怪物は、真面目な君に恋をした。   作:カブトムシの相棒

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城ヶ崎レンノスケのプロフィール(3)



誕生日:12月24日

体重:97㎏





☆≪秘密≫

:実は()()()が苦手。

以前、空腹で極限状態の時『歯磨き粉を丸呑み』した事があり、それがトラウマで歯磨き粉の〈匂い〉が少しだけ嫌いになる。




「レンノスケさーん!歯、磨きますよー!」
「…………やだ」
「はいはい、だめですよー。歯は磨かなきゃ、お口クサイクサイになっちゃいますよ?良いんですか?」
「………それも、やだ」
「でしょう?ほら、本官が磨いてあげますから、こっちに来て下さい」
「………わかった」




時折、こんな事が起こるとか起こらないとか……。








では、本編です。





怪物に迫る魔の手。だがそれは、余りにも小さくて……。

 

 

 

 

 

 

 

■アリウス自治区────とある一室。

 

 

 

 

 

”コンコンコン”

 

 

 

「入りなさい」

「失礼します、マダム」

 

 

 

レンノスケがD.U.近郊に現れたその日の夜……アリウスにも一つの動きがあった。

 

マダムと呼ばれる赤い肌が特徴的な異形の女性────【ベアトリーチェ】が所有する一室に、一人のアリウス兵が『とある情報』を伝えに来たのだ。

 

 

 

「マダム、城ヶ崎レンノスケの事に関して、お伝えしたい事が……」

「ヴァルキューレに編入との事でしたら既に聞き及んでおりますが、それ以外に何か新たな情報が?」

 

 

 

ベアトリーチェの情報網はかなり広い。その為、アリウス兵が伝えたい情報はもう既に自分は有していると考えている。

 

……しかし、新たな情報が渡って来た可能性もある。故に、べアトリーチェはそのアリウス兵に問う。

 

 

 

「は、はい……先ほど放送が流れている付近まで、偵察に向かった部隊が寄越した情報なのですが……どうやら、直ぐにでもマダムに伝えてほしいと」

「なるほど、分かりました。ならその得た情報とたらを提示なさい」

「承知しました。えっと……偵察部隊が寄越した情報によりますと、どうやら城ヶ崎レンノスケが────シャーレに加入した、との事です」

 

 

 

”ピクッ”

 

 

 

「………なんですって?」

 

 

 

そのアリウス兵が発した言葉は、ベアトリーチェにとって、聞き捨てならない発言だった。

 

 

 

「あの怪物が……シャーレに加入────?」

 

 

 

確かな圧力を籠らせる声質。

 

ベアトリーチェにとって、城ヶ崎レンノスケの情報は少ないが、同じ【ゲマトリア】所属の【黒服】に多少なりと聞いていた。

 

彼はこのキヴォトスに於いて【限りなく天位に近い存在】と称され、同時に【証明しきれない特異点でもある】と……あの黒服に言わしめた男なのだ。

 

余りにも不可解で、謎めいた存在……。

 

 

 

「……?マ、マダム?」

「……その情報は、確かなのですか?」

「は、はい。実際にシャーレの先生が、自分から名乗り出てキヴォトス全土に渡る生放送を使い、シャーレにて少しの間ヴァルキューレと合同で監視を行うと発言していました。なので、これらの情報の信憑性は非常に高いかと」

「成程………ふむ」

 

 

 

一度、ベアトリーチェは思案する。

 

困ったように扇子を仕舞い、目を瞑る。

 

城ヶ崎レンノスケ……黒服が一度仲間に入れようと接触を図り、生死を彷徨う程の大怪我を負わした存在。

 

黒服がヘマをした、とは考え難い。

 

黒服、彼は【キヴォトス最高の神秘】と謳われる『小鳥遊ホシノ』の実験に熱を入れていた、最後は先生の介入によって不発に終わったが、あの入れ込みようは中々なモノだった。

 

そして、時折行われるゲマトリアの会議に、必ずと云っていい程話題になる存在でもあった、小鳥遊ホシノ……しかし、子供たちを道具としか認識出来ないベアトリーチェにとって、余り興味は湧かぬ逸材でもあった。

 

 

しかし────このゲマトリアを含めた、キヴォトスに於いて『誰も手に負えない』と称された怪物が居た。

 

 

それが『城ヶ崎レンノスケ』である。

 

ミレニアムのハッカー集団ですら足取りを掴めず、存在其のモノが畏怖されし存在。

 

 

 

「(先生……一体どうやって奴を………)」

 

 

 

ベアトリーチェの脳裏に過るは己の敵対者である『シャーレの先生』だった。

 

シャーレに加入……あの怪物を手馴らす存在ともなれば、先生しか思い浮かばない。

 

どういう手段を用いたかは知らないが、シャーレに加入と云う不変の事実が存在する以上、その手腕は流石と云う他ない。

 

 

 

黒服は……ゲマトリア会議にて、城ヶ崎レンノスケには〈わざと生かされた〉と言っていた……まるで≪殺しを熟知≫しているかの様な手際だったとも、言っていた。

 

恐らく、下手な殺しは控えているのか。将又……ただの気分屋なのか。

 

 

その時点で考えれる事は……彼がゲマトリアにとって『脅威』的な存在になる事。

 

城ヶ崎レンノスケはゲマトリアに対して好い関係には為れないと証明された。

 

加えて、シャーレに加入────時期を考えれば、彼がシャーレの先生と恊同し、己にとって最悪な光景を作る存在でもある。

 

 

 

「──────早急に手は打った方が良いですね」

 

 

 

ベアトリーチェは扇子を広げ、アリウス兵を見る。

 

そこに余裕は見受けられない。

こういう時は何かしらの命令である為、アリウス兵は背を伸ばし、黙って次の言葉を待つ。

 

 

そして、告げられる事は………衝撃的なモノだった。

 

 

 

 

「────城ヶ崎レンノスケ……奴には死んでもらう他ないでしょう」

「ッ………」

 

 

 

しかし、それはアリウス兵の想像通りの言葉だった。

 

しかし、それは余りにも無茶ぶりでもある。

暗殺以前に、アリウスの子供たちは殺しをした事が無い。

 

しかも相手が、あの裏社会の怪物………ゲヘナの風紀委員長やトリニティの正義実現委員長、ミレニアムのエージェントよりも危険で実力も格上な存在なのは余りにも有名な事。

 

そんな男の暗殺など、成功する可能性が低すぎる。

 

確率で言えば、1%もあるだろうか……しかし、ベアトリーチェの命令は絶対、否は受け付けない。

 

 

 

「承知しました。では部隊はどういたしましょう?現在スクワッドの身元を追っている故、空いている部隊は限られてきますが……可能なら我々の部隊が────」

「いえ」

 

 

 

アリウス兵は可動な部隊をどうするか提案し、言葉を進める。

 

しかし、ベアトリーチェはアリウス兵士の言葉を遮る。

 

 

 

「部隊ではなく、一人の兵士を使いましょう」

「……?」

「──────『天丈アイラ』……彼女を使います」

「──────え?」

 

 

 

それは、アリウス兵士にとって信じられない発言だった。

 

 

 

「ア……アイラで、御座いますか…?」

「ええ、彼女は隠密に長けています。戦闘技術はないですが、彼女は此処(アリウス)の誰よりも気配を消すのに秀でています。気配遮断だけで云えばサオリでさえも凌ぐでしょう………人一倍視線や圧に敏感な怪物(レンノスケ)には、アイラは刺さる筈です」

「………し、しかし、マダム……アイラは実戦経験がありません。幾ら気配遮断に強いとはいえ、聊か無茶が過ぎるのでは………それに、あいつは…まだ────」

 

 

 

アリウス兵士が何かを伝えようと口を開くが、ベアトリーチェはそれを許さない。

 

 

 

「私の決定に口を挟むおつもりで……?」

「ッ!い、いえ!滅相も御座いません!……っ」

「宜しい……さて、貴女は此処にアイラを連れて来なさい。私直々に命令を下します」

 

 

 

有無を言わせぬベアトリーチェの圧力に、アリウスの兵士は……。

 

 

 

「はい…承知致しました」

 

 

 

了承の意を頷く事しか、出来なかった。

 

 

 

 

 

「怪物………黒服が言っていた通り、まさかブラックマーケットの檻から退け出すとは……厄介なモノですね」

 

 

 

独り言……コツコツと一室を歩き回り、どうも落ち着かない様子のベアトリーチェ。

 

余りにも不可解な存在……その怪物がシャーレに加入ともなれば、それは必然だった。

 

 

 

”コン、コン、コン”

 

 

 

一室に響くノック音。

 

 

 

「入りなさい」

「────しつれい、します。マダム」

 

 

 

入って来たのは……身長が非常に低く、体躯も細い少女。

 

まだ10才にも満たない幼い子供である。

 

 

 

「ご機嫌用、アイラ……さて、時間が無いので単刀直入に命令を下します」

 

 

 

来訪するなり早々、ベアトリーチェはアイラに発語する。

 

アイラは表情を崩さず、ただジッとベアトリーチェの無数の目を見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「────城ヶ崎レンノスケ、彼の殺害を命じます」

 

 

 

告げられた一つの命令。アイラはそれを聞き取り、そして────

 

 

 

 

 

「わかり、ました」

 

 

 

 

拙い返事をし、了承を唱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────日記。

 

 

 

 

 

〇月✕日  天気:晴れ

 

 

 

 

 

初めてシャーレに来て、朝目を覚ましてめちゃくちゃおこられた。

 

 

 

自分が、今ここシャーレにいる。ブラックマーケットじゃなくって、あたたかいおふとんに、で、起きた。びっくりした。けど、おぼえている。俺は、ブラックマーケットから出て、キリノさんっていう、すごく優しい、かわいい、すてきな人と出会って、いろんな人と出会ったということ。

 

そして、いろんなことをして、なんか、みかも(ネル)とかそらさき(ヒナ)とかけんさき(ツルギ)って奴らが、俺に圧力をかけて見て来たから、変にけんか

を売ってしまって、めいわくをかけたみたいで、今でも申し訳ないと、思ってる。

 

 

朝起きて、キリノさんにいっぱいおこられたけど、ゆるしてくれた。

 

これから、ほんかんが教えていくからって、これからはこんな事しちゃダメって、優しくおしえてもらった。もうしないと決めた。

 

 

俺は、頭が悪いから、あまり人とのきょり感が、まだつまめない。

 

 

人間として、良くないぶるいの方だと、思う。

 

 

俺の成長のために、記録をつけてみる。

 

 

だから今日から、日記を書こうと思う。

 

 

この日記は、誰にも見せないと思う。たぶん、キリノさんにも。

 

キリノさんに、二人きりの時とは言え、あまり好きとか、面と向かって言ってはいけないみたいだから、この日記で色々と書きたいと思う。

 

 

