九十九 光の気ままな実験録   作:X2愛好家

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それは運命の悪戯
それは必然の邂逅


アナザー編
侵略者vs侵略者


「ヒーマーだーねぇー」

 

どういう原理なのか、電源もコードも無く虚空に浮かぶ照明機器とホログラムディスプレイだけが周囲を照らしている漆黒の空間にて。本人が発した通り、暇を持て余している九十九 光の姿があった。

 

「こうもやる事が無いと、適当な世界か次元を滅ぼしたくなるねぇー」

「狂人のヒマ潰しで滅亡する事になる連中には心の底から同情するよ……」

 

研究室にも関わらず、本人の趣味と好みで置かれているゲーミングチェア。それに深く腰掛けながら頭のおかしな発言をサラッと溢す光。それに対して溜め息を吐きつつ反応したのは助手兼護衛の結咲 真。呆れた、というリアクションはしながらも、その行動自体は止めないのが真という人間。彼女にとっては、光以外の生命体がどうなろうと関係無くどうでも良い事なのだ。

 

それはそれとしてツッコミは入れるし、溜め息も吐くのだが。光が思い付きにせよ正式にハンドレッドとして動くにせよ、自分が護衛として付き合う事は確定なのだから。

 

「ここまで私をヒマにした上層部が悪い。さぁ!という訳で行くぞ!」

「という訳で、じゃねぇんだ。自分から前線に出たがる技術者なんてお前くらいだよ全く……」

 

勢いよくゲーミングチェアから立ち上がり、これまた虚空に配置されているハンガーポールから白衣をもぎ取って羽織る。真もまた二度目の溜め息を吐き出しながら光の後に続き、開いたオーロラカーテンを潜る。

 

「で?今回は何処に行くって?」

「さぁ?」

「……ハァ!?決めてねぇの!?じゃあこのオーロラカーテンは何処に繋がってんだよ!」

「さぁ?」

「ふっ……ざけんなァ!!!」

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「謎のエネルギー干渉?」

「はい。ちょうどターゲットの潜伏ポイントに重なるように……」

「護衛と合流されると厄介です」

「分かっている!先遣隊の準備はまだ終わらんのか!」

 

『なら私が先に行ってこよう。それなりの因縁もある事だしねぇ』

 

「なっ、勝手な行動は許されないわよ!」

 

『許されるんだよ、私はね』

 

「ダンツァーホース、地球へ向けて前進しています!止めますか?」

「制止して止まる女ではあるまい。自ら尖兵を買って出たのだ、好きにさせておけ。全く……父上も何故あのような狂人を重用するのだ……」

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「到着!さてさて、ここはどのような世界なのかな?」

「っんとにテメェは……見た感じ地球じゃね?空気も吸えるし、建物も現代風っぽいし」

「なぁんだ……結局代わり映えしない景色か……」

 

テンションが急転直下の光と、即座に周囲を警戒しながら光の言葉に反応する真。二人が出てきたのは木々が生い茂る木立の中。二人の周りに人影は無く、遠くにビル群が見える事からここは公園か何かの一画だろうか。

 

「もっとファンタジーだったりディストピアだったりしてほしかったねぇ」

「テキトーに飛んだくせに文句が多いんだよ。別に良いじゃねぇか、知らないライダーが居るかもしれねぇし」

「それはそうだけれどねぇ……そうそう私の興味を引くビッグイベントなんて起きる訳が───」

 

ぼんやりビル群を眺めながら愚痴を溢していた光。眠いのかとすら言われそうな程に細めていた瞼が急に開き、直前の自分の発言を投げ捨てる。

 

「起きたねぇ……!」

「なんだ、ありゃ……宇宙船?」

「宇宙からキタねぇ!何が始まるんだい!?大惨事大戦かい!?こうしてはいられない!特等席で見物しなければ!」

「あっ、オイちょっと待て!」

 

興味を引くどころか知的欲求を刺激してやまない推定宇宙船の登場に大興奮の光。危ない眼光を宿し、宇宙船の元へと駆け出していく。真もまた、子供のようにはしゃぎ出した主を放っておく訳にもいかず走り出した。

 

 

◆◇◆

 

 

「アレは……!」

 

様々な建造物が並ぶ市街地にて。突如として空の向こうから降りてきた艦船に人々が驚愕し、見上げ、指差し、携帯端末にその全容を収めようとする中。フードで顔を隠した厚着の人物は、民衆とは違う点に驚愕と畏怖を露にしていた。

 

「あの紋章はザンギャックの……!何故、今になって地球へ!?」

 

