九十九 光の気ままな実験録   作:X2愛好家

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生きるとは何か


第三章:涙を流さないロボットだから

見た事の無い天井。

テントじゃないし、野戦病院でもない。シャトルのようにこじんまりした物とも違う。ここは何処だろう?

 

「お目覚めですか」

 

知らない声だ、あの七人じゃない事は確か。かといってアグニカでもない。それに、この声の高さは女だ。その八人を除いてわたしに近しい女というと……直ぐには出てこない。声色からして敵意は無いようだけど。

 

「それでは僭越ながら───」

 

「───おめでとうございます。貴女は今日から仮面ライダーです」

 

かめん、ライダー?何の事?

 

「困惑しておられますね」

 

当然だよ。

 

「光様より、貴女が目を覚ました時に言ってみてくれと頼まれたものでして」

 

謎が増えた。

ここは何処で、この女は誰で、ヒカリサマというのも何処の誰なのか、そして仮面ライダーとは何か。予想するに仮面を着けて何かに乗る職業だろうか。モビルスーツのパイロットを仮面ライダーと称している、という事?

 

「では、諸々の説明をさせていただきます」

 

 

◆◇◆

 

 

俄には信じられない話が次々と飛び出してくる。

まず、この女の名は「シェフト・コーサ」というらしい。各地に点在する様々なポイントを巡り、そこに隠されたデータを回収、最終的に勝ち残った者にコロニーすら容易く購入できる莫大な賞金が与えられるレース「ウルズハント」の水先案内人だとか。

 

また、それに参加するにはシェフトをはじめとする「水先案内人」から、プレイヤーの証となるリングを受け取らなければならない。ちなみに、彼女らコーサのファミリーネームを持つ水先案内人たちは、主催者の「N」によって集められた元孤児らしい。そこは重要ではない、と詳細は話してくれなかったが。

 

何より驚いたのは、そのウルズハントが開催されたのはポスト・ディザスター 323年。厄祭戦と呼ばれる人類対モビルアーマーの大戦が終結してから、実に300年以上の時が流れた世界の出来事だと言う。

 

()()()()モビルアーマーと戦っている世界から、300年以上も経過した世界でのお話だと言う。

 

「驚きました。先に格納庫を拝見いたしましたが、貴女が乗っていたとされるモビルスーツは、まごうことなきガンダム・フレーム。それも現存が確認されていない33番目、ガンダム・ガープ」

 

モビルアーマーとの戦後、あの七人の末裔たちが七つの家に分かれて創設・管理する事になった、治安維持を目的とする武装組織ギャラルホルン。そのギャラルホルンがエイハブリアクターの製造技術を独占していて、他の勢力は厄祭戦時代───わたしの時代のモビルスーツを掘り起こしてレストアするしかないという。他にもテイワズという木星圏の組織がモビルスーツの独自開発に成功しているが、地球圏はほぼギャラルホルンが牛耳っていると言って良いらしい。あのリアクターが300年以上経っても劣化しない、というのも驚いたけど。

 

それにしても……現存が確認されていない、か。

特殊なフレームを採用したモビルスーツ、ガンダム・フレーム。リアクターを二基並列稼働させるツインリアクター方式採用の機体。アグニカの父親が造り出したとかいう話を聞いた事がある。

強烈な性能を誇る反面、量産に向かない技術のオンパレードである点から72機しかロールアウトされていない。しかも、わたしの時代より後に残っているのは26機だと言う。わたしが知る姿のままのガンダムはギャラルホルン直轄、つまりあの七人のガンダムとアグニカのバエルだけらしい。他は戦後の混乱で本来の持ち主の手を離れ切り売りされたり、全く人の立ち入らないポイントに埋まっていたり。或いは戦後に解体されたか戦時中に撃墜されたか。

 

つまり、わたしは───

 

「そう悲観なされる事も無いかと」

 

なぜそう言い切れる。わたしはあの七人でもアグニカでもない、ギャラルホルンとやらに選ばれるような産まれでもない。そしてガープのデータは現存する26機の中に無かった、これは()()()()()だろう。

