怪物は、真面目な君に恋をした。   作:カブトムシの相棒

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【アイラ、彼氏できたってよ:4話】




────



「……なるほど、その子がお前が言っていた新しい弟子か。名前は……犬飼ロウガくんか」
「は、はい……」
「決して俺がショタコンでロリコンな訳じゃねーぞ」
「誰もそんな事言っていない。子供の前で妙な事を言うな」
「へいへい、お勤めご苦労、お疲れ俺の主張、勘違いされる俺は不幸~♪」
「貴様ァ……ッ」


俺は今、カンナに道の端で説明している。どうやら通報を受けたそうだ、俺。
まぁ、それは別にいいのだ。確かに俺の見た目を鑑みれば子供を抱える強面の大男だ。

……いや俺ケーサツなんだが。

俺は仕返しに韻を踏んでカンナに八つ当たりした。多分夕方俺は殺される。アイラ連れてこ。


「(ぶっちゃけ一番会っちゃならん奴に会っちまったな……アイラとロウガが付き合ってる何て知れたら、ボス犬の奴ロウガの事ぶっ殺しちゃうかもしれん……何とかしなきゃだが、取り合えず)」
「わ、わふぅ……!?」


俺はロウガを抱きなおし、カンナに向き直させる。


「ほれ、ロウガ、この強面のおねーさんが俺の上司の尾刃カンナさんだ。ヴァルキューレで一番偉い人だから、挨拶しとけー」
「あ、ま、こ、この、かっこう……うぅっ」
「……………」
「あっ……あ、あうぅ……え、えっと、その…………い、犬飼、ロウガですっ……こ、こんな、形で、ごめんなさい……っ」


うむ、良い感じに挨拶したな。流石ロウガ、良い子だ。
挨拶は最初の印象を決める。少し噛んでしまったが礼儀正しい子だってカンナには伝わっただろ、これでアイラとの関係がバレてもワンチャン生き残るかも知れん。


「……………」
「……あ、あの?」
「ん?どうしたの?カンナさん」
「……(あれ!?)」


な、何故だ、なぜ黙る!?
いかんかったか!?いや、確かにこの格好は失礼か?(抱っこした状態)

すまんロウガ、骨は拾ってやる……。


「……かわいい」
「え?」
「ん?」
「は?」
「ロウガくんか……君、かわいいな」


前言撤回。ロウガ生き残る。


「か、かわ……?」
「カンナさん???」
「いやそーだよな!ロウガって可愛いんだわ!フサフサの毛並みは勿論!愛らしい獣耳に、湿っぽいお鼻!掴みたくなるロングマズル!少しヨナヨナしいが、優しい心の持ち主で、戦闘も申し分ない強さをしている!おーよしよし!!ロウガは可愛くてカッコいいなぁ!」
「わひゅぅ!うぎゅうぎゅ……れ、れんの、ひゅけ、さんっ……そ、そこはぁ、よわいぃ……っ!」
「レンにぃ???」
「そうなのか……ロウガくん、すまないが私も撫でても良いか?」
「わふ!?」
ロウガ、合わせろ、お前の命が懸かってる
え!?……ぁぅ、もう、なんだか……はいぃ
「良いってよ!ほら、頭ペタンしろ」
「はい……っ」


”ペタン”


「かっ……かわいぃぃ……っ(悶絶しながら撫でる)」
「わひゅぅぅ……(何だかんだ気持ちいいロウガ)」
「よしよしよし~!(調子に乗ってロウガを上げまくるレンノスケ)」


既にカンナはロウガの愛らしさのと虜になっていた。
レンノスケも、ロウガはこの1週間で好きになっていた。自分よりも幼いが、初めての同性の仲だからだ。


「…………………………ふぅん」


だが、アイラは面白くなかった。


「(や……ヤベェ……肩車してるアイラから果てのない重圧をかんじるんだが……ッ)」


そう、アイラは────


「ロウガくん」
「んひゅ……?」
「なんかさ、楽しそうだね?」
「ぇ………?」
「あは、いや、さ?楽し、そうだね?」
「そ、そんな、こと……ない、です」
「あは。いや、いいよ?私、ロウガくんが楽しそうなとこ、好きだし!」
「(んな訳ねぇ……)」


成程、アイラは嫉妬深い子だったか。ロウガに対して相当重いぞコレ。
あれーマジ?今時の8才の子ってこんななの?俺が遅れてるだけなのかな……。


「と……取り合えずラーメン食わん!?ほら。あの、最近できたラーメン屋!カンナ局長も一緒によ!」
「ん?あぁ、良いのか?」
「も、もちろんよ!なぁ?!」
「は、はひゅ!はひゅ!」
「あは!……うん!カンナさんも一緒が良い!」
「そ、そうか!じゃあ少しお邪魔させて貰うとしよう」


そうして、俺らはラーメン屋に向かった。

カンナはアイラと手を繋ぎ、俺がロウガと手を繋ぐ。

そして……俺とカンナは端に行き、ロウガとアイラが中心に置く構図となる。

……カンナは嬉しそうだ。だが俺とロウガは気付いている。


”三シミシミシミシミシミシ………ッッッ”


「……あは♡」
「わ、わひゅっ!わひゅぅぅ……っ」
「(ロウガ……骨は、拾ってやる)」


アイラが、ロウガの尻尾をガチ握りしておられる事を。
ロウガは汗を搔き過ぎて凄い事に成っている。多分、アイラ結構ロウガにやる事やってる。

その後、ラーメンを喰って、カンナとは別れた。

午後の訓練は急遽お開きにした。ってかされた。アイラが『ロウガくんとちょっと、お話があるんだー!』って笑いながら尻尾掴んで帰ったのだ。

ロウガは、その……涙目だった。多分いまごろ……分からされてるのかもしれん。


「……最近の子どもって、進んでるんだな~」


俺は、考えるのを、やめたのだった。




完!!



