コメント、誤字脱字、評価ありがとう御座います。
とても励みになります。
「────ですっ!分かりましたかレンノスケさんっっ!!」
「はいぃ……ごめんなさいでした……」
「……つ、着いたぞキリノ」
30分は、正座して怒られていた気がする……。
す、すごかった……途中で怒る姿も、一緒の目線で怒ってる事も、素敵で可愛いなって、ついそのままダイレクトに口に出しちゃって滅茶苦茶に怒られた……。
「あ、着きましたか!ほら、行きますよレンノスケさん」
「………うん」
「レンノスケさん……?」
「ん?………うん、行く……うん」
「あ……はぁ、もう……レンノスケさん、少しかがんで下さい」
キリノさんに怒られ、気分が沈んでいる俺に、キリノさんから声を掛けられる。
無論、従う。かがんで……と言われたから、俺はキリノさんの前で腰を折り、そして────。
“わしゃわしゃわしゃ……”
「……え」
「お、おい……お前」
「キリノ、一体何をしている?」
「すみません、すこしだけ……よし、よし……ちょっと恥ずかしいですね、これは……」
「キ、キキ、キリノ……さん?」
「……ごめんなさい、先程はちょっと言い過ぎましたね……私自身、怒るなんて今まで指で数える程度なのに、なぜかレンノスケさんの事になると感情を抑える事が難しくって……」
「お、おおぉ……おおおぉぉ……」
すごい、すごいぞ……いや、え、何が起きてる?
お、俺、今……キリノさんから、頭を撫でられている……本当に?はわ……。
い、いや、キリノさんからは一回撫でて頂いてはいるから、めちゃくちゃ嬉しいけど、で、でも……こんな両手でして貰えるなんて初めてだ。
し、幸せだ……もう、ずっと撫でてほしい……キリノさん素敵だ。可愛い。好き。
……ん?ちょ、ちょっと待て。今さっき、感情を抑えれそうにないって……。
「ど、どうですか?その……こうすると、レンノスケさんは喜ぶかなと、思ったのですが……」わしゃわしゃ……
「……ああ、最高だ、キリノさん。とても素敵だ……気持ちが良すぎる……もっとしてくれ」
「あ……~~~っ!は、はいっ、なでなではお終いです!先生達を待たせて居るので、も、もう行きますよ!」
「む、もうか……分かった、最高の時間をありがとう、キリノさん。元気、出たぞ、素敵だ、キリノさん」
「…………もう」
「イ、イラつくぜぇ~~………ッッ!!」
「キィィィィエエェェェェッェェェェ………」
「はぁ………頭が痛い」
「あの……もう着きましたが……お、尾刃局長、こ、これは一体……?」
「……何も言うな」
「あ、はい」
キリノさん成分を頂いた俺は、今最高に気分が良い。
怒られた後のなでなでは凄い事に気付いた。なんか、あれだな……。
「……なんかして怒られれば、最期は必ずキリノさんが、撫でてくれる?……ほぉ」
「……そんな事したらもう貴方とは話しませんからね」
「なっ、こ、心を、読めるのか?」
「アホか。もろ口に出てたぞ」
「な、なんだと………ふぅ、キリノさん、実はさっきの、冗談なんだ」
「むむ、実は冗談ですって?レンノスケさ~ん?」
「……ごめんなさい」
「……ふふっ!はい、よろしいです。謝れて偉いですよ、レンノスケさん」
「む……ああ、ありがとう、キリノさn」
「反省は、ちゃんとして下さいね?」
「はい……」
「尾刃局長、本当にこれは一体……?」
「……もう知らん」
そうして俺の計画が壊されたわけだが、やっぱり怒られるのは心が痛いので極力させないようにしよう。
「────そこ……ぐだぐだしてないで、早く行くわよ」
「あっ……す、すみません……直ぐに支度します!」
「キリノさん、謝らないでくれ、俺が謝る。わるい」
「お前の謝罪など今はいらん。早く進め」
「ぬ……むう」
そして、俺は護送車を降りる。当たり前のようにマスコミも居る。光が眩しいぞ。
俺とキリノさんを囲むように、美甘、剣先、空崎、尾刃の四人は、戦闘を尾刃にして連邦生徒会に入っていく。
実際に入って、感想は圧巻の一言だ。デカい、空気が澄んでる、綺麗。
あんなゴミみたいな場所が嘘のように、ここは建物がしっかりしていて綺麗な印象を受ける。
「おお、凄いな……建物全体が綺麗だ」
「レンノスケさん、此処では失礼のない様にしなくてはいけませんよ」
「お前の将来が懸かっている。先生が居るとはいえ、お前は将来………いや、今は良い、とりあえず礼儀良くして居ろ」
「キリノさん、尾刃……ああ、分かった。それは安心してほしい、俺に良い考えがある」
「テメェまだ言ってんのかよそれ……此処まで来ると逆に何なのか気になる」
「気になるなら、教えてやろうか?ん?」
「ああ!?本当に癪に障る野郎だなテメェ……っ!」
「美甘ネルさん、どうかここは抑えて……ふぅ、城ヶ崎……一応聞いておく。何をする気だ」
「秘密だ」
“ビキィッッ!”
