九十九 光の気ままな実験録   作:X2愛好家

4 / 10
特注品の力、とくとご覧あれ。


検証:GD

「待たせたな。じゃあ始めんぞー」

 

光がドゥ相手に良くないハッスルを始めたのと時を同じくして。紛外境に戻ってきた真がドーパント達の前に立った。

 

「お前らには───」

「おい馬女!借りを返してやるから、さっさとメモリを構えろ!」

「あぁ?サメ野郎か……わーったわーった、後でキッチリぶちのめしてやっから待ってろ」

 

真と因縁のある、というより逆恨みしているシャークドーパントこと天津牙 涼が噛み付くが、普段の喧嘩っ早さを潜めて光の助手モードになっている真はまともに取り合わない。堪忍袋の緒が切れかけている涼がメモリを生体コネクタに挿入しようとした瞬間、どこからともなく複数の怪人が現れ、真の前に立った。

 

恐らくは自分達と同じドーパント、という事以外は分からないが、あのマッドサイエンティストの言う検証がついに始まるのかと集められた者達の間に緊張が走る。そんな中、メモリセールスマンでありミュージアムの元花婿だった福大 天路だけが正体不明のドーパントの正体を掴みかけていた。そんな天路の様子に持ち前の嗅覚と人物眼で気付いたのか、麗牙が近寄ってくる。

 

「何か知っていそうな顔ね」

「あの姿はダミードーパントだ……だが色合いが私の知るものより暗い。体格も鎧のような部位も通常のダミーとは違う……彼女、九十九 光が手を加えたと見て間違いはないだろう」

 

そう、集められたドーパント達と対峙するように立っているのはダミードーパント。だがそのボディは黒く染まり、肩や膝、胸部に顔と本来のダミードーパントには無いアーマーのような部位が追加されている。数々のメモリを販売し、冴子と井坂に追い詰められた事で磨かれた感覚が絶え間なく警鐘を鳴らしている。

 

アレは危険だ、と。

 

「コイツらと戦ってもらうぜ。ただのドーパントと思うなかれ、ってね。じゃ頑張れよー」

 

真がヒラヒラと手を振ったのを合図として黒いダミードーパント達が一斉に動き出した。ご自慢の擬態能力も使わず、素体のままで接近してくるダミードーパント。ある者は舐めた真似しやがってと怒りながら、ある者は油断できないと最大限の警戒をしつつ、またある者は楽しませてくれと狂気的な笑みを浮かべ。

 

各々のメモリが起動する。

 

【SLIME】

【PHANTOM】

【EINHERJAR】

【DRIVER】

【AQUARIUM】

【VIOLENCE】

【ANGEL】

【CROCODILE】

【FACTRY】

【PRETTY】

【IGNIS】

【PROP】

【ZI-O】

【DESERT】

【TARBOSAURUS】

【GOLD】

【SIGN】

【SHARK】

 

自らの生体コネクタに、或いは自前の持ち込み品であるガイアドライバーにメモリを挿入し、それぞれが持つメモリの能力を宿したドーパントへと変異した適合者たち。色とりどりで不揃いで、人間にとって脅威となる力を秘めた地球の記憶の具現化。更なる異形と化したダミードーパントへと武器を向ける。

 

「……あーゆーの見てると血が沸騰しそうになるんだよなぁ……サメ野郎も戦いたがってたし、少しくらい早まっても大丈夫だよな」

 

───ワンッ!

 

「あ?」

 

オーロラカーテンを潜る直前に立ち止まり、激闘、もとい検証を始めたドーパント達を見つめながらウォーホースメモリに手が伸びる真。どうやら涼ことシャークドーパントとは本当に決着をつける積もりらしく、それを前倒しても構わないだろう、と疼いているようだ。そこに声、ではなく鳴き声を掛けたのは犬のような生物。

 

「なんだぁ?どっから紛れ込んだ犬コロだ?シッシッ、危ねぇから向こう行ってろ」

 

───クゥン?

 

「いやそんな、はぁ?みたいに首傾げてもダメなもんはダメなんだよ……あのな?ここは今、ドーパントっつーバケモンが大集合しててな?……って、言葉通じる訳ねぇか……」

 

───ワフッ

 

「おら、さっさと……なっ」

 

【DIRE WOLF】

 

真が溜め息を吐きながら視線を反らした一瞬、その内に犬のような生物は、己の得物となるメモリを何処からか抜いていた。端子の色が銀色、つまり一般に流通している物よりも強力な上級モデルの証。シルバーメモリであるという事だ。ダイアウルフの記憶が宿ったそれを器用に咥えて起動し、身体やドライバーに挿入するのではなく真上に放り投げる。すると身体の周りを黒い球状のエネルギーで包まれ、数秒と経たずに再び姿を見せた。

 

その姿は異形そのものだったが。

 

───アオォオォォォォォッ!!!

 

「ドーパント!?何だコイツは!」

 

───グルゥ……!ガァッ!

 

人狼のような姿へと変異した元 推定 犬は驚く真に目もくれず、ダミーと戦うドーパントの元へと駆け出していく。近くに居たお前が悪い、とばかりに標的として定めたのは───

 

「な、にっ!?次から次へと!」

 

目の無いワニのような頭部と鱗に覆われたボディが特徴のクロコダイルドーパント、鬼塚(おにづか) 一颯(いぶき)だった。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「アレもまた特注品かな?」

「いや?彼は私のラボの番犬、そして私直属の処刑人だよ」

 

「おい光!どういう事だよあの犬っコロは!」

 

イケないハッスルを終え、モニタリングルームで観戦中の光とドゥ。そこに大急ぎでオーロラカーテンを潜り、戻ってきた真が怒鳴り込んできた。

 

「おかえり、ご苦労様」

「おう……じゃねぇよ!聞いてねぇぞあんなの!」

「聞かれていないからねぇ」

「コイツ……っ!」

「おっとぉ、手が出る前に説明しようか」

 