これにて【アイラ、彼氏できたってよ】を終わります。

という事で、アイラが”激重ケモナーサイコヤンデレ”と云う事が判明した訳ですが、如何お過ごしでしょうか。

アイラは純粋無垢ですが、それと同時に嫉妬深い一面を持ち合わせております。今回の様に他の女の子(例外はない)とイチャイチャしてたらアイラはロウガを噛んでマーキングします。そして、自らも噛ませマーキングさせます。

否みに力関係はこんな感じです。



アイラ>>>ロウガとなっております。ヘイロー持ちには勝てないんごねぇ。



「噛んで?」
「……」
「噛まないの?じゃあ、私から……首、噛むね?」
「は…はひゅぅ…っ♡」
「あは!可愛いね!反応が一々!」
「ご、ごめ……っ」
「ん?なんで?なんで謝るの?かわいいじゃん!それとも、やっぱ恥ずかしい?」
「は、恥ずかしいは、恥ずかしい……っ」
「あはっ!そうだよね!でも、大丈夫だよ!今ココには、私とロウガくんしか居ないから!だから、いっぱい、いーーーっぱい!恥ずかしがっても……いいんだよ?」
「あ、あぅぅ……」

こんな感じです。互いに8才です。

ロウガくんは事象の『カルバノグ編』で登場予定です。また変更はするかもです。


では、本編です。


再会

 

 

 

 

▽────城ヶ崎レンノスケと美甘ネルによる、飛鳥馬トキとの戦闘の数分前……。

 

 

 

☆救出組………。

 

 

 

 

「────なに……コレ…?」

 

 

 

エリドゥ内部の外へと出た救出部隊一行は、外へと出た刹那、その異様な光景に絶句する。

 

天は赤黒い雷雲を轟々とさせ、強風の大荒れでビルが軋んでいる。

ゴロゴロと、まるで神の怒りが如く鳴り響いている。

 

極めつけは……まるで斬られたかのように裂かれている、あの天空だ。

なんだ、あれは……今まで見た事も無い現象だ。

 

ミサキが発語し、空を見上げる。それは全員が同じ様に不可思議なこの光景を畏怖する。そんな中、キリノがとんでもない事を告げる。

 

 

 

「良かった、どうやらレンノスケは本官の言いつけを守ってくれた様ですね」

 

 

 

意味が分からなかった。この現象を為した存在がレンノスケだと見抜いた事もそうだが、この異様すぎる光景を前に何故こうも平然と居られる?

 

 

 

「キリねぇ……この怖いの、レンにぃがしたの?」

「そうですよ、コレは彼がした事です。少し張り切過ぎちゃったみたいですが……」

「やっぱそうなんだ。レンにぃ、すごく怒ってる感じがする」

「(は、張り切り過ぎたってなによー!?)」

「(レンレンが、これを?……な、何て言うか、ここまでくると笑えてくるんだけど)」

「(あぁ、やっぱり……あの人には、本能的に逆らえないような、そんな雰囲気があったのですが……間違いじゃなかったんですね……)」

「(さっきから常々と雷の様な轟音が鳴り響いていると思ったら、次は自然現象を発生させるね……これを規格外と提唱していいのか、最早分からない領域に来ちゃったね)」

 

 

 

キリノの発言に、便利屋68が反応を見せる。

 

彼と一度対面し、会合した。それでも分かる、見なくても分かる……彼の戦闘力。

だが、この現象は流石にイカレ過ぎだ。本当に同じ人間か?

 

 

 

「……もう奴に対して考えるのはやめよう、時間の無駄だ」

「そろそろ彼の居る場所まで行こうか、此処も時期に崩れるかもしれないし」

「彼の居る所……レンノスケは、無事なのですか?」

「いや、普通に無事でしょ」

「あの人に限って無事じゃ済まなくなる事なんかあるんですか…?」

 

 

 

アリスクの面々がキリノの問いに答える。

少し理解し難い、不思議な問いだった。彼の実力は彼女が一番よく理解しているだろうに。

 

 

 

「その……彼は少し、いえ…かなり無理をする節がある子なので心配で……あ、でも!無事であるのならそれで良いです!」

「……そっか」

「なるほどね~」

 

 

 

カヨコ、ムツキはキリノの反応を見て思う。

 

きっと、レンノスケは彼女のこういう所に惚れたのだろう。純粋で、正義感の塊である中務キリノそのものを。

 

 

 

「……ッ!(なんだ、戦闘音が急に消えた………)おい」

「分かっているわ。恐らく戦闘が終わった。この超常現象が消えない即ち先生達が勝ったって事」

「分かり易いね、じゃあ行こうか。きっと彼も待っていると思うよ」

「っ!キリねぇ!」

「はい!早く、早く行きましょう!」

「ちょ、ちょっと!保護対象が勝手な行動をするもんじゃな……あー!もう!待ちなさい!」

 

 

 

キリノとアイラが激しい戦闘音のその先、突如として消音と化した戦場へと走る。

途中でキリノがアイラを抱っこし、駆ける。この数ヶ月でキリノの身体能力が上がっている。

 

それは、便利屋68とアリウス・スクワッドも同じ。キリノの背を見つめに追いかけるが……なんと、キリノとの距離が一向に縮まらない。

 

