怪物は、真面目な君に恋をした。   作:カブトムシの相棒

34 / 38

一ヶ月以上も待たせてしまい申し訳御座いません。死にますぅぅぅ!!


そして、もう一つ。前回に居酒屋談会(レンノスケ、カンナ、先生)を予定していたのですが、どうしても私の腕では上手く執筆できませんでした。何と言うか、レンノスケの扱いをどうすべきか、カンナはどう反応すべきか、先生は生徒の前とは言え、この大人びた二人の前でもお酒を呑ませても良いのか等……色々と悩んでいたのですが、これはまた別の機会にまで取っておきます!申し訳御座いません。




皆さん!!まさかの1周年です。本当にありがとう御座います。

まさか此処まで続くとは夢でしか見ませんでした。


外伝を除き残り15話ほどを見込んでいますが、まだまだ頑張ります!



では、本編です。


その者の神秘は────…そして、訪れし望んだ世界。

 

 

 

 

▽────エリドゥ中央タワー・管制室。

 

 

 

 

 

「────本当に此処まで来てしまったのね、貴女達は」

「────ッ!!リオ会長!」

 

 

 

モニターが並ぶ一室。其処にある人の声が響き渡る。

 

一行が一斉に警戒を放ち、銃を構える。その先には……調月リオが居た。

モモイが声を上げ、其の名を叫ぶ。リオは無表情のまま、告げる。

 

 

 

「彼女なら此の先に居るわ」

「っ!!」

「抵抗はしない。トキが倒されたその時点で、私には打つ手が、切り札はもうない。私の負けを認めるわ」

「リオ、貴女……」

 

 

 

無表情だが、そこには何処かやるせない気持ちがあった。

 

勝てた勝負だった。己の信念は間違ってなど居ない筈だった。だが、負けを認めるには十分な結末だった。

故に、やるせない。己は何を間違えた?それが分からない。

 

 

 

「もう一度だけ問わせて。貴女達はアレの存在意義を理解しているの?アレは────」

「さっきからアレ、アレ!アリスは物じゃない!存在意義がどうとか私達からしたらそれは”どうでもいい”話なの!……アリスは、返して貰うからね!」

 

 

 

モモイの剣幕にリオが押される。

 

数秒の間、チヒロが通信越しから告げる。

 

 

 

『先生、皆。アリスの場所が分かった。その部屋の隅に電力が集中する施設がある筈、其処にアリスは居るよ』

「チヒロ……分かった、ありがとう」

「ミドリ!ユズ!」

「うん!」

「行こう!」

 

 

 

リオの話を聞かず、そのまま先へと向かう。

 

 

 

「……リオ」

「先生、私は────」

 

 

 

”バゴォォンッッ!!!”

 

 

 

「ッ!?」

「え、なに!?」

「……あ」

 

 

 

突如として、管制室のドアが蹴破られる。

鉄製のドアが一撃で破壊された。しかも打撃でだ。

 

モモイ、ミドリ、ユズ以外の一行が出入口に注目する。其処には……。

 

 

 

「おい!いい加減下ろせよ!おい!アスナ!レンノスケェェ!!!」

「あっははは!ここまでびゅーんって感じで着いちゃった!すっごーい!」

「う、おぇえっ……き、きもちわるい……っ」

「はっ、はぁ…ジェットコースターよりもジェットコースター、でした、ね……っ」

『………は?』

「これはまた、奇想天外な……」

「な、何をしているのかな?君達は……」

 

 

 

チヒロ、ウタハ、先生の順で言を投げる。

 

其処には……C&C全員をその身一つで抱えてきた、レンノスケが居たのだ。

 

 

 

「ん、あぁ、すまん。降ろすわ」

「わっ!」

「ふわぁ!」

「よっとー!」

「うぎっ」

 

 

 

レンノスケが出来るだけ丁寧に下ろす。

 

 

 

「あはは!あー楽しかった!肩車ありがと!レンちゃん!」

「俺からも、ありがとうアスナさん。何か元気になったわ」

「コイツを、逮捕するんだ……おええっ」

「はぁ、はぁ……まだ頭がぐるぐるしています…っ」

「おいアスナ、何時まで抱っこしてんだっ!下ろせ――!!」

「えー良いじゃん!脚ひどい怪我なんだしさ。もう少しこのまま抱っこさせてよー」

「くっ………チッ!わーったよ!頼むぞこのやろー!」

「いえーい!」

”「えぇ………」”

 

 

 

この場の雰囲気に似合わぬ集団が入ってきた。

 

その先頭がレンノスケ、場を困惑の渦に包んだ。

何だか、少しだけ……彼らしい。

 

 

 

「っと……よぅ先生、無事に此処まで着いたんだな」

「まぁね。皆のお陰だよ」

「モモイ達は………成程、向こうか。恐らくアリス達を救いに行ったか」

「へぇ、凄いな。よく分かったね?」

「気配探知は得意分野でな。白石さんも、怪我ァ無くて良かった」

「お陰様でね。にしても、自己紹介はしていたかな?」

「モモイに聞いていたんだ。凄腕のエンジニア集団が居るとな。名前くらい覚えて損は無いだろう?」

「おや、彼の”最恐”城ヶ崎レンノスケに名前を覚えられていたとは、光栄だね」

「猫塚さんに豊見さんも無事なんだな。確認をしていなかったから少し心配していたが、流石にロマン集団か」

「ふふん、心配ご無用」

「中々肝が冷える場面もありましたが!貴方の登場により盤面がひっくり返ったのも有り何と無傷です!」

 

 

 

ここで、漸くエンジニア部と初めて会話する。

モモイからその存在は聞いていた。曲者揃いとは聞いていたが、正にそうらしい。

 

 

 

「トキは応急処置を施して便利屋、アリスクに預けてきた。俺が世話になったD.U.の老舗の病院に向かわせたから安心だ。ジジィなら任せられる────『ミレニアムよりかは5000倍はマシ』だしな」

「ッ……」

「こ、こらレンノスケ……ッ!」

「黙れ」

 

 

 

突如、レンノスケの雰囲気が絶対零度の如く冷徹と化す。

 

流し目でリオを見つめながら告げられたその発言は、明らかな嫌味だ。

先生が少し窘めようとするも、レンノスケの口撃は止まらない。

 

 

 

「キリノのみならず、幼い子供のアイラですら攫い身の危険に貶めたクズだ。そんなクズが占めていたミレニアム……悪いが、何処の病院も信用できん。ジジィかトリニティ、ゲヘナの3択を迫られているこの状況下ならジジィを瞬時に選んだ俺の選択は間違っているか?」

「そ、それ、は………」

「先生がどれだけそのクズを守ろうがあんたの勝手だがな、コッチは大切な人を2人も誘拐され、友人を殺されかけてんだ。そんな奴が仕切っているミレニアムの施設を信用出来る程、俺は間抜けじゃない」

 

 

 

正にその通りだ。正論も正論、ぐうの音も出ないとはこの事。

 

この問題はリオの独断であろうが、完全にミレニアムの過失であって、レンノスケは被害者側だ。その更に被害者なのがキリノとアイラだ。本当に関係のない、ただほんの少しの不安要素だったと云うだけで攫われたのだ。

 

この件、レンノスケは断じて許す気は無い。例えリオが自害しても、許すと云う文字はレンノスケの中から消え失せている。

 

そんなレンノスケの覇気に、先生のみならず、その場に居る一行は誰も口を出さない。出せる筈が無かった。

 

 

 

「────初めまして、だな?調月リオさんよォ」

「………えぇ、そうね。こうして対面で話すのは初めましてね」

「……俺は」

「おい」

 

 

 

そんな張り詰めた空気の中、声が響く。

 

突如、ネルがレンノスケの前に出て、リオと対面する。

 

アスナはいつの間に拘束を解かれたか分からぬ程の高速移動に、一瞬呆気に取られるが……ネルの様子を見て、呟く。

 

 

 

「あ、まずいね……会長、死ぬかも」

「……え?」

 

 

 

アカネの素っ頓狂な声が漏れる。

 

その、瞬間だった────。

 

 

 

 

 

 

 

────ッッんの!!バカがァァ!!!!

 

 

 

”バキィィッッ!!!”

