「ホロプシコン。聞けば聞くほど大それた無法な能力だねぇ、これは。我ながら、とんでもないモノを呼び出してしまったものだよ」
ドレッドクライス内の食堂にて。
和やかに会話を弾ませつつも、濁った瞳の奥は全く笑っていない軍服白衣の女の姿があった。言うまでもなく九十九 光である。そんな光の対面に座り、半ば事情聴取か尋問のような状況になっているのがロッシュ。どうやら先刻に引き起こされた予期せぬ事態と、ロッシュが発動した───取り戻した能力について聞き取りしているらしい。
「オリジナル……アルタイルほど多くは使えない。というより、思い出したのは使い方と概要くらいだ。楽章のほぼ全てがロックされている感覚……とでも言えば良いのか」
「ふむ……」
(能力そのものがアンロックされただけで、楽章と呼ばれる様々な力は使えない。言うなれば、スキルツリーは解放されたがそれぞれの強化項目は未だ不明、と言った所かな)
森羅万象、ホロプシコンと読む能力。それは、ロッシュのオリジナルであるアルタイルが持つ無限の力。とある少女が作り出した存在であるアルタイルは、ネット上でその存在を多くの他人に認知された。その多くの第三者たちが描いた動画やイラスト、つまりは「自分の考えたアルタイル」という「二次創作の設定」がそのままアルタイルの能力として反映されるというものだ。
だがロッシュが発現・復元したホロプシコンは、その他者から付与された二次創作の追加能力部分が完全に欠落しているらしい。現状は、他の世界の存在やアニメ・ゲーム等に登場する被造物たちを自分の居る世界に現界させる、というアルタイル本人が行っていた事を再現するしか出来ないようだ。
「何故、急に思い出したのだろうねぇ」
「恐らくこの世界の影響だろう」
「ほう。確証があるのかい?」
「この世界は壁が薄い……いや、距離が近い」
ロッシュ曰く。
自分達が侵入したこの世界は位相が不安定であり、様々な別次元と常に隣接しているのだという。今まで他の世界から干渉を受けず、また他の世界を観測する事が出来なかったのは世界を隔てる壁が厚いから。そんな不安定ながらも安定した世界に、縁があれば無条件で足を踏み入れられる光が現れた事で世界の修正力が過剰に反応。結果として壁が薄まり、他世界の因子がロッシュに集まった事でホロプシコンが覚醒した、との事らしい。
「成る程ねぇ……では修正力はどう説明する?」
「無くなった訳ではない。今も私を弾き出そうと干渉してきているが、アルタイルが元になっているお陰か抑制に成功している。修正力との兼ね合いはアルタイルも難儀していたようだな」
異物を排除しようとする世界の修正力は、現在ロッシュの抹消にお熱らしい。今のところロッシュが消されるような事態にはならず、光やたつみにも影響が無い辺り抑え込みに成功しているのは本当だろう。
「少しは信用してもらえたか?」
「勿論。まぁ益になろうが害になろうが、面白そうだからどちらでも良かったんだけれどねぇ」
「……そうか」
これが九十九 光クオリティ。と、ロッシュが複雑な表情になった所で食堂に新たな来客。ダークドリームことたつみだ。諦めなって、と言わんばかりの呆れ顔になっている点から、ロッシュと光の会話は聞いていただろう事が容易く見て取れる。
「おや、たつみクン。どうしたんだい?」
「そろそろ目的地だからってキャニーが」
「通信なり艦内放送なりで良いのにねぇ。分かった、準備しようじゃあないか」
愉快犯の光が定めた目的地が近いらしい。尋問中のロッシュに代わって操舵を担当しているキャニーに言われ、二人を呼びに来たようだ。なおキャニーとしては、操舵以外の何かをしたくない、という面倒くさがりが発動してたつみを送り込んだだけである。本当に機械、ヒューマギアもといソルドなのだろうか。
「航行はキャニーに任せていたが、何処に向かっているんだ?」
「日本は東シナ海、南西諸島さ」
「ホロプシコンによる現界反応をキャッチしたからねぇ」
▲▽▲▽▲▽
