序章:プロローグ
「たつみクン、真は───」
「仕事増やすんじゃねぇ殺すぞ、って言ってたけど。かなり機嫌悪いわよ、アレ……」
いつもの独立次元空間ツクモラボにて。黒い軍服の上に研究者然とした白衣という変わらぬ姿の光と、ゴスロリでまとめた服装のダークドリームが居た。いつの間にやら、たつみという名で呼ばれているようだが。
「紛外境の最終調整で忙しいのだろうねぇ。やれやれ、ハードワークは美容の大敵だというのに」
「そのハードワークをやらせてるのヒカリだよ」
全く悪びれる様子の無い光。キャラマスターの世界で召喚され、そこから大して長くない期間の付き合いであるダークドリームことたつみでも理解できてしまったのだろう。
九十九 光とはこういう人間である、と。
「はぁ……それで?シンに何頼もうとしてたの?わたしで良ければ手伝うけど」
「キミは本当に良い子だねぇ、私は嬉しいよ。真も少しは見習ってほしいものだね」
◆◇◆
「へっ……くしっ!だぁー……くそっ。誰か……いや、どうせあのバカだろ……また理不尽な文句でも言ってやがんな?ってぇおいコラそこの!共食いすんなっつってんだろうが!……ったく、これだからロードは……」
◇◆◇
「それ絶対シンに言っちゃダメだからね?」
「ふふん、キミもだいぶ人間味が増してきたね」
「おかげさまでね。本題は?」
コンソールを操作し、これさ!とたつみに見せる光。ホロウィンドウには、正にこれから検証しようとしているガイアメモリを使って変身するヒーロー、仮面ライダーWが映っていた。
「あ、はんぶんこ怪人」
「プリキュアにもそう言われるんだねぇ……」
「……ん?何か、違くない?」
映像の違和感に気付くたつみ。ダブルの背後には、仮面ライダーの世界やプリキュアの世界、更に言えばダークドリームと共に付いてきたボルグ・カムランの出身であるゴッドイーターの世界の物とも異なる機械が鎮座していたのだ。その多くが人型をしており、今にも会話をし始めそうな口まで備えた機体まで存在している。
仮面ライダーの世界にも、大型の敵に対抗する為のパワードスーツや巨大化能力を持つ者は居る。光の説明でそれは知っているたつみだが、映像のロボット群は明らかに仮面ライダー世界の物とはデザインやコンセプトが違うのだ。
「どうやら最近になって発生した世界線らしくてねぇ?あの仮面ライダーW、左 翔太郎とフィリップがスーパーロボット達の共演に参加するようなんだ」
「どう、いう……どういうこと……?」
「それが正しい反応だね。まぁ深く理解しなくても良いさ、今は仮面ライダーとスーパーロボットに縁ができたという事だけ認識していれば」
「縁……?」
どこぞのドンなモモタロウが殴り込みを掛けて来そうな発言だったが、ここに居るのはブライディではなく光。気にする事なくたつみへの解説を続ける。
「私がどんな次元だろうと接続して飛べるのは知っているだろう?厳密に言えば、何かしらの切っ掛けが無ければ狙って飛べないのだよ」
「切っ掛け……」
「キミを召喚した世界はランダムで飛んだからその法則からは外れるよ?あくまで、これだ!この世界に行きたい!と決めて飛ぶには、かつてハンドレッドが侵略を仕掛けた世界であったり、私がマーカーをばら蒔いた世界であったり───」
「仮面ライダーが存在している、或いは仮面ライダーに所縁のある世界でなければならない」
光とたつみの会話に突如として混じる第三者の声。ホロウィンドウを開いているデスクの後ろ、正に虚空から姿を見せたのはハンドレッドの制服ではない、別勢力の物と思われる軍服を纏った人物。
闇に溶ける事なく存在感を放つ黒いコートに騎兵帽。悪趣味に映らない程度に装飾の施されたそれらは、新品同然の輝きを放つ左側と、どれだけ悲惨な戦場を潜り抜ければそうなるのかと言われかねない程に損傷・劣化した右側で綺麗に分かれていた。そしてそれを纏う本人も、右目は痛々しい傷跡に覆われて閉じられ、グローブと軍服に隠された肢体にも扇状に傷が広がっている。つい今、二人の話題に出ていた仮面ライダーWの如く身体の左右が異なる容姿になっている推定女性。