 

 

 

「あぐぅぅぅっ!!!」

 

 

 

ドゴン!と、リオが勢いよく壁に突き飛ばされる。

 

一瞬何が起きたか、殆どの者が理解出来なかったが、ネルを見れば……彼女がリオを殴り飛ばしたのは明白だった。

 

 

 

「えぇ?!お、おい!?殴っちゃったよお前!?」

「ね、ネル!?」

「部長!?」

「あっちゃ~……」

「あれは、痛いね」

『……まぁ、当然か』

 

 

 

レンノスケ、先生、アカネ、アスナ、ウタハ、チヒロが声を上げる。

 

余りにも唐突。ネルはそのままリオに向かい、胸倉を掴んで吠える。

 

 

 

「おいッ!!このボケが!!!テメェ、自分が何をしたか分かってんのか!?」

「っ、かは………わ、わたし、は…」

「アリスの件は納得は全くしないがっ、100歩譲って取るを得ない行為って事は、マジで納得はしねェが理解はしてやるよ!!だがなぁ!キリノとアイラってチビ攫うたァどういう了見だ!?レンノスケの牽制でって理由だったら承知しねぇぞ!!おいっ!!テメェ、コイツが……この馬鹿がどれだけ苦しんだか分かってんのか!!!?」

「っ………」

「テメェは!!レンノスケにとってっ、この馬鹿にとって……キリノが、どれだけデケェ存在か理解して、こんな凶行に及んだってのかよ!!!」

 

 

 

胸倉を掴み、叫びながらその罪を口撃するネル。

 

その光景に、誰も口も手も出せない。

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁっ!……げほっ!」

「……ネル、お前」

「レンノスケにはなッ……キリノしか居ないんだよ。この世界で、唯一、本気で愛した人間がキリノなんだよ」

「…………」

「どうせレンノスケのバカはテメェを殴らねぇ。キリノが頭に過りゃぁ、何も出来なくなるような温い男だッ。だから、あたしが、コイツに代わってテメェを殴ってやる。この……大馬鹿野郎がァ!!」

「ッ、うぐぅ!!」

 

 

 

もう一発ぶん殴り、リオを吹き飛ばす。

 

自分の気持ちを分かり易く代弁して、立場を殺してでもレンノスケの代わりに殴るリオに、レンノスケは感謝の念が絶えない。こういう時は最高の先輩だ。

 

だが、既にリオはノックアウト。そんな状態に成ってもまだ殴ろうとするネルに流石にレンノスケも焦り止めに入る。続いて、先生とアカネも止める。

 

 

 

「おいネル、その辺にしとけ!死ぬぞ!」

「あぁ!?るっせぇな!離せェ!!」

「こらこらネル!ちょっと落ち着きなさい!」

「部長!気持ちは分かりますがやり過ぎです!」

「うがー!!!離せこら!離せコラ!!」

「うるさい!この、三人に勝てる訳ないだろ!」

「馬鹿野郎お前あたしは勝つぞお前!」

 

 

 

レンノスケが後ろから抑え、ネルを封じる。アカネが腕を抑え、先生が(ミンチに成る為)耳元で何とか抑えてと発語する。

 

それに加担するはC&Cの二人。アスナとカリンが加勢し、全員がネルを封じ込める。

 

 

 

「どーどー!部長、深呼吸してー」

「あぁん!?」

「はい、すぅ~…はぁ~」

「………すぅ、はぁぁ~」

「お前割とアスナさんの言う事は聞くのな」

 

 

 

平常心を取り戻したネルが、アスナにずるずると後ろへ連れて行かれる。

 

 

そして……レンノスケとリオが、もう一度向き合う。

 

 

 

「けほっ……ん、あ…っ」

「……ふぅ、いいか調月。アイツのした事は俺の気持ちの代弁だと思え」

「っ……」

「これでチャラ……とは、いかないがな」

 

 

 

レンノスケは、ネルのした事が己を想っての行動だと、理解している。

本人は気付いていないかも知れないが、先ほどネルが発言していた事は全てレンノスケの事を思っての言動だ。

美甘ネル、彼女は人格も超一流。故にミレニアムで最恐を謳っているのだ。

 

 

 

「調月リオ。お前がキリノとアイラを攫った理由は……よく分かる。俺への牽制なんだろ?」

「………そうよ」

「こんな世界だ。戦いたくない人間に人質を取るのは至って合理的、それがキヴォトスの存亡を懸けた戦いなら、尚更な」

「………」

「だから俺は、お前のした事は割と悪くない作戦だと思っている。人道的ではないが、リアルに芯は通っている。それにキリノとアイラの様子を見るに、お前は約束は守るタイプだとも判断した。あの子達の顔の血色を鑑みるに食事も提供してくれたとみる。空腹は誰も我慢できん最悪だからな……そこは評価するし────許す」

 

 

 

レンノスケが衝撃的な発言をする。

なんと、キリノとアイラの所業を許すと云ったのだ。これは他ならぬ、キリノとアイラの願いでもあるからだ。

 

本当は許すのも苦しく嫌だが、彼女たちの願いは無下にできない。

 

だが、彼からの怒気は消えない。皆がそう思っていると……それが明らかに成る。

 

 

 

「だがなぁ……調月、お前、アリスを【殺す】と云ったよな?」

「……えぇ」

「………その目、本気で殺そうとしていた者の目だ」

 

 

 

レンノスケは────重圧を出す。

 

 

 

「殺しを一度もした事が無い人間が、此の先、どういう道を辿るか……知っているか?」

「……それ、は」

 

 

 

続ける。至って冷静に、粛々と言を並べる。

 

 

 

「────俺がブラックマーケットに居た時、とある自治区に住む10代の獣人が居た。ソイツはブラックマーケットに住む親に昔から虐待を受けていて、俺が頭角を現したこの機に乗じ、クライアントから話を通し、俺に復讐の手伝いをしてくれと頼んできたんだ」

「………ぇ?」

 

 

 

急になんの話を?と、全員が思うが、レンノスケは続ける。

 

 

 

「俺もクライアントに頼まれた以上、受けるしかない案件だった。調べた所その親は生粋のクズでな……ブラックマーケットに迷い込んだ、或いは何処からか攫ってきた獣人の子どもを『人身売買』の為にバラシて様々な組織に売る密輸犯だった」

「は、え……?」

「被害は54人。決して少なくないが、多くも無い。ブラックマーケットでは小規模組織の一員だったんだ、だから見つけるのにかなり苦労したよ」

 

 

 

聞くに堪えない所業。彼は冷静に話すも、この場に居る全員が、その話に胸糞が湧く。

 

 

 

「俺は其の獣人を見つけ半殺しにし、その親の子である若い獣人に手渡した。ソイツは其の場で蹴る、殴る、撃つ等の暴行を下した。更に…死ね、クソ野郎、息をするな下衆野郎……そんな暴言を吐く………その眼は血走り、怒りに染まっていた。数時間に及ぶ暴行は突如として終わりを迎えた。その親は動かなくなった。死んだからだ」

”「ッ!!!!」”

「当時の俺はまだ14で、まさか、殺す何て微塵も思っていなかった。俺は間接的に人殺しになった……まぁ、パニックに陥るわな。どうしよう、どうしようって……そんな未熟な俺を、若い獣人がこう声を掛けてきたんだ────『貴方は全く悪くない。これは全て僕の責任です。こんな場を見せてしまい心よりお詫び申し上げます。なので、どうかそんな顔をしないで、そんな気持ちにならないで。報酬は弾ませて頂きます。この度は、この男を捕縛し生きたまま手渡して下さり、誠にありがとう御座います。これでもう……心置きなく、死ぬことが、出来ます』……とな」

「え、し……し、ぬ?」

「あぁ、そう言って数秒後、その若い獣人は血を吐いた。奥歯にトラフグの毒を詰めた錠剤を仕込んでいたんだ。悶え、苦しみ、血を吐いて、ゲロ吐いて、目から血を出して、喚いて……あぁ、その姿は地獄絵図だったのを、よく覚えている。その若い獣人は、親の屍と同じ構図で倒れ死んだ。俺に感謝の念を告げたその言葉が遺言で、その生涯を終えたんだ」

 

 

 

最早、言葉が出なかった。

先生を含む、全員が絶望に染まる表情を作る。

 

この世界で生きて、まさかそんな残酷極まる話を聞けてしまうとは、思わなかったからだ。

 

【キヴォトスに於ける人殺しは最上の禁忌】

 

このフレーズは、古来から伝わるものだ。無論、何処に置いても人殺しは禁忌だが、このキヴォトスは、病気と云う例外を除いて、人は先ず死なない世界だ。どんな銃撃を受けても、地雷を踏んで爆発に巻き込まれても……怪我をするだけで死ぬことは一切無いのだ。

 

そんな生きるのが”普通”な世界で、とある獣人が殺しと云う”例外”を起こしてしまった。

 