「彼には名前が3つほどあってねぇ。まず生物としての識別名がガイアルガン、私が名付けたニックネームがGaia Wolfの略でGW、主にグゥと呼んでいる。そして最後がダイアウルフドーパント。これは説明する必要は無いね」

「ガイアルガン?馴染みの無いワードだ」

「現代文明とは違う世界の生物だからねぇ」

「……待てオイ。まさか平行世界から連れてきたのかあのワンコロは!」

「厳密には違うよ。私が連れてきたのではなく、彼が自分の意思で付いてきたのだよ」

 

はて?そんな生き物がこの地球上に居ただろうか、と記憶を探るドゥと、またやらかしやがったこの天才馬鹿と頭を抱える真。それもそのはず、護衛兼副官である自分の知らない所で別世界の生き物を連れ帰っていたのだから。しかも当の本人は不可抗力だよぉ、と悪びれる様子が全く無い。

 

「たしかイワンコとか言ったかな、進化前は」

「進化前……?ほう!それは興味深い……!つまり人間や現状の生態系とは駆け離れた文化体形が確立された世界、という事……?」

「ドゥ、やはりキミとは馬が合うねぇ!いずれキミにも紹介したいよぉ、あの不思議な生き物がそこかしこに跋扈している世界を!」

「お前ら……」

「グゥの説明に戻ると……真、ミックを覚えているかな?」

「ミック?ミュージアムの飼い猫だったスミロドンドーパントだろ?それが何……まさか!」

「想像通り。ドーパントになれるのは人間だけじゃあない。ラボに付いてきた時、自分からダイアウルフメモリの元に行ったのだよ!彼はミック以来となる、人間以外の生命体がドーパントとなった珍しい事例さ!」

 

厳密に言えばケツァルコアトルスも居るがね?と注釈を付け加えて締める光。

どうやらグゥは、真の知らない間に平行世界散策へと出ていた光の帰り際に付いてきた、向こうの世界のモンスターらしい。光の存在から何かを感じ取ったのか、単純に遊んでほしかったのかは定かではないが、オーロラカーテンを潜って光のラボに迷い込み「メモリと使い手は引かれ合う」、という法則に導かれるままダイアウルフメモリに適合してしまったのだろう。ドーパント化に加え、時流から外れた独自の位相に存在するラボの性質も相まって、本来のイワンコの進化から外れた存在になってしまったという事らしい。

 

「その結果があの大型犬のような姿、そして自らの意思でメモリを起動できる複雑な自我の発達か」

「その通り!いやぁ、思わぬ拾い物だったねぇ。エーテル財団の私には感謝しなくては」

「初めて会った平行同位体はブライディじゃなかったのかよ……」

 

少し前に邂逅したスーパー戦隊世界の平行同位体、ブライディ・フィフティエスが光にとっての初遭遇という訳ではなかったようだ。それよりも前に「エーテル財団」とやらに属しているらしい平行同位体と出会っていた、という事実をサラッと告げる女。これが九十九 光クオリティ。

 

「ではあのグゥ氏も検証役で?」

「そうだねぇ。ガイアダミーと比較すると手数に欠けるが、あのパワーと俊敏さは侮れない相手になってくれるだろうさ」

「ガイアダミー?」

「そっちはオレが説明してやるよ。つっても言葉っツラだけなら難しい事じゃねぇんだが」

 

グゥことダイアウルフドーパントと共に、集められた適合者達へ襲い掛かっている特注品こと複数のダミードーパント。そちらはガイアダミーという名前らしく、真が光から説明を引き継ぐ。

 

「ダミーにフェイクとかライアーとかミミックとか……嘘とか偽物系?みたいなメモリをとにかくぶっ挿しまくって、仕上げにガイアプログレッサーを埋め込んで出来上がったのが、アレ」

「それは確かミュージアムが用いていたという」

「ミュージアムと財団Xが作れたモンを、コイツが作れないと思うか?」

「愚問だったね、失礼。素人質問ついでにもう一つ。幾らメインがダミーとはいえ、複数のメモリを追加挿入した上にプログレッサーまで埋め込んでは変身者が耐えられないのでは?」

 

ドゥの疑問に対し、自分の額辺りに刃物を入れて切り離すというようなジェスチャーをする真。次いで光の方に視線を向け、察しろ、と言わんばかりに溜め息を吐く。

 

「……?あぁ!人間としての自我を破壊して完全な器としたので?ハッハッハッ!これはこれは……!やはりキミは私の求めていた悪魔のようだ!」

「しかも麻酔無しで手術な」

「おぉ!」

「メモリの成長・強化には憎悪や悲哀といった負の感情が必要、という事は知っているだろう?私のガイアプログレッサーには、極限の恐怖と苦痛から発生する脳内物質がどうしても必要でねぇ。ダミーメモリの強化も兼ねて一思いに頭をパッカーン、とね」

 

ケラケラと楽しそうに、何でもないように語る光。その内容を知る真ですらドン引きしているのだが、ドゥはそれでそれで!?と食い入るように光の話に聞き入っている。

 

「そうして出来上がったのがあのガイアダミーさ。対峙した相手の記憶の中の存在に擬態できるのは変わらず、プログレッサーを介して地球と繋がっているから、ありとあらゆるガイアメモリの能力を模倣可能。擬態能力を使わずとも、素体そのものがそこら辺のドーパントより遥かに強い。今回の検証にはうってつけのサンドバッグさ」

「そのサンドバッグ、レベル500くらいあるんだけどな」

「殺すなとは命令を出してある。無論グゥにもね。それでも死ぬようなら……所詮はそこまでだった、という事さ」

 

ほんの僅かに失望の暗い色を瞳に宿し、直ぐに淀んだ光を取り戻すマッドサイエンティスト。各々が死力を尽くしてガイアダミーと戦っている様を、とても楽しそうに観察している。そうだ!と何かを思い付いた様子の光。

 

「ここまで説明が続いたんだ、折角だから今回集めたドーパント達も紹介してしまおうじゃあないか」

「オレが、な。オレが集めたドーパントな」

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「まずは師走(しわす) 由良(ゆら)。適合したメモリはスライム」