朝ご飯は、キリノさんが作ってくれた。

 

パンと、イチゴのジャムと、バターを合わせたヤツ。

 

それと牛乳。すごくうめえ。

 

美味しかった。とんでもなく美味しいくて、びっくりだ。また食べたいな。

 

 

先生の仕ごと場の、しつむしつって言う、場所に行った。

すごく広かった。そして今日から俺は、ここで勉強するみたいだ。

 

先生に、シャーレを色々あん内してもらった。

 

広いな―って、思った。すごくキレイだと思った。

 

 

先生に、スマホというケータイをもらった。

 

これがあった方が、今後に役立つって、言ってた。

 

正直、俺もスマホは気になってた。ライ(華奢な男の名前)が、スマホはダメだって言って、お金がたまった後でもそれは言い続けられてたから。

 

 

初めてさわった。色々いじってみたけど、凄かった。

 

キリノさんと先生の連らく先をもらった。どうやらモモトークってアプリで、文字を打てば、それで離れてても会話が出来るらしく、やってみた。出来た。

 

すごいと思った。キリノさんに“くりーむしちゅー”って送ったら、”美味しかったですか?”ってかえって来て、すぐに”おいしかった”ってかえした。そしたら”それはよかったです!”ってかえって来た。すぐ目の前にキリノさんがいるのに、こうしてモモトークで会話するのは、ちょっと変だと思ったけど、キリノさんは笑っていた。

 

これではなれてても、何時でもモモトークで会話が出来ますね!って、言ってた。

 

 

笑うキリノさんは、とってもかわいかった。

 

俺の、生きる意味だ。この笑顔を、ずっと見たいと思った。

 

 

 

 

午後は、先生とキリノさんがそれぞれ、仕事をしてた。

 

先生はつくえで紙を何か書いてて、キリノさんはパトロールしに行った。

 

俺は、しつむしつで、先生の横で仕事を見てた。

 

 

すごく大変そうだった。でも、俺には何も出来ないから、がんばってって、言うしか出来なかった。

 

先生は、そんな俺にありがとうって、言ってくれた。そして、すごく早いペースで、積んである紙を片づけた。

 

 

 

 

先生と一緒に、お話した。

 

 

シャーレと、先生の事をいっぱい知れた。

 

当番ってせいどがあって、それで生徒の子達と仲良くしたり、関係を深めているらしい。

 

その他にも、先生は色んないらいを受けて、かいけつして、それで仲を深めるという感じもあるんだとか。すごいな、さすが先生だ。

 

見れば、机とかカベには色んな物があった。

 

聞くに、色んな生徒のおくり物を、先生は宝物の様に、置いているらしい。

 

 

分かってたけど、先生はすごく優しい人だと思った。目が、どこまでも優しい人の目だ。

 

キリノさんも、似ている目をしている。

 

 

すごく、良い人たちに出会ったと、心から思った。

 

 

 

 

今日は、これくらいにしようとおもう。おやすみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇月✕日 2日目 天気:晴れ

 

 

 

 

 

今日は、キリノさんとはねなかった。

 

ちょっとざんねん。だけど、俺のへやのベットは、とてもフカフカで、気持ちよかった。

 

 

 

キリノさんのご飯は、ホントに美味しい。

 

何時までも、たべたいな。

 

 

 

 

今日は、べんきょうをした。

 

 

国語で、読み聞かせを先生とした。

 

本を始めて読んだから、すごく面白いと思った。

 

漢字を、キリノさんの教えでいっしょに書いた。

 

書く時のじゅん番があるらしく、ちょっと大変だった。

 

でも、楽しい気持ちでいっぱいだ。

 

日記とか、キレイに書けるようになりたいから、漢字とか、がんばりたい。

 

 

 

新しい服をもらった。

 

先生が持ってきてくれた。

 

前のスーツとは違い、丁度いいサイズになってた。本当に、かんしゃしかない。

 

どうやら、連邦生徒会の、シャーレの制服、らしい。

 

先生が、俺のためにおーだーめーど(オーダーメイド)ってやつで、めちゃくちゃ早く作って来たって、言ってた。

 

今もきてるけど、すごく軽い。

 

先生の服と、ちょっと似ている。

白と青が入ってる服で、めちゃくちゃカッコいい。

 

Yシャツは黒くて、ネクタイは青い。

 

なんだか、先生の部下になったみたいだ。

 

 

キリノさんに見せたら、すごく似合っててカッコいいですって、言ってもらえた。

 

すごくうれしかった。キリノさんと、同じ白の制服だから、なんかおそろいみたいで、良いなって思った。

 

 

先生と違う部分と言えば、俺はズボンで、先生はスカート。

 

キリノさんと同じ、確か、タイツって言ったっけ。それを着ている。

 

 

タイツ、好きになった。あれ、すごくかわいい。

 

 

 

今日はこれくらい。おやすみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇月✕日 3日目 天気:くもり

 

 

 

 

 

今日も美味しい朝ご飯をありがとう、キリノさん。すき。

 

 

いつか、キリノさんに恩返しがしたいな。

 

 

今日は、シャーレの当番ってやつで、生徒が来るみたいだった。

 

俺がいるから、心配だったけど、いらない心配だった。

 

 

来たのは、みかも(美甘)ネルだった。

 

会って早々、『よぉ……3日ぶりだな?この野郎』って、生意気にガンとばして来やがったから、俺も負けじと『ああ、会いたかったぜ』って言った。すごく変な目で見られた。

 

 

みかも(美甘)と、モモトークを交換した。

 

最初は『あ!?んでだよッ!』って、うるさかったけど、俺はキリノさんと先生いがい、モモトークの連絡先がいないから、ちょっとさみしいって、言った。後、やっぱお前とは友達になりたい。って言った。そしたら『ちっ……しゃぁねぇな』って言って、しぶってたけど、交換してくれた。

 

 

 

そういえば、みかもは≪美甘≫って漢字らしい。

 

 

 

美甘は、当番と同時に、俺の様子を見に来たって言っていた。

 

良い機会だったから、色々話し合って美甘を知ろうと思った。

 

 

聞けば、中々おもしろい奴だった。

 

 

美甘はミレニアムでは一番強いみたいだ。やっぱりって思った。

正直、強さで言えば、けんさき(剣先)そらさき(空崎)と同じだけど、変わる展開を考えた上での怖さは美甘が上手だとは思う。

 

 

偶に、俺の失言で美甘を怒らせてしまう。申し訳ないと思う。

 

でも、怒る美甘は、ぶっちゃけオモロイ。こんど、モノマネでもして、美甘を笑わせてみよう。

 

 

今日の夜、10時にモモトークを開いて、美甘とちょっと話してみようって思い、みかも(美甘)にモモトークを送った。

 

〈美甘、知ってるか?先生、今日ある事を呟いていたんだ〉って送ったら、〈な、なんだ?こんな夜更けに……言ってみろ〉ってかえって来た。〈実はな、先生、しつむ室で書類作ってて、俺は傍で勉強してたんだけど〉って送り、モモトークで文をタップするのに時間をかけていると美甘が〈早く続けろ〉とキョーミ津々で、それで急いで書いて、〈そしたらな?先生……小さい声でボソッと『う~ん……肩が重いなぁ……ちょっと、大きくなったかなぁ?』って言いながら、自分のおっぱいを揉んでたんだ。すごくね?〉って言ったら、美甘から連絡が急に来なくなって、数十秒たって、美甘から〈凄いが……ま、まぁ、なんだ。キリノには言うなよ?その事〉って来た。何故だろうか?

 

 

 

先生とキリノさん、おっぱいが大きいから、たまに、ジッと見てしまう。

 

そういえば、カンナきょくちょうも大きかった気がする。

 

でも、こういうのは、気を付けなければいけないって、美甘に言われた。

 

 

思ったけど、先生は俺と10さい位、年れいがはなれてるけど、まだ成長とか、するのか?

 

 

まぁ、あの二人には、嫌われたくないから。気を付けよう。

 

 

 

待て、少し思った、いや思い出した。

 

美甘の野郎、俺にチョップをかましていやがった。やられたらやり返す、俺のやり方だ。

いつかあった日に思いっきりチョップをしてやる。

 

 

 

 

今日はここまで。

 

日記は、面白い。

 

これからも書いて行こうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■そして────1週間後………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリノside

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは、中務キリノです。

 

 

 

レンノスケさんが此処シャーレに来てから早いもので、1週間が過ぎました。

 

 

語る事………は、一部を除けば特にはなかったですね。

 

朝昼晩の御飯、午前はお勉強、午後はお勉強とシャーレ付近でのお散歩、時折先生のお手伝い。

 

強いて言えば、当番に来る生徒さんが凄く身構えていた事、ですかね。

 

こんな感じで、問題はなく1週間が過ぎました。平和ですね~……。

 

変わった事と言えば………大幅な『犯罪率の低下』でしょうか。

 

 

レンノスケさんがシャーレ所属になり、そしてヴァルキューレに編入予定という報道は瞬く間にキヴォトス全土に広がって、様々な波紋を起こしました。

 

 

大きかったのは、キヴォトスの犯罪者たちが彼の存在を恐れ、毎日起きていた犯罪が極端に少なくなり、この1週間で窃盗や暴行、その他の犯罪が2桁に留まりました。

 

常に1日200件は受けた通報も、今は鳴りを潜めています。

 

 

 

良くも悪くも、彼が不良や悪い人達、そして民衆の皆さんに恐れられていたので、その影響は絶大でした。

 

 

ですが────今はそれが良い方向に向いています。

 

ちゃんとデータとして、彼がキヴォトスの犯罪を抑えている、これが大きな要因でしょう。

 

 

しかし、反面……どうしても見受けられる批判の声や疑問の視線もありました。

 

 

ヴァルキューレ本部、そして市民の皆さんでも、レンノスケさんの編入は特大な反響を呼びました。

 

ヴァルキューレに戻り、活動報告をカンナ局長に告げたりと、シャーレに通いつつちょくちょく本部に赴き、公務を全うしております。

 

その中で、本官がレンノスケさんと共にシャーレに居る事、監視役を任されている事……これがヴァルキューレ全体に知り渡っておりました。

 

先輩や同期、仲良くしてくれるフブキにも勿論知らされており、一度戻った時、生活安全局の皆さんにもみくちゃにされました………大変でした。

 

その中で多かったのが、やはり心配の声。

 

先輩方、特にフブキが珍しく焦燥を含ませた声質で本官を心配して下さります。

 

先生と云う大きい存在が居ても、簡単に疑念は晴らせません。

 

本官自身も理解している(分かっている)ことです……彼が、本官が実力で抑えられるような相手出ない事くらい。

 

 

暴力を受けていないか、恐喝されていないか………凌辱など酷い事をされてはいないか。

 

 

 

 

今までの彼の戦歴や被害、入院している不良達の証言を、市民の皆さんやヴァルキューレの皆さんは充てにし過ぎて、レンノスケさんがとんでもない極悪人扱いされていたのを、今回の事例で……よく分かりました。

 

本官は、彼の事を何にも知らなかったのです。

 

彼が、世間にどんな扱いを受けていたのか、真に理解していなかったのです。

 

 

初めて知りました。こんな事を思われていたのかって。

彼に対する扱いの酷さ……余りにも、可愛そうです。

 

 

 

だから、本官は皆さんにこう言ってやりました!