そうなれば、もう生きると云う道は潰える。其の獣人は、その重圧に、耐える事が出来なかったのだ。

 

 

 

「フグの毒は即効性だが様々な病症が起きるんだ。だから、長く苦しむ。解毒方法は無いから、食えば死ぬしかない恐ろしい毒素なんだよ。つまり……その獣人は、人殺しをした後、直ぐに死ぬつもりだったんだ」

「………っ」

「────人殺しの末路はな、楽に逝ける何て夢のまた夢の話なんだ」

 

 

 

レンノスケはリオを見る。

 

リオの表情は、酷く落ち込み、この世の終わり感を纏っていた。

 

 

 

「確かにアリスは純粋な人間ではない。戦闘をする為に生まれた人工機械だと思う。彼女も抑えきる事が出来なかった未知数の力も秘めている。その力が恐ろしいと思う事は学園の長として致し方ない事。これは認める他ない……だがな……そんな事で、お前がアリスを殺す道理はこれっぽっちもない」

「ッ!」

「アリスはな、まだまだ成長する未来ある子供だ。そう、子供なんだ────いいか調月、学ぶべき事が多い子供には、それ相応の『環境』が必須なんだ。そんな現代に於いて普通の環境で勉強が出来て、美味い飯が食えて、友達と遊び、時には喧嘩をし、時には一人で学び、時には皆で探索し、仲を深め、人と触れ合っていく。そして……帰って来る場所がある。子供には、アリスには、そういう人間的に成長できる『環境』が必要不可欠なんだよ」

 

 

 

そういうレンノスケの眼は、訴えかけるような眼差しを出していた。

 

彼の言葉を聞く先生の心は軋めいていた。それは彼が出来なかったこれまでの人生だから。

 

レンノスケは、アリスには普通の人生を送ってほしいのだ。学び、遊び、体験し、ぶつかり合って、成長する。

 

こういう『普通』を経験してほしい。レンノスケは、子供が生き死にの問題に首を突っ込むべきではないと思っている。

 

アリスの出生上でも、仕方ないとは言いたくないから。

 

 

 

「そういう環境を壊したお前は、余りにも罪が重い」

「っ……」

「人間は話し合いが出来る生物だ。だがお前は頭が良いのに、話し合いと云う機会を消してこんな行為に及んだ。生身の人間である先生までも巻き込んでな……俺はそれが許せないんだよ」

「ぁ、わ……わたしっ…」

「お前がしようとしていた【人殺し】は、それ程までに────重い」

「あ……」

「クズなら殺しても別に結構だ。だがお前はそんなクズでさえも殺す事に躊躇を覚える甘ちゃんだ。温いんだよ、ボケがッ」

 

 

 

リオは反論が出来なかった。出来る筈が、なかった。

 

レンノスケが体験した、余りにも非現実的な話は、誰もが聞けば口を閉ざすような話だった。

 

 

 

「────ふぅ……話し過ぎた。結論を云おう────調月、俺はお前を全面的に許す。キリノも無事、アイラも無事、そんでアリスも……無事、なんだよな?」

「………えぇ、今頃、あの子達が救っている筈よ」

「なら良い。何事も生きてんのならそれで…………もう俺は、目の前で誰かが死ぬのは、ごめんだ」

 

 

 

それには、先ほど話した獣人の事とは別のものも含まれていた。

 

城ヶ崎レンノスケ……3歳で親に捨てられ、ブラックマーケットで育ち、悲惨な過去を生きた者。

 

彼が受けた13年間の軌跡は、未だその全てを明かしていない。先程話したモノよりも、更に恐ろしい人生を、彼は抱えているのだ。

 

少し気が滅入っているレンノスケの背中は、大きいのに、小さく見えた。

 

 

 

「………俺の用は済んだ。もう2度と、その顔を俺の目の前に見せないでくれ。これが許す条件だ」

「っ、ぁ…まっ────」

 

 

 

レンノスケが振り返り、そのまま歩いて出入り口に進む。

 

声が出ないリオは、彼を引き留められない。

 

誰も、引き留めない。これが許す条件だと言われてしまえば、彼とリオの話は、これで終わりだから。

 

無論、先生は納得がいかなかった。だがそれを飲み込んだ。飲み込むしかなかった。

本当はレンノスケとリオの蟠りが無くなるのが一番だ。だが、それは不可能と云っていい程に、仲を繋げる糸はズタボロだ。

 

 

 

「あぁそうだ。モモイ、ミドリ、ユズっ!!」

「うん!」

「はい!」

「……っ!」

「アリスの事、絶対に連れ戻すんだぞ。そんでもって────確りと叱ってやれ」

「っ!うん!!」

 

 

 

レンノスケのその言葉に、モモイは元気よく告げる。

 

その瞳には感謝と覚悟が込められていた。こういった場面はモモイ達からしたら中々経験できない緊張の張り詰め、だが、彼女の信念はそれ程までに強固だった。

 

レンノスケはモモイ達ゲーム開発部の眼を見て、ふっと微笑む。本当に強い子達だと、そう思って。

 

そんなレンノスケに、全員が注目する中、先生が近づいて問う。

 

 

 

「レンノスケはこれからどうするの?」

「俺は用事がある。先生……エリドゥ一体に何かしらの気配を感じる。俺は外で待機しているから、何かあったら通信で俺に指示をくれ」

「え?……気配?」

「あぁ、なんだろうな……詳細は分からんが、確定的に嫌な感じはある。調月と先生の力でこのエリドゥ中央タワー全体を電磁波シールドで防護してほしい。可能なら早瀬や生塩の力も借りてな」

「う、うん、分かった!」

「じゃあ、頼んだぞ」

 

 

 

”ガチャッ……バタンッ”

 

 

 

そう言って、レンノスケは先生に奇妙な事を頼み、去って行った。

 

全員が疑問符を浮かべる。何を言っているのか理解できなかったからだ。リオはもう敵意も無ければ、彼女が持つ防衛兵器は既に息をしていない。

 

モモイ達ゲーム開発部はアリスの方へともう一度顔を向ける。起きてと声を出して。

 

すれば、アリスは目が覚めた。皆は舞い上がった。

 

だが、それは直ぐに沈黙へと変わった。

 

 

────彼が出て言った瞬間、アリスは『別の人格』で起き上がったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────黒服side。

 

 

 

 

 

 

「────これは……遂に魅せますか、レンノスケさん」

「なに?」

 

 

 

エリドゥ中央ビル、その隣のビルの屋上にて、ヒナとツルギ率いる黒服が天空を見つめそう告げる。

 

その顔はニヒルに笑い、僅かに震えていた。武者震いとも取れるものだ。

 

その光景にヒナが何だと問う。同様に疑問に思ったツルギが黒服を見る。

明らかに様子が可笑しくなっていた。だが、それは……その理由は、黒服を見た瞬間に理解した。

 

 

 

「うぁ!?」

「なっ…!?」

 

 

 

まるで、頭の真上からつま先まで一直線に突き刺されたかのような、そんな形容が難しい『殺意』が両名に襲い掛かる。

 

無差別に襲うその殺意の塊は、鳥肌では到底どうにも出来ない、生命の停止を促す正に【一種の災害】を目の前にしたかのような、そんなどうしようもない存在感を放っていた。

 

 

 

「なに、これっ……!!まさか、彼が…!?」

「感じた事のない殺意の籠った重圧……急に、なぜッ!」

「ふむ……成程、例の存在が、既に此処に……」

 

 

 

黒服が指を顎に添え、そう告げる。

早く教えろと両名が黒服を睨み、それに応えるよう、黒服が発語する。

 

 

 

「────無名の司祭め……彼に怖気づきましたか。不可解を嫌う彼等らしい結論ですね」

「む、無名の…」

「しさ…?」

「……いいえ、何でもありません。今はレンノスケさんが繰り出す【御業】を見届けようではありませんか……きっと、貴女方の為にもなりますよ」

 

 

 

そういう黒服は心底この状況を楽しんでいた。

 

それが、ヒナとツルギは不気味で仕方なかった。

 

己達が絶対に相容れる事が無いと理解させられたような、そんな雰囲気だった。

 

この男と絡んでいるレンノスケにも、少し、恐怖が降り落ちてきた。

拒絶ではない。だが、前々から思っていた事があった。

 

 

城ヶ崎レンノスケは普通ではない。自分達とは別の次元の存在だと。

 

 

そして黒服は、きっと【城ヶ崎レンノスケと云う存在】を証明している。

 

 