 

「確かに私はガープのその後を知りません。ですが、何事にも例外というのはあるのですよ。例えばマル……失礼、忘れてくださいませ」

 

口を滑らせかけて止める。一番気になる素振りだから、そういうのやめてくれないかな。

 

「お気になさらず。して、貴女様はどうなさるおつもりでしょうか?元の世界への帰還を望むか、それともハンドレッドについていくか」

 

これはシェフトも完全に理解している訳ではないようだけれど、わたし達が今居るこの世界は、簡単に言ってしまえば異世界らしい。モビルスーツもモビルアーマーも存在せず、ギアフレームという人型ロボットが存在する別の地球。わたしはそこにガープごと転移し、これまた別世界のモビルスーツを結果的に助けた形になった。

 

目的をどうするか、という話だ。

元の世界に戻ってモビルアーマーとの戦争を続ける。それとも、この世界に残る、もしくはヒカリ・ツクモについていってハンドレッド所属となるか。どちらに目標を定めるかによって、わたしのこれからの戦いは意味合いが大きく変わってくる。

 

「光様は返答を急がせるつもりは無いと仰っていましたし、従者の私にその権利などありませんね。失礼いたしました、今はゆっくりとお身体を休め───」

 

───たたかうよ、ヒカリのために

 

「……それは、元の世界への帰還は望まないという理解で宜しいですね?」

 

───わたしは生きたい、死にたくない。わたしは、わたしの事が好きな人が好きだよ。ヒカリは敵じゃなくて、わたしを助けてくれる人。わたしを必要と言ってくれる人だと思う。だから、ヒカリと一緒にたたかう

 

「かしこまりました。改めて、このシェフト・コーサが貴女様の従者としてお仕えする事を誓いましょう」

 

シェフトが膝をついて頭を下げる。多分、これでわたしが正式にシェフトの主になったんだと思う。後はシェフトが言いかけた通り、ガープに乗れる状態までコンディションを戻すだけ。

 

───そういえば

 

「はい、如何されましたか」

 

───わたし、喋れないんだけど

 

「存じております」

 

───なんで話せてるの……?

 

「光様が、輝夜様の阿頼耶識に合わせたナノマシンコネクタを製作してくださりまして。私と光様に限られますが、輝夜様が外に向けた思考を言語として受け取る事が可能なのでございます」

 

ツクモ・ヒカリという女は思った以上に凄いエンジニアらしい。シェフトには、あぁやって説明したけれど半分は打算が混じってる。この世界の軍隊とツクモ・ヒカリが戦えば、勝つ確率と生き残れる確率が高いのは間違いなくツクモ・ヒカリの側だ。死にたくないのは本当。素性の分からない相手と話す時は、真実に少しの嘘を混ぜて話すこと。アンゼリカから教えられた話術だ。

 

それにシェフトの話が本当なら、これは外に向けた訳じゃないわたしだけの思考。まだバレてないはず。拾ってもらったのは事実だし、こうして治療まで受けさせてくれている。せめて、ガープの修理が終わるまでは居させてもらおう。

 

───そのヒカリは?

 

「途中で邂逅した別の現界者の方と話をする、と仰っていましたが」

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「……なに?」

「初手でそれを選ぶ人間を初めて見たからね」

 

ドレッドクライス内部の休憩スペースにて。

取り出し口から目的の物を手に取った所で光の視線に気付いた少女と、感心と驚きが半々といった所の光の姿があった。

 

「特に理由は無いよ。最初に目についたから」

「ロッシュやたつみクンからは不評気味でラインナップから外そうかと思っていたんだが、キミが気に入ってくれるのなら置いておくとしよう」

「……そもそも、この艦にあなた達以外の人間って乗るの?」

「いやぁ?そもそも実戦投入自体、今回が初だからねぇ」

「何で人間用の自販機なんて置いてるの……」

 

ベンチに腰掛けながら困惑と呆れ半々の溜め息を吐き出す少女───小楯(こだて) 玖美(くみ)。その手には、光が驚いた商品である抹茶スパークリングが握られている。

 