「……潰す」
「お、おいおい……」
「かん、カンナ局長!ど、どど、どうか、ここは気を静めて……」
「……ふぅ、そうだな。コイツの言動に一々憤ってては埒が明かな────」
「そうだぞ、何をそんなに怒っている尾刃、みっともないから落ち着け、な?」
「ガルルルルルルルルッッ!!!」
「ひぃぃぃぃっっ!!!」
「ん、キリノさん、俺の後ろに……今の尾刃は、様子がおかしい、危険だ。理由が、きっとある筈なんだが……」
「あなたの……せいですからぁ……ばかぁ…」
「お、尾刃カンナ局長……気持ちは痛い程分かる、でもどうか落ち着いてほしい」
「……もう殺そうぜ、こいつ」
「素で言っているのが本当に質が悪い……」
なんだ、尾刃まで怒って……。
まあいい、ほっておこう。
■
「ふぅーっ……ふぅーっ……」
「深呼吸は大事だぞ、尾刃」
「黙れ……」ピキピキ
「ひぃぃ……れ、レンノスケさん……は、早く謝ってください……」
「分かった。すまん尾刃。何の事か全く分からんが」
「……壁にめり込ました後に潰して殺す」
「は……あわわわ……」
「……なんでいつも余計な一言多いんだ、お前は……」
「テメェは本当に人をイラつかせる天才だな、クソが……」
「はあ……此の先に、確か先生が……あ」
「────おーい!」
少し奥から、聞き覚えのある声が聞こえた。
目を向ければ、そこに居たのは────。
「先生か」
「せ、先生、お、おお、お疲れ様です助けて下さい……」
「来たね、皆!そしていきなりだねキリノ。取り合えず無事に着いたみたいで良かっ……────え、えっと、カンナはなんでそんなに怒っているの?」
「……私は、いつかコイツをぶっ潰します」
「カ、カンナ!?ど、どうしたの急に!?」
「あたしは殴って引き千切ってぶっ殺す」
「私は年の上下関係というモノを分からせる」
「そのクソ生意気な性格を叩きのめす……」
「皆も凄い物騒だね!?私が居ない間に一体何をしたのレンノスケ!?」
「先生、なぜ俺だと決めつける」
「皆レンノスケの方を向けて言ってるからだよ!?」
「あと、皆さんはこんな事恐らく貴方にしか言わないかと……」
「……そう、か……むぅ……」
息をするように俺への底がない怒気をぶつけられた。
キリノさんや先生が言うには、なんか俺が悪いみたいだ。
……心当たりがないと言えばない。本当だ、うん。
そんな事を思っている時だ、先生が両手一杯に何かが入った籠を持っている事に遅く気付いた。
「……先生、それはなんだ?」
「あ、そうだそうだ。これね、君の着替えだよ」
「……なに?俺の?」
「なるほど、だから先に此処に呼んだ訳ね」
「ま、確かにおめぇはアレだからな……」
「仕方ないと言えば、仕方ないんだがな……」
先生が言うには、このカゴの中に入っている物は、どうやら俺の服らしい。
それと何だか、全員が妙な雰囲気を出して来た。
「レンノスケ、こういっちゃあれだけど……結構汚れているからさ」
「それは、そうだろう。このスーツはもう何ヶ月も使っていて、洗うなんて正に指の数だ」
「……仕方ないとはいえ、流石に不衛生ですもんね」
「……もしかして、俺って臭いか?」
「そ、それは………」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「沈黙は、そういう事なんだな。その、色々とすまなかった。皆には、嫌な思いをさせたな」
皆が凄く気まずそうな顔をしている。
臭いのは、中々嫌な筈だ。俺もごみ箱に捨てられた時は、流石に死にたくなったし。
何と言うか、申し訳ない事をしたな。
「れ、レンノスケはまず、連邦生徒会に設備されているシャワールームで先にシャワーを浴びて来て欲しいの。会議はきっと長くなるし、服もボロボロだし……」
「なるほど、そういう事か。ありがとう先生。もう3週間は入っていないから、実は体中が痒くてな」
「……マジか」
「3週間も………」
「ここの部屋に入ればいいのか?」
「うん、そうだよ。中に入れば分かるから!あとこれ、レンノスケの着替えが入ってる籠ね。道中急いで買ってきたから、サイズが合わないかもしれないけど……一番大きいやつにしたから、きっと大丈夫だと思う!」
「なにからなにまで……本当にありがとう、先生。直ぐ浴びてくる」
そうして俺は、シャワールームに入る。
ブラックマーケットの風呂事情は、何処か使われていない部屋の風呂場の水道水や、時折降る雨の水だ。
偶に溜水で飲むとついでに体を洗ってたな……余計汚れた気がするが。
雑誌で見た、シャンプーという奴。あれを俺は、何時かの時、店で盗んだ事がある。
それを、少しずつ、少しずつ、一ヶ月に2回程度で使用していた。
13の時まではそういった感じで過ごして来た。現在までは、少しだけ稼げた時は、ペットボトルを買って、それで済ましたりしていたな。
「……なんだ、これは────凄いな」
────シャワールームに入った瞬間。俺は、暫く開いた口が塞がらなかった。
驚いた、なんて言葉じゃ……足りないかもしれない。
すごい……全てが、綺麗な環境だ。全てが、整っている。
此処に来てから、驚いてばかりだ。全てが新しい、刺激が凄い。キリノさんみたいだ。
しかし、浸っている場合ではない。キリノさんたちを待たせているのだから、早めに浴びなければ。
俺は服を脱いで、籠の中に入っていた物を取ってそのまま一つのシャワー室に入る。
「シャンプー……コン、ディショナ―?それと……ボディーソープ?」
籠の中に入っていた物は、筒状の身体洗うやつだ。先生が使えって言ってた。
カタカナの文字は読める。ギリギリだが。
しかし……シャンプーは分かる。使っていたから。
だがコンディショナーとボディーソープは、一体なんだ?
「……シャンプーは頭で、身体にも使っていたが……コンディショナーは……いや、マジでなんだ?ボディーソープは……もしかして、実はこれが身体か?という事は……コンディショナーも、身体か?」
推理しても、馬鹿な俺では全く分からない。
時間も、そんなにないだろうから、早く浴びなきゃな。
「……えっと、確かこれを回して……あ、出っ────んっ、つめたいっ……」
水が出た事に嬉しいと感じた瞬間、その水が冷たくてちょっと吃驚した。
「あ……ああ、温かい……」
そしてそのまま段々と温かくなって、この浴びた事のない気持ちよさに、眠くなる。
「(すごく、温かい……温かいな……ああ、少し、もう少しだけ……この瞬間を────)」
とても……気持が良い。穏やかな、気分だ。
直ぐに浴びて、出なければいけないのに……脳が、心が、もう少しこの瞬間を感じていたいと、我儘を言っている、気がする。
『──────ぐすんっ、さ……む、いよ………だ────たす、け────』
「────……はぁ、下らない記憶だな……余りにも、下らない……はっ、だが……この温かさ、初めてで、今までとは対極だ……しかし、しかしだ………ああ、少し────」
────少し、昔を思い出してしまうな……。
今までは冬場ですら冷水だった。最悪な時は、水が凍って、長い時は……二ヶ月間は、身体を洗えなかったな……。
──────────これは、俺の遠い昔の記憶。
……その日は、風が強い冬の時期だった……な。
『────────さむい……さむ、いよぉ……ゆびが、いたい……あしが、うごかない……う、うあ"あ”、あああああ………だれか、たす……けて……う、うぅぅぅ……ん、なん……なんで、なんで……────』
────誰も、助けて何てくれないの?