 

 

「え!?は、はや…っ!?」

「ッ!驚いた……無駄のない綺麗なストライド走法、アイラを抱いて速度を上げるかッ!」

 

 

 

アル、サオリの両名がそう発語する。実際にキリノの脚は異様に速い。

中務キリノ……攻撃力、耐久力は未熟な部類だが、城ヶ崎レンノスケとの訓練の成果は脚に現れていた。

 

実際にキリノは運動が悪いと云う訳ではない。頭が悪い訳ではない。ただ……射撃能力が悪いだけで基本的に有能なのだ。

 

レンノスケが惚れ、認めた才能の原石。

 

それが────中務キリノと云う女なのだ。

 

 

 

「レンノスケ、待っていて下さい!今……向かいますからね!!」

 

 

 

再開は……もう直ぐ────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ッ!誰」

「ッ……あんたは、ゲヘナの……」

 

 

 

空崎ヒナが最高速度でミレニアムへ向かう最中、少し先に立ち止まりながら天を見上げる者が居た。

 

明らかに雰囲気が異様。漆黒の制服に塗られる赤い血の様なモノ、加えて特徴的な前髪……間違いない。

 

 

 

「貴女は……まさか、トリニティの剣先ツルギ?」

「空崎ヒナ……お前もこの事態の解決に動いているんだな」

 

 

 

そう、トリニティの戦略兵器と伝われる実力者……剣先ツルギだ。

 

彼女もまたヒナと同様この異常事態の出現先に赴いていたのだ。

 

お互い【最強】と謳われるも、レンノスケの取り調べ以降、話してはいなかった。両名影響力は最高峰に高い故、話す機会はなかったのだ。それも、今はこんな事態だ。互いに話し合わなければマズイだろう。

 

 

 

「えぇ。貴女もその様ね?先生には連絡が付かないし、この天候……間違いない、彼の仕業ね」

「そう断定するにはまだ証拠不十分だが……私もそう思う。こんな人智を超えた異常現象、自然発生ではないにしても出来る人物は一人に限る」

「重圧と神秘が濃くなった。やはり出現はミレニアムで間違いなさそうね」

「────城ヶ崎レンノスケか……奴め、何があってこんな事を」

 

 

 

互いに互いを紹介する気は無い。

あるのは状況確認と特定。

 

 

 

「セミナーとの連絡も取れないこんな状況下、私達個人が出向く大義名分はあるとして……彼がこの現象を招いているのなら対処が上手くいくか……これが問題ね」

「……だとしても、キヴォトス全土を巻き込むのはやり過ぎだ。トリニティじゃ複数人の体調不良者が続出している。早く止めなければまだ出るぞ」

「そうね、それはゲヘナも同じ。即ち他の自治区も同義……取り合えず早くミレニアム学園に────ッッ!!!」

「ッ!?」

 

 

 

””ジャキンッッ!!””

 

 

 

ヒナ、ツルギが突如として銃を構える。

 

だが、それは正解だ。構えた先には………とある人物が居るのだから。

 

 

 

 

「クックックッ……おやおや、不意を突いたつもりだったのですがね」

「………」

「気配がまるで無かった。名を言いなさい」

 

 

 

その者が名乗る。

 

 

 

「私は黒服。一応この名で通っています」

「黒服だと……?」

「(黒服、その名、何処かで……)」

「先に申し上げておきますが、私は貴女方に対し敵意はありません。私は身を護る術こそあれど貴女方を倒す技術も力も持ち合わせてはいませんので」

「……(嘘は言っていないな……恐らく先生と同じ生身の人間……)」

「……分かったわ。剣先ツルギ」

「あぁ、承知している………」

 

 

 

ヒナとツルギは同時に銃を下ろすが、警戒は強める。

 

まるで気配が無かった。本当に突然としてこの場に現れた様な、そんな気配の現われだった。

 

 

 

「下げて頂きありがとう御座います。貴女方ほどの実力者が此処に居るのは、この現象についての説明でしょう。先程の話を盗み聞きさせて頂きましたが、お察しの通り、コレは彼こと”城ヶ崎レンノスケ”さんの御業の元に起こされた【超災害級の赤雷現象】です」

 

 

 

黒服が告げる。

 

 

 

「彼による新たな概念とも云っていい……現在彼はミレニアムの【エリドゥ】と云うセミナーの生徒会長の『調月リオ』が建設した要塞都市にて猛威を振るっています。その理由は剣先ツルギさん、貴女が一番理解しているのでは?」

「え?」

「なに………────ッ!まさか、天丈アイラの件かッ」

「ご名答。続き、彼は”中務キリノ”を調月リオに連れ去られた経緯があります。時間の説明すら惜しいこの状況、詳しくは先生にでもお聞きください」

 

 

 

この男は突然現れた。だが、言っている事の真偽は……恐らく真だ。

 

素性も分からぬ胡散臭い男。しかし何故か嘘を言っている様には見えない。本当ならとんでもない事なのに、だ。

 

 

 

「……貴方は何が言いたいの」

「此処まで来たお二人に城ヶ崎レンノスケの”光”をお見せしたいと思いましてね。彼は今一つ峠を越え、小休憩に入っていますが……この後、少々面倒な群勢がエリドゥ基『先生』を襲います。ですが御安心を、レンノスケさんが『100%を超えた絶技』を披露すると思われます」

「何だと……?」

「空崎ヒナさん、剣先ツルギさん。貴女方に選択肢を預けます。私を信じ、現場に向かうか。それとも引き返すか……貴女方二人は、如何なさいますか?」

 

