”

 

 

 

ネルが踏み込み、下降しながら空中に居るトキ目掛け突っ込む。

 

 

 

「ッ!(何てプレッシャー……今までのネル先輩とは何かが違うッ!)」

 

 

 

血濡れのネル、その姿は……まるで修羅。

 

身体は既にズタボロだ、立っていること事態が可笑しな話。それをネルは気合と根性で動いている。

 

 

 

「はぁぁッッ!」

 

 

 

トキは別に隙があった訳じゃない。迎撃する態勢ではあった。

故に取った行動は突っ込んでくるネルのカウンター。アビ・エシェフの脅威的な演算能力でネルの次の行動を予知し、直前ギリギリまで構えた。

 

ネルの起こした行動は、膝蹴り。

 

トキはそれを躱す。そして、狙い通りにカウンターを仕掛ける………だが。

 

 

 

「真似事は対策されやすいだろうがァッ!!」

「なっ!?ぐっ、がはぁっ!!」

 

 

 

ネルの膝蹴りは、何と……フェイントだ。

 

眼前まで見せた膝蹴りがスッと消え、ネルがトキから通り抜ける。

そして……アビ・エシェフの左腕、マシンガンにネルの愛銃であるMPX、又の名を『ツイン・ドラゴン』に装備してある『鎖』を巻きつける。

 

そして、勢いそのまま遠心力を用い且つ、単純な怪力でトキを振り回し……地面へとぶん投げる。

 

こんなもん、幾らアビ・エシェフでも対応できる筈が無い。トキはそのまま勢いよく地面にクレーターを作りながら血を吐く。

 

 

 

「寝てる暇はあんのかよッ!!」

 

 

 

”ドガガガガガガガンッッ!!!”

 

 

 

「ぐぅぅ!!が、はぁ……ッ!」

 

 

 

ネルは隙を与えぬよう、空中でトキに向け連射。

それは何発かトキの腹部に着弾。異常なシールドは既にレンノスケによって破壊されている、其処を突いたネルの戦闘IQ、まさに異常。

 

強烈な威力。トキはアビ・エシェフによって護られているが、ダメージは甚大だ。

 

”一体、何処にこんな力が……”

 

トキは理解が追い付かない。先程のネルとは本当に違う。

 

何が起こった、ネルに一体……どんなカラクリが。

 

 

 

「……マジか」

 

 

 

レンノスケがボソッと、意表を突かれた様な声を上げる。

 

それが為す意味。レンノスケは下降して着地したネルを見つめる。

 

 

 

「あッッはははははッ!!どうした新入りィ!こんな程度だったかァ!?」

「くっ……何が、起きて…ッ!」

 

 

 

美甘ネル。ハッキリ言って、彼女はバケモノだ。

 

それもその筈。彼女は戦闘力に関してキヴォトスでもトップに入る実力者だ。

ミレニアムが誇る最強のエージェント。それが美甘ネル。

 

だが……彼女はこの短期間で、3度の敗北感を味わった。

 

 

1つ目はアリスを攫われた時。

2つ目は先程の戦闘。

 

これ等は全てトキに与えられた敗北だ。

 

だが……一番強く敗北感を与えた人物が居た。

 

3つ目────城ヶ崎レンノスケによる『潜在的強者』に充てられた敗北感だ。

 

 

そう、ネルは負けたのだ。レンノスケの底知らぬ本領に。

 

 

 

『ネル……』

 

 

 

チヒロがネルの名を云う。

 

彼女の変化に、チヒロも気付いた。

今までのネルとはまるでモノが違う。

 

でも直ぐに理解した。ネルは……至ったのだ。

 

 

 

「────()()()か」

 

 

 

レンノスケは悟り、発語する。

 

 

 

「テメェも疲労困憊!そろそろ決着だッ……来いよ」

「ッ!負けません、私は…ッ!」

 

 

 

眠れる獅子が……才能を爆発させたのだ。

 

 

 

「レンノスケの野郎がした事、それは神秘を纏い乗せる究極の業!理解したぜその仕組み!!理屈じゃ出来ねェ訳だ!全身の脱力に爆発的な瞬発性!そして心臓を中心に全身の筋肉を可動させる技術力!はっははッ!滅茶苦茶にムズイなァこれよぉ!!」

「ッ!(ネル先輩、急に流暢に……?)」

「良い、幾らでもハイになれネル……言語化したその先を見据えろ」

「身体が軽いッ!そうか、これがテメェが見ていた景色か!!ッ、ゲフっ……ふ、ふふはっはっは!この状態は気持ちが良い!それ故に体力が持たねぇ!!っぱあたしから行かせて貰うッ!!!」

 

 

 

”ジャキッ!!ドドドドドッッ!!”