 

 

 

『大丈夫です。彼はそんな人ではありませんし、これから本官たちの仲間になる御方です。ちょっと危なっかしい方ですが、本当にかわい……優しくて、純粋で、心身共に強い方です。噂が一人走りしてとんでもない認識をされていますが、彼は決して悪い人じゃないのです。少し……ちょっとだけ喧嘩ッ早くて、可笑しな言動は目立ったりしますが………いずれ、レンノスケさんが此処に()()()()()()と思われます。その時まで、本官が責任を持って教育するので、その時に見定めて頂ければと!』

 

 

 

────って、言ってやったのです!

 

 

そしたら、皆さん口を開いてお口ポッカ―ンですよ!ふふふ!皆さんにも、レンノスケさんの在らぬ誤解が解けていく感じが伝わってきます!

 

 

そして、レンノスケさんは時間がある時、執務室でお勉強をしています。

 

 

お勉強、基……本官がレンノスケさんのお世話やヴァルキューレの仕事、先生のお手伝いを受け持っているので、必然的に執務室でお仕事をするのが効率的なのです。

 

 

こう言ってはあれですが、やはり忙しいですね……本官はそれに加え色々な自治区をパトロールして、そして報告として書類を制作しなければいけないので、大変ですね。

 

 

でも────それでも、いま本官の横で座って楽しそうにお勉強をしている彼を見れば……疲れが全て吹っ飛んじゃいます。

 

この1週間で、彼の良い所が沢山ありました。

 

本官が作る御飯も美味しそうに、そして実際に美味しいって言って下さいますし。

本官がお勉強を教えれば、ずっとお礼を言ってくれます。

お散歩する時、身長差があって彼とは歩幅が合わない時があるのですが、彼は直ぐに気が付いて、本官の歩幅に合わせてくれます。

ちょっと悪い事をして、それを本官が指摘しても不貞腐れず、何なら凄く嬉しそうにします……あれ?これは良い事なのでしょうか?

 

 

まだ一杯あるのですが、今はここら辺で……やっぱり、レンノスケさんは良い人です。

 

ちょっと他の方々に対して【圧を掛けて挑発してしまう節】がありますけど、それを除けば純粋な方です。

 

 

それに、この1週間でレンノスケさんは少し言葉使いが良くなった気がします。

 

 

環境の理由もあって、レンノスケさんは言葉使いが時折拙い部分がありました。

 

余り人と話した事が無いのもあって、仕方ないと思っていたのですが……最近スムーズに会話が進むようになったのです!

 

 

嬉しい変化です。国語を重点的に取り入れて、最近では音読も行いました。

 

それもあって、少し語彙も向上しています。本官も、レンノスケさんに負けないよう日々精進しなきゃですね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼場面は変わり、執務室。

 

 

 

 

 

 

 

 

「────なるほど、つまり……答えは7か」

「はい!大正解です!レンノスケさん割り算はもうお手の物ですね!」

 

 

 

現在……執務室にはレンノスケとキリノが席に座って、キリノがレンノスケの勉強を見ている。

 

先生は……トリニティに大事な会議があるらしく、もしかしたら遅くなると二人に告げ、現在はトリニティに居る。

 

 

 

「算数……足し算と引き算は知ってたが、まさか、掛け算や割り算と云った、こんな方法があったなんて……難しいが、面白いな」

「……ふふっ!」

「?……どうした?」

 

 

 

不意に、キリノがレンノスケの方を向き笑う。

 

唐突なモノだった為、レンノスケはどうして笑ったのかを問う。

 

 

 

「あ、いえ!その……レンノスケさん、良い意味で変わったな―って思いまして」

「変わった?」

「はい!初めて会った時、レンノスケさん……どんな場面でも顔が『無表情』だったり、時には凄い怒ってる様な顔付だったんですが、今は少し表情が和らいだと言いますか、その……柔らかい、優しい顔になったな―って、思いまして!」

「そ、そうなのか?俺が………」

 

 

 

キリノの発言に、レンノスケは一瞬疑問を浮かべる。

 

しかし、即座に浮かんだ疑問を取っ払う。レンノスケはキリノの言動を全て信じているから。

 

だから、キリノの言った事は正しいという事。今の自分は、どうやら柔らかい表情をしているのだと、理解したのだ。

 

 

 

「……その、すまない。俺自身、余りその自覚がないというか……」

「むむ、そうですか……本官から見たら、凄い変化だと思ったのですが……」

「あ、いや!疑ってるとか、そういうんじゃないんだ!その、俺は余り表情を作るのが上手くないから……でも……キリノさんが、そう言ってくれるって事は、きっと今の俺は昔の俺とは違う、マシな表情を作れるようになったんだろうなって、思ったんだ……すまない、キリノさんに、勘違いをさせてしまった……」

 

 

 

レンノスケはキリノに頭を下げ、謝罪をする。

 

謝罪の仕方はキリノから教わり、この一週間で何十回もした為、綺麗なフォームで『ごめんなさし』を行った。

 

 

────しかし、今回の件は誰も悪くない。

 

 

キリノはレンノスケの行動に酷く驚愕し、一瞬固まるが、即座に慌ただしくレンノスケの両肩を手に添え顔を上げるよう催促する。

 

 

 

「そ、そんな!?謝らないで下さい!えっと、本官が勝手に勘違いをしただけですし、寧ろ本官がレンノスケさんに謝らなきゃいけないって言うか、その……え、えっと!貴方がそんな謝る事は一つもないですよ!?だ、だから、頭を上げて下さい!」

「し、しかし……分かった」

 

 

 

スゥっと、ゆっくり顔を上げるレンノスケ。

 

その表情は、心の底から申し訳ないという顔付きだった。

 

こういう点も、とても分かり易くなったなと、キリノはふと感じた。

 

 

 

「…………………」

「…………………」

 

 

 

────沈黙。

 

非常に珍しい事態になった。

二人はこの一週間、大変仲睦まじく、この様な沈黙の空間は無かった。

 

キリノが話しかけ、レンノスケが答える。

レンノスケが話しかけ、キリノが答える。

 

何て事の無い会話をして、時に話が盛り上がって、お互いの長所短所を知り、趣味を知り、中を深めていく。

 

キリノが望んだ、()()()()()()()()()()()()()と云う事。

 

少しずつ、着々と……二人はお互いを理解しあっていく。

 

 

だから………今キリノとレンノスケは、この作ってしまった沈黙の空間に、中々慣れないでいた。

 

 

 

「────……っ!あ、あの!……………え?」

「────……ッ、そ、その………………む?」

 

 

 

発言が重なり、それぞれがキョトンとした顔になる。

 

呆気にとられ、暫し硬直し、そして────。

 

 

 

「……被ったな」

「はい……被りましたね………ぷ!くふ、あはははっ!なんですか?今の!ふ、ふふっ!」

「ふは、ああ、本当に何だろうな……」

 

 

 

巻き起こる笑いの声。

 

キリノは吹き出す程に笑って、レンノスケは軽く笑みを零す。

 

可笑しな沈黙のせいで、妙な感覚に陥り、そして奇跡的に発言が重なって、最後には笑ってしまう。

 

 

 

「……なぁ、キリノさん」

「ふ、ふふっ………あ!はい!なんでしょう?」

「今のキリノs………ああいや!その……」

「……???」

 

 

 

レンノスケは未だ笑みを零すキリノに声を掛け、キリノの全てを褒めようと口を開くが一度止める。

 

笑い声は勿論、レンノスケはキリノの仕草や笑顔、その全てが本当に可愛らしいと想っている。

 

しかし、先生曰く、女性はふとした瞬間に口説き文句を垂れると女性はトキメクと、以前レンノスケは相談した時に告げられたのを思い出す。

 

今は二人きり、言っても構わない。しかし……まだ言わない。もうむやみやたらには言わないよう心掛けたレンノスケはそう伝えるのは辞め、咄嗟にこう口走る。

 

 

 

「えっと……さっき、キリノさんは俺の表情が和らいだって言っていた」

「はい!それはもう!」

「それは、キリノさんが俺に、ずっと優しくしてくれたからだ。偶に怒られるけど、それもキリノさんが俺の事を想っての行動だって、勝手ながら俺は思って、有難いと感じていいる。ありがとう」

「あ…っ!いえ!本官こそ、ありがとう御座います!本官もレンノスケさんには学ぶことも多くって、此方こそいつもありがとうです!えへへ…!」

「(やばい、可愛すぎる……)そうか、俺に学ぶ事なんてあるか分からないが……そう言ってくれて、本当に嬉しいよ」

 

 

 

100%の善意を、お互いが全力でぶつけ合う。

 

平和で、穏やかで、優しい空間。

 

キリノは何だか恥ずかしくって、顔を赤くする。

レンノスケは今まで感じた事のない空間に、心がポヤポヤして、キリノ同様に顔を赤くする。

 

少し、また沈黙が続き、レンノスケが思った事をキリノに向け問う。

 

 

 

「……今日は、先生が居ないから、当番も来ないのか?」

「あ、えっと…そうですね。先生が居ない場合は、その日は当番制は無い、と記載されていますね」

 

 

 

キリノはホワイトボードに記載されている当番制の事を読み、そのままレンノスケに告げる。

 

 

 

「そうか……じゃあ、今日は当番は来ないんだな」

「そうですが………あ────そういえばレンノスケさん、当番の生徒さんが来る度、毎度そこの休憩室に行って『此処で勉強する』って言って、入って行っちゃいますけど……それは一体どうして?」

「ああ、それか、簡単だ。俺が居ると、その当番の子は怖がってしまう。顔はこんなだし、この体躯……怖い筈だ」

「そ、そんな………で、でも!レンノスケさん、もう怖くないと思うのですが……」

「うーむ……どうだろうか……俺、初めてブラックマーケットから出た時、美味しそうな泡を食ってた子が居たんだが……ビックリしたんだが、その泡なんだろうって話しかけたら凄く震えて、終いには涙出されたんだぞ」

「ええ……可哀想すぎる話です……」

「慣れたモンだったが、ちょっとトラウマ」

 

 

 

そして、また始まる会話。

 

内容は……ほろ苦いレンノスケの思い出話。

 

つい最近の出来事だが、それ故、レンノスケの中でかなり苦い出来事の様で、それを話すレンノスケの表情は少し、ほんの少しだけ暗く見えた。

 

