汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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ゴールを決めて、過程を作る。

エリスルートでは割とやりやすかったけど、こっちはいつも難産。
いやはや、考えなしとは怖いもの。


歪み

「さて、どうしたものでしょうか。」

 

「まさか食料が余る日が来ようとはのぅ。」

村を挙げての宴の翌日、ゲレタと村長は今後の事についての話し合いの場を設けていた。

 

 

 

村の者達からすれば、外敵(山賊や獣)に怯える事なく生活が送れる事になったのは勿論、今までならば避け得ぬ飢餓の脅威が去った。そう思えて、しかも宴という形で実感出来たのは何物にも代え難い事だろう。

 

因みにだが、宴の席でゲレタに詫びる村人は殊の外多く村長は密かに胃を痛め、ゲレタは自分の予想が当たっていた事に複雑な気分を覚える事となった。

 

 

詫びた村人は基本村の防衛に参加する事なく、内職を専門としている者達。そして男性だった。所謂戦力外と村の男衆にされた者達とも言い換える事が出来よう。

生きる為とは言え、流石に全く戦えない者を防衛に回しては余計な被害を出さないとも限らない。その判断から外された男も少なからず村には居たのである。

あとは自分勝手に振る舞う者も少しだけ。

 

 

更にゲレタの周囲には美人美少女が多い。これに対する反発も確かにあった。

 

 

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が、村長からすればそんな事は些細な事。

そもそも、ゲレタ程の実力があるならばこんな寒村に留まらなくても良い事を知っている。

 

過ぎた厚遇をするつもりはないが、今までの功績に対しての配慮はしなければならない。

というよりも、過度な扱いをゲレタは好んでおらずあくまでも『村の一員』として働く事を良しとしている。

 

 

働かざる者食うべからず

その体現者と言っても過言ではなかった。 

 

 

 

村の拡大についても村の者達の間で話し合いがされているが、いざとなればゲレタの指揮の下で戦う事になる男衆。彼等もまた安易な村の拡大に慎重な考えを示している。

 

 

「村を拡大するとしてよ、それを誰が守るんだ?

今の俺達はゲレタの旦那に頼りきり。そんな情けねえ状態でそんな厚かましい提案をするってか?」

 

「畑を拡げたいと言うが、なら村の囲いの外でまず土作りをしてみろよ?」

と冷ややかだった。

 

 

彼等男衆の殆どはゲレタ達が来るまで犠牲を出しつつ、それでもこの村を守ってきた。だからこそ、山賊や獣についての危険性は嫌になるほど理解している。

 

あくまでもゲレタが異常に過ぎるだけであり、未だ彼の身内や弟子でさえも彼の代わりが出来ない事がそれを物語っている。

つまり、今の状況はゲレタという特異な人物があって始めて成り立つ非常に危ういものなのだ。

 

仮にゲレタが彼の娘であるチキの様な長命種ならばいざ知らず、彼もまた同じ人間。空腹になれば、病を得てしまえば倒れてしまう。それが分かっていない者の危うさたるや、言うまでもない。

だからこそ、ゲレタは村の男衆にも戦い方を教え、レイにも村の次代を任せられるだけの実力と実績を積まそうとしている。

 

本来足手まといでしかなく、教える事は負担にしかならぬと言うのに。

村長や男衆は故に、ゲレタへの感謝を忘れる事はない。

 

 

一方で村の中でしか活動しない者にはそれが理解出来ていない事を男衆は察していた。

無理もない話ではある。

 

実際ゲレタが村の守りに就く様になってから、犠牲どころか被害すら出ていないのだ。

となれば、欲が出るのは分からなくもない。

 

 

が、その場合新たに生じる負担までもゲレタに背負わせて良いものか?少なくとも、防衛の要となるゲレタとその周辺の者は村の拡大には慎重であり、村長もまた同意見だ。

 

 

「なぁ、お前等。少し考えてみろよ。

作物が増えたところで俺達が食う以上のものを蓄えてどうする?昨日みたいにいつもしたいって言うなら、せめて自分達でアレだけの数を狩れる様になってからだろ?」

男のその言葉に皆が押し黙る。

 

人とは身勝手なものであり、ゲレタにはまだ余力があると。彼の周囲の者はまだ働けると

そう考えているのだろう。

 

 

おおかた昨晩詫びたのも、それによってゲレタの心証を良くして動いて欲しいとの考えもあると見ている。

 

 

(多分、商人にでも何か吹き込まれたか?)