 

 

 

「くっ、ここで射撃ですか!」

 

 

 

ネルがツイン・ドラゴンに火を付ける。射撃を乱雑に放って、トキにプレッシャーを掛ける。

乱射も乱射、当て様も当てられない。トキは全て回避する。

 

 

 

「(これは、余りにも雑過ぎる……つまり、ネル先輩の狙いは────!)」

「やっぱよッ!あたしと云えば接近戦だろうがァ!!」

「そう来るでしょうねっ!」

 

 

 

やはり接近戦。ネルの専売特許だ。

 

トキはネルの性質を見抜いている。接近戦で仕掛けてくるのは読んでいた。

 

 

 

「なッ、なに……くぅぅッ!?」

「オラオラオラッ!!どうしたゴラァ!!そんなモンかぁ!?」

 

 

 

しかし、それが分かったから何だと言うのか……と云う話だ。

 

拳に蹴りの接近戦。小柄な事も相まって土俵はネルが強い。

アビ・エシェフの力を持ってして尚、最高状態のネルには敵わない。

 

腕、脚、腹部……急所や戦闘に必要な部位を防御をするもネルのスピードが速すぎて対応が間に合わない。

 

 

 

「(ダメです、これ以上は……ッ)」

 

 

 

トキは堪らずバックステップを踏む。一瞬でネルから距離を置く……だがッ。

 

 

 

「逃がすとでも思ってんのかよォ!!!」

「んなッ!?」

 

 

 

美甘ネル、此処に来て────ギアを上げやがった。

 

 

 

トキの眼前、其処には既にネルの姿が在る。

 

しかもトキはバックステップを踏んだ故、体軸が余りにも悪い。

 

 

 

「────あ」

 

 

 

トキは悟る。

 

これは駄目だ、回避が間に合わない。

 

 

 

「案外早かったな……くたばりな」

 

 

 

”バキィィィィッッ!!!!”

 

 

 

「ッッッッ!!!!がは…ぁ…っ」

 

 

 

ネルが速度を上げ、絶大な前蹴り。

 

その脚は靭帯が破壊された脚での攻撃。それを想起させぬ程の……あらゆる万物をブチ壊す程の破壊力。

トキは、ネルのその攻撃を腹部にモロに受ける。

 

トキが弾け飛ぶ。勢いは止まらない。その姿はまるで弾丸だ。

 

 

 

”ドゴオォォォォン………”

 

 

 

轟音を奏でながら、トキがビルの壁にぶち当たる。

その力はビルが崩れかねん程の大威力だ。

 

 

 

「げふっ……まさか、ここまで、と、は────………」

 

 

 

沈黙。

 

アビ・エシェフを装備した飛鳥馬トキ、遂に気を失う。

 

この勝負、ネルの勝利だ。

 

 

 

レンノスケがやっと動き、ネルに近付く。

 

 

 

「おいおい、やり過ぎだろ」

「あぁ?っせぇな、加減がイマイチ難しいんだよ」

「いやまぁ最初は誰だってそうだがな……にしてもトキのやつ、酷ぇ有様だな。お前こんなに凄かったのかよ」

「テメェに言われても煽りにしか聞こえねぇ―」

「不貞腐れるな馬鹿。マジな話、お前がその力を極限まで扱えるように成ったら俺でも勝てるか分からんぞ」

「あぁ?ほん、とうかよ……」

「俺は下らん嘘は付かん。ネル、よく頑張ったな」

「……へっ、うるせぇ、よ……………ぅ」

 

 

 

ネルが少しふらつく。

レンノスケがネルの肩に両手を添えて支える。

 

 

 

「もう無理に動くな。元々出血が多いんだ、今のお前の状態は包帯を巻いたり止血剤で血を止めるどこうじゃねぇ。普通なら立てるのすら出来ない重症なんだぞ。今は少し休め」

「は、はっ……ワリィ、な………────」

 