キリノはそれを即座に察し、慌てて言葉を繋げる。

 

 

 

「き、きっと!もう大丈夫だと思いますよ!ほら!レンノスケさん、最近表情が優しくなって雰囲気もかなり落ち着いてきてますし!」

「キリノさん……褒め上手すぎだぜ」

「ほ……本音ですからね?本官はレンノスケさんの顔は全く怖いとは思えませんが、レンノスケさん自身はやはり、その……気にしているのですか?」

「いや、特段気にしていはいないな。この顔のお陰で壊滅させた組織、その残党の牽制に繋がる。少ないが、利点は一応あるから、嫌いって訳じゃない。好きでもないが」

「そうだったのですね……」

「因みに話は変わるが、俺はキリノさんの『綺麗な顔』から咲く『何よりも変えがたいその美しい笑顔』には、人を助ける力があると、思っているぞ」

「ぶふっ!?い、いきなり貴方は……ッ!…もう……そう言って頂けると、嬉しくなっちゃうので、あんまり言わないでくだっさいよぉ……」

「か、かわいい……(あ、言ってしまった。ま、いいか)」

「~~~~っ!ま、また………うぅぅ……////」

 

 

 

先程言った、先生のアドバイスを速攻で忘れるレンノスケ。

 

それほど、レンノスケがキリノに抱える想いは強い。

 

そんなレンノスケに、キリノは只々、顔を真っ赤に染めて羞恥に悶えるしか出来ない。

 

否定はしたい。でもレンノスケの余りにも真っすぐな視線と発言に、どうしても否定の言葉が出て来ない。

 

レンノスケはそんなキリノの様子に柔和な雰囲気を纏い、以前感じた圧力は完全に息を潜めていた。

 

 

 

 

 

────キリノは思う。初めて会った時と比べ、レンノスケは大人しくなった、と。

 

 

 

いや……大人しくなった、と云う言い方は違うかもしれない。

 

 

レンノスケのイメージ……今までは暴虐武人、悪を滅する悪として恐れられてきたレンノスケのイメージが、完全に崩壊した、と言えばいいか。

 

 

レンノスケは……妙な言動は多いが、暴力的な問題は一切しなかった。

 

 

時折おかしな事をやらかしてはキリノに叱られるが、決して当番の生徒とトラブルになる様な事は一切しなかった。

 

 

その理由として、レンノスケは来る当番の生徒の子達と『一切』関わっていないのである。

 

 

関わってはいない。自分から遠ざかる様に、当番の生徒が来たら休憩室に行って勉強をする。当番が来る時、これが主な流れであった。

 

レンノスケは自分が生徒達にどう思われているのか自覚している。

だから自分から遠ざかる。先生と生徒の関係を邪魔しない様に。

 

先生はそれを理解している。

 

先生個人としては、レンノスケと他の生徒とは仲良くしてほしい面が強くあった。

しかし、年単位で蓄積された誤解は直ぐに解ける訳が無く、連邦生徒会や各自治区の声明があったとしても、そう易々と信頼される訳もなかった。

 

だから、先生は当番に来た生徒達にはレンノスケに対する恐怖感を少しずつ無くしていこうと考えていた。

 

少しずつ、解けていけば良い……そんな想いが先生にはあった。

 

 

ここで、キリノが先程の会話で引っかかった単語を思い出す。

 

 

 

「……ん?そういえば、先程レンノスケさんが仰った『美味しそうな泡』って、なんですか?」

「それか?ああ……なんて言えば良いか、その…なんか、紙?みたいなのを薄い生地?だっけ、その生地を紙で包んでて、それで、美味しそうな泡の周りにバナナと、赤いやつが乗ってて、凄く美味しそうなやつで……わ、分からないよな、すまない……」

「────もしかして『クレープ』の事でしょうかね?」

「くれーぷ?」

「えっと……あ、これです」

 

 

 

キリノが自分のスマホでクレープを検索し、それをレンノスケに見せる。

 

 

 

「ッ!これだ!これ、これだよキリノさん!あの時見たヤツと一緒だ!」

「やはりクレープでしたか!えっとですね、これはクレープと言って、主にデザート系の料理で親しまれている食べ物でして、とっても美味しい料理なんですよ!」

「そうなのか!うわぁ、あの時見たヤツだ……写真からでも分かる、美味しそうだな……」

 

 

 

レンノスケはキリノが見せるクレープの写真に、熱い視線を送る。

 

 

 

「────じゃあ!い、一緒に食べに行きませんか?」

 

 

 

ここで、キリノがレンノスケに提案を投げかける。

 

思ってもいなかった提案に、レンノスケは動揺を隠せない。

 

 

 

「え!?い……いや、ちょっと待ってくれ、俺が見た所は此処からかなり離れてるし、それに一緒にって……これ、凄く高そうだし、えっと、その……迷惑な気がして、えっと……」

「ふふ!レンノスケさんは優しいですね。ですが、お金の事ならご安心ください!これでも節約はしている身ですし、この間先生から『これ、キリノとレンノスケで使い分けて』と、頂いた予算があります!なので、レンノスケさんが気にすることは何にも御座いません!」

「そ……そっか……あ、あの、キリノさん。いいのか?」

「勿論です!クレープ屋さんはシャーレの近くにありますし、本官も最近クレープは食べていなかったので、タイミング的にも丁度良かったです!それに、レンノスケさんのお陰で食べる機会が出来たともいえるので!」

「キリノさん………ありがとう」

 

 

 

レンノスケはキリノの厚意に感謝した。

 

そして同時に、初めてのクレープの実食に、非常にワクワクしていた。

 

どんな味なんだろう、食感はどんな感じなんだろう、そんな様々な楽しみがレンノスケの感情をぶち上げる。

 

 

 

「時間も良い頃合いですし、早速向かいましょう!ほら、早く!」

「あ、ああ、分かった、分かったよキリノさん……ふはっ」

 

 

 

そして、レンノスケは自分より瞳を輝かせ、クレープを直ぐに食べたがっているキリノを

一瞥し、朗らかに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”────まいどでーす!”

 

 

 

 

「────う……美味すぎる!」

「美味しいです~!」

 

 

 

時刻は午後の3時を過ぎる。レンノスケとキリノはシャーレ近辺のグレープ屋に行き、レンノスケはストロベリークリームを頼み、キリノはバナナチョコクレープを頼んだ。

 

レンノスケは元々ストロベリークリームが気になっていた為、直ぐに決まった。

キリノはレンノスケがそれを頼むのを見越し、別のメニューに絞ってバナナチョコを頼んだ。

 

 

クレープを頼み、二人は近くのベンチに腰掛ける。

 

近くには、誰も居ない。この辺りは元々人気がない場所、そしてレンノスケの出現情報もあって今はキリノとレンノスケしか居ない。

 

 

また……キリノは、ちょっとだけ、ある事に対して期待をしている。

 

そして、今はチャンスなのかもと、感じても居た。

 

 

 

「美味しい!キリノさん!これすごく、美味しい!」

「そうですね!レンノスケさんのストロベリークリーム、ボリューム満点でとっても美味しそうですね!」

「ああ、だがキリノさんの、そのチョコも美味しそうだな!」

 

 

 

モグモグと、頬を膨らませて味わって食べるレンノスケとキリノ。

 

レンノスケは初めて食べるクレープに驚愕し、幸せそうなオーラを発して咀嚼を続ける。

キリノは久しぶりに食べるクレープの美味しさを再確認し、そして幸せそうに食べるレンノスケに思いを馳せる。

 

 

 

「────はぁんッ!」

 

 

 

”ピシャァ――ン!!”

 

 

 

瞬間、レンノスケの脳内に電流(下心)走る。

 

 

 

「もぐもぐ……んぐっ、は……なぁ、キリノさん」

「むぐ?もぐもぐ……んっ、は……はい!どうしましたか?」

「キリノさんが良ければ何だが、俺のクレープとキリノさんのクレープ、一口食べ合いっこしないか?」

「あ……」

 

 

 

レンノスケが告げた言葉は、キリノが()()()()()()()()のモノだった。

 

 

そう……キリノは、レンノスケとクレープを食べに行かないかと提案した時、この展開が来る可能性を見抜いていたのだ。

 

最初こそ厚意による提案だったが、キリノは今までレンノスケが自分に対しかなり攻めた事を仕掛けて来た節があったので、こういうクレープの様な甘い食べ物を二人きりで食べに行き、食べ合いっこする……まるで『少女漫画』の様な展開をレンノスケは仕掛けてくるだろうと、キリノは予測してしまった。

 

そして、案の定レンノスケはお互いのクレープを食べ合いっこしないか提案してきた。

 

正直分かり易く、余り驚きはしなかったが……キリノは今自分が顔を赤くしてもじもじしている事には気付かない。

 

 

 

「?……キリノさん、もしかして嫌だったか?」

「へ?……あ、いえ、その……えっと……」

「……すまない、嫌だったら、謝る。ちょっとキリノさんの、食べるバナナチョコが、気になってしまっただけなんだ」

「は、いや!ちがっ!……違いますっっ!!!」

「うおぉ!?」

 

 

 

動揺している間に、レンノスケが勘違いをしてキリノに謝罪をする。

 

しょぼんと、あからさまに落ち込むレンノスケを見て即座に否定の意を唱え、ガバッ!と、レンノスケの太腿に手を置き、前のめりにレンノスケを下から覗き込む。

 

レンノスケはキリノの唐突な行動に、驚愕と歓喜の声を上げる。

 

 

 

「違いますから!嫌だとかそんな事、考えていませんから!寧ろ、レンノスケさんと食べ合いっこしたいなって、思ってたんです!」

「え?そうなのか?」

「そうですよ!動揺してしまった私も悪いですが、レンノスケさんも自分が悪いって直ぐに勘違いして……何にも悪くないのに謝る癖は直して────………ん?」

 

 

 

何かが可笑しい。

 

自分は今、何と言った?