まさか私を追って……と、フードの少女が最悪の推測を立てた瞬間、宇宙船から無数の光線が放たれた。それらはビルを容易く破壊し、運悪く直撃した生物を一瞬で消し炭に変える死の閃光だった。アレは退屈な日常を彩ってくれる見せ物などではない、明確な破滅と終焉を運ぶ死神だ。そう理解した民衆は一瞬にして恐慌状態に陥り、少しでも遠ざかろうと我先に逃げ出していく。

 

「警告も無しに攻撃だなんて……!逃げて!出来るだけ遠くへ!」

 

逃げ遅れた者に手を差し伸べ、その背を押して宇宙船から遠ざける。一人ではとても手が足りないと少女が歯噛みしたのと同時に宇宙船からの攻撃が止み、代わりに無数の人影が落ちてきた。

 

「っ、ゴーミン!」

 

棍棒のような武器を手に持った、銀色のアーマーが特徴的な怪人。ゴーミンと呼ばれたそれらは、限りなど無いかのように次々と宇宙船から降り立ち、少女を包囲し始めた。人波に揉まれたのか、怪我をしている子供を背後に庇いながらゴーミン達を睨み付ける少女。

 

「くっ……あなた達の目的は私でしょう!」

 

「その通りだよ、アウラ姫?」

 

青い装甲に身を包み、巨大な腕を持つスゴーミンという上位個体が包囲網に加わり始め、最後に波打つエネルギーの輪で守られた何かがフードの少女───アウラの正面に降りてきた。

 

「初めまして、私はブライディ・フィフティエス。宇宙帝国ザンギャックの特務技官さ」

「特務、技官……?」

「単刀直入に言おうかアウラ姫。ザンギャックへ降り、実験動物になってもらいたい」

「っ!」

 

一見すると地球人と変わらない姿のブライディ。仰々しく白衣を翻してお辞儀をしてみせ、顔だけ上げてサラッとえげつない事を口にする。それを聞いたアウラはキッとブライディを睨み付け、不安げに自身にしがみついている少年を抱きしめ微笑む。

 

「ならば地球への侵攻を止め、今すぐ引き上げると誓いなさい」

「構わないさ、私の目的はキミだからねぇ」

「…………」

「私は、ね?」

 

お辞儀から上体を起こし、意地の悪い笑みをアウラへと向けるブライディ。勿体ぶった言い回しから、アウラも次に出てくる言葉の想像がついたのだろう。より一層ブライディへ向ける視線が鋭く厳しくなった。

 

「ザンギャックとしての目的は地球の侵略でねぇ?私はそこに便乗して、エリュシオン星人の生き残りを探しに来ただけなんだよ。故に、私が引き上げても本隊は攻撃を続けるだろうねぇ」

「……っ!」

「そう睨まないでくれたまえ。私はキミに生き延びるチャンスを与えているのだよ?手に入らなければ殺す、というのが条件なのでね。地球人類と共に死ぬか、私の玩具になるか。どちらが良いかなど、キミが必死に庇っているその子供でも分かるだろう?」

 

今にも泣き出してしまいそうな少年だけでも、どうにか助けられないか。ゴーミン達の包囲網の何処かに綻びは無いか、マッドサイエンティストの注意を逸らせる物は無いか。アウラが考えを巡らせ、この絶望的な状況の突破口を見出だそうとしたその時。

 

───ゴーッ!?

 

「……ん?」

「えっ……?」

 

銃声に近い音が連続して響き、アウラの背後に陣取っていたゴーミン数体が断末魔らしい鳴き声を上げながら倒れる。

 

「面白そうな事をしているじゃあないか」

 

救いの手が差し伸べられたと、この地球で探し続けた英雄が現れたと。かつて父を救った五人の勇者の意志を継ぐ、新たな戦士達が来てくれたのだと。アウラはそう誤認した。

 

振り返ってその顔を認識した時、アウラは絶望と困惑を同時に味わった。

 

そこに立っていたのは勇者ではなく、何故かブライディと同じ顔をした悪魔だったのだから。

 

「私も仲間に入れてくれないかい?」

 

 

◆◇◆

 

 

「なっ、えっ……?」

 

「ほう?」

 

「おい、やっぱ奥のアイツ……」

「フフッ……!ランダムに飛び込んだ先で自分の平行同位体と出会うなんてねぇ。どうだい真?私の直感はバカにならないだろう?」

 

宇宙船キターッ!でテンションバクアゲぶち上がるます状態のまま戦場へ乱入した光。ある程度は理性が残っていたのか、若干の情報収集タイムを設けてブライディとアウラの会話を聞いていたようだ。突如として、目の前の敵と同じ顔をした乱入者が登場した事に目を白黒させるアウラ。

