怪物は、真面目な君に恋をした。   作:カブトムシの相棒

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大変遅くなりました!家の都合とかが重なり、執筆が出来ない状況でストレスがエグイです。

今回は3万文字です。ちょおっと多いので、見るの大変かもです。すみません!



後1,2話でエデン条約4章に進む予定ではあります。


………構想は練ってあるのですが……如何せん、ギャグがないんですよね。



では、本編です。



怪物、大暴れ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────俺は、キリノさんが好きで、惚れている。これは本当だ。信じろ。あぁ、それと【警察】を目指す者だ。お前等とは仲良くしたい。宜しくな」

 

 

 

「は?」

「へ?」

「うへ?」

「ん?」

「キ?」

「は?は?……ふぅ………はぁ?」

 

 

 

 

────瞬間。この会議室に流れる時が、止まった……。

 

 

 

 

上から【早瀬ユウカ】、【桐藤ナギサ】、【小鳥遊ホシノ】、【七神リン】、【羽沼マコト】、【不知火カヤ】の六名が、何とか困惑の声を出すが、それだけだった。

 

 

レンノスケの余りにもイカれている言動に、集まった連邦生徒会の面々に各自治区の代表達、そして今まで監視をと警戒を続けてきたネル、ヒナ、ツルギ、カンナ、先生も……今回見せたレンノスケの奇行に、脳の処理が追いつけないでいた。

 

 

 

 

────コイツは一体、何を言っているんだ……?

 

 

 

 

全員の思考が、一時的に合わさった瞬間だった。

 

 

この場に集う全員の思考が、止まる────。

 

 

 

────だが一人、お姫様抱っこをされたキリノのみ、ギリギリだが意識を保つことが出来ていた。

 

 

 

「へ……へ……は、はぁあ……はわぁ……?」

 

 

 

レンノスケ1番の被害者であるキリノは、唐突過ぎる流れに、開いた口が塞がらず妙な声が漏れる。

 

 

 

「ふっ、キリノさん。どうしたんだ?そんな可愛い顔をして。そして可愛い声を出して。本当に可愛いな?キリノさんは……それにしても、軽いな、キリノさんは。だけど柔らかくて、俺の手はたった今、洗えなくなっちゃったぞ?流石キリノさんだ、ありがとうな、可愛い」

 

 

 

そして……この意味不明な空間を作った存在であるレンノスケは────誰が聞いても分からないであろう理解不能であり意味不明な言葉を並ばせ、自分は何の関係もないかの様な態度を見せる。

 

 

 

 

 

 

 

そして、場面は変わる────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■レンノスケside

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(────決まった……)」

 

 

 

 

全てが、綺麗に、決まった………。

 

俺の【秘策】それは────俺のキリノさんに対する『想い』を、この会議室に集まってる奴等に伝える事。

 

これは、尾刃がこいつ等〈連邦生徒会〉って奴等に、俺のキリノさんに対する気持ちを信じて貰えなかった辺りから、考えていた事だ。

こいつ等が俺の事を信用できないのは、まぁ、理解してやる。俺はずっと、そういう怖い存在として扱われていたのだから、仕方ないっちゃ仕方ない。

 

 

────だが、キリノさんが好きという俺の気持ちは、信じて貰わないと困る。

 

 

なぜか?それは俺の、全てだから。彼女はもう、俺の人生になっているから。

 

俺の恩人であり、理解者であり、大切な存在であり、好きで、好きで好きで堪らない、大好きな人だ。

 

その俺の想いを否定だと?信じられないだと?

 

ふざけるなと云う話だ。俺からすれば。

 

 

 

んで────秘策を考えた。そして、見事にしてやった……ふっ、完璧だ。

 

 

 

そして現在、俺は世界で一番可愛いキリノさんを、数年前に雑誌で読んで発見した〈女性が喜ぶ行動の第1位〉である『おひめさまだっこ』と云うやつをやっている。

これは、俺がキリノさんにやってみたかった事だ。これは好きな人にやると、とても喜んでくれるらしい。つまりキリノさんだ。

 

実際にキリノさんを抱えると、俺は今、幸せの絶頂に居るんだと実感する。

いや、本当に。凄いんだ、これ。

 

初めてやって、上手くいくか不安だったが、キリノさんが軽すぎて簡単に上手くいった。

 

キリノさんに触れると、その細い腰、柔らかい身体、ぷにぷにしてる腕………全てが、愛おしいと脳が感じる。

 

 

 

 

 

「……え?は、え……?あ……はへぇ???」

「ん?どうした?キリノさん」

 

 

 

キリノさんが、俺に可愛らしい顔を作って、俺に話しかける。

 

 

 

「あ────あなたは……な、なに……わた、わたわた、私に、今、なに……何をしてるか、りっ、りりっ、り……理解、してる……のです────か??」

「ああ、勿論。キリノさんを、お姫様抱っこしているが?」

 

 

 

 

そう言うと、キリノさんは顔だけでなく、全身を真っ赤に染めて────俺に向けて、叫ぶ。

 

 

 

 

「は────はわひゃぁぁぁ~~~!!????///////ばっ、ばかぁ!!レンノスケさんのっ!ばかぁ!!わたしっっ、わたし、だって、まだお友達で……~~~~っっ!!れ、れれ、レンノスケさんっっ!!!い、言いました!私、言いましたよね!?ま、まずは、順序良く、お、お友達からでっ、それで、それから……────い、いやっ!!まずは、は、はやくおろしてっ────」

 

「────キリノさんッ!」

 

 

 

“ギュゥ!”

 

 

 

「はうぅっ!!?」

「キリノさん、苦しくないか?」

「く、苦しくは、ない、ですけど…………いっ!いやッ、ちがくて、そうじゃなくってッ!!な、なん、なんでですか!?なんでもっと強く、抱きしめてるんですか!!バカバカばかばかばかばか────ひゃうぅ!?ち、ちかいです、顔がっ!ちかいですよぉ!!」

 

「キリノさん、もう一度、言うからな。俺は、キリノさんが【好き】だ。今日初めて会って、交流して、俺はキリノさんの事が【大好き】になった。友達になって、俺は本当に嬉しかった。だけど、やっぱり俺は…………キリノさんは、じゅんじょ?とか、何とかって言ってたが、俺は【恋人】になりたいんだ」

「────っ、は……」

 

 

 

強く、強く。キリノさんを抱き寄せる。

 

 

俺は今、シャワーを浴びて、綺麗になった。つまり絶好調だ。

 

 

 

 

────全てが、決まったと思った。

 

 

……この時までは。

 

 

 

「────か……レ……ス……」

「ん?」

 

 

 

キリノさんが、ブツブツと何か呟いている。

 

よ~く、聞こえる様に耳をキリノさんの素敵な顔と口まで近づけようとした、瞬間だった。

 

 

 

「ぐすっ……レン……の……ば……さん、の────ッッ!!レンノスケさんのっっ!おばかぁぁぁあっっ!!」

「ぬっ!?!?!?」

 

 

キリノさんが……泣きながら、俺の胸をボカ、ポカと……その可愛い手で、叩いてくる。

 

……可愛い……けど、俺は、もしかして……何か、不味い事を、してしまった、気がする。

 

だって、キリノさんの表情が───辛そうなんだ……。

 

 

 

「………く、うう……────~~~~~~~~ッ!!貴方はまた………また!そんな事……そんな事ばっか言ってぇ~!!レンノスケさんなんて、今日私と会ったばかりでっ、わ、わた……私の事なんてっ!!なんにも知らないくせにぃ!!勝手な事、勝手な事ばっか言って!自分、ばっかりぃ────ひぐっ……ぐずっ……」

「き、キリノさん……」

「わたし……真剣に、考えて……貴方と、レンノスケさんと……わた、私……このままじゃ、だめだから……さっきから、ずっと……考えているのに……貴方は……レンノスケさんはっ!さっきからずっと!ずぅっと………自分ばっか、言いたい事言って……」

「あ……ちが、俺は……キリノさんの、気持ちを────」

「……全然、分かっていません……少しは……少しくらいは、私の……私の、気持ちも……考えて……下さいよ……ばかぁ……ぐすっ……」

「キリノさん……俺は…────」

 

 

 

……泣かせてしまった。

これは、俺のせいだ。当たり前だが。

 

心が、痛いな………大切な人を泣かせるって、こんなにも、辛いのか……。

取調室の時とは、違う涙を見せる。これは……辛い時に流す涙だ。

 

 

……好きな人を、泣かせて……俺は、何をしているんだ、馬鹿が。

 

 

 

────もう、後には戻れん。引いたら、いよいよ終わりだ。男として。

 

 

 

ならば選択肢は一つ、キリノさんには、俺の【最大限の気持ち】をぶつける。

 

 

 

 

「キリノさん────確かに俺は、キリノさんの事をちゃんと知らない。理解も、出来ていない。貴女の気持ちを、ちゃんと分かって無かったのだから、これは……認めるしかない。今日会ったばかりで、そんなの当然だ……だが────そんな事、これから知っていけば良い話なんだ。だろ?」

「んなっ!あ、ああ言えば、こう言って……あ、貴方と云う人は!!もう!もう!!もうっ!!!────……この、おばか……レンノスケさんの!おばかぁ!」

「────ふふ、ああ。キリノさんの言う通り、確かに俺は……本当に大バカ者だな……」

 

 

 

 

────……何時からだろうな。俺の身体に、痛みと云う感覚が無くなって……心の辛さや痛さも、よく分からなくなってしまったのは。

 

 

 

自分の悲鳴が、昔はあんなに嫌で、浴びせられる暴力や罵声の嵐に疑問を抱いては泣いて、逃げて、逃げて逃げて逃げて、だけどそれは悔しいから強くなろうと、頑張って泣いては痛みに耐えて、独学で戦闘技術を身に着けて、生き残って来た。

 

 

 

────気付けば、それを俺がする立場になっていた。

 

 

 

暴力を他人にぶつけ、金を頂いた。

罵声を受ければ直ぐに痛みつけて、俺の優位性を記した。

何人も、死にたくないと云う言い訳で、オートマタのロボットを破壊しては殺して、獣人や不良生徒を半殺しにしては、死ぬ寸前まで痛めつけた。

俺の暴力を受ける人達が、泣いて許しを乞うても、殴って蹴るのを、辞めなかった。

全てにおいて手を抜けば、次に殺されるのは俺だから、暴力を辞めなかった。

  

 

自分がされて嫌だった事を、辛かった事を……────今度は俺が、する立場になっていたんだ。

 

 