────俺を、そんな目で見るの?
────どうして、俺を殴って、撃ってきてイジメるの?
汚れたダンボールの上に寝て、穴が空いた新聞紙とか大きな袋を巻いて寒さをしのいでいた時、だったか……。
あの時は、本当の意味で、何も分からなかったな。
どうやって生きていけばいいのか、どうやって寒さを凌げばいいのか、どうやってご飯をもらえるのか……。
本当に、なにも分からなかった。自分が置かれている環境も、知らない人が泣きたくなる程の暴力を与えてくる理由も。
『……なにも、わからないよ……おれが、なにをしたの……?なんで、こんな目に……なんで……』
────分かっているんだ、そんな事。
────きっと、俺が悪いんだ。
────俺が、生きているから、イケないんだ。
この時は、どうしてか自分のせいにしていたな。
……だけど、確か────。
『……ちがうだろ……ばか……ぜったい、生きてやる……いきのこって、やる……つよくなって、やる……』
────なにが、俺が悪い、だ。
────なにが、俺が生きているから、イケない……だ。
……そうだ、この時は何とか、立て直したんだ。
こんな理不尽な環境でも、只々【死にたくない】からって云う希望を持った理由で。
『ふぅっ…は、ふぅ……ばかなこと、考えるな……さむさが、なんだ……よわいことばなんて、はくな………ふっ、ふぅ……ふぅぅ……だ、だ……だい、じょうぶ……お、おれ、だいじょうぶ……いつか、きっと……おれは、ぜ、ぜったい……いたくない……指、いたいよ……つめたくて、いたい……ちがう、い……いたくなんて、ない………だいじょうぶ……おれは、だいじょうぶ……────』
────────────────
「────全く……腹が立つ記憶だ。俺の……弱い時なんて、何も出来なかった時期何て……くそ、ただ泣く事しか出来なかった、弱かった自分を、なぜ今……思い出すのか」
泣いて、うずくまって、弱音を吐いて、でも諦めるのはいやで、醜くも、汚くも、抗って、ここまで生きて来た。
────ただ、死にたくなかったから。
────こんな形で、何も分からず死ぬのは嫌だったから。
────何でもいいから、自分の生きる意味を、見つけたかったから。
だから、ここまで────力を付けて、カッコ悪くとも、生きて来た。
それで、結局俺は、死のうとした────これを下らないと言わず、何て言うんだ。
────そんな、下らない俺の人生を、何にも無かった、俺の世界を……貴方は、変えてくれた。
今こうして、先生の様な信頼が出来る大人に出会えた。
腹立つ事もあるが、何だかんだ会話が出来る奴等とも出会えた。
「────昔の俺に、伝えたいな。俺は……とても素敵な人に出会えたぞ」
……思う。俺の普通は此処の普通とは違っていたんだと。
食料も、空気も、環境も……人の優しさも。
全て、全て違っていた。違い過ぎて泣いちゃった位には違っていた。
「……誰よりも、幸せにならなきゃいけない………か」
取調室の時、キリノさんに言われた事を思い出す。
きっと……あそこからだろう。俺が────明確にキリノさんとの幸せを望んだのは。
見ず知らずの人の下らない昔話を、あの時の俺の心情を………よく頑張ったと、もう良いだろうと、キリノさんは泣きながら伝えてくれた。
それが俺は………堪らなく嬉しかった。
なんでこの人は、こんなに優しいんだと、もっと好きになった。
────下らない俺の灰色の人生に、色をくれた人。
「……まずは、この俺の臭い身体を洗ってから、また……キリノさんと先生には、感謝を伝えよう」
今、こうして俺は幸せに向かっている。
一人の少女に出会い、恋をして、幸せになりたいと、生きたいと願えた。
伝えるのならば、さっさと浴びてしまおう。
────そして忘れるな。
先生のお陰で、今こうしてシャワーを浴びさせて頂いているのを。
キリノさんのお陰で、俺の人生が良い方向に変わろうとしているのを、忘れるな────。
■ その間、他のメンバーは……。
「────それにしても、よくこんな許可が下りたわね?先生」
「ははは、リンちゃんに土下座でお願いして、やっとだけどね……」
「や、やっぱり……そんな裏側があったんですね……レンノスケさんの為に、本当に先生はお優しいですね」
「……いいや、そんな事はないよ。彼の様に苦しんでいる生徒の役に立つのが私の使命だからね」
……先生の発言に込められた想いは、それだけではない。
キリノに次いで、先生は彼の今までを知って、猛烈に心が軋む感覚に襲われていた。
彼が3歳の時には既に誰も傍に居なくて、生ゴミや虫、雑草を食べ……泥水や吐いた嘔吐物を啜る日々。
そこから更に、理不尽な暴力に家無し、寒さを凌ぐ物なんて精々段ボールや新聞紙。
考えただけで、想像しただけで、胸が痛くなる。
レンノスケが話す時の顔が、ソレが当たり前だったと云う声質が……その生気を感じない、死んでしまった瞳が……レンノスケのこれまでを明確に表していて、先生は泣きそうになってしまった。
なぜ、誰も彼に優しくしなかったのか。
なぜ、もっと早く己は此処に来なかったのか。
