それがパンドラの箱だろうと
「レディースエーンジェントルメーン!いよいよ!待ちに待った最ッ高最ッ悪のイベントが始まるよぉ!」
太陽と言うにはあまりに禍々しい黒い陽が差す暗い街。裏風都をオマージュして大量のロードドーパント達に作らせた、九十九 光のエゴが形を成した箱庭。
実験都市「
その中心に位置する巨大交差点に、急造感の拭えない演説台が設置されていた。そしてその演説台に立ち、テンション高めに身振り手振り交えながら言葉を発しているのが件の九十九 光。数多の平行世界からガイアメモリに適合した者達を集め、自らの知的欲求と好奇心のままにそれらを試そうという人間の皮を被った悪魔である。
「ここに集まってもらったドーパント諸君には、各々のガイアメモリの可能性……その秘奥を見せてもらう。幹部クラスに匹敵するキミ達なら、私の望むものを見せてくれると信じている!」
ハンドレッドの黒い制服の上に羽織った白衣が光の動きに合わせて大きく揺れる。テンションフォルテッシモのままに言葉を紡ぎ続ける光の視界には、彼女の護衛兼スカウトエージェントである結咲 真が集めてきた各パラレルワールドのドーパント達の姿が映っている。
光の言葉を聞いた彼ら彼女らの反応は大きく分けて二種類。自分を選ぶとは見る目があると気取っている者と、自分なんかが本当にと不安がっている者。ごく少数は自信でも不安でもない別の感情を抱いているようだが、それは光も把握済み。
特にガイアメモリを握っている者。
「では検証の内容を説明しよう───」
【SHARK】
メモリの起動を示すガイアウィスパー、それから数秒と経たずに何かが水に落ちたような音。水場など存在しない交差点で、だ。
「グラァッ!」
光の右手側、演説台近くの地面から飛び出し凶悪な牙を剥いたのは、大きな鮫の頭から手足が生えたような姿をしたシャークドーパント。天津牙 涼という男が変身した鮫の記憶を宿した怪人だ。他のドーパント達は、この期に及んでと暴挙に驚く者と、人間がドーパントの奇襲を受ければ助からないとこれから起きる惨劇から目を背ける者、お手並み拝見と傍観に徹する者の三つに分かれたようだ。
そして襲われた当の本人、九十九 光の取った行動は───
「ふふっ……!良いねぇ!」
【KAMAENRIDE】
右腕を上げての防御。当然その程度が防御になるはずもなく、服ごと腕を食い千切られ……はしなかった。右腕から激しく火花を散らし、受け止めていたのだ。そしてその右腕は服を着ただけの生身ではなくなっていた。
「なっ!?」
「先に示しておこうか。一番上に立つ者の力を!」
「変身!」
【RE END】
特徴的なパターンの刻まれた黒い装甲を右腕に纏い、それをもってシャークドーパントの牙を止めていたらしい。一瞬でカメンライドのカードをドライバーに装填し終え、待ち構えていたようだ。腕を振ってシャークドーパントを引き剥がし、それに合わせるように他の部分にもディヴァインアーマーが装着され、光の姿は漆黒の破壊者「仮面ライダーリエンド」へと変わった。
「アマツガ・リョウ、シャークドーパントだね?鮫らしく水中戦では無類の強さを誇る他、ハイドープと誤認しかねない様々な能力を持つ。人間がエンターテイメントとして生み出した虚構の鮫たちが地球に記憶された結果だ。キミが突っ掛かってきた理由は分からないが、デモンストレーションとエキシビションとしては丁度良い。さぁ見せてくれ!キミの力を!」
「仮面ライダーだと……!」
後腰部にマウントされているリライドライフルを引き抜き、距離の開いたシャークドーパントに対してエネルギー弾を連射。シャークドーパントは動揺しながらもその大きな口を開き、鋭い歯を射出するという飛び道具を披露した。