気付いて、涙が出る程に辛くなって、もう自分の存在が嫌になって、でも……辞めなかった。

 

死になくないからって言い訳で、自分の非道を、辞めなかった。

 

 

 

「(本当に……大バカ者だ、俺は……)」

 

 

 

今の俺を見ろ。何にも、変わっていない。見ろ、今のキリノさんを……なに、泣かせているんだ。

 

バカにも、程がある。

 

キリノさんが、俺に希望を与えてくれて……自分で考えた結果が……これだ。

 

泣かせた。今まで、散々人を泣かせてきて、今更だが……この人だけは、泣かせたくなかった。

こんな形で、泣かせたくなかった。

 

 

 

 

────………だから、だろうな。今の俺は、少し、少しだけ……人を知れた。

 

 

 

 

人の、気持ちの重要さを知れた。

人間の、関係の難しさを学べた。

貴女の、涙の理由に気付けた。

 

────キリノさんの俺に対する想いに、やっと気付けたよ。

 

謝っても、許されない事だろう。

だけど貴女は……自分の考えを俺に伝えて、真剣に考えてくれていた。

 

無論、俺も真剣に考えている。貴女からすれば、俺はふざけている人にしか、見えなかったのかもしれない。

ただ、これだけは、信じてほしい。

貴女を、キリノさんを……決して泣かせたかった訳じゃなかったんだ。

俺はただ、余りにもこいつ等が、俺の想いを信じなかったから、信じててほしかっただけなんだ。

 

ごめんな、キリノさん。貴女に、俺は酷い事をした。

真剣に考えてくれた貴女を、俺はとても、酷い事をした。

 

 

 

 

だから、伝えるんだ。

 

もう、後には引けないから、俺の気持ちを、全てを、ぶつけるんだ。

 

 

 

「ばか……ひぐっ……レンノスケさんなんて、もう……しりません……ちんち○とか言うし……」

「キリノさん、そんな事、言わないでくれ……俺、悲しい」

「……わたしの、きもちを……考えない貴方が、わるいんです……」

「……キリノさん、ごめん、ごめんなさい。俺が、悪かった。だから、こっちむいてくれ、な?」

「……いやです。むきません……ぐすっ、そ、それに……あ、あやまっても、もう、わたしは………」

「これは、言い訳に聞こえてしまうかもしれないが……俺は、人と関わるなんて、夢でしか見た事ないくらい、初めての事だったんだ」

「……………」

「貴方と出会えて、一目惚れして、ドーナツにカツ丼をくれて、会話をして……今日だけで、俺は人生そのものが────貴女色に変わった」

「な、なにっ……また、可笑しな、事を言って────」

「どうしようもなかった、ゴミでクズで『バカ』な俺を、貴女は変えて、救ってくれたんだ」

「……おばか『なのは』、何にも変わっていません……」

「キ、キリノさん……好き」

「……~~~~ッッ///////!!……レンノスケさんの、ばか」

 

 

 

キリノさんは、俺に対して、バカと云ってくる。

 

意外と……────悪くないんだ、これが。

 

ああ、気付いた……キリノさんから頂く悪口は、俺にとっては栄養その物なんだ。

全くのノーダメだ。何なら気持ちが良いな。もっと言って欲しい。

 

 

それに俺は、キリノさんの事が大好きなんだ。どうしようもない程に、大好きなんだ。

今日初めて会っただけで?それがなんだ。

恋愛って言うのは、じゅんじょ?という奴がなきゃ、ダメな事なのか?

 

 

俺は……俺のやり方で、キリノさんと幸せを掴む。

 

 

それに、今のキリノさんからは……〈悲しい〉という感情は、見られない。

 

 

 

なら────聞くしか、ないだろう!

 

 

 

「なぁ、聞かせてくれ、キリノさん……────キリノさんは、俺と恋人には……なりたくない?」

「は────あ、はあぁぁぁ……そ、それ、は……だ、だからぁ……」

「俺は、キリノさんが俺を好きになるまで、ずっと言い続ける。キリノさんが俺を嫌いって、拒まない限りずっと────キリノさんに、俺の想いを伝え続けるからな」

「そ、そんなの………ずるい、です……あ、あうぅ………そんな、そんな事、今……言わないで……下さい……────」

 

 

 

“ギュゥゥ”

 

 

 

「ふぁ、はあぁうっ………だ、だからぁ……なんで、もっと強く抱いてるんで────」

「キリノさんが顔を背けるからだ」

「そ、そんなのっ!あ、ああ、貴方の顔が、近いからで……っ!お、おせっきょうし────」

「キリノさん、お説教は後で聞く。だが今は……今だけは────俺を見ろ、キリノさん」

「あ、あ………あうぅぅぅ……//////////」

 

 

「何度でも、何度でも言ってやる────いいかキリノさん。俺は────貴方に本気だ。これは絶対だ」

「は────あ………」

 

 

「いま、この場で────教えてくれ、キリノさんが……俺をどう思っているか」

「は、あ……ふぁ……────」

 

 

 

キリノさんが顔を真っ赤にして、涙目になって、全身を震わせて、もじもじしながら……そして

 

 

 

 

「あ────あ、あの……わた、私……その、えっと……れ、レンノ、スケさん、と────」

 

 

 

 

「────ちょっとストップゥゥゥゥゥっっ!!!!」

 

 

 

キリノさんが答えを言う途中、先生の雄叫びに近い叫び声が響いた。

 

それが合図となり、なんか全員が急に声を上げて来た。

………もう少しで、全てが決まる所ったのに、こいつら……。

 

 

 

ま、いいだろう。ここは、全員に一つ一つ返答しよう。

 

 

 

 

「いや、いやいやいや!は!?はぁぁぁ!!!??ちょっっ、れ、レンノスケ!?君は一体何をしているのかなぁ!!??」

「何言ってんだ?先生。キリノさんをお姫様抱っこだ。そして、告白だ。見りゃ分かるだろ?」

「そうだね~~~────見れば分かるわぁ!!そんなもん!!なにここで!!そんな事してんのって、聞いてんのよ!!!あと早すぎ!早すぎだから色々と!!」(ブチギレ先生)

「きゅっ、急にお姫様抱っこして、急に私達の目の前で告白し始めたんですけどッッ!!??」

「ああ、そう……ん?赤メガネの女、お前……どっかで、会ったか?」

「あ………その、お、奥空アヤネです。い、以前、ブラックマーケットで、すこしだけ……」

「ブラックマーケット……あぁ、あの時の。そうだったな、なんだ、元気そうだな」

「ど、どうも、です……?」

「あ、あの威嚇は!?さっきの殺気は一体何だったんですか!?全体的に一体何の意味が!?」

「その方が、お前等も俺を見るだろ。それに……さっきの【殺気】って……白羽の高貴な女、お前……結構おもしろいな」

「無表情で言われても何も……って!!別に狙ってなどいません!!!」

「お、おい……城ヶ崎?もしかしてお前……その女と、で、デキてる……のか?」

「(デキてる?)ああ、お前の言う通りだ、角がイカついイケメン女。俺は……キリノさんが好きだ」

「な、なにィィィィィイイイ!!???────え?今、私のこと褒めたか?」

「え!なに!?なになにどういう事!?え……いや、どういう事ですか!!??一体何が起こってこんな事に!?」

「だから、俺はキリノさんが好きで、大好きで、警察を目指す人間で、お前等とは仲良くしたいって言っているんだ。分かったか?青髪ふともも女」

「そ、そうじゃなくっっ………は!?あなた最後なんて言いました!?ちょっと!?」

 

 

「……チェリノちゃんを連れて来なくて正解でしたね、これは」

「……うへ、なに、なんなのさ?天下の怪物君って、実はこんな子だったの?」

 

 

 

 

……思った以上の怒号で、俺、びっくり。

 

なんか……今日俺初めて此処に来たのに、色んな人達に怒られ過ぎじゃないか?

 

いや、別に良いんだが……なんか、もっと迫害されるもんだと思ってた。

意外と……構ってくれるだけ良い人たち……なのか?

 

 

まぁ、うるさいけど。

 

 

 

 

「おまえら、少し静かにしろ。何をそんなに怒る事がある?」

「お前のせい!お前のせいだから!!」

「え?俺?」

「自覚がないの!?城ヶ崎レンノスケ!貴方、いい加減にしなさい!」

「城ヶ崎、貴様ァァ!!大人しくしろと、あんなに言ったのに!貴様は……ッッ!!」

「て、ててっ、テメェッ!!お、おお、お姫っっ!お姫様抱っことか、はあぁぁ!?」

「少女漫画に、恋愛小説に、恋愛ドラマや映画でしか、見た事ない、あの御姫様、抱っこ……キ、キエエエヘアァァッッッ!!!」

「おい、空崎に尾刃に美甘に剣先も、そんなに怒るな。反省してるから許せ、な?」

 

 

 

そうやって言えば、全員が滅茶苦茶に怒って俺に怒号をかます。

 

 

「なんか、ぶち殺すとか、市中引き回し?とか、言ってるが……頭大丈夫か?心配だな」

 

 

……って、口に出してしまったらしく、こいつ等は俺に向けて更に怒ってくる。凄い暴言の嵐だ。

 

 

いや、そんなに怒るか?まぁでも……仕方ないか。きっと、俺のせいだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

「────……レンノスケさん」

「ん?どうした?キリノさ────」

 

 

 

そう言うと、キリノさんは俺の頬に手を伸ばして、告げる。

 

 

 

「そんなに、熱烈に言われてしまったら────私だって……嬉しいんですよ?」

「キリノ、さん……?」

「先に、伝えさせて下さい……ごめんなさい、レンノスケさん……今、その返事を返す事は出来ません」

「む?────……えぇ!?そ、それって……あ、もう、終わりd」

「こらっ、最後までお口チャックですよ」

「あ、は……はい」

 

 

 

そう言って、ほっぺから俺の口に人差し指を置くキリノさん。

……なぜだろう。キリノさんの雰囲気が、少し……雑誌で見た、スケベな人の何かに似てるのは…。

なんだ?なんか……変な気分になりそうだ。

 

 

 

「もう……いいですか?レンノスケさん。私は────もう少し、貴方を知りたい。そして……貴方には、もっと私を知ってほしいんです」

「俺がキリノさんを知って……キリノさんは俺を知る……」

「そうです。さっき、貴方はこれから知っていけば良いって、そう言いましたね?」

「ああ、言ったな」

「それも、一つの選択肢です。ですが、私は……もっと、ゆっくりでも良いと思うんです」

「ゆっくり?なんでだ?」

「レンノスケさん。貴方は────もう生き急ぐような、そんな事をしなくって良いって事です」

「それ、どういう……キリノさん……?」

「────えいっ」

 