分かってて、彼がどういう人間なのか理解して、尚もその探求心を彼に向けている。

 

 

 

「……黒服、貴方は彼の何を知っているの」

 

 

 

ヒナが問う。

 

 

 

「次元が、住む世界がまるで違う奴の源を、貴様は何処まで知っているのだッ」

 

 

 

ツルギも同じく問う。

そして意識を彼に向ける。

 

 

 

「────()()()()()()()

「え?」

「又の名を()()()()()……とある別世界に於いて【最強】と謳われた、神話の大英雄の名です」

 

 

 

それは、何故か、聞き馴染みの良い名前で。

 

誰かも知らないのに、神話なんて知らないのに、ふっと頭に入るその名を、自分達は受け入れる。

 

 

 

「彼はその大英雄の神秘を宿した唯一無二の存在。故に男として生まれたのです。いえ、男として生まれる他なかった…とも言えますね。彼の大英雄の神秘は宿る力も代償も凄まじいモノでしたから。しかし────城ヶ崎レンノスケはその代償である【十二の試練】を完遂した。それは一人の……齢3才の子供が経験していい試練ではなかった。だが彼は耐え抜いた。長い年月を掛けて13年の時を生きたレンノスケさんは、強制された人生を自らの手で掴み取り、破壊して魅せた。そして────今があるのです。ククッ、クックックックックックックッ!!!あぁ、嗚呼!何て素晴らしい男なのでしょう!何て美しい神秘なのでしょうッッ!!私は歴史の証人!いま生きているこの時が私の全盛とも云える!!それ程までに、それ程までに!彼は素晴らしいッッ!!!天が与えた無二の肉体!神が恐れる怪物ッ!あの【色彩】すら認知し恐れ慄く存在ッ!!城ヶ崎レンノスケ……貴方は、一体どこまで私を興奮させるのです?」

 

 

 

狂ったように言葉を並べる黒服に戦慄する。

 

そうだ、この男も狂人。あのレンノスケにタメを張る程の狂い人だ。

 

 

 

「…っ!おっと……申し訳御座いません。少々、興奮してしまいました。如何せん彼の事を話すと、我を抑えきれなくってですね」

「………」

「………」

「ククッ、さぁ、レンノスケさんの闘気が増してきました……既に敵意に感知している証拠です。始まりますよ────本当の蹂躙が」

 

 

 

黒服の眼中には既にレンノスケしか映っていない。

 

 

だが、彼ほどの男が、我を抑えきれない程にレンノスケに集中している。

 

それは……私達も同じだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『────レンノスケッ!聞こえる!?』

「あぁ、聞こえてるよ」

 

 

 

中央タワー入り口。

 

その街道にて、レンノスケが立って居た。

 

レンノスケの端末にホログラムとして先生の姿が映る。

 

 

 

「内容は本筋まで言わなくて良い。大方、アリスが乗ったられたのだろう?」

『っ!!』

「やはりな、まぁ嫌な予感はしてたが、こうもあからさまに潰しに来るか……奴さん、相当俺の事を殺したいらしいな」

『レンノスケっ!エリドゥ正面ゲートを中心に大量の敵が押し寄せてきているの!数は1000を優に超えているッ!』

 

 

 

先生から焦燥を滲ませた声質が響く。

レンノスケ個人も得意の索敵でエリドゥ一帯に索敵網を張る。

 

9割が正面ゲート、1割が散りながらこの中央タワーに向かっている。

 

 

 

「……成程、アリスに触発させようってか。随分と舐めてくれる」

『レンノスケさん!私です!ユウカです!聞こえますか!?』

『此方チヒロ。レンノスケ、見えてる?』

 

 

 

そして流れる様に、先生の次にユウカ、チヒロがホログラムとして映りあがる。

 

 

 

「ユウカにチヒロか、あぁ聞こえてるし見えてる」

『良かった!先ほど先生が申し上げた通り、エリドゥの正面ゲートに大量の敵性反応を確認しました!現在確認を急いでいますが、急接近して来ているのは間違いありません!』

『何とか私達で一つのヤマは越えたけど……正直、未だ最悪な状況なのは変わりない』

「分かった。それだけ分かれば良い。先生、アリスはどうなっている?」

『一度起き上がって、別の人格が現れて、また眠りについた所!意識は無いけど……取り合えずは無事!』

「あい分かった。先生、ヒマリ、もうしてると思うが、お前達はアリスの戻し方を考えてくれ」

 

 

 

レンノスケはこんな状況でも焦っていなかった。

嫌に冷静で、落ち着いている。歴戦の雰囲気を放っていた。

 

数秒の間、通信に繋がった『生塩ノア』がレンノスケに令を投げる。

 

 

 

『レンノスケさん、貴方には今から正面ゲートまで行って敵の本隊を迎え撃ってほしいんです。そちらに直ぐ増援を向かわせますので、準備して────』

「必要ない」

『え?』

「────俺一人で十分だ」

 

 

 

全員が呆気に取られる。

 

あのノアですら、その言葉に驚きを隠せないでいた。

 

無論、直ぐに先生やユウカから制止の声が掛かる。

 

 

 

『ちょ、ちょっと待ってレンノスケ!敵の軍勢は本物だよ!一個体がどれも高エネルギーを発している強者!それに、幾らレンノスケでも1000を超える軍勢は只じゃ済まない筈よッ!』

『先生の言う通りです!此処は皆で力を合わせて戦った方が────』

「邪魔になる。俺が本気を出せん。だから必要ない」

『んなっ!?』

 

 

 

バッサリと二人の意見を斬り捨てる。

 

 

 

「お前達は中央タワーの防御、そしてアリスの救出に全力を尽くせ。敵は俺が誰としてその場には鼠一匹向かわせん……皆殺しだ」

 

 

 

レンノスケの圧が増し、神秘が膨れ上がる。

 

それは戦闘への合図。

 

 

 

「────正面だけでなく、エリドゥ全体を崩壊させるかもしれん。俺もちょっとガチのマジで制御が難しいから、先生達は中央タワーの守護とアリスにだけ気を遣って欲しい」

『え?』

『ちょ、まっ…!』

『何するつもりッ!?』

「じゃあな」

 

 

 

”ブツッ…!”

 

 

 

『ん?もしもしもしもし!?』

 

 

 

ユウカの応答も虚しく木霊する。

言いたい事だけ言って、レンノスケは走り去って行った。

 

行き場所はエリドゥ正面ゲート……これから激戦区となる場所だ。

 

 

 

『せ、先生……』

『……信じる他ないわ。ヒマリ、リオ、監視カメラを駆使して正面ゲートの映像を映せる?』

『か、可能よ!』

『レンノスケさん……一体何を────』

 

 

 

全員が無茶だと思う。だが、出来ないとは考えられない。

 

たった一人で、一体何をするつもりなのか……それは。

 

 

 

 

 

 

 

────これから起こる大災害を見聞してしまえば、納得せざるを得ない事だった。

 

 

 

 

 

 

 

▽数分後……エリドゥ正面ゲート。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────成程、鉄屑に似合わず随分と血気盛んらしい」

 

 

 

レンノスケが正面ゲートの真ん中に佇み、呟く。

 

まだ来訪していない守護者を、驚異的な視力で視認。その数は正に有象無象が如く、数え切れない程の多勢だった。

 

 

 

「アリスはモモイ達が絶対に連れ戻す。それを信じて……俺も邪魔な虫の駆除に専念しよう」

 

 

 

”ミシィッッッ……!!”