「連射速度は中々のモノだねぇ。ダブル相手でもメタルボディ以外になら通りそうな威力も持っている……何度でも生え変わる鮫の歯を見事に再現した素晴らしい能力だ!」
【ATTACKRIDE】
【BLAST】
一旦撃ち合いを切り上げ、サイドロールによる回避を挟みながらカードを抜く光。歯の嵐によってたちまち残骸へとなり果てた演説台には目もくれず、ブラストのアタックライドを発動し再び射撃合戦へ。射出数による手数でリエンドを上回っていたシャークドーパントだが、今度は幻影の銃口4つが加わり連射数が増したリライドライフルに押され始めた。
「ぐうっ!?おわぁっ!」
「そぉら!続けて行くよぉ!」
遂に、リライドライフルのエネルギー弾がシャークドーパントの歯弾を押し切った。被弾の衝撃で体勢を崩し、地面に転がされる。そしてイケナイ方向に振り切った光は、意気揚々と新たなカードを引き抜きドライバーに装填してみせた。
【FINAL ATTACKRIDE】
【RE-RE-RE-RE END】
発動されたのはファイナルアタックライド。リライドライフルの銃口がシャークドーパントに向けられ、その射線上にリエンドのライダークレストが描かれたカードの幻影が複数出現する。リライドライフルの射撃を超強化したリエンドの必殺技の一つ。
ディメンションスナイプだ。
「さぁ!どう躱す!」
「目ぇ離したらこれだよ!!!」
【ZONE】
鮫の怪人を三途の川へと叩き込む光弾が解き放たれる瞬間、何かが飛び込んできた。ゾーンメモリをレイズし、空間跳躍でリエンドに急接近。ギリギリの所でディメンションスナイプの照準をシャークドーパントから外したのは、真が変身したウォーホースドーパントだった。
「おぉっと」
「お前らちょっと待ってろ!」
更にリエンドを自慢の馬力でゾーンゲートに押し込み、自分が集めたドーパント達の元から引き離す。そしてゾーンとは別の空間移動手段であるオーロラカーテンを展開し、その中へリエンドごと飛び込んだのだ。
「あの馬女ァ……!また俺をコケにしやがって!」
「まぁまぁサメくん。あのままでは、メモリブレイクどころか命も危うい状況だったのだから。ここは素直に拾っておきたまえ」
真とは、彼女がスカウトに来た際に一悶着あった涼。何れ真を打ちのめすつもりだった彼のリベンジ対象に光も追加されたようだ。ドーパントへの変身を解除した涼を宥めたのは福大 天路。集められた者の中で光に恩義を感じている派閥の一人だ。
「あの人馬型ドーパントが言っていた通り、少し待とうじゃないか」
「チッ……言いたい事が山ほどあるんだよこっちは」
「それは私もよ」
二人の会話に入ってきたのは、紫混じりの黒髪をポニーテールに纏めた女性。学校の制服やビジネススーツ等の一般人に紛れる事のできる服装をした者が多い中、一際目を引くキャットスーツが特徴的だ。名を
「あの忌々しいトリニティと戦えると聞いて来たのに、その本人がこの場に居ないのはどういう事かしら」
「そのトリニティ某、あるいは某トリニティさんは存じ上げないが、あの九十九 光という女性は少なくとも我々に対して嘘は言っていないだろう。もし嘘偽りで我々を集めているのなら露見した時のデメリットが大きい。如何な仮面ライダーでも、この場のドーパントに一斉に襲い掛かられたら面倒なはずだ」
「……面倒、ね。勝てるとか一溜りもない、とかは言わないのね」
「君も見たろう、あの戦闘能力を。それに私の記憶と推測が正しければアレでも本気じゃない」
天路の脳裏に過るのは、まだミュージアムに婿として居た時の記憶。何の因果か繋がってしまった世界で垣間見た摩訶不思議な体験。