 

 

キリノさんは顔をとても赤くしながらも、しかし俺に向ける目の色は素敵な輝きを放っている。

そんな彼女を見て、俺もなんだか……顔が熱くなる。

 

そんな時だ。キリノさんが……おれのほっぺを伸ばす。

 

 

 

「キリノさん、俺のほっぺ好きだよな」

「ッ!……もう……ねぇ、レンノスケさん。この頬の傷、いつ出来たものなんですか?」

「え?これか?これは……ああ、そうだ。拷問された時についた傷だ。なんか、一ヶ月はヒリヒリして、気付けば残ったやつだ」

「────っ、そう、だったのですか……ごめんなさい。私……また貴方に、嫌な事を聞いてしまって……」

「いやいや、全然いやじゃないぞ?こんなん昔のやつだし。それに俺はキリノさんの事が【大好き】なんだ。なんだって答え────ん?あ、もしかして……」

 

 

 

なんで、キリノさんが急に俺の事を聞いてきたのか、分かった。

 

キリノさんは、俺が何処か生き急いで、先に先にって、速いペースで事を進ませようとしてるのに違和感を感じていたんだ。

 

 

 

「……キリノさん、さては、もう俺の事を知ろうとしてくれたんだな?」

「い、言わなくっていいんです!……変なとこで、察しが良いんですから……もう……貴方でも、そ、そういう、事だと……気付けたみたいですが……」

「ふっ、キリノさん……優しすぎて、俺、びっくりだ」

「くぅっ!……で、ですからっ!私は、貴方とはゆっくり、お互いの良い所とか、そういう所を見つけてからでも良いんじゃないかなって、それで……その……ううぅ」

「キリノさん……なんだろう、可愛すぎないか?」

「なっ……~~~っ!お、怒りますよ!」

「ふふ、ああ。怒ってくれ。俺は、怒るキリノさんも大好きだぞ」

「はっ……あ、貴方と、言う人はっ!……くっ、くぅぅ……//////」

 

 

 

 

 

今日で、俺は……貴女には、迷惑を掛けてばっかりだ。

 

会って早々、泣いてしまって、困惑させた。

 

俺が何かする度、色々起こして怒らせた。

 

 

 

 

 

 

「キリノさん、俺が気になるんなら、なんでも聞いて良いぞ。キリノさんになら、何でも答えちゃうからな。さっきの様な事でもいい、俺は気にしない」

「レンノスケさん………それでも、ごめんなさい。貴方に、頬の傷の事を聞いてしまって……私、昔から『不器用』で……頑張って、真面目に取り込もうとしても、どうしてか空回っちゃって────」

 

 

 

“ギュゥゥッ!”

 

 

 

「ふぁぁあっ!?な、なんで、またっ、このタイミングで!?あ、ちょっ、お腹に顔を埋めないでくださいっ!────ひゃっ!だ、だから、かおが、ちかいっ────」

「キリノさん。キリノさん……優しすぎる……可愛すぎるよ……」

「は────ま、またっ、そんな事……わか、分かっているのですか?へ、返事は、まだ先ですから……ね?」

「いい、今は、それでいい……なぁ、キリノさん………だから、俺は────キリノさん、貴方だから、俺は────」

 

 

 

 

────中務キリノさん。

 

 

俺に真剣になってくれて、真面目に考えてくれて、どこまでも優しい素敵な人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな貴方に、俺は………貴方に────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は────」

「はいはい、ストップストップー。なーに公然の場で二人だけの世界に入っちゃってるのかな~???」

「ぬ?」

「あ────はわぁぁ!!??」

 

 

 

もう一度キリノさんに告白を試みようとしたが、先生が途中で割って入って来やがった。

 

そして気付けば、先生のみならず、他の奴等も俺とキリノさんの事を睨んで見てくる。

 

なんだよ、今、俺とキリノさんの時間だぞ?何の用だよ。

 

 

 

「おい、先生、邪魔しないでくれ」

「────ほぉ」

「美甘も尾刃も空崎も剣先も、お前ら何見てんだよ。特にそこの色々めんどそうなピンク髪、さっきから圧が鬱陶しい。失せろ。今、いいとこなんだ、分かるだろう?」

「あ゙あ゙!?」

「ケヒッ……やはり舐めているな……」

「…………………」

「貴様ァ……っ!」

「────ほ~ん」

 

 

 

美甘、剣先、空崎、尾刃、そして色々めんどそうなチビのピンク髪が、俺をこれでもかと睨み、圧をかけてくる。

 

全員が違うタイプの圧を俺に掛けて来るから、本気で気持ちが悪い。まだ美甘のシンプルな怒気がマシに見える。

 

 

……あ、キリノさん。ああ、可愛いな…。

 

いやあ……やっぱ、キリノさんを見ると、こう……イイな。

 

 

 

「は、わ……わたし、え…?な、なに、して……あ、はぅ……」

「ん?キリノさん、大丈夫か?もっと強くか?ふっ、いいぞ」ギュゥー

「ひゅっ!?ちょっっっっ!ち、違いますよ!!ばかぁ!ゆ、ゆるめて!はやく……い、いやっ!違います!わ、私をおろしてぇ!!わたしに……ほ、本官に、この事を説明させて下さいぃ!はやく、早くおろしてくださいぃ!」

「おおっと……暴れると危ないぞ、キリノさん……キリノさんは、とっても元気なんだな」

 

 

「うへ────先生、もういい?やっちゃって」

「いや、ここは任せて────私も堪忍袋の緒、切れちゃったから」ピキピキ

 

 

 

 

 

 

 

其の後、俺は先生に怒られる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ 先生、ブチギレお説教タイム────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────って事!!反省した?レンノスケ!」

「はぁ………ああ、反省してるよ先生、こんくらいだけど」(右手の小指を立てる)

「よ、よ~~~し……じゃあ第三ラウンドといこっかぁレンノスケェ~……っっ」

「後悔はしてないからな、俺。だから反省はこんくらいだ」(左手の小指を立てる)

「もういいわ先生、ここからは私に任せて」

「ヒナ……この子は手強いよ」

「知ってる。先生も中々迫力があるけど、城ヶ崎レンノスケには、もっと強いモノが必要よ」

「なら、ここはあたしにやらせろ。コイツには、あたしの最大限をお見舞いしてやる」ピキピキ

「それでこそ私に任せろ……ケヒィッ!血に染めてやれる……」

「私もこの馬鹿には言いたい事が山ほどあります。それに私は実績を積んだ警察。容疑者に取調べで吐かせなかった情報はありません……故に、此処は私が────」

「なんでもいいが、早く済ませろ。あと会議ってやつは、しなくていいのか?時間が押してるって言ってなかったか?」

 

 

 

“ブチィッッ!!!”

 

 

 

「“ああ、そうだ────お前(レンノスケ)のせいでなぁ!!!!”」

 

 

 

またキレたぞ。元気なんだな。

 

……あ、そうだ。こういう時は確か、褒めると良いと聞いた気がする。

 

よし、褒めるか。

 

 

 

「まぁ、落ち着けお前等。そして聞け。いいか?元気なのは良い事だ。だが、そうして怒ると、なんか疲れるだろう?だから、怒らず、これからも元気でいろ、な?」

 

 

 

 

 

 

“プツン────────”

 

 

 

 

 

 

「レ、レンノスケー!もう怒った!もう一回お説教のじか────ん?………あ」

 

 

「────殺す」

「────潰す」

「────壊す」

「────殲滅する」

 

 

「み、みんな……一旦落ち着いて……ま、まずっ────」

「おい、ちょっと待────」

 

 

 

その後、俺は急にこいつ等に殴る系の攻撃を仕掛けられたが、七神と先生と、角がいかついイケメン女が身体を張って止めたお陰で、何とか収まったみたいだ。

 

俺はキリノさんをお姫様抱っこしてるから、流石にあいつ等となると分が悪いから、正直助かったな。

 

 

 

「全く……うるさい奴等だ。なぁ?キリノさん」

「う、ううううううううう~~~~~~~っっ!!/////////」

「キリノさん?どうした、なんで顔を隠す?」

「あ……貴方の、せいですからっ!!ばかばかばかっ!」

「え?俺?さっき許されなかったか?」

「許してませんから!このっ、貴方と云う人は……~~~~ッッ!!!」

「キリノさん………────俺が悪かったから、もう、泣かないでくれ」

「わぁぁぁ!!ちかいです?!こ、こらぁ!いきなり顔を近づけないで下さいッ!!逮捕しますよ!!?」

「テメェらマジでいい加減にしろやそろそろゴラァぁぁぁ!!!!」

「まず城ヶ崎ィ!!貴様はキリノを早く下ろせ!何分間持ち上げてるつもりだ!」

「そ、そうですよ!レンノスケさん!!早くおろし────」

 

 

「────絶対に、いやだ!」

 

 

「な、なんでですかぁ………おろして……」

「逆に聞くが、キリノさんを、お姫様抱っこして、何が悪い?」

「は?ふざけるなよ、お前………ん?いや、まさかお前、会議をそれで過ごすつもりか!?」

「そうだが?何言ってんだ剣先」

「はぁぁ!?」

「はいぃ!?」

「何考えてるの!?城ヶ崎レンノスケ、貴方は一体なにを考えているの?!」

「空崎……そんな分かり切った事聞くな。キリノさんの事を考えているに決まっているだろ」

「やかましいわよっ!!」

「あのさ、怪物君さ~。そろそろ真面目にやろうよ~、会議が始まらないよ?君の為の会議なのにさ?」

「あ゙ぁん?……ん?……あ、お前あの時の『なんか強そうで色々とめんど臭そうなチビのピンク髪』じゃないか。なんで此処に居るんだ?」

 

 

 

“ピキィッ!”