「ほう、スライム。打撃に絶対的な耐性を持ち、切り刻まれても再生が可能と、敵対者からすれば極めて厄介な性質を持つドーパントとなる」

「その代わり超高熱と極低温には弱いがね。凍結破砕なんてされたらアウトだ」

 

『ん……赤と銀のダブル……ずるい……』

 

「アレはヒートメタル形態……?なるほど、元の世界ではあのダブルに敗北しかけていた、と?」

「厳密には赤と紫だよ。打撃にも強いが、ヒートジョーカーの高熱パンチで熱を内部に送り込まれ続けて蒸発寸前だったのさ。真が間に合っていたから良かったがね」

「マジで間一髪だったんだからな?初めてだったよ、ウォーホースの能力で冷凍庫作ったの」

「家電も作れるのか君のメモリは」

 

人型の着ぐるみのような姿をしたスライムドーパントが殴り合っているのは、ガイアダミーが擬態した仮面ライダーW ヒートメタル。炎を纏ったメタルシャフトに打たれかけ、やむを得ず距離を取るスライムドーパントの後隙を狙って擬態ダブルが迫るが、そこに別のドーパントが滑り込んでくる。

 

「おや、あちらは」

鹿目(かなめ) 桜花(おうか)、アクアリウムドーパント」

「スカウトしたは良いけど、水族館の記憶って何ができんだ……?」

 

『由良妹、一人で無理をする必要は無い。さぁ、わたしの領域に招待しようか』

 

「あぁいう事ができる」

「水槽か?水も入ってら」

「アクアリウムの能力は出口、排水口の無い水槽の生成と水中での高速移動。水棲生物以外にとっては、発動するだけで必殺となる力だ」

「へぇ、確かにオレも泳いで息止めながらアレと戦えって言われたら手こずるな」

「ついでに水も一緒に生成されるからね、アノマロカリス辺りと組めば最悪のタッグになるだろうさ。今回はそれがスライムなだけで」

 

『ありがと……これなら楽に……ずるい……』

『まさかバイクまで使えるとは』

 

アクアリウムの能力により、一瞬にして水中戦へと切り替わったスライムと擬態ダブルの戦い。スライムこと由良は、ボディを固体と液体の中間にシフトさせる事で水中移動を可能とし、スライム故に呼吸の概念が消失するのか普通に会話もできている。一方擬態ダブルは自由に動けなくなる……と思いきや、専用バイクであるハードボイルダーを生成し、それに跨がっていた。しかも水中機動が可能なハードスプラッシャー形態である。

 

「アドバンテージはほぼ無し、か」

「こればかりは仮面ライダーの臨機応変さが一枚上手だった、としか言えないだろう」

「まぁ本人じゃねぇんだけどな、あのダブル」

 

『退け!食い千切ってやる!』

 

スライムを追い抜いて擬態ダブルに迫る獰猛な牙、シャークドーパントだ。

 

「サメ野郎か」

「ご覧の通りだよ。実在の生物としての鮫だけでなく、いわゆるサメ映画などで描かれる様々な虚構の鮫も能力として併せ持つ、使い方次第でいくらでも応用が利くメモリさ」

「他の水棲生物メモリが不憫に思えるメモリだ」

「ズーと同じく、一つのメモリに複数の能力を保有しているタイプだからねぇ。それ故に適合者も限られる」

 

『あの馬女の前座として丁度良い!』

 

「へぇ……良い度胸してんなぁ……!」

「少し落ち着きたまえ。どうせ後でやり合うのだから、その闘志は高めるだけにしておいてくれ」

「あのガイアダミーの相手は決まったようだ」

 

メタルシャフトを背中にマウントし、スライム、アクアリウム、シャークの三体と対峙する擬態ダブル。ドゥの言った通り、この固体の相手は確定したようだ。

 

『光兄に醜態は見せられない』

 

「……ワタシの記憶が正しければ、君は女性だったと思うのだが?」

「何故かは全くもって分からないけれど、彼女は私を男と認識しているらしくてねぇ……無理矢理にでも理由を考えるなら、水槽のガラスや水面で偏光するように、彼女の認知も歪んでいるとか。アクアリウムのハイドープに覚醒すると同時に、脳の認識機能にメモリの毒素が入り込んだか。同性として見れない程度に起伏の少ない体型である事は理解しているがね」

「は?オレは今すぐにでも抱きてぇけど」

「ん?」

「おやおや」

「…………っ!今の無し!忘れろ!いいな!」

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「んっ、んんっ!次!次だ!」

「可愛らしいねぇ。そろそろ照れ隠しの一撃が出そうだから紹介に戻ろうか」

「見ていて飽きないなぁ、君たちは」

「うるせぇ!オレは男でも女でも惚れた相手ならどっちもイケんの!」

「墓穴を掘っている事に気付きたまえよ。さてさて、お次は?」

 

『俺は戦う……誰が相手になろうと!俺は、俺は救世主なんだ!』

 

「エインへリアルドーパント。富士川(ふじかわ) (いさむ)か」

「どこか仮面ライダーを思わせる姿だな」

 

ドゥに仮面ライダーを思わせると言わしめ、様々な世界のライダーを知る光からはアナザーファイズのよう、と形容されたエインへリアルドーパント。アナザーファイズに騎士鎧を合わせたような姿、そのあちこちにマキシマムスロットに似た部位を持つ。その位置というのが、右前腕、能力で生成する剣の刀身根元、そして右脹脛外側。

 

「マジでファイズだな……」

「まぁファイズモドキの姿や力は彼が使用者だから、という所が大きいけどね。エインへリアル本来の真骨頂は別の能力にある」

「ほう?」

「今回の検証で見れるかどうかは、彼と他のドーパント次第といった所かなぁ」

 

実際に仮面ライダー555の世界からスカウトされてきた富士川 勇。その世界における「英雄」というモノに憧れ以上の感情、それこそ「成らなければいけない」という強迫観念が彼にはある。そこを気に入ったのが九十九 光という悪魔なのだが。

 

『また敵となるか!仮面ライダー!』

 