(ダミーのアフターサービスで動いた時だ……色や細部の装飾こそ違うが、アレは間違いなく世界の破壊者。あるいはそれに近しい存在……威力の高いエネルギー弾を撃つだけの仮面ライダーである訳がない)
「ふん……まぁ良いわ。檻から出してもらったのは事実だし、もう少しだけ待ってあげる。それにしても……私を含めて中々の数を集めたものね。キワモノも居るみたいだけれど」
お前がそれを言うか
この場で麗牙の言葉を聞いた全員がそう思ったという。それはそうだ、シルエットやボディラインを隠すつもりの無いキャットスーツを着用したTHE・怪盗のような姿なのだから。実際にトライアールという怪盗として活動していて、本人が話題に出したトリニティに逮捕されたのだが。
「見た所20にもなってない坊やも居るみたいだし」
「えっ」
その場に座ったり、自身の生体コネクタを気にしたりと思い思いに待機の姿勢を取ったドーパント達。彼ら彼女らを眺めていた麗牙の視線が、とある一人に向けられ止まる。その人物は、麗牙の言葉通り二十歳にも達していない未成年。なのだが、本人から驚きが漏れたのは「坊や」という部分に対して。
一見して女の子にしか見えない可憐な容姿をしているのだ。服装もフリルのあしらわれたガーリィな物。少女のような少年の名は
「な、何で分かったんですか……」
「女の匂いがしないからよ。観察眼には自信があるの」
「確証は無かったが、やはりか。君からは肌が粟立つ嫌な感覚がしない」
麗牙はエージェントと怪盗という眼と感覚の鋭さが物を言う身分ゆえに、天路は妻であるはずの園咲冴子に始末されかけたトラウマから発症した女性恐怖症ゆえに、それぞれ勇輝の性別を見抜いていたようだ。
「そう、ですか……やっぱり、変ですか……?ボクが、こういう格好、してるの……」
弱々しい雰囲気を纏っていた勇輝の周囲で、空気が変わったのを全員が感じていた。戦闘経験や経歴によって大なり小なり受け取り具合は異なるが、直感的に理解はできている。
これの答え方によって分岐点が切り替わると。
「別に、誰がどんな格好してようが構わないわ。私に譲れないポリシーがあるように、あなたのそれも譲れないモノなんでしょうし」
「そうそう、格好の際どさで言うなら彼女の方が上だ。痴女と言っても過言ではない」
「喧嘩売ってるなら言い値で買ってあげるわよ?」
【TARBOSAURUS】
「ほう、ティーレックスではなくタルボサウルスか。珍しいタイプだが遠慮しておくよ。その強気な物言いを聞いていると、あの女を思い出して震えが止まらなくなるからねぇ」
勇輝の地雷を回避したかと思えば麗牙の逆鱗に触れにいく天路。言葉とは裏腹に冷静そのもので、自らもドライバーメモリに手を伸ばして構えていた。
「変人しか居ねぇな」
お前に言われたくない
涼の言葉に、またもその場に居る全員の思考が一致したのであった。
▽▲▽▲▽▲
「ったくオメェはよぉ!せっかくオレが苦労して集めてきたドーパントを早速殺す気か!?」
「あのシャークドーパントがどう出るか見たかったのだがねぇ……何もせず死ぬならその程度だった、という訳だし。それに私のブレーキ役を兼ねているのなら、もっと早く止めに来てもらわなければ困るよ真くぅん」
「テメェがこいつら迎えに行けっつったんだろうが!?自他共に認める天才とか言いながら記憶力はダチョウかゴラァ!」
本気か冗談かいまいち分からない光の言動に真がキレ芸でツッコミを入れる。いつもの光景と言えばいつもの光景なのだが、今回は彼女ら二人以外に客人の姿もあるのが異なっている点だ。
「その姿は初めて見ますねぇ、ドクターヒカリ?」