 

 

 

「キリノさんの言葉、心の中で大切にする。そして………そうか、キリノさんも、俺と同じ考えだったんだな」

「あ……はわぁ!?あ、あの、えっと、その!い、今のは────……………はい、ちょっとだけ、期待してました……」

 

 

素直になる。レンノスケの何処までも嬉しそうな瞳に、嘘は付けなかった。

 

元々、キリノは嘘が付けない人間である。レンノスケの前だと中々どうして、素直になれない時が少しだけある。

 

こんな事、キリノの人生で今までに無かった。

 

不思議な感覚、しかし全く嫌ではなかった。

 

 

 

「キリノさん……そっか、嬉しいな」

「も、もう………はい、どうぞ」

 

 

 

キリノは顔を真っ赤にして、恥ずかしがりながらも、レンノスケに自分のクレープを口元に近付ける。

 

 

 

「あ……ああ、ありがとう、キリノさん。いただきます」

 

 

 

”パクッ”

 

 

 

「あ……わ、私が食べた所から……くぅぅ……///////」

「え、うっま………美味し過ぎないか?これ」

「そ、それは良かったです……」

「……普通にバナナチョコがデフォで美味いのもあるが、キリノさんが食べた事によって、美味しさが倍増しているのかもな。掛け算みたいに」

「んなっ……~~~~っっ!もう!もう!!」

「おお、キ、キリノさん、ほっぺは今は、ちょっと……へへ」

 

 

 

レンノスケの変態発言に怒るキリノ。

 

ほっぺを摘まみ、怒りと恥ずかしさで顔が赤色に染まる。

 

 

もう許さないと、キリノはレンノスケにある事をする。

 

 

 

「う、うぅぅ……~~~ッ!えい!」

「あ」

 

 

 

”パクッ”

 

 

 

キリノが隙を突いてレンノスケのクレープを少しだけ齧る。

 

モグモグと少ない咀嚼を行い、そして告げる。

 

 

 

「────え、えへへ……どうですかレンノスケさん、隙あり……ですよ?」

 

 

 

 

”────ズキュン”

 

 

 

 

瞬間、レンノスケの心は、キリノの事で一杯になった。

 

 

そして、レンノスケは真っ直ぐキリノを見つめ、告げる。

 

 

 

「え?女神…?」

「違いますよ!?」

「へ?……あ、ああ、なんだ、可愛いキリノさんか……」

「な……く、うぅぅ……///////」

「可愛いなぁ、キリノさん」

「か、からかわないで下さいぃ……」

「ほ・ん・ね……だぞ?」

「何ですかその言い方……もう」

 

 

 

 

その後、レンノスケはキリノに謝りつつ、キリノともう一口あげあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、ふふっ、レンノスケさん」

「むぐ?……ん、どうした?キリノさん」

ここ(右ほっぺ)、クリームが付いてますよ」

「え?本当か?……ここか(左ほっぺ)?」

「ふふっ!いいえ、ここです……ジッとしてて下さいね」

「へ、え………」

 

 

 

キリノがレンノスケの右側のほっぺに指をさすが、レンノスケがキリノから見た行動は鏡の様なモノ。レンノスケは勘違いして左ほっぺに手を伸ばすが、クリームは見つからない。

 

 

笑いを堪えながら、キリノはそのままレンノスケの頬辺りに指を伸ばし、クリームを取る。

 

 

 

「ふふ、ほら!付いてましたよ?」

「あ、ああ……ありがとう、キリノさん」

「ふふふ……………」

「……………………」

 

 

 

キリノは思った………このクリーム、どうしよう……と。

 

 

 

「(な、何をしているのですか私は…ッ!こ、これ、そのままレンノスケさんに差し上げるもマズければ、私がペロってしちゃうのもマズイですし……ど、どうしよう、どうし────)」

「うーむ……いただきます」

 

 

 

”パクッ”

 

 

 

キリノが指に乗ったクリームをどうしようか思案していると……レンノスケがキリノの指に口を近づけ、そのまま歯を立てずに舐める。

 

 

 

「…………はへぇ?」

「うん、やはり、キリノさんの指に乗った生クリームは味が違うな、美味すぎる……さて、舐め舐め、と…」

 

 

 

”ぬちゅ、ぬちょ……ヌロン……”

 

 

 

ぺろぺろべろべろと、キリノの指を舐め回すレンノスケ。

 

 

 

「………あの」

「レロ、ぬちょ………ふぅ……あー美味しかった。む?どうした?キリノさん」

「………自分が何をしたか…分かっていますね?」

 

 

 

キリノは顔を赤く染め、今にも泣きそうになりながらもレンノスケに問う。

 

怒ってはいる、だって……レンノスケがした事はシンプルにヤバい奴である。

 

此処には誰も居ないからと言っても、外でこれをするのはダメだから。

 

 

 

「ふむ……悪い事じゃないと思う」

「な……はいぃぃ!?」

「だってキリノさん、すげぇ悩んでたぞ。このクリームをどうするか、食べるか否か………だが、キリノさんの顔を見て、捨てるって選択肢を考えてなかったのは分かる位には、キリノさんの悩みは分かり易かったぞ。それに、さっきのクリームは俺が招いた問題だ、キリノさんが食べるのはそれはそれでいいが、指に乗ったクリームをどうしようか悩んでたキリノさんは………凄く可愛いから食べちゃった」

「最後ー!最後にとんでもない事言っちゃいましたね!?それが本音ですかレンノスケさん!!」

「ふっ……大正解────あ、いや、反省してる……反省してるから、そう怒るなキリノさん……まぁ、許してほしいって訳だ」

「本当に反省しているのですか!?もうー!貴方と云う人は!指がこんな……~~~~/////!!」

 

 

 

”ぶるっ……”

 

 

 

ここで、キリノに催し(おしっこ)の兆しが現れる。

 

 

 

「────っ………お、お手洗いに行ってきます!!」

「?……おてあらい?手ぇ洗うのか?」

「え、えっとぉ……そう!そうです、貴方のよだれを洗いに行かなきゃ────」

「なーんてな。お手洗いの意味くらい知ってるぞ?キリノさん。トイレだろ?」

「んなっ!?……~~~~!!もう!意味を分かっているのなら、そんなイジワルしないで下さい!」

「へへ、ああ、分かった。悪かったよキリノさん。おしっこか?」

「セクハラ―!!そういう事は確認しないでいいんですぅ!指を洗う、そのついでですぅ!もう!ちゃんと此処に居て下さいね!?」

「くはは!あぁ、分かったよ、キリノさん……ゆっくりで良いからな」

「どの口が言っているのですか!」

「ふっ………可愛い」

 

 

 

ぷんすかと怒りながら近くの公衆トイレに向かうキリノ。

 

其処はレンノスケでも視認できる距離ではある為、そこまで離れてはいない。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……さて────おい」

 

 

 

 

キリノが背中を向けてトイレに向かう、そして……十分な距離が出来た瞬間、レンノスケが言い放つ。

 

 

 

 

 

「────数分だけ、時間がある……そこの茂みに居る奴、出て来い」

 

 

 

 

”ガサっ……”

 

 

 

 

小さく、しかし確かな動揺を思わせる音が辺りを包む。

 

 

 

「安心しろ、俺はお前を殺さない。痛めつけたりもしない……だが、10秒以内に其処から出なければ────お前の命の保証はない」

 

 

 

”ズアァッッッッッ!!!”

 

 

 

重い重圧が、茂みに隠れる者へと襲う。

 

脅しではない。レンノスケは本当に……殺す気でその発言をしているのだ。

 

 

 

”がさっ……”

 

 

 

「ん……?」

「…………」

 

 

 

レンノスケが数える、その寸前で隠れる者は姿を現した。

 

思っていたよりも早い出現に、レンノスケ自体も少し戸惑いを見せるが、その姿を見て更に衝撃を受ける。

 

 

 

「おいおい、マジか……」

「────じょーがさき、レンノスケ……?」

 

 

 

小さすぎる……そして余りにも……幼すぎる見た目だった。

 

自分と比べれば、80㎝以上の差はある。

 

しかも、見たらその少女は【ガスマスク】を被り、少しダボダボな戦闘服を着用した、普通の人が見たら不気味な格好をしている。

 

只事では無い……それは確信だった。

 

 

 

「ああ、城ヶ崎レンノスケは俺の名だ。お前、俺を知っているのか?」

「うん、知ってる」

「そうか……なら単刀直入で言おう────何者だ?」

「………」

 

 

 

ガスマスクの少女が怖がる様子はなかった。

自分と対面して逃げない子供はレンノスケから見ても珍しく、そして不気味だった。

 

何より……気配を上手く感じ取れないのだ。目の前にいるのに、それが一番不気味だった。

 

 

 

「(奇妙だ……茂みの中に居た時はあんなに存在感を出していたのに、何故今は……こんなに気配が読みずらい……?)」

 

 

 

生まれる疑問は、只々、奇妙で不気味だった。

 

気配や圧、存在感を感じ取る事に関してレンノスケは超一級品と云っていい程に卓越している。

 

それは今まで散々命を狙われ、その末に獲得した第六感の様なモノ……その性能はキヴォトスでも指折りの類だ。

 

そんなレンノスケでも、目を離せば一瞬で何処かに行ってしまうのではないか────そう思わざるを得ない程の『気配の隠し方』を発揮する目の前の少女に……言いようのない感情を抱いた。

 

 

 

「もう一度言うぞ……お前は”何者”だ?」

「………」

「口を割らず黙りこくる……拷問には慣れているタマか、ガキの癖して、この俺に対する態度は一丁前だな」

「……ガキ、じゃない」

「あ?」

「私は……ガキ、じゃない」

「あ?────ふん……口を開いたと思えば、自分はガキじゃない、か……────まぁ、そうだよな。すまない、悪かった。お前はガキじゃないんだな……なら、名前を教えてくれ」

 

 

 

レンノスケは少女を煽る訳でもなく、ただ目の前の少女の名を問う。

 

これはキリノの教育と云う約束だった。人と話す時、威圧的な態度は取らず其の人と同じ目線で対等に会話をしなければイケない。煽らず、気を悪くさせてしまったら謝罪をする。

 

キリノが自分にしたように、レンノスケは人を下に視る様な言動はもうしないと決めたのだ。それがどんなに年下の子供でも。

 

 

 

「………天丈アイラ」

天丈(てんじょう)アイラか────なら、アイラ。これは三度目になるが、お前は何者なんだ?どうして俺を付ける?」

「……何者なのかは、言えないけど………目的はある────じょーがさきレンノスケ、あなたを殺す、そういう目的」

「………」

 

 

 

率直すぎる回答だった。

 

そして妙な気分になる。俺を殺そうとする者に、大人は腐るほど居たが子供は居なかった。

 

加えて……こんな小さい少女に命を狙われるなんて、初めての事だった。

 

 

 

「?………こわく、ないの?」

「まぁ、珍しくもないしな。命を狙われる何て俺からすれば日常茶飯事だったし。まぁ……流石にお前の様な子供に狙われる何て事は一度も無かったが………」

「そうなんだ……」

「あぁ……しかし妙だ。何故お前から【殺気】が見受けられない?アイラ、お前の目的は本当に俺を殺す事なのか?」

「…………」

「(また黙った……ガスマスクの効果で感情が読み辛い)……目的はそれだけか?」

「……もう一つだけ、ある」

 

 

 

アイラが武器を構える。

 

その動きにレンノスケは構えない。マジマジと見つめ、目の前の少女の動きに集中する。

 

 

 

「怖い……人を、殺すのが、とてもこわい」

「………」

「これ、みて」

 

 

 

少女が懐から『奇妙な爆弾』を取り出す。

 

それは……レンノスケから見て……。

 

 

 

「止めておけ」

 

 

 

 

静止を促す程────不気味だった。

 

 

 

 

「………」

「それがどういう代物なのかは知らんが、俺は兎も角、お前が喰らえば只ではすまないぞ」

「………だから、もっているの」

「なに?」

「……じょーがさき、レンノスケ……あなたに、憎しみはない。なんで殺さなきゃいけないのかも分からない。だけど────────ごめん、なさい」

 

 

 

”カチッ────”

 

 

 

嫌な音が響く。アイラが何かを……いや、明白だ。

 

押したのだ────爆弾の、起動のスイッチを。

 

 

 

”ピ…ピ…ピ……”

 

 

 

「おいッ!」

 

 

 

立ち上がり、少女に近付く。

 

しかし、アイラは臆する事なく次の一手に動き、そして何と────

 

 

 

”ギュゥゥゥ”

 

 

 

「あ!?」

 

 

 

何と……抱き着いてきたのだ。

 

レンノスケの思考が一瞬真っ白になる。唐突過ぎる行動、理解が追いつかない。

 

しかしアイラは間髪入れず、発語する。

 

 

 

「身体に、巻いてあるから、抵抗はむだ……っ」

 

 

 

アイラはレンノスケの足に体全体を使って抱き着く。

 

自分が今、出せる力で、引っ付く。

 

これは……ベアトリーチェに教えられた『必殺技』だった。

 

 

 

”べりっ!”