「……アレ、ジオウじゃね?色は真っ白だけど」

「ジオウドーパントだよ。加賀見(かがみ) 野景(のかげ)だったかな、名前は」

「あんなメモリが……?ダブルとは違うようだが、あの姿はドーパントというより仮面ライダーでは?」

「実際、限りなく仮面ライダーに近い存在さ。私が技術主任になる前、ライダーの力を宿した怪人を作るかライダーの変身デバイスをコピーして量産するかという、いわゆるコンペをしてね」

「結果は……今のキミが答えか」

「そうさ。コンペ用の初期型、その内の一つとして製作されたのがあのジオウメモリ。彼女はその適合者だよ」

 

ライダー怪人は一定以上の能力を示したものの、結局はダークキバやブルーフレアエターナル等の「本来は何らかのデメリットが存在する」ライダーに、「それらのデメリットを踏み倒して変身できる」光のコピーデバイスの方が優れていると判断されライダー怪人は敗れたようだ。コンペで破った相手のアイテムと適合者を、自分の趣味全開な検証会に参加させているのは面の皮が厚いというか、意地が悪いというか。

 

「ライダーに対する恨みが強くてねぇ。負の感情でポテンシャルを引き出すガイアメモリには最適な人材なのだが、私も仮面ライダーリエンドだろう?いやぁ、彼女の視線が痛くて痛くて仕方ないんだよねぇ」

「自業自得だろうが」

「それで?あのドーパントの能力は」

「ライダーとの共鳴だね。仮面ライダー限定だが、相手の能力をコピーできる」

 

エインへリアルとジオウドーパントが相手取っているのは赤い装甲が特徴的な仮面ライダー。ダブルに続く風都の仮面ライダーであるアクセル───に擬態したガイアダミーだ。ガイアダミーの擬態精度が高いからなのか、野景がジオウメモリのポテンシャルを引き出している故か、仮面ライダーアクセルの力を宿して応戦している。擬態エンジンブレードのジェット弾にジカンギレードモドキからエネルギー弾を発射し、相殺して見せるなど戦況は悪くないようだ。

 

「つーかよぉ、あのガイアダミーは何でアクセルになってんだ?アクアリウムみたいにフィールド変えられたから、ってワケでもねぇのに」

「本来のダミーと同じく相手の思考や記憶から擬態対象を選べるからねぇ。覗いた記憶が彼女の物だからだろうさ」

 

『警察の仮面ライダー……!今度は負けない……焼き尽くしてやる!』

 

ジオウを援護するように火炎弾を飛ばしているのはイグニスドーパント。当たれば仮面ライダーといえどダメージは避けられない高熱の炎なのだが、擬態アクセルもジェットやスチームに切り替えて器用に捌いている。

 

(てっきり父親に化けると思っていたのだが……彼女の中では、最早どうでも良い存在になったのだろうね。それより今は自身を逮捕した敵への復讐にお熱、か)

 

「ふふっ……!復讐は復讐を呼ぶ、とても良い流れじゃあないか!素晴らしいよ!」

「世間一般では悪循環って言うんだけどな」

「だがメモリを育てるには最高の環境だろう?」

「ハイハイ悪魔悪魔」

 

『これは聖戦……悪魔の囁きであろうと、私は!』

 

「ほら、真が悪魔と言うから天使が出てきたよ」

「オレのせいかよ」

「まさか……エンジェルメモリか!こんな所で目にするとは!」

 

ドゥが驚きと歓喜を同時に発露させた対象は、翼も含めて淡く発光している人形のようなドーパント。おおよそ人らしさを感じさせない凹凸の無いボディにのっぺりとした頭部。擬態アクセルの攻撃を回避しつつ衝撃波を発して反撃を行っているのは、エンジェルのメモリで変身したドーパントだ。

 

「モハメド・ザイーブ、某国のテロリストさ」

「発言からするに宗教系のようだ。他者を扇動しやすく、また自身も扇動されやすい。私もよく使う手合いだよ」

「妻子を失ってからブレーキが利かなくなった、って感じの奴だな。ま、同情はできるがオレらと同じロクデナシの悪人だな」

「それにしてもエンジェルメモリに適合するとは……ガイアメモリの中でも特に強力だが、それ故に適合者が皆無に等しいエンジェルメモリ。よもやこの目で拝める日が来ようとは!」

「……目ェどこだよ」

 

海を割り、空を裂き、地を揺らす天変地異を引き起こせるエンジェルメモリ。天使の名が示す通り、人の手に余る理外の力を適合者に授ける最強格のメモリだが、同時に適合者がほぼ存在しないメモリでもあるのだ。理由は単純明快、人は天使ではないから。

 

「……イグニスを庇っている?」

「みてぇだな。何でかは知らねぇけど」

「生きて成長していれば、灰咲 灯と同じくらいの年齢だったからじゃないかなぁ。目の前で娘と同じような少女が戦っていれば、つい手出ししたくなるのが親心ってモノらしいからねぇ」

 

知らないけど、と便利な魔法の言葉を付け加えて締める光。本気で親心を理解するつもりは無いらしく、灰咲 灯が追い詰められればエンジェルの真価を引き出せたりするか?と文字通り人の心が無い思考に至っている。

 

「そういやアイツは?プリティの相手させんだろ?どこほっつき歩いてんだよ……」

「それらしい反応があったから確認にね」

 

そう言いつつ通信機のチャンネルを別の場所、紛外境ですらない別時空へと合わせる光。数秒のラグも無く開いた映像通信。そこに映し出されたのは、ゴスロリ衣裳が特徴的な一人の少女だった。

 

 

◆◇◆

 

 

「…………」

『出番だよ。そろそろ戻ってきたまえ』

「……わかった」

 

光からの通信を受け取り、背後にオーロラカーテンを出現させるゴスロリ衣裳の少女。見つめていた先には、どこか彼女と近しい雰囲気の少女達が凌ぎを削っている戦舞台があった。

 

『どうだったかな?』

「ドリームどころか他の四人も居ない」

『それは残念』

「いいよ、別に。もしドリームが……のぞみが居たとしても、それはわたしが会いたいのぞみじゃないから」

『ゆっくりでも確実に進めて行こうじゃあないか。キミの夢の為にね?』

 