「趣味だよ趣味。この仕事をしていると、断片的に様々な世界の情報が入ってくるからねぇ。聞き齧った嗜好品やらを再現して量産しているのさ。暇だからね」

「あなた科学者でしょう……?」

「面白そうだと思ったら何でもするさ。スプーン一本の製造から世界の侵略まで幅広く、ね?」

「ふぅん……」

 

答えつつ本人は別のドリンク、初恋ジュースと書かれた謎の飲料を選んでいた。それもそれで得体の知れない謎の飲み物である。

 

「グレートとドラグーン、見付けるから。必ず」

「コックピットを兼ねた戦闘機に、複数の武装を備えたボディだったかな。本体とコアが別々だと、転移の際に座標がズレる。シンプルながらも厄介な弊害だねぇ。キミとエクスくんの為にも捜索は急いでいるよ、安心したまえ」

「ん……」

 

くぴくぴ、と抹茶スパークリングを飲む玖美。僅かに表情が綻んだ辺り、どうやら気に入ったらしい。

 

「そういえば、一つ聞きたいのだが」

「なに?」

「随分とエクスくんの事を気にかけるねぇ。何か理由があるのかい?」

「…………」

 

何者かによって造り出され、ひとりでに起動を果たした所でホロプシコンに巻き込まれたというロボット───エクス。玖美はブレーンコンドルという、機体のコアになる戦闘機に搭乗した状態で転移してきており、エクスもドラグーンという名のバトルボディと別々に飛ばされてきたらしい。転移の経緯は似ているが、逆を言えばそれしか共通点の無い二人。光は、まだ短い付き合いながらも玖美が他者に心を開かない、開き方を知らない少女だという事は見抜いている。故に気になるのだ、そんな彼女が何故、言ってしまえばただのロボットであるエクスの事を気にかけるか、が。

 

「…………」

「まぁ、強制ではないから構わないよ。その気になったら教えてくれたまえ」

 

いつの間にやら飲み終わっていた初恋ジュースの空き缶をダストボックスにシュゥゥゥ!し、ヒラヒラと手を振って何処かへ消えていく光。

 

玖美以外の誰も居なくなった所で、ポツリと口を開いて言葉が紡がれる。

 

「生きる意味を探しているから、私たちは。それが見付かるまで、倒れない。倒れる訳にはいかないんだ」

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「……なぁ」

「なに?おじさん」

「俺の顔に面白い物でも着いてるか?」

「面白くはないけど、目と鼻と……口に髪かな」

「そういう事じゃなくてだな」

 

ドレッドクライス内 食堂。

玖美が言ったように、ほぼ存在意義の無かった人間用のエリアに意味を持たせた二人の人物。軍用艦とは思えない程に豪勢な食事に驚いていたカリュブスと、いつの間にやらその対面に腰を落ち着けてカリュブスの顔を眺めていたラアスだ。どんな人間でも、ただ昼食を取っているだけなのに、やたらと顔を覗き込んでくる者が居れば気になって仕方がないだろう。無論、歴戦のエースパイロットであるカリュブスもその例に漏れず。

 

(本当に何を考えているのか分からんな、このお嬢ちゃんは……)

「それで?何が目的だ?」

「やっぱりカリュブス・トゥーケスなんだなって」

「それはそうだろ……俺は俺、死に損なったくたびれおじさんだよ。何処に行っても、何処まで行ってもな」

「海の魔物、蘇芳の魔竜、四海竜。ふふっ……あなたはどんな世界でもカリュブス・トゥーケス」

「……何が言いたい」

 

最後の【四海竜】という部分に反応し、ラアスに鋭い視線を向けるカリュブス。そこには昼行灯の草臥れた中年の姿は無く、敵を前にした時のドス黒いオーラを発する怪物の姿があった。だが、殺意にも似た漆黒の意思を叩き付けられても当のラアスは揺らがない。それどころか、カリュブスの殺気を何処吹く風と軽く受け流している。