 

 

ヒナとツルギの判断は────

 

 

 

「連れて行きなさい」

「選択肢はそれしか他ない……」

 

 

 

黒服に着いて行きと、判断した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆────レンノスケside……。

 

 

 

 

 

「────あぐッ!……は、はぁ、はぁ…」

「よし……応急処置はこれで良い。傷も残る事はないだろうな。トキ、お疲れ」

「はぁ、はぁ…っ……ありがとう、御座います。レンノスケ様」

 

 

 

トキの医療処置に当たり、深い傷口を重点的に治療するレンノスケは、右太腿の銃弾痕を治療。

 

大きい手とは思えない程、器用な手付きで行われた応急処置。

 

それは、C&C全員が釘付けになる程の超技術。まるで間近で医者の治療を見ている様だった。

 

 

 

「……ッ…げほっ!は、ふぅ、ふぅぅ……っ」

「ん?あんだ、起きたかネル」

「部長!」

「おっはよー!リーダー!」

「ネル先輩!お目覚めになりましたか!」

 

 

 

起きたと直後、咳を吐き、勢いよく上半身を上げ周りを見渡すネル。

立ち上がろうとするが、脚に激しい痛みが走る。

 

そう、ネルは足の靭帯が切れている。先程は根性とアドレナリンで立ち上がり戦闘を執っていたが、遂に限界を超えた。暫く立ち上がる事は難しいだろう。

 

アスナが

ネルに駆け寄り、肩を抑え支える。

 

 

 

「すまねぇ、アスナ……おいレンノスケ、教えろ、今どんな状況だ」

「先生達がアリスを救いに行った。トキはお前に負け、俺とこの人達で応急処置を施した。とは言っても傷が深いから動けはしないし、俺が何もさせん。リオの事なら心配は無用だ、最後の頼みの(トキ)がお前によって負けたリオはもう何もないからな。妙な真似はしないだろう」

「………そうか、分かった。ふぅぅぅ……身体が怠ぃ」

「当然だ。限界を超えている身体に神秘を上乗せし、無理矢理レベルを上げ戦闘を執ったんだからな。本来なら怠いどころか死んでも可笑しくねェぞ」

「舐めんな。あたしはこんな所でくたばる様なタマじゃねェってのは、テメェが一番分かってんだろ」

「まぁ、そうだな」

 

 

 

傷の具合ならトキとどっこいどっこいだが、内部も含めたら圧倒的にネルの方が深手だ。

 

だがレンノスケは理解している。ネルは己と同様”こちら側”であると。

故に心配は一切していなかった。

 

 

 

「俺も、ちょっと疲れた……………あの子達に会いたい」

「……もう直ぐだよ、レンちゃん」

 

 

 

アスナがアカネと変わりネルを支え、アスナはレンノスケの頭を撫でる。

 

誰がどう見ても彼は疲弊している。肉体的にではなく、精神的に。

数日は会えていない事実。彼にとっては苦痛そのもの。

 

 

 

「おい、シャキッとしろォ……んな軟な奴等じゃねぇーだろ」

「分かっている。分かっては、いるんだ……ふぅぅ~…あぁ、分かっている。キリノとアイラは信頼できる奴等に託したんだ。でも……すまん」

「(ッ!レンノスケ、汗が……やはり、怪物も人の子なのか)」

「(先生から人情に厚いとは聞いていましたが……此処までとは、驚きですね)」

「ったく……らしくねぇ!らしくねぇぞコラ!テメェ程の人間が信頼できる奴等に託したんならちゃんと信じろ!そんで、キリノとアイラってガキンちょの事も信じてみせろ!」

「っ……うん」

 

 

 

今まで一人で生きてきたレンノスケは、大切な者を失う怖さを知らない……()()()()()

 

彼は裏切られている。彼は親代わりを亡くしている。彼は……失う怖さを知っている。

 

故に、怖いのだ。怖かったのだ……キリノとアイラ、レンノスケにとって命よりも優先される愛している者達。

痛みに強くとも、人間関係の崩れは……怖いんだ。

 

だからこそ、ネルの喝は心に響いた。信じる事……大切な事だ。

 

 

 

「あぁ……うん。ありがとうネル。少し、揺らいでしまった」

「本当だ、ったくよォ……」

 

 

 

そう言いながら、気合で自分の脚で歩き、レンノスケの背中を軽く叩くネル。

 

放っておけない背中だ。これでもネルの方が年上、人生の濃さはレンノスケの方が上でも生きた年数はネルが上。掛ける言葉の重さが違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅぅぅ…………………あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドドドドド………

 

 

 

 

 

聞こえる。

 

 

 

「聞こえる…」

 

 

 

聞こえる。聞こえる……。

 

 

 

「……キリノだ」

 

 

 

不規則な足音。息を切らす声。足のみで走っている様な走法。

 

聞こえる。聞こえるんだ。

 

 

 

「アイラだ……キリノだっ…っ!」

「え?ど、どうしたの?レンちゃん」

 

 

 

傍に居たアスナがレンノスケの変わりように困惑する。何も聞こえないから、不思議がるのは普通。

だが、レンノスケの顔を見る。これは……何かを確信している目だ。

 

 

 

”ドドドドドドドっ!”