手に持っていた風船を空へ向けて放し、もう此処に用は無いとオーロラカーテンを潜る。彼女が立っていたのは、とある遊園地の一角。それも、一般人どころか遊園地のスタッフですらそうそう立てない建造物の天辺。初めから何も居なかったかのようにゴスロリ衣裳の少女は消えた。

 

 

◇◆◇

 

 

「このままやれば……た、倒せそう……!」

「ミシロユウキ」

「っ!?」

 

擬態アクセルと戦闘中の即席チーム、その内の一体であるプリティドーパント。アクセルとエンジンメモリによる猛攻をどうにか捌きつつ、各々の能力を駆使して食らい付いているドーパント達の背後に突如として開いたオーロラカーテン。そこから現れたゴスロリ衣裳の少女は、プリティドーパントの本名を呼びながら戦闘態勢を取った。

 

「えっ、お、女の子……?」

「あなたの相手はわたし」

 

困惑するプリティの前で、仮面ライダーともドーパントとも異なる「変身」を見せるゴスロリ衣裳の少女。暗い炎のようなエネルギーに包まれ、一瞬にして黒とピンクが特徴的な戦闘形態へと姿を変えた。

 

「ドーパント……?じゃない!」

 

「大いなる絶望の力、ダークドリーム」

 

ガイアルガン/ダイアウルフドーパントことグゥ。彼と同じく仮面ライダーとは異なる世界の存在。

 

夢を絶ってしまった絶望の戦士ダークドリーム。ひろがる紛外境のスカイの下、プリティな二人の戦いが始まろうとしていた。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「おーおー、勇ましいねぇ」

「見覚えは無いが、何故か既視感のある少女だ」

「日曜の朝にでも見たんじゃないかい?さて、プリティが抜けた穴は誰が埋めるのかな」

 

『照井 竜、本人ではないようですが。まさかスピード違反の常習犯、仮面ライダーがあなただったとは。これには本官も驚きを隠せませんね。本物を止める予行演習です、偽者にはここで止まっていただきましょう』

 

景井(かげい)真鯉(まり)か。アクセルに逮捕されたイグニスと、アクセルと知己の警官だったサインが同じ場所でダミーアクセルと戦うとは、正に運命の悪戯だねぇ」

「その運命を弄んでんのお前だからな?」

 

丸と三角で構成されたゴーグルフェイス、どこか魔法使いのようなイメージを抱かせるマント。標識を模した長柄の武器を三本背負った姿が特徴なのがサインドーパント。標識の記憶という変わり種のメモリであり、適合した景井真鯉は、ガソリンスタンドに突っ込んであわや焼死という所で光が手ずからスカウトした人材だったりする。珍しく真が迎えに行った人間ではないという事だ。

 

「サイン……確かに珍しい。ミュージアム製ではないようだな」

「私が暇潰しに作ったメモリの一つさ。今回の検証会より前に試し撃ちは済ませてある」

「見覚えねぇと思ったよ……」

「ご覧の通り中々に強力なメモリさ。彼女の適合率も相まってハイドープにも手が掛かっているのだが、変な所で善人でねぇ……私としてはさっさと人を捨ててほしいのだけれど」

 

光が強力と称したサインの能力。それは胸部生体装甲を回転させ、そこに表示された標識に応じた効果を敵に付与するというもの。現に擬態アクセルは、一時停止によって動きを止められ、カーブ注意でジェット弾をあらぬ方向へと逸らされ、速度制限でバイク形態のスピードを出せずにいる。

 

「マジで戦いたくねぇ……タイマンならともかく、他も居る状況で行動制限能力はクソゲーだろ……」

「能力だけじゃなく、彼女のフィジカルも相当なモノだよ。だからこそ、あの道路標識アックスやらランスやらが輝くのだから」

「ドライブの仲間に居なかったか……?」

「近しい要素はあるねぇ。さて、私のガイアダミーはどう出るかな?」

 

『ぐっ……!?』

 

「ふむふむ、そう出たか……!」

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「アレは私の能力か!どこまでコピーできるんだあのダミードーパントは!」

 

擬態アクセルとは別のガイアダミー、それと戦闘を行っているドライバードーパントが驚愕に目を見開いた。擬態アクセルが、サインに対して自分と同じ能力を使ったからだ。左手から放つネジ状のエネルギー弾と、それが着弾した部位を締める事で封殺するドライバードーパントの能力。それをサインの胸部パネルに撃ち込み、回転を封じる事で標識を固定したらしい。

 

【SKULL MAXIMUM DRIVE】

 

「っ、くっ!」

 

隙を見せたドライバーに対して放たれる破壊光弾。すんでの所で霧に包まれ、ドライバーに直撃する事は無かった。

 

「油断して勝てる相手ではないぞ」

「分かっているさ……!」

 

ガイアダミーとドライバーを同時に霧で包み、光弾の狙いを惑わせたのはファントムドーパント。ドライバーを引き起こし、感情という感情の見えない髑髏の怪人を睨み付ける。

 

「スカルか……やはり面倒な相手だ!」

 

ドライバーとファントムが向き合っているのは、ガイアダミーが擬態した仮面ライダースカル。かつてノーマルのダミーも姿をコピーした風都の都市伝説にして、ダブルとアクセルよりも前に活動していた仮面ライダー。

 

「私が行きましょう!」

「逸るな!……仕方がないか……!」

 

擬態スカルの背後から襲い掛かったのはバイオレンスドーパント。自慢の鉄球を振りかぶるが、半身をズラす事で容易く回避する擬態スカル。後隙を狙わせる訳にはいかないとファントムが再び霧を作り出し、それに乗じてドライバーも動く。

 

 

◆◇◆

 

 

「即興にしては良い連携だねぇ」

「チッ……」

「おや、どうしたのかねウォーホース?」

「あのバイオレンス野郎、いつか潰す……!」

 