 

「言葉通りだよ、あなたはあなた」

「ハァ……本当に訳が分からん」

 

その掴み所の無さに毒気を抜かれたか、少なくとも敵ではないと思い止まったか。刺々しい殺気を霧散させ、意図的に昼行灯の草臥れオーラを被り直すカリュブス。器の中に残っていた牛ヒレ肉のステーキ、その最後の一切れをフォークで突き刺し、口に運んで咀嚼する。それを飲み込み再び口を開いた時には、魔物は眠りについていた。

 

「お前は何か食わなくて良いのか?食える時に食っておくのもパイロットの仕事だぞ」

「優しいんだね、カリュブスおじさん。でも大丈夫、さっきキャロリーメイツ食べたから。知ってる?キャロリーメイツ。美味しいよ?」

「あのブロック糧食みたいなやつか……あのな、アレだけじゃ栄養素が偏る……不摂生な娘を心配する父親じゃねぇんだからよ……」

「ふふっ、やっぱり優しい」

 

『総員第一戦闘配備、本艦は間も無く作戦区域に突入する。機動部隊は搭乗機にて待機───』

 

「また唐突に……」

「行こう」

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「これで良いのか……?」

「ニュアンスが伝われば良いんですよ~。うちら正式な軍隊って訳じゃなし、誰かに怒られる訳でもなし。何なら次から別の語句に変えても良いですし」

「それはそれで混乱すると思うのだがな。本当にヒューマギアなのかお前は」

「ソルドですよー」

 

モビルスーツパイロット二人に発進準備されたしの意図が伝わったかどうか、若干の不安を感じていた艦橋のロッシュ。そんなロッシュに、相変わらずのコンソール突っ伏し体勢でフォローを入れるキャニー。色々と大丈夫なのだろうか。何度目かの「コイツ本当は人間なんじゃないか……?」という疑念を覚えた所で、彼女らの一応の上官である光からの通信回線が開いた。

 

『中々サマになっていたじゃあないか』

「光か。今回はお前も出ると聞いているが」

『あぁ、エクスくんを連れてね』

「あのロボットか。一応聞いておくが理由は?」

「なんで説明してないんすかマスターは……」

 

相も変わらずの思い付き行動が目立つ光。その説明によると、今ドレッドクライスが向かっている場所───アメリアという国に玖美とエクスのバトルユニットが落ちたらしい。

 

エクスのユニットは既に回収されてしまったらしい。そちらの奪還にエクス本人と光の等身大組が向かい、玖美の機体の回収を邪魔しつつ、光とエクスから目を逸らさせる為の陽動を機動兵器組に任せるとの事。

 

「了解した、せいぜい派手に暴れるとしよう」

『頼んだよぉ?私のマジーンが出た後にステルスを解除してくれたまえ』

 

では行ってくる、と専用のタイムマジーンに搭乗して出撃していく光。恐らくその操縦席にはエクスも乗っているのだろう。

 

「マスターのマジーンは充分に離れましたー」

「光学迷彩解除。機動部隊、順次発進させろ」

 

 

◇◆◇

 

 

───凄いね、あっという間に治っちゃった

 

『ですが無理は禁物です。お気をつけて』

 

───ありがとう

 

 

 

「この前のは拍子抜けだったから、今回は強い敵が出てきそうだね」

 

───コワイナー……!

 

 

 

「あんな機関車モドキまで出撃するのか……」

 

「正にスーパーロボット大戦、だね」

 

 

 

『玖美クン?分かっているとは思うが』

「周囲の安全が確保できるまでは待機でしょ、分かってる。でも、万が一グレートが破壊されるような事になったら、止めても行くから」

 

 

 

───輝夜・サウス、ガンダム・ガープ……

「夢更たつみ、コワイナークライナー!」

「カリュブス・トゥーケス、ザク」

「ラアス機。アングリフ・ドーガ」

 

───いきます

「出発進行!」

「出すぞ」

「発進します」

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「始まったようだねぇ。そのまま派手にドンチャン騒ぎしてくれたまえー」