 

 

 

やがて、それはレンノスケのみならず……。

 

 

 

「……ん?」

「なんか、迫って…?」

「これは……」

「複数の足音……おいおい、何人居やがるよ」

 

 

 

アスナ、カリン、アカネ、ネルも気付く。

何人かの足音が聞こえるんだ。まるで軽い地震かと思う程の揺れを響かせながら此方に近付いてくる。

 

 

 

「……」

 

 

 

トキは、目を瞑る。

 

出来れば、此処では出会いたくはなかった。だが、致し方ない。

どんな罵声も所業も受け入れる。その為の……心の準備をしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

”ドドドドドドっっ!!!”

 

 

 

そして────やっと、やっと会えた。

 

 

 

「はぁ!はぁ、はぁッ…………あ!い、居た!」

「キリノ…………っっっ」

 

 

 

ビルの横から、シャッ!と身を出したキリノ。その身にはアイラを抱いている。

 

 

 

「っ!あー!ほ、本当にいたよキリねぇ!レンにぃだー!」

「わー!レンノスケ―!」

 

 

 

明るい、光の様な声。

 

少し汚れているけど、目立った外傷はない、元気な姿。

 

顔色は、少し疲労を感じさせている。でも、喜色の表情は健在。

 

あぁ、己が愛した……キリノだ。アイラだ。

 

 

 

「レンノスケーーー!!!」

「レンにぃーーーー!!!」

 

 

 

”ぎゅぅーーー!!!”

 

 

 

キリノとアイラが走り、レンノスケのお腹目掛け抱き着く。

身体が大きい分、2人が抱き着いても余る。

 

キリノとアイラがレンノスケを見て、告げる。

 

 

 

「会いたかったですよーー!!レンノスケ―!!でも会えてうれしいですぅぅぅ!!」

「わたしもー!あいたかったー!あえたー!うれしー!!!」

 

 

 

二人共、号泣だ。

 

2日か、3日か……二人にとって、レンノスケに会えない時間は怖くて、寂しくて、苦しかった。

 

でも耐えた。耐えきった。レンノスケに会えるその時まで、絶対に涙は流さなかった。

 

キリノとアイラの我慢勝負の勝ちだ。

 

 

 

「うわーーん!!レンノスケ―ごめんなさいぃぃ!!私が弱いばっかりに、御迷惑をかけてー!」

「レンにぃ!!わ、わたしね!?えっとね!えっと……うえぇぇぇん!!」

「………」

 

 

 

レンノスケは……黙って、優しく二人を抱く。

 

力強く、でも苦しくならない様、温かく抱く。

 

確かめる様。この温かさが夢じゃないと、確かめる様に……身体全体で抱きしめる。

 

 

 

「────もう、大丈夫だ」

 

 

 

優しく、優しく……話す。

 

 

 

「大丈夫、大丈夫だ……ごめんな、来るのが遅れて……怖い思いをさせてしまった。本当にすまない……」

 

 

 

慰める様に、語り掛ける。

 

嬉しい。こうして会えた事も、元気な事も全て、嬉しい。

 

 

 

「ッ!……いいえ、いいえ!私、わたし……怖くなんかなかった!だって、レンノスケは来てくれると信じてたから!でも、わたし……弱くて、弱くってっ……何にも、できなくって……っ」

 

 

 

だが、キリノの口から出たのは、謝罪だった。

 

 

 

「キリ、ねぇ……」

「ごめん、なさいっ……私が、もっと強ければっ、こんな……アイラちゃんだって、攫われずに済んだのに、わ、わたしぃ………ごめん、なさっ────ぁ……」

「キリノ」

 

 

 

 

そんな謝罪は、聞きたくないんだ。

 

 

 

「もう謝るな。貴女は何も悪くない。弱く何てない。だって、ずっと寝ずにアイラを護っていたんだろう?」

「え……な、なんで、それ…」

「目元の隈が物語っている。この3日間、碌に寝ないでずっとアイラを護っていたんだろう。左肩も外れた形跡がある……よく、本当によく頑張った!貴女は誰よりも立派な警察だッ」

 

 

 

抱きしめる。強く、強く……抱きしめる。

 

弱くなんかない。誰よりも強い心を持っている。

 

己が惚れた女は、誰よりも優しい警察なんだから。

 

 

 

「う……うぅぅ………れん、のすけぇ……っ」

「よしよし、辛かったな。大変で苦しかったよな……アイラ、お前も、本当によく頑張った!よく耐え抜いた……流石、俺の一番弟子だ」

「レンにぃ……っ」

「ふぅぅぅ……あぁ、温かい。俺の大好きな人達は、こんなにも逞しく、温かいのだな。更に惚れてしまう……もう、大丈夫だからな」

 

 

 

キリノとアイラは、レンノスケの胸の中で泣いた。

 

大声ではない。啜り泣くような形で……。

怖かった、恐ろしかった。でも信じてた。

それが報われたのだ。

こんなにも頼もしくて、愛している人が、最愛なのだから…安心してしまった。

 

 

 

「……ムツキちゃん、ちょっとこういうの、むりだな…っ」

「これは……だめねっ……弱いのよ、私も…っ」

「湿っぽいね……でも、素敵」

「あうぅぅ…(アルに感化され号泣)」

 

 

 

気付けば便利屋68が遠目で3人の様子を見ていた。

 

 

 

「再会は、どんな状況下でも感情が溢れる、ね……何だか、前の私とサッちゃんみたいだね?」

「よしてくれ、アツコ……少し恥ずかしい」

「ふへへ……」

「はぁ……取り合えず、良かったでいいのかな」

 

 

 

そして、アリウス・スクワッドも遠目で見守る。

 

決して邪魔に成らない位置で、あの”家族”の様子を見る。

此処に居る全員が、その光景に口を挟まない。あったのは喜びと云う感情のみ。

 