その姿と声を認識した光は驚くでも警戒するでもなく、まるで親しい友人に対してそうするように声を掛ける。
「おや、ロッシュじゃあないか。私の想定よりも早い帰還だったねぇ」
「概ねの検証は済んだ。もう後れは取らない」
ロッシュと呼ばれた軍服の女性。光だけでなく、たつみも平然としている辺り顔見知りらしい。
それもそのはず、彼女もまた異世界にて光に召喚されたキャラクターなのである。バッドエンドに分岐した世界のダークドリームとは召喚に応じた経緯が若干異なり、出身───出典とも言える元々の世界において、世界のストーリー自体は異常な変化や分岐は起きなかった代わりに「ロッシュという異物が生まれてしまった」というイレギュラーが起きたらしい。幸いというべきか、ロッシュは生まれて直ぐに光の元へ引き抜かれ、元の世界の登場人物達はロッシュの存在すら認知できないまま正史のエンディングを迎えたようだ。
「あの時は割と慌ててたもんねぇー?キュアロッシュちゃん?」
「……その名で呼ぶのはよせ。私はプリキュアではないと言っただろう」
「だってヒカリが、ところでキミはどんなプリキュアなんだい?なーんて真面目な顔で聞くんだもん!思い出しただけで笑えてきちゃう!」
「仕方ないじゃないか。あの状況で召喚したのだから、彼女もプリキュアでは?と思うのは当然だろう?」
光の言う「あの状況」とは。
ロッシュを召喚した時にして、そのまま初陣となった日。
ダークドリームとしての戦闘データを得る為、再びキャラマスターの世界へと飛んだ光とたつみ。バトルフィールドとなっていた遊園地には、丁度良く複数のプリキュアとそのマスター達が集まっていた。これ幸いと乱入したのだが、その内の一人が自業自得で契約プリキュアに嫌われ暴走。新たに呼び出されたミデンという強敵を前にダークドリーム含めた即席プリキュア連合が結成……されたのだが、この九十九 光という女、なんとプリキュアたちの絆だとか空気感だとかライブ感だとかを完全に無視。あろう事か別のキャラクターの召喚に踏み切り、それによって召喚されてしまったのがロッシュという訳である。
「いやぁ大変だったねぇ」
「ヒカリが余計な事したからね。ロッシュもヒカリのせいで不完全体になったし」
「構わん。先も言ったが、概ねの現状把握は出来た。それに、欠損した記憶の必要性も薄い」
そう、ロッシュも光のアナザー因子が原因で生まれたイレギュラー。生き残るべきではなかったダークドリームに対して、ロッシュは生まれるべきではなかった存在なのである。
(まるでグリードアンクのようで面白いねぇ……)
にも関わらず、光は謝罪どころか悪く思う素振りすらなく面白さの一点のみを見てロッシュを手駒に加えた。異物である自分のバグ召喚によって、身体と服に加えてオリジナルの記憶まで破損したというのに。
「それで?出陣か?」
「あぁ、そんな話だったね」
「途中で疑問浮かべたわたしが言うのも何だけど、すごく脇道に逸れたよね」
では改めて、とホロウィンドウの画面を変える光。今回のターゲットとしたのは、件のダブルがスーパーロボット軍団と共に戦う世界───ではなく、それによく似た別位相の世界。
「あれ、はんぶんこ怪人が居る方じゃないんだ」
「世界線が発生しただけで、世界の物語や行き着く先が確定した訳ではないからねぇ。実体を持たない靄のようなものさ」
「まだ干渉は出来ない、と」
「その通り。という訳で、予行演習も兼ねて似た世界をぶち壊してしまおう!という訳さ」
世界の破滅前提、これが九十九クオリティ。
「まぁ付き合ってあげるけど……」
「良いだろう」
「決まりだねぇ!さぁ往こう!慎ましく、ね」
(絶対慎ましくないわね)
(慎ましく……?)