「妙な磁気嵐に始まり地形データの異常、モビルスーツじゃない謎の軍勢がご登場、ミノフスキー粒子も散布されていない。極め付きにこの海……何かしらの呪いって言われても信じるしかない状況だな」
岩影にその巨躯を隠す一つ目の巨人。黒みを帯びた赤、蘇芳色で塗装された巨人の腹の中。コックピットでぼやきと状況整理を同時に行う男の姿があった。
カリュブス・トゥーケスという名のパイロットは、居るかどうかも定かではない運命の女神に呪詛を溢しつつ操縦桿を握り直す。一つ目の巨人───MS-06 ザクのスラスターを一息に噴かし、身を隠していた岩壁から飛び出すカリュブス。一拍遅れて岩壁が破壊された。それをしたのは、カリュブスのぼやきに混じっていたモビルスーツじゃない謎の軍勢。
「警告も無しに撃墜狙いの発砲……ロクな軍隊じゃないか、大のスペースノイド嫌いの過激派か。まぁ、どちらにせよ───」
「ここが俺の死に場所じゃない事は確かだ」
グポン、とザクのモノアイが妖しく光る。
同時に暗く濁り、生気を失っていたカリュブスの瞳にも鋭い眼光が宿る。
生きる意味も理由も、好敵手も部下も、全てが手から溢れ落ちていった。なのに自分だけ生き延びてしまった。無意味で空虚で救いようの無い死に損ない、そんな風にしか自分を客観視できなくなった。いつしか死に場所を求め始め、仮にも一年戦争を戦い抜いたエースを監督不行き届きで死なせる訳にいかない、という勝手な理由で監視が着いた。飼い殺しの軍警察に居場所も死に場所も見出だせるはずもなく。そんな時に今回の奇妙な現象に巻き込まれた。
何かを成せと言われているのか、はたまた此処で死ねと言われているのか。それはまだ分からない。だが、こんな訳も分からない状況で命を差し出すまでには腐ってはいない。故に大海の魔物、蘇芳の海竜は気だるげに首をもたげたのだ。
「ここで死ぬのはお前らだ」
と。
▽▲▽▲▽▲
「戦闘?」
「あぁ。恐らく現界した異世界の存在と、この世界の軍隊だ。あの基地でお前とたつみが蹴散らした人型の機動兵器……ギアフレームだったか?それらが進路上の島で戦っている」
「一応聞いておくけど、どっちに味方するの?」
「現界者の方だよ?」
「だろうな」
「でしょうね」
さも当然と言い放った光、まぁそうなるだろうとは思っていた二人。意気揚々と進路を微調整しようとする光に声を掛ける一人、もとい一体。
「あのー」
「ん?」
ほぼ突っ伏す形で索敵機器に張り付いていた、というかほぼ寝ようとしていたキャニーだ。赤と黄色が混じったツインテールを揺らし、心底面倒そうに三人へ振り向いた。それはもう本当に面倒くさそうに。一応、光とロッシュは主と上官なのだが。
「なーんか別の機影が目的地に向かってますよ」
「別の機影?」
「四機ほど。先行してるのが一機、それに追従してるのが三機ですね」
どれどれとレーダーを確認する光。キャニーの言葉は正しく、現界者とギアフレームの戦闘が行われている場所へ急行する存在を示す光点が四つ、確かに映し出されていた。
「援軍か?」
「……いや、これは」
指揮官機か、或いは突破力に優れた機体を先鋒とした増援の機動部隊かと推測するロッシュ。だが光の考えは違っていた。前を走っている一機と、後続の三機の距離感が微妙なのだ。まるで───
「先頭に追い付こうと必死だねぇ」
「まさか……」
「面白くなってきた!我々も急ごうか!」
▲▽▲▽▲▽
「戦いは数、という事か」
一方のカリュブス。本人にとっては、気の遠くなるような長時間に感じられる五分が過ぎていた。撃墜数はそれなりに重ねており、機体のダメージも軽微。だが、それなり以上に連携の取れている機動兵器部隊を単独で相手取るのは、どんなエースパイロットでも厳しい所。推進剤にはまだ余裕があるが、弾薬が心許なくなってきた。
(最悪、スタンロッドがあるが……この数相手に格闘戦だけってのは避けたい)