便利屋、アリスクに気付いたC&Cが警戒を強めて近付き、問う。

 

 

 

「あんた達は……?」

「っと……そうね、説明が必要よね。私達は────」

 

 

 

アルがC&Cに己達の身分の説明と存在証明をする。

 

 

 

「……成程な、それでレンノスケの野郎が此処に居る訳だ」

「そういう事でしたか……皆さんにお怪我は?」

「あ、ありません。その、クライアントの元、安全なルートを通りましたので……」

「安全なルート、ね……まぁ取り合えずキリノとチビを助けてくれてありがとよ。チビは知らねぇがキリノは友人なんだ。捕まったって聞いた時は肝を冷やしたが、まぁ助かったんなら良い………にしてもよォ、お前らほどの実力者があの野郎のいう事を聞くとはな?どういう風の吹き回しだよ。特にアリウス……」

 

 

 

アカネの問いに、ヒヨリが答える。

この大きな要塞都市に安全なルートがあるとは思えないが、彼女たちの姿をッ見ても

 

 

 

「……先のエデン条約で、私達は彼に救われている。それの恩返しをしているに過ぎない」

「私たち便利屋68はをお金さえあれば何でもする組織、それに彼の助けは聞くに値した、それだけよ」

「くふふ♪アルちゃんもレンレンに昔の恩を返したいから受けたんだよねー?」

「ふふっ!えぇ、そうy………ちょっ!!?」

「なに?陸八魔アル、お前も彼に……?」

「あ、え、えっと~……」

「……まぁ、それなりの事情があるんなら分かったよ。テメェ等もそんなに悪ぃ奴等じゃなさそうだしな」

 

 

 

ネルは警戒をしていた。特にアリウス・スクワッド、彼女たちは表向きはレンノスケの申告で立場が回復し、不良の一般人扱いにはなったが、先生を撃ったテロリストだ。

 

ネルはそれが尾を引いてサオリ達を睨んでいたが、この様子だともう危険性はないと判断。

元々、先生とレンノスケ、キリノからアリウス・スクワッドはもう反省し、蟠りはないと聞いていた。

 

 

 

「うえぇぇぇぇ!!!レンにぃ~~~~!!!!!」

「ひぐっ!やっぱこわかった!怖かったんです~!れんのひゅけぇぇ~!」

「あぁ、そうだな、怖かったな……よしよし、もう大丈夫、大丈夫だからな」

「……騒がしいな、あいつ等」

「結局大泣きするのか……まぁ、まだ幼い子供だからな、仕方ないか」

「キリノさんは高校生ですが……致し方ないですよね、だってこんな体験普通はしないですから」

「あはは!レンちゃん、何か妹をあやすお兄ちゃんみたーい!」

 

 

 

C&Cが大泣きをかますキリノとアイラを宥めるレンノスケを見て、ふっと微笑む。

片方は8才の子供、片方は街のおまわりさん。

怖くない筈が無いのだ。キリノに関してはアイラを死んでも護る意志を持ち、責務を感じながら過ごして居たのだ。

15歳の少女が背負うには重すぎる責任、圧し潰されなかっただけで本当に凄いのだ。

 

 

 

「よし、よし……キリノとアイラが落ち着くまで、俺はずっと此処に居るからな」

 

 

 

そう言って、レンノスケは二人の頭を撫で、背中を摩った。

 

優しく、優しく。愛でる様に、落ち着かせるように。

 

この光景は温かいもので、全員が和んでしまう。まるで家族の様だ。

 

 

そうして、時は過ぎていく。

 

 

 

「………私は、もう、光ある道には、戻れませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆数分後……。

 

 

 

 

 

「ぐすっ……すんっ…」

「ぐしっ……うぅ…」

「二人共、少しは落ち着けたか?」

「「うんっ……」」

「くはッ……そうか、良かった……便利屋ッ!アリスク!」

 

 

 

声を上げ、便利屋68とアリウス・スクワットを呼ぶレンノスケ。

各面々が反応し、レンノスケに注目する。

 

 

 

「最後の依頼だ。この二人をクライアントの元、エリドゥからD.U.の病院まで避難させろ」

「……分かった」

 

 

 

反はない。寧ろそれしかない。

 

サオリが言を投げ、カヨコがキリノの手を掴み、アツコがアイラを抱っこする。

 

 

 

「キリノ、アイラ、お前達は先に病院に行け。傷は浅かろうが念の為な」

「うん……っ」

「レンノスケ、レンノスケも……」

「俺はまだやる事がある。大丈夫、事が終われば直ぐに向かう。ジジィに確りと診て貰うんだぞ」

「……はいぃ」

 

 

 

キリノとアイラの頭を撫でる。

 

これだけで、己は力が湧く。そんな秘めた強さを、この二人は持っているんだ。

 

 

 

「お前達、この子達の事、よろしく頼む……あ、少し待て」

「ん?」

「この女の子も────トキも、その病院に連れて行ってほしい」

 

 

 

レンノスケが時に近付き、そう告げる。

 

 

 

「レンレン、その子も?」

「あぁ、怪我が酷いからな。適切な治療が求められる」

「……私、は」

「おい無理に喋るな、傷が開く」

「……ねぇ、一応聞くけど……その子って敵だよね?」

「この戦地を見るに、相当の強者らしいけど……どういう風の吹き回し?」

 

 

 

カヨコとミサキがレンノスケを詰める。これが依頼なら従う他ないが、そうじゃないなら此方も発言する権利がある。

トキは敵だ。この場所を戦闘で滅茶苦茶にした敵であるのだ。故に、キリノとアイラが居る以上リスクを取る訳にはいかない。暴れられたらどうしようもないからだ。

 