モニター越しにバイオレンスドーパント───結城(ゆうき)康夫(やすお)へ厳しい視線を向けている真。その理由が分からず、純粋な質問として問い掛けるドゥ。答えは光の方から返ってきた。

 

「彼は私に害意があってねぇ。性癖と言ってもいい」

「性癖か。直ぐには変わらない変えられない、人間の業の一つだな」

「人が絶望する様を見るのが好きらしいんだよ。私が絶望するなんて無い、というか私自身、私がどうやったら絶望するのか逆に知りたいくらいだ」

「なるほど、キミはそういうスタンスだが、護衛のウォーホースとしては気に入らないと」

「……るせぇ」

「おっと、矛先がこちらに向く前に引き下がろう」

 

擬態スカル相手に大立ち回りしているバイオレンス。他のドーパントの援護込みとはいえ、今回の検証会に参加したドーパントの中でも特に良く動く。今もハイドープ化によって獲得した能力、重力フィールドで擬態スカルの動きを止めている。

 

「人間の業とは恐ろしくも美しいものだな」

「人間、ね……ふふっ」

「ん?」

 

ドゥがバイオレンスを人間と称した所で含み笑いを溢す光。

 

「まぁ知らなくてもしょうがないさ、アレは元々ガイアメモリとは関係の無い所から来たモノだからね」

「……ほう?」

「絶望させ、絶望を食らう怪物。勘が良ければピンとくる特徴さ。ついでにヒントを出すと、援護しているドーパントの中に同じ名前のメモリがあるねぇ。何かしらのバグが起きたのか、本人は()()だった事を忘れているようだけれど……」

 

『何故、倒れない……!』

 

モニターには、何度打ちのめしても幽鬼の如くゆらりと立ち上がり、バイオレンスとの戦闘を続行する擬態スカルが映っている。新たに二体のドーパントが加わり、各々の能力を行使してスカルに迫る。が、撃破には至らないどころか、スカルマグナムによるカウンターを受け逆にダメージを受けてしまう。

 

『水分を奪えない……!』

『金メッキになるだけとは、本当に仮面ライダーとは厄介な者が多いな!』

『迂闊に近付くんじゃない!スカルメモリには生と死の境界を曖昧にする能力がある!』

 

「あの二体は……片方は砂、デザートか。もう一方はマネーの強化体か?」

「惜しい!ゴールドだよ」

 

全身が凝固した砂で出来ており、ひび割れ模様が特徴的な人型の怪人デザートドーパント。自在に砂を操り、敵対者の水分を抜く事で干からびさせる凶悪な技を持つ。

 

そしてドゥがマネーと間違えた豪奢な金鎧が目立つゴールドドーパント。こちらも触れた物を金に変え、生物としての息の根を止める必殺の力があるのだが、両方とも不発に終わっていた。

 

砂塚(すなづか)宏大(こうだい)とレナード・グリフィン。適合率とタイミングは良かったが、相手が悪いねこれは」

 

ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべ、さぁここからどうする?と五体のドーパント達の次手に注目する光。ドライバーが警告を飛ばした通り、スカルメモリは使用者を一時的に死なせる作用があるのだ。本来の変身者の言葉を借りれば、骸骨はそれ以上殺せない。生物としては死んでいるのだから、水分を吸収できず、黄金に変えても金色に光るだけ。更に言えば、無機物でも有機物でもない言葉通りの曖昧な存在である為か、ドライバーが能力を発揮するのに必要なネジ弾も、着弾の衝撃しか意味を成さない飛び道具にしかなっていない。

 

ゴールドに掴まれた腕を振るうのと同時に、パキリと音を立てて剥がれ落ちていく黄金。肉体的なリミッターも外れる事から、バイオレンスの殴打にも強いという、この五体に対して強く出れるスカル。光の言う「相手が悪い」とはこれの事のようだ。

 

「幸いデザートはダミースカルの攻撃に対してはほぼ無敵だし、回避もファントムが居れば何とかなる。後はマキシマムを使わせずに、如何に追い込めるか……さぁどうする?この窮地、どう脱する?」

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

『いい加減しつっけェんだよ野良犬が!』

 

「キミの処刑人も大活躍中のようだ」

「グゥも期待以上に働いてくれているねぇ。後で私特性のポフレをあげよう」

 

一方こちらはガイアダミーではなくガイアルガンことグゥ、ダイアウルフドーパントと戦闘中の一団。最初に襲い掛かってからターゲットを変えていないらしく、クロコダイルドーパントを執拗に攻撃している。グゥの活躍を満足げに眺めている光が、モンスター用のお菓子に言及すると真が何かを思い出したように告げる。

 

「あの妙に凝った菓子みたいなやつか?」

「おや、よく知っているね」

「トリニティが腹空かしてたからやっちまったぞ?」

「……報連相」

「お前にだけは言われたくねぇ」

 

組織人の基本だぞぉ?と珍しく真にジトッとした目を向ける光。事後報告すらまともにしない光にだけは言われたくない、と真も悪びれた様子は無い。

 

「まぁ新しく作れば良いさ。残りは二人か」

 

気を取り直してドーパントの紹介に戻る光。次に映ったのは両肩から煙突を生やし、胴体は溶鉱炉のようになったメカニカルな姿が特徴のファクトリードーパント。馬力と防御が高く、電撃を放ったり溶鉱炉から炎を噴出させるなど攻撃手数にも優れた強力なドーパントなのだが、クロコダイルと殴り合いを演じながら器用に動き回るグゥへの有効打が未だ無い。

 

和田(わだ) 機堂(きどう)、ハンドレッドの工場に渡すには惜しいんだよねぇ。私の専属になってくれれば色々と楽しい事が出来るのだが」

「なーにが惜しいだ、報告すらしてねぇクセに」

「しなきゃいけない道理も無いしねぇ」

 

それでよく組織人がどうのとか言えたよな、と呆れ気味の真だが、これが九十九 光の平常運転なのでそれ以上は何も言わない。この上司にしてこの部下なのである。

 