軍警仕様ゆえにヒートホークだけでなく電磁警棒、スタンロッドも装備しているカリュブスのザク。だがヒートホークはつい先程迎撃に使ってしまい、機能停止して転がっているアンノウンの頭に刺さったまま。悠長に拾いに行けるほど優しい弾幕は張られていない。
「贅沢言ってられないか……」
スタンロッドを左マニュピレータで引き抜き、アンノウンが射撃武器をリロードするのを待つカリュブス。ここまでの戦闘で、ザクの物とは異なるがマガジン式の実弾マシンガンという事は判明している。おおよその装弾数も把握済み。あとは飛び出すタイミングを間違えなければ、とカリュブスが意を決した瞬間。
「増援?悪い事は重なるもんだ……!」
ザクのレーダーが戦場に飛び込んでくる新たなアンノウンの反応を捉えた。終わりのないディフェンスかと溜め息を吐き出すカリュブスだが、アンノウン部隊が動揺しているのが見えた。
「向こうの増援じゃないのか?」
何より数が少ない。小隊規模どころか、たった一機でこの戦場に殴り込みに来ているのだ。
「何がどうなって───」
『みつけた、やっと会えた。向こう側の人』
「向こう側……?」
遂に映像でも捉える事に成功した新たなアンノウン。その姿は、全身が白基調で塗装され、両肩がスパイクになっている一つ目の巨人と言えるものだった。そう、奇しくもカリュブスの乗るザクと同じように。
「ザク……?いや、違う……!」
『ギラ・ドーガだよ。そっちだと、まだ作られてないんだっけ。作られるのかな?楽しみだね』
厳密に言えばアングリフ・ドーガだけどね。と付け加えてザクから少し離れた位置にランディングした一つ目の巨人。何故か映像通信は開けない為、パイロットの容姿は伺い知れないが、声色からして女性。それも子供と言える若い女だ。
「お前は?」
『ネオ・ジオン所属、ラアス・リュレウ・ソボミ中尉だよ。はじめまして、向こう側のパイロットさん』
「ネオ、ジオン……?」
聞き慣れた単語に聞き慣れない単語。ラアスと名乗った自称ジオン所属の自称中尉の推定少女は、アングリフ・ドーガというらしい機体の武装をアンノウン部隊へと向ける。
「聞きたい事は山ほどあるが、取り敢えず味方で良いんだな?」
『そうだね。よろしく、向こう側の人』
「カリュブス・トゥーケスだ」
『向こう側のおじさん』
「悪化してるんだけどなぁ」
『向こう側のカリュブスおじさん』
「わざとか」
律儀に待っていた、という訳ではないだろうが、二人の漫才のツカミが終わるのと同時に攻撃を再開したアンノウン部隊。アングリフ・ドーガも敵として認定したらしく、弾幕で蜂の巣にせんとしている対象にはラアス機も含まれているようだった。
(あのザクモドキ、機動性に優れているようだな。俺のザク……下手をすればゲルググより性能が高い)
一年戦争時に、かの赤い彗星が鹵獲した連邦の新型MSのリバースエンジニアリング成功によって誕生したゲルググ。宇宙世紀0085年になっても運用が続けられている現役の機体なのだが、ラアスのドーガはそれすらも凌駕する性能を見せているように思える。それこそ、本当に造られた年代が遥か先であるかのような。
「考えるのは後か」
一旦ラアスに関しての推測を打ち切り、目の前のアンノウンに対してジョーカーを切るカリュブス。通常のザクにはない、軍警仕様としては過剰火力の胸部ロケットポッド。残弾少ないマシンガンで回避先を押し付け、狙い澄ました一発を放つ。そのロケット弾は、吸い込まれるようにアンノウンの胸部へ突き刺さり、一拍遅れて大爆発を引き起こした。
『ふふっ……!凄いね。わたしも負けてられない』
見るからに大容量のバックパックと肩部スラスターを噴かし、手に持ったマシンガンからぶつ切りのビームを連射しつつアンノウンに接近していくラアスのドーガ。回避の遅れた機体に狙いを定め、盾でビームを防がせ脚を止めさせた所に飛び込む。そして───
『さようなら』
左マニュピレータに装備したスパイクシールドを全力で振り抜き、殴り倒す。倒れ込んでいる最中に再びビームマシンガンから発砲し、コックピットがあると思わしき胸部を穴だらけにしてみせた。頭部から光が消え、起き上がってこない辺りパイロットは死んだのだろう。