 

 

 

左手で握るロングナイフの柄が万力の握力によってミシミシと鳴る。

 

レンノスケの全身に纏う筋肉が隆起し、黒スーツが盛り上がり悲鳴を上げる。

胸元のYシャツに付けてあったボタンが2つ弾け飛ぶ。それは、彼が全身全霊で力を込めている証拠だった。

 

そんな彼を、肉眼で見つめる影が3つあった。

 

 

 

「……殺気が」

「増したな……オーラが尋常じゃない」

「何かを準備していますね……ククッ、私の傑作がこうも使われるとは、中々嬉しいですね」

 

 

 

正面ゲートの後方、別のビルの屋上にて、ワープで移動した黒服一派がその様子を見ていた。

 

念のため、3人の周囲を電磁波シールドで防護して眺望する。彼の御業は未だ未知数、だからこそ最善の状態で観察が望ましい。

 

別の所でも、リオが仕掛けた監視カメラで先生達もこの様子を見ている。

全員がレンノスケの行動を見つめる中…………。

 

 

 

 

 

「────シイイイィィィィィィィィッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

空間が歪んだ。

 

まるで、世界が彼に恐怖したかのように、エリドゥ全域に強烈な殺意の波が押し寄せる。

 

赫い霧がレンノスケを纏い、蒼黒い光がロングナイフに纏う。

 

仁王立ちしたまま、だが一切の隙の無い鬼の構え。

 

ただ、一点────その眼光は目の前の無数の軍勢に向く。

 

 

 

「来たッ!」

「あれが……」

「………」

 

 

 

各々が反応する。

 

まるでこの世の終わりを思わせる、強大且つ絶望的なまでの軍勢。

数じゃ圧倒的に不利。無感情に此方に向かってくる様は本当に不気味だ。

 

レンノスケはまだ見守る。

 

 

 

「…………」

『っ!?』

『まだ動かない!?』

 

 

 

先生とチヒロが驚愕の声を上げる。

 

一向に動く気配が無いレンノスケ。

 

 

 

「………」

「粘るわねッ」

「タイミングが掴めん…ッ」

 

 

 

それはヒナとツルギも同様、動くならもういい筈。

 

だが、レンノスケは動かない。

 

守護者との距離────300m。

 

 

 

「………」

『ッ……レンノスケっ』

 

 

 

先生の震えた声が響く。

 

信じてる。信じている……だが、たった一人に向かわせた責任は重い。

 

だが、そんな先生の心配は────杞憂過ぎるモノへと変貌する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────地上から離れてろよ、ハナクソ共が」

 

 

 

”キンッ────”

 

 

 

瞬間……左手に持つロングナイフが地に斬りかかり、地面を這うように抉る。

 

それは守護者に向けたモノでは無く、地面に放った斬撃。

 

何時の間に振ったのか、それすらも視認が吹かな程の豪速の一振り。

 

だが、守護者はなにも感じていない様子で真っ直ぐ進んでくる。

 

その距離…170m。なんで守護者に放たなかった、もう後がない………誰もが、そう思っていた。

 

 

 

 

「バラバラに分解してやるよ……ネジの締め忘れはないかァ!?」

 

 

 

”ズバァァァンッッッ!!!!!”

 

 

 

『んなっ!!!?』

『地面がッ……』

『別れて、裂けた……?』

 

 

 

突然、守護者が走る地面がくし切りの様に斬られたのだ。

 

 

 

「────それだけじゃ、ないっ」

「おい……冗談だろッ!」

「………信じられません。これは夢なのでしょうか」

 

 

 

此処で問う。

 

あなた方は『自分の目の前に巨大な災害』が迫ってきた経験はあるだろうか。

 

ある人はある。無い人は無いだろう。

地震、津波、自然火災……。

この大自然に於いて、災害と云うのは人間が向き合わなくてはならない最大の課題だ。

 

だが……問題なのは、その災害と云う【自然】のみが許された行為を……一人の人間が体現しているという事。

 

 

 

「フゥゥゥゥゥゥゥッッッ………!!!!!!!!!」

 

 

 

”バリンッ!バリンッ!!ゴォォン!!!ドォゴゴンッ!!!ドゴォォォン!!”

 

 

 

唸る声、何かが渦巻く子音。

 

天を裂き、曇天を覆わせ、謎の体調不良を催させ、轟雷を響かせる。

 

正直言って異常。余りにも異常。

 

だが────裏社会最悪の怪物と謳われた男の本領は、それだけではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”────ヒュオォォォォォ……”

 

 

 

 

”────ドゴォォォォンッッ!!!!!!”

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!!?」

「嘘だろ…ッ!?」

「……これは、この世のモノとは……到底思えない御業だ」

 

 

 

3人が天を見上げる。先程の天の裂け目は未だ健在。

 

だが、それだけではない────それだけではないのだ。

 

 

 

 

「その身に一片の残骸も残さんッッ!!!」

 

 

 

守護者が……全機体、天に舞いあがったのだ。

 

そう────彼が生み出した【大嵐】によって。

 

天の裂け目を中心に、エリドゥをも覆い尽くさん嵐が守護者に襲い掛かる。

 

 

 

「これで700ッ!残りの413匹は……雷にでも打たれとけよッ────(ミナゴロシ)だッッ!」

 

 

 

”バババンッッッ!!!ドゴォォォォンッッッッ!!!!”

 

 

 

エリドゥの各所に、赫い雷と蒼い雷が降り落ちる。

 

それはまるで神の怒り。

それはまるでこの世の終わり。

 

天の裂け目から、まるで蠢く龍の様に、途切れることなく雷が地上へと天雷する。

 

ピンポイントに、機械じかけの守護者に無数の雷豪が追撃。

守護者を駆逐していく怪物レンノスケ。その姿、その表情には、何の感情も無かった。

 

 

 

『……あ、夢か!』

『ユウカちゃん、そう思うのは仕方のない案件ですが確りして下さい。これは現実ですよ』

『いやはや……まさか、此処までのロマンを魅せるとはね』

『これをロマンと称して良いのでしょうか……』

『インスピレーションは過剰なほど受けたけど……ごめん、私も未だ理解が追い付いつかない』

 

 

 

その光景を見たユウカ、ノア、ウタハ、ヒビキ、コトリは驚愕を禁じ得ず顎が外れかけている。

科学をモットーに生きるミレニアムの精鋭たちの度肝を抜くには、十分過ぎる程の天災者だったから。

 

 

 

『あ……あの、部長……貴方が惚れてしまった怪物さん、何か天災おこしてますが』

『一言余計だし、そんな事私に言われても何も出来ないんだけど』

『うわぁぁぁ………こんな化け物がモモたちとゲームしてたの?』

『うぅ、頭が痛いぃ……なんなのコレ……っ』

 

 

 

ヴェリタスのコタマ、チヒロ、マキ、ハレがそれぞれ彼の規格外に反応する。

 

最早、怪物と謳われても仕方がない光景だ。

 

天を裂き、曇天を生み、謎の体調不良を繰り出し、天を渦巻く大嵐を出現させ、赫と蒼の雷を振り下ろす。

 

纏めるとこうなる。意味不明だ。

 

 

 

”バリンッッ!!バリイィンッ!!ドゴォォォンッッッッ!”

 

 

 

大嵐が、正面ゲートを、エリドゥ全域を包む。

赫黒い雷斬、蒼白い雷弾……それは正しく、天神の災禍。

 

たった一人の人間が、その身に抱える神秘を完璧に操り、最大限の真価を発揮する。

 

正面ゲートを突破しようと進軍していた守護者の軍勢は、エリドゥを巻き込む規格外の嵐によって、全ての守護者が天の裂け目に浮遊させられる。

 

一部は外装が剥がれ落ち、一部は電線チューブを引き裂き、一部は雷によって個体そのものを抹殺される。

 

 

黒服たちヒナ、ツルギも最早開いた口が塞がらない。言葉も出ない。

 

驚愕でその行為を見守る事しか出来ないのだ。

 

 

 

「フゥゥゥ…………フゥゥンッッ!!」

 

 

 

瞬間、レンノスケが左手に持つロングナイフを地面に突き刺す。

全員が頭に疑問符だ。ロングナイフを根元まで刺した行為に理解出来ない。

 

 

 

『(ロングナイフを………一体、今度は何を…────ッッッ!!!!?)』

 

 

 

黒服が興奮を抑え、何とか冷静にレンノスケの動きに対し分析する。

 

レンノスケは左膝を着いてロングナイフを根元までぶっ刺し、全身の筋肉を隆起させたまま柄を破壊的に握る。

逆立つ髪に呼応するように、大嵐が更に重厚さを増していく。

 

不動。動かない怪物、だがそれは……一定の準備であった。

 

 

 

「悪いがフラストレーションが溜まりに溜まっているんだ………一撃で粉砕させて頂くッ!!」

 

 

 

レンノスケが天を見上げ、ロングナイフを手放して立ち上がる。

 

その、瞬間────地面が破裂する。

 

 

 

”バゴォォォンッッ!!!”