元々、生きるのに精一杯だったのだ。

感謝を忘れず、周囲と上手くやっていく。それが狭い村の中で生きていく為の知恵だっただろうに。

 

 

 

「変化とは必ずしも好ましい風を呼び込みませんよ。」

ゲレタの言葉を思い出し

 

「全くどうなるんだか。」

男は憂鬱そうにため息をついた。

 

 

 

 

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アカネイアではグルニアの内情の不安定さを理由にドルーアへの遠征の延期が議論されていた。

 

勿論それは建前であり、これを機にアカネイアの再建を一気にしてしまおうという考えだった。

 

 

何せ、ドルーアの喉元にあるマケドニア。彼の国がアカネイアに降伏したとなればドルーアがすべきは真っ先にそれを除く事となるのは間違いない。加えて己が傘下にありながら、マケドニアと同じく降伏したグルニア。この両国を放置してアカネイアを攻めるのは流石に無理な話ではないか?との論が出てきたのだから。

 

 

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本来ならば、君主たるニーナが大方針を決めて臣下がその実現方法を具体的に議論して然るべきところ。

が、未だにニーナは自室にこもりきりであり、ニーナ付きの女官となったミディアはニーナの心情を何よりも優先すべきと考えている。

 

まぁミディア(曲がりなりにも恋人のいる者)に今のニーナの心が癒せるはずもないのだが。勿論、ミディア自身には発言権などあろう筈もなく、彼女は一部から『アカネイア騎士の恥』と密かに揶揄されている程。

 

 

何せパレス襲撃の際やアリティア軍のマケドニア遠征においてさしたる功績を挙げる事も叶わず、それどころか恋人であるアストリアのマケドニア遠征への同行をあっさり認めてしまっている。

 

 

「真にアカネイアの、ニーナ様をお守りするつもりがあるなればアストリアをマケドニア遠征に同道させる理由はなかろうに。」

しかもそれについての相談をアストリアの前任者であったラングに断りひとつ入れていないと来ている。

 

現在アストリアは部隊の調練に励んでいるが、言うまでもなく部隊の士気は非常に低い。

元々アストリアはアカネイアを裏切っていた上に、大した理由なくマケドニア遠征に単身同行し、何の戦果も挙げられていない。それどころか、友軍であるアリティア軍に死者を出し無様に撤退する始末。

 

兵士からは

「色ボケした隊長についていけってか?」

とその能力を疑われてすらいた。

 

 

 

 

それに比べればジョルジュは多少マシであるとの評価はされているものの、それは最低ではない。程度のもの。

 

故にミディアがどれだけニーナの事を気遣おうとも、それを貴族達が受け入れる事はなかった。

 

 

神輿は汚れてはならぬが、担ぎ手までそれでは困るのだから。

 

 

が、それすらも彼女達は分からない。

分かろうともしない。何せ彼女達はアカネイア貴族を嫌悪しているから。

 

 

 

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アリティアのマルスとて、いつまでもアカネイアの都合で振り回されてはアリティアが安定しないのは理解していよう。

 

ならば、マルス達はアリティアへ戻しミネルバ、マリア、カチュアはマケドニアへ。

何なら貴族の私兵となったエストとやらもミネルバに戻しても良い。

 

⋯どの道、肉壁として役立って貰わねばならぬのだから。

 

 

 

 

アカネイアはドルーア征伐を一時取り止め、国力の増強に注力する。

このままでは、ドルーア征伐の中心人物がマルスとなってしまい、アカネイアの影響力が大いに減じるだろうからこその判断。ドルーアの事情も他国の事情すらも斟酌しない正しく傲慢不遜とも言えるソレ。

 

 

 

 

 

「その様な状況で私にニーナ様の伴侶として立て。そう言われるか。」

いっそ開き直りとも取れるアカネイアのやり方を聞いたハーディンは眉間に深く皺を刻み、何かを堪える様に言葉を紡ぐ。

 

彼等の言い方では、ニーナ様は既に傀儡にすら成り得ぬ。だからこそ、己にはニーナ王女の王配として権を振るって欲しい、と。

 

 

 

全く以て巫山戯た話だ。しかも、オレルアンの兄には既に話を通しているらしく、ハーディンに選択の自由は与えられてすらいないときた。

 

が、血みどろの道を征く者や心を殺してでも守りたい者を守っている者の存在を知るが故に

 

 

「承知しよう。そのかわり協力はして頂けるのだな?ディール侯爵にミニディ侯爵。」

 

「はっ。」

 

「我等ハーディン陛下(・・)に従いまする。」

ハーディンはこれを前向きに受け止める事とした。

 

 

ハーディンが第一に求めたのはアカネイアの恩人にして、ハーディンにとっては唯一無二の存在となった人物の保護。

即ち、ゲレタの居るであろう寒村への非介入を定める事だった。

 

無論、馬鹿正直にそれを口にする事はない。

統治のし辛い事、仮に貴族などを置いたとしてもその貴族の行動を管理出来ない事などを理由とし、それを両侯爵に徹底させる様に求めたのだ。

 