(マシンガンとヒートホークがビームに……あの機体、やはり使われている技術レベルがザクとは別物だ)
カリュブスもまた一機仕留めつつ、ラアスのアングリフ・ドーガの性能に舌を巻いていた。未だ警戒を緩める訳にはいかないが、利用しない手は無いとも考え始めていたカリュブスが一つの賭けに出る。
「ソボミ中尉、この流れを維持して押し込む。こちらの動きに合わせられるか」
『マヴの事?』
「っ……そうだ。やれるか」
『いいよ。じゃあ先陣は譲るね』
驚愕と警戒心の上方修正。MS二機一組で行う連携戦術の事なのだが、何故この推定少女がMAV戦術の事を知っているのか。本当にこのまま背中を任せて良いのか。迷いは一瞬、カリュブスは目の前のアンノウンに集中する事を決めた。
「本来は即興でやる物じゃないが……!」
『こっちだよ』
「俺を見てもらおうか!」
『どこを見てるの?』
ミノフスキー粒子散布下ではレーダー機器が無意味となる為、必然的に有視界戦闘が前提となる。この状況では先に攻撃を仕掛けた側が有利となるが、それは最初の一撃だけ。もしその先制攻撃を回避された場合、今度は場所を把握された攻撃側が一転して不利になる。この際に発生する隙をもう一機がカバーする、或いは囮にして死角から奇襲する等の相互補完がMAV戦術なのである。
『───って、突撃機動軍の教本に書いてあるんだよね』
「……そうだ」
カリュブスのザクが仕掛け、ラアスのドーガが死角に回り込む。ラアスのドーガを追えば、カリュブスのザクがフリーになる。レーダーが生きているこの世界では有視界戦闘だけが主流ではないものの、即興とは思えないコンビネーションを見せる二人を簡単には止められない。分かっていても避けきれないのだ。
『一本角のブレードアンテナ……』
「指揮官機か!」
数を減らした事で、アンノウン部隊の指揮官機を捉える事ができた。やや後方に控え、恐らく通信機能を強化する目的だろう頭部の一本角。奴が指揮官だ。
「一息に頭を潰したい所だが……ソボミ中尉、残弾は?」
『ん……』
「中尉?」
『来た』
「何が───」
『悪魔』
比喩でも何でもなく、地が割れた。
残りのアンノウン部隊の前衛。その足下が突如として砕けたのだ。バランスを崩し、仰向けに倒れるアンノウン前衛機。雑魚に用は無いとそれを無視し、自ら作り出した大穴から飛び出した機体があった。
大型の頭部アンテナ、赤い眼光を放ち続ける禍々しいデュアルアイ、機械らしさを感じさせない有機的なマニューバ。手に握った武器こそ長大なメイスという異質さはあるものの、太陽を背に獲物を見据える、ラアスの言葉通り悪魔の如き威容。カリュブスはそれに見覚えがあった。一度だけ戦場で───宇宙で見た赤い機影。全く異なるのに似ている。その機体は───
「黒い、ガンダム……!」
落下と同時にスラスターを噴かし、指揮官機に向けて一気に加速する黒いガンダム。アンノウンが動揺から立ち直るよりも早く、その無骨なメイスが指揮官機の頭を叩き潰した。
「よく見ればボロボロじゃねぇか……何なんだあのガンダムは……」
指揮官機を押し倒し、その腰からバトルブレードを奪い取ったと思えば別の機体に飛び掛かっている。今度は蹴りを入れて突き飛ばし、メイスを逆手に持って槍投げの要領で投擲。離れた位置に居た機体を貫いて無力化し、手近な機体の腹にバトルブレードを突き入れて撃破。その容赦の無い戦い方は、正しく悪魔か獣のようだ。
だがそんな悪魔も何故か最初から傷付いていた。両肩のアーマーは剥離し、全身に大小様々な裂傷が刻まれている。特に胸部には一際大きな傷痕が残されていた。
「ソボミ中尉、アレを悪魔と言ったな。……中尉?」
今になって気付いたが、通信が途絶している。ラアスに問い掛けても返ってくるのはノイズだけ。タイミングを考えると黒いガンダムが飛び出してきた辺りからか。
「ミノフスキー粒子を発しているとでも言うのか、あのガンダムは……」
───!