「あぁ、リエンドライバー以外はまだ見せていなかったか。初対面の時はエターナルの姿だったしねぇ」
光と真が転移してきたのは、紛外境全域をモニタリングしている指令室のような空間。そこに真が迎えに行った客人とその護衛が加わっているようだ。
彼、あるいは彼女の名はジョン、あるいはジェーン・ドゥ。日本で言う所の「名無しの権兵衛」に該当する呼称であり、身元不明の死体の仮称としても用いられる。そんなナナシを名乗っている人物の姿は、黒い靄に覆われていて性別も体格も分からない。これはドゥのハイドープ能力によるものだ。
「キミには金髪の女性に見えるのだったかな?」
「あ?あぁそうだよ。白衣に赤いボディコン着た金髪の仮面女」
「針でも持とうか?」
「よく分かんねぇけど止めとけ」
どうやら真には言った通りの姿をした女性に見えているらしい。安心と不安が刺さりそうな姿のようだ。
「ワタシの姿が常にドーパント態で見えているドクターヒカリが異常なのだよ」
「ふふっ、キミにお墨付きを貰っているようで私は嬉しいよ。人間を辞めれたようでね」
二人の出会いは偶然だった。リエンドエターナルのテストとしてガイアメモリの存在する平行世界に降り立った光が、裏の人材派遣を行っているドゥとたまたま遭遇したというだけ。だが、悪魔と愉快犯の邂逅は最悪の化学反応を示した。欲求のままに次元を跨ぐ光と、面白可笑しい事に目が無いドゥ。今回の紛外境にもドゥは多大な貢献をしている。
「ロードの適合者調達は本当に助かったよぉ。さすがに街一つ作るのに10や20では足りないからね」
「ワタシとしても久々にやりがいのある仕事だった」
紛外境を作り上げるのに必須だったロードドーパントの群れ。その適合者たちを集めてきたのは、真ではなくドゥなのだ。スムーズかつ安定した街作りを進める為には100体ほど必要、更に消耗が激しくなると捕食衝動が抑えられなくなり命令も聞かなくなる為に処分するしかない。つまり追加が必要になる。現場監督と処理役を真が担当し、ドゥは供給を担当していたという事だ。
「あー、真。今回の適合者たちを待たせているから、検証の説明をしておいてくれたまえ」
「しゃあねぇな……コイツと問題起こすなよ?ぜってぇ起こすなよ!?分かったな!!!」
念に念を入れ最後にもう一度念押ししオーロラカーテンに消えていく真。ヒラヒラと手を振って応える光だが、リエンドの仮面に隠された素顔は薄ら笑いを浮かべていた。真はここで気付くべきだったのだ、光がまだ変身を解除していない事に。
「……嫌な予感がするが?」
「あそこまで見事に振られてしまっては、ねぇ?応えるしかないじゃないか!それに、君も検証に招いたドーパントの一人だからねぇ!」
「やれやれ……直接戦闘は専門外なのだが。まぁ、楽しませてもらうとしよう!」
【MASQUERADE】
靄が蠢き、ガイアウィスパーが発せられた。それが示すのはドゥの変身。ミュージアムや財団Xの戦闘員であるマスカレイドドーパントのハイドープ態、光が常に観測している姿が曝された。ドゥの後ろに控えていたスーツ姿の通常型マスカレイドとは違い、全身にヴェネツィアンマスクを纏った異様な姿。ハイ・マスカレイドとでも呼ぶべき怪人が軽く手を振り、リエンドへの攻撃を指示した。
「確かに数はシンプルな力だ。けれど、マスカレイド程度で私を止められると思っているのかい!」
「思っていないからこそ、ちゃんと自我のある手駒も連れてきているのだよ」
【SPIDER】
【BAT】
【COBRA】
更に響く別のガイアウィスパー。ハイ・マスカレイドの身体に張り付いている物と同じ形をしたマスクを装着した三人の男女。それぞれが左手首、右肩、喉元にメモリを挿してドーパントに変身したのだ。