▽▲▽▲▽▲
「九十九 光、我々は君を筆頭に別次元の侵略に来た。そこに相違無いな?」
「そうだねぇ」
「あの灰色のオーロラを通った先は何らかの基地だった」
「幸先が良かったねぇ」
「警備を掻い潜り潜入に成功、データベースにアクセス可能な端末も発見した」
「欲しい情報の抜き出しまで順調だったねぇ」
「……では何故、我々は追われているのだ?」
「私が警報を鳴らしたからだねぇ!」
「何で潜入したのにわざと警報鳴らすのよ!」
またやってるよこの女。
ロッシュの発言通り、オーロラカーテンの先には何らかの基地が存在していた。巨大な人型のロボットが一般人にも認知されている世界、という事以外の情報が無い光一行。インビジブルのアタックライドカード等を駆使して基地に潜入、サーバールームのような部屋を探し当てて必要な情報を抜き出した───までは良かったのだが、この世界の軍のレベルを把握しておきたいという最もらしい理由をこじつけた光が暴走。わざと基地の警備システムに引っ掛かり、ロッシュとたつみを巻き込んで今に至るという訳である。
「それにしても数が多いな。基地中から集まっているかのようだ」
「最高位の機密データに手垢を付けてコンディションレッドを発令しておいたからねぇ!」
「……道理で」
「シンがヒカリの事を天才バカって呼んでる理由がやっと分かった!」
行く手を遮る兵士はリライドライフルで膝を撃ち抜いたり、たつみが蹴り倒したりロッシュが軍刀のような凶器で薙ぎ払ったりと退けてはいるが、光達を追う数は減らないどころか増えている。それもこれも九十九 光という天才バカのせいなんだ。
(外か。なら、そろそろ来るかな?)
シャッターをエネルギー光弾で破壊した先には日が差している。光の予想通り外に出る通路だったようで、破損したシャッターを軽く飛び越え辿り着いたのはだだっ広いフィールド。規模と的やコンテナがある辺りから推察するに、恐らくは演習場のような場所なのだろう。
そして、光が「来る」と予想したモノが果たして演習場に降り立った。二本の脚で地を踏みしめ、冷徹で無機質な双眸をゴーグルのようなバイザーで隠し、人の身よりも遥かに大きな銃火器で武装した鉄の巨人が二体。
「本当にロボットだ」
「アレがこの世界の兵器か」
「たった二機かぁ……まぁ、歩兵三人に対して投入するなら妥当な数かな?」
恐らくメインのカメラを備えているであろう頭部と、マニュピレータで保持した武装を光達に向け、警告と投降の呼び掛けを繰り返している。にも関わらず、たつみは純粋に驚きロッシュは機動兵器を観察し、光は数が少ないと不満を露にしている。緊張感の欠片も無い三者三様の態度に我慢の限界が来たのか、光から見て右側に立っている機体が最後通告を発した。
「そう来なくては、ね」
それを待っていたのが九十九 光という女だ。
従わなかった事に腹を立てたか、殺傷許可が下りたのかは不明だが、ついに機動兵器のライフルから弾丸が吐き出された。砕かれた演習場の路面が粉塵となって舞い上がり、光達はあわれミンチに───とはならず。
【KAMEN RIDE】
【RE END】
粉塵から飛び出してきたのは黒を基調としたバイク。仮面ライダーリエンドと同じ色合いに纏められた、彼女専用のライダーマシン。
「ざぁんねん!これがマシンリエンダーさ!」
ディケイドのマシンディケイダーをベースに造り上げられたマシンリエンダー。所々に宝石のような意匠を取り入れているのは、ディケイドと共にデザインモチーフとしたレジェンドをイメージしているからだろうか。青黒いジュエルラインから軌跡を残し、不審者の変身という驚愕から立ち直った機動兵器二機の射撃を軽々とすり抜けて疾走する。
「ふむ……防ぐという事は……!」
ある程度なら操縦アシストが働くのか、片手でリライドライフルを扱いながら速度を緩めず敵機の射撃を回避していくリエンド。20mより少し小さい程度の機動兵器に対し、リライドライフルがどれだけ効果を発揮するか見ていた光。胸部や頭部、武器ユニットといった致命傷になりそうな箇所を集中的に狙って射撃を繰り返していると、エネルギー弾を防御し始めた事に気付く。
受け続けるとまずい、ダメージになっているという事を示してくれていた。
「っと、キミ達はもう消えて良いよ」
