汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
もがく者達
…転生
それはある意味ではセカンドチャンスを貰った様なものであり、割とロマンに溢れたものであるのだろう
特典を貰い、チートするのも
ざまぁするのもありなのかも知れない
しかし、それは環境ありきの話であり、また話の分かる上位存在あっての事ではないだろうか?
ある世界では、信仰を得んが為に幼女にされた人物がいた
勿論創作の話ではあるが
とかく世の中とは上手くいかないものなのだ
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「おい!お前がシスターを見張っていろ!
いいな!!」
と頭であるハイマンから言い付けられました
ここはデビルマウンテン。そして俺は所謂山賊集団『サムシアン』の一員ゲレタ
まぁ、サムシアンの中では貴重な魔法使いではあるのだが
何せ中身が昭和、平成、令和を生きた現代人。人殺しなんて出来るはずもない
…なんて思っていた頃が俺にもあった
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元より、縁もゆかりもないアカネイア
下に見ているマケドニアやアリティア、オレルアンなどの方が遥かにマシだと言うのに
アカネイアに伝わると言われているパルティア、メリクル、グラディウス
そして、アカネイア王家が信を託すものに貸し与えるとされる封印の盾
これらは全て神竜族の秘宝であり、神竜族の長ナーガを祀るラーマン神殿に納められていたものだ
それを
これで良くもまぁ竜人族を迫害しようなどと思ったものだ
おおかたアカネイア王国の成り立ちを知られてしまえばまずいと思ったのであろうが
民衆レベルにおいては善と悪が割とはっきりしているが、事アカネイア王国関係者については殆どマトモではないだろう
一部『マトモそう』に見える者もいなくは無いだろうが、ハーディンがニーナ王女と結ばれた後の事を思えば大した差はあるまい
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王家の悉くがドルーアによりあの世へと旅立ったアカネイア王家
となれば、ニーナ王女はアカネイア再建の為に奔走せねばならぬのは道理だろう
王家の悉くを失い、アカネイアに忠を尽くさんとした忠臣達も囚われたか処刑された
となれば、彼女が頼りとするのは他国
そこでオレルアンを頼り、ニーナの願いに王弟ハーディンは応え、ドルーアについたマケドニア、グルニアと激戦を繰り広げた
しかし、如何にハーディンとその配下の狼騎士団が勇猛果敢であろうとも、多勢に無勢
ましてや、数頼みの雑兵の集まりではなく大陸屈指の軍事力を有するグルニアに傭兵国家にして、空の支配者たるマケドニアが相手
それでも、ハーディンは部下達を鼓舞し抵抗を続けた
それは文字通り命すら擲つが如きものであり、仮にニーナに思いを寄せていたとしても中々出来る事ではない
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劣勢に立たされたハーディン達オレルアン軍
しかし、辺境タリス王国へと逃れていたアリティアのマルス王子の軍が悪名高いサムシアンの跋扈するデビルマウンテンを突破し、オレルアンへ到着
オレルアンに展開していたマケドニア軍と交戦に入った
と言うのも、マルス王子の父はアリティア騎士団を動員。反ドルーアの兵を挙げてドルーアを討伐しようとした過去がある
そして、その側にはアリティアと友好関係にあったグラ王国軍の姿があったのだ
しかし、ドルーアのみでも強大なのにグルニアとマケドニアまで合流。となればアカネイア王国とて危ういとでも見たのだろう
よりにもよって、アリティアと共に参陣していたグラのジオル将軍は友軍である筈のアリティアへとその剣を振り下ろしたのである
突如のグラ王国軍の裏切りにより、マルスの父と勇猛なアリティア騎士団は壊滅したらしい
そして、僅かに生き残ったマルス王子とアリティア騎士団は辺境のタリス王国へと逃れた
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誤解される事が多い様だが、タリス王国の現国王は決して武勇だけの人物ではない
そもそも
賊徒が跳梁跋扈するタリス地方において、それらをまとめ上げ曲がりなりにも王国として安定させたかの人物が無能や暗愚であろうはずもない
加えて、アカネイアを滅ぼさんとするドルーアに間違いなく敵対するであろう
そして、マルス王子が反ドルーアの兵を挙げるのが明らかでありながら、自身の娘であるシーダ王女とマルス王子との婚約を認めている
例え国王であろうとも、アカネイアをまさに滅ぼさんとするドルーアに敵対するが如き行動
その上自身の信用する護衛隊長を務めるオグマや戦士サジ、マジ、バーツをもマルス達の援軍として送り出している
下手をすれば政変すらあり得るだろうによくやるものだ
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んで、自分がいるのは悪名高きデビルマウンテンに跋扈する山賊集団サムシアン
原作においてはマルス達により殲滅されている
なお、原作では味方ユニットとして盗賊のジュリアンとシスターレナ
更にシーダの説得により『紅の傭兵』ナバールもマルス達に協力する
…で、今自分はシスターレナの監視役を命じられた訳でございます
という事はそろそろマルス達がタリスで旗上げするのかねぇ?