 

 

今度はネルが気を失う。数々の傷に、多量な出血量。そして膨大な神秘を放出させた代償が来たのだ。

 

レンノスケは眠ったネルをお姫様抱っこで優しく抱える。そこに嘗てのライバル意識は無く、あるのは戦士を称える敬意の姿勢だ。

 

 

 

「(美甘ネル……想像以上だ、まさか此処までの女だとは……そしてトキ、お前も────)」

 

 

 

レンノスケはネルの姿を見る。

 

以前からネルの潜在能力を見抜いてはいた。この女は己に並び立つ存在だと。

だが、まさか此処まで出来るとは思わなかった。それは……先生含め、ミレニアムの全員がそう思った。

 

纏めよう。

 

城ヶ崎レンノスケ、そして美甘ネル……この両名は、この要塞都市エリドゥの電力を用いた『アビ・エシェフ』の猛攻を、何の細工もせずその身一つで撃破したのだ。

 

そして、この最恐コンビを前に一向に怯まず、果敢に挑み続けた飛鳥馬トキ。この者もまた凄まじい戦果を上げた。

 

ネルに何度も苦汁を味わせ、あのレンノスケの額に少量だが血を流させた。

 

怪物レンノスケ……彼は驚きを隠せなかった。

ミレニアムには、己を超える逸材が居たのだ。しかも、二人もだ。

 

 

 

「────()()、ねぇ……黒服よォ、お前には何が見えてんだ?」

 

 

 

そう告げる。誰も何も言わない。小さい声で呟かれたソレは誰にも聞こえなかったから。

 

 

 

「レンせんぱーい!!!」

「ん?うおっ、と……よぉモモイ、少し振りだな」

 

 

 

レンノスケが少し思案に暮れていると、同時にモモイがレンノスケの腹部に抱き着く。

その顔には涙があった。だが悲しいモノではなく、喜びと様々な感情が混ざった表情だ。

 

 

 

「うええぇ!!来てくれてありがとー!やっぱチートにはチートだよー!」

「ちー?よく分からんが、最後はネルが決めたんだ。感謝ならネルにしとけ」

「勿論ネル先輩にも伝えるけどー!結局はレン先輩が居なかったらヤバかったからレン先輩にも言わして―っ!!」

「むぅ……好きにしてくれ」

 

 

 

意外と的を得ている。モモイは妙な所で視野が広い。

モモイを筆頭に、ゾロゾロとレンノスケの傍へと人が集まって来る。

 

 

 

「レンノスケさん!お、おでこ!」

「ち、血が止まっていません……直ぐに止血しなきゃ…っ」

「ミドリ、ユズ。元気そうだな……コレは良いよ、意外と血が出てるが、直ぐに止まる」

「そうは言ってられないね」

「コトリ、確かバックに予備の包帯があった筈だから彼に」

「はいっ!勿論です!」

 

 

 

誰もレンノスケの話を聞く気が無い様子。

 

 

 

「むぅ……あ、アカネの眼鏡さん。すまんがネルを頼む……もう血は出てないがかなりの出血量だ。横にするなり何なり、取り合えず安静にさせてやってくれ」

「承りました。レンノスケさん、今回は……いえ、それは言わないお約束ですね。リーダーをありがとう御座います」

「いい……あっ!アスナさんじゃねぇか!」

「やっほーレンちゃん!おでこ痛そう……大丈夫?」

「こんなデコ、蚊に刺されたくらいだぜ!んな事より良かった、無事なんだな」

「うん!レンちゃんとの模擬戦が生きたのかも!まさかこんな所で会えるなんて思わなかったよ!会えて嬉しいね!」

「え!?嬉しいなんて、いや、そんな……あー!アスナさんやっぱ俺を狂わせようとしてるー!」

「あははは!やっぱレンちゃんおもしろーい!」

”「(めっちゃデレデレしてるけど……ってかキモ)」”

「キリノにこれ見せたらどうなるのかなー??」

「おいごらぁモモイ!!」

「ひぃぃぃぃ!!!」

「……もしキリノに言ったら……地獄のコチョコチョ40分ノーストップの刑な」

「い、いやだぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

城ヶ崎レンノスケ、アスナには超絶デレデレ。

 