「おっと、やる気か?」
血のように赤いデュアルアイを更に輝かせ、ギギギ……と壊れかけのように不気味な動きでザクに向き直る黒いガンダム。実際壊れかけてはいるのだろうが。
(通信は使えない。互いの動きを呼吸レベルで合わせなきゃ勝てん相手だ、やれるか……?)
チラリとラアスのドーガに視線をやり、直ぐに黒いガンダムに戻す。本当にモビルスーツかと疑いたくなるような化物じみたマニューバだったが、機械っぽさが無い事で逆に確信が持てた。アレには人が乗っていると。そして損傷の程度や、今の大暴れから見てそう長くは保たないとも推測できる。時間を稼ぐだけならやれるか、とカリュブスが操縦桿を強く握り直したその時。
『もう終わってしまったのかい?残念だねぇ、急いで来たというのに』
新たに響く女の物と思われる声。通信が使えない以上スピーカーのような外部出力なのだろうが、それを発している物が確認できない。
『上だよ上。今ステルスを解くから待ちたまえ』
「なっ……」
一瞬にして姿を見せた超巨大な何か。ほぼその中央真下に居るらしいザクからでは、全容が見えてこない程に大きな浮遊物体がいきなり現れたのだ。自身がかつて乗っていたムサイや、赤い彗星がガンダムと同じく鹵獲したソドン等よりも遥かに大きなそれから女の声が届いている。
『おや、通信機器が何やらおかしいねぇ。発生元は……その黒い機体か』
「次から次へと……本当に呪われたか?」
『まぁ解析は後でゆっくりと。私はハンドレッドの九十九 光という、以後お見知りおきを頼むよ。早速本題なのだが、ギアフレームを撃破した諸君らが現界者……異世界からの来訪者という事で合っているかな?』
「現界者……?異世界だと……」
『こちらはキミ達のような現界者を捜索、保護しているのだよ。まぁ、キミ達が最初になるがね?どうだろう、我々と共に来ないかい?もし応じてくれるのなら、或いは話だけでも聞いてくれるのならば、そのキャプチャーリングに入ってくれたまえ』
黒いガンダムとザク、ドーガのちょうど中間の地点に円柱状の光線が照射された。これが回収用のキャプチャーリングとやらなのだろう。
「……今は少しでも情報が欲しいな。それに、いきなり撃ってくる連中よりはマシか」
光の話に乗る事を決めたカリュブス。キャプチャーリングに歩き出している所から見るに、ラアスも同じ考えのようだ。残る問題は黒いガンダムなのだが───
───…………
糸が切れた人形のように倒れるガンダム。カリュブスの見立て通りパイロットが限界だったのだろう。一応は助けてもらった訳だし、見捨てるのも寝覚めが悪いとザクをガンダムの元に向かわせようとしたが、一歩早くラアスがフォローに入っていた。ビームマシンガンをリアスカートにマウントし、器用にガンダムを起こして肩を貸す形で連れていく。
「スムーズにやるもんだ」
『あー、そちらの一つ目クン?』
「俺か?」
『キミの背中側に倒れている、頭に何か刺さったギアフレームを回収してくれるかい』
「さっきも言ってたが、アレはギアフレームって言うのか。で、頭に何か刺さった……?」
思い当たるのは一機だけ。まだ孤軍奮闘していた時に、ヒートホークで迎撃した機体だ。サンプルにでもするのかと考えるカリュブスだが、光は「中身」にも用があるらしい。
『その機体だけ生体反応があるのでねぇ?折角だから、そのパイロットから色々と教えてもらおうじゃあないか』
「……捕虜の扱いは慎重にやってくれよ」