「ほう!洗脳した人間に別のメモリを使わせる事も出来るのか!良い……良いねぇ!」
歓喜の声を上げる光だが戦況は芳しくない。如何に非力といえどマスカレイドの数は多く、組み付かれれば一瞬動きが止まってしまう。そこにスパイダーの糸が絡み付く事で完全に動きを止められ、バットが発した超音波で感覚を狂わされ、体を大きくしならせたコブラからの手痛い一撃を貰って吹き飛ぶ。ハイ・マスカレイドの必殺パターンに嵌められているのだ。
「もうお分かりかな?強靭な仮面ライダーだろうと、一人では数の暴力には抗えないのだよ」
「そうだねぇ……!なら、こちらも手数を増やそうじゃないか!」
【KAMAENRIDE】
恐らくはモニタリング用と思われる機材に激突して倒れ込んだ光。だがその声色には疲労も恐怖も乗っておらず、むしろ狂気的な色が混じり始めた。舞い上がる粉塵の中で、光が抜いたのはカメンライドのカード。解放されたのは「絶対の暴力と支配」を体現するライダーの力。
【GLARE 2】
「別の仮面ライダー……?」
「そうさ。世界も人生も、娯楽のゲームで使い潰す最低で最高の世界。そのゲームにおける管理者だよ。さて、駒を補充させてもらおうか!」
【ATTACKRIDE】
【REMOTE CONTROL】
全身に不気味なノイズパターンが追加された仮面ライダーグレア。光がカメンライドしたのは、とあるサポーターが本来の使用者から奪い取った後のスペック向上型の方らしい。立て続けにリエンドライバーへ装填したのはリモートコントロールのアタックライドカード。ヴィジョンドライバーではない故に手間は増えるが、機能自体にデチューンはされていない。
「そういう事か!退け!」
「遅いよ」
リエンドグレア2の両肩と胸部から分離した血走った眼のようなパーツ、ヒュプノレイが三基飛び、退避の遅れたマスカレイド三体の頭部に被さった。赤い閃光が迸った後、ゆらりと本来の主であるハイ・マスカレイドに向き直る三体。その動作に害意を感じたドゥは即座に攻撃指示を出す。
「チッ……!」
「アッハハハハ!マスクを被せて洗脳するのは君の専売特許じゃあないんだよ!そぅら、これもオマケだ!」
【ATTACKRIDE】
【UPGRADE】
今度はアップグレードを発動する光。ヴィジョンドライバーにレイズバックルを装填し、自身かハッキングしたライダーにそのバックルに応じた装備を強制装着させる機能だが、これもアタックライドによる機能代替で発動となるらしい。それぞれ、スパイダーが糸を放った個体にはマグナム、バットを迎え撃つ構えの個体にはモンスター、コブラと組み合っている個体にはゾンビが装着された。
「おぉ!全て見事に大型バックルだ!アタックライドで発動すると、本家のハテナボックスみたいに何が出てくるかランダムなのが玉に瑕なんだが。運に恵まれたようで助かったよぉ、これも日頃の行いだねぇ!」
徐々に狂気のタガが外れていっている光。昂る欲求のままハイ・マスカレイドへと殴り掛かり、防壁となる為に飛び込んできたノーマルマスカレイドを容易く弾き飛ばす。また、護衛の上位個体が変身したドーパント達は、光にハッキングされたマスカレイドによって抑え込まれていた。リエンドグレア2を止める為に糸を放つスパイダーだったが、悉くマグナムシューター40Xによって糸を撃ち抜かれ、バットは超音波を物ともせずに突っ込んでくるモンスター装備から目を離す訳にいかず、コブラにいたってはゾンビブレイカーに尾を切り裂かれていた。
「ハハッ!アッハハハハ!」
【FINAL ATTACKRIDE】
【G-G-G-GLARE 2】