アスナ以外がレンノスケの反応にキモイと思うが、この展開を作った張本人である為なにも言わない。モモイ以外。

 

ふと、先生がレンノスケを見上げながら告げる。

 

 

 

「ほらレンノスケ、しゃがみなさい。おでこに包帯巻くわよ」

「む……あぁ、分かったよ」

 

 

 

先生の指示には否を応じない。

レンノスケにとって、母に近い女性だ。それに今回手を貸してくれた黒服の『想い人(!?)』でもある女でもある。

 

 

 

「ん?今なんか凄まじい勘違いの波動が……」

「気の所為だ」

「そうかな………はい、巻き終わった」

 

 

 

先生がレンノスケの額に包帯を巻き終え、レンノスケは立ち上がる。

 

 

 

「助かったよ先生」

「それはコッチのセリフだよ!本当にありがようレンノスケ、君が居なければ間違いなく詰んでたかもしれなかった」

「……どうだろうな。俺はお前達の力を評価している、俺が居なくともどうにかなっていただろうが……まぁ、少しでも力に成れたんなら良かったよ」

「レンノスケ……」

「……お前達はアリスを救いに行くんだろう?なら先に行け」

「もちろん!でも、レン先輩はどうするの?」

 

 

 

モモイが問う。

 

レンノスケはトキの場所を見て、告げる。

 

 

「トキに応急処置をしなきゃならん。アイツはよくやった、たった一人で……哀れな女だが、トキは最後まで勇猛果敢なエージェントだった。それがあの状態じゃ……可哀想だろ?」

「レンノスケさん……」

「そうだね、じゃあレンノスケ。あの子は君に任せても良いかい?」

 

 

 

先生の問いに、レンノスケは頷く。

 

すると、カリンが声を上げる。

 

 

 

「なら私も此処で待機する。レンノスケ君が居るから大丈夫だと思うけど、オートマタが来る可能性も捨てきれないしね」

「そうですね。リーダーも暫く起きないでしょうし、私も此処に残ります」

「ふふっ!私も残ろっかな!」

 

 

 

C&Cの面々が声を上げ、全員にそう告げる。

 

残ると言い出したのはアスナ、カリン、アカネ。気絶したネルの護衛やトキの警戒もあるだろう。

レンノスケも応急処置をするだけで、此処に残ると云った訳ではない。

 

 

 

「了解……レンノスケ」

「分かってる。あんたが思う様な真似はしねェよ……それだけは理解してくれ」

「うん、私はレンノスケを信じてる。でもね、先生である私が言うのは間違ってるけど……リオは、少し道を踏み外してしまった子。まさか無関係のキリノとアイラを攫っていた何て想像する出来なかった」

「……あぁ、だから話し合いたい。冷静にリオと話したいんだ、俺は」

 

 

 

そう、レンノスケは今も怒りを押し殺して此処に居る。

 

アイラ、その子はまだ幼い子供だ。アリウスの経験を得ても、8才の子供である事に変わりはない。

 

そして……キリノ。己の命など捨て去ってでも護りたい愛し人。

大好きで、愛して止まない、唯一無二の女性。

 

中務キリノ……己が〈恐怖の象徴〉ならば、彼女は〈平和の象徴〉だ。

 

そして、彼女は己を────

 

 

 

「話では、此処にキリノ達が来る手筈なんだ。俺が居なきゃ……駄目だから」

「レンノスケ……うん、分かった」

 

 

 

腐った己を救った────恋人なんだ。

 

レンノスケは狂った。怒り狂った。それも天地が揺れる程、激情を露にした。

 

でも、踏み止まった。踏み止まったんだ。

 

 

 

「────やっと会えるなァ……キリノ」

 

 

 

その言葉は、強く、放たれた。

 

全員が彼の言葉を聞く。反応はそれぞれだ。

 

恥ずかしがる者、トキメク者……まぁこんな所だろう。

 

でも、レンノスケの顔を見る。感慨、この2文字が相応しい顔付だ。

 

 

この数日間。まるで地獄の様な日々だった……レンノスケにとって、どんな苦行よりも辛い数日だった。

 

 

でも、やっと、会える……会えるんだ。

 

 

 