 

一方のブライディはというと───

 

「平行同位体……なるほどなるほど?確かにキミの言う通り面白い事になったようだ!」

 

こちらもテンションバクアゲぶち上がるます状態になっていた。

 

「それで?別次元の私はここからどうするのかな?」

「私なら理解しているはずだよ?」

 

「「彼女は私が貰う!」」

 

「なっ!?」

「ハァ……だと思った……」

 

ブライディからすれば貴重なエリュシオン星人。

光からしても貴重な宇宙人。

どちらも光でありブライディ、手の届く所にSSRのモルモットが居るのなら躊躇なく手を伸ばして奪い取る。それが九十九 光であり、ブライディ・フィフティエスであり、基幹存在である一 光という狂気の女サイエンティストから派生したモノの存在意義にして存在証明。そして何よりも二人は確信していた。

 

目の前の「同じモノ」は自分の知らない力を持っている、と。アウラという貴重なモルモットを賭けて戦いを挑めば必ず乗ってくると。だって自分がそうだから。脈絡無くトロフィーにされたアウラは戸惑い、真はデスヨネーと溜め息を隠す事なく盛大に吐き出していた。

 

「真!彼女の方は頼むよ?どうせ逃げ出すだろうから、適当に手足の二三本折って動けなくしておいてくれたまえ」

「へいへい……」

 

「おや、副官を使うのか。ならば此方も……フレムル!手伝ってくれないか!」

『はーい!』

 

ブライディが地上に降りる為に用いたエネルギーの輪ではなく、ゴーミン達のような降下でもない、墜落という言葉がピッタリの勢いで何かがブライディの傍らに降りてきた。薄いピンクと黒で塗装され、無機質なツインアイで周囲を睥睨する人型のマシン。メタリックかつサイバーなイメージを抱かせるボディにはやや不似合いな柔らかい印象の合成音で声を作り、ガオーと両手を上げて威嚇(?)のポーズを取った「それ」。ブライディがフレムルと呼んだアンドロイドは、アウラを視界に捉えつつ真に相対するポジションを取る。

 

「相変わらず豪快だねぇフレムル」

『えへへ~、マスターに誉められちゃった』

「彼女はフレムル。私の護衛兼副官兼マスコットだよ」

『はじめまして!フレムルです!よろしくおねがいします!』

「ん~、ちゃんと挨拶ができて偉いねぇ」

『また誉められちゃったぁ、えへ、エヘヘヘ』

 

「ポンコツマシンも良いとこだろアレ」

「キミとはまた別ベクトルで馬鹿だねぇ」

「そうそう、オレとは違うタイプのバカ……もういっぺん言ってみろコラァ!」

 

「っ!」

 

両陣営が漫才を繰り広げている最中、付き合いきれないのか意を決したのかアウラが少年を抱えて走り出した。光と真に気を取られていたゴーミンを薙ぎ倒し、光が空けた包囲網の穴とは別のルートを作ってその場を離脱したのだ。

 

「ったく、よぉッ!」

【WAR HORSE】

 

『バトルモード・チェーンジ!』

 

騒がしくもアウラへのフォーカスは緩めていなかった真とフレムル。真はガイアドライバーrexにウォーホースメモリを装填しドーパントへ、フレムルは独特なセンスが光るポーズを取り戦闘形態へとその身を変えた。

 

「こっちも数出すぞ!」

「自由に使いたまえ」

 

『行ってきまーす!』

「行ってらっしゃい」

 

光の許可に対して若干食い気味にオーロラカーテンを開き、ゴーミンやスゴーミンの数に対抗すべくマスカレイドドーパントやカッシーンの軍勢を呼び出した真。負けじとバトルモードフレムルも手勢を引き連れアウラの捕獲へと向かい、その場を後にした。

 

「さて、と」

「では此方も」

 

「「始めようか!!!」」

 

【KAMAEN RIDE】

 

「変身!」

 

【RE END】

 

同時に各々の変身デバイスを取り出し装着する光とブライディ。光はカメンライドカードをドライバーに装填し、漆黒の破壊者リエンドの姿に。

 

そしてブライディは───

 

「ホーカイチェンジ!」

 

【ホーカイジャー!】

 

スマホ型デバイス「ナリスマート」の下部に、フィギュアと鍵が一体になったようなアイテム「レンジャーキー」を挿し込む事で変身シーケンスを完了。全体的に赤黒く、所々を金と白でまとめ、左腕に赤黄緑青桃の五色で構成された虹のような意匠を入れた鎧を纏った姿。

 

これこそ略奪の化身、災厄の権化。

豪快全開痛快に奪い去る闇の戦士。

 

ホーカイジャーである。

 

(ライダーではない?)