状況が変わったと見たのか、基地から兵士達が援護射撃を開始したようだ。お目当てはあくまで機動兵器の方、有象無象の歩兵には興味が無いとハンドルを握っていた左手も離し、ライダーカードを引き抜く。
【ATTACK RIDE】
【BLAST】
ブラストのアタックライドを発動し、分裂した幻影の銃口からエネルギー弾を高速連射。薙ぎ払うようにライフルを振り抜き、兵士達を一瞬にして無力化したのだ。追い撃ちとばかりに空中へ弾をばら蒔き、豪雨の如くエネルギー弾を降り注がせる事で後続も潰していく。
『全、滅……?あの一瞬で───』
『避けろぉ!』
「キミもその仲間に入れてあげよう」
【FINAL ATTACK RIDE】
【RE-RE-RE-RE END】
歩兵部隊が数分と経たず全滅させられた事実を受け止めきれなかったのだろう。動きを止め、呆然と立ち尽くしている機動兵器の一機。照準すらリエンドから外したのが祟り、逆にファイナルアタックライド───ディメンションスナイプの照準を合わせられた事に気付くのが遅れた。そこから発生した一瞬の出来事は必然の結果。胸部ユニットに風穴を空けられた機動兵器が、ゆっくりと背中側へと倒れていく。
『お、前がぁぁぁぁッ!!!』
「そうさ、私がやったよ。それが何か?」
『アイツは……!アイツには!アイツを待ってる奴が、帰りを待ってる彼女が居たんだ!それを……それをぉッ!』
「それで?それが私に何の関係があるのか、分かりやすく説明してくれると非常に助かるのだけれどねぇ」
大仰に腕を広げて残りの機動兵器パイロットを挑発する光。否、本人としては挑発のつもりすら無いのだろう。たった今この世から消えた男?女?に同性?異性?のガールフレンドが居たから何だと言うのか。そんな事に欠片も興味は無く、教えてくれるなら拝聴するが?とばかりに人の神経を逆撫でする。
それが九十九 光。
それが仮面ライダーリエンド。
『お前だけはぁ……ッ!』
「あー、それと」
「私にばかり気を取られていると……」
悪魔が指を指す。つられて指が示すその先、空に注意を向けるパイロット。また意識を逸らす為のハッタリかと思えばそれは違う。
『なん、だ……アレは……』
「ほぅら、来たよ」
空を覆う巨大な何かが、基地の上空に佇んでいたのだ。
◇◆◇
「え、誰」
「それは此方のセリフだ」
時を少し戻して、光がリエンドに変身しつつマシンリエンダーに跨がったのと同時に。ロッシュはオーロラカーテンに包まれ、暗闇の中に放り出されていた。人非ざる気配を感じてサーベルを向けた先には、眠たげな目をした少女のような何かが居た。状況を把握できていないのは少女も同じらしいが、暗闇の中でも存在感を放つサーベルを向けられて尚、あくびを噛み殺しながらのんびりとロッシュに問い掛けている辺り只者ではない。
「送った先のモノを使え、と光に言われた」
「はぁ!?ちょちょちょい、待って?え?ウソでしょ?ねぇマジ?それマジで言ってる?」
「お前もハンドレッドか?」
「くっそぉマジっぽい!」
未だサーベルを収めないロッシュを放置して頭を抱え、苦悶と絶望の叫びを上げる少女。困惑気味のロッシュの問い掛けを無視し、少女のとても大きな独り言は続く。
「誰も来ないから絶好のお昼寝スポットだったのにぃ!いつになっても実戦投入されない倉庫番だからサボりに最適のエデンだったのにぃ!!!」
「……答えろ、此処は何だ。お前は」
「あたしが居る事もバレてたんだろうなぁ……そりゃそうだよ、じゃなきゃこんな何も知らない新入りだけを送ってくる訳ないもんなぁ……」
「これが最後だ。お前は」
「あー、ハイハイ分かりました動かしますよ……」
斬るかとロッシュが決めた瞬間、暗闇に次々と機械的な灯りが点いていく。数秒も掛からずに全てが照らされ、ロッシュは自身が送られた場所が何かしらの部屋、それもかなり広い部屋だと気付く。
「これは……」
「システムチェックー……はい、オールグリーンでーす……知ってた知ってた……悲しいかな小さいエラーすら一つも出やしない……はぁぁぁぁぁ……」
「ドレッドクライス、はっしーん」
蟲の脚のような無数のパーツが蠢き、嘴を備えた頭が起きる。血のように赤い瞳に光が灯り、鈍い銀色の装甲が怪しい輝きを放つ。
ドレッドクライスと呼ばれたそれが、目を覚ました瞬間だった。
◆◇◆
「まともに動いているようで何より。メンテナンスをした甲斐があったというものだ」
『光、まず状況の説明を求める』
「艦橋の居心地はどうだいロッシュくん?」