 

突如として空に出現し、異形の異世界ロボット部隊を展開した未確認飛行物体ことドレッドクライス。一瞬にして平穏な日常を破られた民衆が逃げ惑い、アメリア軍の機動部隊にスクランブルが掛かる阿鼻叫喚の地獄絵図。そんな地表の騒ぎを軽く流しながら、タイムマジーンを降りて何故か下水道に歩を進めている光。

 

<疑問 何故、下水道に侵入しているのか>

 

そんな光の後ろには、人と同じく二本ずつの手足と頭が胴体に付いている、という以外の共通点が無い人型ロボットが随伴していた。

 

彼の名はエクス。

「悪の天才科学者」、「世紀の頭脳を持つ大悪党」を自称する「ドクター・エッグマン」が造り出したロボットである。

 

「キミのドラグーンがここに……厳密に言えば、各地の下水道と繋がっているシークレットラボに運び込まれたからさ。今はそこに向かって行進中、という訳だね」

<疑念 下水道は公共の物であり、私的な建造物の設置は反発を買うのではないか>

 

「ようこそ自由な企業国家アメリカへ」

<訂正 現在地はアメリア>

「おっと、そうだったねぇ」

 

要は表に出せない代物を抱えたり、民衆の反感を買いそうな研究をする為の施設を、文字通り自分達の足下に作ったわけだ。それも国が様々な企業を抱き込む形で。エクスのバトルユニット───ドラグーンもその一つとして地下研究所に入れたのだろう。何せこの世界の物ではない、これまた文字通り異世界のテクノロジーで造られた大型戦闘兵器だ。光の知るアメリカと同じく、強い国を目指すこの世界のアメリアとしても、ドラグーンは喉から手が出る程に欲しい「力」なのだろう。

 

<警告 識別不明機が接近中>

「つまりこのルートで正解、という訳だねぇ!」

 

招かれざる客である光とエクスを排除する為、研究所から手駒が送り込まれたようだ。バシャバシャと水飛沫を上げ、強靭な二本脚で下水道を走破してきたのは、地表で戦っているギアフレームよりも遥かに小型の兵器。カリュブスのザクや、ラアスのドーガとも異なる黄色のモノアイを妖しく光らせ、恐らくバランサーとしても機能しているだろう尻尾を振り上げ、生物のように威嚇を行う三体のロボット。

 

「まるで恐竜だねぇ。正式名称が分からないから、仮称ラプターとでもしようか」

<設定 以後、対象をラプターと呼称>

 

立ち去る意思無し、と判断したのだろう三機のラプターが一斉に動き出す。

 

「私達も戦闘開始といこうか!あぁそうだ、一応言っておくが下水道は崩さない程度の火力で頼むよ?」

 

【KAMEN RIDE】

 

「変身」

 

【RE END】

 

<武装選択 コンバットパターン選定>

 

<戦闘モード 起動>

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「さすがに数が多いな……!」

『がんばれおじさん』

『もうちょっと頑張ってよオジサン!』

 

───がんばれー

 

「年頃の嬢ちゃん達からおじさん呼びの集中砲火!ガンダムの嬢ちゃんも、多分おじさんって言ってるんだろうなぁ!」

 

───言ってないよ

 

やり取りはコミカルに、戦闘はシリアスに。

光とエクスがラプターとの戦闘を開始した時には既に、カリュブスたち機動兵器組は乱戦の真っ最中だった。輝夜のガープが打たれ強さを活かして敵陣に斬り込み、次いで機動性に優れるラアスのアングリフ・ドーガが周囲を掃討。討ち漏らした残りをカリュブスのザクが刈り取っていく、というセオリーを確立しつつあるモビルスーツ隊。それに負けじと、ダークドリームのコワイナークライナーも陸戦用のギアフレームを三機まとめて薙ぎ払ってみせた。

 

(MAVじゃない、小隊運用も久しぶりだな……即席だからアイツらには劣るが)

「……奇襲はもっと静かにやるモンだ」

 