 

 

 

「ッ!地面が…!」

「ロングナイフを地に注入し、爆発させ、鉄石ごとアイツ等を浮かせたのかッ!」

 

 

 

ヒナ、ツルギがそう言を投げる。

 

地面は爆ぜた彼の神秘によって、大小無数の鉄石が大嵐によって浮遊し舞い上がる。

 

異様なのは、その鉄石が赤い霧を纏っていた事。それが不自然で不気味だ。

 

レンノスケはハンドガンをホルスターに仕舞い、ロングナイフを地に刺したままの状態。

この極限の空間の中、彼は武器を装備していない。

だと云うのに、一点の隙も無い姿勢。それが恐ろしくてたまらない。

 

守護者たちは未だ大嵐と雷豪により、絶命する者や外装に傷を負う者で別れ始める。

 

 

 

「────ッッ!!!!」

 

 

 

このまま大嵐を出現させれば終わり。全員が、そう、思う。

 

誰もが、そう、思った。

 

……黒服がコンマ1秒早く、彼の変化に気付き、死を再確認した。

 

 

 

 

 

 

「────目覚め(起き)ろ…()()()()ッ」

 

 

 

 

 

 

だが、それよりも注目すべき事が発生した。

 

 

 

『あ、あれは…っ!?』

『ひ、あっ……!』

『っ……また、寒気が…ッ』

『ノアッ……っ、なんで、離れてるのに…ッ』

 

 

 

レンノスケが動いた。その動きは、誰が見ても、恐ろしく見えた。

 

ヒマリが叫び、リオが恐怖で腰を抜かす。

ノアが両腕を抱え伏せ、ユウカが支えるも耐えられない。

 

果てのない、死を目の前に纏った怪物の重圧は……何処に居ようとその者に恐怖を植え付ける。

 

 

 

『レンノスケ、君は……』

 

 

 

先生がレンノスケのその行動に思いを馳せる。

 

シャーレ倉庫に眠っていた、一つの武器。

それをレンノスケが見つめ、自らの意志で先生に拝受を求めた【例外武器】の一つ。

 

 

 

「ッ!!!」

「あれは、まさか……ッ!」

「────遂に魅せますか……レンノスケさんッ」

 

 

 

ヒナ、ツルギ、黒服がレンノスケのその行動に眼を見開く。

 

今まで、一度たりとも使わなかった武器。

ナイフとハンドガン、そしてその身一つで戦ってきた者の、もう一つの武器。

誰も知らない、唐突に武装し出した巨大な武器。

 

 

それは────彼が背に武装していた【M82】

 

漆黒のソレは、レンノスケの異様さを更に極めていた要素の大いなる一つ。

 

レンノスケが右手一つでM82を持つ。

 

 

 

「────神秘・覚醒・解放────」

 

 

 

”ゾゾゾゾゾゾゾゾゾッッッ!!!!”

 

 

 

キヴォトスに生きる全生物が、その身に謂いようのない寒気を覚える。

 

草食動物は身体全体が震え、その逃れる事の出来ぬ死を直観する。

肉食動物は闘争本能が機能せず、只々、その死を受け入れる。

 

キヴォトスの民が、謂いようの無いか感覚に陥いる。まるで目の前に見えない超災害を目の当たりにしているかのような感覚だ。

 

 

────何とこの怪物は、M82に尋常じゃない量の神秘を纏わせ、その一発の弾薬に己の全てを乗せたのだ。

 

 

それは、遂に見れる、城ヶ崎レンノスケの本領。

それは、黒服でさえも実物は見た事のない、彼の得た13年の全て。

 

 

 

「あぁ、嗚呼っっ……貴方と云う人は、何処まで………ッッッ!!!」

 

 

 

黒服は興奮が抑えられない。鳥肌が止まらない。

レンノスケの本領は、何と狙撃手であったのだ。

それは彼のみ知っていた真実。その戦闘は未知数。

こんなもの、知らなくて当然。だからこそ、黒服は興奮を抑えきれない。

 

────計り知らぬ、底のない神秘が織りなす、極意に至った者が放つ最大最上である必殺の一撃。

 

神秘を追求する者として、興奮するなと云う方が可笑しな話であった。

 

黒服のみ、その本領を極限に楽しんでしまう。

 

他の者は皆……絶句しているが。

 

 

 

「────トロッコ問題、だったか?」

『ッッッ!!!』

 

 

 

レンノスケが口を開く。リオが反応。

 

 

 

「どれもこれも下らん結末だ。そんなモン認められるか……答えを教えてやるよ」

 

 

 

レンノスケがニヒルに笑い、告げる。

 

 

 

「────そのトロッコをぶっ壊せば好い話なんだわなァァッッ!!!」

 

 

 

ガハハと笑い、その銃身に万力の力を籠める。

 

リオはポカンと呆けるが、レンノスケは続ける。

 

 

 

「鉄屑共ォッ!これは俺史最大の必殺だッ……俺1割、キリノの愛の力を9割でテメェら殺してやるよ」

 

 

 

天の裂け目に、その銃口が向く。

 

ドス黒い殺意と……美しく覚醒した神秘を纏わせたたった一発の銃弾。

 

彼は、100%を超えた、全存在を懸けた攻撃を繰り出す。

 

 

 

「────死ね」

 

 

 

 

”ドンッ────”

 

 

 

 

M82の射撃音が響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”──ドオォォォォォォォンッッッッッ!!!!”

 

 

 

 

 

鼓膜を破る勢いの破裂音。

 

殆どが耳を塞ぎ、下を剥く。

 

だが、先生、黒服、ヒナ、ツルギ、ネルは……視線を外さなかった。

 

その銃弾が、一体、何をしたのか……見逃さなかった。

 

 

 

『……冗談だろ』

 

 

 

ネルが呟く。

 

 

 

「……最早同じ人間とは、思えん」

 

 

 

ツルギが吐き出す様に告げる。

 

 

 

「…………お待ちしておりました。貴方が、至天に昇るこの日まで…っ」

 

 

 

黒服が濡れる。

 

 

 

「ははっ………流石、アリスに英雄と称されるだけはあるね」

 

 

 

先生が渇いた笑みで称賛する。

 

 

 

 

それは一体何故か?

 

 

 

 

理由は、明白だ。

 

 

 

 

「────まだ未熟だな、俺も」

 

 

 

 

天に存在していた全ての事象を破壊し、いつもの星空を見せていたからだ。

 

説明する。

 

レンノスケは己が込めた神秘を天の裂け目に向け放った。

それは、事前に彼が直前に仕掛けた鉄石、あれに己の神秘を分散させ、起爆剤として大嵐と共に守護者に巻き付けた。

結果、超大規模の爆発が遥か天上で巻き起こり、彼が起こした天災を纏めて葬ったのだ。

 

つまり…レンノスケは自ら起こした超災害を、自らの力でコントロールし、派手に破壊したと云う事。

 

 

それを理解した、先ほどの面々は……口を揃えてこう云う。

 

 

 

天の悪戯────────怪物だと。

 

 

 

「────イカレてる……ッ」

 

 

 

ヒナがそう発言する。そう言うしかない状況だ。

 

 

 

これが…調月リオが恐れ、明星ヒマリを(厄介ファンとして)狂わせ、三大校の最強戦力に冷や汗を零させた男。

 

 

城ヶ崎レンノスケの────存在の証明であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽────中務キリノside。

 

 

 

 

 

 

こんにちは!中務キリノです!

 

私は現在、D.U.にあるおじさま……えっと、レンノスケが贔屓にしている病院にて入院中です。

隣のベットにはアイラちゃんも入院中です。お医者さんから念の為と診断され、5日間の入院を頂きました。

 

────エリドゥの騒動から早いモノで4日の時間が過ぎていきました。

 

いま思っても中々にハードな日々でしたね。誘拐される何て初めての経験でしたし、アイラちゃんを何とか死守しなきゃって状況下でしたので、相当にメンタルは削られましたね。

 

 

少し具体的に成るのですが、レンノスケが起こした天災は【キヴォトスの七不思議】として扱われ、最新のオカルトとして今もキヴォトスで輪を広げています。

 

ミレニアムがレンノスケが実際に起こした証拠となるデータを連邦生徒会に提出したのですが、これを公にするには余りにも危険と判断され、お出しされた回答は『分からない』でした。

 

それにより、一時は混乱を招きましたが、大半がキヴォトスだしな―と納得する者も増えてきたのです。確かにキヴォトスは謎が多いですからね、一部、特にワイルドハント芸術学院やミレニアムは躍起となって原因を模索している様です。

 

 

あと語るべき事は、やはりアリスさんが無事に救出できた事でしょう。

 

 

レンノスケが大暴れしたあの日、裏では確りとモモイさん達が動き、無事にアリスさんを連れ戻す事が出来たのです。

 

皆さん傷は負いましたが、全員が生きて帰還出来ました。エリドゥはレンノスケの戦闘で大半が損壊し、ギリギリ機能が可能な域です。100%だけっていったのに、やり過ぎです!もう!

