汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
なにが、どうなっている!?我は混乱を隠せなかった。
獲物の匂いに誘われ、我は仲間と共に哀れな獲物を喰らうべく山の中を駆けた。
元々我らの縄張りは此処ではなかった。
もっと獲物の少ない場所。食べ物はあれど、我等の本能を満たすには到底足らぬ。
縄張りを拡げ様にも、獲物の多い場所には別の強い群れがいた。我等に出来た事と言えば、豊かな狩場の端に踏み入る事だけ。
それも、多くの仲間を喪った。
だが、ある時仲間が気が付く。
いつもならば奴等が出てこないはずの無い場所に踏み入っても、誰も駆け付けない事に。
だが、群れのボスは慎重だった。
何度となく、奴等の縄張りに踏み入り少しずつ我等の縄張りを増やしてゆく。
そして、いつしか我等は豊かな狩場を縄張りと出来たのだ。
此処には獲物も良く通るとあって、我や仲間達にとってこれ以上ない良き場所となる。
そして、ある時我等は感じた。
強烈な獲物の匂いが。
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我等は獲物を狩らんと山を駆ける。
噎せ返る様な匂いは徐々に強くなってゆく。
自然と涎が滴り落ちるが、誰も気に留める事はない。
もうすぐだ、と我等は更に意気を上げる。
だが、何かがおかしいと我のどこかが叫ぶ。
獲物を狩るには危険は伴うもの。我はそれを無視して更に疾く駆けた。
風が吹いた。
枯れ葉ひとつ巻き上げる事すら叶わぬ風が。
しかし、獲物が近付きそれを喰らう事に我等は必死だった。
ドサッ
群れの先頭を走る仲間が突然倒れる。
皆がそれを知覚した時、
我は身体の中に違和感を感じ
そのまま意識を闇の中へと落としたのだった。
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「レイ、男衆を呼んできな。」
「分かった!」
感情の籠もらぬ漆黒の瞳をしたゲレタはレイにそう指示を出す。
先の山賊による大規模襲撃。これにより村は多くの
が、今必要なのは食糧。
そこでゲレタは山賊達を派手に殺し尽くし、その血などを餌に近くの獣を誘き寄せる事とした。
少しの血の匂いですら嗅ぎ付け、襲ってくる獣。
彼等は理解しているのだ。血の匂いとは手負いの獲物の存在と居場所を示すものなのだと。
なら逆にそれを利用してやれば良い。
血や死体を以て、彼等を誘い出し、狩る。
一時的に獣達の縄張りに空白は出来るだろうが、この辺りは木の実なども豊富にある。
何せ人の手の殆ど及ばない場所であり、せいぜいが自分達の村と流れてくる山賊程度。
山賊は我慢の出来ぬ者達であり、余程集団を統率する人物でもなければ積極的に木の実などを食べて生活をする事は出来ない。
腹は膨れたとしても、満足するにはまるで足らないのだから。
故に山賊達が木の実などを食べるのは一時凌ぎ。獣を狩ろうにもそれだけの腕前を持ち、尚且つ辛抱強く獲物を待てるだけの精神的な余裕は持ち得ない。
確たる拠点を持たぬ以上、常に脅威に怯えねばならないのだから。
そして、村には干し肉として加工する手段がある。
「外敵を減らし、食料を確保する。
これくらいしか出来んからなぁ。」
ついでにたまには村全体で軽い宴をするのも良いだろう。
ささやかな幸せだけではまんぞく出来ない者もいるのだから。
ゲレタは軽く笑った。
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「宴ですか?確かにそれは良いかも知れませんな。」
ゲレタの提案に村長は快諾する。
今回ゲレタが仕留めた狼や猪の数は二十頭あまり。
全てを
が、狩ったのはゲレタである以上それを口に出すのもまた色々と憚られる。それを理解した上での提案なのだと、村長は理解し村の者達に伝える事とした。
武器や物資不足に喘ぐ大陸の状況など村の者達からすれば興味のない話。
彼等は真面目に作物を育て、獣を狩り、愛を育み生きてゆく。
それで良い。
それだけで良かったのだから。
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