『ブリッジという事か?艦なのか、これは』
「それはドレッドクライス。我らがハンドレッドの保有する移動拠点にして超大型兵器さ。ついでに言うと、私が暇な時に改造した手慰み品でもある」
かつて仮面ライダーBLACK RXが戦っていた異次元世界からの侵略者、クライシス帝国が用いていた地球攻撃兵団の拠点であり旗艦のクライス要塞。それをスーパーショッカーが改造したスーパークライス要塞。それを元に光がハンドレッドの戦力として複製し、本人の言葉通り趣味でチマチマと改造を施したのが、オーロラカーテンを潜って現れたドレッドクライスである。
『……これについては概ね理解した。この少女は』
「彼女の名はキャニー。私が改造したヒューマギアだよ」
『厳密に言うとソルドですけどねー』
『何にせよ人間ではないという事か』
「その通り。キミのサポートとして、そしてドレッドクライスのクルーチーフとして用意した」
『私のサポート?』
『やっぱりかぁ……』
「折角ロボットの世界を侵略するんだ、こちらも母艦が無ければ格好がつかないだろう?」
平然と、スナック感覚で世界の命運を弄ぶ光。どうやらドレッドクライスとキャニーは、侵略者としてのポーズの為に用意したらしい。
そしてサポートという事は───
『私にドレッドクライスの指揮をさせると?』
「大正解!それには大規模オーロラカーテン展開を初めとして様々な機能を盛り込んであるからねぇ!オリジナルのキミにも劣らない優秀な手足となってくれるだろうさ!」
『……唐突だな』
『諦めなよ、ヒカリはこういうやつだから。わたしにもいきなりこんなの渡すくらいだし』
ロッシュの溜め息に同情と辟易を混ぜた声が掛けられる。また別の場所に飛ばされていたらしいたつみだ。
『こんなの?』
『今から出るよ。見れば分かる』
「頼むよたつみクン!いや───」
「ダークドリームくん!」
【間もなくザンギャックの烈車が参ります!命の惜しい方は黒い線の内側に下がってお待ちください!】
巨大戦艦、もとい要塞が突如として現れ、基地も危険度を跳ね上げたのだろう。光が相手をしていた機動兵器と同じタイプの大型ロボットが多数緊急出撃してきた。それらの前に、空から黒い線が降り注いできた。警戒態勢を取る機動兵器パイロット達の耳に飛び込んできたのは、何故かアナウンスと踏切警報器のような甲高い音。
「おや、アナウンスがザンギャックのままか。後でハンドレッドに直しておかないとねぇ」
ドレッドクライスから発進し、虚空にレールを敷いて走行してきたのは漆黒の列車。スーパー戦隊世界の平行同位体、ザンギャック特務技官ブライディ・フィフティエスから友好の証として贈られた烈車、クライナーだ。
『いきなりこんなのに乗せて……コイツが居るから良いけどさ』
「ロッシュのサポートにはキャニー、キミのサポートにはようやく再現できたそれを用意したよ。キミにも馴染み深いだろう?」
『あの双子妖精が渡されてただけで、別にわたし達が使ってたわけじゃないんだけど……』
【コワイナー!】
白線、ならぬ黒線の外側を通過し、機動兵器部隊を牽制したクライナー。その先頭車両には不気味な仮面が張り付いていた。その仮面からは、絶えず鳴き声のような叫び声のような音が発せられている。光がたつみ───ダークドリームの話を元に再現・複製に成功した闇の侵略集団ナイトメアの尖兵となるコワイナーである。
どうやらコワイナーがクライナーに取り憑き、烈車の操縦などした事も無いダークドリームをアシストしているようだ。暗いなー怖いなー、とどこぞの怪談タレントみたいだと言ってはいけない。
「私は目の前の相手で忙しいし、そちらはキミらに任せるよ」
『勝手なこと言っちゃって……』
【コワイナー!】
『コイツも手伝うって』
「それは重畳。私には何と言っているかサッパリだが、協力的ならそれで良いさ。何かに取り付けるまではただの仮面だから、生まれながらに私へ忠誠を誓うような調整は出来なくてねぇ。ナイトメアとやらやシャドウの元に行きたがったらどうしよう……と内心冷や汗が止まらなかったんだ」
冗談ばっかり、と呆れながら操縦レバーを回すダークドリーム。次の瞬間にはコワイナーの仮面が先頭車両から消え、車体が中央から折れるように変形を開始。先頭車両と後部車両が両脚を、動力車両が両腕と腰を、制御車両が頭と胴体を形成し、最後に頭部のマスクにコワイナーの仮面が装着される事でコワイナークライナーロボが完成した。