その問いに答える人なんて、最早今は誰も居ない。
どれだけ考えても、どれだけ疑問が生まれても、今となってはそれは過ぎた事なんだ。
だから、先生は想う。
彼に、強い身体と精神があって良かった。
彼が、今日のこれまで、生きたいと望んでいて良かった。
────────レンノスケがキリノと出会えて、良かった……と。
「……彼を今まで、そんな劣悪な環境に置いてしまった、その責任は果たさなくてはいけないから」
「……先生」
「ふふ……先生らしいわね」
「う、ううっ……はいっ!彼は、レンノスケさんはずっと、一人で苦しんで、ずっと頑張って来ましたから……うう、いけません……また、涙が……」
「ふふっ、よしよし……キリノは本当に優しい子だね……ああ、そうだ────ね、キリノ」
「ぐすっ……は、はい。なんでしょう?」
先生として、大人として、先生はキリノに感謝を伝える。
「……あの子を、レンノスケを救ってくれて本当にありがとう」
「そ、そんな!本官はただ、彼が困っていたところを少し手助けしただけで、彼は自分で再復帰したので、本当に本官は何も……当たり前の事をしただけというか、その……」
「それがキリノにとって普通だった事でも、彼にとってキリノがしてくれた事は特別だったんだ。先生として、一人の生徒が救われたことは、何より嬉しいんだ。キリノも、よく頑張ったね」
「せ、先生……────はい!ありがとう御座います!」
形がどうあれ、キリノがレンノスケを救った事実は変わらない。
だから、最大限の感謝を、キリノに────。
かく言うキリノも、尊敬している人物の一人である先生にこうしてお礼を言われる事に若干の気恥ずかしさを感じると共に、自分が一人の生徒を救えた事に嬉しさと喜びが隠せないでいた。
彼が、レンノスケが幸せになりたいと、生きたいと望めた理由が自分に起因している事に、それが果てしなく恥ずかしい事だという気持ちと表情もまた、隠せないでいた。
「……それに、皆にも謝らなきゃね、ごめん。先に席を外しちゃって……キリノが居たとはいえ、レンノスケは大丈夫だった?大変じゃなかったかい?」
「あ、それは………」
「────大変何て、言葉じゃ足りない……はぁ」
「ええ、本当に……」
「先生、あたしは決めた。あの野郎にはいつか絶対に立場ってもんを分からせる……ってな」
「……ケケケ!」
「あ、あはは……や、やっぱり、大変だったんだね」
一体、どんな事があったのか……先生がそう聞こうとした────瞬間だった。
「────おおおぉっ?!」
「!!?」
「れ、レンノスケさんの声!?」
突如、シャワールームからレンノスケの悲鳴に近い声が轟いた。
全員が、驚くと共に疑問が頭の中で生じた。
危険性はない、密閉したシャワールームで、しかもあのレンノスケの悲鳴……?
なにかが起きたのは、確実だった。
「レンノスケさん!レンノスケさんっ!一体どうしました!?」
「レンノスケー、大丈夫ー!?」
「あ、キリノさんと先生の声。いや、全然大丈夫だぞ?」
キリノと先生の呼び掛けに、レンノスケはシャワールームのドアの出入り口、つまりドア一つの壁越しから返答をする。
余りにも早い返答に若干驚くも、レンノスケの声質が先程の悲鳴とは違い普通である事に安堵を見せる先生とキリノ。
だが、他の者達は特に心配する様子は見えない。
……何か、とっても、嫌な予感がするからだ。
「そうだ、聞いてくれ!凄いんだ!」
「す、すごい?」
一体、なにが凄いのか?
キリノの疑問は………レンノスケの答えによって、明かされる。
「ああ!このコンディショナーという奴、ちん○んに使うのか?取り合えず洗ったら、ちんち○がテッカテカになったんだ。凄いぞ!」
「────はへぇ??」
キリノと先生以外の嫌な予感が的中。
ただ、ただただ茫然とするしか、出来なかった。
「────────」(一時的な思考停止)
「……あ、あらら」
「あの、馬鹿……セクハラで逮捕だ」
「……最低」
「最悪だ、あいつ……」
「なあ、なん……あ、は、はぁ……!?」
十人十色、それぞれが違った反応を見せる。
キリノは余りの予想外に対し、脳がフリーズ。
先生は少しだけ顔を赤くさせ、レンノスケの行動に少し苦笑い。
カンナ、ヒナ、ツルギの三名は顔を先生以上に赤くさせ、怒りを露にする。
ネルはこの中で一番の赤面を披露し、怒りを超えて動揺が勝っていた。
「ん?おい、聞こえてるか?コンディショナーでち○ちんが────」
「うるせぇぇぇ!!だまれぇぇッッッ!!!テメェはさっさと浴びて来ぉいっっ!!」
「あ、すまん。そうだな、直ぐ浴びる」
そうして、レンノスケは颯爽とシャワーをもう一度浴びに言った。
「はぁ、はぁ、はぁ……あ、あの野郎……」
「………これは、教育が大変だなぁ」
「………同情するわ、特に中務キリノにはね」
「あいつは、コンディショナーの使い方も知らないのか……」
「城ヶ崎め、どうしてコンディショナーを、ちん……~~~ッッ、ああクソ!本当に最悪だ……っ!」
「────────…………」チーン
……コイツ(レンノスケ)には、必ずいつか目にモノを見せてやる……っっ!