 

 

 

「っ!?」

「俺に力任せの引っ付きは効かん」

 

 

 

しかし……アイラのした事は余りにも無謀だった。

無理矢理、力づくでアイラを離す。

 

そして、そのまま地面に押し倒し────服を脱がした。

 

 

 

「あっ……」

「ふんッ!……っ!クソ………マジじゃねぇか」

 

 

 

服を脱がした……とは言っても、脱がしたのはアイラが着用していた戦闘用コートだけである。

 

アイラが発した『身体に巻き付けてある』と云う発言を、レンノスケは聞き逃さなかった。

 

レンノスケはこの一瞬で思考を巡らせ、アイラが押した爆弾は〈時限式の爆弾〉と決めつけていた。

アイラから聴こえる聞き馴染んだ〈電子音〉……巻き付けたと言っていたのは本当で、恐らくアイラは自分と『遂げる』つもりなのだと、その震えた声質から決めつけたのだ。

 

珍しく考察をし、そして行動に移した……結果で言えば『当たってしまった』のだ。

 

 

 

「オラッ!!」

 

 

 

”べりっ!ガチャっ!バキン────”

 

 

 

「あ……爆弾が………」

 

 

 

そのまま、ガムテープで巻きつけてあった爆弾は、レンノスケが力任せに引き千切って、アイラから爆弾を離す。

 

 

 

”ピッピッピッピッ………”

 

 

 

7、6、5、…次第に数字が減っていく。

 

 

 

「(時間がない!このまま遠くに、投げ────)」

「────レンノスケさん?」

 

 

 

”ぞくっ………”

 

 

 

レンノスケは、背筋が凍り付く感覚を覚えた。

 

立ち上がって、爆弾を投げるモーションの途中だった……丁度、投げる方向とは後ろの、真後ろから話しかけられる。

 

その声は……自分が愛した人の声だった。

 

 

 

「一体……何をして…………いるのですか?」

 

 

 

一瞬だけ、後ろを見た────姿を見た、中務キリノだった。

 

その表情は………信じられない、信じたくないモノを見る様な、目つきだった。

 

 

それもそうだろう……傍から見たら、レンノスケは小さい女の子を押し倒し、服を脱がして襲っている様な風景なのだから。

 

 

レンノスケは、キリノがアイラをイジメている様に見えたと勘違いをしている……『そういう意味』を知らぬレンノスケは、弱い頭でそう捉えた。

 

 

 

 

”ピッ、ピッ────”

 

 

 

 

「っ……クソッ!」

 

 

 

しかし、無情にも死の電子音は死への進行を止めない。

 

見れば………時間は残り”3秒”を切っている。

 

 

投擲はとても間に合わない。

 

 

此処に居れば………巻き込んでしまう。

 

 

 

事の元凶のアイラも……────キリノを(大切な人を)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”ドゴォォオンッッッッ!!────”

 

 

 

 

 

「きゃっ!!?」

「っっ!」

 

 

 

とんでもない踏み込み音を轟かせながら、其処から一気に離れるレンノスケ。

 

投げる行為では投擲モーションでタイムを過ぎ、二人に被弾してしまうと予測したレンノスケは、咄嗟に其の場から離れる決断を取る。

 

 

 

”ピッ………”

 

 

 

残り”2秒”を切る。

 

距離的には40mは離れた………その事を瞬時に理解し、レンノスケは────

 

 

 

「(駆けろ────もっと、もっと遠くにぃッっ……ッッ!!)」

 

 

 

────勢いを止める事無く、スプリントを回転させ加速する。

 

60、70、80、90……100m。

 

残り2秒を切って尚、距離を伸ばす……被害をゼロにする為に、人の気配がしない場所へと向かう為にギアを上げる。

 

 

 

”ピッ────────”

 

 

 

”1秒”………爆発への道、進むタイマーが止まる。

 

 

 

「────────ッ、はぁあ!!」

 

 

 

 

”ブン────……”

 

 

 

 

瞬間────レンノスケがトップスピードを維持したまま仰向けの姿勢に成り、厳しい態勢のまま爆弾を上空に投げる。

 

 

 

「だめ、か………」

 

 

 

体制が中々どうして悪く、空に向かう爆弾は15m程しか行かない。

 

しかし、予想通り────距離は十分すぎる程、稼げたのだから。

 

 

 

「(せめて、背中で……受けろ…ッ!)」

 

 

 

 

”ピッ────……”

 

 

 

 

”0秒”────最悪が起こる。

 

 

 

「(さて……どうなる………っ!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”ドオォォォォォォォォンンンッッッッッッ!!!!!!”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────ここで、言おう……アイラと云う少女が持っていた爆弾の実態を。

 

 

轟音を鳴り響かせ、絶大な爆発力を魅せる爆弾……その正体は────ヘイローを所持する者の命を無条件で刈り取る最悪の代物…………【ヘイロー破壊爆弾】である。

 

 

 

…………しかし、アイラが所持していたヘイロー破壊爆弾は、サオリやアズサが所持していた徒来のヘイロー破壊爆弾ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイラ、貴女に渡す爆弾は『範囲』が広く、且つ『威力』も従来の物(ヘイロー破壊爆弾)とは格が違います。確実に、城ヶ崎レンノスケを殺し得るでしょう………────誇りなさい、アイラ……貴女は己の命と引き換えに()()()()()()()()を救えるのですから」

 

 

 

 

 

 

 

「────はい、マダム……私、アイラは…この身に代えてでも、じょーがさきレンノスケを………ころして、いきます(逝きます)

 

 

 

 

 

 

ベアトリーチェがアイラに渡した物は正真正銘のヘイロー破壊爆弾。

 

 

 

 

だがそれは、制作者である『デカルコマニー』から受け取った一部を保存し、ベアトリーチェが確実性を高め、己が持つ最大限の技術を投資し改良を加えた『最強最悪の最高傑作品』である。

 

 

 

詰まる所、ヘイロー破壊爆弾…………それの〈改造版〉であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けたたましい爆発音。

鼓膜が破れんばかりの轟音だった。

 

そして………周囲を巻き込む甚大な強さを誇る爆炎。

 

 

 

「な………なに、え……え、え……あ、え…?」

 

 

 

100m先、キリノが視認できる距離で起こった出来事は………キリノを絶句させるには、余りにも十分な現象だった。

 

 

 

「レ、ン………レ、ンノ、ス…ケ、さ………?」

 

 

 

────キリノの視線に広がる光景は……理解が追い付かない地獄だった。

 

 

 

「────……」

 

 

 

キリノの先に居る……倒れ伏す存在………それは先程まで一緒にクレープを食べて、一緒にお話をして、一緒に……────隣り合わせで居た、愛し人だった。

 

 

────城ヶ崎レンノスケが、辺りに血の池を作り、血達磨に成って……倒れ伏していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、あ、ああっ……はぁっ!!───────れ、レンノスケさんッッ!!!」

 

 

 

走る、我武者羅に、力一杯に走る。

 

冷静に成れない。成れるわけない。目の前の光景に、息が詰まる程……心臓の鼓動が早くなって仕方ない。

 

 

 

「そん、え、やぁ……レン、レンノスケさん!レンノスケさんッッ!!!」

 

 

 

ゆさ、ゆさ……うつ伏せに倒れ伏すレンノスケにを揺らす。

 

呼ぶ、呼ぶ……身体を揺らして名前を叫ぶ。

 

起きてと願って………揺らす、揺らしてしまう。

 

 

 

「────ゲホっ……げぇ」

 

 

 

”べちゃっ”

 

 

 

「ひっっ!!!」

 

 

吐血……血を多く吐くレンノスケ。

 

揺らす行為で身体が緩くなり、血が止まらなくなる。

 

 

 

「あ…ちが、だめ、ゆらしちゃっ!!あ、でも、でも、どうし、いや……あ、そ…きゅ、きゅうきゅう、救急車!!よばなきゃ────」

 

 

 

パニックになり、頭が真っ白に成る。

 

ヘイローを持っていて、且つ誰よりも頑丈だと思っていた人間が、こんなにも重傷で苦しそうにしている。

 

吐血をして、今でも死にそうにしている。

 

 

焦りが出て、体中から嫌な汗が噴き出る。最悪の予感が脳裏を過って泣きたくなる。

 

 

 

 

 

”ガシッ!!”