(戦隊ではない?)

 

((何にせよ……))

 

「「面白そうだねぇッ!!!」」

 

互いに武器は使わず、挨拶代わりの格闘戦。リエンドが拳を繰り出せばホーカイジャーがそれを受け止め、ホーカイジャーが蹴りを繰り出せばリエンドがそれをいなす。次の一手で何をするのか、どう動くのか。それを互いに理解しあっているかのような、まるで流れを決められた舞踏のよう。致命傷に程遠い接近戦が繰り広げられていた。

 

「考える事は同じか」

「平行同位体だからねぇ」

 

「なら、こういうのはどうかな!ホーカイチェンジ!」

 

【ネジレンジャー!】

 

リエンドの拳がホーカイジャーの胸を捉え、同時にホーカイジャーの拳がリエンドの胸を捉えた。その衝撃で距離が開く両者。ブライディがホーカイジャーの物とは異なるキーを取り出し、ナリスマートに挿し込んだ事で膠着した戦況が動く。

 

ブライディがホーカイチェンジしたのは、悪魔か蝙蝠のように見える赤と黒のアーマーが特徴的なネジレッド。かつて電磁戦隊メガレンジャーを追い詰めた悪の戦隊、邪電戦隊ネジレンジャーの一体だ。鍔と切先が膨らんだ形状の両刃直剣ネジセイバーを振りかざし、リライドライフルを引き抜いたリエンドに迫る。

 

「まるでゲームの敵キャラのような姿じゃないか!」

「当たらずとも遠からずだねぇ!」

「なら此方もゲームでお相手しよう!」

 

【KAMAEN RIDE】

【GENM】

 

ライフルの銃剣でネジセイバーを弾き、体勢を崩させた隙を突いてドライバーを展開。装填したのは黒と紫が印象的なゲームのライダー、ゲンムアクションゲーマーレベル2のカード。

 

「フッ!」

「アッハハハ!やってくれるねぇ!」

 

チェーンソーモードのガシャコンバグヴァイザーとネジセイバーが激突し、盛大に火花を散らしながら鍔迫り合いを演じるリエンドゲンムとホーカイネジレッド。先ほどまでの有効打が無い接近戦が再び繰り広げるられると思いきや、ボディのスペックや装備が変化した事で両者の動きにも差異が出始めた。ネジレッドが掌から電撃を放ってゲンムを狙うが、飛び道具の使用を読んでいた光は見事にそれを回避。お返しとばかりに組み換えたバグヴァイザーのビームガンモードから光線を撃ち返し、ネジレッドに三発の直撃弾を見舞ってみせる。

 

「くっ……!」

「次はこっちが先に変えようか?」

 

【KAMAEN RIDE】

【SORCERER】

 

ゲンムから別のライダーへと変身した光。暴風を切り裂くように姿を現したのは金色の魔法使い、仮面ライダーソーサラー。

 

「いかにも魔法を使いそうな姿だねぇ……ならこれが丁度良いか、ホーカイチェンジ!」

 

【マジレンジャー!】

 

リエンドソーサラーに対抗してキーを変えたブライディ。ネジレッドの姿から変身したのは、紫色の鎧を纏った魔導剣士。地底冥府インフェルシアに加担していた頃のウルザードだ。

 

【ATTACK RIDE】

【BIND】

 

アタックライドのカードで代用発動したのは、本来のソーサラーが使っていなかったバインドの魔法。四つの魔方陣がホーカイウルザードの周囲に展開され、そこから金色の鎖が伸び、ウルザードの自由を奪わんと迫る。

 

「甘く見ないでほしいねぇ!ウルザードは魔導剣士なのだよ!」

 

だが、そう簡単に捕まる道理は無いと言わんばかりに、本家さながらの剣技を披露しバインドの鎖を破壊してみせるウルザード。今度はこちらがお返しだ、と左手に持った盾───ジャガンシールドをリエンドソーサラーへと向ける。

 

「ドーザ・ウル・ザザード!」

 

ジャガンシールドから放たれたのは狼を模した形のオーラ。本来のウルザードが得意としていた飛び道具だ。対するソーサラーも手を打っていない訳ではなく、別のアタックライドカードをドライバーに装填していた。

 

【ATTACK RIDE】

【REFLECT】

 

敵の攻撃を反射して撃ち返すリフレクトの魔法。ソーサラー本体ではなく、これに命中してしまった狼のオーラは僅かにリフレクトを削った所で反転、攻撃力を保ったままウルザードへと跳ね返っていく。

 

「これもオマケしようじゃあないか!」

 