 

 

「あぁ、敵だ。だが懲らしめた。もう危険な存在じゃない」

 

 

 

レンノスケは詰めるカヨコとミサキの目を見て、ハッキリと答える。

 

 

 

「……そう」

「あんたにそう言われちゃ、納得するしかない」

「悪い、恩に着る」

 

 

 

無駄な口論はしない。する必要が無い。

 

彼が言うのだ、それだけで、信じるに値する。

 

それに手当てを受けている、彼女もこの現実を受け入れているのだと分かった。

 

 

 

「ハルカ」

「へ、ぇぇ、ぁ……はひっ」

「すまん、君がトキを抱えていってほしい。一番丈夫そうな君にしか頼めん、いいか?」

「アッ!は、いぃ!!で、できます!」

「流石だ、頼む」

 

 

 

ハルカはキョドリながらも、レンノスケの元トキをお姫様抱っこで抱える。

 

 

 

「早口になるが聞いてくれ。トキは左足首を骨折、あばらも数本ヒビが入ってて、右肩も一応入ったが脱臼。右手の人差し指と薬指が骨折、左腕の肘が反対方向に曲がったが修正、だが骨折している。額に傷が有るが軽傷。深手は腹部と胸、特に胸は両胸は当たり所が悪かった所為で傷が深い、出来るだけ丁寧に応急は処置ったが急がないと傷が残るかもしれん。ジジィに直ぐ診て貰って本格的な治療を施させてくれ。連絡は恐らく黒服……クライアントがしている筈だ。そこでキリノとアイラの検診も頼む」

「え、え?あ、ちょっ…」

「分かった、それは私がキッチリと伝えるね」

 

 

 

ほぼ全員が聞き取れなかったが、カヨコが確りと聞いて応える。

 

 

 

「早口ですまん、頼んだ────」

「れ……レンノスケ、さま…!」

「ん?」

 

 

 

レンノスケが踵を返そうとした瞬間、トキがレンノスケの裾を掴む。

 

それは確かな握力で、目的を話すまでは話さない……そんな意思があった。

 

 

 

 

「れん、ノスケ…さま、私……」

「んもぁっ!!!うおらぁぁーーーッッ!!」

「むひゅぅ!?」

 

 

 

”むにむにむに!!”

 

 

 

”「!!??!??!?」”

 

 

 

レンノスケがトキの頬を片手で掴み、ムニムニとしだす。

 

 

 

「おいごらクソガキィ……テメェ今なんつったァ?」

「ま、まひゃ、ひゃにひょ、いっひぇなひ、でしゅ……っ」

「いやクソガキて」

「オメェも同い年だろーが」

「急にトキさんをアイアンクローしてどうしたのですか?レンノスケ」

「キリノさん、遂に何も言わなくなっちゃいましたね」

「環境は人を変えるんだな」

 

 

 

レンノスケが続ける。

 

 

 

「テメェ、またリオの事庇おうとしやがったな!その目ェ見りゃ分かんだボケェ!」

「っ!!?」

「はい当たり!もっかい言うがな!!(言っていない)俺はリオにはケジメは取るが殺さねぇし多少の暴力程度で許すって言ってんだわ!!下の行動は全て親の責任、その報いは親であるリオが受けるのが筋ってもんだッ」

「ひゅ、ひぇも……」

「文句あんのかぁ??あぁん?」

「……ない、でひゅ」

「それで良いんだよ」

 

 

 

パッと、レンノスケがトキの顔を話す。

 

ちょっとだけ痛かったのか、トキは少し涙目だ。

 

 

 

「……いひゃかったです」

「ふんっ、可愛いなんだから別にいいだろ、こんくれー」

「っ!!……それ、褒めてます?」

「あ?何処に褒める要素があんだよ」

「いえ、その、私の事かわいいって……」

「あん?お前が可愛いのは普通だろ?良い戦闘力に良い身体、顔も普通に綺麗なのに、可愛いなんて別に褒め言葉じゃねーだろ?お前にって」

「あっ……そう、ですか……ふふっ、そうですか、そうですか」

「レンレン、流石にマジ?」

「あの顔は普通にマジで言ってるね」

「女の敵レンレンか~」

「…………ふぅぅぅん」

「キリねぇ、どうするの?」

「……ね、どうしましょっか!」

「炙る?」

「いえ、ここは煮るのもありかと」

「こっちはコッチで何かしらの計画してるし」

「レンノスケくん料理されそう何だけど……」

「レンノスケは、少し女心を学んだ方が良い気がするぞ」

「サオリ姉さんに言われたらもうお終いな気がする」

 

 

 

 

 

 

☆数分後……。

 

 

 

 

 

”タッタッタッタ…………”

 

 

 

少し騒ぎはあったものの、便利屋、アリスクのお陰で二人の命の危機は免れ安全の保証できた。

 

キリノ、アイラ、トキが連れて行かれる。頼もしい者達が護ってくれているから、もう大丈夫だろう。

 

残されたの、C&Cと────レンノスケだ。

 

 

 

「……行ってしまいましたね」

「あぁ……だが、あいつ等が護ってくれている、絶対に大丈夫だ」

「そうですか、貴方がそう言うのでしたら、きっと大丈夫なのでしょうね」

 

 

 

アカネがレンノスケの隣に立ち、走り去って行く面々の背を見る。

 

憂いた表情をしていた彼の心を案じたのだ。尤も、彼は既に先を見抜いていた様だが。

 