キリノと先生以外の四名は、自身の一つの今後の目標として、そう心に誓った瞬間であった。
■ そして数分後……
“ガチャッ……”
「……キリノさん、先生、あとお前ら、すまん待たせた」
ふぅ、色々あって、少し遅れてしまった。最高だな、シャワー。
シャワーって、あんなに気持ちよかったんだな……水も温かくて、コンディショナーも気に入った。面白いぞ、あれ。
そして……先生から頂いたこのスーツ……先程まで着ていた俺のとは雰囲気は似てるものの、その着心地は全くと言って良いほど違う。
凄いな、此処は。服まで違いを見せてくる。
だが……少し、いや、かなり?むぅ……ちょっと、胸が、キツイ……いや、全然いいんだ。少し、苦しいが……。
「先生、ありがとう。服まで用意してくれて……この白いシャツ?が、ちょっときついけど……」
「さ、さっぱりしたね!レンノスケ、ふ、服は、その、ごめんね、やっぱりサイズは合わなかったか。レンノスケ大きいもんね……君が着慣れてそうなスーツを適当に選んできちゃったから、ごめんね」
「いや、謝らないでくれ。むしろありがとうだ。まさか、そこまで考えて、しかも買ってくれたなんて……先生には、感謝しっぱなしで申し訳ない」
「そ、そうだね~………うん」
「それにしても、久しぶりにさっぱりした。どうだ、キリノさん。これで臭いはしなくなったと思うだが……────ん?」
「………ちっ!!くそ!」
「はあ………」
「け、ケケケ………ケヒッ」
「貴様ァ……なぜそう、はあ……」
キリノさんを除いた、全員が何か俺に妙な視線を向ける。
なんだ?さっき、コンディショナ―の奴でも美甘に今までにない以上の声で怒られたし……何かしたか?
それに、キリノさんから反応が……いや、まず何処に行った?
………ん?尾刃と先生の後ろに、とても可愛いくて素敵な人影が────あ、やっぱりキリノさんだ。でも、なんで其処に?
「なぁ……何でキリノさんは、尾刃と先生の後ろに隠れているんだ?」
「は……あ、え、えっとぉ……そ、そのぉ……とても綺麗に、なり、ましたね……」
「あっ❤️……ありがとう、キリノさん。とても嬉しい……けど」
縮こまって、先生と尾刃の後ろまで移動して、顔を隠すキリノさん。
俺の問いに、そわそわとした感じでキリノさんがそおっと出て来た。
その行動がもう可愛い。好き。
しかし、キリノさんの顔が、凄い赤くなっている事に、気付いた。
「キ、キリノさん?凄く顔が赤いぞ?もしかして、体調が悪いのか?」
「え!?ち、ちち、違うんです……でも、でも………あ、あなたの、せいです……」
「え?俺?」
いや、待ってくれ。俺は一体、何をした?
え、いや……シャワー浴びただけだよな?それと、コンディショナーでちんち○んがテッカテカになった事を報告して……。
……まずい、本当に分からん。どうしよう。
でも、キリノさん、俺のせいって言ってるし……。
────……よし、ここは一度、聞いてみるか。
「すまない、キリノさん。心当たりがないから、俺が何をして、キリノさんを困らせてしまったのか、説明してくれないか?」
「は────ちょ、い、いやっ!そ、それは……あのぉ……」
「キリノさん、俺は、キリノさんが俺のせいで顔を赤くしてしまった(?)事には、本当に申し訳ないと思っている。でも、俺は馬鹿だから、なんでこんな事になったのか、本当に分からないんだ……だから、教えてほしい。キリノさんの、素敵なその口から」
「あ、あううぅぅ……//////////」
「先生。この犯罪者に発砲許可をくれないかしら?」
「もう……いいよなぁ?こいつは、もうここで……殺っちまおう?先生……なぁ」
「もう殺されても、文句は言えん……」
「……セクハラで逮捕だ」
「あぁ?なんだお前ら。またいきなり銃を向けやがって、いい加減に殺すz………いや、お前等もよく見たら顔が赤いな?」
「レ、レンノスケ?一旦お口チャックね。それと皆も殺気は一度しまって。その、レンノスケもわざとじゃないんだから、ね?」
「………レンノスケさん……わ、わたし、お、おし、教えます……」
先生がそう言うと、三人は悔しそうに銃を抑える。
そして、キリノさんが震えた声で教えると言った。
「本当か?すまない、キリノさん。教えてくれることに、嬉しく思う」
「キ、キリノ……無理は、するな」
「……私が言おっか?キリノ。ちょっと恥ずかしいけど……」
「いえ、ここは……レンノスケさんを教育する、私が……彼に伝えます……ッ!」
キリノさんは俺に顔を真っ赤に染めながら、近づいてくる。
よく見れば、少し涙目だ。とんでもなく可愛いが、心が痛い。
「い、いいで、いいですか?レンノスケさん……そ、そのですね?ち、ちっ、ち……」
「……ち?」
「ち、ちっ、ちん!────ちんち○はっ!人前では、言ってはイケないんですよっっ!」
「え?ちん○んが?どうしてだ?」
「ちッっ……ど、どうして!?そ、それは、人前では、恥ずかしいからで……そのぉ……セクハラでぇ……」
「ち○ちんが、せくはら?言うのがいけない事なのか?」
「ど、どっちもダメですッ!!特に、ろ、ろっ、露出させたらっっ!!公然わいせつ物で……だ……だめ、だめです……からぁ……」
「ろしゅつってなんだ?ちん○んを……ろしゅつ?で、公然わいせつ……物?」
「あの、あのぉ………あ、あうぅぅ……/////////」
「ごめんキリノ。ちょっとッ見てられない!!いい?レンノスケ。その言葉は人前で言ってはいけないし、出してもイケないって事なんだよ………」
「あ、なるほど、人前で言うと恥ずかしいし、出すのもイケないのか。色々とセクハラって奴なんだな、ちんち○は。これは、知らなかった」
「その口を閉じやがれテメェ…………」
キリノさんが言うには、ちん○んは人前で言ってはいけないし、出したらもっと駄目みたいだ。
セクハラって奴がまだ分かんないから、いつか教えてもらおう。
キリノさんが言った直後に、先生と尾刃が良くやったと言ってキリノさんを撫でる。良いなぁ、俺も撫でたい……。
しかし、キリノさんの反応を見て、確かに駄目なんだと思った。そうか、恥ずかしいのか……だがまずは。
「また、キリノさんと先生には教えてもらった。嬉しいな、ありがとう、キリノさん、先生」
「………はいぃ」
「は、ははは……うん」
それにしてもだ、ちん○んがダメなら、何て言えば良いんだ?