【ATTACK RIDE】

【EXPLOSION】

 

光が立て続けに代用発動したのはエクスプロージョンの魔法。魔力による爆破も上乗せしたドーザ・ウル・ザザードがウルザードに襲い掛かる───直前、ブライディは別の魔法を発動する呪文を唱え終わっていたのだ。

 

「ドーザ・ウル・ウジュラ」

 

「なっ……っ!?」

 

相手の魔法力を奪うドーザ・ウル・ウジュラ。これによってエクスプロージョンの効力が消え、リフレクトも消失。更には魔力を持っているソーサラーにもデバフが掛かってしまった。リエンドソーサラーの体勢が揺らいだのを見逃さなかったホーカイウルザード。跳躍し、一瞬にしてソーサラーとの距離を詰めてみせる。

 

反射されたドーザ・ウル・ザザードをウルサーベルに取り込みながら。

 

「ウル・ウガロ!暗黒魔導斬り!」

 

「ぐっ、うっ!?」

 

ウルザードの必殺剣、暗黒魔導斬り。闇を増幅したウルサーベルで✕字に相手を切り裂く大技。一刀目はディースハルバードで防いだものの、立て続けに繰り出された二刀目は防ぎ切れずに直撃。さすがに踏ん張りが利かず吹き飛ばされるリエンドソーサラー。着地したホーカイウルザードは、まだまだ余裕とウルサーベルを回転させて構え直す動作を見せ付ける。

 

「ふっ、ふふっ……!中々やるじゃないか……!」

「そうだろうとも。本家でもこれを見切ったのは、かの地獄の番犬くらいのものだ。恥じる事は無いさ」

「ますます興味が湧いてきたよ……!次は正面からの斬り合いと洒落混もうか!」

「良い提案だ、乗ったよ!」

 

【KAMAEN RIDE】

【BUJIN GAIM】

 

「ホーカイチェンジ!」

 

【シンケンジャー!】

 

次なる演目は「和」。光がカメンライドしたのは野望の赤武者、武神鎧武。斬り合いに乗ってブライディがホーカイチェンジしたのは闇に堕ちし赤侍、外道シンケンレッド。睨み合いは一瞬、言葉は不要と駆け寄っていく両者。数秒と経たずにブラッド大橙丸とシンケンマルが斬り結ばれ、それを弾いて無双セイバーを突き出し、更にそれを躱してシンケンマル返しの太刀を打ち込み、と息もつかせぬ剣戟が繰り広げられる。

 

超人的な斬撃の応酬。その最中、光は外道シンケンレッドの姿に既視感を覚えていた。

 

(この姿……なるほど、「これ」の大元か!)

 

得心がいった、とシンケンマルを蹴り上げ隙を作るリエンド武神鎧武。無双セイバーのガンモードも使用して隙とダメージを大きくしつつ、ブラッド大橙丸を手放し新たにアタックライドのカードを引き抜く。

 

「斬り合いと言いながら蹴りと銃撃かい!?」

「卑怯とは言うまいね!」

「なら容赦無しだ!烈火大斬刀!」

「やはりか……!」

 

【ATTACK RIDE】

【REKKA DAIZANTOU】

 

全力を出す為か、シンケンマルを烈火大斬刀に変化させたホーカイ外道シンケンレッド。光が装填したアタックライドカードは、その烈火大斬刀を召喚するものだった。全く同じ赤い大剣が打ち交わされ、仮面の奥で驚愕に目を見開くブライディ。驚きと動揺を見せたのはほんの僅か。こちらもまた得心がいったと言葉を紡ぐ。

 

「烈火大斬刀のカード……!それに、最初に変身した姿にはどうも既視感があったんだ……!」

「私もそれを見て完全に思い出したよ。その赤い侍モドキに、顔に書かれた火の文字!」

 

「ディエンドライバーを奪った怪人と、ライダーの存在しない世界!」

「外道衆ではない勢力と、スーパー戦隊が存在しない世界!」

 

そう、光が利用しているリエンドの力は仮面ライダーディケイドをモデルとした物。そのディケイドはかつて、侍戦隊シンケンジャーの世界に迷い込んだ事があり、紆余曲折を経てシンケンレッドと共闘。ディエンドライバーを奪ってディエンドに変身し、存在してはならない仮面ライダーになってしまった外道衆のアヤカシ、チノマナコを撃破した過去がある。

 

破壊者としてのディケイドに憧憬を抱く光もまた、記憶の片隅にシンケンジャーの世界での出来事を仕舞い込んでいたらしい。あくまで仮面ライダーに拘る光からすればスーパー戦隊は専門外だったが、目の前に現れれば興味が湧くというもの。互いの烈火大斬刀に炎を宿し、渾身の一撃をぶつけ合う。