「夫婦漫才中に申し訳ないが」

「誰がお似合いの夫婦だ」

「そこまでは言っていない。ファクトリーと付かず離れずのドーパントは?直接戦闘型には見えないのだが」

 

『これは銃……!敵を撃ち抜く拳銃!』

 

「あぁ、プロップだよ。適合者の名前は……たしか京宝(きょうほう)(ゆう)だったような気がするんだが、合っていたかな?」

「覚えてやれよ……自分で拉致ってこいっつったなら分かんだろ……アイツ一番キレたらヤバいヤツだぞ」

「冗談だよ」

 

シャレにならねぇ……と真が溜め息を吐き出す隣でケタケタと笑う光。輝かしい芸能界に憧れたものの、鳴かず飛ばずのまま歳を重ねていき、最後には事務所から契約打ち切りという憂き目にも程がある過去を持つ京宝。絶望と憎悪から憧れが反転し、ガイアメモリに手を出すのは当然と言えるだろう。

 

「それで手にしたのがプロップメモリ、と」

「そう。ドーパントになっても、適合したのが小道具の記憶とは……いやはや何とも皮肉だねぇ」

「それを笑ってスカウトするのがお前だけどな」

「でもまぁドーパントとしては強い、というか相手にすると面倒な手合いだよ。ご覧の通り武器になる物はそこら中にあるし、偶然とはいえ無機物をアップグレードできるファクトリーと組めたのも大きい」

 

プロップの能力は、「そう振る舞う」事で実際にそんな機能が無くとも振る舞った能力を付与する概念干渉。幼稚な指鉄砲でもエネルギー弾が発射されたり、圏外でも電話が通じたりと、正に「使いよう」の能力。更に今回は胴体の溶鉱炉に物質を投入し、より上質な物にアップグレードするという能力を持つファクトリーも同じ戦場に立っている。

 

「概念と物質を司る二体のドーパント。私としては、グゥがどこまで粘れるかも見所だね」

「崖に子供突き落とすライオンかお前は」

 

『クロコダイル!受け取れ!』

『待たせやがって……!』

 

早速それぞれの能力を活かしてメリケンサックを生成したファクトリー&プロップ。機堂は事前に光からハンドレッド関係の説明を受けていたらしく、その中で真の義足についても知識を得ていたようだ。真の義足は、ガイアダミーと同じく光の作った特別製。ガイアメタルという並大抵の事では破損しない複合鋼であり、ウォーホースの戦闘力向上にも一役買っている。

 

光にとって嬉しい誤算だったのは、機堂が推測混じりながらもガイアメタルの生成方法に辿り着いていた事。つまりクロコダイルに渡されたメリケンサックは、ドーパントが扱うのに最も適した武器であり、敵を殺す事に適した武器でもあるという事だ。

 

「ワンコが押され始めたな」

「ふぅむ……パンチグローブとやらも買っておくべきだったかな?」

 

夢破れたとはいえボクシング界では期待のホープだった鬼塚。それなり以上に磨いた技は未だ錆び付き知らずであり、良くも悪くも獣の延長線でしかないグゥは人間の技術に追い付けていない。その上、生成を終えて援護を再開したファクトリーとプロップも居るのだ。このままでは厳しい。

 

そう、このままでは。

 

「ではグゥにも少し本気を出してもらおうか。聞こえているかな?グゥ」

 

───ッ!ワンッ!

 

「良い子だ。グゥ、アクセルロック」

 

───アォオォォォンッ!!!

 

『ぐっ、あっ!?なっ、何だ!急に動きが!』

 

メモリと首輪代わりのガイアドライバーを通じて回線が繋がっているのか、光の呼び掛けに反応したグゥ。一瞬にして超加速を見せ、渾身の頭突きをクロコダイルに見舞う。

 

グゥには人間の「技」は無い。

だが、モンスターの「わざ」は有るのだ。

 

「さぁどうする?」

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「んー……?」

「どうしたんだい真。何か気になる事でも?」

「集めるドーパントの数、このマスカレ女含めて19で合ってたかなって」

「合っているよ。全く、数え間違えなんて言語道断だよ」

「うっせ」

 

(目敏いね。流石は私の助手だ)

 

本来は20。

それが光が集めようとしたドーパントの数。真がドゥを除く18体を招待しに出掛けている間、光も急遽予定を変更して自ら一人に会いに行っていたのである。

 

(アレの存在を知る人間は、少なければ少ないほど良いからねぇ……)

 

今回の検証会には不参加のとあるメモリと適合者。それは古今東西、どんな時代でもどんな世相でも常に人間に付き纏う切っても切れない悪しき縁。どれほど強大な組織であろうが、むしろ強く大きな組織であればこそ、その影で育ち膨らむパンドラの箱。

 

【TREASON】

 

(トリーズン、裏切りの記憶……悪魔と人間にはぴったりのメモリだねぇ……)

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「トリニティィィィィッ!」

「おっきい声出さなくても聞こえてるよ」

 

紛外境で開催された大検証会における最後の対戦カード。

群青を基調としたボディに銀の鎧を纏わせ、純白の翼を腰辺りから生やした神々しいドーパント、ヴァルキリーメモリで変身したトリニティ。

 

対するは大型肉食恐竜タルボサウルスの記憶で変異した異形の怪人、トリニティを逆恨みしている麗牙。

 

ガイアメモリが存在しない世界から来た二人が、ガイアメモリを用いて激突していた。

 

「そうやって……!のらりくらり何も考えてないように見せかけて!本当は見下した目で他人を眺めてる小娘が!本当に苛つくのよ……!全部分かってますって見透かしたその眼がァッ!」

「一応考えてるんだけどなぁ……あと、見下してもないよ?」

 

「どうでもいいだけで」

 

「それを見下してるって言うのよッ!!!」

 

突進からの噛み付き、シンプルながらも殺傷力が高いタルボサウルスの攻撃を軽くいなし、ヴァルキリーソードをすれ違い様に叩き込む。

 

「ぐうっ!?まっ、だァ!」

「意外と素早いな……」

 