 

ハーディンにとって有難かったのは、アカネイア側からゲレタの住むであろう山奥に至るには、獰猛な獣の跋扈する危険な山間部を突破せねばならないと言う事。

⋯勿論、慣れている者ならば抜け道はあるのだが。

 

 

仮にアカネイアの状況が良ければ森を切り拓く選択肢もあっただろう。言うまでもなく、そんな余力など今のアカネイアには望むべくもない。

 

更にハーディンはアカネイア軍の早期立て直しの為に職務に忠実な(・・・・・・)傭兵の積極的な登用を推し進める。

 

 

誰とハーディンは言わなかったが、己の職務よりも感情を優先する様な傭兵なれば軍に相応しくない。そう断じたのである。

 

 

更にカダインや教会に対しても要請(・・)を出す。

人を出せ、と。

 

特に教会に対してはアカネイア国内における影響力に反しアカネイアへの貢献が著しく低い事をハーディンは問題とした。

 

 

 

「やるならば徹底的にやらねばならない。

中途半端にすれば、元に戻そうとする者達が現れよう。」

アカネイアの根底には『他者を下げる事で相対的に自分を高く見せる』というものがあるとハーディンは見ている。

 

外からすれば余りにも醜悪であったソレ。しかし、こうやってアカネイアの内情を知るとやむを得ない部分がある事に気付かされる。

勿論、だからと言ってソレが正しいとは思えないし、思ってはならないだろうが。

 

 

「アカネイアは余りにも歪み過ぎた。

再興させておいて何だが、この様な国家なれば滅んだままにしておくべきだったのやも知れぬ。」

ハーディンの言葉に両侯爵も苦しげな表情のまま頷く。

しかし、ハーディンはマルス王子と共にアカネイアを再興してしまった。

 

その上アカネイア貴族の多くはハーディンも思わず顔を顰めてしまう有り様。かと言って、それに隔意を抱いているミディア達もまた見るに堪えない。

 

目の前の両侯爵やアドリア伯はマシな部類なのだろうが、それとてハーディン個人としては甚だ不足している様に見えた。

 

 

 

 

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オレルアンにニーナが逃げ込んで来た時には助けねばならぬと思い、その為に多くの部下を喪った。

兄やその部下達、守るべき民にすら多大な負担を強いる事になったと言うのに当時の己はそれすらも見えていなかった。

 

そして事もあろうに本拠たるオレルアン城すら一度失い、すんでの所でマルス王子達に助けられる。

 

 

ニーナ様には申し訳ない。

 

 

当時の己はそんな思いを抱いていたのだから、最早笑うしなかいだろう。

 

 

オレルアン城は解放され、我等はマルス王子と共にアカネイア再興を果たさんとアカネイアへ向かう事とした。

 

が、その中心はマルス王子達アリティア軍。

何故ならば、ファイアーエムブレム(アカネイア王族からの信頼の証)はマルス王子に託されたのだから。

 

 

私ではニーナ様のお力になれなかったか。

 

 

 

そんな悲しみは確かに私の中にあったのだろう。

が軍を進めるうちに私の中でのニーナ様やアカネイアに対する熱は冷めていく。

 

 

確かにニーナ様はアカネイアに残された唯一の王族だろう。

が、いつまでも何も知らぬまま(無責任)では困る。私やマルス王子がそれを口にするのは問題だが、まさかアカネイアの者ですらそれを指摘しないとは思いもよらなかったが。

 

兄は常に周りの意見を聞いていた。

が、それは周りの意見に流されるという意味ではない。

 

 

常に民の為に、オレルアンの為に何をすべきか?それを揺らぐことない柱として考えていたのだから。

⋯それに今更気付くあたり、私も大概度し難いと思わなくもないが。

 

 

 

 

アカネイアは既に己の力で立てぬ満身創痍の中にある。

人材(ひと)物資(もの)も、その精神(こころ)すらも壊れていよう。

 

それを立て直すとなれば、如何程の手間や労力がかかるのやら。

ハーディンはニーナと会い、彼女にも理解を求めねばならぬと考えた。

 

 

 

 

その判断が致命的な過ちであったと知る由もなく。

 

 

 

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後世の識者は言う。

アカネイアを血によって変えようとした『暴虐の徒ラング』。愛ゆえに苦しみ、道を踏み外した『悲劇の皇帝ハーディン』。

 

 

彼等には決定的に大局観が足りなかったと。

相互理解がまるでなかったと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




勿論、対ドルーアについては早々に修正が入ります。
恐らく次回くらいには



予定は未定。
重い言葉に御座る。

別キャラルート ヒロイン

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  • ニーナ
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  • クライネ
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