数秒の間、彼が動く。

 

 

 

「あら、行くのですか?」

「あぁ、もう此処に用はない。俺はさっさと調月リオと決着を着けて、キリノ達の見舞いに向かう。お前等はまだ此処に?」

「そうですね。アリスちゃんは彼女達に任せましたし、先生も居るので後はあの子達がどうにかしてくれるでしょう」

「まだ何かあるかもしれないから、私達は此処に残る」

「リーダーも居るしね!」

「へっ!……そういうこった、テメェはテメェのするべき事をさっさと為して来いや」

 

 

 

C&Cは此処に残る選択。

 

レンノスケは一呼吸置いて、その意を捉える。

 

 

 

「そうか、分かった……じゃあな────……む」

 

 

 

”ザワッ……”

 

 

 

あられもない気配を、感知。

これはレンノスケの第六感ともいえる、超級の空間把握能力。

 

何かが居る。何かが蠢き何かが溢れる。

 

そのナニかは分からない。だが、不思議な事に、確信があった。

 

 

 

「アカネ、カリン、アスナさん、ネル」

「ん?」

「はい」

「どうしたのー?」

「んだよ」

「やっぱお前達も来い。俺が全員おぶってやっから、此処を離れるぞ」

 

 

 

”……???”

 

 

 

アスナを除く、3名の思考が停止。

 

彼の言っている事が、よく分からなかったのだ。

 

 

 

「ふぅ……はい?」

「テメェ、なにボケてやがる」

「なになに?おぶってくれるの?」

「アスナ先輩、そう言う話じゃない気がするぞ」

 

 

 

それぞれが反応するが、レンノスケが簡潔に説明。

 

 

 

「なんつーか嫌な予感がする。数十分後くらいか、キリノ達が此処を離れると同時に多分此処がヤバくなる。お前等じゃ遅いから俺がおぶる。アスナさん、貴女はネルを背負って肩車、カリンちょりんとアカネは俺が脇に抱えてダッシュしてやる。行くぞ!!」

「確かにそんな気がする!おっけー!!」

「待て待て待て待て!!」

「勝手に話を進めないでくれませんか!?」

「先ずなんでお前が抱える前提だ!取り合えずその話を信じるとして、私達は自分で────わっ!!?」

「きゃっ!?」

「わぁ!」

「うおぃ!!」

 

 

 

”””ガシィィッッ!!”””

 

 

 

レンノスケが左脇にカリン、右脇にアカネ、ネルを背負ったアスナを肩車して立ち上がる。ほんの少し前屈みになって、アスナの負担に成らない様にする。

何故か、少し、幸せそうだ。

 

 

 

「あははは!たっかーい!」

「アスナさん、お……お股、痛くないか?」

「うん!大丈夫だよ!あ、でもちょっと不安定だから、リーダー前にしてもいい?」

「え、いや……ふぅ、いいぞ」

「ありがとう!はいリーダー、前に行こうね!」

「おいコラァ!これはどーいう事だ!!」

「ウルセェ騒ぐな。走るから喋んな」

「あんだとぉ!??」

「あ、あの!ちょっと恥ずかしいのですが!」

「これは、な、なんか、屈辱的だぞっ」

 

 

 

ネル、アカネ、カリンが抗議の声を上げるが、それも意味を為さない。

 

レンノスケ曰く、己が全員抱えて走った方が速いとの事。

 

 

 

「アカネ、カリン。1分で着くから少し我慢してろ。アスナさん、出来る事ならその素敵な太腿を俺の首を圧し折る感じでギュっとしろ。その方が固定するからな。あと凄く元気出る。ネルは適当にしてろボケカス」

「はいぃ!?」

「な、なんでだ!?」

「おっけー!」

「おい待て!なんかあたしだけ雑じゃねぇか!?ってか誰がボケだゴラァ!!テメェに言われちゃお終いなのに何でんな事言われなきゃいけn」

 

 

 

”ドヒュンッッ!!!”

 

 

 

「うおわぁー!!!展開がはやいー!!」

「は、はっや……っ!?」

「きゃー!あっははははっ!きもちー!!」

「おまっ……絶対に、殺す……ッ!!!」

 

 

 

そうして、レンノスケ達は中央タワーへ向かった。

 

最重要目標であるキリノ、アイラの救出が成功。

これで、己を縛るモノは何もなくなった。形勢逆転、残す事はケジメを取らせる事。

 

 

 

”ゴロゴロ……ゴゴゴゴゴゴゴ……ッッッ”

 

 

 

「(それに、気配的に何か来る感じがする……()()()も使うか)」

 

 

 

そして、彼の本領発揮も、直ぐに。

 

 

 

 

 

 

次回

 

ケジメ。そして、吐露するは溜めていた言葉。

 

 




次回が『パヴァーヌ編』ラストです。少し流れを出します。


・前半⇒リオとのアレコレ、後始末。

・中盤⇒後日談

・後半⇒レンノスケとカンナ、先生による居酒屋談義。


この流れでいきます。此処に書いたという事はもうプロットの変更はしないという事。

察するに次回はかなり長くなります。恐らく2万文字、最悪3万文字いくかもです。



次回もどうか、宜しくお願いします。
誤字脱字、評価お気に入り、大変励みになります。

アンケートです。どうか、御投票を宜しくお願い致します。

  • レンノスケ、配信者に成る。
  • 16歳組によるバレーボール同盟
  • キリノと二人旅
  • 提示版(レンノスケだけど、質問ある?)
  • レンノスケの過去編
  • 本編:カルバノグの兎編
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