恐竜の頭に手足が生えたような異形のタルボサウルスドーパント。その見た目とは裏腹に俊敏性が高いらしく、地面だけでなく近くの建造物を足場にした立体的な動きも見せ始めた。

 

「けど、飛べないよね」

「っ!?」

 

ヴァルキリーの翼は飾りに非ず。飛翔能力を持つそれを羽ばたかせ、軽々とタルボサウルスに追い付いてみせた。ふざけるな、とヴァルキリーに大顎を開いて飛び掛かるが、結果はお察しの通り。自由に空中で動けるヴァルキリーと、所詮は陸棲生物であるタルボサウルスが三次元的な動きで争えばヴァルキリーに軍配が上がる。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「押され気味だな」

「オマケに一人なのがなぁ。他の奴らみたいに即席組めば良いのに」

「彼女たっての希望でね。トリニティは自分一人で潰すから、と」

「いや無理だろ……あーあー、そこで切り札使うのは早いって……」

 

モニタリング中の光たち。どこからどう見ても苦戦しているタルボサウルスと、明確に有利を取れているヴァルキリー。モニターの向こうでは、憤怒と焦燥からか麗牙がタルボサウルスの切り札である、周囲の物質を取り込んでの巨大化を行っていた。真はその様子を見て呆れた声を出している。

 

「オレもそろそろ鮫野郎とケリ着けるかね」

 

【RAPTOR】

 

「あん?新しいメモリか?オレのレイズ用……ってワケでもねぇよな」

「真、有名な恐竜パニック映画を観た事は?」

「何だよ急に……観たけど」

「恐竜を現代に目覚めさせる人間のエゴ、最終的にはそこに行き着くねぇ?」

 

【CUTTLEFISH】

 

「まぁ、そうだな。で、何で別のメモリも起動してんだよお前は」

「その中に、人間のエゴここに極まる!個体が居たのを覚えているかなぁ?」

 

【FLOG】

 

「あー……あのキメラ恐竜か?それが?」

 

【VIPER】

 

「麗牙・R・レクスドライグ。彼女が持つメモリも恐竜だねぇ、そういえば」

「話コロコロ変えんなよ……で?結局お前は何が言いたいんだよ」

「これも行けるかな」

 

【EYES】

 

「あとは……そうだな、これも入れておこう。他には……ボルグ……そうだ、サソリなんかも良いかもしれないねぇ!よしよしノッてきたぞぉ!」

 

【BEAST】

【SCORPION】

 

「だから、何して───」

「私が、九十九 光が。ちょっと珍しいだけの恐竜メモリ適合者を、わざわざスカウトしに行くと思うかい?」

「……は?」

 

爛々と輝く狂気を瞳に宿し、子供のようにワクワクしながらメモリを起動し終えた光。その姿を見た真は、久しぶりに光への畏怖を覚えていた。人の身でありながら人の道理を外れ、人である事を辞めたがるマッドサイエンティスト。他人などモルモットにしか考えないロクでなし人でなしの生きる厄ネタ。

 

唖然とする真の背後に開いたオーロラカーテン。そこに起動したメモリを全て投げ入れ、何処かへと飛ばした光。数秒も経たずその行き先が明かされた。

 

『ん……?』

『なに、がっ、あぁっ!?』

 

ビッグ・タルボサウルスの背へ突き刺さるように出現したメモリ。それら全てがタルボサウルスの内側に吸い込まれていき、異形と化しているタルボサウルスを更なる異形へと変異させていく。

 

「さぁ……!実験を始めようか」

 




悪意が形を成した女が嗤う。

【ガイアダミードーパント】
光が作り出した強化改修型ダミー。
擬態・偽装・虚言などの似た性質を持つガイアメモリを片っ端からダミーの適合者に挿入し、仕上げに九十九式ガイアプログレッサーを埋め込む事で完成する。
擬態能力を使わずとも素の戦闘力が高く、相手の思考を読み取る事で状況に適した姿に擬態可能。
製造方法は、ダミー適合者の頭蓋を麻酔無しで切り開く事で「極限の恐怖と苦痛」を与え、それによって分泌される脳内物質を摘出してガイアプログレッサーを作成。外科手術によって「心が破損」したダミー適合者に、上述のメモリ群とプログレッサーを埋め込んで仕上げるというもの。
プログレッサーによって擬似的に地球の本棚と接続されており、相手の思考を読み取らずとも、ありとあらゆるメモリの力を引き出して再現できる。なおダミー適合者たちは園咲家の人間ではなく、プログレッサーもハンドメイド品である為、フィリップのような検索は不可能。あくまでガイアメモリの能力を疑似発現させる為のアクセスキーのようなもの。

【グゥ】
「モンスターがそこらを闊歩する世界」から着いてきた現地の怪物。
GAIA WOLFから略してGW、そこから更に縮めてグゥと呼ばれる。元の世界での命名ではガイアルガンという種族になるらしい。
ダイアウルフメモリに適合した獣で、ミュージアムの飼い猫 兼 処刑人だったミックと同じく人間以外がドーパントと化した珍しい例。
通常時は大型犬のような四足歩行獣、ダイアウルフドーパント時は人狼のような形態で二足歩行となる。その素早さと腕力・脚力を活かしたスピーディーなインファイトを得意としている。それだけでも人間には脅威となるが、光からの指示を受けると強力な「いわタイプわざ」も使い始める為、より手に負えない怪物と化す。

【検証ドーパント達】
SLIME/師走由良
PHANTOM/霧崎 刃
EINHERJAR/富士川 勇
DRIVER/福大天路
AQUARIUM/鹿目桜花
VIOLENCE/結城康夫
ANGEL/モハメド・ザイーブ
CROCODILE/鬼塚一颯
FACTRY/和田機堂
PRETTY/美城優輝
IGNIS/灰咲 灯
PROP/京宝・游
ZI-O/加賀見 野景
DESERT/砂塚宏大
TARBOSAURUS/麗牙・R・レクスドライグ
GOLD/レナード・グリフィン
SIGN/景井真鯉
SHARK/天津牙 涼

MASQUERADE/ジョンorジェーン・ドゥ

TREASON/???
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。