魔法を使えると言ったが、生憎とこちとら殺し合いや魔法と無縁の世界の人間
…中身の話ではあるのだが
その為か魔力などないに等しく、パラメーター的には魔力2とか3レベルだろう
ま、やり方は幾らでもあるんだがね?
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くそっ!
思わず俺は苛立ちのあまり、地面を蹴った
このサムシアンの中では比較的温厚な人物で、揉め事とは無縁のやつ
だが、アイツはサムシアンの頭であるハイマンですら一目置く様な奴だ
残虐なるゲレタ
普段温厚だが、必要となれば人を殺す事に一切の躊躇いもなく殺すやつだ
魔法の使い手だそうだが、何よりもその魔法の使い方が残虐極まる
目を焼く
耳を風の刃で斬り飛ばす
極め付けは内臓?だかに少量の電気を流して絶命させる
アイツに殺された奴は身綺麗なままに息絶えるのが多い。例え重厚な鎧を着込んだアーマーナイトだろうが、馬に乗り戦場を駆けるソシアルナイトだろうが関係なかった
この前も討伐に来た正規軍の指揮官を内部から焼き殺し、馬の脚を斬り飛ばし、そして敵を皆殺しにしている
敵と見做されれば、一切の容赦も慈悲もない
その一方で、ハイマンの指示がなかったり敵が居なければ温厚そのもの
その温度差が何よりも恐ろしいとは仲間内では評判だ
しかし、戦利品には勝手に手をつけないゲレタだ
その為かハイマンからの信頼はかなりのものがある
不意をうって気絶させるのが1番なんだろうが、流石に難しいだろう
盗賊ジュリアンは期を待つ事とした
あのシスターを助け出す為に
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マケドニア出身のシスターレナは困惑していた
「…あの」
「なんだ?」
彼女の困惑している理由は
「いただいて、良いのですか?」
「アンタは大事な戦利品だそうだ
死んでもらっても、弱ってもらっても困る」
彼女に牢の外から差し出された粗末な食事
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レナは港町で住民を苦しめる山賊がいると聞き、何とか止めてもらう為に単身デビルマウンテンにあるサムシアンのアジトへ来た
勿論彼女の言葉は彼等には届く事なく、抵抗も出来ない彼女はあっさり囚われの身となってしまう
最悪の事を想像した彼女であったが、山賊の頭領と思われる人物は彼女に何らかの価値を見出したのか、手を出そうとする山賊を殺した
そして
「ゲレタを呼んで来い!」
と周りの者へ指示を出した
そして現れたのは山賊の一味とは思えない様な痩躯の人物、ゲレタ
「見張ってろ!手は出させるなよ?」
と言われたその人物は
「手を出そうとしたら?」
そうさもどうでも良さそうに口を開く
「遠慮するな!殺せ!」
そう言われて
「…了解
じゃあ、ついてきな。逃げた場合は残念だが命は奪わないにせよ、五体満足で居られるとは思わない事だ」
私にそう告げた
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そんなゲレタという人物は意外にも私の事を気に掛けてくれる
食事が満足に用意されていないと見るや、自分の分であろう食事を分けてくれたり、身綺麗にする為に水と布を渡してくれたりしていた
この人が言うには
「ハイマンは恐らくアンタを奴隷市場に売り払いたいんだろう
となれば、アンタには身綺麗で居てもらわないと困る
アンタにとっては最悪な話だろうがな?」
との事
確かに奴隷になるのは恐ろしい
…でも、命や尊厳を今奪われない事は少しだけど安心出来る
勿論、この人が嘘を言っている可能性はあるのだが
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実際、私に手を出そうとした山賊が何人も来たがこの人は問答無用でその人達を手にかけている
…仲間であるはずなのに、だ
「仲間?