「……ほら、さっさと行け。勇者アリスを救ってこい」

「レン先輩……うん!分かった!」

「行ってきます、レンノスケさん」

「本当に、ありがとう御座いました…っ!」

「私達からも、本当に助かったよ」

「レンノスケ、待ってるからね」

 

 

 

ゲーム開発部、エンジニア部、そして先生がレンノスケに礼を言いながら先へと進んで行った。

 

この男が居なければ、もっと時間を有していただろう。トキが操作するアビ・エシェフはチート過ぎた。

だがレンノスケの介入に、ネルの覚醒が最短で問題事を終わらした。

 

それもこれも、レンノスケが居なければ為し得なかった事だ。

 

 

 

「………あぁ」

 

 

 

走り去って行く面々に、レンノスケは一言。

 

そして流れる様にトキの方へ行く。応急処置の為だ。

 

 

少し歩いて、トキの目の前に行く。

目を閉じ、箇所から血を流すトキは動く気配が無い。目が覚めたとしても指一本動かす事など出来ないだろう。

 

 

 

「トキ……大した女だ。(おの)が信じた相手に此処までやれるか」

 

 

 

レンノスケはトキの精神性に惚れた。

怒り何かない。敬意の念が増して止まない。

 

自分も見習いたいと思う程、その信念は凄まじかった。

 

 

 

「……相当、リオって奴はいい上司なんだろうな。お前にとってはな」

 

 

 

理屈では分かっている。

トキは命令に従ったまで。己だってカンナの命令なら何でもやる自信がある。

 

親が黒と云えば黒……否は受け付けない。

 

レンノスケはしゃがみ込み、トキの腕を掴んでビルから出す。アビ・エシェフから身を出せば、ほぼ全身ズタボロと云っていい。リオの為に、身も心も捧げたから此処まで傷だらけに成れるんだ。

 

 

 

「アスナさん、カリンちょりん、すまんが手伝ってくれ」

「はいはーい!」

「うん……え?カリンちょりん??」

 

 

 

レンノスケはトキを横にする。

 

身体中ボロボロだ。全身を隈なく健診したいレンノスケは、パツパツの戦闘スーツを────

 

 

 

「ふんっ」

 

 

 

”ビリビリビリーっ!!”

 

 

 

「ぶーーーっ!!!!」

「へぇぇぇ!?」

「わーお!」

 

 

 

何と、破ったのだ。

 

ポヨンと、トキの中々大きい乳房が露に成る。

 

アカネとカリンが絶叫する。アスナも流石に驚愕する。

 

突然の行動。しかしレンノスケは至って真面目にトキの傷を診る。

 

 

 

「アスナさん、トキの上半身を上げた状態にしてくれ。先ずは全身を濡れタオルで清める。その後に先に背中の消毒を施す」

「分かった!トキちゃん、ちょっとだけ我慢しててねー」

「カリンちょりん、そこのガーゼを消毒液で濡らしてくれ。あと出来れば包帯も取り出して近くに置いてくれ」

「え、あ、あえ!?あ、はい!(思わず敬語)」

 

 

 

レンノスケは着々とトキに消毒、ガーゼ、包帯を巻いていく。

 

 

 

「(どうしましょう……レンノスケさんの手際の良さに、思わず魅入ってしまう…!)」

 

 

 

3人は理解する。レンノスケは至って真面目にトキを手当てしているのだと。

そこには何の恥じらいも無い。何と言うか、尊敬してしてしまう処置速度だ。

 

アカネはネルの汚れや手当出来ていない箇所を処置しているが、レンノスケの応急処置の速度や巧さについ魅入ってしまう。下手な医療従事者よりも手際が良いからだ。

 

 

 

「よし…む、左肩が外れている。そうか、ネルに吹き飛ばされた時に……ふぅっ!」

 

 

 

”ゴキンッッ!!!”