 

 

 

「────うへ~、さっき一対一で話したのに、もう忘れちゃったんだ~……んじゃッ!挨拶代わりに一発やる?」

「ホシノ先輩!?お、落ち着いて下さい!」

「そうだ、やめとけ。お前〈一人〉だけじゃ、話にもならん。お前こそ一発痛い目に遭うか?」

「ああはは~、君、面白いねー……おじさん、サシで負けた事ないんだけどな~?」

「相手が弱かったんじゃないか?もし戦るってんなら、上には上が居る事、お前に教えてやるよ」

「(角がいかついイケメン女、か……城ヶ崎、こいつ……意外と見る目があるな?)キキキッ!」

「(胃が痛い……帰りたいです……)ヒフミさん……」

 

「(まずいです!収集が……)れ、レンノスケさん!け、喧嘩は駄目ですよ!あとっ!会議が始まりませんから!は、早くおろして!おろしてください~!」

「ぬ、キリノさん……────分かった」

「レ、レンノスケさ────」

 

 

「────そこまで言うなら、俺の【秘策(2)】を、魅せてやる」

「────へ?なにを────はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■────数十分後……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ちがうぅ……絶対これじゃないですぅ………」

「キリノさんと、こうして居られるなんて……俺、幸せ」

 

 

 

……あの後、レンノスケはキリノの言う事に従い、お姫様抱っこ『は』やめた。

 

そう、お姫様抱っこはやめたのだ。そして……今、キリノの状況は────。

 

 

 

「────まさか、キリノさんが俺の『膝の上』に座ってくれるなんて、夢か、これは?いや現実だ(自己完結)」

「なんで……どうしてぇ……尾刃カンナ局長ぉ~……せんせえ~~……うぅぅ//////」

「ごめんキリノ、一旦これで通してほしいの……いやマジごめん」

「流石に、お姫様……だっこでは、会議は進められないからな……すまん、キリノ……許せ」

「なんで、なんでですかぁ~~~……皆さんも、なんで仕方ないって顔して……っ」

「いや、だって……なぁ?」

 

「────…この巨体(身長196㎝)の『駄々っ子』なんて、本当に見るに堪えないのよ……」

「うっ………くぅ………」

「だから、その……少しの間【レンノスケの膝の上】に座っていてくれ………私からも、すまん……」

 

 

 

 

────そう、この男。現在キリノを膝の上に乗せているのだ。

 

 

 

 

それは何故か、原因は……────レンノスケによる【本気の】駄々っ子だ。

 

 

 

レンノスケはキリノのお姫様抱っこを解除するのがイヤすぎて唐突ににキリノをお姫様抱っこしたままその場で寝っ転がり、まさかの駄々っ子を披露したのだ。

 

 

それは、先程のレンノスケが起こした事で怒りが頂点に達した者達を、悉く冷静にさせる程のモノだったのだ。

 

 

中々の高等技術………いや、シンプルに人としてどうなのか?……いやまずどこでそんな事覚えて来たのか?

此処に集った者達のあの冷ややかな視線は、しかしレンノスケには何のダメージもなかった。

先生、カンナ、ヒナ、ネル、ツルギを始めとした者達が止めに入り────ユウカ、マコト、ホシノも、本気で見るに堪えないレンノスケの愚行に、全員が全力で止めに入った。

 

 

────しかし、止まらなかった。

 

 

彼を止める事が、出来なかったのだ。その類を見ない馬鹿げたパワーに、そしてキリノには決して傷と苦しみを与えない絶妙な技術。

 

 

その時、全員が感じた……コイツは────ヤバい。

 

 

男特有の低音且つ。彼が持つ非常に良い声質で繰り出される『いやだいやだいやだ……やだーッ!』と駄々をこねるレンノスケに……『いやなのは、こっちです……なぜ、私は……こんな人を……もう、勘弁して、下さいぃ……』と、顔を手で覆い心の底から嘆き声を上げるキリノ……流石にキリノが果てしなく可哀想だと先生とカンナが判断し、何とか打開策を最速で考えた。

 

 

 

 

 

そして……今の状況が完成したという事だ。

 

 

 

 

 

「キリノさんの頭、小さくて可愛いくて、とてもいい匂いがするなぁ……」

「う、ぅうぅぅぅううう………」

「おっ……キリノさんのお腹、腹筋が少し、でも柔らかくていいな……」ムニムニ

「ひゃあっ!どこ触ってっっ!ふぅあっ!!?こ、このっ……~~~~~っ!レンノスケさん!さっきからっ、せくはらぁ!せくはらですよぉ!!このっ────ひゃんっ!……もう……やだぁ……くうぅ……///////」

 

 

 

最高にキショ過ぎるムーブ(無自覚)をかますレンノスケに、恥ずかしさが強すぎて完璧に怒れないキリノ。

 

傍から見たら、悪化してないかとツッコミを入れられるだろう。

何人かは、レンノスケとキリノの様子を見て、額に血管を浮かばせイラついていた。

 

 

…ってか、目の前でいちゃつかれたら誰だってめっちゃイライラする。

 

 

本来なら、先生もカンナも、まずこんな考えをしない。そしてリンも、了承はしないだろう。

しかし、今までレンノスケに散々振り回された面々に、そんな判断力など残されていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■数分後────……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────で、では……先生、先程の続きをよろしくお願いします」

「はーい……じゃあ、始めるね。まず────」

 

 

 

 

リンが先生に向け会議の催促をして、やっと始まる会議。

 

場を見渡せば、全員が疲労の表情を見せる。ただ一人、レンノスケを除いて……。

 

 

先生が話す内容としては、レンノスケの危険性の話だった。

 

 

城ヶ崎レンノスケはこんな感じだが、その実力、その恐ろしさは本物。

 

こうして緊急会議にて終結した皆に彼の実態を提示する事で、レンノスケを自分達が『牽制』出来るかどうか。

ぞれぞれの学園に対し、彼の力によって災害級の被害をどう出させないか、そもそもの話として、城ヶ崎レンノスケをシャーレの管轄下に置くとして、彼を信頼していいのか。

 

今まで未知に包まれていた、裏社会を震撼させた【怪物】を、この『表の世界』に入れるべきなのか。

 

 

 

「先に言うね。私は────レンノスケをシャーレに一時的に居住させるよ」

 

 

 

先生は、シャーレに彼を迎い入れる事を全員に告げた。

それは直ぐで、この会議が終わり次第直ぐにでもレンノスケがシャーレ居住区で過ごせる環境を作ると宣言した。

 

無論、驚きの声と苦言の声が多数あった。それのどれもが、先程事情聴取の時に先発組に言った時と同じものだった。

 

先生はそう言われるだろうと察し、そのまま続けて皆に伝える。

彼が今まで苦しんでいた事を告げた。内容は伏せたが、ずっと騙されて過ごしていたと発語した。

常識を、勉強を彼に受けさせると宣言した。

 

 

 

「────皆が危惧するように、確かに彼はまだ危ない場面はあると私は思うよ。でも、だからこそ先生である私と、レンノスケが一番に信頼を置いているキリノが……彼が此処でも普通に暮らせるよう誠心誠意、教育していくつもりだよ」

 

 

 

先生の強気意志在る発言は、苦言を催した生徒達全員を黙らせる。

 

先生がここまで言うには、彼にも何かしらの事情があって、態々シャーレの居住区にまで住ませて教育を志願する程に。

 

 

 

全員が黙り込む中、マコトが言する。

 

 

 

「なるほどな……なぁ先生────城ヶ崎レンノスケは、そこのキリノという女が居れば問題はないのだろう?」

「マコト……うん、そうだね。レンノスケがキリノを信頼して、好きなのはさっき見て分かったと思う。彼を制御できるのは、現状彼女だけだよ」

「先生にも従うぞ、少しだけ」

「レンノスケさん、お口チャックですよ……」

 

 

 

先生が粗方簡潔に城ヶ崎レンノスケの事を纏めて伝えれば、マコトがいの一番に声を出し全員に聞こえる声量で言を出す。

 

 

 

「そうか────なら、この話はもう終わりだ」

「む?」

「な────は!?」

「……羽沼マコト議長。まだ我々トリニティやその他の学園の皆さんの意見も聞かず、何を勝手に終わらそうとしているのですか?」

「……なんだ?トリニティのお嬢様は、城ヶ崎の【迫害】をお望みなのか?」

「────なんですって?……いいですか?マコトさん。第一として、城ヶ崎レンノスケをシャーレに置く、それ自体も私はまだ納得していません。先程の【殺気】に、この場に集う強者たちが、だ、駄々っ子を止めようとしても、制止はかないませんでした。彼は単独で【学園規模】総量の人間………余りにも危険過ぎます。それに彼が今まで起こして来た事件は決して看過できません」

「────だから、この話は終わりだと言っているんだ」

「……はぁ?」

「え、えっとぉ……申し訳御座いません、マコトさん。私達にも伝わる様、もっと分かり易くお願いします」

 

 

 

マコトの発言は全員が少し、いや、かなり説明不足なものだとに感じた。

そこでアヤネが手を上げ、マコトに向けて問いを掛ける。

 

マコトは真面目な表情を保ちつつ、しかし瞬間……不敵な笑みを浮かべ発語する。

 

 

 

「城ヶ崎レンノスケの危険度は皆、周知の事実。奴が起こして来た事件は……ああ、確かに看過は出来んな。我々ゲヘナを含めた、それぞれの学園に所属する生徒がブラックマーケットに入っては、何人も大怪我を負わされ未だ入院生活の者も居るのだから」

「マコト………」

「……だが……その大怪我をしたどれもが指名手配級の不良集団だ。無惨に破壊されたロボ市民やオートマタも、壊滅された各組織も、全て賞金の首が懸けられている程の【悪】なのだ」

「それは……そうですが……だからと言って、彼はやり過ぎではないでしょうか────怪我をした生徒を、貴方とて見て来た筈です。あんな惨い姿に変えられ、生きているのが不思議な程の暴力……マコトさん、それを全て許すと云うのですか?全て許した上で、彼を」

「そうだ」

 

 

 

マコトはナギサの問いを力強く肯定。

 

変らなかったマコトの表情に、少しの笑みが漏れ、そして告げる。

 

 

 

「よく考えろ────彼を迫害し、このまま野放しか、矯正局にでも閉じ込める。だがそいつは……今まで我々が手の届かぬ場所で汚れ仕事をして来た者に対する扱いではない。桐藤ナギサよ。貴様のその排除感の考えは……余りにも残酷過ぎだとは思わないか?」

「────ッ!」

 

 

 

マコトの出した言葉に、ナギサは何も言えなかった。

 

ナギサの考えは、迫害や野放しとは言わなくとも彼をこのまま『表の世界』、つまり自分達が住むこの世界に置くという事が、どうしても怖いのだ。

トリニティでの被害を案じれば案じる程、恐ろしくて仕方ない。レンノスケが何時暴走して、どのような被害を出すか考えれば考える程、震えが止まらない。

だから、安易だが彼には矯正局にでも入れて、その安全性が確かになるまで服役させるのが良いのではと考えていた。

 

しかし……それは否定された。

 

考えれば、今までを思い返せばそうだった。

 

彼は自分達が手の届かぬ【ブラックマーケット】で悪さをする不良や悪徳企業、人には言えない最悪な事をする組織などを殲滅して、間接的とはいえ治安維持に限りなく【貢献】はしていたのだ。