別にそんな意識はコイツらにはないさ
ハイマンにバレていないと思って戦利品を隠し持つ奴がわんさかいるからな」
何でもこの人、ゲレタさんが言うには自分の様に頭領であるハイマンの指示に従うものは少ないそうだ
サムシアン、なんて呼ばれているが皆それぞれの思惑で生活しており、生きていく為に集団を形成している、らしい
ゲレタさんはどうやら行き場のない自分をしたっぱとして使ってくれている頭領に恩がある。そう言っている
「寄る辺のない者にとってはこの世界は生きづらいからな」
そう話す彼は寂しそうだったのが印象的だった
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「…申し訳ありません」
「逃したってのか、ゲレタ!」
ハイマンは目の前で頭を下げる男からの報告を受けて頭に血が上るのを自覚した
…だが
「…ちっ、仕方ねぇ。テメェが逃げられたってんなら誰でも同じだ
ゲレタ!直ぐに追いかけろ
他の連中にも声をかけてな!!」
「ただちに」
殺すには惜しい存在なのだ、ゲレタという漢は
何せ自分に忠実であり、戦利品も全て自分に渡す。他の連中とは少しばかり毛色の違う人物なのだから
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「急いで逃げるぞ、レナさん!」
「え、ええ」
レナは盗賊のジュリアンという青年に連れられてサムシアンのアジトから逃げていた
彼女としては自分に良くしてくれたゲレタの事が気にかかったが、それでも彼は山賊の一味なのだと思い直し逃げ出す事に集中する
既に
「待てコラァ!」
「ジュリアンてめぇ裏切りやがったな!」
「逃すんじゃねぇぞ!」
と怒りの形相で山賊達が追いかけてくるのだから
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『紅の傭兵』ナバール
ゲレタの提案でハイマンが雇った傭兵だ
彼は寡黙であり、略奪には参加しない
しかし
「…裏切り、か?」
「まぁ、ジュリアンの奴あのシスターを捕らえている事に不満だったみたいだからな
仕方ないと言えば仕方ないさ
悪いが傭兵さん。手伝ってもらうぞ?」
目の前の一見すると何の変哲もない小男
だが、サムシアン随一の危険人物とナバールも聞いている
(見えんな)
ナバールは歴戦の傭兵であり、その為か血の匂いには敏感だ
どうしても敵を殺すと返り血を浴びる事は避けられない
それは剣や槍、斧や弓に魔法であったとしても量の多寡はあれど
その筈なのに、目の前の男からは僅かしか血の匂いがしないのだ
山賊達は明らかに目の前の男を恐れている
聞けば稀有な異名持ちとの事だが
そのチグハグさが妙に気になった
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「此処がデビルマウンテン」
「はっ。街で聞いた話では此処に山賊達のアジトがあるとのことでしたな。…マルス様、くれぐれもお気をつけを」
港町でグルニアの遠征軍を撃破したマルス達はデビルマウンテンの中へと足を踏み入れようとしていた
「…確か囚われたシスターがいると言う話だけど」
「助けに向かうとなると悪名高いサムシアンとの戦闘になります
勿論引けを取るつもりはありませぬが、オグマ殿達以外はまだ技量に不安が残ります
戦い方を考えねばならないかと」
「噂によるとサムシアンは山賊集団でありながら、魔道士すらいると聞きました
警戒すべきではないでしょうか?」
マルスに助言する彼の相談役を務めているジェイガン。そしてタリス王から送られた護衛隊長のオグマがそれぞれ自身の懸念を口にする
「マルス様!北の山道に山賊と山賊から逃げている二人組の姿が」
上空から索敵を行なっていたマルスの婚約者であり、タリス王女で
「分かった。先ずはその二人組を救出しよう
その後、山賊達を迎撃する!」
そしてマルス達は動き出した
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「レナさん!大丈夫か」
「な、何とか」
ジュリアンは疲労困憊になっているレナを心配しつつ、何とか山賊達の攻撃をかわしながら山道を南へと抜けようとしていた
山賊達と比べ、ジュリアンは足が速い
平地に出れば、少し先行しているレナと共に何とか振り切る事が出来るだろう
そう考えていた
問題はハイマン率いる根城の部隊が動く事だが、それはないとジュリアンは思っている
あくまでもサムシアンと一括りにされているが、明確に頭領であるハイマンの指示を聞くのはゲレタのみ
他の者達はハイマンやゲレタの目が届く範囲でこそ従順だが、そうでなければ自分勝手に動き回る
こうやって自分達を追い続けているのは見た目の良いレナを自身のものとしたい
そんな邪な考えがあるからだろう
(コイツらだけなら問題ない
…だけど、ゲレタとあの傭兵が出てきたら)
ゲレタは仲間や女子供には甘い一面こそあるものの、ひとたび敵と見做したものには容赦も慈悲もない
魔道士でありながら、火力には頓着する事なく
如何にして効率良く、敵を始末出来るのか?
のみを至上とする怪物だ
そしてあの傭兵も明らかにヤバいと彼の直感が告げている
1人でも厄介なのに、2人が追ってきているとなれば自分程度では足止めにもならない可能性は高い
(くそっ!このままじゃ俺はともかくとしてレナさんが)
内心焦りを隠せないジュリアン
勿論足を止める事はないが、危機的状況が迫っている事は間違いなかった
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「大丈夫ですか!」
「あ、ありがとうございます」
先行するカインとアベルはシスター、恐らく港町で聞いていた人物だろう少女を救出していた
「私は大丈夫です。それよりジュリアンが」
レナは事情はどうあれ助け出してくれたジュリアンの身を案じる
「アベル、俺が先に行く
お前はマルス様達と合流してから」
「分かった。気をつけろ、カイン」
そう会話を交わすとカインは山道で足止めすべく急ぎ馬を走らせた
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マルス達はレナを助け出し、ジュリアンの援護に向かった
それはつまりサムシアンとの戦闘に突入する事を意味している
とは言え
「ぐわっ!
…ち、畜生なんだテメェらは!」
仮にもアリティアから逃れたマルスを護衛していた者達やタリス王の護衛を務めていた者達である
山賊相手に手こずる事はあっても、引けを取る事はない
ましてや、回復や連携などもマトモに取ろうとしない者達ならば尚更
そうして、マルス達は2人を追っていた者達を倒す事に成功する
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が、問題はここから
「先発した連中は全滅か、やれやれ」
「…いくぞ」
残虐なる者と
紅の傭兵が立ち塞がろうとしていた
続くかどうかは未定
反響があれば書くかも知れない