俺のちんち○は、それ以外にも名前があるのか?きっと此処では、ち○ちんが言ってはいけない言葉なのは確かなんだ。
きっと、それ以外の呼び名がある。そういう事だろう。俺は、少し頭を使うぞ。
ちん……俺の……うーん……あ、そうだ、俺の名前を使えば良いのか。
「───ちんち○が駄目なら、ちんスケはどうだ?これは、ち〇ちんと俺の名前を合わせてみたが。どうだ、中々良くないか?ちんスケ」
「何言ってるんですか!?本当に何言ってるんですか!!??」
「ふっざけんなテメェごらぁ!!駄目に決まってんだろうがぁ!!!!!!」
「君は何をどうしたらそういう発想に至るのかなぁ!?」
「もう看過出来ないレベルのセクハラだぞ貴様ァ!!」
「え?だめなのか?俺的に、かなり良いと思ったんだが…むぅ……」
「はぁ……頭痛が、酷い。頭が……究極に痛い……これから会議なのに……」
「け、けけ……無知と云うのは、ここまでの惨事を巻き起こすのか……」
全員から、とんでもない怒りの声を喰らう。
……いや、そんなに怒るか?先生も怒ってくるし……。
キリノさんは……顔を赤くしながら頬っぺたを摘まんで引っ張って、ちん系の発言はもう言っちゃダメって一杯言われた。じゃあ、もう言わないぞ。
言ったらまた怒られそうだから言わなかったけど、顔を赤くして頬っぺたを引っ張りながら怒ってくるキリノさんは滅茶苦茶可愛い。凄い、可愛いんだ。
「くそ……疲れた」
「ん?俺は疲れてないぞ、美甘」
「……凄いな、もう怒りすら湧いてこねえよ……」(疲労困憊)
「は、はは……はぁ」
「先生……先生が席を外して1時間、こいつはずっと、ずぅっと!この調子だったんです……」
「うん、なんか……仕方ないよ、うん」
「も、もう、行きましょう………恐らく、連邦生徒会の連中の事、かなり待たせている筈だし」
「じゃあキリノさん、一緒に行こう」
「あう………もう、はい……」
そうして俺たちは、連邦生徒会って奴等が待つ会議室まで歩いて行った。
……なんだか、皆が凄い疲れてる。大丈夫か?
■
「────皆さん、お待ちしておりました」
「……うん、待たせてごめんね、リンちゃん」
「誰がリンちゃんですか。全く……しかし、皆さんとてもお疲れの様ですね……今回は本当に、ありがとう御座います。彼を拘束して頂けるなんて大役を任せてしまって」
「ええ……まぁ、うん、そうね……」
「……流石に、疲労が見えて来たな……」
「あたしは、今日何回コイツにイラつかされたんだ……?」
「(??何か、違和感が……)……そして、貴方が、あの城ヶ崎レンノスケ……ですか」
「ああ、そうだ……お前は誰だ」
「ッ……わ、私は、連邦生徒会【代行】七神リンと申します……自己紹介が遅れ、申し訳御座いません」
全員で会議室まで進むと、メガネを懸けた、とんでもなくおっぱいが大きい人が会議室の前で待っていた。
どうやら、この連邦生徒会の今のトップらしい。という事は、凄い人だ。挨拶を、しよう。
「そうか、俺は城ヶ崎レンノスケだ。何処にも所属してないが、今日からシャーレに加入するぞ、宜しくな七神」
「え……あ、は、はい……」
「ところで七神……お前、俺が今から言う事をよく聞いてほs────」
「レンノスケ。お願い、今は自分から何もしないで、大人しくしてて、出来る?」
「先生の言う通りです、レンノスケさん。どうか此処は私達に任せて下さい、大丈夫ですから」
「む?ああ、分かった」
とりあえず偉い奴は褒めてみる感じで行こうとしたら、キリノさんと先生に止められた。
七神は何か、信じられないモノを見た感じの顔で俺を見てくる。
そして、皆に向けて発言をする。
「す、すみません……本当に彼が、あの【裏社会の怪物】と謳われる存在なのでしょうか?」
「ああ……困った事に、そうなんだよ……困った事にな」
「それは、此処に集う面々が保証する。彼が怪物、城ヶ崎レンノスケで間違いないわ」
「そ、そう、ですか………ちょっと、信じられませんね……いえ、皆さんを疑っていると云う訳ではないのです。ただ……」
「無理はねぇよ、あたしらだって、最初は警戒していた……それが今となっては……く、くそぉ……」
「リン行政官殿、私が先程お伝えした情報は……残念ながら、全て事実なのです」
「……そこに居る、中務キリノさんに惚れているのも、ですか?」
「はい────紛う事なき事実です。本当に……信じられませんが」
「あ……あうぅぅ、そんな感じで言われると……恥ずかしい…ですよぉ……」
「もっ………………」
「────え?」
「う、嘘、本当に?」
「お前が……何も言わなくなった、だと……?」
「レ、レンノスケさ~ん!」
……あっぶなーい。言ってしまう所だった……。
違う違う……『ここでは』言わない。
危うく、俺の考え、いや……【秘策】が漏れる所だった。
「そう、言うな七神……(口に出しちゃうから)」
「し、信じられねぇ………」
「成長してるね、レンノスケも」
「な……何と言うか、拍子抜けというか……」
「……リン行政官。城ヶ崎レンノスケは中務キリノという絶対的な存在が居て、こうして此処まで足を運んでいるに過ぎないのよ?」
「空崎ヒナの言う通りだ、リン代行。何があっても絶対に油断するな。コイツの実力は……災害級であり本物だ……」
「正直、あたしらが束になって、やっとか、それとも……そんくらいヤベェ奴なのに変わりはねぇ。本当に腹立つが……一瞬でも気を許せば────此処は地獄と化すぞ」
「ッッ!……承知しました。二回目になりますが、決して皆さんの言葉を疑っている訳ではありません。ただ少し、気が緩んでしまいました。申し訳御座いません」
「ふふっ、リンちゃんが怒られたー」
「(イラァ……)先生、あとで、お話が……」ニコニコ
「あ………」