 

 

 

「ぁぁ、ん……っ」

 

 

 

レンノスケがトキの脱臼を強引に治す。

 

その痛みに反応したか、トキは目を覚ます。

 

 

 

「む、目覚めたかトキ」

「ぁ、ぇ……レン、ノスケさ……?」

「無理に喋るな、全身が滅茶苦茶に痛いだろう。アスナさんが支えてくれているから、今は大人しく俺に手当てを受けていろ」

「手当て…?ぇ…~~~~っ!な、え、私、いま……そう、ですか、私は……」

 

 

 

トキが一瞬で状況を理解する。

 

負けた。そして敵だった者達から完璧な手当てを施されている。

 

もう何も言えない。情けを掛けられた時点で己が動く原理は何もない。

 

 

 

「……手当て、感謝します」

 

 

 

温かい。背中にはアスナが支えてくれて、前はレンノスケが一生懸命手当てしてくれている。

気付けば裸。羞恥はあるが、彼なら良い……。

 

 

 

「おうよ…あ、起きたから聞くが、ちょっと良いか?」

「ん……はい、何でしょう?」

 

「────おっぱい触って良い?

 

「……はい?」

「レンノスケ?」

「レンノスケさん??」

「レンちゃん???」

 

 

 

レンノスケ、爆弾発言を投下。

 

 

 

「いやなに、見ればお前のおっぱいは少し切れている。このままだと傷が残るぞ?だから少し痛いし恥いだろうが、触らせてくれって言ってんだ」

「いや最初からそう言え!!」

「言い方がややこしいのですよレンノスケさん!!」

「あっははは!なんか変態さんみたい!」

 

 

 

そういう事か……と、トキは思う。

 

レンノスケとて、女性の胸の傷は嫌な筈と云う認識はあった。あと少しは羞恥心を持ち合わせて欲しい。流石に。

 

 

”……別に、下心もあって良かったのに”

 

 

 

「……レンノスケさん。傷は嫌なので、処置をお願いしても良いですか?」

「あぁ、任せろ」

 

 

 

何て、言えるはずが無い。

 

 

トキは思い出す。

 

 

 

『トキ、お前を今から丸裸にしてやるぜ』

「(……物理的に、そして”心”も丸裸にされちゃいましたね)」

 

 

 

レンノスケ、彼には責任を取って貰おう。彼女が居ろうが、関係ない。

どんな理由が有ろうと、年頃の女の裸を見て、胸を触ったのだ。

 

……少し位、我儘が許される筈。

 

 

 

「────レンノスケさん」

「ん?どうし……」

 

 

 

 

トキはレンノスケの目を見つめる。

 

そして……告げる。

 

 

 

 

「────いつか、貴方のメイドとして……居させて下さいね?」

「ふぁっ!?」

「ううぇ!?」

「わぁぁ!?」

「……ん?どーいう意味だ?」

 

 

 

 

それだけ告げ、トキは目を瞑った。

 

ヘイローの気配は消えていない。完全なる寝たふりだ。

 

3名はその意味を理解するが、レンノスケはまるで理解できない様子。それが、トキはまた愛おしかった。

 

 

 

「まぁいいや、取り合えずおっぱい触るぞ。痛かったら言えよ?って寝てるか」

「いや、ちょっ……」

 

 

 

”ふにゅん♡”

 

 

 

「んぁぁ♡」

「ふーむ、深くはないが浅くも無い。消毒液を染み込ませたガーゼで張り付けた後に肩にクロスするように包帯を巻いて出血を止めるしかないか(純粋に分析)」

「んぁ、ん…っ♡だ、だめ、です…ッ♡」

「ん?すまん、起こしたか。やっぱ痛いか?すまんが後もう少しだけ耐えろ……出来るな?」

「で、デキます」

「何か!何かなんだけど!?」

「トキ、何て恐ろしい子…ッ!」

「わぁー……エッチだ…!」

 

 

 

そうして、トキの応急処置は妙な雰囲気のまま進んだ。

 

 

取り合えず、レンノスケはキリノに一度わからせられた方が良い……。

 

 

この場に集う全員が、そう思った。

 

 

 

 





アカン最後ドスケベに成ってしもた……まぁええか。

まさかのネルのみならずトキをも強化。私はネルとトキも大好きなので、強化イベをしたかったのです。

パヴァーヌ編は後1話か2話ですね。このままいけば外伝はショタになりそうっすわ……まだ狂う人は増やせるかな?地道に且つ正確に狂わせますね。何と云っても、年齢は5歳で記憶もそのまま。ですが16歳に至るまでに負った傷跡は綺麗に残りますので!色んな意味で狂っちゃうにゅ!


※上記の内容は2割、7割は殆どがおねショタ系になる予定です。残りの1割は……ナオキです。




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