いやに響く狂ったような笑い声と共にグレア2のファイナルアタックライドを発動した光。両膝に残っていたヒュプノレイを分離させ、主を守ろうと肉壁になったマスカレイド達をまとめて薙ぎ払い、線が通った所で一気に加速。ハイ・マスカレイドも迎撃の光線を頭部のマスクから放つが、リエンドグレア2の勢いを削ぐには威力が足りなかった。
文字通り必殺の回し蹴りがハイ・マスカレイドの横っ面を捉える直前───
「……!」
「………………はぁ」
乱戦の最中でも、破損どころか傷一つ付かなかったコンソールから電子音が鳴っていた。どうやら通信回線の呼び出しらしい音を聞き、深く溜め息を吐き出す光。先程までの狂乱ぶりは何処へやら、蹴りの体勢を解き、急にやる気を無くした様子でコンソールへと近付いていく。
「何かな。私は今とても忙しいのだがね」
応答した光の声色は冷えきっていた。それを耳にしたドゥは、直前まで迫っていた狂乱の一撃とは別の危機感を新たに抱いていた。
今の九十九 光は機嫌が悪い、と。
「そのままサイゲツに任せれば良いだろう。アレにはダークキバだけでなくアークゼロも渡してある。もう一度言うが、私は今とても忙しい」
そう言って一方的に通信を切る光。そのままグレア2のカメンライドだけでなく、リエンドへの変身も解除し生身へと戻った。ハイ・マスカレイドへ振り向いた時には、不機嫌とは程遠い笑みを浮かべていた。不自然な程に、不気味なまでの笑顔を。
「いやぁ、水を差してしまって申し訳ない。私が手を出す必要の無い案件だったのでね」
「ワタシとしては助かったがね。得意先に殺されるなどつまらん幕切れは御免だ」
「謝罪ついでに君も見ていきたまえよ。ここはVIP席だぞぉ」
「……では、お言葉に甘えて観覧させてもらおう」
マスカレイド達と護衛ドーパントの戦闘態勢を解かせ、光が勧めた椅子に腰かけるドゥ。光目線では姿が変わっていないが、メモリは排出して人間態に戻っている。コロコロと思考も表情も変わる光に対しての危機感を引き上げるドゥだが、それと同じくらいに歓喜の度合いも引き上げられていた。元々「楽しい事」に目が無い愉快犯なのだ、これから起こる大検証会に興味が無い訳がない。
「ん?アレは……」
「ふふっ、私の特注品だよ。さ、始まるよ」
SEボタンを長押ししながらカメンライドカードを装填すると、シャークドーパントを受け止めながら行った右腕からの変身音が鳴る特殊モードに!
(C○Mリエンドライバー)
【天津牙 涼】(原案:青いカンテラ 様)
交番勤務の警察官として働いていた男。
年齢は27。
正義感の強い真面目な性格で、市民の悩みには親身に寄り添う街角のお巡りさん。地域住民の評判も良かった。
しかし内心現状に対しての不満を抱いており、出世していく同期に対して自分は交番勤務。早々大きな事件が起こるはずもなく。そんな日々を過ごしている中、道端に落ちていたシャークメモリを拾った事でドーパントと化した。メモリの毒素に蝕まれるままに凶暴性が高まっていき、加減を間違えて犯罪者を殺傷した際、彼を人間に押し留めていた最後のブレーキが壊れた。
大検証会に招待しに来た真にも襲いかかるがあっけなく返り討ちに遭い、そのまま連れ去られた。その為、真には恨みを抱いている。今回の一件で光に噛み付いたのも真の関係者と判断したため。
シャークドーパントは大きなサメの頭に人間の手足とサメの尻尾が付いているという、ティーレックスドーパントに近い見た目。