「推定40m……それより少し大きいかな?20mあるかどうかといった所の、この世界のロボットとは大人と子供ほどのサイズ差があるねぇ。上手く連携すれば戦力比は互角くらい……まぁ、ダークドリームくんのチュートリアルとしては丁度良い相手か」
『何だ……』
「ん?」
『何なんだお前はぁ!』
錯乱、恐慌。同僚が死に、部隊は壊滅、上空には飛行要塞が現れ列車が空を走る。夢ならば覚めてくれ、こんな訳の分からない悪夢など早く終わってくれ。大粒の涙を止めどなく溢しながら、機動兵器のパイロットが叫ぶ。それに対する光の返答は、やはりというべきかいつもと変わらぬものだった。
「通りすがりの悪魔さ。覚えなくて良いよ?これから死ぬキミの記憶に価値など無いからね」
【KAMEN RIDE】
【DELTA】
【ATTACK RIDE】
【JET SLIGER】
機動兵器がスラスターを全力で噴かしながら突撃を開始し、右マニュピレータで握ったライフルからも発砲。マシンリエンダーを急発進させて弾丸を回避しつつ、連続して二枚のカードをリエンドライバーに装填する。
一枚目は仮面ライダーデルタへのカメンライドカード、二枚目はマシンリエンダーをジェットスライガーへ変化させるアタックライドカード。可動域の広い特殊なタイヤ、ローリングホイールとなり、機首を機動兵器に向けながらのスライド走行へと移るジェットスライガー。独特なマニューバに翻弄されながらも、リエンドデルタとジェットスライガーを捉えた瞬間。
「躱せるかな?これを!」
瞬時に展開されていたジェットスライガーのカウルランチャー。そこから計32発ものフォトンミサイルが一斉に解き放たれた。
『くっ、うぅっ!』
急制動を掛けて回避行動に移りつつ、リエンドデルタから照準を外しライフルでミサイルを迎撃する機動兵器パイロット。その一瞬の間に、ジェットスライガーはルクシオンジェネレーターに火を入れ終えていた。
「キミはマニュアルに忠実な、普通の敵相手なら良い兵士なのだろうねぇ」
『っ!』
「そこは私に一矢報いる所だったよ」
【FINAL ATTACK RIDE】
【DE-DE-DE-DELTA】
超加速に加え、全体をフォトンフィールドで包み突進するフォトンブレイカーで機動兵器の右脚を損壊させたジェットスライガー。崩れ落ちながらも頭部を上げる機動兵器だが、矢継ぎ早にゴーグル部分へ着弾する紫色のエネルギーポインター。パイロットが最期に見た光景は、ポインターを蹴り抜けるリエンドデルタの姿だった。
「ハァッ!!」
機動兵器の中に消えていくように姿を消したリエンドデルタ。数秒と経たずその背後に現れ、同時に機動兵器にΔのマークが浮かび爆散。パイロットは確実に死亡しただろう。各部から炎を噴き出し、機能停止していく機動兵器を後目に悠然とカメンライドを解くリエンド。
「ふむ。一対一なら余裕だけれど、数で圧されると面倒だねぇ。そこはダークドリームくんとコワイナーに何とかしてもらうとしよう」
『また勝手に……こっちも終わったよ』
いつの間にやら、騒がしかった基地と周辺が静かになっている。唯一、静寂を破るのはズシン……ズシン……という重く響く規則的な音。徐々に光の元へ近付いてくるその音の主は、ダークドリームとコワイナーが操るクライナーロボ。装甲表面に真新しい傷や溶解痕こそ刻まれているものの、致命傷にはなり得なかったらしく足取りはしっかりとしている。
「お疲れ様。さて、ドレッドクライスに戻って祝勝会でもしようか。ロッシュくん、私達を回収してステルスを起動してくれたまえ。近隣からの増援が来る前に離れようじゃあないか」
『…………』
「ロッシュくん?おーい」
『
光の呼び掛けに答えないロッシュ。不思議に思った光が再度声を掛けるが、発せられたのは返答ではなく謎の単語。ニヤニヤとした意地の悪い笑みを引っ込め、冷たさすら感じる無表情となりながらオーロラカーテンを開いた。行き先は無論ドレッドクライス艦橋。
「キャニー、状況は」
「状況って言われてもなぁ……機関銃とサーベルでバイオリンしたというか……」
「……?ロッシュ、何をした?」
「……な、に……?私は今、何を……?」
(嘘や演技の類いには見えない。無意識に体が動いた?まさか、オリジナルの記憶が断片的に復元された?それに伴って本来の能力も……?)