 

 

 

「────ほら、剥けたよアイラちゃん。ゆっくり食べなさい」

「わぁぁ!かわいー!うさぎさんだー!ありがとうカンナさん!」

「ふふっ、どういたしまして。キリノも食べると良い、活力になるぞ」

「宜しいのですか?ありがとう御座います!では、有難く頂きます!」

 

 

 

現在は午後の3時、お見舞いにカンナ局長が来てくださいました。

 

とても嬉しいです。前にはフブキや同期に先輩も来て下さいました。

アイラちゃんにはお友達のアリウスの幼子たちに加え、シキさんやアリスク、それにイチカさんも来て下さいました。

 

 

 

「態々お見舞いに来て下さりありがとう御座います。改めて、急に居なくなってしまい、申し訳御座いませんでした……」

「それは言わなくて良いと言っている。お前は何も悪くない、ミレニアム側の過失だからな。それに、キリノはアイラちゃんの身を最後まで死守したのだろう?それで十分だ」

「キリねえが居なかったら、本当に怖かったけど、キリねぇのお陰で私!大丈夫だったんだよ!」

「そう、ですか……ありがとう御座いますっ!」

 

 

 

私はまだまだ未熟者です。ですが、少しだけ、精神的には強く成れた。そんな気がします。

 

 

 

「とはいえ、二人が居なくなって大変だったのは否めないがな。トリニティじゃ正義実現委員会を総動員して捜索、姫乃シキというレンノスケの知人を始めとしたシスターフッドも捜索に加担。そして、ヴァルキューレ全体も捜索に尽力を注いだ。レンノスケに関しては”風邪を引いた”と言われたが、直ぐに”異常”だと察したさ。キリノは分からんがあの馬鹿が風邪を引くとは思えんからな」

「あ、あはは……流石カンナ局長です」

「だがまぁ、その捜索も無駄ではあったのだがな。犯人がまさかミレニアムの長『調月リオ』で且つ、密かにあのような大都市を築いて、そこに二人を連れ去ったのだから。予想外にも程があった……」

「未だに信じられない行動力でした……そういえばリオさんはどうなりました?」

「事情を早瀬ユウカさんに聞いたところ、どうやら何時の間にか逃亡してたらしい。なにやら『合わす顔が無い』と言われたとか……暫く捜索はするが、見つけるのは難しいだろう」

 

 

 

はい、この事件を起こした張本人であるリオさんはあの後、どうやら一目の隙を突いて逃げたとの事。

 

仕方ないのかもしれません。合わす顔が無いのは、生徒会長として思う他ないですし。

私としては、アイラちゃんとアリスさんに謝ってほしい所ではありますが、御二人はそれほど気にしていない様子なのでそこまで深追いはしないつもりです。

 

因みにですが、どうやら私とアイラちゃんが居なくなった数日、各署では大捜索が行われていたそうです。申し訳ない気持ちが強く出ますね。

 

カンナ局長はレンノスケの電話を聞いて、公にはせずに動いていたそうです。

明らかな異常行動ではあったと聞きました。声は震え、絞り出すように嘘を吐くレンノスケの性質が頭から離れなかった。そう聞いて、胸が苦しくなりました。

 

 

 

「カンナさん、レンにぃは?」

「レンノスケは今ゲヘナで戦闘講習をしている。何やら空崎ヒナさんも講習に加わり組織を大幅に強化させるだとか」

「ひ、ヒナさんもですか!?」

「当然の方針だろう。あのエリドゥで規格外の戦闘力を発揮したのだ、ヒナさんとて最強と謳われる存在、黙っている筈がないだろう」

「確かに、ですね……」

 

 

 

そうです。ヒナさんを始め、トリニティの剣先ツルギさん、ミレニアムの美甘ネルさんもレンノスケの戦闘講習に積極的に参加し始めたのです。

 

当初は三人ともレンノスケに劣らない影響力があったが為、彼との模擬戦は表では行わない方針でした。

 

ですがその話は先のミレニアムの騒動で一変。ヒナさん、ツルギさんが入院していたネルさんの下に訪れ会合しました。

 

その会話は私も交えての相談だったので、一部をお見せします。

 

 

 

▽────2日前……。

 

 

 

『────ゲヘナからは……いえ、私個人としては取り組んでも良いと思ってる。レンノスケの講習は意外と心を食っているし、何より基礎を重点に置いている。私達も学ぶべき事が多い筈よ。過剰な戦力強化は均衡を崩しかねないけど、あの守護者と云われる不気味な軍勢を私達は見ている。あれは、感情がまるで無い殺戮兵器に近い存在だった』

『ミレニアムとして、あたしとしても大賛成だ。マジな話、あたしはあの野郎に感化されて此処まで強く成れたと自覚してる。アイツはあたしが治療する時にこう言っていた……〈戦闘に於ける技術を全て見て吸収しろ〉……あたしはアイツの動きを見て理解した。基礎どころか、アイツは対峙する敵の癖や体軸を読んで攻撃していたんだ。あたしが見て理解し易くする為に、わざと動きを制限して、だ……あの〈アビ・エシェフを装備したトキ〉相手にだぞ。悔しいがあたし等は地元で最強なだけで、キヴォトス全体で見ればあの野郎は格ソノモノが違う』

『私としても是非、奴とは語り合いたい所だ………余計なプライドは成長を止める。私達にも師が必要なんだろう……トリニティ側としても、レンノスケには模擬戦兼、特訓を積ませて頂きたい所存だ』

『全員、意見は一緒ね……キリノ』

『は、はいっ!』

『まだ未定ではあるけど、私達【治安維持組織】の”長”として、彼には是非とも各自治区に『師』として尽力して頂きたいの。ミレニアムで守護者と云われる謎の軍勢が居る以上、護るべき者の為に私達も強く成らなきゃいけない。どうか、彼にお願いできないかしら』

『っ!ま、任せて下さい!でも伝えてはみますが、もしかしたらNOと答える可能性もありますが……そうなったらどうすれば?』

『チューして服従させなさい』

『抱きしめて上目遣いで愛を囁け』

『その自慢の胸で何とかしろ』

『皆さんっ!!?』

 

 

 

 

 

 

……結局、レンノスケは────『あぁん?そんなんキリノと愛する時間が減って損じゃねーか!強く成りてぇんならテメェが自分の足で来いって言ってくれよキリn…おぉぉぉ!!キリノのおっぱいキリノのおっぱい!!うっっひょーーー!!!うーまそーーー!!!この世のキリノのおっぱいに感謝を込めて、いt……』

 

と云っていたので、病院ではありますが”おっぱい”で誘惑して承諾させました。それで良いんですかレンノスケ。いや先ず、アイラちゃんがお手洗いに行ってて良かったですよ。二人共幻滅されて無事死亡エンド回避でしたよ。

 

とまぁ、少し長い解説でしたがこの様な展開があり、レンノスケは少し忙しくなるようです。

 

彼が言っていた愛する時間……減ってしまうのは本官も嫌ですが、仕方ありません。キヴォトスの未来の為ですから!

こういう時こそサポートです!本官は本官が出来る事をして支えるんですから!

 

 

 

「だから、少し見舞いには遅れるとの事だ。まぁ奴の事だ、終われば一目散に此処に来るだろう」

「えへへ!レンにぃ、私達のこと好き過ぎでしょー!」

「ふふっ!そうですね、彼は愛が重いですから!」

「(レンノスケにGPSを付けさせ位置の共有と逐一のモモトークを約束させるキリノと、ロウガ君に対し8才とは思えないモノを過剰に与えるアイラちゃんがそれを言うのか……)」

 

 

 

何やら遠い目で私達を見るカンナ局長。一体どうしたのでしょう?

 

ですが、今回の事件は色々とありましたが……アリスさんも元気に活動していますし、アイラちゃんも無事でした。

 

一件落着、ですね!