 

だがそれが余りにも倫理的に反したやり方だから、彼がどうしようもない強さを持ち合わせているから、こんな思考になってしまったのだ。

 

 

────極めつけは、このマコトの発言。

 

 

エデン条約の時よりも真剣に、自分達を見下す様子もなく、真面目に彼の対応を考えている。

 

 

 

「ゲヘナにトリニティ、ミレニアムそしてヴァルキューレの【最高戦力】が揃いも揃って敵わぬ【怪物】で、しかも枷が全く効かない存在……現状が其れのみの話だったら私でも貴様の様な考えになる。しかし、そこの【中務キリノ】という者が居れば違う。例えば────城ヶ崎が忠実な【犬】だとしたら中務キリノは絶対的な【主】という事になるだろう?そういう話なら事情は全くの逆方向に変わる。それに……【警察】になりたいと、そう申したな」

 

 

 

マコトの問いに、先生が頷きを返す。

 

 

 

「そうか────ならやはり、城ヶ崎の処罰は、いや、処罰と云うより処遇は────【ヴァルキューレ警察学校】に編入で決まりだと私は思うぞ」

 

 

 

マコトの発言は、この場に集う全員を静寂に落とし込めた。

 

……彼女らしくない纏まった答えが返ってきて、特にナギサは驚愕の表情を作る。

 

先生が満面の笑みを作り、マコトに礼を言う。

 

 

 

「マコト……本当にありがとうね、とても理想的で良い意見だったよ」

「キキッ!なに、私の考えを言ったまでだぞ?先生!まずこれしかないだろう?」

「……いつもこの感じで仕事も政治も当たってほしいのだけど」

「なにぃ!?ヒナ貴様ぁ!聞こえているぞ!」

「あ、あはは……でもマコト、本当にありがとうね」

 

 

 

あの暴君のマコトが、こんな考えを提示……?

 

此処に集う(レンノスケとキリノを除いた)全員が、このマコトが本物か疑う程の衝撃を受けていた。

 

 

 

────マコトはアホなだけで。優秀な部類には入る。

 

腐ってもゲヘナのトップ。その思考は誰にも読むことはできない。

 

 

 

「────私も、それが一番いいと思うな~」

「……小鳥遊ホシノ」

「ホ、ホシノ先輩……でも確かにそうですね」

「うん……いや~、ゲヘナの議長ちゃん。凄い鮮明に且つ、的確な考えを言ってくれたね。お陰でこの【会議全体】の考えが纏まったんじゃないかな?」

「キ?(あれは……小鳥遊ホシノか?)キキッ!ああ、そうだろう、そうだろう?」

「(周りから褒められて完全に調子に乗ってるわねマコト……はぁ)」

「……そうですね。我々ミレニアムもマコトさんに同意見です。キリノさんが彼にとってのストッパーで、且つ彼が警察になりたいのなら、キリノさんの所属校である【ヴァルキューレ警察学校】に入るべきだと思います」

「まさか……羽沼マコトさんに諭される日が来るとは……ええ、分かりました。ではトリニティもそのお考えで異論はありません」

「レッドウィンターも、それで構いません」

 

 

 

あっさり、しかし全体が良い方向に向いて会議は進んだ。

 

まさかまさかのマコトによってだが。

 

 

 

「────ヴァルキューレに編入の話は、貴女も仰っていましたね?カンナ局長」

「はい」

 

 

 

少しの落ち着きを見せた会議に、カヤがカンナに向け問う。

カンナが此処に来る前、先に連邦生徒会にこの事を告げていたのだ。

カヤから名指しで呼ばれたカンナが、席に立ち発語する。

 

 

 

「それは、この馬鹿……こいつ……城ヶ崎レンノスケが【警察】になりたいと、そう言った時から考えていました。こいつはこんな感じで、非常に腹が立つ男ですが……城ヶ崎の警察になりたいと云うその思いは────信頼出来るものだと判断しました」

 

 

 

マコトさんが言ったように、彼は間接的に治安維持に大きく貢献はしていましたから……と、最後にそう付け足して発語するカンナ。

 

 

彼に【正義】の意思がなかったのは重々承知の上での発言。

 

 

だが、キリノと会って……彼の中で、一つの何かが【芽生えた】のなら、カンナはその思いに期待したいのだ。

……何より、レンノスケがヴァルキューレに加入するとデメリットはあるものの、それ以上にメリットは計り知れないものがあるからだ。

 

 

 

 

「────こんにちは、初めましてだね、カヤ。突然だけど君はレンノスケの編入には賛成でいいのかい?」

「────ええ、初めましてですね、先生。はい。まず、ヴァルキューレ警察学校は私の指揮下にある組織です。現に私は『統括管理者』でもあります────彼を【ヴァルキューレ警察学校】に入学させる。それは……私としても非常に魅力的な話です」

「……うん、そっか。カヤは防衛室長だもんね。さっきリンちゃんから少しだけ聞いたから。うん、それは有難いな」

 

 

 

 

先生としても、こうしてレンノスケをヴァルキューレに編入させる事に対して、権力を持っているカヤが前向きなのは、嬉しい事であり有難いのだ。

 

 

 

 

「しかし、そうなってくると……城ヶ崎は何処に所属させましょう?やはり此処は無難に大幅な戦力の底上げ要因として【公安局】でしょうか?いやしかし、実技試験は言わずもながだが、コイツが筆記試験を乗り越える確証が余りにも……」

「────レンノスケはどうしたい?ヴァルキューレに編入して、何処の局に所属し────」

 

 

 

先生の問いに、レンノスケは────。

 

 

 

「────スゥゥゥウッッッ!!!ふぅ……キリノさん、良い匂いで最高で……素敵だ」

「う、うぅぅぅ……だめ……ですからぁ……こらぁ」

 

 

 

キリノを吸っていた。

 

 

それにいち早く気付いたネルたちが、一斉に彼に打撃を喰らわせる。

 

 

 

「おい……テメェこら、犯罪者こら……何してんだコラ」ゲシッ

「城ヶ崎……お前、ふざけるなよ…」バキッ

「今すぐ止めなさい、城ヶ崎レンノスケ」ドカッ

「は?何すんだよ。おい、よく見ろお前ら、俺は大人しくしてるだろ、なんで俺の頭を殴る、そして膝を蹴る?キリノさんが危ないだろうが。万が一でもキリノさんに当ててみろ、殺すぞ」

 

 

 

先生の問いに答える事はなく、レンノスケはキリノに夢中になっていた。

キリノのお腹を両腕でガッシリと押さえ、そして顔をキリノの頭部に近付けて力一杯に匂いを嗅いでいた。

 

 

 

 

警察を目指す者がしているが、キリノは同意してない為普通に犯罪である。

 

 

 

「え、えぇ……」

「城ヶ崎ィ……貴様ァ……静かだとは思っていたが、こんな……ッッ!!」

「おーいレンノスケ―、おーーーい!」

「ふぅ……む?どうした?先生」

「どうしたじゃないよ。何してんのよ?そんな羨ましい事……じゃなくて!レンノスケ、それは後でやりなさい。今は、こっちに集中!いい?」

「む、分かった」

「あ、後で!?」

「先生、今…羨ましいって────」

「レンノスケはさ、ヴァルキューレに入ったら、何処に所属したい?」

 

 

 

カンナの懐疑的な視線と言葉を遮るように、先生はもう一度レンノスケに問う。

 

……ヒナの顔が少し赤くなったのには、誰も気づかなかった。

 

 

 

 

先生の問いに、レンノスケは────。

 

 

 

 

「えっ────俺って警察になれるのか?」

「そっから!?そっからかいレンノスケ!?」

「なにぃッ!!?私の至高のスピーチをフル無視だとぉ!!?」

「貴様ぁ!城ヶ崎ィィ!!ちゃんと人の話は聞けぇ!!」

「まてまて、確かに今のは俺が悪かった……だから、落ち着け尾刃。そんなに怒ると、しわが増えるって、昔見た雑誌に書いてったぞ?尾刃はただでさえ【俺より一個上の年齢の人】には〈見えない〉んだから、かなり色々と危険なんだ。だろ?だから怒るのは止めて落ち着け、な?」

「ばっ……れ、レンノスケさん!そ、それだけは言っちゃダメ────」

「ふぅーっ!ふーーーっ!!グルルルル……ッッ!!!貴様は今ッ!嚙み殺すッッ!!!!」ピキピキピキピキ!!

「ひぃぃぃぃっっ!!!1?」

「カ、カンナ、気持ちは凄く分かるけどその拳はしまって!?」

「はぁ……カンナ局長が心底可哀想だけど……止めるわよ」

「カンナ局長、落ち着け……」

「……ここまで暴動を止めるのに抵抗を覚えたのは初めてだぞ?おい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネル、ヒナ、ツルギの制止により、カンナがレンノスケに飛び掛かる事態は何とか抑えた。

 

マコトもナギサもユウカも、アヤネもトモエも………レンノスケの蛮行具合には流石に疲労が見え始めて来た。

 

 

……犬歯を剝き出しにして今直ぐにでもレンノスケに飛び掛かろうとするカンナを見たキリノは……今まで見た中で一番怖いと、心の中で思っていた。

 

 

 

「その……大変失礼しました。まさか、ここまで取り乱してしまうとは……本当に申し訳御座いませんでした……」

「……ほら、レンノスケさんも謝って下さい」ボソッ

「分かった。ごめんなさい尾刃」

「………ああ、もう、いい……(いつか殺す…)」

「────で……なんの話だったか?おい、教えてくれ、そこの細目ピンク」

「(細目ピンク!?)……あ、貴方のヴァルキューレの所属志望局の話ですよ……」

 

「ああ、それか。俺は────【生活安全局】に入りたい」

 

「なるほど、生活安全局です………はい?」

「ああ、生活安全局だ。キリノさんと同じ、市民を護る街の素敵なおまわりさんになるのが夢だぞ!」

「……………」

「ふむ………」

「レンノスケさん……」

「どうだ?キリノさん、先生!俺、キリノさんの様な、護るべき人に優しく出来るような、そんな存在になりたいんだ」

「……ふふっ!はい!とっても良いと思いますよ!……あと下ろしてください」

「うん。私もそれでも良いと思うよ、レンノスケ」

「────城ヶ崎、それは………」

 

 

 

レンノスケの答えは────まさかの【生活安全局】志望だった。

 

 

 

 

全員が思う────無理じゃないか?と。

 

特にカンナはその思いが強い。

 