連携も完璧なかつての部下が脳裏を過るが、仄暗い思い出を即座に切り捨て、背後から迫っていたギアフレームに振り向き様のヒートホークを叩き付ける。コックピットに直撃したのであろう沈黙したギアフレームからヒートホークを引き抜き、改めて九十九 光というマッドサイエンティストの底知れなさに驚くカリュブス。というのも、ザクやドーガ、ガープの武装や弾薬は光が短時間で複製した物だからだ。

 

(一応は同じ世界の技術を使ってるザクとドーガならともかく、別の世界のガンダムまで修復しきってみせた。マシンガンの弾も暴発なんてしないし、ヒートホークの予備まで用意した……データと実物を見ただけで、ここまで完璧な物を……)

 

東シナ海での戦闘から一週間も経っていない。にも関わらず、二つの宇宙世紀とポスト・ディザスターのデータを読み込み、実質的にそれぞれの専用となる武器弾薬を製造。さしたるトラブルも無く搭載・装備を終え、今現在に至る。光の異常なまでの技術力に応えられるドレッドクライス工業区画もおかしいが、ドレッドクライスは光が手掛けた要塞である為、それは当然なのだろう。

 

『まだグレートへのルートは拓けないの?』

 

「もう少しだけ待っててくれ。これでも想定より早い方なんだぜ?」

 

『……いざとなったら格納庫のハッチ吹き飛ばしてでも出るから』

『普通にやめてもらえません!?』

 

奪還対象───本作戦の主賓とも言える玖美がしびれを切らしたのか催促してきた。グレートとやらに一際特別な思い入れでもあるのか、物騒な出撃申請まで出し始めた玖美。それを聞いたキャニーは面倒はゴメンなんですけど、と悲鳴を上げている。

 

「まったく……聞いての通りだ、シンデレラがカボチャの馬車の扉を蹴破る前に道を確保するぞ」

『分かった』

『仕方ないわね……!』

 

───りょうかい

 

(血気盛んなのは良いが、生き急ぐなよ……)

 

カリュブスの胸中は複雑だった。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「これかぁ。なるほどねぇ、確かに異世界の機動兵器といった見た目だ。少なくとも私からこのデザインは出てこない」

<応答 製作者ドクターエッグマンの美的センスに共感する知的生命体の数は、精確に返答しかねる>

 

襲い掛かってきたラプター三機、更に追加で送り込まれてきたサイボーグと思われる特殊兵。それらをまとめて葬り、意気揚々とシークレットラボへのダイナミックお邪魔しますを敢行した光とエクス。当然ながらラプターと特殊兵を退けた謎の襲撃者への警戒度は最大であり、ラボへの侵入と同時に集中砲火に曝された二人だが、悲しいかなエクスの装甲とリエンドのディヴァインアーマーには通常火器で傷をつける事が出来ない。そもそも直撃弾が無かったのだが。

 

<質問 どうやって運び出す>

「んー?天井から、のつもりだけれど?」

 

独特な形状のエクス用バトルユニット、エッグドラグーンことエクスドラグーン。50mは軽く超えるであろう巨大なボディと、初見かつパッと見でもその威力が窺える凶悪な武装が目を引く。そんなドラグーンが下水道を通れる訳もなく、エクスはどのように地上へ、そしてドレッドクライスに運ぶのかが気になっている様子。それに対しての光アンサーは、「搬出路が無いなら作れば良いじゃない」とばかりの強行策だった。

 

<……理解 システムチェックを行う>

「頼んだよ。私がやっても良いんだが、こういうのは得てして本人がやった方が早いからねぇ」

 

コックピットブロックに当たる部位に到着し、搭乗というよりドッキングするようにドラグーンを取り戻したエクス。はてさて何をして時間を潰そうか、と室内を物色し始めた光だったが、来客を報せる複数の足音を察知し即座に戦闘態勢に戻った。

 

「エクスくん、あとどれぐらいで終わるかな?」

<返答 三分は必要>

「ふむ……ちまちま相手をしている間に、ドラグーンの破壊に切り替えられたら面倒だねぇ。一息に片付けるとしようか」

 