なんだか俺の事を言っているが……そういえば、俺は【怪物】と言われているのか。
少し思う。ブラックマーケットに居た時も言われた【怪物】という言葉。
正直な話……別に、悪い気はしていない。俺の新しい名前と想えば、そう言われ続ければ、気に入りもする。
そんな事を考えながらも、俺たちはその【会議室】とやらに入っていった。
■
「────皆さん、大変お待たせいたしました」
サンクトゥムタワー、その一つの会議室である部屋に入ると同時、リンが全員に向け発語する。
この会議室は広く、真ん中が空洞となり其処を囲むような形で連邦生徒会のメンバーと各自治区代表が居座る様になっている。
ゲヘナ、トリニティ、ミレニアムの三大校が一堂に会してる超異常事態。ゲヘナとトリニティに関しては最近、エデン条約での大事件が起き、未だピリピリと問題事を抱えている中、こうして緊急で集まってくる程の事態。
その他にも、レッドウィンターやアビドスも出席している。その中で、アビドスには【奥空アヤネ】と【小鳥遊ホシノ】の二名のみ出席。
「今回集まって頂いたのは他でもない。彼、城ヶ崎レンノスケの処分について議題していきたいと思います」
連邦生徒会特例緊急会議。
各室長と各校の自治区を治める代表が集まる、今までにない異例。
この状況、マコトを含め、各自治区の代表たちは固唾を飲み、全員が緊張の糸を極限まで張らしている。
理由として……彼、城ヶ崎レンノスケの起こして来た事が起因している。
挙げられる狂っている戦歴に、各々の自治区出身の不良達がブラックマーケットにて次々と惨い有様に変えられ、最近では大手企業と正面衝突し半分以上の戦力を破壊し撃退させている。
正に、上げたらキリがない。裏社会全体で恐れられ、それは表世界である各自治区の代表たちも、彼……城ヶ崎レンノスケを【最重要超危険人物】の対象として、常に危険視していた。
トリニティやミレニアムなどは、それらの影響を受け、以前よりもブラックマーケットへの侵入を深く禁じ、警戒を強化していた程。
そして忘れてはイケないのは、これを彼は【単独】で行っている事。
これがかなり重要で、最悪なのだ。各校が誇る最強戦力の実力を、遥かに凌駕するほどの戦歴を、彼は常に挙げていた。
そして不気味なのが、各自治区の情報網が躍起になって捜査しても、彼はその足跡すら残さない。
ミレニアムの【ヴェリタス】と【エンジニア部】と共同で取り組んだ超小型ドローンの操作では、姿が確認できてもそのコンマの速度で即座に銃撃で破壊される始末。
彼の実在と姿は明かせれるが、捜査しても破壊され見つからない。そして気付けばとんでもない事件を巻き起こす【意思を持つ災害】の様な男……。
ブラックマーケットから一歩も出ないのが、不思議であり、救いであり、何よりも不気味で恐ろしい……。
〈触らぬ神に祟りなし〉
ブラックマーケットでは、彼に挑もうとすれば、それは正に『明確な死』を意味する。
裏社会の界隈で生まれた暗黙の了解。彼が15~16になる頃には、誰かが彼に挑み凄惨な目に遭ったという話はめっきり無くなった。
………ただ、狙われて半殺しにされた。
こういった話は、今でも新しい確かな話だった。
「……では、お入りください」
「──────…………」
“ゾクッッッッッ!!!!”
────城ヶ崎レンノスケが入場すると同時、一気に場の雰囲気が更に重くなった。
此処に集う全員が彼を一望し、実際に確認して確信に至った。
彼は、本物だ。本物の……【怪物】城ヶ崎レンノスケだ……と。
その光を見せない刃物の様な鋭利な瞳に、キヴォトスでも類を見ない大きな身長に華奢なように見えて筋肉は確かに存在するその体格。
顔は常に無表情で、隙が全くない。
そして何より………この会議室を圧し潰さんばかりの強大な圧力。
此方が警戒心を見せたと同時に。彼から発せられたその重圧に……全員が冷や汗を掻く。
一挙一動、何気ない一つの行動が最悪を引き起こす。全員が彼を一瞥し、そう確信した。
現に今、キヴォトス最強格達が完全武装し、その構えから全くの油断は感じられない。
説明すると……【ゲヘナの白い悪魔】、【トリニティの戦略兵器】、【ミレニアムの約束された勝利の象徴】……そして極めつけは【ヴァルキューレの狂犬】が、隙を見せぬ完全武装状態という事だ。
一見、過剰戦力にも思える。
しかし、相手が相手……きっと、これでも足りないのだろう。
………────だが、一つ気がかりなのが……城ヶ崎の隣を歩く一人のヴァルキューレ生。
なぜ彼女の様な普通の生徒が、この場に?しかも、あの怪物を先導して……いや、そもそも何故、先導している……?
「………まさか、本当に?」
連邦生徒会の面々と各自治区の代表たちが困惑してる中、一人……【不知火カヤ】防衛室長は、誰にも聞こえぬ程度の声音で呟く。
「それでは今お越しいただいた皆さんは、指定された席にお座りください……」
七神リンがそう告げ、全員が【特定】の配置に位置する席まで移動する。
その席は正に空洞の位置にあり、真ん中に二つ、そして後ろに三つの席がある。
これは、七神リンが意図的に設置したものであり、城ヶ崎レンノスケが行動を起こした際、即座に4人が対応にあたれる為である。
「む……此処に座るのか?なんか……ムズムズするな、キリノさん」
「レンノスケさんお願いです……此処ではどうか、大人しくしていて下さい……」
「む?ああ、任せろキリノさん。俺には秘策があるんだ」
「だ、だからそれが何なのか、お願いですから教えて下さいよぉ……いやまず、やらないで下さい……お願いですからぁ」
「ごめんな、キリノさん……本当はキリノさんには教えたいんだ、けど……時期に分かるから、な?」
「何が「な?」ですか……もぉ」
────なんだ、今のは?