彼女は元々、生活安全局志望だったが、顔が強面で市民に威圧感を与えてしまうと云う、そんな理由で公安局に回されてしまったのだから。

 

 

 

────だからカンナは、包み隠さずレンノスケに告げる。

 

 

 

「────……城ヶ崎、正直に言おう。生活安全局は、お前には合わん」

「え……え!?な、なぜだ?!」

「私が良い例だ。お前は────顔が怖すぎる!」

「ぬぅ!?……え?そ、それだけか?」

「………ああ、それだけだ。それだけで私は……公安局に回された」

「そうなのか!?そんな事でか!?」

「そうだ、そんな事でだ。だから……生活安全局は諦めろ」

「そ、そんな………俺の、夢が……お巡りさん……」

「いや、こいつに関しては絶対それだけじゃねぇだろ。それ以前の知名度を考えろ知名度をテメェは」

 

 

 

ネルの発言がレンノスケの耳に入る事はなかった。

それ程までに、カンナの言葉が重くのしかかってショックだったのだ。

 

 

 

────まさか、顔が怖いという理由で、カンナは公安局に回されたのかと、レンノスケは理解するのが苦しかった。

 

 

 

「お、尾刃カンナ局長……本当に、だめなのですか?」

「……難しいな。城ヶ崎はまず、世間じゃ裏社会で名を轟かせる最悪の【怪物】として老若男女問わず知れ渡っている。実力もあるが、一番はその威圧的な仏頂面が問題だ。幼い子供を相手にする事が多い生活安全局では、まず威圧感を与えない【笑顔】が必要だ。お前には無縁過ぎる」

「────笑顔?……なんだ、そんな事か」

 

 

 

カンナの発言に、レンノスケがキリノを拘束する力に少し力を入れながら前のめりになって言する。

キリノはそんなレンノスケの行動に、もう既に赤い顔をもっっと赤くして呻き声を上げる。もう抵抗するのは諦めたのだ。

 

 

全員がそんな二人の様子に、自分達が段々と慣れつつあるのに、若干の嫌悪感を覚える。

 

 

 

しかし、ここで何か言わなければ、またレンノスケに振り回される。

 

 

先にそう思ったカンナが、即座にレンノスケに何が「そんな事」なのか問いた。

 

 

 

「……聞かせろ。何が、そんな事なんだ?」

「ああ、聞け尾刃。確かに俺は表情を作るのが苦手だが、別に、笑顔が出来ない訳じゃないぞ」

「は?────………やってみろ」

 

 

 

「任せろ────────はいっ」二ヤリ…(超絶ガチホラー笑顔)

 

 

 

───レンノスケが見せた笑みは、とても子供に見せても良いようなモノではなかった。

 

 

 

「ふっ……どうだ?中々いいんじゃないk」

 

「そんな……ほ、本気ですか……?」

「これは色々と駄目ね、余りにもホラー過ぎるわ」

「ガキ達に見せて良いモノじゃねえだろ、これ……」

「まさか、私を超える存在が居るとは……」

「は、初めてお前に親近感が湧けたぞ城ヶ崎……いや、これは、もう………」

「こ、これは確かに……カンナさん以上ですね……」

「キキッ、最早一種の怪異だな」

「どうやったらそんな狂気的な笑みの表情が出来るのですか……?」

「チェリノちゃんが見たら一発で粛清に……いえ、その前に怖すぎて泣いてしまいますね」

「人って、こんなにも恐ろしい笑顔が作れるものなの……?」

「うへ……びっくりした~、もうマジもんの怪物じゃん。子供どころか大人も泣くよ」

「こ、こら君達……言い過ぎだよ?レンノスケも真剣なんだから」

「あ……あはは……わ、私は、惜しいと思います……」

「おお!良い笑顔ですね!レンノスケさん!………あとお腹触るの禁止です」

 

 

 

先生、アヤネ、キリノ以外の全員がレンノスケの笑顔を大否定。

 

ツルギは自分を超えたと発言し、カンナに関しては親近感を感じる始末。

何なら全員ほぼ悪口を言っている。

 

レンノスケはショックを受けた。だが、同時に真の【優しい人間】を見つけた。

 

 

「キリノさん、先生、それと……奥空アヤネか、三人だけだ。優しい人は……」

「あはは……ど、どうもです……」

「レンノスケ、元気出して」

「本官は大丈夫だと思ったのですが……何ででしょうね?」

「キリノさん……好き」

「ひゃっ!?こ、こらっ!調子に乗らない!今はだめですよ!」

「あう……はい…ごめんなさい……」

 

 

ショックを受けるレンノスケを慰めるキリノにホールドを強めて好意を言葉で言うレンノスケを叱るキリノ。

この短い期間だが、綺麗に洗練された一連に、現場を目撃した者達は最早関心を強めた。

 

……その調子でいけば膝の上の事も指摘すれば降りる事が出来て、乗らなくても良くなるのではないか?

 

全員がそう思うが、指摘してまた駄々っ子の未来が過ったので伝えるのはやめた。

 

 

しかし……自分の笑顔がこうも受けないとは……そう感じたレンノスケは、諦めたくないが一度キリノと同じ【生活安全局】を視野から外す。

自分の夢は警察である。勿論キリノの様な素敵なお巡りさんになりたいはなりたいが、こうまで否定されると流石に一度諦めるしかなかった。

 

 

 

「な、なぁ尾刃、いや、ボス……生活安全局がだめだったら、じゃあ俺は、何処に所属できるんだ?」

「誰がボスだ!………ふぅ、そうだな。やはり無難に【警備局】か────うむ……」

 

「────ま、それはまた今度でもいいのではないでしょうか?」

 

 

 

カンナがうねり唸り声を上げていると、カヤが一言告げる。

 

 

 

「城ヶ崎さんがシャーレにて一時的な居住をして先生とキリノさんによる共同教育、そして【ヴァルキューレに編入】という進展があっただけでも今回の会議は非常に好い方向を迎える事が出来ました。そう思いませんか?」

「ま、まぁ……確かにそうですね」

「ちょくちょくコイツがいらん事をしなけりゃ、もっと有意義だったかもな」

「美甘……そう褒めるな、俺も、照れてしまう」

「褒めてねーよ!さっきからどういう思考してんだテメェはぁ!!」

「やめなさい、二人共」

 

 

 

ヒナが仲介に入って、そして先生が告げる。

 

 

 

「……カヤの言う通り、所属先に関してはカヤとカンナが中心になって決めて貰った方が良いね」

「む?終わりか?俺は結局、警察になれるって事か?」

「はい!そうですよレンノスケさん!やりましたね!」

「え?本当か?え、1日で?1日で!?……おおー!それは、とても嬉しいな!」

「……まだ何処に所属するかも決めていない。何ならヴァルキューレに編入はまだまだ先になる……そして、貴様にはヴァルキューレ入学の編入試験があるから、そうやって気を抜くのは────」

「尾刃!これから俺は、キリノさんとお前の下につくぞ!つまり尾刃は上司だ!何て呼べばいいんだ?」

「…………尾刃局長、またはカンナ局長と呼べ」

「わかった!宜しくな!カンナ局長!」

「────…ふんっ!まず、貴様は敬語が全く駄目だ。先生とキリノにそれは一任するとして、貴様が正式にヴァルキューレに入った暁には、その舐め腐った態度を一から叩き直して────」

 

 

 

カンナがレンノスケの前に行ってつらつらと小言を垂れ流す。

 

レンノスケは警察になれた喜びと、会話をしてくれるカンナと上司の関係になれた、その仲間と云う名の繋がりの嬉しさと、大好きな存在であるキリノと同じ学校に通える事と、シャーレで勉強とか食事とか色々出来る喜びが混ざり合っていた。

 

先生とキリノはそんな二人の様子に、意外と相性が良いのではと、そう感じていた。

 

 

 

「………では、今回の緊急会議は、これにて終了と致します────皆さん、今回はお忙しい中、こうして集まって頂き誠にありがとう御座います。最後に……彼に関する情報の伝達は我々連邦生徒会が行いますので、皆さまご確認のほど、宜しくお願いいたします。外のギャラリーは、連邦生徒会とヴァルキューレが対処、そして、そのまま彼に関する情報を────」

 

 

 

────其の後、リンが少しの連絡事項と今後について話した後、会議はお開きとなった。

 

先生も各自治区の代表で来てくれた全員にお礼を言って、一人ずつ先生に【一言】告げ、会議室を後にして行った。

 

ネル、ヒナ、ツルギも此処でそれぞれの代表達と共にそれぞれが各自治区へと戻る準備をしていた。

 

 

 

「ん……?お前ら、帰るのか?」

 

 

 

そこで、レンノスケがヒナ、ネル、ツルギに向けて問う。

 

 

 

「……私達にもそれぞれの仕事があるのよ」

「今、お前の対応に追われている私達の不在を狙った不良共が暴れていると、それぞれの自治区で連絡を受けたからな、一々お前に構っている暇も……いや、もう構う必要がなくなったんだよ……」

 

 

 

ヒナとツルギがそろそろ自分達本来の仕事もしなければいけないと、口に出して告げる。

 

レンノスケは納得した様子でなるほど……と、言いながら頷く。

 

 

 

 

「ああ、そうだ────美甘、空崎、剣先、カンナ局長」

 

 

 

その声質はどこか、落ち着いた雰囲気を思わせるもので、何だ何だとネル、ヒナ、ツルギ、カンナはレンノスケを警戒しながら見ていると────レンノスケがキリノの元から離れ、3人に向け頭を下げた。

 

 

 

「────ありがとう、今日は、キリノさん含め、4人のお陰で、俺は人と関わる楽しさを知れた。俺は、誰かとこんなに一杯、話すなんて事、今までなかったから……とても楽しかった。それと……別に俺は、お前らを怒らせたかった訳じゃ、全くないんだ……でも、お前等は俺が何か言えば、凄く怒るから、正直すまんって気持ちだ。お前等とカンナ局長は俺の事、本気で嫌いなのかもかもしれないが、俺は嫌いじゃないぞ……だからその、今日は色々と、ありがとう」

 

 

 

────レンノスケは……自分が思っていた、言いたかった事を、拙い言い方ながらも今日キリノに次いでお世話になった4名に向けて自分が言える精一杯を、彼女たちに伝える。

 

 

彼は良くも悪くも、無垢で純粋な性格の持ち主なのだ。

 

 

 

……生きる為にその掌を赤色の血に染め、日々年々己の身体を傷付け精神を摩耗させた……『心身共に死んでしまった』怪物が────キリノと云う彼にとって【唯一の救い】と出会い、生の存命を願う事が出来た。