 

 

 

 

「………へ、え?」

「っ、ゲハッ……」

 

 

 

スマホを手に取り、震える手付きで119に電話を掛けようとするキリノの腕を掴む手が居た。

 

血で染まって、ヌルッとした嫌な感触がキリノを襲うが……その手が誰の者かは直ぐに分かった。

 

 

 

「ゴフッ!!ガっ、ふ………キ……キリノ、さん……か?」

「は────……あ、あぁ!!れんのすけさん!レン、レンノスケ、さんっ!よ、か……よか、った……意識!がぁ、あって……」

 

 

 

その腕の正体は……レンノスケだった。

 

この男は、信じ難い事に【ヘイロー破壊爆弾】、その〈改良版〉の爆炎から生還を果たしたのだ。

 

 

 

「よかった………キリノさん、いきて、いる」

「は、はい!生きています!レンノスケさんは生きていま─────っ!!ま、まって、だめっ、だめぇ!!立っちゃダメですッ!!!血が止まってない、立っちゃ、もっと流れちゃう……から」

「が、あ………あ、あぁ……大丈夫だ、俺は……まだ、立たないさ」

 

 

 

何故か立ち上がろうとするレンノスケを、キリノは全力で止める。

 

意識があるだけでも可笑しな話なのに、会話が出来て、そして立ち上がろうとするレンノスケを見て、キリノは明確な『死』を連想させる。

 

レンノスケはキリノの制止によって、倒れ伏すのではなく、地面に膝立ちの正体に成る。

 

 

 

「は、はっ…はぁ……すぅ……ふぅーーっ………よし、息は、出来る……怪我はないか?キリノさん」

「んなっ………ある訳、ないじゃないですか!!なんで…私なんかより貴方ですよ!!こんな、ああ、こんなに血が……どうして、こんなっ!」

「そうか、良かった……貴女が無事なら、それで良いんだ」

 

 

 

レンノスケは自分の目で確りとキリノを一望する。

 

発言通り、どこも悪い様には見えない。それが何よりの救いで、自分が命を張った証明だった。

 

 

 

「あ、ちが……大丈夫ですレンノスケさん!!直ぐに救急車を呼びます!ヴァルキューレにも直ぐに連絡を………す、直ぐに、助けが来ます!だから、レンノスケさん、大丈夫です………絶対に、だから……大丈夫…」

「……キリノさん、ありがとう」

 

 

 

息も絶え絶えで言葉を繋げる。

 

暗示だ。自分を落ち着かせる為の……そうでもしなきゃ、どうにかなってしまいそうだから。

 

……自分が呼ばなきゃいけない。救急車も、ヴァルキューレも。

 

辺りには人が人一人も居ない。レンノスケの出現で、善人悪人、誰も寄り付かないのだ。

 

 

 

「──────はい、直ぐに来てくださいッ!!………伝え終えました!レンノスケさん、もう大丈夫です、救急車もヴァルキューレも直ぐに来ますから!」

「あぁ……流石だ、キリノさん────ッ!ガフッ!」

「は……っ!む、無理なさらないで下さい!!どうしてそんな、立とうと……今は座ってて下さい!このままだと、本当に…死んじゃう………」

「ふぅぅ……大丈夫だ、キリノさん……ああ、俺には……まだやる事が、残っている………」

 

 

 

掠れた声で、そう告げるレンノスケの瞳は……紅く、燃える様な熱さを魅せた。

 

ジッとは出来ない理由が、レンノスケにはある。

 

 

 

「────っ………ギ、ガあァぁァああァア…!!」

「ひぃっ!」

 

 

 

”ぶしゅっ……”

 

 

 

「なっ………なに、して…!?」

「……このまま、逃がしてたまるか…」

 

 

 

血を至る箇所から吹き出し、無理矢理立ち上がるレンノスケ。

 

その姿は、今直ぐにでも死んでしまいそうな獣の姿………だが。

 

 

 

「しょうもない傷だ……俺は、こんなんでくたばるタマじゃねぇ……男なら、好きな女の前なら、自分で立って、進みやがれクソ野郎………────は、ははは」

 

 

 

その様子はまるで────この状況を楽しんででいる様にも見えた。

 

レンノスケは言い聞かせるように、自分を鼓舞する言葉を吐き散らす。

こんな最悪な状況なのに、この男は……好きな女の目では恰好付けたいと考えているのだ。

 

 

 

「っ………」

 

 

 

レンノスケの狂気的な場面を見たアイラは、固唾を飲み、逃走の準備を始める………が、身体が動かない。

 

 

 

「な、んで……?────あ…」

 

 

 

ガタガタガタ………そんな音が聞こえそうな程、アイラは身体が震えていた。

 

 

目の前に広がる、血が飛び散っている周囲。

余りにも高威力で強烈な手榴弾の威力。

臓物がひっくり返ったんじゃないのかと思うほどの爆風を受けた。

それをほぼ直で受けた人間が……今、少し先で立って()る。

 

血だらけで、今にも死にそうな体なのに……笑いながら此方を見ている。

 

 

それは、アイラが初めて感じた感情………【恐怖】だった。

 

 

 

「……キリノさん、すまない」

「え……なっ」

 

 

 

”ギュゥゥウウウ……”

 

 

 

レンノスケはアイラの方向を見ながら、キリノを『お姫様抱っこ』する。

 

その行為に至るまで、キリノは一瞬過ぎて、理解が未だ追い付いていない。

 

 

 

「少し、揺れるぞっ………ふぅっ!!!」

「へ、ちょっ……きゃぁ!」

 

 

 

 

”ドゴォォオン────────ピタッ………”

 

 

 

 

「────ひっ、あ…………」

 

 

 

アイラの目の前に、現れる血達磨の巨人が居た。

 

 

レンノスケは先程と同様、驚異的なスピードを発揮し、100m先のアイラの元へと高速移動を行う。

 

滑る事なく、そのままアイラの元へ停止。まるで瞬間接着剤の様にピタッと止まった。

 

レンノスケはお姫様抱っこしたキリノを下ろし、仁王立ちでアイラを見下ろす。

 

 

 

「レ……レンノ、スケさん………?」

「逃がさない為には、一緒に来てもらう必要があった。すまない、キリノさん……服を汚してしまった」

「へ?あ………いえ、全然それは………────!?あ、い…いえ、そうじゃないです!!そうじゃ、なくってぇ……」

 

 

 

キリノは……もう何が何だか分かっていない様子だ。

 

いきなり指を舐められ、手を洗いに行くついでに用を足して、終わって戻って見ればレンノスケが一人のガスマスクを着用した小柄な少女を押し倒して服を脱がし、そのまま何かを取ったかと思えば唐突に全力疾走して………急に果てしない勢いで爆発して、レンノスケが血達磨に成って倒れて………そして今に至る。

 

 

話だけで聞けば、最早トラウマになる展開だろう……だが、キリノは強い子だ。

 

この1週間でレンノスケと過ごし、色んな意味で鍛え上げられたキリノの心の強さと忍耐力は、確かな理解力を発揮した。

 

 

 

「キリノさん、目の前に居るコイツ……アイラって言うらしいが、コイツは少し拘束するぞ」

「あ、あ………はい」

「手錠を頼む。俺が居るから大丈夫だとは思うが、逃げないように、一応な」

 

 

 

レンノスケの進言通り、キリノは手錠を確りとアイラに付ける。

 

アイラは抵抗する意思も無かった。そんな事、考える事など出来なかったんだ。

 

 

 

「………」

「……つかまった」

「当たり前だ。死にかけたんだぞ、俺は……久しぶりに身体が痛ぇ」

「……なんで生きてるの?」

「あ゙ぁ?……そんなん、キリノさんが居るからに決まってんだろ」

「?????????」

 

 

 

レンノスケの発言に、アイラは理解が出来ない様子だった。

 

 

 

「クソガキ、お前には聞きたい事がある。逃がさねぇからな、この野郎」

「ん…………やばい」

「……………」

 

 

 

キリノは二人の会話を聞いて、少しだけ冷静に成る。どうしてこんな事が起きてのか……きっと、この目の前の少女が大きな原因なのだと理解出来る程に、冷静に成った。

 

 

 

「あ、手錠助かったよ、キリノさ────…あ」

 

 

 

だがしかし────人には、必ず限界値がある。

 

 

 

”ポタっ……ポタン────”

 

 

 

「あ………キ、キリノ……」

「っ、ぐすッ………」

 

 

 

────忘れてはいけない、キリノは15歳の女の子。

レンノスケと違い、血や惨い傷を見るのに全く慣れていない清い女の子である。

 

レンノスケとは根本的に生きていた世界が違う存在だ。

 

キリノは涙腺が緩んで、泣いてしまう。我慢が出来ず、涙が溢れてしまう。

普段見ない量の血や、痛々しい傷は……ショックがデカすぎたのだ。

 

 

 

それも────好きな……()()()()()()()異性の人なら、尚更。

 

 

 

「キ、キキ、キリノさん!?だ、大丈夫か!?や、やっぱ、何処か痛むか!?」

「ちがう……ちがうぅ………────ひぐっ…レ、レンノスケさんが、生きてて…嬉しくって……でも傷だらけで……ぐすっ…なんで、こんな事になって……何も分からないのに、でも、とりあえずレンノスケさんは生きてて……良かったって、思って、でも……沢山、血を流して痛そうで………でも、私は……今の貴方に、何も…何にも出来なくって、悔しくって……」

 

 

 

震える声質で、言葉を並べる。

 

怖い。怖かったのだ、キリノは……目の前でレンノスケが、もしかしたら死んでしまうのではないかと、想像してしまったから。

 

 

 

”きゅっ”

 

 

 

「あ……キリノ、さん……」

 

 

 

キリノがレンノスケの右手を両手で握りしめる。

 

ぷるぷると、静かに震わせながら、握る。

 

レンノスケはキリノの行動に、大変嬉しい気持ちになるが………次に発するキリノの言葉を聞いて、絶句する。

 

 

 

「ごめんなさい……ごめんなさい…レンノスケさん………私っ、役立たずで、何の力にも、成れなくって……」

「────────」

「助けてくれたのに…私は、一瞬勘違いをして……貴方がこの子に、乱暴をしているかと、思って………本当は、私達に怪我を負わせない為に、身体を張ってくれた、優しい人なのに……最低です、私は……最低な………女で────あっ」

 

 

 

”ギュゥゥゥ――ッ!!”

 

 

 

レンノスケはキリノの言葉を遮り、手を跳ね除け、そして………。

 

 

 

「れ……レンノ…………へ?」

「やめろ……そんな事、言わないでくれ」

 

 

 

────抱きしめる。血だらけで不衛生だけど、全力で抱きしめる。

 

 

 

「キリノさん、俺は……貴女にそんな事、言わないで欲しい」

「っ!………で、でも」

「この間、言ったじゃないか……俺は、いくらキリノさんでも、自分の事を軽視しないで欲しいって」

「あ………うん、いいました、けど……」

「それにな?キリノさん。貴女は何も出来なくって当然だったんだ。だって、キリノさんが来て、爆弾のタイマーは既に3か4を切っていた。あの状況は俺しか知らなかったし、俺しか行動に移せなくって当然だったんだ。しかも、あの現場を一瞬だけしか見てなかったら………コイツをボコってたって勘違いして当然だ。優しい貴女だ、このチビのクソ…ガキ……(クソガキは良くないか……)……こ……子供の事を心配するのは当たり前なんだよ」

「だ、だけど!わ、私は………ひゃっ」

 

 

 

抱きしめる力を、強くする。

 

もう有無は言わせない。そんな意思を持って。

 

 

 

「貴女の、そんな言葉、聞きたくない。俺が何の為に頑張ったか、分からなくなってしまう……どうせなら俺の事を褒めてほしい」

「え………え?」

「頑張った俺の事を、褒めてほしい」

 

 

 

要求だった。

俺は頑張ったと、だから褒めてと、まるで犬の様に縋って言を伝える。

 

 

 

「そ、そんな事……そんな事で、貴方は……?」

「うん、褒めてほしい。キリノさんに褒めて、そうすれば、俺はどんなに辛くっても頑張れる。貴女の為なら────俺は自分の命を貴女に渡せる」

「っ………重すぎますよぉ」

「??……まぁ、体重95㎏はあったしな~」

「そっちじゃないです………もう」

「うぇ?」

 

 

 

レンノスケは、キリノの発言がよく分からなかった。

 

 

 

「………()()()()()

「ん?……ん!?」

 

 

 

キリノがレンノスケの腰に手を回す。

 

背中は爆炎によって大怪我を負っている。触れる訳がないので、キリノはレンノスケの腰に手を回す。

 

 

 

「少しだけ、聞きたい事があります……」

「あ、あぁ……なんだ?」

「………怪我は?至る箇所に一杯血が出て、傷も凄くて………えっと」

「それなら心配するな。血は筋肉で固めて止めたし(???)、傷も背中と頭に少し有るだけで、それだけだ。命に関わる怪我じゃないさ」

「………ほんと?」

「あぁ、自分の事だ、よく分かっているよ」

「………」

 

 

 

 

 

”ウ~~!ウ~~!……ファンファンファン………!!”