蘇芳の海竜は再び眠りにつき、気だるげなおっさんモードになったカリュブスが目的のギアフレームを引き起こす。気絶しているだけなら、衝撃で目を覚まして暴れ出しかねない為、可能な限り静かにかつ迅速に作業を終わらせる。
こうして海を血に……否、ギアフレームのオイルで染める戦いは幕を閉じた。
▽▲▽▲▽▲
「よしよし、運が向いてきたねぇ!」
「疲れたぁ……ねぇ、途中でやっつけた船みたいなの、アレ本当に倒して良かったの?」
「恐らく彼らと戦っていたギアフレーム部隊の母艦だろうねぇ。いきなり帰る場所を失って可哀想だと思ったが、どのみち全滅していたのだから良かったんじゃあないかい?」
「答えになってない……」
ドレッドクライスのブリッジには、悪い笑みを浮かべる光とダークドリームへの変身を解いたたつみの姿があった。他にも舵輪を握るロッシュと、大あくびを隠そうともしないキャニーも居る。キャニーは本当にヒューマギア、もといソルドなのだろうか。
「光」
「ん?どうしたんだいロッシュくん」
「以前、お前は言っていたな。どんな世界にも、その世界を変え、導き、時に破壊する者。主人公が居ると」
「言ったよ?数多の世界を侵略したハンドレッドの技術主任だから言える。これは確実さ」
「なら───」
「この世界にも居るのか?」
「もちろん」
キャプチャーリングで回収され、ドレッドクライスの工業エリア、そのドックに転送されていく異世界の機動兵器達をニヤニヤと眺めながら光は答える。どんな世界にも【主人公】は居る、と。それは世界を救う勇者であったり、世界を破滅に導く魔王であったり、或いは無自覚なまま他者を惹き付ける自称一般人であったりするだろう。総じて、その世界を様々な方向へと傾ける巨大な特異点を、光は主人公と呼んでいる。
そして光はまた答える。
この世界にも、そんな主人公は居ると。
「敵になるのか」
「恐らくはねぇ。ギアフレームが一般にも浸透している世界だ、そのパイロット絡みの人物なのは間違い無いだろうさ」
「どんな人間なのだろうな」
「そうだねぇ……例えば───」
機動戦士、集う。
この世界の主人公に関してのアンケートもやってますので、お気軽に投票してってくださいませ。
スパロボシリーズお馴染み、オリジナル主人公の性別と大まかな設定決めです。
【カリュブス・トゥーケス】
(原案:オリーブドラブ 様)
(原作:機動戦士Gundam GQuuuuuuX)
ジオンが連邦に勝利した世界線からやってきた。
愛機としているのは、一年戦争時から搭乗しているMS-06 ザク。
戦争が終わり、一線を退いてからは軍警に厄介払いされていた元エースパイロット。
【輝夜・サウス】
(原案:ハナバーナ 様)
(原作:機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ)
黒いガンダム、悪魔、獣ことASW-G-33 ガンダム・ガープのパイロットを務めている少女。
通信機器の周波数や規格が合わず、エイハブウェーブが発生している状況だったとはいえ一言も発さなかった謎多き少女。機体が損壊していたのも含め、何やら理由があるらしいが……?
【ラアス・リュレウ・ソボミ】
(原作:機動戦士ガンダム 逆襲のシャア)
白いパーソナルカラーが特徴的なアングリフ・ドーガを駆る少女。カリュブスとは別の歴史を歩んだ宇宙世紀から来ており、新生ネオ・ジオンの所属だと言う。
何故か、カリュブスの世界で確立されたMAV戦術や、ソロモンがグラナダに落ちかけた事などを知っている。
この世界の主人公は、例えば───
-
正義感の強い家族思いな少年とか
-
一見すると冷徹だが心根の優しい少女とか