 

キリノとの出会いが……この16年間誰ともまともに話す事がなかった、交流なんてした事なかった自分が………この短い、だけど彼にとってはとても長い1日で、何時か夢見た己の【やってみたい事】が、ほぼ全て叶ったのだ。

そして先生。キリノに次いで信頼に値できる人物。レンノスケは先生を『ブラックマーケット』で一目見た時から、この人は他の人とは違う【ナニか】あると感じた。とても不思議な感覚を覚えたが、いざ話せば、先生が自分を大切な一人の【生徒】であると話して……自分を一人の子供であると、人間として扱ってくれるんだと、心から嬉しく思ったのだ。

 

 

────キリノと先生だけではない……ネル、ヒナ、ツルギ、カンナ────それ以外にも居るが、彼の『今後の展開』を今日の最後までお供したこの4名には、話せば喧嘩をするが、レンノスケは心の中では感じた事など余りなかった『感謝』の想いを抱いていた。

 

 

 

「レンノスケ………」

 

 

 

そして、先生はレンノスケがキリノの行いを見て学んで、こうして迷惑をかけてしまった4名に対して、感謝と謝罪を拙い言葉使いながら伝えた事に、本当に嬉しく感じたのだ。

 

今まで……レンノスケを劣悪な環境に一人ぼっちにさせてしまっていた事に、先生は人一倍……それ以上に悔やんでいた。

 

だからこそ、彼には今以上の幸せの場を提供する。これからは、彼にはもう目を離さない様にしなければいけない。

 

先生は密かに……その後悔を胸に抱いて、レンノスケのこれからの人生の平穏を誓ったのだ。

 

 

 

………そして、レンノスケの発言を受けた4名は────。

 

 

 

「ふっ……そうだ城ヶ崎。貴様はまず、今日集まって下さった皆さんにはもう一度ちゃんとお礼を────」

「あ゙??んだよ急に、きめぇな……テメェにんな事言われると、嫌なタイプの鳥肌が立つからヤメロ」

「私達は先生の願いに応えたまで、お前が私らにどう思おうが関係のない事……」

「その通り。貴方に礼を言われる筋合いはないわ。顔を上げなさい、城ヶ崎レンノスケ」

「ああ、分かった……やっぱり、お前らとは、仲良くは出来んな……」

「当たり前だクソが。どれだけテメェにイラつかされたか……仲良しこよしなんざ、こっちから願い下げだ」

「……空崎、剣先も、そうか?」

「ああ、お前とは一生分かり合える気がしない。そんな気持ちも湧かんがな……」

「友人が少ない私でも、人は選ぶわ」

「ってかなんだ?テメェはあたしらに友好な関係を築けるとでも思ってたのかぁ?」

「少しは、な……まぁ、可能性は、低いだろうと思っていたが」

「だったら他を当たれ。後これは助言だがな?テメェが誰かと仲良くなりたきゃ、そのふざけた言動をどうにかしやがれってんだ」

「美甘……なんだかんだ、色々と教えてくれるよな、お前」

「うるせえ!!!」

「あ、あの……皆さん?」

 

 

 

カンナはレンノスケの発言に、意外にも感銘を受け、他の3名にも同様にちゃんとお礼をとレンノスケに促そうとした……が、途中でネルに遮られてしまった。

 

レンノスケの発言は、3人には受け取って貰えなかった。

 

3人が断るにも理由がある。自分達の立場の問題だ。

 

それぞれの自治区の治安を維持する組織の代表が、今まで恐れられてきたレンノスケと友好な関係を築くと云うのは、政治的な問題に発展する可能性がある。

 

……それもあるが、まず第一として彼女たちは彼とは普通に仲良くしたくないと云うのが、7割の本音であった。

 

レンノスケも、悪い気はしなかった。この3人とは【こういう関係】でいいのかもと、思ったから。

キリノが云う友人とは違う、また別の関係。少し、これも面白いとも感じれた。

 

 

 

 

 

────其の後、各々が各自治区へと帰還し、情報の伝達やらを至急に行う。

 

 

 

 

 

会議室にはカンナ、キリノ、リン、カヤ、先生、そしてレンノスケのみとなった。

 

 

 

「あ、あの!カンナ局長!発言宜しいでしょうか?」

「構わん、言え」

「はい!ありがとう御座います!えっと……レンノスケさんの方針が決まったは良いのですが、これからどういった形で動きましょう?」

「そうだな、キリノは一度自宅に行った後、出来る限りの準備をしてそのままシャーレに出向、そして城ヶ崎を監視兼教育が主な流れになるが……」

「承知しました!……あ、あの、レンノスケさんとは、流石に部屋は分けますよね?」

「当たり前だ。この大馬鹿者とキリノを同じ部屋にさせるなど……」

「まず私が許可しないからね、そんな事」

「で、ですよね!よかっt────」

「え!?な、なんでだ!?」

「は?」

「非常に、嫌な予感がしますが……」

「おい、城ヶ崎……発言には気を付けろよ……」

「いや、俺、てっきり……キリノさんと、同じ部屋かと……」

「そんな訳ないだろ!!」

「良くもまぁ、私の前でそんな事言えたもんだね?レンノスケ」

「そ、そうですよ!!もう!いいですか?そういうのはまだ私達には早いですよ!レンノスケさん!」

「キリノ?」

 

 

 

何やらキリノが可笑しな事を言った気がするが……と、レンノスケを除く全員が困惑するが、レンノスケが縮こまって反省する。

 

ぷんぷんと言った様子で怒るキリノに、レンノスケは最早歯が立たない。

 

 

 

「ご、ごめんなさい、キリノさん……」

「分ればいいんです!レンノスケさんは、これからは先生のお世話になるのですからね?」

「……ああ、それはとても、ありがたい事だな。キリノさんにも、その、俺は……勉強を、教えてほしい……です」

「むむ?ええ、それは勿論!本官もレンノスケさんと共に色んなお勉強が出来る事、とても嬉しく思いますよ!」

「キリノさん……好き」

「んなっ!?…っ…………~~~っっ!!せいやー!」

「あう。こ、こんどぅは、ほっへを、つぶしゅんだな、きりのしゃん」

「もう!貴方と云う人は!!本当に反省してるんですか?この、この!」

「お……おこって、りゅ?」

「当たり前です!また貴方は、そんな……決めました!もう可愛いとか、好きって言うの禁止です!」

「ふぇっ!?……いやだ」

「い、いやじゃありません!禁止ですよ!」

「しょれだけは、禁止……いやだ!」

「きーんーしーでーすー!!」

「絶対にいやだ!キリノさんを可愛いって言って、好きだと云って、何が悪いんだ!」

「そっ……~~~ッッ!んもう!!」

 

 

 

先生とカンナからそれば、これはもう見慣れた光景になっていた。

 

だが、リンとカヤは……未だに信じられないモノだった。

 

しかし……先程からレンノスケはキリノに対して、やや反論を催している。

特段気にする様な事でもないが、これ以上レンノスケがキリノに対して我儘を覚えてしまったら、ドンドンとエスカレートしてしまい……最悪の可能性も考えられる。

 

それを即座に悟ったキリノは……余りしたくない、自身が考えた『対策』を、ここで披露しようと行動する。

 

 

 

「────じゃ、じゃあ!レンノスケさんがそう言うのなら、本官に考えがありますよ!」

「なに!?い、言ってみてくれ、キリノさん……お、俺は!キリノさんが何を言おうが、絶対に俺は嫌だと言い続けて…────」

 

 

 

レンノスケが言い終える前に、キリノは……そっぽを向いて、レンノスケから目をそらす。

 

 

 

「………………」

「…………ん?」

「………………」

「あ、あの……キリノ、さん?」

「………………」

「……キリノ?」

「はい!なんでしょう?先生」

「あ、あー……なるどね」

「キリノ、お前……考えたな」

「え?え……?な、なぁなぁ、キリノさん……あの、えっと……考えって、なんなんだ?」

「………………」

「え?え?………なんで……?」

 

 

 

プイッと、キリノはレンノスケの方を見ない。

レンノスケは裾を引っ張って、しかしそれでもキリノはレンノスケを無視する。

 

 

……そう、これがキリノが考えた対策────完全なフル無視作戦である。

 

 

先生とカンナ、リンとカヤはキリノの考えを即座に理解する。

 

しかし……レンノスケはキリノが自分にだけ反応しない事に……例え様のない不安に襲われていた。

 

 

 

「あの、あのあの……キリノさん、その、えっと……やっぱり、怒ってる…のか……?」

「……………」

「あ……あ、あの、悪かった。すまない、ごめんなさい。謝る……だから、その……────もう、言わないよ……」

 

 

 

“ズキッ……”

 

 

 

「っ……」

 

 

レンノスケの声のトーンが、明らかに下がった。

 

ズキッと、キリノは自分の心が軋む感覚を覚える。

 

キリノとしても、こんなやり方は正直取りたくないのだ。

レンノスケが悪いとはいえ、幾ら何でも可哀想であるから、しかも……彼に一番聞くであろう『無視』という、中々キリノらしくない戦法。

 

キリノ本人ですら、ズキズキと心が痛んでくる。

 

声質的に、明らかに動揺しているレンノスケ。

 

キリノは目を逸らしているから見えてはいないが……彼が悲しんでいる、そんな表情が脳裏に過って分かるのだ。

 

流石にこれ以上は可哀想なので、キリノはコホンッ!と、一つ咳払いをした後、レンノスケの方を向いて声を掛けようとした…時だった。

 

 

 

「あ……謝りましたから、もう良いですよ。いいですか?レンノスケさん。これからは本官に向かって可愛いだとか、す、好きだとか、そういう事は人が居る場では言わないと約束を………へ?」

「────………う、うぅぅ……ぐすっ」

 

 

 

振り向きながら約束事を言う途中………レンノスケが泣いていたのだ。

 

 

 

「は……?」

「じょ、城ヶ崎?お前……まさか」

「────な、泣いて…?」

「ううっ────…よ……よかったぁ……無視…されて、なくって……俺、もう嫌われちゃったかと……思って……」

 

 

 

ポロポロと、背を丸めて泣き始めるレンノスケ。

 

キリノのみならず、全員が声を上げて動揺する。一時的にとはいえ、数秒無視をしただけで、これだから。

 

レンノスケ本人も……最早自分にとってかけがえのない存在と成ったキリノから、こうした形で無視されるとは思ってもおらず、今までで一番と云っていい程に胸が軋む感覚に襲われ、思わず泣いてしまったのだ。

 