 

「フッ……!ハハッ!アッハハハ!!!さぁ!次はどれで遊ぼうか!」

「シンケンジャーでそのテンションなら、これを見せたらどうなってしまうのだろうねぇ!」

 

そう言いつつレンジャーキーを手にするブライディ。それもまたスーパー戦隊レッドの力を宿したキーのようだが、口振りからして今の状況にピッタリの逸品らしい。

 

ディケイドと関わりのあるスーパー戦隊は、シンケンジャーだけではないのだ。

 

「あぁ……!あぁあぁ勿論知っているさ!それと戦うなら此方も見せてあげよう!少し目付きが悪いが気にしないでくれたまえ!!!」

 

「変身ッ!!!」

【KAMAEN RIDE】

【DECADE】

 

「ホーカイチェンジッ!!!」

【ゴーカイジャー!】

 

危うい雰囲気を纏わせた二人が変身したのは、それぞれが憧れ、脳髄の奥までを焼かれた戦士の姿。

 

仮面ライダーディケイド激情態。

ゴーカイレッド。

 

狂気と狂喜に突き動かされるままに、切り札を開示し、鍵を開ける。

 

【FINAL ATTACK RIDE】

【DE-DE-DE-DECADE】

 

【ファイナルウェーブ!】

 

ホーカイゴーカイレッドに照準を合わせるように連続展開していくファイナルアタックライドの幻影。それを利用して逆にリエンドディケイドへ銃口を向けたゴーカイガン。

 

カードの幻影を突き抜けて強化された光弾ディメンションブラストと、強大なエネルギーを込められ放たれた弾丸ゴーカイブラスト。それらが激突し、周囲を眩く照らした瞬間、予め打ち合わせていたかのように飛び上がる両者。ブラストとは別の幻影カードが出現し、再びゴーカイレッドに狙いを定めたディケイドの飛び蹴り、ディメンションキックが迫る。それを迎え撃つのはゴーカイサーベルにレンジャーキーを装填し、強化した斬撃を放つゴーカイスラッシュ。

 

「ハァァァァァッ!!!」

「デェヤァァァッ!!!」

 

数時間にも錯覚する数秒の激突。結果は相討ちであり、互いのカメンライドとホーカイチェンジどころか、リエンドとホーカイジャーの変身すら解除されて落下してくる光とブライディ。

 

「うっ!?」

「ぐっ、あっ!?」

 

互いの受けたダメージがスーツを貫通したのか、二人の身体には真新しい生傷が複数ついている。そんな些事などどうでも良いとばかりに立ち上がり、不敵に笑う両者。

 

まだまだ遊び足りない。

 

そんな狂った思考が見て取れる凶悪な笑みだ。

もう一度カードとキーを装填しようとした瞬間───

 

『ブライディ!いったい何を遊んでいるの!』

 

「ん?」

「……チッ」

 

『先遣隊としての───あぁっ、ワルズ・ギル様!?』

『ブライディ・フィフティエス!!!父上……ザンギャック皇帝アクドス・ギル直属の技官とはいえ!これ以上の独断専行は許さんぞ!エリュシオン星人の巫女はどうなった!連行が難しいなら殺せと命令しただろう!』

 

「上司がお怒りのようだよ?」

「やれやれ……こちらフィフティエス。対象を発見するも逃亡された為、現在追跡中です殿下」

 

「ふふっ、組織人は大変だねぇ。っと……チッ」

 

上司こと地球侵略艦隊司令ワルズ・ギルから、ありがたーいお小言を受け止めているブライディ。それを見て笑っていた光だったが、自分にも通信回線が開いた事に気付き、通信を送ってきた存在を知ってブライディと同じように舌打ちした。

 

その相手というのが───

 

「何かな?私は今、少々忙しいのだがね」

『本来の目的を忘れて遊ぶのも大概にしろと言ったはずだが?レジェンドが持つ超兵器の奪取、そして仮面ライダーガッチャードの世界への進軍。お前にはその支援を任せたはずだ。成すべきを果たせ、九十九 光』

 

「そちらも怒られているじゃあないか?」

「まったく……やれやれだよ」

 

ハンドレッドの上層部、その内の一人からだったようだ。通信には乗らない小声で煽りあう同じ顔をした二人。ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべたかと思えば、口をへの字に曲げた反省してまーすフェイスになる。忙しなく表情を変える二人だったが、互いの上司が発した次の言葉に驚き目を丸くする事となる。

 