【KAMEN RIDE】

【DARK KABUTO】

 

リエンドからカメンライドしたのは漆黒の戦士。マスクドライダーシステム第0号、仮面ライダーカブトのプロトタイプであるダークカブトだ。そして、マスクドライダーシステム系列ライダーとほぼセットで使用されるアタックライドも同時に引き抜かれている。

 

【ATTACK RIDE】

【CLOCK UP】

 

「私の姿、見逃さないでくれたまえよ?」

 

「ついてこれるなら」

 

タキオン粒子で時間流操作を行い、物理法則を超えたスピードで行動できるようになるクロックアップ。それにより、ラボに踏み入ってきた特殊兵たちは手持ちの武器を光やエクスに向ける暇すら与えられず、先に光が発した通り「一息で」制圧されてしまった。

 

「ほう?私の動きを目で追っていたね?その装備かい?それとも投薬?まさか、そういった類いのサイキッカーとか?興味深くはあるけれど、残念ながら今はそれ程そそられないねぇ」

 

【FINAL ATTACK RIDE】

 

唯一、クロックアップ中のリエンドダークカブトに食らい付いてきた者が居た。他とは異なる装備をした指揮官か隊長格、或いはエースだろう兵士。だったが、反応しようとしただけで動作まではクロックアップに追い付けていない。リライドライフルによって他の特殊兵は全滅させられ、自身は踵落としによって床に抑えつけられている。更に光が発動したのはダークカブトのファイナルアタックライド。

 

【D-D-D-DARK KABUTO】

 

「じゃあ、さようなら」

 

何とか抜け出そうともがいていた特殊兵だったが、ライダーフォームでも充分にパワーのあるダークカブトの脚を退かす事は出来ず。繰り出されたダークライダーキックに押し潰され、さっきまで命だった赤黒い床の染みへと変えられてしまった。

 

「こちらは終わったよ。まぁ、急がないと次々に来るだろうけど」

<チェック完了 此方も問題無い>

「早かったねぇ。では地上に出るとしようか」

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「これだけ減らせれば充分か。後は残りと増援を近寄らせないようにすりゃ……」

『あー、あー、こちら光&エクス。地上の諸君、聞こえているかな?』

 

さすがは企業国家というべきか、それとも統治者のプライドか、際限など無いのではないかとすら思える敵機の群れを捌き続けていた機動兵器組。こちらは誇張を抜きにして、際限の無い補給コンテナ射出をドレッドクライスが行い続けており、パイロットの限界が来るまでは戦い続けられる。更に言えば、敵の空戦部隊は空中を走るクライナーと母艦であるドレッドクライスを優先的に狙っている為、地上のMS組の負担が軽くなっている。

 

このまま行けばミッション完了、という所で光からの通信が入ったのだ。カリュブスは何故か嫌な予感を覚えていた。ようやく待ちわびた瞬間が来た、というのにだ。

 

『ドラグーンの回収は完了。今、全速力で地上へ向かっているのだがねぇ?』

 

悪い予感ほど当たるモノだ、とカリュブスは一年戦争時代に嫌というほど味わったそれが、再び襲い掛かってくるのを感じていた。

 

『どうやらドラグーンを奪われた事で、地上のグレート回収に全力を注ぐ方向にシフトしたらしくてねぇ』

『っ……!』

 

それ、みたことか。

そんな情報を聞かされては、もう玖美に待ては出来ない。ドレッドクライス側の通信回線が騒がしくなった辺り、キャニーが慌てて発艦シークエンスに入ったのだろう。

 

<疑問 何故、そのような虚偽───>

『おぉっと!そういう訳だから、玖美クンの援護を頼むよぉ。我々も急いでいるからねぇ!』

 

エクスがとんでもない事を言いかけていた気がするが、恐らく詰めても笑って追及を躱すだろう。九十九 光とはそういう女で、そういう悪魔だ。

 