 

 

「え、え、えええ!?そ、そんなに!?そんなにですか!?あわわぁああ、えっと、や、やりますぎました!ごめんなさいレンノスケさん!!」

「?い、いや…俺の方が、ごめんなさい、だ………ぐすっ…俺、キリノさんの事に、なると……やっぱり、我慢が、効かなく……なって……」

「こっ……、そ、それは!ちょっといけませんけど……あ!そうです!────せいやっ!」

「むぐっ?」

 

 

 

どうしよう、どうしようと悩むキリノに、天啓が下りる。

 

それは────。

 

 

 

「────はい?」

「え、えええ!?大胆!!」

「キ、キリノ……?」

「え、ええ…?」

 

 

 

────キリノがレンノスケの頭を自身の〈胸元〉まで寄せ付ける。

 

キリノは女性の平均身長よりも少しだけ大きい161㎝だが、レンノスケの身長が196を誇る長身の為、その差は何と35㎝差。

レンノスケが背を丸めて、キリノが背伸びしてやっと頭に手が届くのだ。

 

キリノはそれを利用して、レンノスケを抱き寄せる事に成功。

 

 

…………因みにだが、キリノは冷静な判断が出来ない程にテンパっている。

 

 

レンノスケの顔は硬いままで、凄いのが無表情のまま涙を流している。

だが、その涙は悲しいモノであるとキリノは無論理解している。

 

だからキリノは、まるで小さい子供をあやす様にレンノスケの頭を左手で優しく撫で付け、背中を右手で愛でる様にポンポンとたたいた。

 

 

 

「そ、そうですよね!怖かったですよね!え、えっと……本当にごめんなさいレンノスケさん!ほら、私はレンノスケさんを無視するなんて、もう二度としませんから、どうか泣き止んで……ね?」

「う、ぐすっ……うん、もう……泣き止んだ、ありがとう、キリノさん」

「よし、よし………もう、私がレンノスケさんを嫌いになる訳がないじゃないですか。さっきのは、その……あ、貴方が!私にちょっと反抗気味でしたので、ほんの少しだけお仕置きと云うか、その……」

「ん………うん、そうだったな……調子に、乗り過ぎた。これ以上、迷惑はかけたくなかったのに……本当に、ごめんなさい……」

 

 

 

ギュゥーっと、レンノスケはキリノの腰に手を回してキリノの胸に顔を埋める。

 

その動作が、キリノを冷静にさせ正気を戻させる。

 

 

 

「わ……っ!も、もう……今回だけですからね…?」

 

 

 

しかし、意外にもキリノが大人の対応?を見せる。

 

それは、彼に下心というモノがキリノからは感じる事が出来なかったからだ。

 

下心がないから……と云うのは、一応それもレンノスケのコレを許す事には入ってはいるが、実は建前だったりもする。

 

レンノスケが完全に反省している、それもあるが……一番は────彼だから。

 

 

人の温もりを知らない彼だから、まだ人との距離感が分からない彼だから……そんな思いもあって、キリノは今までで類を見ない位に顔を赤くし、人に見られているというその羞恥心にも耐えながらも、彼の為に行動をしたのだ。

 

 

レンノスケの精神力がここまで強かったのは、ずっと一人ぼっちだったからだ。

自分が強くならなきゃ、生きていけない。

一瞬でも気を抜けば、隙を見せれば……待っているのは【死】のみだった。

油断など、彼が裏社会で最強に成っても、一度も出来なかったのだ。

 

 

 

そして────彼女、キリノと出会って……彼は精神が不安定になってしまった。

 

 

 

彼にとって、孤独は苦しみであり、強さであり……弱さでもあった。

 

彼が初めて出来た……大切な人。

彼が初めて出来た……友達。

彼が初めて出来た……失いたくない人。

 

 

いつか、消えてしまうのではないか?

 

目を離せば、何処かに行ってしまうのではないか?

 

 

 

これは……実は己の夢なのではないか……?

 

 

 

そう思えば思う程、レンノスケはキリノに執着してしまう。

 

やっと、やっと掴んだ己にとって〈幸せの象徴〉であるキリノが、実は幻なのではないか?

常にそう考えて、胸が痛くなって涙を出すのを、今日だけで何回我慢した?

 

 

 

────レンノスケは怖かったのだ。

 

 

 

自分にとって、余りにも上手く事が進み過ぎている、この現状が……実は全て己の願いが生んだ幻想なのではと、恐ろしくて堪らなかったのだ。

 

 

だから、全てを急かしくなってしまった。

 

取調べの時も、護送車の中でも、先程の秘策でも……事を早く進めたくて、キリノの気持ちなんて、考える事が出きない程に急かしてしまった。

 

 

これが夢なら、幻なら………ハッピーエンドな最期を迎えてほしかったから。

 

 

 

「────なぁ、キリノさん」

「うん?なんでしょう?」

 

 

 

レンノスケは恐る恐ると云った様子で……キリノに問う。

 

 

 

「俺が、今触れているキリノさんも、俺が、今日会った奴等も、俺が、警察になれそうなのも……先生が、キリノさんが……俺を、人として見てくれて、いるのも……────俺が今、生きて、いるのも……夢とか、幻とかじゃ、ない……よな……?」

 

「あ────」

 

 

レンノスケの声は、今日の中で一番……不安そうな声質だった。

 

それは願いだ。どうか、これが現実であってほしいと望む切実な問いだった。

 

 

その問いいキリノは────ノータイムで発語した。

 

 

 

「────当たり前です。こっちを向いて下さい、レンノスケさん」

「う、うん……────あ」

 

 

 

レンノスケが胸元から離れ、視線を下に向けキリノの顔を見る。

 

そして、全身が硬直する。それはキリノが……優しく微笑んでいたから。

 

キリノの表情は────彼から見たら、まるで『女神』の微笑みに見えた。

 

 

 

「もしかして、ずっと不安だったのですか?」

「あ……あ、ああ。不安……だったの、かも……」

「ふふっ、大丈夫ですよ。私は現実で、貴方も生きています。よしよし……ふふふっ!さっき、貴方の心臓の鼓動が凄い高鳴りで、やっぱりレンノスケさんも緊張しているな~って、そう思っていたら、そんな事聞いてくるんですから……大丈夫ですよ、レンノスケさん────私はずっと、貴方と共に居ますから」

「っ……うん、ありがとう……嬉しいな、やっぱり………ああ、うん…本当に良かった……────生きてて、よかっ……う、ぐぅう…っ」

「ああ、また泣いてしまって………安心したら、体の力が抜けたんですね────ほら、大丈夫ですよ」

 

 

 

ここで、初めて破顔して涙を流したレンノスケ。

 

今日初めてドーナツを貰った時の、それ以上の想いが溢れ出てしまった。

 

人目も憚らずポロポロと、止めどなく溢れる涙を、キリノは手袋を脱いで素手の指で拭う。

 

そんなキリノに、レンノスケは驚くと共に……その優しさを感じて、嬉しくなった。

 

 

 

 

 

………暫くして。

 

 

 

 

 

「………うん、やっと……落ち着けた、気がする……ありがとう……」

「よしよし……ふふ、なんだかこうしてみると、貴方もやっぱり子供ですね。こんなに泣いちゃって、何だか可愛いです」

「え?かわ……?むぅ……あの、キ、キリノさん、お、俺は、泣いちゃったけど、これでも男だ。その……も、もう泣かないんだぞ!」

「え?……ぷっ!あはは!なんですか急に!もう……男の子でも女の子でも、泣いてしまう時は別に泣いてしまっても大丈夫だと思いますよ?」

「あう……で、でも……俺、キリノさんの前だと、何か……よくわかんないけど、その…恥ずかしいから……あんまり、泣きたくないんだ……」

「んぅ!っ────……れ、レンノスケさんの、好きにさせましょうか、これは……」

 

 

 

思わぬレンノスケの可愛い瞬間に、不覚にもキリノはキュンッと来てしまった。

 

キリノは悶えながらも、自分は確りしなければと心の中でカツを入れて何とか堪える。

 

 

 

「────……あ、言い忘れてました!えっとですね、レンノスケさん。人目がある場所で、無暗に私のことをか、可愛いとか好きだとか……そういう事は、言っちゃダメですよ?」

「う……うん、分かった。約束、する」

「……本当に?」

「ほ、本当に!俺は、キリノさんの言う事に、従うぞ」

「ふふ……じゃあ、約束です!」

 

 

 

キリノがレンノスケとその約束をして、この話はお終い────……と、レンノスケが思った瞬間だった。

 

 

 

「でも……レンノスケさん、耳、貸してください」

「え?あ、あの……分かった。こ、こうか……?」

「はい、ありがとう御座います……これだけ、伝えようかと」

 

 

 

レンノスケはとりあえずキリノの言う通り耳をキリノの顔付近まで寄せる。

 

そうして、キリノは告げる────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────私と二人っきりの時は、色々言っても構いませんから……ね?」

「────……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

顔を真っ赤に染めて、そう告げるキリノに……レンノスケの思考が停止。

 

 

 

「こ、これだけです!約束は!ま、護る様に!分かりましたか?」

「あ……はい……俺、分かった…」

 

 

ホゲ~っといった様子で、惚けてしまうレンノスケ。

 

キリノは若干の後悔をするも、今更遅いと悟る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────こうして、波乱だらけの会議は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?私達が居るの、完全に忘れられてません?」

「………これを、皆さんは5時間も……?」

「うん、そうだよリンちゃん。凄くない?ね?カンナ」

「はい………私、コーヒーが飲みたいです。ブラックを、ロックで」

「カンナ局長…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其の後、各自治区とヴァルキューレ、連邦生徒会は【裏社会の怪物】が現れたと云う混乱の処理に奮闘した。

 

 

………城ヶ崎レンノスケが中務キリノに恋をしている事は、会議の中でプライバシー等、様々な障害が生まれるので報道するのは非常にマズイと判断された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回

 

 

怪物、シャーレに行く。そして────

 

 

 

 

 

 

 






泣いちゃった!


彼にも、心の何処かで思う所があったのです。
16年間もあんな場所に居て、いざ出てみれば……いきなり初恋。

そこから一気に波乱の出来事。どれもこれも、彼にとって新鮮で、楽しい思い出となりました。

信じられない気持ちになってしまうのも、仕方ないのかも?




因みにですが────彼の〈神秘〉は既に決めてあります。


これか…いや、これかな……そんな感じで悩んで悩んだ末に決めました。


その神秘がどういった形で見れるのか、早い段階で見れると思います!






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  • 16歳組によるバレーボール同盟
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