「城ヶ崎、大人しくしろ……」
「あ”?………………………………分かった」(不服)
「レ……レンノスケさん!」
「少しは、成長したようね」
「あたしには全然そう見えねえんだが……」
「えらい、とても偉いよレンノスケ……」(感涙)
「あ、あの……」
「あぁ、申し訳御座いません。どうぞ続けて下さい」
「え、ええぇ……?」
────いや、本当に、なんだ……?
思わずツッコみたくなる雰囲気。
しかし。早々飲み込まれたりはしないよう気を付ける。
「……これは一体、どういう事ですか?説明を求めます」
「早瀬ユウカさん。それは今から説明をしますので、どうかお静かに………先生、その……お願いします」
「うん、じゃあ私から説明せてもらうね。まずは、今回集まって頂いた皆には感謝を。特にトリニティとゲヘナの皆は大変な時期だけど、こうして集まってくれて本当にありがとう」
「いえ、全く問題ありません。内容が内容ですし、それに────先生からの緊急招集なのですから」
「……ああ、そうだぞ先生。今回は……あの【怪物】が遂に出現したとの事だ。我々もそれは、急いで飛んでもくる」
今回の出席者の一人である【桐藤ナギサ】と【羽沼マコト】が、先生の礼をそれぞれの形で返答する。
いつになく落ち着いた雰囲気のマコトに、何やら妙な感覚に陥る面々。
しかし裏を返せば、それほどの重大さ、という事になる。
レンノスケがしてきた事は、それ程までに常識から逸脱しているのだ。
「────それじゃ、始めるね。まず……レンノスケがどうして、この時期になって現れてくれたかを説明────」
「────待て」
突如、先生の口頭を遮るレンノスケ。
辺りが一瞬静寂に包まれる中、レンノスケはそのまま続けて言葉を繋ぐ。
「少し待て、先生。俺に、少し話させろ」
「え?い、いや、レンノスケ?君は一体、何を……」
「レ、レンノスケさん……?」
「すまない、キリノさん、先生……この瞬間しか、考えられなかった……許してくれ」
本来なら、キリノが直ぐに止める。
だが……何故だか分からないが、今のレンノスケは……その物言いを許さないように感じて、キリノは思わず口を畳んでしまった。
そうして、レンノスケが据わった席に直ぐに立つ。
「────少し、好きにさせて貰おう」
「おい、何を勝手な事を────ッッッ!!」
“ブワァッッッッッ!!!!!!”
瞬間────この場を襲う例えようのない重圧。
それは、キリノと先生を除いた、この場に集う全員の【個人】に当てられた絶対的な【殺意】。
「お前ら全員────何もするな」
余りにも低く冷たい、絶対零度の声が会議室に轟く。
一瞬、ほんの一瞬……全員が彼が発するその圧から、確かな【死】を悟った。
今動けば、何かを発言すれば、待っているのは────………想像に容易かった。
しかし、ヒナ達が動かない訳にはいかない。
今の彼は、普通ではない。しかしキリノが全く止めなかったのも何かしらの理由がある筈。
考えて、しかし少しでもアクションをすれば、何が起こるか分からない。
────極限の緊張状態。そして10秒が経つ。
「あ、あの……レンノスケさん?何を為さっているのですか……?」
だが、ここでキリノが動き出す。
キリノはいきなりレンノスケの雰囲気が変わって戸惑いを隠せなかったものの、それは一瞬だった。
裾を引っ張り、レンノスケの行動と言動に疑問をぶつけた。
それを見た周りの生徒達は、全員が全員……確実に終わったと感じた。
ティーパーティーも、万魔殿も、セミナーも……全員が、そう感じた。
しかし、その絶対的な殺気は、キリノが話しかけると同時にパッと消え去った。
「……ふぅ、すまない。少し……威嚇というモノをしてみた」
「い、威嚇……?威嚇!?は、はいぃ!?な、なぜ!?」
「言ったろ?俺には考えがあるって、【秘策】があるって」
「い、言いましたけど……そ、それで、なぜ皆さんに、威嚇なんかしたんですか!?それに本官は、なにも感じなかったんですけど……」
「ああ。キリノさんと先生には【当てなかった】からな。それと……理由だが────よいしょっ」
「────────へ?」
────突如、レンノスケがキリノの手を掴み、そして。
「────────は、え?え?え?えぇ………はへぇ???」
キリノを持ち上げ……───お姫様抱っこを、したのだ。
「お前等には、尾刃が言っても伝わらなかったようだから、もう俺が言う」
そして……レンノスケが、声高々と、宣言する────。
「────俺は、キリノさんが好きで、惚れている。これは本当だ。信じろ。あぁ、それと【警察】を目指す者だ。お前等とは仲良くしたい。宜しくな」
────この問題児の為に開かれた会議は、この問題児のトチ狂った行動によって、破壊されていく。
ちゃんと破壊できませんでした。すみません。
次回はもっとカオスになりますので、よろしくお願いします。
今作は、『ギャグ』と『若干のシリアス』をモットーに執筆して参ります。
ほら、曇らせ系って……究極に素敵な物語が、このハーメルンには一杯あるしですし。
コメント、脱字誤字、評価ここすき、いつでもお待ちしております。
そういえば、皆さんはサツキちゃんとチアキちゃん引きましたか?
私は当然……引きました。サツキちゃんが目当てで、20連で出ました!
勿論チアキちゃんもゲットしました!(天井)
今回の勝負……僕の勝ちです。
でも……マコトたん……所持してないぽ……ほしいんだぁ。
……やるか。
☆補足
誤字がかなり酷かったですが、見つけ次第修正いたしました。気を付けてはいるのですが、どうしてもミスをしてしまいます。皆様には本当に申し訳ないと思っております。
また、誤字を見つけましたら、コメントでも誤字報告でもどこでも構いません。教えて頂けると幸いです。宜しくお願いします。
アンケートです。どうか、御投票を宜しくお願い致します。
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レンノスケ、配信者に成る。
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16歳組によるバレーボール同盟
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キリノと二人旅
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提示版(レンノスケだけど、質問ある?)
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レンノスケの過去編
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本編:カルバノグの兎編