「はぁ……聞いての通りだ。シンデレラが裸足で走ってくるぞ。各機、エスコートの準備」

『了解、だよ』

───ん……

『もう!ほんっとにメチャクチャするわね!』

 

『やむを得まい。クライスも前に出すぞ、一機でも多く敵を引き付ける』

『わかりましたよ……』

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

許さない。

グレートは私の生きる理由なのに。

それを奪う?そんなの駄目、絶対に許さない。

 

私にはグレート以外に無い。

私が存在している理由はグレートを動かすため。

グレートを操縦している間だけは、お父さんが私を見てくれた。グレートに乗っている時だけは、私はお父さんの娘でいられた。

 

でも、この世界にお父さんは居ない。

兜甲児も、弓さやかも、剣鉄也も、炎ジュンも。

私を知る者は誰も居ない。

マジンガーだって私のグレート以外に無い世界。

 

そんな世界で、私からグレートを奪う?

 

そうなったら私は……

 

私は何者でもなくなってしまう。

 

そんなの……!

 

絶対に……!

 

 

「ファイヤー……!オンッ!!!」

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「んー、シャバの空気は美味しいねぇ」

<提言 酸素は味覚で認識できる物質ではない>

「気分だよ気分。さてさて、戦況は───」

 

 

『ニーインパルスキック!』

 

アメリアの道路に何の恨みがあるのか、一帯を木っ端微塵にしながら地上へと出てきたエクスドラグーン。50m超えの巨大ボディの為、飛び出した勢いもあって崩れかけた高層ビルの屋上にまで届いている。危なげなく着地した光が見たのは、膝から鋭い針を展開し、ギアフレームを串刺しにしている黒いロボットの姿。

 

「おぉー、アレが玖美クンの」

 

『何処からでも来い……!近寄る奴は誰であろうと殺してやる!私からグレートを奪おうとした報いを!その身に刻み付けてやる!』

 

公園と思わしき場所に着地した黒いロボット。そこから外部出力されている声の主は、光の目論見通り憎悪に染まった玖美。

 

ギアフレームの爆発を背に受け、揺らめく炎の中に立つ漆黒の勇者。

ブラック・グレートが目を覚ましたのである。

 




悪い奴らをぶちのめす
この場合、悪はどちらだろうねぇ?

【小楯 玖美】
(原案:守次 奏 様)
(原作:マジンガーZ/INFINITY)
地球を狙う様々な危機に「くろがねの魔神」達が立ち向かっていた世界、そこからある程度の時が流れた時代から飛ばされてきた16歳の少女。
幼い頃から、実の父に過酷な訓練を課されていたらしく「自分の戦う意味、生きる意味」に悩み迷っている。心の拠り所が乗機であるブラック・グレートであり、カリュブスからは「パイロットとしては一流だが危うい」と評される。

【エクス】
(原案:月見きつねおうどん 様)
(原作:ソニックシリーズ)
悪の天才科学者 ドクターエッグマンが造り上げた戦闘用ロボット。
製造は完了しており、後はAIのプログラムを残すのみだったが、寸前でソニックらの介入を許しエッグマンの研究施設は爆散。したのだが、何故か前触れなく起動を果たした所でホロプシコンにより飛ばされた。
乗機……というより専用のバトルユニットは、エッグドラグーン2号機として製造されたエクスドラグーン。

【シェフト・コーサ】
(原作:機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
 ウルズハント)
賞金レース ウルズハントの水先案内人。
「コーサ」のファミリーネームが示す通り、主催者Nによって集められた元孤児の一人。人身売買に掛けられていた過去があるからか、多少の事では動じない肝の太さを身につけている。
光が開発した阿頼耶識コネクタによって、輝夜が会話の為に発した思考をナノマシンを通して受けとる事が可能になった。
現状は機体が無いが、MSパイロットとしてもそれなり以上に優秀。乗機さえ手に入れば前線で輝夜のサポートが行えるようになる。

この世界の主人公は、例えば───

  • 正義感の強い家族思いな少年とか
  • 一見すると冷徹だが心根の優しい少女とか
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