『本当に追跡中なのだろうな!ゴーミンの数が凄まじい速度で減っているのをキャッチしているぞ!』

『戦力の無駄遣いは感心しないな』

 

「「は?」」

 

「そこまでだ!ザンギャック!」

 

宇宙刑事の末席に名を連ねているとはいえ、女一人である上に現地人の子供というお荷物を抱えているアウラ。戦闘能力の高い副官を差し向け、マスカレイドにカッシーン、ゴーミンとスゴーミンも多数付けた。にも関わらずその手駒が減らされているという。どういう事だと眉をひそめていた時、ザンギャック───ブライディを呼ぶ声が上がる。

 

「チッ、さすがに5対1じゃ面倒だな……!」

「わたしも居るんだけどー!でもアイツらが強いのは確かにだね!ツヨツヨだ!」

 

その声と同時に後退してきたのはウォーホースドーパントとバトルモードのフレムル。どちらも若干のダメージを負っているらしいが、その語気は強く闘志の衰えは感じない。本気で戦っていた訳ではないのだろう。ウォーホースドーパント───真の発言から、アンノウンの数は5体と光が判断したその瞬間。

 

それらが現れた。

 

「アレは……!」

 

「平和の美酒を地球に捧ぐ!愛と力のマリアージュ!」

「護善戦隊!アペリティファイブッ!!!」

 

原理不明、謎の爆発をバックに名乗りを上げた五人の戦士たち。アペリティファイブと名乗ったこの五人が、それぞれの手駒を倒し、真とフレムルと一戦交えたアンノウンなのだろう。そしてその背後の物陰から五人とブライディを見つめるアウラ。

 

「ふぅむ……宇宙人のサンプル確保は失敗、か」

 

アペリティファイブやハンドレッド上層部の言葉を右から左へ聞き流し、貴重なモルモットだったのに……と自分の世界に入った光。ふと、傍らに佇むブライディの様子がおかしい事に気付く。

 

「私の知らない……戦隊……?フッ……!フフッ!アハッ、アッハハハ!」

「あぁ、彼らがこの世界の主人公か」

 

突如として笑い出したブライディの言葉で何となく察したらしい。アウラに関しては多少の未練こそあるものの、長居して戦隊と争ってまで欲しいモルモットでもないため、スンッと興味を無くして踵を返す光。主の興味が薄れたのを見た真もまた撤退の姿勢を見せ始める。

 

「っ、待て!」

「待たないよ。キミらへの興味は今のところ無いからねぇ。あぁそうだ、ブライディだったかな?」

「ハハハハハッ!……ん?」

 

アペリティファイブのリーダーらしい男から制止を受けるも、視線すらくれずに帰ろうとする光。途中で何かを思い出したように振り返り、ブライディへカードを一枚投げ渡す。それにはリエンドのバストアップが描かれており、どうやらリエンドのカメンライドカードのようだ。

 

「親愛と同好の証だ、好きに使いたまえ。あぁ、直ぐに作り直せるから問題は無いよ」

「ふむ、ありがたく受け取ろう。ならこれと交換という事にしようじゃないか!」

「ん」

 

交換、としてブライディが投げ渡したのは掌に収まるフィギュアのような物。こちらはホーカイジャーのレンジャーキーだった。

 

「では遠慮なく。気が向いたらクライス要塞でもプレゼントするよ。では、健闘を祈る!帰るよ、真」

「ちょっ、待てっておい!じゃあな!フレ……何とか!お前のガッツは見せてもらったぜ!」

 

「楽しみにしているよ。こちらもギガントホースの同型艦でも贈ろうか。ではね、平行同位体の私!私達も帰ろうか、フレムル」

「はーい!ばいばーい!あと、わたしの名前はフーレームールー!だよー!」

 

オーロラカーテンを潜って自らのラボへ帰還していく光と真。その背を見送った後、エネルギー輪に包まれ艦に戻っていくブライディとフレムル。アペリティファイブは止めようとしていたが、背後から現れたゴーミン部隊の残党に足止めされ、光もブライディも取り逃してしまったようだ。

 

こうして世界の枠組みを越えた邂逅は幕を閉じ、壮大でちっぽけな前奏は終わった。そうして、この世界の本来の物語───護善戦隊アペリティファイブと宇宙帝国ザンギャックの戦いが幕を開けたのだ。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「えぇい!何なのだあの女は!インサーン!奴は言い訳の一つでも寄越したのだろうな!」

「そ、それが……」

 

『お楽しみは最後に取っておく主義なのでね。気が向いたら私の方から手を出すさ、それまでは殿下にお任せいたしますよ』

 