 

 

 

 

 

────おまけ☆

 

 

 

 

 

▽…レンノスケside

 

 

■ゲマトリア支部…とある拠点。

 

 

 

 

 

「────クックックッ……お待ちしておりましたよ、レンノスケさん」

「悪いな、少し遅れた。ヒナとの模擬戦が長引いた」

「問題ありません。致し方のない事ですので……さて、ここは一つ休憩にでも至りましょうか?」

「必要ない。キリノとアイラが待ってんだ、出来るだけ早く済ませたい」

「ククッ、承知しました。では早速本題に入りましょう」

 

 

 

薄暗い場所。レンノスケと黒服が其処に居た。

 

それは契約の件だ。レンノスケは彼に呼ばれ、ゲヘナ風紀委員会との講習を終えた後案内の元此処に居る。

 

無駄な会話は無し。レンノスケは黒服にとあることを聞く為に居る。黒服は答える。

 

 

 

「レンノスケさん、先の戦闘で非常に素晴らしいデータが取れました。ロングナイフとバレットを用いた規格外の神秘……私、興奮を抑えるのに必死でしたよ。これでロングナイフとサポートによる【契約】は果たせました」

「………」

「そして、もう一つ………アリウス自治区で伝えた()()()()()()()()()()()()()の件ですが……やはり、彼女には大きな進化が確認されました」

「言え」

 

 

 

レンノスケは有無を言わさず、黒服に圧を掛けて問う。

殺意や敵意は無い。早くその結果を教えてくれと希う。

 

黒服は、一度呼吸を置き……告げる。

 

 

 

「────貴方と会った以前の時と比べ、明らかに身体能力が向上していました。たった数ヶ月であそこまで向上するのは有り得ない話です。しかもあの環境下に居て、天丈アイラを抱えた状態で『便利屋68』や『アリウス・スクワッド』を凌駕する健脚を披露した事実……つまり、キリノさんは()()()()()()()()()()宿()()()います」

「……やはり、そうだったか。それに関して何か不都合は?」

「今の所ありません。ただ彼女の身体のベースはまだ未熟そのもの、貴方の神秘を過剰に注入すれば何かしらの不都合は生じる可能性はあります。キヴォトスの子供には神秘が宿っていますが、それに耐えられず障害を持つ者も居るので」

「(代表的に言えばアスナちゅわんが言えるな……やはり、キリノは俺の神秘を受けてたか)」

 

 

 

そう、キリノの異常なまでの身体能力だ。

彼女がエリドゥの牢を脱出したあの時、レンノスケの事を聞いたキリノはアイラを抱っこした状態で駆けて行った。そこまでは良かった。

 

問題なのは便利屋とアリスクの者達を置いて行くほどの健脚を見せた事だ。

 

あの二つの組織はキヴォトスでも上位に位置する武闘派組織だ。メンバー全員が他のキヴォトス生よりも格段に足は速い人種。そんな者達を置いて行くなど相当な事だ。

 

 

 

「アリウス自治区で伝えた以前よりも、今のキリノさんの方が格段にその現れがデカいです。レンノスケさん、一つの願いと一つの問いを頂きたいのですが、宜しいですか?」

「当たり前だ、キリノの事だぞ、詳しく聞かせてくれ」

「ククッ、えぇ勿論です。とは言ってもこの話は特段大きな問題ではありません。一つの願いは……キリノさんをもう少し強く鍛えて上げて下さい。彼女には面白い才能があります、身体能力にも光るものがある……貴方との相性も素晴らしいのでね」

「言われなくとも、そのつもりだ。キリノに才能があるのは前々から知っている……だが、あんた程の男がそこまで言うんだ、俺の勘は当たってたと理解出来て良かったよ」

「ククッ……それは何よりです。では、一つの問いですが………レンノスケさん」

 

 

 

黒服が告げる。

 

 

 

「────セッ〇スした時に膣内射精した経験は?」

「ちつないしゃせいって何だ?」

「中出しです。精子をキリノさんの膣……ま〇こに生中出しです」

「あぁ、あるぞ。最初は我武者羅に腰を振って正常位で中出し。次にバックで中出し。そして少し前にコスプレでア〇ルに中出しだ!」

「そうですか。別に体位やシチュエーションは聞いていなかったのですが、謎が解けました」

「と言うと?」

「貴方の精子がキリノさんにその身体能力を授けたのでしょう。ピルを服用したのは色んな意味で正解でした、あのまま覚悟を決めていたら大変だったかもしれません。貴方の濃い精子で後遺症が残ってしまったら笑えませんからね」

「なるほど……だから、鍛えさせるのか」

「貴方とキリノさんの未来を考えるのなら、鍛えさせ、強くさせる方が良いでしょう」

 

 

 

色々と問題発言が飛び交ったか、大きな問題の解決方法が分かった。

 

キリノと共に生きるのなら身体を更に強くさせる。単純だが簡単ではない。これは己も鬼になる日が来るかもしれないという事。

辛いが、生きる為なのだ。何だか阿保らしいが。

 

 

 

「……生ア〇ルもやめた方が良い?」

「生ア〇ルも一応やめた方が良いかと。いや先ず学生が中出しなど何を言っているのですか。お金が有るとはいえ、今は危険な真似はせずゴムで我慢しなさい」

「く…ッ!黒服の癖に大人な事を言いやがる…ッ」

「大人、ですので」

 

 

 

悔しいが正論である。

 

 

 

「ふぅ、分かった……良い事を聞けた、感謝するよ黒服」

「クックッ…いいえ、大きな事はしていませんよ」

「いいや、スゲェ大切な事だ。ありがとうな────御礼に良いモノをやろう」

「ほぅ?」

 

 

 

レンノスケが懐からある写真とスマホを取り出す。

 

それは────

 

 

 

「……ッッ!!?こ、これはッ!」

「先生の隠れてしていたバニーコスプレと先生のオ〇ニー動画だ」

 

 

 

そう、シャーレの先生秘蔵の『R18』な写真と動画(盗撮)だったのだ。

 

 

 

「れ、レンノスケさん!!な、なな、何故、この様な大秘宝を!?」

「これでも偶にシャーレへ泊まりに行くんだ。そしたら先生、溜まってんのか知らねーけど休憩室で偶に盛ってんだよな。何かに使えねーかなって思って気配消して撮ったんだ(クズ)」

「ま、まさか、コレを私に……?」

「おう。お前先生のこと好きだろ?要るかなーって思ったんだけど」

「要ります要ります要ります要ります要ります要ります要ります要ります要ります要ります要ります要ります要ります要ります要ります要ります要ります要ります!!!!!」

「お、おぉ、そうか。じゃあはい、写真と……モモトークで送った方が良いか?」

「いえ、それだと画質が落ちるのでモモドロップで送って下さい。あ、私がしますね」

「頼むわ」

 

 

 

クズとカスによる取引が終わりを迎える。レンノスケとネルが最恐コンビなら、この二人は最悪コンビだろう。

 

 

 

「ククッ……一生味のするオカズですね」

「ガムならぬオカズか。今日それでシコんの?」

「無論、シッコシコです」

「そいつは良いな(!?)」

 

 

 

レンノスケは楽しかった。同じ男子でこんな会話が出来るのが。

悲しいかな、このキヴォトスは人間型の男子は彼のみ。最後の希望である先生も女性だ。

こういう男子特有の脳ミソ空っぽの会話は、女子とする会話よりも楽しかった。

 

だが人型とは少し違う異形型だが黒服は男だ。先生の敵ではある存在だが、個人的には気のいい友人ではあった。クズではあるが。

 

 

 

「さてと、じゃあ俺は帰るわ。また何かあったら連絡してくれ……今度キリノと先生も一緒に飯でも行こうぜ」

「ククッ……えぇ、是非お供させて下さい」

 

 

 

レンノスケと黒服。第一印象は最悪だったが、今と成れば中々の良い仲だ。

 

その後、レンノスケは遅れてキリノ達のお見舞いに向かった。

遅れた理由とGPSも反応しない謎の場所について言及され激詰めされたのは、また別の話。

 

 

 

そうして、ミレニアムの騒動は平和に終わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽────連邦生徒会、防衛室。

 

 

 

 

 

 

「────城ヶ崎レンノスケ……本当に、良い買い物をしたものです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回

 

外伝:レンノスケ、ショタになる(1話)

 

明後日に出す予定です!!

 

 





ギリシア神話では、大英雄ヘラクレスと平和の女神エイレーネ―には直接的な関係は無いとされています。

ですが、ヘラクレスの力の秩序と謂う築きと、エイレーネ―の平和の維持と謂う対比は時稀に語られる事があったと云います。
どちらにもゼウスが大きく絡んでいるのが、また面白いですね。

私は最近神話を学んでいる者なので、何か違う点があればどんどん感想で言って下さい!

次回は『レンノスケ、ショタになる(1話)』を出します。

外伝扱いなので、結構やりたい事いっぱいしますわ!


誤字脱字、お気に入りここすき感想評価、お願い致します!

アンケートです。どうか、御投票を宜しくお願い致します。

  • レンノスケ、配信者に成る。
  • 16歳組によるバレーボール同盟
  • キリノと二人旅
  • 提示版(レンノスケだけど、質問ある?)
  • レンノスケの過去編
  • 本編:カルバノグの兎編
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。