 

”ピーポーピーポーピーポー………”

 

 

 

 

 

「ん?あ………来たな」

 

 

 

数分経ち、ヴァルキューレと救急車のサイレンが聞こえてくる。

 

段々と近づいて来て、車が視認出来る程まで接近してきていた。

 

 

 

「…………」

「?……キリノさん、ヴァルキューレと救急車、来たぞ?」

 

 

 

しかし、両社が来たというのに、キリノは何も反応を見せない。

 

俯いて、レンノスケの胸板に顔を沈めている。

 

不安に駆られたレンノスケが背を丸くし、両腕を使ってキリノの肩を掴んで少し離し、キリノの顔をもう一度見る……そこには、酷く怯えた表情を浮かばせたキリノが、何かを我慢している様子で居た……そして、レンノスケがソレに気付くと同時、キリノが顔を上げて

 

 

 

「だ……大丈夫か?」

「………」

「キリノさん…?」

 

 

 

レンノスケの問いに、キリノは反応を見せない。

 

不安に駆られる衝動がドンドンと加速していく。やはり、何処か痛むのか、そう考えて、レンノスケは少し強目に肩を掴み、もう一度呼び掛けようとした………瞬間だった。

 

 

 

 

”ぐりぐり、ぐり……”

 

 

 

「………え?」

「っ……」

 

 

 

キリノは、レンノスケの胸筋におでこを押し付ける。

 

そしてピタッ……と、制止する。真ん中から少し左に寄って、心臓の鼓動を確かめる様に。

 

 

 

「最後に一つだけ、聞かせて………()()()()()()()()()()?」

「……え?うん。もちろん死なんぞ?なんてったって、俺はキリノさんと云う生きる意味が────」

 

 

 

”キュゥゥッ……”

 

 

 

「おぅ!?」

 

 

 

二人共、地面に膝を着いて座る。

 

レンノスケはキリノの様子が妙なことに気付き、しかしキリノが自分の腰に手を回す力が増していることに気付き、動くのをやめる。

 

 

そして………気付いた。キリノが、嗚咽をして泣いている事に。

 

 

 

「ぐすんっ………よかったぁ!」

「キ、キリノさん!?」

「レンノスケさんが生きてて……よかぁた!ほんと……本当に怖かったんですよぉ?!だって、あんな血だらけで、いっぱい血が出てて……私、怖かったんですよぉ…!」

「っ!」

「折角…大変な場所から解放されて!食事もお風呂も、生活がやっと安定してきて……勉強だって、出来る様になって………いきなりこんな……ひどいですよ…」

 

 

 

一気に思った事を吐く。

 

キリノはレンノスケの胸に顔を埋め、大きい声で叫ぶ。

 

 

 

「怖かった……好きな人が死んじゃうんじゃ…ないかって………想いも伝えられずに逝っちゃうんじゃないかって……私をこんな風にした人が、私を残して……死んじゃうんじゃ、ないかって、思って……ぐすっ……」

「そんなこと、思ってたのか…………え?ちょ、まって、今……俺の事、好きっていt」

「ひぐっ…────う、うぅぅ……うわぁぁ……ああぁぁ……うぇぇぇえ~~~~…っっ!」

「はぁぁあん!ちょ、まって、泣いちゃいやん!キリノさん、俺生きてるよ!」

「あぁあぁああぁぁ………えぇ~~~ん……レンノスケさ~~んっ!」

「ああ!い、居るぞ!此処に、俺は居る!だ、だから落ち着いてくれ、な?!」

 

 

 

レンノスケはたじたじに成って、キリノは大声で泣き叫ぶ。

 

レンノスケは自分から抱き着いた一件があるとはいえ、もう一度キリノを血で汚してまで抱きしめ返すのは如何なモノか……と、変に冷静に成る。

 

キリノは泣く。先程まで目に焼き付いてしまった、あの恐ろしい光景を忘れるが如く泣き続ける。

 

 

 

「………お、おい、お前達」

 

 

 

そっと……パトカーから『尾刃カンナ』が降り、現場に近付く。

 

キリノがヴァルキューレに通報して、一目散に現着したのはカンナだった。

レンノスケ関連の事件はカンナが即座に向かえるよう、常に準備をしていたのだ。そしてカンナはキリノに『何かあったら即”私”に連絡を寄越せ。直ぐに飛んで向かう』と言っていた為、救急車の後にキリノが通報した人物はカンナだったのだ。

 

 

数秒目の前の光景を見つめる。そして、直ぐに他のヴァルキューレ生と救急車が到着する。

 

そして、全面々が絶句する────目の前に広がる光景に………血生臭い嫌な匂いに。

 

カンナは凄惨な現場を一望し、ヒュッと息が止まるが、騒がしい二人を確認し……ホッと、少しだけ冷静に成る。

 

 

 

「うえぇぇえん!!ひぐっ!わぁ、あああ……」

「(あ、やべ、腰から段々と背中に腕が…!?)キ、キリノさん、い、一旦落ち着こう!」

「…………」

 

 

 

凄まじい範囲の焼け跡に、辺りに散らばる血池、ガスマスクを着用して何故か手錠で拘束されて「終わった………おわった」と延々と嘆いている少女、泣き喚くキリノにそれを何とか落ち着かせようと宥める血達磨のレンノスケ。

 

 

カオスである。カンナは頭が痛くなった。

 

 

 

「ふぅ………取り合えず、事を済まさなければ」

 

 

 

しかし、女傑カンナは此処でも冷静だ。

 

即座にその場に居る者達に作業をハイペースで進ませ、カンナと救急隊はレンノスケとキリノの方に向かう。

 

 

ガスマスクの少女はヴァルキューレの面々が立ち上がらせ、即パトカーに乗せる。

 

 

カンナ達に気付いたレンノスケが、即座にキリノを任せ、そのまま自分で立ち上がり、カンナの指示に従うと伝える。

 

 

 

「一体何がった………と、直ぐに聞きたいが、先ずは治療だ。あの車に乗れ城ヶ崎」

「ああ……っ、ゴホッ………」

「ひ!………レ、レンノスケさ……」

「ちょっと詰まっただけだ……カンナ、キリノさんも………」

「無論だ」

 

 

 

一見、何処も悪い様には見えないキリノだが、念のためレンノスケと共に乗り、診断を受けさせる。

そういう意図もあるが、一番は……今のキリノは少し精神的に参っている可能性があった。

 

見れば、キリノはレンノスケの血でその純白の制服を赤色に染めている。彼女の目の前で、一体何が起こったのか………想像ですら辛い出来事だったと理解出来た。

 

 

 

「キリノ、歩けるか?」

「あっ、カンナきょくちょう………はい、歩けます!」

 

 

 

ふるふると、身体が震えているキリノを見て、カンナは苦悶の表情を浮かべる。

 

だが、キリノが歯を食いしばり、自力で立ち上がって歩くと発語した様子を見て、己の部下の成長が嬉しくなる。

 

 

 

「よし。救急隊、二人を頼んだぞ」

 

 

 

”はッ!”

 

 

 

数名の救急隊がカンナに一礼して、レンノスケとキリノを救急車に乗せる。

 

 

 

「あ、待てカンナ局長!」

「!……どうした?」

「あのガキ……アイラ、あの子供の事で、まだ俺は………」

「あの子の事なら、私達に任せろ。この現場を作った原因なのだろう?取調べ室で何がどうしてこんな惨状が生まれたのか聞かなければならん。此処からは私達『ヴァルキューレ』の仕事だ。城ケ崎、お前だけが怪我しているから、勝手な事を言うが………よくやった。後は任せてろ、お前は治療に────」

 

 

 

”専念しろ”

 

そう言おうとした瞬間………レンノスケが遮るように、言を発する。

 

 

 

「頼む、カンナ局長………あのガキには、拘束だけでいい」

「………なに?」

「レ……レンノスケさん?」

 

 

 

妙な空気が辺りを漂う。

 

救急隊も、無暗に城ヶ崎レンノスケを刺激出来ない為、静かにその場に佇む。

 

 

 

 

 

 

「俺とアイラは、まだ『話の途中』だ………俺に前にした、取り調べの質疑応答は……お前等じゃなく、俺がやる」

 

 

 

 

 

 

カンナを見つめる怪物の瞳は────赤く燃える様な意思を持っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




☆アリウスのオリキャラ


・天丈アイラ

性別:女
年齢:8才
武器:LCP(小型ハンドガン)
身長:111㎝
誕生日:11月25日


特徴:小柄で黒髪のロングヘア―。赤い瞳をしており、表情筋が硬い為、喜怒哀楽の判別が難しい。「vanitas vanitatum, et omnia vanitas」と洗脳の様に教えられてきたが、アイラは頭が良くない為、全く意味を理解していない。ある意味謎は多い異端児でもある。家族が居るが、血は繋がっていない。


どうやら、城ヶ崎レンノスケとは共通点が多いとの事。







タグにオリキャラと記しました。これ以上増やすつもりはありません。






☆レンノスケから他キャラへの想い。(逆も)





レンノスケ「ブチ殺す」→←「ぶっ殺す」ネル

レンノスケ「ちゅき♡」→←「うぅ……」キリノ

レンノスケ「かっけぇ…」→←「良い子だけど凄く心配……」先生




今の所こんな感じです。




誤字脱字、感想ここすき、モチベーション向上になります!


これからも頑張って執筆していきます故、是非、宜しくお願い致します。






アンケートです。どうか、御投票を宜しくお願い致します。

  • レンノスケ、配信者に成る。
  • 16歳組によるバレーボール同盟
  • キリノと二人旅
  • 提示版(レンノスケだけど、質問ある?)
  • レンノスケの過去編
  • 本編:カルバノグの兎編
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