「ふっ……ざけるなァッ!!!もういい!バリゾーグ!行動隊長を出せ!あのアペリティファイブとかいう連中から片付けるのだ!」

「イエス・ボス。行動隊長シカバネン、出番だ」

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「珍しいな、お前があんなレア物を諦めるなんて」

「アウラとかいう宇宙人かい?諦めた訳じゃないさ、あの世界には私の平行同位体が居た。つまり?」

「アウラの平行同位体も居る……?」

「そういう事さ。さぁ!そうと決まれば彼女の平行同位体を探そうじゃあないか!」

「別に良いけどよ……ガッチャンコ?の世界とレジェンドはどうすんだよ」

「幹部に適当なダークライダーのデバイスを渡しておけば良いさ。現地でどうするかは私の知った事ではない」

「へいへい……」

 

 

そうして調べ始めた平行同位体アウラの居場所。十分と経たずに特定したのだが、光は気付いてしまった。見つけてしまった。

 

その世界には、アウラよりも興味を引かれる存在が居るという事に。

 

量産したヴィジョンドライバー、キバットバットⅡ世、ロストドライバーとエターナルメモリを三人の幹部に送り付け、カッシーン隊をレジェンドの世界に送り込み、汚れた白衣を投げ捨て新しい白衣を羽織る。そして真を伴って、またオーロラカーテンに飛び込んだ。

 

部屋の主が退室し、薄暗くなった光の研究室。消し忘れられたホロディスプレイには、三本のガイアメモリと、それらを所持しているらしい人物の名前が表示されたままになっていた。

 

トリニティ、と。




スーパー悪役大戦1on1
暇をもて余した狂人達の遊びとも言う。

【ブライディ・フィフティエス】
とあるスーパー戦隊の世界に存在している九十九 光、ひいては一 光の平行同位体。
略奪者としてのゴーカイジャーに脳を焼かれた悪のマッドサイエンティストであり、自らの手で作り上げた変身システムであるホーカイジャーにチェンジする事ができる。
一や九十九と同じく虚弱体質で、彼女の場合は地球人とタルタロス星人の混血である事が原因。血の相性が良くないらしく、何らかの機構を身体に埋め込んで強引に延命している模様。
元々は今のザンギャックが居る世界とは別次元の生まれであり、平行世界を観測する術を持っていた事から、ゴーカイジャーと他の戦隊の存在を知り自身専用のレンジャーキーを造り出した。一 光の系譜、その例に漏れず彼女もまた天才。

【ホーカイジャー】
ブライディの変身態。
ゴーカイレッドとバスコ怪人態を足して二で割ったような禍々しい紅の姿をしており、左腕にはゼンカイザーをイメージしたらしい意匠を、ボディ全体の縁取りにはツーカイザーをイメージした金色を使っている。
スマートフォン型デバイス「ナリスマート」下部にレンジャーキーを装填する事でホーカイチェンジが発動、ホーカイジャーへの変身だけでなく他の戦隊にもチェンジが可能。
「自分自身がその戦隊の名と姿を騙る悪の戦隊になる」という概念を用いてホーカイチェンジする他、原典のゴーカイジャーやバスコも持たないネジレンジャーや外道シンケンレッド等の「悪の戦隊キー」、「闇堕ち形態のレンジャーキー」を製作・所持している。

【フレムル】
ブライディの護衛兼副官のアンドロイド。
特殊技術艦ダンツァーホースのコアユニットでもあり、ブライディの命令に忠実で、たとえアクドス・ギルやワルズ・ギルであってもその言葉には従わない。
性格は子供っぽく、あえて精神年齢を引き下げて作られている。
戦闘能力も高く、バトルモードへの移行で更に能力・機能を高める事も可能。

【アウラ】(原作:オリーブドラブ 様)
エリュシオン星人の巫女。
生体改造された人間を元の姿に戻す事ができる秘術を行使できる唯一の存在で、地球の人々を助ける為に来訪したという。
本来の母星であるエリュシオン星はタルタロス星人によって滅ぼされており、ブライディが「因縁もある」と言っていたのはこの事を差す。

オリーブドラブ様の作品、仮面ライダーAPにおけるヒロイン。そちらでは、改造人間を生身に戻せる秘術の利権を得ようとする人々の醜い争いに心を痛めていたが、こちらのアウラは「自分が地球を訪れた事でザンギャックの介入を招いてしまったのではないか」という別の心傷が生まれる事となった。

【宇宙帝国ザンギャック】
(原作:海賊戦隊ゴーカイジャー)
全宇宙の支配を目論む巨大軍事国家。あちこちで宇宙警察や武力を持つ星との戦争中なのは変わらず、ブライディとアペリティファイブの存在のみ原典とは異なる。
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