歯を銃弾のように発射する以外にも多彩な攻撃手段を持ち、地中に潜って高速移動したり、小規模な竜巻を起こして高く飛ぶ、両腕をヒレのように変化させて斬りつけるなどの特殊能力を持っている。光曰くシャークメモリは現実のサメと映画などで描かれる虚構のサメの記憶を持つメモリであり、適合率が高ければ更なる能力を引き出せただろうと評価している。
サメなのでもちろん水中戦も得意。
【麗牙・R・レクスドライグ】
(原案:オリーブドラブ 様)
トリニティと同じAP世界出身の女性。
年齢は24。
元々はノバシェード対策室の特務捜査官であり、B.A.V.A.R.F.が創設された際はチャーリー・シックスのコードネームが与えられるはずだったが、虚栄心の強さゆえに自身よりも若い隊長の下で働くことに耐えられず組織から離脱。古巣に対する当て付けのように、世界を股に掛ける怪盗「トライアール」となった。B.A.V.A.R.F.隊員候補に選ばれるほどの潜入技能を持つ彼女への対応に四苦八苦する対策室だったが、本部に潜入して軽装型強化服を盗もうとした所をトリニティに見付かり逮捕された。
刑務所の中で彼女に対する私怨を募らせていたところ、九十九 光が現れ、トリニティとの再戦が叶う場があるという甘言に乗せられた麗牙は脱獄も兼ねて大検証会に参加する事となる。
使用するメモリはタルボサウルス。
【美城優輝】(原案:北凍武人 様)
女子と間違うほどに可憐な容姿の少年。
年齢は16。
女性用の服装等に興味があり、それが災いしてイジメを受けていた。また、家族も気味悪がり理解を示さず家庭でも孤立していたという。
イジメを止めるという条件付きでガイアメモリを万引きしろという新たなイジメを受け、売人の隙を突いて万引きを敢行。その時盗んだのがプリティのガイアメモリであり、気づかれた事に慌ててメモリを使用した事でドーパントとなった。
メモリの毒素による中毒と、逃亡の為に能力を行使しすぎた反動で危険な状態に陥り、観測していた光の指示で真が来訪。生体コネクタ手術と中毒を緩和する手術を施された事で一命を取り留め、改めて検証会に参加する意思を固めた。
余談だが、彼をイジメていた同級生は成果を確認しに来た所を中毒による暴走状態の中で殺害。家族は施術のリハビリと、本人にとって正式なメモリのテストで同じく殺傷されている。
【ジョン/ジェーン・ドゥ】(るるいえ駐屯兵 様)
裏の人材斡旋業者。年齢不詳。
マスカレイドのハイドープとして覚醒しているらしく、「顔につけている仮面以外の外見の認識が阻害され、人によって見える姿が異なる」、「仮面をつけていないときは人の記憶に残らず、カメラ等の電子機器にも姿が映らない」などの能力を持つ。そんな特殊体質となっているからか、初対面の人間にはまず自分がどのように見えているか聞く癖がある。
ノーマルのマスカレイドを生み出す能力を持ち、抗争や違法労働、誘拐など様々な犯罪行為にそれらを提供するのがビジネススタイル。専門知識や技能が必要な場合はハイ・マスカレイドの能力で人を洗脳、誘拐して操る。
客に人材を提供する際には、顧客が成す何かが面白いかどうかで決定し、そこから報酬を決める愉快犯。次元を超える侵略者であるハンドレッドは特にお気に入りらしく、窓口となっている光とは意気投合している。
ドーパント態は全身にヴェネツィアンマスクが付いた怪人然とした姿。マスカレイド達による数の暴力を基本戦術としており、前述の通り身体中に付いている仮面を相手の顔に付けて洗脳し操ることができる。仮面の目から光線を放つことが可能で、マインドコントロール以外にも飛ばした仮面から光線を連射する遠隔攻撃も得意。
今回は護衛としてスパイダー、バット、コブラのメモリを用いる手駒を連れていたが、光の気紛れによって戦闘に突入。リエンドグレア2とのマインドハックバトルとなった。