武器であるサーベルと機関銃を手にしたまま立ち尽くしていたロッシュ。どうやら本人ですら何をしたのか分かっていないらしく、何らかの要因が重なった結果、ロッシュのオリジナル───アルタイルの記憶と能力が復元されたのではと光は推察した。
そしてその推察は大当たりで。
「アラート!?これは……マスター!」
「次元境界線が揺らいだ?世界が重なる……とまではいかないレベルだが、別世界の物体が完全な状態を保ったまま転移できる大きさの穴が空いている……」
艦橋に鳴り響く警報。直ぐ様アラートの原因を確認したキャニーが光に情報を渡す。ホログラフィックで投影されたそれには、光達が居るこの世界と別の次元を隔てる境界線が曖昧になっているという状況が示されていた。そして、向こう側の世界からこちら側への通路、というよりも一方通行の穴が空いたという結果報告も。
「マスター、これかなりヤバヤバでは?」
『ちょっとヒカリ!何があったの!?』
「ふっ……フフッ……!」
悪魔が笑った。
「面白い事になってきたよぉ……!」
世界よ御愁傷様
【夢更たつみ】
ダークドリームの変身前の呼称。
毎回ダークドリームじゃ長くて面倒、という真の苦情から光が考案した名前。(自分は夢原のぞみではないので)のぞみと同じ名前は絶対にイヤ、というダークドリームの要望も踏まえ、「夢を更地にして希望を絶つ」という意味合いを込めてこの名前になった。
【コワイナークライナー】
ブライディから贈られた幹部用カスタムクライナーを光が更に改修し、プリキュア5の世界の侵略集団ナイトメアが用いていたコワイナーを再現・複製して取り憑かせた闇の烈車。
スーパー戦隊世界の物を仮面ライダー世界の技術で改良し、プリキュア世界の敵を取り憑かせた事からニチアサカスタムとも呼べる。
コワイナーは現状たつみ/ダークドリームの命令しか聞かない為、実質的に彼女の専用烈車となっている。
ロボ形態での武装は、右腕のシャドーバルカンと左腕のシャドースパイク。また、本人のダークネスシュートを増幅して放つ事も可能。その場合は、シャドーバルカンから黒い蝶型のエネルギー弾を高速連射する必殺技、ダークシャドーシュートとなる。
【ロッシュ】
光がキャラマスターの世界で呼び出した存在。
本来はアルタイルというキャラクターとして召喚されるはずだったが、光のアナザー因子によってイレギュラーが発生。オリジナルの記憶や能力の殆どが欠落し、身体や服装にも亀裂のような傷跡が残る痛々しい姿になってしまった。
サーベルと機関銃を武器として扱うが、彼女の真骨頂は欠落したアルタイルの能力にある。ドレッドクライスの艦橋にてホロプシコンという能力の根幹を復元したようだが……?
【ドレッドクライス】
クライス要塞をスーパーショッカーが改修したスーパークライス要塞、を更に光が改造したのが本機。
スーパークライス要塞よりも更に大型化しており、居住区画だけでなく生産・開発を行う工業区画も完備されている正に移動拠点。ハンドレッドは基本的に行動隊長や幹部にカッシーン等の手勢を付けて侵攻し、場合によってはダイマジーンで殲滅に出る為、長期戦を前提としたドレッドクライスを活かす機会はほぼ無かった。それ故にキャニーが定期メンテを口実として入り浸り、サボタージュに利用されていたのだが、今回の光の気紛れによって晴れてキャニー共々実戦投入された。
この世界の主人公は、例えば───
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正義感の強い家族思いな少年とか
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一見すると冷徹だが心根の優しい少女とか